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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1363458
審判番号 不服2018-16174  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-05 
確定日 2020-06-17 
事件の表示 特願2017-115828号「骨成長装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開、特開2017-185262号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年9月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年9月4日、米国(US)、2010年7月13日、米国(US))を国際出願日とする特願2012-528095号の一部を、平成27年5月14日に新たな特許出願とした特願2015-98790号の一部を、平成29年6月13日にさらに新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成29年 6月26日 :手続補正書
平成29年12月20日付け:拒絶理由通知
平成30年 4月 9日 :意見書
平成30年 4月 9日 :手続補正書(以下、この手続補正書による 手続補正を「本件補正」という。)
平成30年 8月 2日付け:拒絶査定
平成30年12月 5日 :審判請求


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
第1と第2の部分を有する骨上または骨内の隙間にまたがるよう構成された調整装置であって、当該調整装置は、
前記第1と第2の骨部分の一方に接続するよう構成されたハウジング、
前記第1と第2の骨部分の他方に接続するよう構成されたシャフト、
回転するよう構成され、第1のサンギヤを具える軸に接続された永久磁石、
ねじ山部分、及び
連続的に配置され、第1のプラネタリギヤセットと最後のプラネタリギヤセットを具える少なくとも2つのプラネタリギヤセットであって、前記第1のプラネタリギヤセットは、第1の複数のプラネタリギヤ及び第2のサンギヤを具え、前記第1のサンギヤ及び前記第2のサンギヤは前記第1の複数のプラネタリギヤと直接的に連結し、前記最後のプラネタリギヤセットは、前記ねじ山部分と連結する主ねじに接続された出力部、及び最後の複数のプラネタリギヤを具え、前記第2のサンギヤは前記最後の複数のプラネタリギヤと直接的に連結する、プラネタリギヤセット、
を具える、調整装置。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に、日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2及び引用文献3に例示された周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものを含むものである。

引用文献1:特表2003-530195号公報
引用文献2:特表2001-507608号公報
引用文献3:特表2002-500063号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1)「長さを伸長できるリンクによって骨または隣接する骨に接続された装置の第1および第2部品を取り付けるための係留手段と、減速ギアボックスを介してリンクに接続された磁石と、移動するか、または変化する電磁界を発生し、よって磁石を回転させ、リンクを伸長させるための、患者の外部に設けられた作動手段とを備えた、患者の骨格またはインプラントに非侵襲的に伸長力または張力を加えるための外科用延伸装置。」(【請求項1】)

(2)「本発明は外科用延伸装置に関し、患者の骨格内の骨および/または移植体に伸長力または張力を加えるための外科用延伸装置を、ある形態で提供するものである。」(段落【0001】)

(3)「本発明に係わる装置の主な用途は、上記論文に記載されている理由のためのプロテーゼを定期的に伸長することであるが、装置が有益である他の外科目的も多数ある。これらのうちの1つとして、延伸骨形成がある。この治療は、骨の成長を刺激するよう、骨に張力をかけることである。従来の方法は、例えば肢のまわりに外部フレームを設け、所定の距離で骨にピンを係止し。次に、一定の張力を骨に加えるよう、ピンの間に張力ロッドを取り付けていた。これら装置は極めて取り扱いにくく、患者を動きにくくし、患者が歩行困難または不可能となることが多かった。更に、経皮的なピンを使用することによって生じる感染の恐れが高い。本発明の装置を用いれば、装置を手術により挿入し、その部品を骨に係止し、埋め込まれた装置のまわりで回転する電磁界を発生するための装置を設けることにより、連続的または所定の時間間隔で張力を加えることができる。」(段落【0010】)

(4)「図を参照すると、この延伸装置は2つの部品、人工股関節部を形成するボールジョイント(3)を含む大腿骨股関節プロテーゼの一部を形成する第1部品(1)と、切除された大腿骨(5)に係止するためのスピゴット(4)を支持する相対的に移動自在な部品(2)を備える。これら部品(1)と(2)とは、細長いネジ(6)およびナット(7)を含むリンクにより共にリンクされている。矢印Xの方向に軸方向にリンクを相対的に移動させることは、ギアボックス(9)に接続された回転自在な磁石(8)によって行われる。磁石(8)はギアボックス(9)を介してスピンドルネジ(6)に接続されており、磁石(8)が回転すると、ネジが回転し、従って、装置が伸びる。」(段落【0014】)

(5)「図3はギアボックスの細部を示す。ギアボックスは2つの遊星ギアを内蔵し、体液を排除するようにケーシング内にシールされている。・・・
ギアボックスと磁石のアセンブリはリンクアセンブリの下端部に設けられたチャンバ(201)内に収納されるようになっている(図2a参照)。
参照番号(11)は軸方向のスピンドルを示し、このスピンドル上で駆動磁石が回転する。・・・部品(12)は永久磁石(8)を収納するためのハウジングである。永久磁石は焼結方法によって製造することが好ましく、環状形状となっており、磁石がカプセル内で回転しないように連動環状カプセル(12)内に嵌合されている。
・・(中略)・・部品(13)はギアボックスの第1ステージに対する入力ピニオンである。このピニオンはスピンドル(1)(審決注:(11)の誤記と思われる。)に自由走行して嵌合するようにボアが設けられており、カプセル(12)に連動する平面ボスを有する。部品(14)と(17)とは遊星キャリアアセンブリを形成するようにスピゴットおよびソケットとして共に取り付けられており、キャリアアセンブリ内に遊星ギア(16)が嵌合されている。各ギアステージは3つの同一な遊星ギアを有し、これら遊星ギアはキャリアアセンブリ内に嵌合されており、各遊星ギアの各端部には小さい一体的スタブシャフトが機械加工によって設けられている。これらスタブシャフトはキャリアアセンブリの各半分内の孔に位置する。
部分(15)および(22)はそれぞれ第1および第2減速ステージのための固定された内部ギアである。これらギアの各々は一組の遊星ギアの面の幅のほぼ半分に噛合し、ギアボックスの本体内に固定されている。遊星ギアの他の半分は回転する内部ギア(18)と噛合している。固定された内部ギア(18)内の歯の数と比較して、回転する内部ギア(18)内の歯の数が少なくなっていることにより、ステージに対する減速が得られるようになっている。・・・部品(18)、(19)および(20)はギアの第1ステージからの出力を第2ステージの入力へ伝えるアセンブリを構成する。このアセンブリはギアウェブ部品(19)を備え、このウェブ部品はギアの第1ステージの回転内部ギアと、第2ステージの入力ピニオンの双方に溶接されている。」(段落【0018】?【0021】)

(6)「部品(21)、(22)、(23)、(24)および(25)は、第2ステージのための内部固定ギアと遊星ギアとキャリアのアセンブリを構成する。これら部品は、ギアの第1ステージの部品(14)、(15)、(16)、(17)および(18)と同じである。
部品(25)はギアの第2ステージの内部回転ギアであり、この部品はギアボックスからの出力シャフトである部品(26)に溶接されている。この部品はOリングシール(203)を貫通し、図1、2および2aに示されるネジ(16)(審決注:(6)の誤記と思われる。)を駆動する。
・・(中略)・・
部品(26)の上方面は出力シャフト(27)を支持しており、この出力シャフトはリードネジ(6)内に係合する適当な形状の駆動突起として終わっている。ネジ(6)は内側シャフト(7)内に螺合されている。外側シャフト(2)はリードネジ(6)が磁石(8)により回転され、減速ギアボックスを介して駆動する時に内側シャフトがシャフト(2)から伸長するように内側シャフト(7)を囲んでいる外側シャフト(7)内の対応する開口部内に固定されたキー(204)により、内側シャフト(7)が回転しないようになっている。キー(204)は内側シャフト(7)内に形成された長手方向スロット(205)内に延びる、突出する部分を有する。」(段落【0022】?【0026】)

(7)

上記図2の記載から、次の構造が窺える。
(7-1)部品(1)は、内側シャフト(7)の一端に設けられ、当該内側シャフト(7)の他端はナット(7)を構成していること。
(7-2)部材(2)は、外側シャフト(7)を構成していること。
(7-3)外側シャフトの内側部分に、内側シャフトないしナット(7)、ネジ(6)、ギアボックス(9)及び永久磁石(8)が配置されていること。

(8)

上記図3はギヤボックスの分解図であるところ、当該図面の記載から、次の構造が窺える。
(8-1)部品(14)?(18)から構成される遊星キャリアアセンブリと、部品(21)?(25)から構成される遊星キャリアアセンブリとが同じ構造を有していること。
(8-2)入力ピニオン(13)の歯面が遊星ギア(16)の歯面に噛合する位置にあること。
(8-3)部品(26)と出力シャフト(27)とが一体であること。

上記(1)?(8)の記載事項から、引用文献1には次の(あ)?(お)の事項が記載されているといえる。
(あ)上記(4)の「この延伸装置は・・・切除された大腿骨(5)に係止するためのスピゴット(4)を支持する相対的に移動自在な部品(2)を備える。」の記載と、上記(7-2)の図示内容とを併せてみて、引用文献1記載の外科用延伸装置は、大腿骨5に取り付けるよう構成された外側シャフト(2)を具えるといえる。

(い)上記(4)の「この延伸装置は・・・大腿骨股関節プロテーゼの一部を形成する第1部品(1)・・・を備える。」の記載と、上記(7-1)の図示内容とを併せてみて、引用文献1記載の外科用延伸装置は、大腿骨股関節プロテーゼの一部を形成するよう構成された内側シャフト(7)を具えるといえる。

(う)上記(4)の「磁石(8)はギアボックス(9)を介してスピンドルネジ(6)に接続されており、磁石(8)が回転すると、ネジが回転し、従って、装置が伸びる。」の記載と、上記(5)の「部品(13)はギアボックスの第1ステージに対する入力ピニオンである。」及び「磁石のアセンブリはリンクアセンブリの下端部に設けられたチャンバ(201)内に収納されるようになっている(図2a参照)。」の記載と、上記(7-3)の図示内容とを総合してみて、引用文献1記載の外科用延伸装置は、回転するよう構成され、入力ピニオン(13)を具える軸に接続された永久磁石(8)を具えるといえる。

(え)上記(4)の「図を参照すると、この延伸装置は2つの部品、人工股関節部を形成するボールジョイント(3)を含む大腿骨股関節プロテーゼの一部を形成する第1部品(1)と、切除された大腿骨(5)に係止するためのスピゴット(4)を支持する相対的に移動自在な部品(2)を備える。これら部品(1)と(2)とは、細長いネジ(6)およびナット(7)を含むリンクにより共にリンクされている。」の記載と、上記(7-3)の図示内容とを総合してみて、引用文献1記載の外科用延伸装置は、細長いネジ(6)およびナット(7)を含むリンクを具えるといえる。

(お)上記(5)の「図3はギアボックスの細部を示す。ギアボックスは2つの遊星ギアを内蔵し、」及び「部品(18)、(19)および(20)はギアの第1ステージからの出力を第2ステージの入力へ伝えるアセンブリを構成する。」の記載並びに上記(6)の「部品(21)、(22)、(23)、(24)および(25)は、第2ステージのための内部固定ギアと遊星ギアとキャリアのアセンブリを構成する。これら部品は、ギアの第1ステージの部品(14)、(15)、(16)、(17)および(18)と同じである。」の記載と、上記(7-3)及び(8-1)の図示内容とを総合してみて、引用文献1記載の外科用延伸装置は、連続的に配置された第1ステージのためのアセンブリと第2ステージのためのアセンブリからなる遊星ギアセットを具えるといえる。
さらに、「第1ステージのためのアセンブリ」についてみてみると、上記(5)の「部品(13)はギアボックスの第1ステージに対する入力ピニオンである。」の記載と上記(8-2)の図示内容とを併せてみて、「第1ステージのためのアセンブリ」は、入力ピニオン(13)が3つの遊星ギア(16)と噛合するといえる。
また、上記(5)の「部品(18)、(19)および(20)はギアの第1ステージからの出力を第2ステージの入力へ伝えるアセンブリを構成する。このアセンブリはギアウェブ部品(19)を備え、このウェブ部品はギアの第1ステージの回転内部ギアと、第2ステージの入力ピニオンの双方に溶接されている。」の記載から、第2ステージの入力ピニオンである部材(20)は、溶接により部材(19)を介して内部ギアである部材(18)と一体とされるものである。一方、上記(5)の「遊星ギアの他の半分は回転する内部ギア(18)と噛合している。」の記載からみて、内部ギア(18)は、遊星ギア(16)と噛合するものである。
したがって、溶接により一体とされた内部ギア(18)とギアウェブ部品(19)と入力ピニオン(20)からなるもの(以下、「第2入力手段」という。)は、3つの遊星ギア(16)と噛合するといえる。
さらに、「第1ステージのためのアセンブリ」は、3つの遊星ギア(16)および第2入力手段を具えるといえる。
よって、「第1ステージのためのアセンブリ」は、「複数の遊星ギア(16)および第2入力手段を具え、入力ピニオン(13)及び第2入力手段は3つの遊星ギア(16)と噛合している」といえる。
次に、「第2ステージのためのアセンブリ」についてみてみると、上記(6)の「この出力シャフトはリードネジ(6)内に係合する適当な形状の駆動突起として終わっている。ネジ(6)は内側シャフト(7)内に螺合されている。」の記載と上記(7-1)の図示内容とを併せてみて、「第2ステージのためのアセンブリ」は、内側シャフト(7)の空洞のネジ山部分に接続するリードネジ(6)に連結される出力手段を具えているといえる。
また、「第2ステージのためのアセンブリ」は、上記(6)の記載及び上記(8-1)の図示内容からみて、第1ステージのためのアセンブリの構造と同じといえるから、第2ステージのためのアセンブリは、3つの遊星ギア(23)を具え、第2入力手段が3つ
の遊星ギア(23)と噛合している、といえる。
よって、「第2ステージのためのアセンブリ」は、「内側シャフトの空洞のネジ山部分に接続するリードネジ(6)に連結される出力手段、及び3つの遊星ギア(23)を具え、第2入力手段は複数の遊星ギア(23)と噛合している」といえる。

してみると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「大腿骨(5)に取り付けるよう構成された外側シャフト(2)、大腿骨股関節プロテーゼの一部を形成するよう構成された内側シャフト(7)、回転するよう構成され、入力ピニオン(13)を具える軸に接続された永久磁石(8)、細長いネジ(6)およびナット(7)を含むリンク、及び連続的に配置された第1ステージのためのアセンブリと第2ステージのためのアセンブリからなる遊星ギアセットであって、第1ステージのためのアセンブリは、3つの遊星ギア(16)および第2入力手段を具え、入力ピニオン(13)及び第2入力手段は3つの遊星ギア(16)と噛合し、第2ステージのためのアセンブリは、内側シャフト(2)の空洞のネジ山部分に接続するリードネジ(6)に連結される出力手段、及び3つの遊星ギア(23)を具え、第2入力手段は3つの遊星ギア(23)と噛合する、遊星ギアセット、を具える、外科用延伸装置。」

2.引用文献2
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(1)「1.骨の2つの部分を互いに引き離すため、特に骨伸延のため、若しくは骨隙間をブリッジするための伸延装置であって、骨の骨髄腔内に導入可能な髄内釘(1)を備えており、髄内釘が、それぞれ両方の骨部分の1つに取り付け可能でかつ軸線方向で互いに離反移動可能な2つの部分(2,3)を有しており、駆動軸(16)を駆動する駆動ユニット(4)及び、駆動軸(16)の回転運動を髄内釘(1)の両方の部分(2,3)間の相対的な軸線方向運動に変換するための装置を備えている形式のものにおいて、
駆動軸(16)がプラネタリローラ(19)を駆動するようになっており、プラネタリローラが循環路内に保持されており、プラネタリローラ(19)の外周に設けられた駆動溝(21)が、プラネタリローラ(19)を取り囲む中空体(7)の対応する駆動溝(8)に係合しており、少なくとも中空体(7)若しくはプラネタリローラ(19)の駆動溝(8)が、中空体(7)を駆動軸(16)の回転に際して該駆動軸に対して相対的に軸線方向に移動させるために、ねじ溝として形成されていることを特徴とする、骨の2つの部分を互いに引き離すための伸延装置。」(2頁2?16行)

(2)「本発明による伸延装置は、骨の髄腔内に導入可能な髄内釘1を有している。この髄内釘1は、軸方向で互いに引き離し可能で、かつそれぞれ両骨部分の一方に固定可能な2つの部分2,3と、髄内釘1の両部分2,3を互いに引き離すための駆動ユニット4とを有している。・・・
第1図から判るように、髄内釘1の第1の部分2は管状の中空体7によって形成される。この中空体7はその内周面に溝切り成形部8を備えている。中空体7の一方の端部には、髄内釘1の第2の部分3が押し込まれている。この第2の部分3はやはり管状のケーシング9を有している。中空体7の他方の側には、端部材10が挿入されている。この端部材10には、貫通開口11が設けられており、この貫通開口11を通じて、固定手段(図示しない)、特にねじが貫通案内可能となる。この固定手段を用いて、髄内釘1の第1の部分2が骨または骨片に固定可能となる。
ケーシング9の、端部材10とは反対の側の端部には、やはり端部材12が挿入されている。この端部材12はやはり貫通開口13を備えており、この貫通開口13には、髄内釘1の第2の部分3を骨または骨片に固定するための固定手段、特に固定用ねじが導入可能となる。」(11頁3?22行)

(3)「本発明による髄内釘の機能形式は以下の通りである、・・・駆動軸16に対して軸方向で固定されたプラネタリローラ19の回転によって、中空体7は、プラネタリローラ19の溝切り成形部21と中空体7の溝切り成形部8との係合に基づき押し出される。この場合、中空体7に貫通開口11を介して固定された一方の骨片は、貫通開口13を介してケーシング9に結合されている第2の骨片から離反移動させられる。・・・互いに引き離される両骨片の間には、骨隙間を繋ぐ新たな骨組織が形成される。
つまりこのようにして骨を伸張させることができる。」(12頁14?末行)

上記記載から、引用文献2には、次の技術事項が記載されている(以下、「引用文献2に記載された技術事項」という。)。

「骨伸延のための伸延装置を、一方の骨部分に固定するための貫通開口11を有する第1の部分2と、第1の部分2に入れ子状に配置された、他方の骨部分に固定するための貫通開口13を有する第2の部分3と、を具える髄内釘1とし、骨の髄腔内に配置すること。」

3.引用文献3
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(1)「切断された骨の骨髄腔内で使用するための骨髄内骨格伸延器であって、
各々、第1の端部、第2の端部及び孔を有する第1及び第2の円筒形部材であって、第2の円筒形部材は第1の円筒形部材内に入れ子式に摺動する大きさになされている、第1及び第2の円筒形部材と、
第1及び第2の端部を有し、前記第2の円筒形部材内で摺動する大きさになされた直径を更に有する細長いロッドであって、当該ロッドの第1の端部は前記第1の円筒形部材の孔内に位置し且つ同第1の円筒形部材に固定されており、当該ロッドの前記第2の端部は前記第2の円筒形部材の孔内に位置している、細長いロッドと、
前記第1の円筒形部材の孔内の前記細長いロッドに対して同ロッドを取り巻く関係にて配置された回転に応答するクラッチ手段であって、軸線方向の重量負荷を受けるのを避けるように配置され、第1の方向に回転可能であり且つ第2の方向に係止可能であり、更に、第1の方向に回転したときに前記第1及び第2の円筒形部材の伸延する入れ子式の動作を生じるように第2の円筒形部材に対して作動可能であるクラッチ手段と、
前記細長いロッドと接続されていて、前記第1の円筒形部材と前記第2の円筒形部材との間に生じた所定のスタート位置からの伸延する入れ子式の動きの量を、真皮外の位置から決定するための手段であって、信号発生手段を含み、同信号は、前記細長いロッドの回転位置を示し、前記信号発生手段は、前記細長いロッドに関してほぼ正反対に配向された極軸を有するマグネットを含み、同マグネットは、前記細長いロッドに関して回転方向に強制されており、それによって、同マグネットの磁場が前記細長いロッドの回転位置を示すようになされた、前記伸延する入れ子式の動きの量を、真皮外の位置から決定するための手段と、
を含む伸延器。」(【請求項1】)

(2)「・・・本発明は、概して、骨の伸延において使用するための外科器具に関し、より特定すると、骨髄内骨格伸延のための装置及びその方法に関する。」(段落【0001】)

(3)「・・・骨髄内骨格伸延器のこの実施形態14(図11a?11d)においても、第1の円筒形部材20及び第2の円筒形部材32並びに細長いロッド42は、上記したように本質的なものである。しかしながら、ここでは、ロッド42は、ロッド42の回転運動がロッド42と第2の円筒形部材32との間の相対的な軸線方向の運動に変換されるように、第2の円筒形部材32に結合されている。
特に、ロッド42は、第2の円筒形部材の孔334の相補的なねじ部分362と係合するように位置決めされたねじ部分426を有している。従って、ロッド43の回転によって、ロッド42と第2の円筒形部材32との間の長手方向の動きが生じる。
この実施形態14は、更に、細長いロッド42に固定されて真皮外の回転発生信号に応答する回転作用手段を含んでいる。・・・
本発明のこの実施形態を使用する方法は、磁気信号を第2のマグネット47からマグネット45へ供給するステップを含んでいる。・・・操作上、第2のマグネット47は、伸延器14を含む四肢に隣接して真皮外に配置されており、且つ伸延を達成する方向(図11においては、反時計方向のマグネット47の動きとして示されている)に回転される。」(段落【0056】?【0060】)

(4)図11aの記載から、第1の円筒形部材20と第2の円筒形部材32は、それぞれ、骨部分に取り付ける手段を有するものであることが窺える。

上記記載から、引用文献3には、次の技術事項が記載されている(以下、「引用文献3に記載された技術事項」という。)。

「骨の伸延において使用する外科器具を、一方の骨部分に固定するための手段を有する第1の円筒形部材20と、第1の円筒形部材20に入れ子状に配置された、他方の骨部分に固定するための手段を有する第2の円筒形部材32と、を具える骨髄内骨骼伸延器とすること。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「外科用延伸装置」は、遊星ギアセットを用いて調整を行うものであるから、本願発明の「調整装置」に相当する。
また、両者は、その構造または機能からみて、引用発明の「外側シャフト(2)」は、本願発明の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「内側シャフト(7)」は「シャフト」に、「入力ピニオン(13)」は「第1のサンギア」に、「永久磁石(8)」は「永久磁石」に、「3つの遊星ギア(16)」は「第1の複数のプラネタリギヤ」に、「第1ステージのためのアセンブリ」は「第1のプラネタリギヤセット」に、「3つの遊星ギア(23)」は「最後の複数のプラネタリギヤ」に、「第2ステージのためのアセンブリ」は「最後のプラネタリギヤセット」に、「リードネジ(6)」は「主ねじ」に、「出力手段」は「出力部」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「外側シャフト(2)」は、大腿骨(5)に取り付けるよう構成されているのであるから、「第1と第2の骨部分の一方に接続するよう構成された」ものである。
また、引用発明の「第2の入力手段」は、部品(20)を備えることにより、サンギアとして作用し、部品(18),(19)は当該部品(20)と溶接により一体的に構成されている(上記第4の1.(5)参照。)のであるから、全体として本願発明の「第2のサンギア」に相当する。
ここで、一般に、「噛合」している「ピニオン」ないし「ギア」は、「直接的に連結」しているといえるから、引用発明における、入力ピニオン(13)と遊星ギア(16)、および、第2入力手段と遊星ギア(16)は、「直接的に連結」しているといえる。
よって、引用発明の「入力ピニオン(13)及び第2入力手段は複数の遊星ギア(16)と噛合し」は、本願発明の「第1のサンギヤ及び第2のサンギヤは第1の複数のプラネタリギヤと直接的に連結し」に相当し、同様に、「第2入力手段は複数の遊星ギア(23)と噛合する」は、「第2入力手段が複数の遊星ギア(23)と噛合している」は「第2のサンギヤは最後の複数のプラネタリギヤと直接的に連結する」に、相当する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
第1と第2の骨部分の一方に接続するよう構成されたハウジングと、
シャフト、
回転するよう構成され、第1のサンギヤを具える軸に接続された永久磁石、
ねじ山部分、及び
連続的に配置され、第1のプラネタリギヤセットと最後のプラネタリギヤセットを具える少なくとも2つのプラネタリギヤセットであって、前記第1のプラネタリギヤセットは、第1の複数のプラネタリギヤ及び第2のサンギヤを具え、前記第1のサンギヤ及び前記第2のサンギヤは前記第1の複数のプラネタリギヤと直接的に連結し、前記最後のプラネタリギヤセットは、前記ねじ山部分と連結する主ねじに接続された出力部、及び最後の複数のプラネタリギヤを具え、前記第2のサンギヤは前記最後の複数のプラネタリギヤと直接的に連結する、プラネタリギヤセット、
を具える、調整装置。

【相違点】
調整装置について、本願発明では、シャフトが第1と第2の骨部分の他方に接続するよう構成され、第1と第2の部分を有する骨上または骨内の隙間にまたがるよう構成されているのに対し、引用発明では、内側シャフト(シャフト)が大腿骨股関節プロテーゼの一部を形成するよう構成され、第1と第2の部分を有する骨上または骨内の隙間にまたがるよう構成されていない点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。
引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項に例示されるとおり、骨の伸延のために、骨を2つの部分に分け、これらの間に延伸装置を設けることは周知技術であると認められる。
また、引用文献1には「本発明に係わる装置の主な用途は、・・・プロテーゼを定期的に伸長することであるが、装置が有益である他の外科目的も多数ある。これらのうちの1つとして、延伸骨形成がある。この治療は、骨の成長を刺激するよう、骨に張力をかけることである。・・・本発明の装置を用いれば、装置を手術により挿入し、その部品を骨に係止し、埋め込まれた装置のまわりで回転する電磁界を発生するための装置を設けることにより、連続的または所定の時間間隔で張力を加えることができる。」(上記第4の1.(3)を参照。)と記載されているから、引用文献1には、外科用延伸装置を、当該装置を手術により患部に挿入して骨の延伸装置に用いることについても示唆されていると認められる。
してみれば、引用文献1の上記示唆に基づき、引用発明を、引用文献2及び3に例示された上記周知技術のごとく、骨の伸延のために用い、その際に引用発明の大腿骨股関節プロテーゼの一部を形成するよう構成された内側シャフトを、外側シャフトと同じく、大腿骨に取り付け、第1と第2の部分を有する骨上または骨内の隙間にまたがるよう構成した延伸装置として用いることは、当業者であれば容易になし得ることであると認められる。

そして、本願発明による効果も、引用発明、引用文献2及び引用文献3に例示された周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2及び引用文献3に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-01-17 
結審通知日 2020-01-21 
審決日 2020-02-04 
出願番号 特願2017-115828(P2017-115828)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 健志  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 井上 哲男
莊司 英史
発明の名称 骨成長装置および方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

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