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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1363512
審判番号 不服2019-14919  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-06 
確定日 2020-07-07 
事件の表示 特願2015- 93431「合成樹脂製容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日出願公開、特開2016-210436、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成27年4月30日の出願であって、その主な手続は以下のとおりである。

平成30年12月13日付け
拒絶理由通知
平成31年2月18日
意見書及び手続補正書の提出
令和元年7月30日付け
拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年11月6日
拒絶査定不服審判の請求


第2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、平成31年2月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された以下の事項により特定されるものである。
請求項1?4に係る発明を、以下それぞれ「本願発明1」等という。

「【請求項1】
内容物の注出口となる口部と、該口部に肩部を介して連なる胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備えた合成樹脂製容器であって、
前記胴部は、前記胴部の中心軸を中心として周方向にねじれを伴い上下方向に延びるリブとして形成され前記胴部の周方向に並べて配置される複数の減圧吸収パネルを備え、
前記減圧吸収パネルの上端に対する下端の前記中心軸周りの前記ねじれの角度は50度以上であり、
前記減圧吸収パネルは、前記胴部の周方向に7mm以上10mm以下の幅を有することを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記ねじれの角度は、50度以上100度未満である、請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記胴部は、一対の周方向に延びる環状の横溝により区画形成される、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記減圧吸収パネルは、前記胴部の半径方向に2mm以上3mm以下の深さを有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。」


第3.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由、すなわち平成30年12月13日付けで通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。

本願発明1?4は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2?4に記載された事項、及び周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表平8-506310号公報
2.特開2006-335383号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2009-57085号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2008-174293号公報


第4.当審の判断
1.引用文献の記載事項
本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、以下の記載がある。
なお、記載箇所を行数で示す場合、空白行は数えないものとする。
(1)「【特許請求の範囲】
1.下部で底部(F)に組み込まれ、上部でボトルの首部(G)に組み込まれた、円周方向の横壁(10)を含むタイプの高温充填用のプラスチップ・ボトルにおいて、前記ボトルが、横壁(10)に沿って組み込まれ、ボトルの長手方向軸に対してわずかに傾斜し前記底部(F)および首部に対して離間して配設された、複数の溝(20)を備え、前記溝(20)が、実質的に平行であり、前記壁(10)のパネル(11)によって相互に離間され、かつ前記溝が、それぞれの対称的な長手方向平面に対して対称的であり、前記溝が垂直方向の補強を与えて冷却後に円周方向の熱収縮および機械的収縮を均一に吸収し知覚できないものにするような寸法である、壁厚さを有することを特徴とするプラスチック・ボトル。
・・・
6.各溝(20)の幅が、ボトルの取扱い時に、前記横壁(10)に貼られたラベルの所望の視覚的態様を維持できるような寸法であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック・ボトル。」
(当審注:「プラスチップ・ボトル」は「プラスチック・ボトル」の誤記である)

(2)「[技術分野]
本発明は、全般的には、高温充填用のボトルに関し、詳細には、高温の液体が充填される一方向プラスチック・ボトルに関する。」
(4ページ3?5行)

(3)「[発明の開示]
したがって、本発明の一般的な目的は、機械的抵抗力が高く、しかも構成材料をほとんど必要としない、高温充填用のボトルを提供することである。
本発明の具体的な目的は、ボトルの壁の厚さの分布とは独立に、容易に知覚できる大きな変形を示さないように、冷却のために収縮したときに制御された機械的変形に従う、上述のボトルを提供することである。
本発明の具体的な他の目的は、ボトルの取扱い時にラベルが変形することも、あるいは、破けることもない、上述のボトルを提供することである。
本発明の他の目的は、ボトルに含まれる製品の輸送費の低減に効率的に寄与するように低重量を有する上述のボトルを提供することである。
・・・
前記変形は、制御され、視覚的に知覚できる変形のない最終態様と、ボトルの壁上にラベルを完全に固定できるようにする実質的に円筒形の形状とを与える。」
(7ページ20行?8ページ18行)

(4)「[発明の好ましい実施例]
上述の図によれば、ポリエチレン・テレフタラート(PET)などの熱塑性ポリマーでブロー成型された高温充填用のボトルは、わずかに凸状であり、下部で底部Fに組み込まれ上部で前記ボトルの首部Gに組み込まれ、溝20の形の複数の機械的構造補強物を備える、壁10を含む。前記溝は、傾斜させても、あるいは、らせん状でもよく、壁に沿って延びる、前記壁10のそれぞれのパネル11によって区切られ、前記溝の端部は、ボトルの底部Fおよび首部Gに対して離間して配設され、前記溝は、キャップを締めた高温のボトルの冷却時に、上述のように働く。
・・・
第3図に示したように、各溝20は、大きい方の基部で開放された実質的に台形の断面を有し、台形の辺は、等しく、溝横壁21を形成し、溝横壁は、その1つの端部によってそれぞれの外側曲線22を介して隣接するパネル11に組み込まれ、前記横壁21の開放端部は、前記溝20の底部壁24を形成する台形の小さい方の基部によって結合されたそれぞれの内側曲線23を備える。ボトルの壁10の所与の公称厚さでの各溝20中のポリマーの分布に関しては、外側曲線22は、ボトルの材料の伸びが最大限になる点、すなわち、最も少ない量の材料が堆積する点を形成する。溝においては、ボトルの底部壁24の領域で最大堆積点に到達するまで、横壁21に沿って、堆積する材料の量が増加し続け、実質的に壁部11よりも厚い材料の量が堆積する。ボトルの熱収縮および機械的収縮を各溝20によって均一に吸収できるようにするには、前述のように、前記ボトルの構造を完全に対称的にすることが重要である。
・・・
上述の急冷条件では、熱収縮の大部分が、溝20の底部壁24で発生し、前記壁がよりへこみ、前記収縮の残りの部分が前記溝20の横壁21と壁10のパネル11とに沿って分散し、前記横壁およびパネルがわずかにへこみ、それによって、熱収縮によるボトルの全体的な変形は知覚できないものになる。
・・・
第1図によれば、溝20は、後述のように、ボトルの長手方向軸の垂直平面に対する傾斜よりも、前記長手方向軸に対する傾斜の方が小さく、したがって、前記ボトルに対してより多くの垂直方向の補強を与え、したがって、ボトルがつぶれなくなると共に、制御された円周方向の収縮を可能にする。」
(9ページ7行?11ページ7行)

(5)「意外なことに、提案したボトルの垂直方向の変形にはある程度のねじれが伴うことも分かった。したがって、前記ボトルの長手方向軸に沿った実質的に均一の垂直方向変形を保証するベローズ効果がもたらされる。」
(12ページ17?19行)

(6)「本発明の実施例の例示として、濃縮フルーツ・ジュースを充填するように設計された500m1のPETボトルの関連寸法を以下に列挙する。
壁の厚さ 0.25mmないし0.40mm
壁の高さ 95.74mm
壁のふくらみのアロー 1mm
リブの傾斜 55゜
リブの最小深さ 1.5mm
リブの最大深さ 2.5mm
リブ間の間隔 17.1mm
弛緩した壁の大直径 67.3mm
収縮した壁の大直径 65.3mm」
(13ページ1?11行)

(7)「【図1】



(8)「【図4】



(9)上記(1)?(6)の記載、及び(7)、(8)の図示によれば、引用文献1には、以下の形状・寸法を備えるプラスチック・ボトルが記載されているといえる。
ア.【図1】によれば、首部Gの上部には内容物の注出口となる口部があり、口部の下方には肩部があることが看取できる。
イ.【図1】によれば、横壁10は、首部Gの肩部に連なっていることが看取できる。
ウ.【図1】によれば、横壁10の下端は、底部Fで閉塞されていることが看取できる。
エ.溝20は、複数のリブとして形成されており、横壁10の周方向に実質的に平行に配置されている。
オ.溝20は、ボトルの長手方向軸に対してわずかに傾斜している。濃縮フルーツ・ジュースを充填するように設計された実施例のプラスチック・ボトルにおける傾斜角度は55゜である。
カ.実施例におけるリブ間の間隔は、17.1mmである。

上記(1)?(9)によれば、引用文献1には、以下の発明(「引用発明1」という)が記載されている。
「濃縮フルーツ・ジュースの注出口となる口部と、口部に肩部を介して連なる横壁10と、横壁10の下端を閉塞する底部Fとを備えたプラスチック・ボトルであって、
横壁10は、ボトルの長手方向軸に対してわずかに傾斜する複数のリブとして形成され、実質的に平行に配置された溝20を備えるとともに、溝20は底部壁24を備えており
リブは、傾斜角度が55゜であり、
リブ間の間隔は、17.1mmである
プラスチック・ボトル。」

2.本願発明1について
ア.対比
本願発明1と引用発明1を対比すると、引用発明1の「濃縮フルーツ・ジュース」は、本願発明1の「内容物」に相当し、以下同様に、「口部」は「口部」に、「肩部」は「肩部」に、「横壁10」は「胴部」に、「底部F」は「底部」に、「プラスチック・ボトル」は「合成樹脂製容器」に、それぞれ相当する。

引用発明1の「溝20」は、ボトルの長手方向軸に対して傾斜するものであり、円筒状の横壁10の周面に実質的に平行に複数配置されるものであるから、引用発明1の「ボトルの長手方向軸に対してわずかに傾斜する複数のリブとして形成され、実質的に平行に配置され」ることは、本願発明1の「前記胴部の中心軸を中心として周方向にねじれを伴い上下方向に延びるリブとして形成され前記胴部の周方向に並べて配置される」ことに相当する。
そして、引用発明1の「溝20」の「底部壁24」は、上記1.(4)に摘記したとおり、急冷条件では、熱収縮の大部分が、溝20の底部壁24で発生し、前記壁がよりへこむことにより減圧を吸収しているものである。よって、引用発明1の「溝20」の「底部壁24」は、本願発明1の「減圧吸収パネル」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明1は、以下の点で一致する。
<一致点>
「内容物の注出口となる口部と、該口部に肩部を介して連なる胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備えた合成樹脂製容器であって、
前記胴部は、前記胴部の中心軸を中心として周方向にねじれを伴い上下方向に延びるリブとして形成され前記胴部の周方向に並べて配置される複数の減圧吸収パネルを備える、
合成樹脂製容器。」

そして、本願発明1と引用発明1は、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明1は、「前記減圧吸収パネルの上端に対する下端の前記中心軸周りの前記ねじれの角度は50度以上であり、前記減圧吸収パネルは、前記胴部の周方向に7mm以上10mm以下の幅を有する」ものであるのに対して、引用発明1は、リブの傾斜角度が55゜であり、リブ間の間隔は、17.1mmである点。

イ.相違点についての検討
(ア)本願発明1における「ねじれの角度」は、「減圧吸収パネルの上端に対する下端の前記中心軸周り」における角度である。
これに対して、引用発明1におけるリブの傾斜角度は、ボトルの長手方向軸に対する角度であるから、「減圧吸収パネルの上端に対する下端の前記中心軸周り」の角度ではない。そして、引用文献1には、リブの傾斜角度に関し、リブの上端に対する下端の中心軸周りのねじれの角度をどの程度とするかについて、記載も示唆もない。
ここで、引用文献2(特に段落【0040】を参照)には中心角度範囲を60°とすることが、引用文献3(特に段落【0031】、【0032】を参照)には中心角度位置の変化を60°とすることがそれぞれ記載されている。しかしながら、引用文献2は、柱部15aの上端15taと下端15baの間の中心角度範囲が60°なのであって、「柱15を上記のような傾斜角度αとすることにより、胴部4の筒壁において、どの中心角度位置Eにおいても減圧吸収パネル11を形成した高さ範囲のどこかに柱部15の一部を存在位置させることができる」(段落【0041】)ものであるから、結果的に柱部15a間にある減圧吸収パネル11の中心角度範囲も60°になるとしても、柱部15aの位置を特定するための中心角度範囲であって、減圧吸収パネル11の上端に対する下端の中心軸周りの角度を定めたものではないし、引用文献3は、稜線21を形成する頂部15の上端部と下端部の中心角度位置の変化であり、「稜線21に沿って形成される段部23により稜線21にレリーフ状の視覚効果を付与する」(段落【0036】)ものであるから、稜線の視覚効果のための中心角度位置の変化であって、減圧吸収パネルの上端に対する下端の中心軸周りの角度を定めたものではない。
そうすると、他の文献をみても、減圧吸収パネルの上端に対する下端の中心軸周りの角度を50度以上とする技術的思想は、示されていない。

(イ)次に、本願発明1における減圧吸収パネルの「幅」は、「前記胴部の周方向」における幅である。
これに対して、引用発明1のリブ間の間隔は、リブの中心、すなわち底部壁24の中心間の間隔であることは理解できる。また、引用発明1のリブすなわち溝20は台形断面を有する(請求項3)ものであるから、溝20の開口の幅より底部壁24の幅が狭いことは明らかである。しかし、引用文献1には、底部壁24の幅に関し、周方向の幅をどの程度とするかについて、記載も示唆もない。
ここで、引用文献4(特に段落【0020】を参照)には減圧吸収用のパネル31の最大幅を約15.8mmとすることが記載されている。しかしながら、引用文献4は、パネル31が幅と深さに関して連続的に変化する滑らかな舟形状であり(段落【0029】)、くびれ付きボトル1におけるくびれ部11の最小直径部近傍のみで、パネル31の幅を約15.8mmとするものであるから、ボトルのくびれ形状とパネルの幅変化との関係を前提とした幅の値であって、一様な幅の減圧吸収パネルの幅に関する値を示すものではない。
そうすると、他の文献をみても、減圧吸収パネルの胴部周方向の幅を7mm以上10mm以下とすることは示されていない。

(ウ)そして、本願発明1は、上記<相違点>に係る「前記減圧吸収パネルの上端に対する下端の前記中心軸周りの前記ねじれの角度は50度以上」と「前記減圧吸収パネルは、前記胴部の周方向に7mm以上10mm以下の幅」という二つの構成が一体となって、「中心軸S周りのねじれ角を50度以上とすることにより、減圧吸収効果を高め」(本願明細書段落【0025】)つつも、「所定の吸収容量を確保しつつ、容器の成形性を維持して外観形状を良好に保持することができる。」(同【0027】)」との格別な作用効果を奏する。

(エ)よって、引用発明1において、上記<相違点>に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

ウ.以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び周知技術等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3.本願発明2?4について
本願発明2?4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、本願発明2?4についても同様の理由により、引用発明1及び周知技術等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

4.小括
以上のとおり、本願発明1?4は、原査定の理由により、引用発明1及び周知技術等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第5.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-06-16 
出願番号 特願2015-93431(P2015-93431)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 佐々木 正章
横溝 顕範
発明の名称 合成樹脂製容器  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 片岡 憲一郎  
代理人 杉村 憲司  

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