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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D |
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管理番号 | 1363499 |
審判番号 | 不服2019-16226 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-02 |
確定日 | 2020-07-10 |
事件の表示 | 特願2016-565075号「食品包装用発泡トレー及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 5日国際公開、WO2015/167135、平成29年 6月15日国内公表、特表2017-515757号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年4月1日(パリ条約による優先権主張 2014年4月29日 韓国)を国際出願日とする出願であって、平成30年11月13日付けで拒絶理由が通知され、平成31年2月18日に手続補正書及び意見書が提出され、令和元年7月29日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和元年12月2日に本件拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明について 本願の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明(以下「本願発明1?3」という。)は、令和元年12月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に各々記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 内部水分吸収性を有する第1発泡層、及び外部水分遮断性を有する第2発泡層の積層構造を含み、前記第1発泡層及び前記第2発泡層は、同一の生分解性高分子を含み、 前記第1発泡層は澱粉を10重量%?50重量%含み、 前記第1発泡層は、前記生分解性高分子を50重量%?90重量%含み、 前記第2発泡層は、前記生分解性高分子を95重量%?100重量%含み、 前記第1発泡層は、厚さが1mm?3mmであり、 前記第2発泡層は、厚さが1mm?3mmであり、 前記第1発泡層は、独立気泡率が50%?80%であり、 前記第2発泡層は、独立気泡率が70%?95%である、 食品包装用発泡トレー。 【請求項2】 前記澱粉は、コーンスターチ、小麦澱粉、甘藷澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1に記載の食品包装用発泡トレー。 【請求項3】 前記生分解性高分子は、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート-co-ブチレンサクシネート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシブチレートバリレート(PHBV)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(エステル-アミド)(PEA)、ポリ(エステル-ウレタン)(PEU)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上である、請求項1に記載の食品包装用発泡トレー。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 令和元年7月29日付けでした拒絶査定の理由の概要は、以下のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1?13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1又は引用文献2記載の発明及び引用文献1?7記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開平9-254294号公報 2.韓国公開特許第10-2012-0135559号公報 3.米国特許第05278194号明細書 4.特開2004-292674号公報 5.特開2010-111437号公報 6.特開2009-068021号公報 7.特開2005-179508号公報 第4 当審の判断 上記第3に示した拒絶の理由について検討する。 (1)引用文献1を主引用発明とした場合 ア 引用文献1記載の発明 引用文献1には、下記の事項が記載されている。 ・「【請求項1】密度が0.3?0.03g/cm^(3)で且つ連通気泡率が50?95%の連通気泡型のスチレン系樹脂発泡層と、密度が0.2?0.05g/cm^(3)で且つ連通気泡率が40%以下の独立気泡型のスチレン系樹脂発泡層とを積層したことを特徴とする、スチレン系樹脂発泡積層シート。」 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、スチレン系樹脂発泡シートに関するものであり、とくに生魚と生肉を入れておくためのトレーなどを作るのに好適な、発泡シートに関するものである。また、この発明は、上述のスチレン系樹脂発泡シートを成形して得られたトレーのような成形品に関するものである。」 ・「【0007】 【発明が解決しようとする課題】この発明は、PS発泡シートの撥水性を改良して吸水性のものとし、これをトレーに成形してトレーに生肉などを入れた場合、生肉から滲出する肉汁を吸収するようなPS発泡シートを提供しようとするものである。さらに、この発明は、そのPS発泡シートが肉汁を吸収しても、肉汁を外へ漏らすことがなく、またトレーなどへの成形も容易なPS発泡シートを提供しようとするものである。」 ・「【0017】連通気泡型の発泡層を0.3?0.03g/cm^(3)の密度と、50?95%の連通気泡率に限定する理由は、次のとおりである。この発泡層が、0.3g/cm^(3)を越える密度を持ったのでは、吸水能力が不充分となるからであり、逆に0.03g/cm^(3)未満の密度を持ったのでは表面スキンが毛羽立ち、トレー等の容器に成形した際の外観が悪くなるからである。また、連通気泡率が50%未満では、食品から遊離した水分を吸収しなくなるからであり、逆に95%を越えると、層自体が脆くなるからである。そのうちでは連通気泡率を60?90%とすることが好ましい。また、その厚みは0.3?3.0mmとすることが好ましい。 【0018】独立気泡型の発泡層を0.2?0.05g/cm^(3)の密度と、40%以下の連通気泡率に限定する理由は、次のとおりである。この発泡層が0.2g/cm^(3)を越える密度を持ったのでは、軽量で断熱性がよいという発泡体の特色が失われるからであり、逆に密度を0.05g/cm^(3)未満としたのでは層自体の強度が失われるからである。また、連通気泡率が40%を越えると、加熱成形時の二次発泡力が弱くて所望の形状通りに成形することが困難となり、また得られた発泡層の機械的強度が弱くなるからである。そのうちでは、連通気泡率が20%以下であることが好ましい。また、その厚みは0.2?3.0mmとすることが好ましい。連通気泡率は0%であっても当然使用できる。」 そうすると、上記【0001】の「スチレン系樹脂発泡シートを成形して得られたトレー」の記載に着目すると、引用文献1の請求項1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「密度が0.3?0.03g/cm^(3)で且つ連通気泡率が50?95%の連通気泡型のスチレン系樹脂発泡層と、密度が0.2?0.05g/cm^(3)で且つ連通気泡率が40%以下の独立気泡型のスチレン系樹脂発泡層とを積層したことを特徴とする、スチレン系樹脂発泡積層シートからなるトレー。」 イ 対比 本願発明1と引用発明1とを対比するに、引用発明1の「連通気泡型のスチレン系樹脂発泡層」、「独立気泡型のスチレン系樹脂発泡層」は、それぞれ、本願発明1の「内部水分吸収性を有する第1発泡層」、「外部水分遮断性を有する第2発泡層」に相当する。 そうすると、本願発明1と引用発明1とは、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明1は、「前記第1発泡層及び前記第2発泡層は、同一の生分解性高分子を含」むのに対して、引用発明1は、連通気泡型のスチレン系樹脂発泡層と独立気泡型のスチレン系樹脂発泡層である点 <相違点2> 第1発泡層について、本願発明1は、「澱粉を10重量%?50重量%含み、」「前記生分解性高分子を50重量%?90重量%含み、」「厚さが1mm?3mmであり、」「独立気泡率が50%?80%であ」るのに対して、引用発明1は、密度が0.3?0.03g/cm^(3)で且つ連通気泡率が50?95%である点 <相違点3> 第2発泡層について、本願発明1は、「前記生分解性高分子を95重量%?100重量%含み、」「厚さが1mm?3mmであり、」「独立気泡率が70%?95%である」のに対して、引用発明1は、密度が0.2?0.05g/cm^(3)で且つ連通気泡率が40%以下である点 ウ 判断 まず、相違点2について検討する。 <相違点2について> 引用文献1の【0017】には、連通気泡型のスチレン系樹脂発泡層について、「連通気泡率が50%未満では、食品から遊離した水分を吸収しなくなるからであり、逆に95%を越えると、層自体が脆くなるからである。そのうちでは連通気泡率を60?90%とすることが好ましい。」と記載されているから、引用発明1において、連通気泡率を50%未満とすることには、食品から遊離した水分の吸収の観点から、阻害要因があるといえる。 そうすると、引用発明1において、連通気泡率を50%未満、すなわち独立気泡率を50%?80%とすることは、当業者が容易想到し得たとはいえない。 また、本願発明1は、独立気泡率が50%?80%であっても、澱粉を10重量%?50重量%含むことで、水分を効果的に吸収するものであるところ、引用文献2?7には、当該事項に関して何ら記載されていない。 なお、引用文献3の【0017】、【0028】には、澱粉系生分解性樹脂を含有する点、引用文献4のABSTRACT、[0001]、[0037]等には、澱粉を含有する点が記載されているが、いずれも生分解性高分子として澱粉を用いるものである。 ここで、本願明細書の【0010】、【0011】等の記載から、本願発明1の「澱粉」は、「生分解性高分子」として用いるものでないことは明らかである。 そして、引用文献3及び4には、生分解性高分子として澱粉を用いることが記載されているとしても、水分の吸収の観点から澱粉を用いることまでは記載されていない。 したがって、引用発明1において、水分の吸収の観点から澱粉を10重量%?50重量%含有させることが、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1が、引用発明1及び引用文献2?7記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)引用文献2を主引用発明とした場合 引用文献2記載の発明([0005]?[0065]、図1?3等)(以下「引用発明2」という。)と本願発明1とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点4> 第1発泡層について、本願発明1は、「澱粉を10重量%?50重量%含」むのに対して、引用発明2は、そのように特定されていない点 ウ 判断 相違点4について検討する。 <相違点4について> 本願発明1は、独立気泡率が50%?80%であっても、澱粉を10重量%?50重量%含むことで、水分を効果的に吸収するところ、引用文献1、3?7には、当該事項に関して何ら記載されていない。 したがって、引用発明2において、水分の吸収の観点から澱粉を10重量%?50重量%含有させることが、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 小括 したがって、本願発明1が、引用発明2及び引用文献1、3?7記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本願発明2及び3について 本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付したものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同じ理由により、引用発明1又は引用発明2及び引用文献1?7記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第4 むすび したがって、本願発明1?3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、上記結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-06-23 |
出願番号 | 特願2016-565075(P2016-565075) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B65D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 永田 勝也、長谷川 一郎、田中 佑果 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
横溝 顕範 佐々木 正章 |
発明の名称 | 食品包装用発泡トレー及びその製造方法 |
代理人 | 特許業務法人永井国際特許事務所 |