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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 F21S
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S
管理番号 1363633
審判番号 不服2019-11574  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-03 
確定日 2020-07-14 
事件の表示 特願2015-515748号「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年8月6日国際公開、WO2015/115517、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)1月29日(優先権主張 2014年1月30日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年10月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月31日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年4月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和1年5月28日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年9月3日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物等一覧
1:米国特許出願公開第2012/0120653号明細書
2:特開2013-51118号公報
3:特開2011-126262号公報
4:特開2011-258384号公報
5:国際公開第2010/095710号
以下それぞれ「引用文献1ないし5」という。

第3 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、令和1年9月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
照明光を発光する照明光源と、該照明光源を内蔵したプラスチック製のカバーユニットと、取り付けのための本体を備えた照明装置であって、
前記カバーユニットが、照明光源からの照明光を透過・拡散・反射させる性質を有するプラスチックから形成される表カバー部と、該表カバー部で一部反射された照明光を再度表カバー部に向けて反射・拡散する性質を有するプラスチックから形成される裏カバー部とから構成され、
異なる光学特性を有する前記表カバー部と裏カバー部がダブルモールドにより一体成形されてカバーユニットが構成されることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記照明光源を実装した実装基板を固定する基板ホルダーを設けたことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記基板ホルダーを裏カバー部に係合させて固定することを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記基板ホルダーの付勢力により実装基板を裏カバー部に押圧させて固定することを特徴とする請求項2又は3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記表カバー部に黄色の色素が含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の照明装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。また、和訳は当審が作成した。以下同様である。)。
(1a)
「[0030] FIG. 1illustrates an isometric view of one embodiment of the LED-based luminaire 100of the present disclosure. The luminaire 100 includes an extruded enclosure101. The enclosure 101 comprises a flat side 109 and one or more open ends 108.The enclosure 101 has an interior volume which encloses one or more LEDs 105and one or more LED circuit boards 106. The one or more LEDs 105 are coupled tothe one or more LED circuit boards 106.
・・・
[0037] Referring back to FIG. 1, the one or more LEDs 105 emit light in aforward direction and in the direction of a curved portion 132 of the enclosure101. The curved portion 132 of the enclosure 101 is optically clear so thatlight may be transmitted through the plastic. Other parts of the enclosure 101,such as the flat side 109, for example, may be colored or painted. This mayeliminate glow of the light from internal reflections. This may also help tohide other internal components.
[0038] In one embodiment, the enclosure 101 may be extruded with two ormore different types of plastic materials during the extrusion process. Forexample, the enclosure 101 may be extruded with a transparent plastic and anon-transparent plastic. The transparent plastic may be directed to the curvedportion 132 while the nontransparent material may be directed to the flat side109.
[0039] In one embodiment, some parts of the enclosure 101 may be textured.Providing texture helps to diffuse light emitted by the individual LEDs 105 togive the luminaire 100 a less #pixelated# look. The texture may also help tohide other internal components. The texture may be applied with any processsuch as sand blasting, chemical etch and the like. Although the surface of theenclosure 101 may have texture, the enclosure 101 may still maintain asubstantially constant cross section along the length of the extrusion.
[0040] In one embodiment, the enclosure 101 may also be extruded to havefeatures such as ribs to help diffuse light. FIG. 7 illustrates a crosssectional side of one embodiment of the LED-based luminaire 100. FIG. 7illustrates one or more ribs 114 on the curved portion 132 of the enclosure101. It should be noted that the size of the ribs 114 are exaggerated forillustration purposes.
・・・
[0050] Referring back to FIG. 1, the extruded enclosure 101 may compriseany type of optically clear material that can be extruded such as polymers,plastics, glass, or ceramics. Any material may be used to extrude the enclosureas long as the material has a transmission to visible light of more than 70%.」
《和訳》
「[0030] 図1は、本開示のLEDベースの照明器具100の一実施形態の等角図を示す。照明器具100は、押出成形された筐体101を備えている。筐体101は、平坦面109と、1つ又はより多くの開放端108を備えている。筐体101は、1つまたは複数のLED(105)と、1つ又はそれ以上のLED回路基板106を収容する内部容積を有する。1つまたは複数のLED105は、1若しくは複数のLED回路基板106に結合されている。
・・・
[0037] 図1に戻って参照すると、1つまたは複数のLED105が順方向に筐体101の湾曲部132の方向に光を放射する。筐体101の湾曲部132は光学的に透明で光がプラスチックを透過することができるようになっている。筐体101の他の部分は、平坦な側部109など、例えば、着色又は塗装することができる。これは、内部反射からの光の輝きを排除することができる。これはまた、他の内部部品を隠すのに役立つことができる。
[0038] 一実施形態では、筐体101は、押出工程中に、プラスチック材料の2種以上の異なるタイプで押出成形されてもよい。例えば、筐体101は、透明プラスチックおよび不透明プラスチックで押出成形することができる。透明プラスチックは湾曲部分132に宛てられ、不透明な材料は平坦な側部109に宛てられてもよい。
[0039] 一実施形態では、筐体101のいくつかの部分はテクスチャ加工されてもよい。テクスチャを提供することは、照明器具100により少ない「ピクセル化された」外観を与えるために、個々のLED105によって放出された光を拡散させるのに役立つ。テクスチャはまた、他の内部部品を隠すのに役立つことができる。テクスチャは、サンドブラスト、化学エッチング等のようないずれかの方法を適用することができる。筐体101の表面はテクスチャを有していてもよいが、筐体101は、押し出の長さに沿って実質的に一定の断面を依然として維持することができる。
[0040] 一実施形態において、筐体101は、また、光を拡散するのを助けるように、リブのような特徴を有するように押し出されてもよい。図7は、LEDベースの照明器具100の一実施形態の側断面を示している。図7は、筐体101の湾曲部分132に1つ以上のリブ114を示している。リブ114の大きさは、説明目的のために誇張されていることに留意すべきである。
・・・
[0050] 再び図1を参照すると、筐体101は、ポリマー、プラスチック、ガラス、セラミックスなどのような押出成形することができる光学的に透明な任意の種類の材料を含んでいてもよい。任意の材料は、70%以上の可視光透過率を有するものであれば、筐体を押し出すために使用することができる。」

(2)引用文献1に記載された発明
摘記(1a)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「筐体101を備えている、照明器具100であって、
筐体101は、1つまたは複数のLED105を収容する内部容積を有し、
筐体101は、透明プラスチックおよび不透明プラスチックで押出成形され、透明プラスチックは、光学的に透明で光がプラスチックを透過することができるようになっている、湾曲部分132に宛てられ、不透明な材料は、平坦な側部109に宛てられる、
照明器具100。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「【0014】
照明装置は、装置本体1と、この装置本体1に配設された光源部2と、光源部2を覆う乳白色であって透光性のカバー部材3と、光源部2を点灯制御する点灯装置4と、前記装置本体1の中央部に配設されたセンターカバー5と、側板6とを備えている。このような照明装置は、前面側を光の照射面とし、背面側を天井面への取付面としている。
【0015】
図3及び図4に代表して示すように、装置本体1は、横長で略長方形状のシャーシであり、溶融亜鉛めっき鋼板等の熱伝導性を有する金属板を折曲して形成されている。この装置本体1は、放熱部材としての機能を有していて、中央部には、長手方向に沿って平坦な天板面11が形成されており、両側には、長手方向に沿って前面側へ突出する樋状の折曲した配設部12が形成されている。配設部12は、長手方向に沿って細幅の平坦面を有しており、光源部2が配設されるようになっている。
【0016】
また、装置本体1の天板面11の両端側には、一対の取付穴11aが形成されている。この取付穴11aには、天井の構造体に設けられた一対の取付ボルトが背面側から貫通し、装置本体1が天井面に設置されるようになっている。」
(2b)
「【0023】
また、基板21の表層には、発光素子22の実装領域や部品の実装部分を除いて、ほとんど全面に反射率の高い白色の前記レジスト層21bが積層されている。これにより発光素子22が放射した光のうちで横方向へ向かった光は、反射率の高い白色のレジスト層21bの表面で反射され前面側へ放射される。
・・・
【0028】
カバー部材3は、図3乃至図5に代表して示すように、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の絶縁性の材料から乳白色で透光性を有して押出成形によって作られている。カバー部材3は、長尺のケース状に形成されていて、断面形状が左右対称であり、装置本体1の両側に形成された配設部12に配設されるようになっている。また、このカバー部材3には、前記光源部2が保持される。
・・・
【0045】
照明装置の設置状態において、点灯装置4に電力が供給されると、光源部2に直流出力が供給され、基板21を介して発光素子22に通電され、各発光素子22が点灯する。発光素子22から出射された光は、蛍光体層23を透過し、乳白色の透光性のカバー部材3を透過して拡散され、主として下方に放射され所定の配光範囲が照明される。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「【0109】
具体的には、例えばアルミニウム等金属のプレス成形体、もしくは透明なガラスの注型成形体や本発明の熱伝導層による成形体、透明性を有する樹脂材料(ポリカーボネート、アクリル等)による射出成形やブロー成形、注型成形等による成形体等の表面の少なくとも一部(例えば図34においては記号22a、22bに例示する領域)に、アルミニウム、銀、ステンレス等の金属膜およびまたは誘電体多層膜等による光反射層を真空蒸着、スパッタリング等により形成してなる光反射性の成形体等が好適に挙げられる。光反射層はその膜厚や積層構成の制御により、完全光反射性の層としても良いし、ハーフミラー状に光反射性と光透過性を兼ね備えた層としても良い。また更には、反射膜の下地となる周囲筐体の成型体表面への凹凸形成や、反射膜の積層条件の制御等により、反射層の表面が微細な凹凸を有し、僅かな散乱反射性を有した反射層としても良い。
【0110】
また場合によっては、光反射性の高いフィルム、例えば白色反射PETフィルム、PENフィルム(例えば帝人デュポンフィルム製商標名 テトロンフィルム、テオネックスフィルム、テフレックスフィルムの白色タイプ等)、多層光干渉フィルム(例えば帝人デュポンフィルム製 商標名 MLFフィルム)、金属蒸着の為されたフィルム等を周囲筐体の表面(一般には内面側)に貼り付ける、もしくは周囲筐体の成形時にインサート成形により一体化して積層する、もしくは周囲筐体の近傍(一般には内面側)にフィルムを単独で自立させて配置する等の方法も採ることができる。
【0111】
光反射層は必要に応じ、その下地に樹脂や金属薄膜等のコーティングによるプライマー層を設けて、密着性や耐久性の向上を図ることが好ましく、また光反射層上に表面保護層として樹脂や金属酸化膜等を積層コーティングして、耐摩耗性向上や膜質劣化抑制を図っても良い。尚、プライマー層や表面保護層は照明色の調整や意匠上の必要に応じ、着色が為されていても良い。尚、光反射面となる成型体表面は光を散乱/拡散反射する目的、意匠性を高める目的で周期的もしくはランダムなパターンで凹凸形状の付与を行っても良い。
【0112】
また成形体の外面側には意匠性を高める観点で塗料のコーティングを施したり、光学的機能や触感の向上の為、適当な凹凸加工を施しても良い。またこれら光源周囲筐体を形成する樹脂、ガラスに関しては、照明色の調整や意匠上の必要に応じ、着色が為されていても良い。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(4a)
「【0014】
器具本体12の内側には、LED11から放射される光を反射するリフレクタ14が複数設けられており、各リフレクタ14はLED11と1対1で対応している。各リフレクタ14の出光側開口部は、器具本体12の出射面22を形成している。なお、リフレクタ14は、1つが複数のLED11に対応するように設けられていてもよい。図示しないが、器具本体12の内側には、さらに、LED11に電力を供給する電源装置や、電源端子台等の電装部品が実装される。
【0015】
例えば、器具本体12は、板金を折り曲げあるいは組み合わせて、側面形状が略台形状をなす直方体に形成される。本実施の形態では、図4に示すように、器具本体12の断面形状が、上底部分を出射面22とし、下底部分を取付面21とし、左右両側の斜辺部分を傾斜側面23とする略台形状になっている。
【0016】
カバー13は、器具本体12の出射面22を覆うように設置され、出射面22から出射される光を拡散させる。カバー13は、器具本体12の傾斜側面23の上記少なくとも一部(内側に傾斜している部分)の延長面24(LED11が取り付けられた面から広がる傾斜面からなる側面外形面)よりも外側(器具外)に突出する凸部31(図4の斜線部)を有する。本実施の形態では、器具本体12の傾斜側面23がLED11の配列方向に沿って延在しているため、カバー13の凸部31は、LED11の配列方向と直交する方向に向かって外側に突出している。
【0017】
例えば、カバー13は、側断面形状が略蒲鉾形状をなしており、器具本体12に取り付けられる複数のLED11の前面に取り付けられる。本実施の形態では、図4に示すように、カバー13の断面形状が、湾曲部分を凸部31の外表面の少なくとも一部とする略蒲鉾状になっている。
【0018】
例えば、カバー13は、乳白アクリル等の拡散透光性を有する合成樹脂材料で形成される。カバー13は、内外表面が細かく凹凸加工されており、例えば透過率が70%の場合、導光及び乱反射する光は約30%である。
【0019】
本実施の形態では、光源として、器具本体12の取付面21に対して略垂直方向に光を放射するLED11を用いているが、カバー13に、器具本体12の傾斜側面23の延長面24よりも外側に突出する凸部31を設けているため、LED11から放射される光が器具本体12の傾斜側面23にも当たる。また、器具本体12の傾斜側面23に当たって反射した光がさらに器具設置面20にも当たる。これにより、照明器具10の光源部分と器具設置面20との輝度比が小さくなる。
【0020】
図5は、照明器具10の側面図であり、カバー13からの拡散光を図示したものである。
【0021】
図5に示すように、カバー13は、LED11の前面(発光面)を覆うように器具本体12に取り付けられるので、LED11が発する光が直接看者の視野に入らず、輝度が低減される。また、LED11から放射された光の一部は、カバー13の板厚内を導光したり、カバー13内部で乱反射したりした後に、凸部31で拡散し、器具本体12の傾斜側面23及び器具設置面20に達するため、LED11発光部とその周囲との輝度比が小さくなる。
【0022】
カバー13の内表面32と、LED11が取り付けられた面に対向するカバー13の外表面33が平滑で、カバー13の側面側の外表面34に細かい凹凸加工をした場合、導光及び乱反射する光を器具設置面20方向に効率的に拡散できるため、LED11発光部とその周囲との輝度比をより小さくすることができる。
【0023】
以上のように、本実施の形態では、器具本体12の取付面21に対して垂直方向を照射する複数のLED11の照射方向に、器具本体12の断面の側面外形面よりも器具外に凸形状である拡散透光性を有するカバー13が設けられているため、光源より照射された光の一部を照明器具10の側面や器具設置面20に拡散させることができる。これにより、グレアが軽減でき、例えば室内天井に明るさ感が得られる照明器具10が提供できる。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
(5a)
「[0037] カバー5は、図3に示すようにx方向に延びる断面円弧状の帯状であり、LEDモジュール3からの光を拡散しつつ透過するたとえば乳白色の樹脂からなる。図4に示すように、カバー5の両端縁には、係止片51,52が形成されている。
・・・
[0053] 図14に示すように、本実施形態においては、支持部材4のブラケット42のアウター部44にリフレクタ44aが設けられている。リフレクタ44aは、LEDモジュール3からy方向に発せられた光をz方向下方に反射するためのものである。リフレクタ44aの端縁に、係止溝46、47がそれぞれ形成されており、カバー5が取り付けられている。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)
引用発明の「1つまたは複数のLED105」、「筐体101」及び「照明器具100」は、それぞれ、本願発明1の「照明光を発光する照明光源」、「カバーユニット」及び「照明装置」に相当する。
(イ)
上記(ア)を踏まえると、以下のことがいえる。
引用発明の「1つまたは複数のLED105を収容する内部容積を有し」ている「筐体101」は、本願発明1の「照明光源を内蔵した」「カバーユニット」に相当する。
また、引用発明の「透明プラスチックおよび不透明プラスチックで押出成形され」る「筐体101」は、本願発明1の「プラスチック製のカバーユニット」に相当する。
(ウ)
上記(イ)から、引用発明の「筐体101を備えている、照明器具100であって、筐体101は、1つまたは複数のLED105を収容する内部容積を有し、筐体101は、透明プラスチックおよび非透明プラスチックで押出成形され」る構成と、本願発明1の「照明光を発光する照明光源と、該照明光源を内蔵したプラスチック製のカバーユニットと、取り付けのための本体を備えた照明装置」の構成とは、「照明光を発光する照明光源と、該照明光源を内蔵したプラスチック製のカバーユニットを備えた照明装置」の構成において共通している。

(ア)
引用発明の「光学的に透明で光がプラスチックを透過することができるようになっている湾曲部分132」は、「光が」「透過」して出射する部分であるから、「照明器具100」の表になっていることが明らかであり(必要であれば、FIG.2及び摘記(1a)の段落[0037]の「1つまたは複数のLED105が順方向に筐体101の湾曲部132の方向に光を放射する。」という記載も参照。)、本願発明1の「表カバー部」に相当するし、引用発明の「平坦な側部109」は、本願発明1の「裏カバー部」に相当する。
(イ)
引用発明において、「不透明な材料」が「不透明プラスチック」を意味していることは、明らかであり、引用発明の「透明プラスチック」と、引用発明の「不透明な材料」すなわち「不透明プラスチック」とが、異なる光学特性を有していることは明らかであり、そのため、実質的に、異なった色合いとなっている。
(ウ)
本願明細書の段落【0028】には、「ダブルモールド(二色成形)を用いて成形され」と記載されているから、本願発明1の「ダブルモールドにより一体成形されて」いることは、二色で一体成形されるものと理解でき、上記(イ)を踏まえると、引用発明の「透明プラスチックおよび不透明プラスチックで押出成形され」ている構成は、本願発明1の「ダブルモールドにより一体成形されて」いる構成に相当する。
(エ)
また、上記(ア)?(ウ)及び上記ア(ア)を踏まえると、引用発明の「筐体101は、透明プラスチックおよび不透明プラスチックで押出成形され、透明プラスチックは、光学的に透明で光がプラスチックを透過することができるようになっている湾曲部分132に宛てられ、不透明な材料は、平坦な側部109に宛てられる」ことと、本願発明1の「前記カバーユニットが、照明光源からの照明光を透過・拡散・反射させる性質を有するプラスチックから形成される表カバー部と、該表カバー部で一部反射された照明光を再度表カバー部に向けて反射・拡散する性質を有するプラスチックから形成される裏カバー部とから構成され、異なる光学特性を有する前記表カバー部と裏カバー部がダブルモールドにより一体成形されてカバーユニットが構成されること」とは、「前記カバーユニットが、プラスチックから形成される表カバー部と、プラスチックから形成される裏カバー部とから構成され、異なる光学特性を有する前記表カバー部と裏カバー部がダブルモールドにより一体成形されてカバーユニットが構成される」ことにおいて共通している。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「照明光を発光する照明光源と、該照明光源を内蔵したプラスチック製のカバーユニットを備えた照明装置であって、
前記カバーユニットが、プラスチックから形成される表カバー部と、プラスチックから形成される裏カバー部とから構成され、
異なる光学特性を有する前記表カバー部と裏カバー部がダブルモールドにより一体成形されてカバーユニットが構成される照明装置。」
<相違点1>
本願発明1は、「取り付けのための本体」を備えた照明装置であるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1は、カバーユニットが、「照明光源からの照明光を透過・拡散・反射させる性質を有する」プラスチックから形成される表カバー部と、「該表カバー部で一部反射された照明光を再度表カバー部に向けて反射・拡散する性質を有する」プラスチックから形成される裏カバー部とから構成され、異なる光学特性を有する前記表カバー部と裏カバー部がダブルモールドにより一体成形されてカバーユニットが構成されるものであるのに対して、引用発明は、筐体101が、「透明プラスチックおよび不透明プラスチックで押出成形され、透明プラスチックは、光学的に透明で光がプラスチックを透過することができるようになっている、湾曲部分132に宛てられ、不透明な材料は、平坦な側部109に宛てられる」ものである点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点2について
事案に鑑み、相違点2から検討する。
(ア)
上記相違点2に係る本願発明1の構成、すなわち、「前記カバーユニットが、照明光源からの照明光を透過・拡散・反射させる性質を有するプラスチックから形成される表カバー部(以下「構成A」ともいう。)と、該表カバー部で一部反射された照明光を再度表カバー部に向けて反射・拡散する性質を有するプラスチックから形成される裏カバー部(以下「構成B」ともいう。)とから構成され、異なる光学特性を有する前記表カバー部と裏カバー部がダブルモールドにより一体成形されてカバーユニットが構成される」ことの技術的意義は、構成Aの「表カバー部」を「形成」する「プラスチック」と構成Bの「裏カバー部」を「形成」する「プラスチック」が、「ダブルモールドにより一体成形されて」、その「一体成形」後に、それらの「プラスチック」に何らかの加工を施すことなく、「一体成形され」た「プラスチック」自体が、上記のような各「性質を有する」ものであるから、表カバー部と裏カバー部との間で、反射・拡散が繰り返されて輝度分布が均斉化され、かつ、カバーに機械的な継ぎ目ができないため歪みにくくなるものと理解できる。
また、そのため、上記構成を備える本願発明1は、「輝度分布の均斉度が高い発光面が得られ、かつエネルギー効率を向上させるとともに、実装基板に発生する熱による部材の歪みが少なく、長期間の使用に耐え得る照明装置を提供する」という課題(本願明細書の段落【0010】)を解決できるものと理解できる。
(イ)
これに対して、引用発明は、「筐体101は、透明プラスチックおよび不透明プラスチックで押出成形され、透明プラスチックは、光学的に透明で光がプラスチックを透過することができるようになっている」ものであり、「透明プラスチックおよび不透明プラスチック」は、いずれも、拡散・反射に係る構成ついては特定されておらず、本願発明1の構成A及び構成Bを備えていないから、表カバー部と裏カバー部との間で、反射・拡散が繰り返されて輝度分布が均斉化されるものではない。
補足すると、引用文献1には、押出成形による形状(リブ114)や押出成形の後に行うテクスチャ加工(サンドブラスト、化学エッチング等)によって、光の拡散機能を得ることが記載されており(摘記(1a)の段落[0039]及び[0040])、また、着色又は塗装によって、光の輝きを排除することが記載されている(摘記(1a)の段落[0037])ことから、引用発明の各「プラスチック」自体は、拡散・反射に係る構成を備える必要性はなく、光が透過できるものであれば足るものであり、各「プラスチック」自体の性質を変えることは想定されていない(拡散などの構成は、機械的構成や着色を付加することで得ることができるものである。)。
このことは、引用文献1(摘記(1a)の段落[0050])に、「任意の材料は、70%以上の可視光透過率を有するものであれば、筐体を押し出すために使用することができる。」と記載されていることからも明らかである。
(ウ)
そして、引用文献2ないし5(摘記(2b)?(5a)の下線部分参照)には、リフレクタや積層などプラスチックとは別の構成を付加することで光を反射させ、凹凸などの形状を採用することで光を拡散させることは記載されているが、プラスチック自体が反射・拡散する性質のものは記載されておらず(特に、裏カバー部に対応するプラスチック自体が反射するものは記載されておらず)、上記相違点2に係る本願発明1の構成、構成A及び構成B(特に構成B)及び本願の課題(上記(ア))は、いずれも記載も示唆もされていない。
(エ)
したがって、引用発明において、本願の課題(上記(ア))を解決するために、各「プラスチック」自体の性質を変えて、反射・拡散に係る構成を得ることは、想定されていないから(上記(イ))、当業者が容易になし得たものではなく、また、引用発明に、引用文献2ないし5に記載された技術事項(上記(ウ))を適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の構成にはならない。
(オ)
以上から、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

イ 小括
よって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?4について
本願発明2?4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
令和1年9月3日付けの手続補正により、本願発明1?5は、少なくとも上記相違点2に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、上記第5で述べたとおり、拒絶査定において引用された引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-06-23 
出願番号 特願2015-515748(P2015-515748)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (F21S)
P 1 8・ 121- WY (F21S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 飯塚 向日子杉浦 貴之竹中 辰利  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 出口 昌哉
氏原 康宏
発明の名称 照明装置  
代理人 村雨 圭介  
代理人 早川 裕司  
代理人 加藤 卓  

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