• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1363464
審判番号 不服2019-2205  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-18 
確定日 2020-06-17 
事件の表示 特願2016-575323号「車両シャーシ構造」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月30日国際公開、WO2015/197761、平成29年 8月10日国内公表、特表2017-522216号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2015年(平成27年)6月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年6月27日、英国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。
平成30年 1月15日付け:拒絶理由通知書
平成30年 6月18日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年10月10日付け:拒絶査定
平成31年 2月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成31年 2月28日 :手続補正書(方式)の提出

第2 平成31年2月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年2月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
筒状断面の金属部材が互いに接続された骨格と、
繊維補強され、かつ、耐荷重性を有する複数の複合パネルであって、
前記複合パネルの各々が複数の前記金属部材に接着的に結合され、
前記複合パネルと前記金属部材との間の結合のうちの少なくとも1つの結合が、前記複合パネルの平板部分の端部と一体であると共に当該端部から延びるアーチ構造によって形成され、かつ、前記少なくとも1つの結合が前記金属部材の外側に適合する前記アーチ構造によって形成される、前記複合パネルと、
それらの間のギャップに沿った接着剤層であって、実質的に前記平板部分の端部から延びると共に、前記アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる接着剤層と、を有し、
前記接着剤層が、前記金属部材及び前記アーチ構造が所定位置へと配置されることにより前記アーチ構造によって前記金属部材の角度範囲の一部にわたって押し広げられたものであり、
前記金属部材と前記アーチ構造との間における前記アーチ構造の前記角度範囲の残部が空隙とされた、車両シャーシ。」
と補正された(当審にて、補正された箇所に下線を付した。)。

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記アーチ構造の前記角度範囲」を、「前記金属部材と前記アーチ構造との間における前記アーチ構造の前記角度範囲の残部が空隙とされた」と限定するものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2 引用例及びその記載事項
(1)引用例1
(1-1)引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として示され、本願の出願前に頒布された特表2011-516329号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

(1a)「【請求項1】
車両用のシャーシであって、
交差部材によって結合された前後方向部材を有する相互接続された管状セクションのフレームワークであって、少なくとも一つの前後方向部材を含み、そこから、少なくとも一つの交差部材が第2の前後方向部材に向かう第1の方向に延在しており、かつ、少なくとも一つのさらなる交差部材が第3の前後方向部材に向かう前記第1の方向とは非平行な第2の方向に延在しており、これによって三次元構造体が形成されているフレームワークと、
少なくとも一つの面材であって、前記フレームワーク内へと延在する凹状断面を備えると共に、前記管状構造体の前記前後方向部材に対して結合された少なくとも一つの面材と、
を具備してなることを特徴とするシャーシ。
【請求項2】
前記管状セクションは金属製であることを特徴とする請求項1に記載のシャーシ。
・・・
【請求項10】
前記面材は、第1の素材からなるコアならびに第2の素材からなる被覆を具備してなる複合材であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のシャーシ。
・・・
【請求項12】
前記被覆は繊維強化プラスチック材であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のシャーシ。
・・・
【請求項16】
前記面材は複数のセクションから構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載のシャーシ。」

(1b)「【0010】
本発明は、必要な剛性と、大量生産を可能とするための十分な製造速度とを、従来のプレススチールシャーシのそれの何分の一かの環境フットプリントと共に両立する車両用のシャーシを提供する。」

(1c)「【0016】
面材は非平坦であってもよく、そうであることが好ましい。なぜなら、これによって、さまざまな軸に関して、より高い剛性度がもたらされるからである。タブなどの凹形状が好ましい。それは、フレームワークの製造誤差に対応できるように、理想的には位置誤差を許容する方法によって結合された複数のセクションから構成されてもよい。」

(1d)「【発明を実施するための形態】
【0023】
図1、図2、図3および図4は、本発明に基づく車両シャーシの製造に使用される管状フレーム構造物を示している。フレーム構造体10は、一連の四つの前後方向部材、車両の左手側の二つの部材12、14と車両の右手側の二つの部材16、18を具備してなる。それぞれ各側の部材は、さまざまなライザー要素20、22によって連結されており、そして、下側前後方向部材14、18は、対応する上側部材12、16と出会うように車の後部に向かって持ち上がっている。この立ち上がりプロファイルはまた、後方ランニングギアを収容するために車の後部にスペース24を作り出す。同様に、車の前部において、四つの前後方向部材の全ては、車のセンターラインに向かって内側にそれらを反らせ、前方ランニングギア用のスペース26を作り出すために湾曲部を含んでいる。
【0024】
前後方向部材12、14、16、18を正確な間隔で保持するために、28で示すもののような交差部材が備わるが、これは、前後方向部材部に対して取り付けられ、かつ、車両を横切って横方向に延在している。こうして管状フレーム構造体が実現されている。
【0025】
こうしたチューブは大径スチール(あるいはアルミニウム)薄壁チューブであり、これは、CNC(コンピューター数値制御)処理によって切断され曲げられている。チューブの端部は、一般に、CNCレーザー装置によってプロファイル加工でき、その後、CNC曲げおよびロボット溶接が行われる。この結果、シャーシのスチール構造体をチューブのセクションから作り出すことができるが、これらは長尺な幅狭ストリップから得られる。これは本質的に、単一の大きなスチールビレットを必要な形状へと鍛造されることを必要とする従来のプレススチールシャーシとは対照的に、スチール管形態となるように、生産し、曲げ、そして溶接するのが簡単である。素材の浪費ならびに管状フレームを形成し組み立てるのに必要なエネルギーは、それゆえ、対応するスチールプレスよりも非常に僅かである。
・・・
【0029】
図5ないし図8は、それに対してスチールロールフープ36が付加された、図1ないし図4のマルチ管状構造体を示している。上側前後方向部材38、40の対は、ロールフープ36から後方に延在しており、ストラット42、44によって支持されている。ロールフープ36は、前後方向部材12、16に対して予め溶接された一対のソケット46、48内に収容される。これは、ロールフープ36のための確実な位置決めをもたらす。側方部材38、40は、ロールフープから後方に延在しており、後方ボディパネルをマウントするための手段を提供する。この完成した管状フレーム構造体に対して、剛体面材50が続いて付加されるが、これは、図9ないし図14に示されている。
【0030】
剛体面材50は二つの主要な目的を有する。一つは、管状部材間で荷重を伝達することによってマルチ管状構造体を補強し、これによって構造体の剛性を全体として増大させ、そしてその耐衝撃性を改善することである。この目的のために、面材は、好適な剛体素材、たとえばスチール、アルミニウム、アルミニウムハニカム、および複合材から形成される。上述したように、さまざまな複合素材が使用可能であるが、これには、炭素繊維複合材、ケブラー(商標)繊維複合材、ガラス繊維複合材、および金属マトリックス複合材などのその他の複合素材が含まれる。特に好適な複合素材は、第1の素材からなるコアならびに第2の素材からなる被覆を具備してなるものである。好適なコアは紙ベース素材を含み、かつ、好適な被覆は繊維強化プラスチック素材を含む。
・・・
【0033】
面材の第2の目的は、管状部材間の開口を覆う内部構造体を車両に対して付与することである。それゆえ、面材は、車両の意図されたレイアウトにとって好都合な複雑な形状に従って成形される。車両の後部52から始まって、後方マウントエンジンコンパートメントの上でパーセルシェルフあるいは(この例では)積荷領域の床として機能する平坦パネル54が、続いて、後部シート乗員用の傾斜したシートバックレスト58を提供するために下向き湾曲56が存在する。後部シートクッション60を提供するために上方に再び湾曲した後、面材50の外側部分は、続いて、後部シート乗員用のフットウェル62を提供するために下方に湾曲する。中央部は、中央にマウントされるドライバーシートを支持するために隆起構造体64として前方に延在する。これは、フットウェル62の両側の垂直側方パネル66および後方シート58の両側の側方パネル68と共に、面材50に対して三次元の複雑な湾曲をもたらす。
【0034】
フレームワーク10の管状セクションに対応する位置70、72、74、76において面材50には凹部が形成されている。これらは、面材50が、フレームワーク10の部品の形状に従いかつ合致すること、そして、エポキシ樹脂などの好適な工業用接着剤によって、それに対して接合されることを可能とする。これによって、フレームワーク10と面材50と間で力を伝達することが可能となり、これによって、面材50がシャーシの剛性および耐衝撃性に対して寄与することが可能となる。
【0035】
図13ないし図16は、完全なシャーシを形成するためにフレームワーク10内に接地されかつそれに対して結合された面材50を示しているが、それに対してはロールフープ36が取り付けられている。面材50の凹部70、72、74、76は今やフレームワーク10のチューブの周囲で湾曲しており、そして、それに対してエンジン、ランニングギア、内外トリムなどを取り付けることができる単一の荷重支持構造体を面材50およびフレームワーク10が形成するように、関連するチューブに対して結合されている。」

(1e)引用例1には、以下の図が示されている。


(1-2)引用例1に記載された発明
ア 引用例1には、「車両用のシャーシ」(摘示(1b))に関し開示されているところ、その特許請求の範囲の請求項1?2、10、12、16には、「車両用のシャーシ」の構成について摘示(1a)のとおり記載されている。

イ また、摘示(1c)、(1d)及び図示(1e)によれば、摘示(1a)の「車両用のシャーシ」の実施の態様について、

a フレーム構造体10は、一連の四つの前後方向部材、車両の左手側の二つの部材12、14と車両の右手側の二つの部材16、18を具備してなるものであり、それぞれ各側の部材は、さまざまなライザー要素20、22によって連結されており(【0023】)、
前後方向部材12、14、16、18を正確な間隔で保持するために、28で示すもののような交差部材が備わるが、これは、前後方向部材部に対して取り付けられ、かつ、車両を横切って横方向に延在して、管状フレーム構造体が実現されており(【0024】)、
こうしたチューブは大径スチール(あるいはアルミニウム)薄壁チューブであり(【0025】)、
それに対してスチールロールフープ36が付加されてマルチ管状構造体が構成され、上側前後方向部材38、40の対は、ロールフープ36から後方に延在しており、ストラット42、44によって支持され、ロールフープ36は、前後方向部材12、16に対して予め溶接された一対のソケット46、48内に収容され、側方部材38、40は、ロールフープから後方に延在しており、後方ボディパネルをマウントするための手段を提供して、完成した管状フレーム構造体をなすものであり(【0029】)、完成した管状フレーム構造体に対して、剛体面材50が続いて付加され(【0029】)、
完全なシャーシを形成するために面材50はフレームワーク10内に接地されかつそれに対して結合される(【0035】)ものであって、
図1から、前後方向部材12又は16から、ライザー要素20、22が前後方向部材14又は18に向かう上下方向に延在し、交差部材28が前後方向部材16又は12に向かう上下方向とは非平行な車両を横切って横方向に延在しているといえることも踏まえると、

(1a)の「フレームワーク」は、図1、5、13に図番10で示される「フレーム構造体10」、「フレームワーク10」、及び「マルチ管状構造体」であり(「フレーム構造体10」、「フレームワーク10」、及び「マルチ管状構造体」は「フレームワーク10」として取り扱う)、
(1a)の「交差部材によって結合された前後方向部材」は「ライザー要素20、22及び交差部材28によって結合された前後方向部材12、14、16、18」であり、
(1a)の「少なくとも一つの前後方向部材を含み、そこから、少なくとも一つの交差部材が第2の前後方向部材に向かう第1の方向に延在して」いることは「前後方向部材14又は18を含み、そこから、ライザー要素20、22が前後方向部材12又は16に向かう上下方向に延在して」いることであり、
(1a)の「少なくとも一つのさらなる交差部材が第3の前後方向部材に向かう前記第1の方向とは非平行な第2の方向に延在しており、これによって三次元構造体が形成されている」ことは「交差部材28が第3の前後方向部材18又は14に向かう上下方向とは非平行な車両を横切って横方向に延在しており、これによって三次元構造体が形成されている」ことであること、

b 剛体面材50の目的の一つは、管状部材間で荷重を伝達することによってマルチ管状構造体を補強し、これによって構造体の剛性を全体として増大させ、そしてその耐衝撃性を改善することであり(【0030】)、
面材の第2の目的は、管状部材間の開口を覆う内部構造体を車両に対して付与することであり、車両の後部52から始まって、平坦パネル54が、続いて、下向き湾曲56が存在し、後部シートクッション60を提供し、後部シート乗員用のフットウェル62を提供し、中央部は、隆起構造体64として前方に延在し、フットウェル62の両側の垂直側方パネル66および後方シート58の両側の側方パネル68と共に、面材50に対して三次元の複雑な湾曲をもたらすものであり(【0033】)、
フレームワーク10の管状セクションに対応する位置において面材50には凹部70、72、74、76が形成され(【0034】)、面材50が、フレームワーク10の部品の形状に従いかつ合致し、工業用接着剤によって、それに対して接合され、フレームワーク10と面材50と間で力を伝達することが可能となり、これによって、面材50がシャーシの剛性および耐衝撃性に対して寄与することが可能となる(【0034】)ものであり、面材50は、完全なシャーシを形成するためにフレームワーク10内に接地されかつそれに対して結合され、面材50の凹部70、72、74、76は今やフレームワーク10のチューブの周囲で湾曲しており、単一の荷重支持構造体を面材50およびフレームワーク10が形成するように、関連するチューブに対して結合されている(【0035】)ものであり、面材はフレームワークの製造誤差に対応できるように、理想的には位置誤差を許容する方法によって結合された複数のセクションから構成されてもよいものであって(【0016】)、
図5、9、13から、面材50の凹部74、76がフレームワーク10におけるチューブに対して結合し、凹部74、76はフレームワーク10における前後方向部材12、14、16、18のチューブに対して結合されたものといえること、
【0033】及び図9から、凹部74、76は垂直側方パネル66の平板状部位の端部と一体であるとともに当該端部から延びることを総合すると、
(1a)の「面材」は、図9、13に図番50で示される「剛体面材50」、「面材」、及び「面材50」であること(「剛体面材50」、「面材」、及び「面材50」は「面材50」として取り扱う)、及び、
請求項1を引用する請求項16の「前記面材は複数のセクションから構成されること」との特定、請求項1を引用する請求項10の「前記面材は、第1の素材からなるコアならびに第2の素材からなる被覆を具備してなる複合材であ」るとの特定、及び、請求項10を引用する請求項12の「前記面材は複数のセクションから構成される」との特定も踏まえると、
(1a)の「少なくとも一つの面材であって、前記フレームワーク内へと延在する凹状断面を備えると共に、前記管状構造体の前記前後方向部材に対して結合された少なくとも一つの面材」は、「位置誤差を許容する方法によって結合された複数のセクションから構成される面材50であって、フレームワーク10内へと延在する凹状断面を備え、凹部70、72、74、76が形成されると共に、フレームワーク10の部品の形状に従いかつ合致し、工業用接着剤によって、それに対して接合され、凹部70、72、74、76は、フレームワーク10のチューブの周囲で湾曲しており、単一の荷重支持構造体を面材50およびフレームワーク10が形成するように、フレームワーク10におけるチューブに対して結合し、凹部74、76はフレームワーク10における前後方向部材12、14、16、18のチューブに対して結合され、垂直側方パネル66の平板状部位の端部と一体であるとともに当該端部から延びる、位置誤差を許容する方法によって結合された複数のセクションから構成される面材50」であること、及び、
(1a)の「面材」は、「第1の素材からなるコアならびに第2の素材からなる被覆を具備してなる複合材であり、前記被覆は繊維強化プラスチック材である」こと、

が理解できる。

以上によれば、摘示(1a)の「車両用のシャーシ」に着目すると、引用例1には、
「車両用のシャーシであって、
ライザー要素20、22及び交差部材28によって結合された前後方向部材12、14、16、18を有する相互接続された管状セクションのフレームワーク10であって、前後方向部材14又は18を含み、そこから、ライザー要素20、22が前後方向部材12又は16に向かう上下方向に延在しており、かつ、交差部材28が第3の前後方向部材18又は14に向かう上下方向とは非平行な車両を横切って横方向に延在しており、これによって三次元構造体が形成されているフレームワーク10と、
位置誤差を許容する方法によって結合された複数のセクションから構成される面材50であって、フレームワーク10内へと延在する凹状断面を備え、凹部70、72、74、76が形成されると共に、フレームワーク10の部品の形状に従いかつ合致し、工業用接着剤によって、それに対して接合され、凹部70、72、74、76は、フレームワーク10のチューブの周囲で湾曲しており、単一の荷重支持構造体を面材50およびフレームワーク10が形成するように、フレームワーク10におけるチューブに対して結合し、凹部74、76はフレームワーク10における前後方向部材12、14、16、18のチューブに対して結合され、垂直側方パネル66の平板状部位の端部と一体であるとともに当該端部から延びる、位置誤差を許容する方法によって結合された複数のセクションから構成される面材50と、
を具備してなるものであって、
前記管状セクションは金属製であるとともに、
前記面材50は、第1の素材からなるコアならびに第2の素材からなる被覆を具備してなる複合材であり、前記被覆は繊維強化プラスチック材である、
車両用のシャーシ」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)引用例2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として示され、本願の出願前に頒布された特開2006-328945号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2a)「【0001】
本発明は、ブーム、アーム、バケットなどからなる作業機、および本体より立設された柱にルーフを取り付けた形状のキャノピを備える掘削作業車の技術に関する。」

(2b)「【0003】
このような掘削作業車のキャノピを設計する際には、以下の点が重要である。キャノピが振動しやすい構造だと、例えば走行中の振動が大きかったり、ルーフに溜まった雨水が飛散したり、あるいは振動音が大きいなど、オペレータが不快に感ずる。このような振動を防止するためには、キャノピのルーフを支持する柱の強度や材質、配置、本数などの他、柱に取り付けられる壁板や屋根板材とフレームとの接合部の処理、さらに、ルーフを着脱式にした場合、該着脱部における部材間の接触・固定方法についても考慮する必要がある。
【0004】
また、ルーフを着脱式にした場合、着脱作業が容易であること、外したルーフの収納性、ルーフを外した状態における安全性等も考慮する必要がある。」

(2c)「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の一形態である超小旋回作業車の左側面図、図2は本発明の実施の一形態である超小旋回作業車の正面図、図3は本発明の実施の一形態である超小旋回作業車の平面図、図4は作業機の左側面図。図5はキャノピを左前方から見た斜視図、図6はキャノピを右後方から見た斜視図、図7はキャノピの正面図、図8はキャノピの左側面図、図9はキャノピの後面図、図10はキャノピの右側面図、図11はキャノピの平面図。図12は従来のキャノピにおけるルーフ板材固定方法を示す模式図、図13は本発明の実施の一形態であるキャノピにおけるルーフ板材固定方法を示す模式図、図14は左後部支柱の縦断面図。図15は左後部支柱の連結部の構成を示す模式図、図16はルーフの左側面図、図17はルーフと支柱部との接続部位の平面断面図、図18はルーフと支柱部との接続部位の縦断面図、図19は従来のルーフと支柱部との接続部位の構成を示す模式図である。
【0011】
まず、図1から図3を用いて、本発明における掘削作業車の実施の一形態である超小旋回作業車1の全体構成について説明する。なお、本発明は作業機およびキャノピを備える掘削作業車に適用可能であって、本実施例である超小旋回作業車に限定されるものではない。
【0012】
超小旋回作業車1は、クローラ式走行装置2の上部略中央に旋回台軸受3を配置し、該旋回台軸受3により旋回台4を左右旋回可能に軸受支持している。また、クローラ式走行装置2の前後一端部(図1に示す実施例においては後端部)には、排土板5が上下回動可能に配設される。
【0013】
旋回台4の上方には、図示せぬエンジンや燃料タンクなどを被覆するボンネット6および座席7が配設され、該座席7の上方にはキャノピ(8)が設けられる。該キャノピ8の構成については後で詳述する。
・・・
【0021】
次に、本発明の要部であるキャノピの構成について、図5から図19を用いて説明する。
図2および図3に示すように、キャノピ8は旋回台4上(座席7)の進行方向右側から座席7上方を覆うように配置され、該キャノピ8の右前方にブームブラケット9を配置して、該ブームブラケット9に作業機10が上下回動可能に枢支される。従って、作業機10は、キャノピ8の右側面に沿って上下回動するように構成されている。更に、第三ブーム19より先端側は左右に平行移動可能であるため、ブームを後方へ回動した収納位置においては、キャノピ8と第二ブーム18やシリンダ等が干渉するので、キャノピ8左上部には斜面と凹部が形成されている。
・・・
【0023】
本実施例におけるキャノピ8は、着脱式のルーフ60と、三本の支柱である右前部支柱62、右後部支柱63および左後部支柱64を備える支柱部61とで構成される。本実施例において、右前部支柱62および右後部支柱63は座席7に対して右側、すなわち作業機側に配置される。そして、本実施例において、左後部支柱64は座席7に対して左側かつ後方、すなわち乗降側後方に配置され、それぞれ旋回台4上に固定される。
・・・
【0025】
ルーフ60は、パイプを曲げて正面視略L字型、側面視門型に成形したルーフフレーム(65)に、正面視略L字型で、樹脂材料や金属材料からなる一体成型のルーフ板材66を取り付けたものである。
【0026】
図12に示すように、従来のルーフ112は、ルーフ板材113をルーフフレーム114へ取り付ける際に、ルーフフレーム114よりステー115を突設し、該ステー115とルーフ板材113とが重なる部分においてルーフ板材113およびステー115に孔を穿設し、該孔を用いてボルト116、ナット117および座金118により締結していた。しかし、この方法では組み立て工数・部品点数とも多くなり、製造コストが増大する。また、ステー115やルーフフレーム114とルーフ板材113とが接触する部位で振動音が発生し易いため、場合によってはゴム板などの弾性材料からなる制振部材を介装する必要があった。
【0027】
一方、本実施例のキャノピ8では、図13に示すように、ルーフ板材66の端部66aはルーフフレーム65の上曲面に沿って載置可能に曲げ加工される。そして、ルーフ板材66の端部66aとルーフフレーム65との接触部位に接着剤67が塗布されることにより固定される。該接着剤は接着とシール(雨水を隙間から透過させない)を兼ねるとともに、硬化後も弾性を有しており制振効果がある。本実施例においては、該接着剤としてポリウレタン系の二成分系接着剤を用いたが、ポリウレタン系の一成分系接着剤でもよく、前述の効果を有する接着材であれば他の接着剤でも良い。
【0028】
このように構成することにより、前記接着剤67はルーフフレーム65とルーフ板材66との固定手段であり、雨水などがルーフ60上面よりオペレータ側に浸透するのを防止するシール材であるとともに、ルーフフレーム65とルーフ板材66との間で発生する振動を吸収する制振部材の機能をも果たす。従って、図12におけるステー115やボルト116、制振部材などを省略することが可能であるとともに、組み立て時の作業性も優れている。また、ルーフ板材66の端部66aはルーフフレーム65に沿うように形成されていることから、断面が円形のフレームなどと接着する際にも接着面積が広く、接着部位の密着が容易で強度が高い。そして、端部66aの曲げ加工はルーフ板材66の成型時に合わせて行われるので、組み立て工数が増加せず、コスト削減に寄与する。さらに、接着部67は、仮にルーフフレーム65に外力が加わって少し撓んだ場合でも、その変形量をある程度までは弾性的に吸収可能である。その結果、従来のルーフ112のようなボルト締結部(ボルト116、ナット117、座金118によりルーフフレーム114にルーフ板材113を固定している部位)に比べて、ルーフ板材113の変形・破損を低減することが可能である。」

(2d)引用例2には、以下の図が示されている。


(3)引用例3の記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献である引用文献4として示され、本願の出願前に頒布された特開2008-296556号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(3a)「【0001】
本発明は、第1及び第2の被着部材が、該両被着部材にそれぞれ延設された被着接合部にて連鎖硬化接着剤により互いに接合されてなる接着接合部材及び該部材の製造方法に関する技術分野に属する。」
(3b)「【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1及び第2の被着部材を連鎖硬化接着剤により互いに接合する場合に、その連鎖硬化接着剤の連鎖硬化反応が途中で止まらないようにして、連鎖硬化接着剤全体を確実に硬化させるようにすることにある。」
(3c)「【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る接着接合部材1を示し、この接着接合部材1は、第1及び第2の被着部材2、3が接着剤(後述の連鎖硬化接着剤)により互いに接合されてなるものである。本実施形態では、第1の被着部材2は、鋼やアルミニウムからなる金属製の車体アウタパネルであり、第2の被着部材3は、鋼やアルミニウムからなる金属製の車体インナパネルであり、これら両被着部材2、3が互いに接合されてなる接着接合部材1は、車両(自動車等)の車体の一部を構成していて、両被着部材2、3の長さ方向に連続して延びる閉断面部4を有している。尚、両被着部材2、3の少なくとも一方が樹脂製であってもよい。
・・・
【0039】
次に、上記接着接合部材1を製造する方法を、図3及び図4に基づいて説明する。
【0040】
先ず、上記の如くフランジ部2b、3bや凹状部5等を形成した第1及び第2の被着部材2、3を用意し、図3(a)に示すように、第2の被着部材3を支持台15にセットする。このとき、第2の被着部材3のフランジ部3bの合わせ面は上方を向いており、該合わせ面とは反対側面が、支持台15の基部15aから上方に突出した支持部15bの上面に当接している。
【0041】
そして、上記第2の被着部材3のフランジ部3bの合わせ面において第1の被着部材2のフランジ部2bの凹状部5に対応する部分(第1の被着部材2のフランジ部2bの合わせ面と合わせたときに、該フランジ部2bの凹状部5と対向する部分、つまりフランジ部3bの幅方向中央部)に、第1及び第2の連鎖硬化接着剤8、9(本実施形態では、両者は同じであるため互いに区別することはできない)を被着接合部延設方向に沿って連続して塗布する。この塗布は、例えば、ロボットによって一定速度でフランジ部3b長さ方向に沿って移動するように構成されたノズルから接着剤を連続して吐出することで行い、両連鎖硬化接着剤8、9をフランジ部3b長さ方向全体に亘って塗布する。この塗布された連鎖硬化接着剤8、9の最大高さは、上記隙間量に凹状部5の深さを加えた値よりも大きい。
【0042】
続いて、図3(b)に示すように、第1及び第2の被着部材2、3におけるフランジ部2b、3bの合わせ面同士(被着接合部6、7同士)を合わせ、その後、フランジ部2b、3bをクランプ手段16のクランプ部材16aによりクランプする。すなわち、クランプ部材16aによりフランジ部2b、3bを上記支持部15bに押圧する。このとき、両被着部材2、3の被着接合部6、7間の隙間量が上記所定値になるように、例えば、第1及び第2の被着部材2、3に、互いに当接する当接部を設けておくようにする。尚、本実施形態では、上記クランプ部材16aはフランジ部2bにおける上記ビードの突出先端部(開口部11を除く部分)に当接させて押圧する。このように押圧しても、フランジ部2bの剛性がビードにより高くなっているために、フランジ部2bが撓まず、被着接合部延設方向全体に亘って、被着接合部6、7間の隙間量を上記所定値に維持することができる。
【0043】
上記フランジ部2b、3bの合わせ面同士を合わせる際、図4(a)?(d)に示すように、上記両連鎖硬化接着剤8、9の一部を上記両被着部材2、3の被着接合部6、7間に流入させる。すなわち、第1の被着部材2を、第2の被着部材3の上側から下げていくと、第1の被着部材2のフランジ部2bの凹状部5に両連鎖硬化接着剤8、9が配置され、更に第1の被着部材2を下げていくと、連鎖硬化接着剤8、9の一部が両被着部材2、3の被着接合部6、7間に流入する。このように被着接合部6、7間に流入したものが第1の連鎖硬化接着剤8となり、凹状部5に配置されたものは第2の連鎖硬化接着剤9ということになる。この第2の連鎖硬化接着剤9は、第1の連鎖硬化接着剤8の被着接合部延設方向全体に接触していることになる。また、凹状部5の凹みにより、第2の連鎖硬化接着剤9の被着接合部延設方向の単位長さ当たりの容量が、第1の連鎖硬化接着剤8の被着接合部延設方向の単位長さ当たりの容量よりも多くなる。尚、フランジ部2b、3bの合わせ面同士を合わせる際には、閉塞部材で上記開口部11を閉塞しておくことが好ましい。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ライザー要素20、22及び交差部材28」及び「前後方向部材12、14、16、18」は、「フレームワーク10」の「管状セクション」を構成し、「前記管状セクションは金属製である」から、本願補正発明の「筒状断面の金属部材」に相当する。
そして、「ライザー要素20、22及び交差部材28によって結合された前後方向部材12、14、16、18を有する相互接続された管状セクションのフレームワーク10であって、前後方向部材14又は18を含み、そこから、ライザー要素20、22が前後方向部材12又は16に向かう上下方向に延在しており、かつ、交差部材28が第3の前後方向部材18又は14に向かう上下方向とは非平行な車両を横切って横方向に延在しており、これによって三次元構造体が形成されているフレームワーク10」は、すなわち、「前後方向部材12、14、16、18」が「ライザー要素20、22及び交差部材28によって結合された」ものであるから、本願補正発明の「筒状断面の金属部材が互いに接続された骨格」に相当する。

(2)引用発明の「面材50」は、「第1の素材からなるコアならびに第2の素材からなる被覆を具備してなる複合材であり、前記被覆は繊維強化プラスチック材である」から、繊維補強され、かつ、耐荷重性を有するということができ、「位置誤差を許容する方法によって結合された複数のセクションから構成される」ことも踏まえると、「繊維補強され、かつ、耐荷重性を有する複数の複合パネル」に相当する。

(3)引用発明の「面材50」が「フレームワーク10の部品の形状に従いかつ合致」するものであり、「凹部70、72、74、76は、フレームワーク10のチューブの周囲で湾曲して」いることを踏まえると、引用発明の「凹部74、76」は、前後方向部材12、14、16、18のチューブの周囲で湾曲するアーチ状の構造であって、前後方向部材12、14、16、18のチューブの外側に適合するものといえるから、本願補正発明の「金属部材の外側に適合する」「アーチ構造」に相当する。また、引用発明の「垂直側方パネル66の平板状部位の端部と一体であるとともに当該端部から延びる」ことは、本願補正発明の「前記複合パネルの平板部分の端部と一体であると共に当該端部から延びる」ことに相当する。そして、上記(1)及び(2)も踏まえると、引用発明の「凹部74、76はフレームワーク10における前後方向部材12、14、16、18のチューブに対して結合され」ることは、本願補正発明の「前記複合パネルと前記金属部材との間の結合のうちの少なくとも1つの結合が、」「アーチ構造によって形成され」ることに相当する。
そして、引用発明の「複数のセクションから構成される面材50」が、「凹部70、72、74、76が形成されると共に、フレームワーク10の部品の形状に従いかつ合致し、工業用接着剤によって、それに対して接合され」ることは、上記(1)も踏まえると、本願補正発明の「前記複合パネルの各々が複数の前記金属部材に接着的に結合され」ることに相当する。

(4)引用発明の「凹部74、76」は「フレームワーク10の部品」である「前後方向部材12、14、16、18」に対して「工業用接着剤によって」「接合され」るものといえるから、「凹部74、76」と「前後方向部材12、14、16、18」との間に沿った接着剤層を有することは技術的に明らかであるから、引用発明の「凹部」「74、76が形成されると共に、フレームワーク10の部品の形状に従いかつ合致し、工業用接着剤によって、それに対して接合され」ることと、本願補正発明の「それらの間のギャップに沿った接着剤層を有する」こととは、「それらの間に沿った接着剤層を有する」ことにおいて共通する。

(5)引用発明の「車両用のシャーシ」は、本願補正発明の「車両シャーシ」に相当する。

以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「筒状断面の金属部材が互いに接続された骨格と、
繊維補強され、かつ、耐荷重性を有する複数の複合パネルであって、
前記複合パネルの各々が複数の前記金属部材に接着的に結合され、
前記複合パネルと前記金属部材との間の結合のうちの少なくとも1つの結合が、前記複合パネルの平板部分の端部と一体であると共に当該端部から延びるアーチ構造によって形成され、かつ、前記少なくとも1つの結合が前記金属部材の外側に適合する前記アーチ構造によって形成される、前記複合パネルと、
それらの間に沿った接着剤層を有する、
車両シャーシ」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
「接着剤層」に関し、本願補正発明では、「それらの間のギャップに沿った」ものであり、「実質的に前記平板部分の端部から延びると共に、前記アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延び」、「前記金属部材及び前記アーチ構造が所定位置へと配置されることにより前記アーチ構造によって前記金属部材の角度範囲の一部にわたって押し広げられたものであり、前記金属部材と前記アーチ構造との間における前記アーチ構造の前記角度範囲の残部が空隙とされた」ものであるのに対して、引用発明の接着剤層がそのようであるか不明である点。

4 判断
(1)相違点について
ア 本願補正発明の「接着剤層」の奏する効果について
(ア)本願の願書に添付された明細書(以下「本願明細書」という。)の【0003】には、複合パネルと管状骨格との間に接着剤を供給する必要がある。・・・パネルと菅の間の結合が、管の外側表面のアーチに沿っていることが必要となる。この結合はシャーシ全体の機械的強度の重要な部分であるため、この結合の信頼性及び強度の向上は有用である」との記載があり、「複合パネルと管状骨格との間の結合の信頼性及び強度の向上」との本願補正発明の課題が記載されているといえる。

イ 引用例2に記載された技術事項について
引用例2には、「掘削作業車」に関する技術について開示されており(摘示(2a))、具体的には、摘示(2b)のとおり、「掘削作業車のキャノピを設計する際には、」「走行中の振動が大きかったり、ルーフに溜まった雨水が飛散したり、あるいは振動音が大きいなど、オペレータが不快に感」じ、「このような振動を防止するためには、キャノピのルーフを支持する柱の強度や材質、配置、本数などの他、柱に取り付けられる壁板や屋根板材とフレームとの接合部の処理、さらに、ルーフを着脱式にした場合、該着脱部における部材間の接触・固定方法についても考慮する必要があ」り、「ルーフを着脱式にした場合、着脱作業が容易であること、外したルーフの収納性、ルーフを外した状態における安全性等も考慮する必要がある」こと(【0003】、【0004】)との課題を解決するために、
摘示(2c)のとおり、「掘削作業車の実施の一形態である超小旋回作業車1」について(【0011】)、
「超小旋回作業車1は、クローラ式走行装置2の上部略中央に旋回台軸受3を配置し、該旋回台軸受3により旋回台4を左右旋回可能に軸受支持して」おり(【0012】)、
「旋回台4の上方には、・・・座席7が配設され、該座席7の上方にはキャノピ(8)が設けられ」ること(【0013】)、
「キャノピ8は、着脱式のルーフ60と、三本の支柱である右前部支柱62、右後部支柱63および左後部支柱64を備える支柱部61とで構成され」ること(【0023】)、
「ルーフ60は、パイプを曲げて正面視略L字型、側面視門型に成形したルーフフレーム(65)に、正面視略L字型で、樹脂材料や金属材料からなる一体成型のルーフ板材66を取り付けたものである」こと(【0025】)、「ルーフ板材66の端部66aはルーフフレーム65の上曲面に沿って載置可能に曲げ加工され・・・ルーフ板材66の端部66aとルーフフレーム65との接触部位に接着剤67が塗布されることにより固定され・・・該接着剤は接着とシール(雨水を隙間から透過させない)を兼ねるとともに、硬化後も弾性を有しており制振効果がある」こと(【0027】)、「ルーフ板材66の端部66aはルーフフレーム65に沿うように形成されていることから、断面が円形のフレームなどと接着する際にも接着面積が広く、接着部位の密着が容易で強度が高い」こと(【0028】)、が記載されるとともに、
図示(2d)に示す図13には、ルーフ板材66とルーフフレーム65との間の結合がルーフ板材66の平板状部分の端と一体であると共に当該端から延びる端部66aによって形成されるルーフ板材66を有し、ルーフフレーム65とルーフ板材66との間のギャップに沿った接着剤67の層であって、実質的にルーフ板材66の平板状部分の端から延びると共に、端部66aの角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる接着剤67の層を有し、ルーフフレーム65と端部66aとの間における端部66aの角度範囲の残部に接着剤を設けないこと、が示されている。
ここで、引用例2の「超小旋回作業車1」は本願補正発明の「車両」に相当し、引用例2の「ルーフフレーム65」は「パイプ」を「成形した」ものであるから、引用例2の「ルーフフレーム65」と本願補正発明の「筒状断面の金属部材が互いに接続された骨格」とは「筒状断面の骨格」である点で共通する。引用例2の「ルーフ板材66」と本願補正発明の「複合パネル」とは「パネル」において共通する。引用例2の「ルーフ板材66の端部66aとルーフフレーム65との接触部位に接着剤67が塗布されることにより固定され」るものであることと、本件補正発明の「複合パネルが複数の前記金属部材に接着的に結合される」こととは、「パネルが骨格の構成部材に接着的に結合される」ことにおいて共通する。
さらに、引用例2の「ルーフフレーム65の上曲面に沿って載置可能に曲げ加工され」る「端部66a」と、本願補正発明の「前記金属部材の外側に適合するアーチ構造」とは、「骨格の構成部材の外側に適合するアーチ構造」であることにおいて共通し、引用例2の「ルーフ板材66」は「ルーフ板材66とルーフフレーム65との間の結合がルーフ板材66の平板状部分の端と一体であると共に当該端から延びる端部66aによって形成される」ことと、本願補正発明の「前記複合パネル」は「前記複合パネルと前記金属部材との間の結合のうちの少なくとも1つの結合が、前記複合パネルの平板部分の端部と一体であると共に当該端部から延びるアーチ構造によって形成され、かつ、前記少なくとも1つの結合が前記金属部材の外側に適合する前記アーチ構造によって形成され」ることとは、「パネル」は「パネルと骨格の構成部材との間の結合が、パネルの平板部分の端部と一体であると共に当該端部から延びるアーチ構造によって形成され」ることにおいて共通する。
そして、引用例2の「ルーフフレーム65とルーフ板材66との間のギャップに沿った接着剤67の層であって、実質的にルーフ板材66の平板状部分の端から延びると共に、端部66aの角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる接着剤67の層を有し、ルーフフレーム65と端部66aとの間における端部66aの角度範囲の残部に接着剤を設けないこと」と、本願補正発明の「それらの間のギャップに沿った接着剤層であって、実質的に前記平板部分の端部から延びると共に、前記アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる接着剤層と、を有し」、「前記金属部材と前記アーチ構造との間における前記アーチ構造の前記角度範囲の残部が空隙とされた」こととは、「それらの間のギャップに沿った接着剤層であって、実質的に平板部分の端部から延びると共に、アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる接着剤層を有し、骨格の構成部材と前記アーチ構造との間における前記アーチ構造の前記角度範囲の残部に接着剤層を設けないこと」において共通する。
そうすると、引用例2は、「車両」に関して、本願補正発明の表現に倣うと、「筒状断面の骨格と、パネルであって、パネルが骨格の構成部材に接着的に結合され、パネルと骨格の構成部材との間の結合が、パネルの平板部分の端部と一体であると共に当該端部から延びるアーチ構造によって形成され、かつ、前記結合が骨格の構成部材の外側に適合するアーチ構造によって形成される、パネルと、それらの間のギャップに沿った接着剤層であって、実質的に平板部分の端部から延びると共に、アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる接着剤層と、を有し、骨格の構成部材と前記アーチ構造との間における前記アーチ構造の前記角度範囲の残部に接着剤層を設けないこと(以下、「引用例2に記載された技術事項」という。)が記載されており、当該接着剤層の配置は、上記相違点に係る本願補正発明と共通したものといえる。

ウ 周知技術Aについて
上記「2(3)」に示す摘示(3a)?(3c)から、引用例3には、以下の事項が認定できる。
「第1及び第2の被着部材が、該両被着部材にそれぞれ延設された被着接合部にて連鎖硬化接着剤により互いに接合されてなる接着接合部材において、
両被着部材2、3が互いに接合されてなる接着接合部材1は、車両(自動車等)の車体の一部を構成し、
上記接着接合部材1を製造するに際し、フランジ部2b、3bや凹状部5等を形成した第1及び第2の被着部材2、3を用意し、第2の被着部材3を支持台15にセットし、上記第2の被着部材3のフランジ部3bの合わせ面において第1の被着部材2のフランジ部2bの凹状部5に対応する部分(第1の被着部材2のフランジ部2bの合わせ面と合わせたときに、該フランジ部2bの凹状部5と対向する部分、つまりフランジ部3bの幅方向中央部)に、第1及び第2の連鎖硬化接着剤8、9(本実施形態では、両者は同じであるため互いに区別することはできない)を被着接合部延設方向に沿って連続して塗布し、
塗布された連鎖硬化接着剤8、9の最大高さは、上記隙間量に凹状部5の深さを加えた値よりも大きく、
続いて、クランプ部材16aによりフランジ部2b、3bを上記支持部15bに押圧し、両被着部材2、3の被着接合部6、7間の隙間量が上記所定値になるようにし、
第1の被着部材2を、第2の被着部材3の上側から下げていくと、第1の被着部材2のフランジ部2bの凹状部5に両連鎖硬化接着剤8、9が配置され、更に第1の被着部材2を下げていくと、連鎖硬化接着剤8、9の一部が両被着部材2、3の被着接合部6、7間に流入すること」(以下「引用例3に記載の事項」ということもある。)。
引用例3に記載の事項からもいえるように、第1及び第2の被着部材が互いに接合されてなる接着接合部材において、接着剤(両連鎖硬化接着剤8、9)の構成する接着剤層の一部が、第1及び第2の被着部材が所定位置へと配置されることにより、第1及び第2の被着部材の接合部間(被着接合部6、7間)に流入すること、すなわち、第1の被着部材によって接合部間に押し広げられることは従来周知の技術である(以下、「周知技術A」という。)

エ 引用発明の解決しようとする課題について
引用発明の解決しようとする課題には、上記「2(1)(1-1)(1b)」の引用例1【0010】に示すように、「必要な剛性」を持つ「車両用のシャーシを提供する」ことが含まれ、引用発明の「凹部74、76」と「前後方向部材12、14、16、18」との間に沿って有することが技術的に明らかである「接着剤層」は、同引用例1【0034】の「面材50が、フレームワーク10の部品の形状に従いかつ合致すること、そして、エポキシ樹脂などの好適な工業用接着剤によって、それに対して接合されることを可能とする。これによって、フレームワーク10と面材50と間で力を伝達することが可能となり、これによって、面材50がシャーシの剛性および耐衝撃性に対して寄与することが可能となる。」との記載を踏まえると、少なくとも、当該「必要な剛性」を持つ「車両用のシャーシを提供する」との課題を解決する作用を奏するものといえる。

オ 上記相違点に係る本願補正発明の構成の容易想到性について
(ア)上記エに示したように引用発明において当該「必要な剛性」を持つ「車両用のシャーシを提供する」との課題を解決するよう「接着剤層」を設けるに際し、接着が十分に行われる程度の分量の接着剤を用いて接着剤層を構成することは、当業者であれば当然なすべき事項といえる。
ここで、引用発明と引用例2に記載された技術事項は共に「車両」に関する技術であり、また、「筒状断面の骨格と、パネルであって、パネルが骨格の構成部材に接着的に結合され、パネルと骨格の構成部材との間の結合が、パネルの平板部分の端部と一体であると共に当該端部から延びるアーチ構造によって形成され、かつ、前記結合が骨格の構成部材の外側に適合するアーチ構造によって形成される、パネルと、それらの間に沿った接着剤層を有する」点で構造的に共通点を有するものである。さらに、引用発明の課題及び作用には上記エに示すように「必要な剛性」を持つ「車両用のシャーシを提供する」ことが含まれ、引用例2の摘示(2c)【0028】には、「ルーフ板材66の端部66aはルーフフレーム65に沿うように形成されていることから、断面が円形のフレームなどと接着する際にも接着面積が広く、接着部位の密着が容易で強度が高い」と記載されている。そうすると、引用発明と引用例2に記載された技術事項とは、剛性の確保という点で課題及び作用の共通点を有する。してみれば、「必要な剛性」を持つ「車両用のシャーシを提供する」との課題を備えた引用発明の接着を引用例2に記載された技術事項で具現化し、「凹部74、76」と「前後方向部材12、14、16、18」の間のギャップに沿った接着剤層であって、前記「凹部74、76」の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる接着剤層と、を有し、「前記金属部材と前記アーチ構造との間における前記アーチ構造の前記角度範囲の残部」に接着剤層を設けないよう構成することは、当業者が容易に想到し得た事項といえる。
そして、上記イに示す引用例2に記載された技術事項も踏まえると、接着剤層を「凹部74、76」の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延び、角度範囲の残部に接着剤層を設けないものとすることは、接着剤の接着が十分に行われる範囲において当業者が適宜に選択し得た事項であり、その結果として「凹部74、76」の角度範囲の残部に接着剤層を設けない領域は、空隙とされるものといえる。

(イ)上記イに示すように、引用例2に記載された技術事項は、本願補正発明の接着剤層の配置と同様に、「前記アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる」「接着剤層」が「実質的に前記平板部分の端部から延びる」ものである。
そして、上記(ア)に示したように、引用発明に引用例2に記載された技術事項を適用する動機付けが存在することを踏まえると、引用発明において、引用例2に記載された「前記アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる」「接着剤層」が「実質的に前記平板部分の端部から延びる」との事項の配置を参考に、「前記アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる」接着剤層が「実質的に前記平板部分の端部から延びる」よう構成することは、当業者が適宜なし得た事項といえる。

(ウ)引用発明と周知技術Aとは、車体の一部の接着に関する技術である点で共通するものであるから、引用発明において、周知技術Aを参考として、接着剤層が、前後方向部材12、14、16、18及び凹部74、76が所定位置へと配置されることにより凹部74、76によって前後方向部材12、14、16、18の角度範囲の一部にわたって押し広げられたものとすることは、当業者が適宜になし得ることである。

(エ)まとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成を具備させることは、引用例2に記載された技術事項及び周知技術Aに基いて当業者が容易になし得た事項である。

(2)本願補正発明の作用効果の予測可能性について
上記「(1)オ」に示したように、引用発明において当該「必要な剛性」を持つ「車両用のシャーシを提供する」との課題を解決するよう「接着剤層」を設けるに際し、接着が十分に行われる程度の分量の接着剤を用いて接着剤層を構成することは、当業者であれば当然なすべき事項といえる。
また、引用発明の接着を引用例2に記載された技術事項で具現化し、「凹部74、76」と「前後方向部材12、14、16、18」の間のギャップに沿った接着剤層であって、前記「凹部74、76」の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる接着剤層と、を有し、「前記金属部材と前記アーチ構造との間における前記アーチ構造の前記角度範囲の残部」に接着剤層を設けず、結果として残部に接着剤層を設けない領域は、空隙とされるとの構成により、当該構成の空隙が接着剤のはみ出しが抑制されることも、当業者であれば技術的に明らかである。
そうすると、本願補正発明の作用効果は、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術Aから当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

(3)請求人の主張の検討
ア 請求人は、平成31年2月28日付け手続補正書(方式)の「(d)本願発明と引用発明との対比」の項において、以下主張し、当業者が引用例1(引用文献1)と引用例2(引用文献2)とを組み合わせることに蓋然性はなく、また、上記拒絶理由通知書において引用されている引用文献のいずれにも、本願補正発明が奏する、当業者が予期し得ない顕著な効果は、開示、示唆されていないから、本願請求項1は、進歩性が否定され得るものではなく、拒絶理由を有するものではない旨主張している。

「本願発明においては、接着剤層は、アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びている。すなわち、金属部材とアーチ構造との間におけるアーチ構造の前記角度範囲の残部が空隙とされている。これは、本願当初明細書翻訳文の段落[0029]?[0033]等で教示されているように、接着剤の量を、接合強度を確保しつつ、はみ出しを抑制すべく調節した結果である。引用文献2や、その他の引用文献には、このような開示、示唆は存在しない。」(以下「主張1」ということもある。)

「引用文献2には、図13に示されているように、ルーフ部材66の端部66aの先端には、キャップ状の部材が存在している。この部材は、接着剤67の充填を抑制していることからも明らかなように、引用文献2においては、接合強度を確保しつつ、はみ出しを抑制すべく接着剤の量を調節するという技術的思想は存在し得ない。」(以下「主張2」ということもある。)

「引用文献1や本願発明1、本願発明2においては、複合パネル(又は複合部材)が、繊維補強され、かつ、耐荷重性を有するものである一方で、引用文献2に開示のルーフ板材66については、そのような補強構造に関して何も開示、示唆されていない。これらのことから、当業者が、車両シャーシにおける金属部材(フレーム)と複合パネルとの間の接着構造に、引用文献2に開示のような構造を採用しようとする動機は存在し得ないものと、出願人は思料する。また、キャノピのルーフフレームとルーフ板材との間の接着構造を、車両シャーシにおける金属部材(フレーム)と複合パネルとの間の接着構造に応用しようとする動機も存在し得ないものと、出願人は思料する。」(以下「主張3」ということもある。)

「本願発明1及び本願発明2においては、金属部材及びアーチ構造が所定位置へと配置され、接着剤が押圧されることにより、接着剤がアーチ構造によって金属部材の角度範囲の一部にわたって押し広げられた接着材層が形成される。このとき、接着剤は、接合状態の金属部材と複合パネルの間の空間(すき間)の高さよりも、高さ(所定の高さ)が大きい(高い)ビードとして配置される。そして、この接着剤のビードを金属部材及び複合パネルの間で押し広げることにより、車両シャーシとしても耐え得る極めて強固な接着が実現される。このような効果は、引用文献1、引用文献2、又は他の引用文献にも、開示、示唆されていない。
また、本願発明1及び本願発明2においては、部材どうしの間で接着剤を押し広げることにより、部材間の空間の高さの誤差を吸収できるという効果も期待できるものである。部材間の空間の高さが、設計値よりも大きい(高い)場合であっても、ビードが形成される高さ(所定の高さ)が十分高ければ、部材間の十分な接着を良好に維持することができる。また、部材間の空間の高さが、設計値よりも小さい(低い)場合であっても、接着剤層が、金属部材の角度範囲の一部にのみ押し広げられるように設計されているため、部材間の隙間で接着剤が更に押し広げられる空間があり、隙間から接着剤がはみ出ることを抑制することができることになる。隙間から接着剤がはみ出してしまうと、作業場の様々な物が付着してしまう問題が起こることがあり、外見も損なわれることがある。」(以下「主張4」ということもある。)

イ 検討
(ア)主張1、2、4について
上記(2)に示すとおり、本願補正発明の作用効果は、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術Aから当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえないから、請求人の主張1、2、4は採用できない。

(イ)主張3について
上記「(1)オ」に示したとおり、引用発明と引用例2に記載された技術事項とは、「車両において、筒状断面の骨格と、パネルであって、パネルが骨格の部材に接着的に結合され、パネルと部材との間の結合が、パネルの平板部分の端部と一体であると共に当該端部から延びるアーチ構造によって形成され、かつ、前記結合が部材の外側に適合するアーチ構造によって形成される、パネルと、それらの間に沿った接着剤層を有する」点で構造的に共通点を有しており、さらに、引用発明の課題及び作用には上記エに示すように「必要な剛性」を持つ「車両用のシャーシを提供する」ことが含まれ、引用例2の摘示(2c)【0028】には、「ルーフ板材66の端部66aはルーフフレーム65に沿うように形成されていることから、断面が円形のフレームなどと接着する際にも接着面積が広く、接着部位の密着が容易で強度が高い」と記載されているから、引用発明と引用例2に記載された技術事項とは、剛性の確保という点で課題及び作用の共通点を有するところ、引用発明において引用例2に記載された技術事項を参考とする動機付けが存在するといえるから、請求人の主張3は採用できない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術事項及び周知技術(引用例3に記載された技術事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
筒状断面の金属部材が互いに接続された骨格と、
繊維補強され、かつ、耐荷重性を有する複数の複合パネルであって、
前記複合パネルの各々が複数の前記金属部材に接着的に結合され、
前記複合パネルと前記金属部材との間の結合のうちの少なくとも1つの結合が、前記複合パネルの平板部分の端部と一体であると共に当該端部から延びるアーチ構造によって形成され、かつ、前記少なくとも1つの結合が前記金属部材の外側に適合する前記アーチ構造によって形成される、前記複合パネルと、
それらの間のギャップに沿った接着剤層であって、実質的に前記平板部分の端部から延びると共に、前記アーチ構造の角度範囲の一部であり全範囲ではない部分にわたって延びる接着剤層と、を有し、
前記接着剤層が、前記金属部材及び前記アーチ構造が所定位置へと配置されることにより前記アーチ構造によって前記金属部材の角度範囲の一部にわたって押し広げられたものである、車両シャーシ。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2、4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、また、
この出願の請求項2、6、7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2、4に記載された発明に基づいて、この出願の請求項3?5、8?13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2011-516329号公報(上記第2 2(1)の引用例1と同じ)
引用文献2:特開2006-328945号公報(上記第2 2(2)の引用例2と同じ)
引用文献3:米国特許出願公開第2011/0121610号明細書
引用文献4:特開2008-296556号公報(周知技術を示す文献;上記第2 2(3)の引用例3と同じ)

3 引用文献とその記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1-2、4、その記載事項及び引用発明は、上記「第2 2(1)(1-1)(1-2)(2)(3)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、「前記金属部材と前記アーチ構造との間における前記アーチ構造の前記角度範囲の残部が空隙とされた」との事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 4 判断」に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術(引用例3に記載された技術事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術(引用文献4に記載された技術事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術(引用文献4に記載された技術事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-01-16 
結審通知日 2020-01-21 
審決日 2020-02-04 
出願番号 特願2016-575323(P2016-575323)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 中川 真一
岡▲さき▼ 潤
発明の名称 車両シャーシ構造  
代理人 梶 俊和  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ