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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録(定型) F25D
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録(定型) F25D
管理番号 1363510
審判番号 不服2019-9827  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-25 
確定日 2020-07-07 
事件の表示 特願2015-155628「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017- 32257、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年8月6日を出願日とする出願であって、平成30年11月22日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月31日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年2月26日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成31年4月12日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年7月1日付けで補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して、令和1年7月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和1年7月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年7月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
令和1年7月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)によって、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。

本件補正前(平成31年1月31日に提出された手続補正書により補正されたもの)
「貯蔵物が貯蔵される貯蔵室と、
前記貯蔵室に収容され、正面側に引き出し可能で、上部が開口しており、前記貯蔵物が収納される収納容器と、
前記収納容器の開口を覆うように配置され、前記収納容器内外を連通する連通孔をそれぞれ離間して複数有するカバーと、を備えた冷蔵庫において、
前記カバーの下面に配され、前記収納容器内の水分を吸蔵して前記収納容器外へ放出する水分吸蔵放出部材と、
前記複数の連通孔それぞれの鉛直投影内で下方に配され、前記水分吸蔵放出部材を下から支持するリブと、を有することを特徴とする冷蔵庫。」

本件補正後
「貯蔵物が貯蔵される貯蔵室と、
前記貯蔵室に収容され、正面側に引き出し可能で、上部が開口しており、前記貯蔵物が収納される収納容器と、
前記収納容器の開口を覆うように配置され、前記収納容器内外を連通する連通孔をそれぞれ離間して複数有するカバーと、を備えた冷蔵庫において、
前後方向に離間した複数の前記連通孔の間を繋ぐように前記カバーの下面に配され、前記収納容器内の水分を吸蔵して前記収納容器外へ放出する水分吸蔵放出部材と、
前記複数の連通孔それぞれの鉛直投影内で下方に配され、前記水分吸蔵放出部材を下から支持するリブと、を有し、
前記連通孔の前後寸法は、前後方向に離間した複数の前記連通孔の間の前記カバーの寸法よりも小さく、
前記カバーの上方を流れる冷風は、前側又は後側一方の前記連通孔から前記カバーと前記水分吸蔵放出部材との間に進入して通流し、後側又は前側他方の前記連通孔から進出することを特徴とする冷蔵庫。」(下線は、補正箇所である。)

2 補正の適否の検討
(1)本件補正は、次の補正事項を付加する補正を含むものである。
<補正事項>
「前記カバーの上方を流れる冷風は、前側又は後側一方の前記連通孔から前記カバーと前記水分吸蔵放出部材との間に進入して通流し、後側又は前側他方の前記連通孔から進出する」

(2)そこで、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、併せて「当初明細書等」という。)の記載について検討する。
当初明細書等には、上記補正事項に関連する内容は以下のとおり記載されている。なお、下線は当審において付した。
「【0035】
図10(b)に示すように、野菜容器カバー105の下面には、野菜室100の内外を連通する連通孔105cの鉛直投影内に、この連通孔105cに対向してリブ105dが形成されている。そして、連通孔105cとリブ105dとの間に形成された空間105eに蒸散ボード105bが挿入されることで、野菜容器カバー105の下面に蒸散ボード105bが保持される。連通孔105cが形成されて強度的に弱くなる箇所に、リブ105dが設けられるので、野菜容器カバー105を効果的に補強できる。さらには、このリブ105dによって蒸散ボード105bが上方に直接露出するのが抑制されるので、取り扱い性が向上する。また、空間105eに蒸散ボード105bが保持されることで、蒸散ボード105bの鉛直投影下に連通孔105cが位置し、連通孔105cが蒸散ボード105bで閉塞されることになる。これにより、下段容器101及び上段容器102の内部の水分を含む空気が連通孔105cを通って野菜室100の外部に排出されつつも、野菜室100の外部から連通孔105cを通って野菜室100の内部に直接冷気が入り込むことが抑制される。」
「【0037】
図11は、野菜容器カバー105の側面図である。図11において、野菜容器カバー105の下方に配置される下段容器101及び下段容器102は仮想線にて示している。蒸散ボード105bは、上段容器102の内部を臨んで、野菜容器カバー105の下面に取り付けられている。また、図11では図示していないが、野菜容器カバー105の上方には、野菜室100を冷却するための冷風が通流している。そのため、通流する冷風は、連通孔105cから露出した蒸散ボード105bをなめるように通流することになる。これにより、蒸散ボード105bに吸湿された液体の水が水蒸気となって通流する冷風に放出されることになる。つまり、野菜室100内の水分が蒸散ボード105bで吸収され、吸湿した水分が連通孔105cを介して野菜室外へ放出される。そのため、蒸散ボード105bが過度に水を吸水し、水滴が上段容器102の内部に滴下することが防止される。」

(3)当初明細書等の段落【0037】には、「通流する冷風は、連通孔105cから露出した蒸散ボード105bをなめるように通流する」ことは記載されているが、上記補正事項の「前記カバーの上方を流れる冷風は、前側又は後側一方の前記連通孔から前記カバーと前記水分吸蔵放出部材との間に進入して通流し、後側又は前側他方の前記連通孔から進出する」点、すなわち、野菜容器カバー105の上方を流れる冷風が、連通孔105cから野菜容器カバー105と蒸散ボード105bとの間に進入して流通し、他の連通孔105cから進出することは記載されていない。
また、上記補正事項は、当初明細書等のその他の部分にも記載されていないとともに、冷蔵庫の技術分野において、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、自明のことでもないし、本願出願時の技術常識でもない。
そうすると、上記補正事項を付加する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、上記補正事項を付加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものとはいえない。

3 むすび
以上のことから、上記補正事項の付加を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成31年1月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-06-18 
出願番号 特願2015-155628(P2015-155628)
審決分類 P 1 8・ 121- WYF (F25D)
P 1 8・ 561- WYF (F25D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石黒 雄一  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 紀本 孝
山田 裕介
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 戸田 裕二  

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