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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E02B
管理番号 1363470
審判番号 不服2019-5186  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-03 
確定日 2020-06-17 
事件の表示 特願2015-257802「黄金時代を築くビル型超巨大防潮堤の(世界平和の塔)であれば、日本全国の真夜中に巨大津波が襲来しても、これからは永久的に死亡者はゼロとなる。」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開、特開2017- 96082〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月27日に出願された特願2015-257802号であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成28年 5月26日 手続補正書
平成29年 5月 8日 拒絶理由通知(起案日)
平成29年 9月15日 手続補正書
平成30年 8月13日 手続補正書
平成30年12月12日 拒絶査定(起案日)
平成31年 4月 3日 審判請求書
令和 1年11月26日 拒絶理由通知(起案日)
令和 2年 1月31日 意見書


第2 請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年9月15日付け提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるべきものであり、その記載は次のとおりのものである。


「【請求項1】













































第3 当審の拒絶理由通知の概要
当審の拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)である、令和1年11月26日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。

「1.(新規事項)平成29年9月15日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではいから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3.(簡潔性要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第3号に規定する要件を満たしていない。
4.(産業上の利用可能性)この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
5.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2012-233381号公報
引用文献2.特開2013-68034号公報 」


第4 当審の判断
1 理由1(新規事項:特許法第17条の2第3項違反)
平成29年9月15日付け手続補正書(以下「補正書」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、単に「請求項1」ということがある。)には、「築地の中央卸売市場」と「浜離宮公園」の土地に、本発明の防潮堤を建設することが記載されている(例えば、上記第2の8枚目29?31行)。しかしながら、本願の出願当初の明細書、特許請求の範囲または図面(以下「当初明細書等」という。)には、太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里に建設することは記載されているものの、「築地の中央卸売市場」と「浜離宮公園」の土地に建設することは記載されておらず、当初明細書等の記載からみて当業者にとって自明な事項とも認められない。
よって、上記の「築地の中央卸売市場」と「浜離宮公園」の土地に本発明の防潮堤を建設することを記載した平成29年9月15日付けの手続補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではない。

2 理由2(明確性:特許法第36条第6項第2号違反)
(1)請求項1には複数の文章が記載されており、1つの請求項の記載から複数の発明が把握されてしまうため、権利の及ぶ範囲が不明確なものとなっている。
(2)請求項1には、図面や写真等が記載されており、発明の構成がどのようなものか理解できず不明であって、権利の及ぶ範囲が不明確なものとなっている。
(3)請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、発明のカテゴリーが不明である(物の発明であるのか、方法の発明であるのかが把握できない)ため、権利の及ぶ範囲が不明確なものとなっている。
(4)以上のとおり、特許請求の範囲の請求項1の記載は不明確である。

3 理由3(簡潔性要件:特許法第36条第6項第3号違反)
(1)請求項1には、発明を着想するに至った背景に関するものと思われる事項(例えば過去の地震に関する分析・批評等)が繰り返し記載されている。
このような記載は、特許を受けようとする発明の技術的範囲の特定に直接的に寄与しているとは認められず、むしろ技術的範囲の特定に関する記載を埋没させてしまうおそれのあるものである。してみれば、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第3号に規定する要件を満たさない程度に冗長なものというべきである。
したがって、請求項1の記載は、簡潔なものとは認められない。

4 理由5(進歩性:特許法第29条第2項違反)
(1)本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、上記第2に記載したとおりであるが、当該記載には、上記1?3で説示したとおり、新規事項にあたる記載があり、請求項1に係る発明は明確でなく、請求項1の記載は簡潔ではないため、ここでは、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものとして認定し、以下検討する。
「太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里の長強力な20階から30階以上(1階から100階以上)の三重防弾ガラス窓付き鉄筋コンクリートビル型超巨大防潮堤。)(主に、上記第2の2枚目12?15行から認定した。)

(2)引用文献の記載
ア 当審拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2012-233381号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、本審決で付与した。以下同様。)
(ア)「【背景技術】
・・・
【0004】
従って生産や生活の場は海辺に求めざるを得ないので、津波に対抗できる防波堤やビルの必要性は大きい。」

(イ)「【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、防潮堤の下部を津波の来襲方向に突出させる事に依り、垂直の壁状の津波との衝突に際しても衝突時間巾を広げて衝突荷重の低減を図る。
【0011】
更に津波の持つ水平方向の運動エネルギーを、上方への位置エネルギーに替え、隣接するビルに大きな水平方向の衝突荷重を与えないようにする。
【0012】
上方に吹き上げられた水が重力により、落下するのを傾斜面で再度反射させ、来襲方向に送り返す事に依り、寄せ波の勢力を消耗させる。
【0013】
上記津波の来襲時の転向と、上記反射時にも、傾斜堤防に加わるダウンフォースに依り、ビルを転倒させようとするモーメントを打ち消させる
【0014】
後に高いビルが存在しない場合には、一部の速度の低下した水が堤防を乗り越えるのを認め、後方に静水圧を主とする第二の堤防を設けて、乗り越えた水を溜める池とし、その先への津波の進行を阻止する場合もある。」

(ウ)「【0017】
本堤防は、海岸線全域に連続している事が望ましいが、ビルの横巾の間のみに設置し、当該ビルのみを保護する場合もある。」

(エ)「【発明の効果】
【0018】
以上の如く、衝突力学を考慮して構成された防波堤に依り、生産や居住に必須な海辺の地域に安全なビルを設ける事が可能となり、生産、居住、観光上のメリットは大きい。
【0019】
更に行政庁舎や、避難困難な病人を擁する病院、原発など、経済性に優先して絶対守るべき建屋があり、本発明の効果は大きい。」

(オ)「【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1は本発明の1実施例である。図で1は海岸の高さ、2が防波堤の表面で、3は津波の襲来方向で、防波堤の面で、4の如く上向きに方向を変えさせられる。5の高さで、ほぼ3の方向の衝突速度を消失させる。6はそれに続く高層ビルの外壁である。若し津波が過渡的にそれより上方に吹き上げられたとしても、6の左側には、6に対抗する壁が存在しないので、定常的には水位は保てず崩落する。従って壁面6には、大きな動圧は掛らない。更に4の水流を発生させる反力としてダウンフォースが発生するので、津波の衝突荷重3により、ビルに加わる時計方向の転倒モーメントを抑える事が出来る。本実施例では、2の表面形状は、水平に来襲する津波の進行方向を上方に向けるため、45度の傾斜にしているが、実験の結果、二次曲線などを使う場合もある。
【0022】
この防波堤の上の6の壁を持つビルを、万里の長城のように、海岸線全域に建設する事は、経済的な困難も予想されるため、海岸線に点在する対津波ビルの前面のみとする場合もある。その場合4の水流がビルの横に洩れて、害を及ぼす恐れがあるため、少なくともビルの横巾の両端には、リブ7を設ける。
【0023】
そしてこのビルの中に、先行技術文献に示したように、上方を気密にした津波シェルターを設ける。上記のように、津波のMTBFは人の寿命より長いので、不注意や気の緩みが危険につながるようでは、信頼性が確保できない為、気密の空間は特別のメンテや操作を要しないものである必要がある。そのため、此処に入るには下の階からの階段や、シェルターが行き止まりのエレベーター、エスカレーターを使う。勿論静的には津波が到達しない階に設ける事が望ましい。付近の住民が車ごと避難するには、先行技術文献の図2に示す2階が望ましい。」

(カ)「【0025】
図3は、ビルの外壁6に設けられた窓の詳細図で、14は室内側に設けられたガラスの引き戸、15は10センチ間隔程度に竪に嵌め込まれたフラットバー又は鉄格子で、16はシャッターで、通常は格納箱17内に巻上げられている。図示されない受信機で津波警報を受信すると、到着予想時刻に合わせて自動的にシャッターを閉める。故障の場合は手でも閉められる。若しシャッターに重量物が衝突すると、シャッターは凹む事が有っても、フラットバーが受け止めるので、破られる事はない。18は、下から上がって来た津波の水や瓦礫が、シャッターに当たらない様にする突出部。19は落ちて来た時の為の突起部である。」

(キ)上記(ア)ないし(カ)からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。
「表面形状2が、水平に来襲する津波の進行方向を上方に向けるため、45度の傾斜にしている防波堤において、
防波堤の上に、壁6を持つ高層ビルを、万里の長城のように、海岸線全域に建設するものであって、
経済的な困難も予想されるため、海岸線に点在する対津波ビルの前面のみとする場合もあり、
ビルの外壁6に設けられた窓には、室内側に設けられたガラスの引き戸14、10センチ間隔程度に竪に嵌め込まれたフラットバー又は鉄格子15、通常は格納箱17内に巻上げられているシャッター16が設けられ、若しシャッターに重量物が衝突すると、シャッターは凹む事が有っても、フラットバーが受け止めるので、破られる事はない、防波堤。」

イ 引用文献2
当審拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2013-68034号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は海沿いや川沿いの津波や洪水の起きやすい沿岸部に構築され、津波や洪水を防ぎ、且つ津波や洪水に耐えることができる津波・洪水対策用ビルに関するものである。」

(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は1000年に一度の大津波や大洪水に耐えることができる津波・洪水対策用ビルを目的として提供されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、海あるいは川の沿岸沿いに側壁を沿岸に向けた高さ10m以上の耐津波用の鉄骨・鉄筋コンクリートビルを多数の並設し、該各鉄骨・鉄筋コンクリートビル群の側壁間に防水壁を構築し、各鉄骨・鉄筋コンクリートビルの側壁と防水壁とを連続的に連設して堤防を構築するとともに、前記防水壁に出入り口を設け該出入り口に防水扉を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、沿岸側に設けられる窓に人為的あるいは震動により自動的に遮断される耐水・耐衝撃性の遮蔽板を設けたり、防水壁を奥行きのあるものとして内部を倉庫としたり、倉庫に採光窓を設け、該採光窓に震動により自動的に遮断される耐水・耐衝撃性の遮蔽板を設けたりしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、海あるいは川の沿岸沿いに側壁を沿岸に向けた高さ10m以上の耐津波用の鉄骨・鉄筋コンクリートビルを多数の並設し、該各鉄骨・鉄筋コンクリートビル群の側壁間に防水壁を構築し、各鉄骨・鉄筋コンクリートビルの側壁と防水壁とを連続的に連設して堤防を構築するとともに、前記防水壁に出入り口を設け該出入り口に防水扉を設けたことにより、通常時は出入り口の防水扉を開放して各鉄骨・鉄筋コンクリートビルへの出入りを行い、津波警報が発令された際には、防水扉を閉鎖することにより、各鉄骨・鉄筋コンクリートビルと防水壁により過去に発生した大津波に対応できる10m以上の堤防を形成することができるので、例え、1000年に一度の大津波が発生したとしても堤防を越えたり破壊されたりすることは防止される。しかも、鉄骨・鉄筋コンクリートビルは津波に耐える強度をもっているため、従来の防波堤を不要とすることができ、東日本大震災のように防波堤を破壊された地域では、防波堤を構築せず津波・洪水対策用ビルを沿岸沿いに構築すればよいので復旧と復興が低予算で可能となる。また、鉄骨・鉄筋コンクリートビルは沿岸沿いに構築するため、漁業者や水産加工業者等がこのビルに入居することによって出漁や漁獲した魚の加工を効率よく、且つ安全に行なうことができる。
【0009】
また、請求項2のように、沿岸側に設けられる窓に人為的あるいは震動により自動的に遮断される耐水・耐衝撃性の遮蔽板を設けることにより、津波による浸水を的確に防止できる。
【0010】
請求項3のように、防水壁を奥行きのあるものとして内部を倉庫としたことにより、防水壁は防水の耐津波壁と倉庫とを兼ねるものとなるので、倉庫を別設する必要がなくなるので設置面積や建築費用を大幅に削減できるうえに、倉庫に防災用品等を備蓄保存すれば、災害時、ビルに入居している人達の生活を維持することができる。また、入居している漁業者や加工業者の各種備品を収納保管する倉庫としてもよいことはいうまでもない。
【0011】
請求項4のように、倉庫に採光窓を設け、該採光窓に震動により自動的に遮断される耐水・耐衝撃性の遮蔽板を設けたことにより、災害による停電が発生しても日中は懐中電灯等の明りがなくても防災用品等を取り出すことができる。しかも、採光窓には津波に耐える耐衝撃性の遮蔽板が設けられているので、倉庫内に保存収納された各種物品が汚損されたり破損されたりすることを的確に防止できる。」

(ウ)「【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を図1,2に基づいて詳細に説明する。
1は海あるいは川の沿岸沿いに並設される多数の鉄骨・鉄筋コンクリートビルであり、該鉄骨・鉄筋コンクリートビル1は過去の1000年間に襲われた最大の津波の大きさに基づいて津波が越えない10m以上の高さとするとともに、津波の破壊力に耐える強度をもつ耐津波用に設計する。また、沿岸側に面する側壁2は基本的に無窓とするが、窓や開口を設けた場合には後記するような、人為的あるいは震動によって自動的に落下する例えば、吊り下げ式の遮蔽板10を窓の前方に設ける。
【0014】
鉄骨・鉄筋コンクリートビル1は側壁2より内陸に向かう奥行き側を長くして津波の水圧に耐えるようにしているが、川沿いに構築される鉄骨・鉄筋コンクリートビル1は奥行き側を強いて長くする必要はない。
【0015】
海岸沿いの鉄骨・鉄筋コンクリートビル1は漁業従業者の事務所や作業場、あるいは住居、水揚げされた魚を冷蔵・冷凍保管する倉庫としたり、水産物加工業者の魚の加工工場としたりする。
【0016】
3は各鉄骨・鉄筋コンクリートビル1の側壁2間に構築される防水壁であり、該防水壁3は鉄骨・鉄筋コンクリートビル1の高さと等しい高さとするとともに、津波に耐える強度を有するものとする。そして、各鉄骨・鉄筋コンクリートビル1の側壁2と各防水壁3とを連続的に構築することにより沿岸面は堤防4により区画された津波や洪水の防御線となる。
【0017】
5は防水壁3の下部に形成される出入り口6を開閉する防水扉であり、該防水扉5は通常は開放されて市街の道路14との出入りを許すが、地震により津波警報や洪水警報が発令されたときには閉じられて津波や洪水の侵入を防ぐ。
【0018】
前記防水扉5は引き戸式にして直動開閉されるものとして、回動開閉される扉式より可動距離を小さくして閉鎖時間を短縮するとともに、可動占有面積を少なくして不用意に置かれた障害物による閉鎖障害の発生を抑えているが、扉式としてもよいことは言うまでもない。
【0019】
8は防水壁3に奥行きを持たせて設けた倉庫であり、該倉庫8は鉄骨・鉄筋コンクリートビル1の各階に設けられている。防水壁3に倉庫8を設けることにより、土地の有効利用ができ建築費用を削減できる。倉庫8には非常食料、水、医療品、毛布等の防災用品G等を備蓄保存すれば、災害により孤立した際には、ビルの入居者達は備蓄されている非常用食料や飲料水により救援物資の到着や、道路が復旧開通するまでの期間の生活維持ができる。また、倉庫8を入居する漁業者や加工業者の各種備品等の収納保管するものとしてもよいことはいうまでもない。
【0020】
9は倉庫8に設けられる採光窓であり、該採光窓9は図1,2に示されるように、倉庫8の各階に複数設けられ、日中は停電となっても明りが得られるので、懐中電灯などの明りがなくても防災用品Gや各種備品を取り出すことができる。
【0021】
10は採光窓9や側壁2の窓の前面や側壁2開口に設けられる吊り下げ式の遮蔽板であり、該遮蔽板10は鋼板等の津波に耐える高強度の素材よりなるもので、洪水警報発令時に人為的にストッパ11を外したり、地震の震動によってストッパ11が外れると吊り下げられている遮蔽板10は落下して採光窓9や窓の前面を遮蔽したり、開口を遮蔽したりして、津波の侵入を防止し、倉庫8内に収納保管されている防災用品類Gや各種備品が汚損されたり損傷されたりすることを防いでいる。
【0022】
12は海沿いあるいは川沿いに構築される既存の防波堤、13は防波堤1に沿って作られた道路、14は道路13沿いに作られたガードレールである。
【0023】
このように構成されたものは、過去1000年の津波情報に基づいて高さを設定した10m以上の高さの鉄骨・鉄筋コンクリートビル1を海や川の沿岸沿いに並設する。沿岸沿いの鉄骨・鉄筋コンクリートビル1は側壁2を沿岸側に向けるとともに、側壁2より奥行きを長くして津波に対する強度を高めている。次に、各鉄骨・鉄筋コンクリートビル1の側壁2間に防水壁3を構築し、各鉄骨・鉄筋コンクリートビル1と防水壁3とにより沿岸全域を囲う堤防4を構築する。
【0024】
このような洪水・津波対策ビルは防水壁3に設けた出入り口6を通じて車や人の出入りを行うが、地震の発生に伴う津波警報や洪水警報に基づいて、出入り口6の防水扉5を閉鎖する。防水壁3の倉庫8の採光窓9や側壁2に設けられた窓や開口には遮蔽板10が設けられており、洪水警報が発令された場合には人為的にストッパ11を操作して遮蔽板10を落下させる。
【0025】
地震際には、地震の震動によりストッパ11は外れるので、遮蔽板10は自動的に落下して採光窓9や窓を保護したり、開口を塞いだりするので、倉庫8の採光窓9や側壁2の窓や開口から津波が浸入することを防ぐこととなり、堤防4内の鉄骨・鉄筋コンクリートビル群の住民は津波や洪水から確実に守られることとなる。」

(エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。
「海の沿岸沿いに並設される多数の鉄骨・鉄筋コンクリートビル1の側壁2間に防水壁3を構築し、各鉄骨・鉄筋コンクリートビル1と防水壁3とにより沿岸全域を囲って構築する堤防4であって、
鉄骨・鉄筋コンクリートビル1は過去の1000年間に襲われた最大の津波の大きさに基づいて津波が越えない10m以上の高さとするとともに、津波の破壊力に耐える強度をもつ耐津波用に設計され、側壁2には窓を設け、住居とされ、
防水壁3は鉄骨・鉄筋コンクリートビル1の高さと等しい高さとするとともに、津波に耐える強度を有するものであって、倉庫8が設けられ、倉庫8に採光窓9が設けられ、
上記側壁2の窓と上記採光窓9には、鋼板等の津波に耐える高強度の素材よりなる吊り下げ式の遮蔽板10が設けられた、堤防4。」

(3)引用文献1を主引用例として検討
ア 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
通常、20階から30階以上の高さのビルは、高層ビルの範疇に入るから、本願発明の「20階から30階以上」の「ビル」は、高層ビルといえる。 してみると、引用発明1の「ガラスの引き戸14」が設けられた「窓」が設けられた「外壁6を持つ高層ビルを」「上に」「建設する」「防波堤」と、本願発明の「超強力な20階から30階以上(1階から100以上)の三重防弾ガラス窓付き鉄筋コンクリートビル型超巨大防潮堤」とは、「高層のガラス窓付きビル型防潮堤」で共通する。
また、引用発明1の「海岸線全域」と、本願発明の「太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里」であることとは、その長さは不明であるものの、「海岸線全域」で共通する。
よって、本願発明と引用発明1とは、
「海岸線全域の高層のガラス窓付きビル型防潮堤。」で一致し、以下の2点で相違している。
〔相違点1〕防潮堤について、本願発明は、「太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里の」ものであるのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。
〔相違点2〕本願発明は、「超強力な20階から30階以上(1階から100階以上)の三重防弾ガラス窓付き鉄筋コンクリートビル型超巨大防潮堤」であるのに、引用発明1は、強さ、高さ及び大きさが不明であって、ガラスが三重防弾ガラスかどうか不明な点。

イ 判断
上記相違点1、2について検討する。
(ア)相違点1
津波は日本全国の海岸線に到達する恐れがあることは、一般によく知られていることであって、該津波から陸地側を守るために、津波が到達するであろう場所に防潮堤を建設することは、当業者が適宜考慮すべき事項である。
よって、万里の長城のように、海岸線全域に建設するものである引用発明1の防波堤を、日本全国の陸地を守るために、太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里に建設することにより、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(イ)相違点2
防潮堤は、津波の力に対抗する以上、超強力なものでなければならないことは、当業者にとって自明である。そして、防潮堤の高さは、予測される津波の高さを前提に設計するものであるところ、引用発明1の防波堤の上に建設された高層ビルについてみると、高層ビルとしては、日本国内において、20階から30階以上のものは多数建設され、また、ビルの構造として、鉄筋コンクリート構造のものは一般的であることから、引用発明1の防波堤を、超強力な20階から30階以上の鉄筋コンクリートビル型防潮堤とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
さらに、引用発明1の高層ビルにおいて、「ビルの外壁6に設けられた窓には、室内側に設けられたガラスの引き戸14、10センチ間隔程度に竪に嵌め込まれたフラットバー又は鉄格子15、通常は格納箱17内に巻上げられているシャッター16が設けられ、若しシャッターに重量物が衝突すると、シャッターは凹む事が有っても、フラットバーが受け止めるので、破られる事はない」ものであるから、窓には、より強度が高いものが求められていることが示唆されており、引用発明1の「窓」を、必要に応じて「三重防弾ガラス窓」とすることも、当業者が適宜なし得たことである。
また、上記(ア)で説示したとおり、引用発明1の防波堤を太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里のものとすることは当業者が適宜なし得たことであるから、該沿岸等に設けた防波堤は、超巨大なものとなることは明らかである。
したがって、引用発明1の窓が設けられた外壁6を持つ高層ビルを上に建設した防波堤を、上記の自明な事項や一般的な事項等に基いて、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、自明な事項及び一般的な事項等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)引用文献2を主引用例として検討
ア 対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「海の沿岸沿い」と、本願発明の「太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里」とは、「海の沿岸沿い」で共通する。
引用発明2の「津波の破壊力に耐える強度をもつ」ことは、本願発明の「超強力」であることに相当する。
引用発明2の「側壁2の窓と上記採光窓9」が設けられた「鉄骨・鉄筋コンクリートビル1」及び「防水壁3」からなる「堤防4」と、本願発明の「三重防弾ガラス窓付き鉄筋コンクリートビル型超巨大防潮堤」とは、「窓付き鉄筋コンクリートビル型防潮堤」で共通する。
よって、本願発明と引用発明2とは、
「海の沿岸沿いの超強力な窓付き鉄筋コンクリートビル型防潮堤。」で一致し、以下の2点で相違している。
〔相違点A〕防潮堤について、本願発明は、「太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里の」ものであるのに対し、引用発明2は、海の沿岸沿いである点。
〔相違点B〕本願発明は、20階から30階以上(1階から100階以上)の三重防弾ガラス窓付き鉄筋コンクリートビル型超巨大防潮堤であるのに対し、引用発明2は、堤防4が、過去の1000年間に襲われた最大の津波の大きさに基づいて津波が超えない10m以上の高さであって、大きさが不明であって、窓が三重防弾ガラス窓かどうか不明な点。

イ 判断
上記相違点A及びBについて検討する。
(ア)相違点A
津波は日本全国の海岸線に到達する恐れがあることは、一般によく知られていることであって、該津波から陸地側を守るために、津波が到達するであろう場所に防潮堤を建設することは、当業者が適宜考慮すべき事項である。
よって、引用発明2の堤防4を、日本全国の陸地を守るために、太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里に建設することにより、相違点Aに係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(イ)相違点B
防潮堤の高さは、予測される津波の高さを前提に設計するものであるところ、引用発明2のビル1の高さである10m以上についてみると、「過去の1000年間に襲われた最大の津波の大きさに基づいて津波が超えない」とも示唆されており、過去、日本沿岸において数十メートルの津波に襲われた記録があることから、引用発明2の堤防4におけるビル1の高さを、20階から30階以上とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
さらに、引用発明2において、「上記側壁2の窓と上記採光窓9には、鋼板等の津波に耐える高強度の素材よりなる吊り下げ式の遮蔽板10が設けられた」ことから、窓には、より強度が高いものが求められていることが示唆されている。
よって、引用発明2の「窓」を「三重防弾ガラス窓」とすることは、当業者が適宜なし得た程度のものである。
また、上記(ア)で説示したとおり、引用発明2の堤防4を、太平洋沿岸と日本海沿岸と東京湾の万里のものとすることは当業者が適宜なし得たことであるから、該沿岸等に設けた堤防4は、超巨大なものとなることは明らかである。
よって、引用発明2の堤防4を、上記の自明な事項等に基いて、上記相違点Bに係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明2、自明な事項等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)付加的検討
仮に、本願発明において、上記(1)で認定した防潮堤が、請求人が主張するように、「築地の中央卸売市場」と「浜離宮公園」の土地に建設するとの特定を備えるものであったとしても、「築地の中央卸売市場」と「浜離宮公園」との地名は、防潮堤の発明である本願発明の発明特定事項とは認められないから、進歩性の判断において考慮すべき事項ではない。
さらに、「築地の中央卸売市場」と「浜離宮公園」とが、本願発明の発明特定事項であったとしても、防潮堤は、津波を防ぐべき地域に建設するものであって、その建設場所は、建設費と津波によって予想される損失額とを比較・考慮して決定されるものであるから、「築地の中央卸売市場」と「浜離宮公園」の土地を選択することに、格別の困難性はない。


第5 むすび
以上のことから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号及び第3号に規定する要件を満たしていない。
また、平成29年9月15日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
さらに、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-03-25 
結審通知日 2020-03-31 
審決日 2020-04-17 
出願番号 特願2015-257802(P2015-257802)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (E02B)
P 1 8・ 55- WZ (E02B)
P 1 8・ 121- WZ (E02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門 良成袴田 知弘  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 秋田 将行
住田 秀弘
発明の名称 黄金時代を築くビル型超巨大防潮堤の(世界平和の塔)であれば、日本全国の真夜中に巨大津波が襲来しても、これからは永久的に死亡者はゼロとなる。  

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