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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1363651
審判番号 不服2019-5382  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-23 
確定日 2020-06-24 
事件の表示 特願2015-554148「モノリシックな白色ダイオードを製造するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月31日国際公開、WO2014/114731、平成28年 3月22日国内公表、特表2016-508668〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2014年1月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年1月24日、フランス)を国際出願日とする出願であって、以降の手続は次のとおりである。

平成29年10月31日 拒絶理由通知(同年11月6日発送)
平成30年 5月 2日 手続補正・意見書提出
同年 5月31日 拒絶理由通知<最後>(同年6月4日発送)
同年10月 3日 意見書提出
同年12月26日 拒絶査定(平成31年1月4日謄本送達)
平成31年 4月23日 審判請求

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成30年5月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1により特定される以下のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
発光ダイオードを製造する方法であって、前記方法は、支持体(50、10)の前面上に発光層(20)を準備するステップ(220)を含み、前記発光層は、異なる波長を放射する少なくとも三つの隣接する量子井戸(21、22、23、24)を含み、前記量子井戸(21、22、23、24)は、前記支持体の前記前面と接触しており、
前記発光層を堆積させる前記ステップは、前記支持体の前記前面が異なる温度の少なくとも三つの領域を含むように、前記前面の反対側の前記支持体の背面の温度を局所的に変化させることにあり、
前記支持体の局所的な温度変化は、前記支持体の異なる厚みの領域上で達成される、ことを特徴とする方法。」

3 刊行物等に記載された発明
(1)引用例1: 特開2010-92952号公報
ア 原査定の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2010-92952号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに、以下の記載がある(下線は当審で付加。以下同様。)。
a
「【0001】
本発明は、同一の発光層で白色発光が可能な白色LEDの製造装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色発光が可能な白色LEDは、ワン・チップ型とマルチ・チップ型に大別することができる。
【0003】
・・・(中略)・・・
【0004】
一方、マルチ・チップ型白色LEDは、2色以上のLEDを1つのチップに組み込んで同時に発光させ、それらの光を混合して白色光を得るものである。マルチ・チップ型白色LEDは、2色以上から白色光が得られるため、色純度の高い白色光を得ることができる特徴がある。
マルチ・チップ型白色LEDは、例えば、特許文献4?6に開示されている。
【0005】
特許文献4は、3色LEDの原価低減と小型化を図ることを目的としている。
そのためこの文献では、図10に示すように、3色LED50は、絶縁基板51上に一組の赤色LED素子58a,緑色LED素子58b,青色LED素子58cが近接して形成される。各色のLED素子は基板51上に形成されたIII族元素の窒化物半導体より成るバッファ層55と、その上のpn接合されたIII族元素の窒化物半導体層56,57を有する。pn接合半導体層は各色によってIII族元素の組織化が異なる。例えば赤色素子のpn接合層はInx・Ga(1-x)・N(x=1.0)とされ、緑色素子ではInx・Ga(1-x)・N(x≒0.4)とされ、青色素子ではInx・Ga(1-x)・N(x≒0.1)とされるものである。
【0006】
特許文献5は、単一層領域から異なる発光スペクトルピークを発光可能な発光素子を目的とする。
そのため、この文献では、図11に示すように、p型窒化物半導体67とn型窒化物半導体66との間に少なくともInとGaを含有する窒化物半導体の発光層61を有する発光素子である。特に、発光層61は単一層内でInの組成比が異なる複数の混晶領域を有する発光素子である。
【0007】
特許文献6は、液晶用バックライトや表示関連機器用として性能的に十分な色再現性が良い白色光を発光することができる窒化物半導体発光素子を目的とする。
そのため、この文献では、図12に示すように、基板71上に、窒化物半導体からなるn型層、活性層、及びp型層が積層されてなる窒化物半導体発光素子において、互いにバンドギャップエネルギーの異なる複数の活性層75、77、79の間に、n型ドーパントとp型ドーパントが共にドープされたキャリア発生層76、78を形成する。複数の活性層75、77、79は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)を発光する3つの活性層であり、そのバンドギャップエネルギーは基板71に近いものほど小さくなっている。
【0008】
【特許文献1】特開2004-127988号公報、「白色発光装置」
【特許文献2】特開2003-306674号公報、「白色LED用蛍光体とそれを用いた白色LED」
【特許文献3】特開2005-8844号公報、「蛍光体及びそれを用いた発光装置」
【特許文献4】特開平11-121811号公報、「3色LEDとそれを用いた表示パネル及び表示装置と製法」
【特許文献5】特許第3511923号公報、「発光素子」
【特許文献6】特開2006-303259号公報、「窒化物半導体発光素子と窒化物半導体の成長方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4の3色LEDは、各色のpn接合される半導体材料を共通のIII族元素(In,Ga,Al等)の窒化物を用い、その組成比を変えることによってR,G,Bの各色を発光させると共に、絶縁基板にサファイア等を用いて共用化を図っている。
しかし、特許文献4の3色LEDの製造方法は、R,G,Bの各色のLEDをエッチング除去して形成したホールに順次形成するので、エッチング工程と成膜工程を繰り返す必要があり、製造工程が複雑である。また、各色のLEDをエッチングで区分する必要があるため緻密化が困難である問題点があった。
【0010】
特許文献5の発光素子の製造方法は、発光層の成長時に、発光層が、単一層内から混色により白色となる複数の発光スペクトルピークを発光し、且つ、短波長側の発光スペクトルの半値幅が、より長波長側の発光スペクトルの半値幅よりも狭く、且つ、短波長側の発光スペクトルピーク強度が、より長波長側の発光スペクトルピーク強度よりも低いピーク強度比を有するものとなるように、原料ガス中のH2分圧を高くものである。
しかし、この特許文献5の製造方法は、発光層が単一量子井戸構造の場合、組成不安定領域の形成を利用するため、原理的に2色の発光しかできない。また、発光層が多層量子井戸構造の場合には、原理的には3色の発光が可能であるが、各層毎に原料ガス中のH_(2)分圧を変化させてそれぞれ独立した条件で成膜するため、製造工程が複雑になる問題点があった。
【0011】
特許文献6の窒化物半導体の成長方法は、互いにバンドギャップエネルギーの異なる複数の活性層の間に、n型ドーパントとp型ドーパントが共にドープされたキャリア発生層を形成するため、各層毎にそれぞれ独立した条件で成膜するため、製造工程が複雑になる問題点があった。
【0012】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、少ない製造工程で、混色により白色となる2色以上の発光部を、単一の発光層内に、任意の面積比率で緻密に形成することができる白色LEDの製造装置と方法を提供することにある。」

b
「【0013】
本発明によれば、基板上に有機金属気相成長法又は分子線エピタキシー法により結晶を成長させる結晶成膜装置と、基板表面に加熱用レーザ光を照射する加熱レーザ照射装置とを備え、
前記加熱用レーザ光は、成長基板のバンドギャップより大きいエネルギー範囲の波長を有し、
加熱レーザ照射装置は、前記加熱用レーザ光を基板上で1次元もしくは2次元的に照射するレーザ照射光学装置を備え、
発光層成膜時に、基板上の一部に前記加熱用レーザ光を局所的に照射して、同一発光層に混色により白色となる複数の発光部を形成する、ことを特徴とする白色LEDの製造装置が提供される。
【0014】
・・・(中略)・・・
【0016】
また本発明によれば、窒化アルミニウムインジウムガリウムを発光層とする白色LEDの製造方法であって、
単一の発光層を2以上の発光部に区分し、各発光部の組成を、混色により白色となるように設定し、
同一の成膜条件において、前記2以上の発光部を成膜できる複数の処理温度を設定し、
有機金属気相成長法又は分子線エピタキシー法により前記発光層を形成する際に、基板の加熱温度を前記処理温度の最低温度又はそれ以下に設定し、
前記発光部の一部又は全部に、加熱用レーザ光を照射し、局所的に基板の温度を上昇させる、ことを特徴とする白色LEDの製造方法が提供される。
【0017】
・・・(中略)・・・
【0019】
すなわち、上記本発明の装置および方法によれば、
結晶成膜装置により、有機金属気相成長法又は分子線エピタキシー法により前記発光層を形成する際に、基板の加熱温度を前記処理温度の最低温度又はそれ以下に設定し、
加熱レーザ照射装置を用いて、前記発光部の一部又は全部に、加熱用レーザ光を照射し、局所的に基板の温度を上昇させるので、

従ってこの装置および方法により、少ない製造工程で、混色により白色となる2色以上の発光部を、単一の発光層内に、任意の面積比率で緻密に形成することができる。」

c
「【0021】
図1は、本発明により製造される白色LEDの模式的断面図である。
この図において、発光層1は、発光層1は、窒化アルミニウムインジウムガリウム(Al_(x)In_(y)Ga_(1-x-y)N:0≦x≦1、0≦y≦1)の単一量子井戸構造からなる。
以下、Al_(x)In_(y)Ga_(1-x-y)Nを単にAlInGaNと記載する。
また、以下、発光層1が窒化インジウムガリウムInGaNである場合について主に説明するが、AlInGaNにも同様に本発明を適用することができる。
【0022】
図1において、単一の発光層1は、2以上の発光部1a,1b,1cに区分され、各部分1a,1b,1cのInモル比率は、混色により白色となるように設定されている。
【0023】
またこの図において、2は基板、3はGaNからなるバッファ層、4はn-GaNからなるn型層、5はp-AlGaNからなるp型クラッド層、6はp-GaNからなるp型コンタクト層、7はn型電極、8はp型電極である。
これらの各層は、有機金属気相成長法(MOCVD)又は分子線エピタキシー法(MBE)により成長形成される。
【0024】
基板2は、好ましくはサファイア基板であるが、他にシリコン、SiC等を用いることができる。また、バッファ層3は、この例ではGaNであるが、他にGaAlN、AlN、AlInN等で構成することができる。
【0025】
p型電極8にはニッケル(Ni)や金(Au)等の金属を用いることができ、n型電極7にはアルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の金属を用いることができる。
【0026】
上述した構成により、p型電極8を+、n型電極7を-に印加することにより、単一の発光層1の2以上の発光部1a,1b,1cを異なる波長で発光させ、その混色により白色光を発光させることができる。
【0027】
・・・(中略)・・・
【0031】
図5は、ある成膜条件における成膜温度と発光層中のInモル比率との関係図である。
この図から、同一の成膜条件において成膜温度を変化させることにより、発光層中のInモル比率を変えることができることがわかる。
【0032】
図6は、本発明による白色LED製造装置の模式図である。
この図において、本発明の白色LED製造装置は、基板2上に有機金属気相成長法(MOCVD)又は分子線エピタキシー法(MBE)により結晶を成長させる結晶成膜装置10と、基板表面に加熱用レーザ光21を照射する加熱レーザ照射装置20と、基板表面に表面反応を促進する反応促進用レーザ光31を照射する反応促進レーザ照射装置30とを備える。
【0033】
・・・(中略)・・・
【0041】
上述した加熱レーザ照射装置20の構成により、発光層1の成膜時に、成長基板2(具体的にはn型層4)が吸収する波長を有する加熱用レーザ光21を基板2に照射し、局所的に基板2の温度を上昇させることができる。
なおこの温度上昇は、発光する波長に対応する組成のInGaNが成長するようにレーザの出力、照射時間等を調整する。
【0042】
図6において、反応促進レーザ照射装置30は、レーザ発生装置32及びレーザ走査ミラー34を備え、基板表面に表面反応を促進する反応促進用レーザ光31を照射する。
反応促進用レーザ光31は、エキシマレーザやYAGレーザ等の高出力パルスレーザが好適であるが、成長表面の反応を促進させるため、成長層が吸収する波長を有し、前駆体を励起・分解して結晶膜を成長させることができるエネルギーに相当する波長のレーザ光を出射できるものであればこれに限定されない。
なお、基板全面に均一に反応促進用レーザ光31を照射するため、均一化する光学系などにより均一化されたビームで照射することが望ましい。
【0043】
図8は、ガス組成中のIn/Gaモル比率と発光層中のInモル比率との関係図である。この図において、横軸は発光層成膜時のガス組成中のIn/Gaのモル比率であり、縦軸は発光層中のInモル分率である。また図中の各線は各成膜温度における理論値であり、○●□は実験値である。
この図から、成膜時のガス組成中が一定の場合(例えば図でIn/Gaのモル比率が0.5の場合)でも、成膜温度を変えることにより、発光層中のInモル分率を変化させることができることがわかる。」

d
「【0044】
次に、本発明による白色LEDの製造方法を説明する。
本発明の製造方法では、図1に示したように、単一の発光層1を、2以上の発光部1a,1b,1cに区分し、各部分1a,1b,1cのInモル比率を、混色により白色となるように設定する。
例えば、発光部1a,1b,1cがそれぞれ赤色、緑色、青色を発光する場合、図4からInモル比率をそれぞれ0.4前後、0.3前後、0.2前後に設定すればよいことがわかる。
各部分1a,1b,1cの大きさは、レーザ光の走査により実現できる限りで任意であり、直径1μm以下であるのが好ましいが、直径1mm以上であってもよい。
また、各部分1a,1b,1cの面積比率は、各部分の発光強度に応じて、混色により白色となる限りで、任意に設定するのがよい。
【0045】
次に、上記各Inモル比率を成膜できる処理温度を図5又は図8から設定する。
例えば、Inモル比率が0.4前後、0.3前後、0.2前後に対し、図5から発光部1a,1b,1cの処理温度をそれぞれ約650℃、約675℃、約720℃に設定する。
【0046】
・・・(中略)・・・
【0052】
上述したように、窒化物半導体の発光層(AlInGaNの組成で形成される)を成長させる場合、成長温度を変化させるとInGaN層のInモル分率が減少する。
この特性を利用して、本発明では、組成の最も高いInGaNを成長させるための成長条件(原料ガス濃度、基板温度)で成長させながら、基板面にCWレーザを局所的(必要な場所)に照射して、照射部分のみを温度上昇させて、In組成を減少させることで、レーザ照射された部分とされない部分において異なる発光波長を有する発光層を形成する。
例えば、青色発光の発光層と黄色発光の発光を形成することにより、白色発光の発光層を同一面内に形成することができる。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更の加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、窒化インジウムガリウムについて詳述したが、窒化アルミニウムインジウムガリウム(Al_(x)In_(y)Ga_(1-x-y)N:0≦x≦1、0≦y≦1)にも同様に適用することができる。」

e ここで、図1および図6は以下のものである。
図1


図6


イ 図1とともに前記アcに摘記した段落【0022】?【0023】の記載を参照すると、白色LEDは、基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4、単一の発光層1、p-AlGaNからなるp型クラッド層5、およびp-GaNからなるp型コンタクト層6、がこの順に積層され、さらにn型電極7およびp型電極8を備え、ここで、単一の発光層1は、3つの発光部1a,1b,1cに区分されていることがわかる。

ウ 前記アcの段落【0031】の記載から、前記アbの段落【0016】における、「前記発光部の一部又は全部に、加熱用レーザ光を照射し、局所的に基板の温度を上昇させる」ことは、当該発光部を形成させるときになされることであることは明らかである。

エ 引用発明
以上を総合すると、引用例1には以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明」という。)。
「窒化アルミニウムインジウムガリウムを発光層とする白色LEDの製造方法であって、
前記白色LEDは、基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4、単一の発光層1、p-AlGaNからなるp型クラッド層5、およびp-GaNからなるp型コンタクト層6、がこの順に積層され、さらにn型電極7およびp型電極8を備え、ここで、単一の発光層1は、窒化アルミニウムインジウムガリウム(Al_(x)In_(y)Ga_(1-x-y)N:0≦x≦1、0≦y≦1)の単一量子井戸構造からなり、3つの発光部1a,1b,1cに区分され、各発光部1a,1b,1cのInモル比率は、発光部1a,1b,1cを異なる波長で発光させ、その混色により白色となるように設定されるものであり、
同一の成膜条件において、前記3つの発光部1a,1b,1cを成膜できる複数の処理温度を設定し、
有機金属気相成長法又は分子線エピタキシー法により前記発光層1を形成する際に、基板の加熱温度を前記処理温度の最低温度又はそれ以下に設定し、前記発光部1a,1b,1cを形成する一部又は全部に、加熱用レーザ光を照射し、局所的に基板の温度を上昇させることにより、同一の成膜条件において、同一の発光層1内に3つの発光部1a,1b,1cを複数の処理温度で区分して成膜でき、各発光部の組成が処理温度に依存した組成となる、
白色LEDの製造方法。」

(2)引用例2:特開2003-303993号公報
ア 原査定の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2003-303993号公報(以下「引用例2」という。)には、図とともに、以下の記載がある。
a
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体装置の製造方法及び発光装置に関し、特に発光スペクトルの調整に関する。」

b
「【0005】本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、発光スペクトルが広く、あるいは、発光スペクトルを所望の値に適宜設定することができる発光装置及び製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、窒化ガリウム系化合物半導体装置を製造する方法であって、基板上に窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する際に、面内で温度分布を生じさせつつ前記窒化ガリウム系化合物半導体層を形成するステップを有することを特徴とする。
【0007】ここで、前記温度分布は、前記基板の裏面に不連続的に膜を形成し、前記基板の裏面側から加熱することで生成される。
【0008】前記膜は、例えばストライプ状に形成することができ、この場合、ストライプ状の膜の幅及び間隔は前記基板の厚さ以上に設定することが好適である。
【0009】前記膜は、例えばモリブデンあるいはチタンを用いることができる。
【0010】また、前記温度分布は、前記基板の裏面に不連続的に溝を形成し、前記基板の裏面側から加熱することで生成される。
【0011】また、前記温度分布は、前記窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する際に、局所的に熱エネルギを印加することにより生成される。
【0012】前記熱エネルギは、光源からの光を照射することで印加され得る。
【0013】
・・・(中略)・・・
【0022】このように、本発明では、窒化ガリウム系化合物半導体を形成する際に、面内温度分布を生じさせることで組成変化を生じさせる。InGaNやAlGaN、あるいは一般的にAl_(y)In_(x)Ga_(1-x-y)Nを形成する際、その組成は温度変化に対して高感度に変化し、組成変化は発光波長の変化を生じさせる。したがって、同一デバイス内で意図的に面内温度分布を生じさせることで、同一デバイス内で発光波長を広範囲に変化させることが可能となり、組成の異なる領域を同時に駆動することで多数の発光ピーク波長が互いに重畳された広帯域スペクトル特性を得ることができる。あるいは、同一デバイス内で組成の異なる領域を同時に駆動するのではなく、択一的に駆動することで、発光ピーク波長を切替制御することも可能となる。例えば、360nmの発光ピーク波長と600nmの発光ピーク波長を同一デバイスで切替制御することができるようになり、デバイスの汎用性あるいはフレキシビリティを著しく高めることになる。
【0023】GaN系化合物半導体層に面内温度分布を生じさせるには、基板面内で温度分布を形成することでGaN系化合物半導体の成長温度に分布を形成する他、基板面内は均一温度とし、GaN系化合物半導体成長時に外部から熱エネルギを局所的に印加する方法がある。前者の場合、基板裏面を加工して熱伝導特性に分布を形成すればよく、基板裏面に不連続的に膜(例えば金属膜)を形成して局所的に熱伝導率を増減させる、あるいは基板裏面に溝を形成して熱伝導率を局所的に低下させればよい。InGaNの場合、温度が高いとInの組成が低下して発光ピーク波長が短波長側にシフトし、温度が低いとInの組成が増大して発光ピーク波長が長波長側にシフトする。シフト量は、温度分布量で制御される。後者の場合、熱エネルギは光を照射することで印加できる。面内温度分布を形成するには、光を十分絞り込んで局所的に照射することが必要であり、光源とレンズの組み合わせが好適である。レーザ光を絞り込んで照射することも可能である。MOCVD法を用いて基板上にGaN系化合物半導体を成長させる際、MOCVD装置の内部あるいは外部に光源を設け、光源からの光で局所的に加熱する。温度分布は照射エネルギで制御される。」

c
「【0025】<第1実施形態>図1には、本実施形態に係るGaN系化合物半導体を用いたLEDの基本構成が示されている。基板10上に順次n型GaN層12、SiドープGaN層14、InGaN発光層16,AlGaN層18、p型GaN層20が積層され、p型GaN層20に接してp電極22、n型GaN層12に接してn電極が形成される構成である。
【0026】図1に示されたLEDは以下のプロセスにより作製される。すなわち、まず、MOCVD装置にてサファイアc面基板を水素雰囲気中で1100℃、10分間熱処理する。そして、温度を500℃まで降温させ、シランガスとアンモニアガスを100秒間供給して不連続なSiN膜を基板10上に形成する。なお、このプロセスはデバイス中の転位密度を低減させるためのものであり、図ではSiN膜は省略している。次に、同一温度でトリメチルガリウム及びアンモニアガスを供給してn型GaN層12を20nm厚成長させる。温度を1050℃に昇温し、再びトリメチルガリウム及びアンモニアガスを供給してSiドープGaN層14を4μm厚成長させる。その後、温度を700℃程度まで降温してInGaN発光層16を2nm厚成長させる。目標組成はx=0.15、すなわちIn_(0.15)Ga_(0.85)Nである。発光層16成長後、温度を1000℃まで昇温してAlGaN正孔注入層18を成長させ、さらにp型GaN層20を成長させる。
【0027】
・・・(中略)・・・
【0029】In_(0.15)Ga_(0.85)N発光層16の発光ピーク波長は450nm、発光スペクトルの半値幅は約15?20nmである。発光ピーク波長は、InGaNの成長温度に敏感で、例えば成長温度が10℃異なると発光ピーク波長は20nm以上変化する。これは、InGaNの成長温度がInNの蒸発温度(約500℃)より高いので、In_(X)Ga_(1-x)Nの組成xが、InNの蒸発率とInGaNの供給率とのバランスで決定されるからである。具体的には、温度が高いと、InNが蒸発してIn組成xは低下し、組成xの低下に伴い発光波長が短波長側にシフトする。
【0030】また、温度が低いと、InNの蒸発が抑制され、In組成xが増大して発光波長が長波長側にシフトする。
【0031】このことは、同一ウエハ面内において温度分布が存在すると、その温度分布に起因して発光ピーク波長が変化することを意味し、逆に、ウエハ面内で意図的に温度分布を生ぜしめることで異なる発光ピーク波長を有する領域を形成できることを意味する。すなわち、温度分布を形成することで複数の発光波長ピークを任意に形成できるのである。本実施形態においては、このような原理に基づき、ウエハ内において意図的に温度分布を形成し、これにより発光層16の組成に分布を生ぜしめて発光ピーク波長を変化させる。」

d
「【0046】<第2実施形態>上述した第1実施形態においては、基板10の裏面に不連続的に金属膜11を形成して温度分布を形成しているが、基板10の裏面に凹凸を形成して温度分布を形成することも可能である。具体的には、図8に示されるように、基板10の裏面に溝10aを形成する。溝10aは、例えばダイヤモンド粒を埋め込んだ切削回転円盤(ブレード)によりウエハを切断する装置を用いて形成することができる。溝10aの幅はブレードの厚さで決定され、例えば200μmとすることができる。溝10aの深さは、330μmのサファイア基板に対し、270μm等とすることができる。
【0047】
【実施例5】図9には、裏面に溝10aが形成された基板10を基板ホルダ102上に載置し、ヒータ100で加熱する状態が示されている。各部の寸法は、サファイア基板10は330μm厚、溝10aの幅は200μm、溝10aの深さは270μmである。基板10を基板ホルダに載置してヒータで加熱し、順次n型GaN層12、InGaN発光層16、p型GaN層20を形成した。InGaN発光層16からの発光をフォトルミネセンス法により測定した。測定に際しては、励起光源のスポット系を10μm程度にレンズで絞り、狭い領域からの発光を観測するように注意した。基板ホルダ温度を700℃として成長させた場合、溝10a上部での発光ピーク波長は445nmであった。一方、溝10aを形成していない領域での発光ピーク波長は440nmであり、約5nmの波長シフトが観測された。これは、溝10aが存在する領域では、基板ホルダ102からの熱伝導が低下し、InGaN発光層16の成長温度が溝10aの存在していない領域に比べて低下したことに起因するものである。このように、基板10の裏面に溝10aを形成して凹凸を形成することで基板10面内において温度分布を形成し、これによりInGaN発光層16の成長温度に面内分布が生じ、組成分布を生じて発光ピーク波長をシフトさせることができる。」

e
「【0051】<第3実施形態>第1実施形態及び第2実施形態では、基板の裏面を加工することで基板面内に温度分布を形成し、これによりInGaN発光層の成長温度に面内分布を生じさせているが、基板は従来技術と平坦なものを用いてヒータで均一に加熱し、InGaN発光層を成長させるときに直接的に成長温度に面内温度分布を生じさせることも可能である。すなわち、InGaN発光層を成長させるときに局所的に熱エネルギを印加して温度分布を形成するのであり、例えばMOCVD装置に設けられた観察用の光学窓を通して外部から光を照射し、発光層の成長温度を制御する。
【0052】
【実施例7】図10には、本実施例の構成図が示されている。MOCVD装置104内に基板10、基板ホルダ102及びヒータ100を配置し、基板10の裏面をヒータ100で加熱する。さらに、MOCVD装置104の光学窓106を介して光源110からの光をレンズ108で集光して基板10の表面に照射した。光源110あるいはレンズ108をスキャン可能なように支持した。光源110として1kWの水銀ランプを用い、直径30cmの石英レンズで光源110からの光を基板10の表面に集光させた。また、図示していないが光路上にシャッタを設け、照射時間を調節した。レンズの焦点距離は40cm、焦点でのスポット径は0.5mmである。ヒータ100で基板10の温度を上昇させ、n型GaN層、InGaN発光層、p型GaN層を順次成長させた。InGaN発光層の成長時のみシャッタを開け、基板10上のある一点の温度を上昇させた。基板ホルダ温度を670℃としてInGaN発光層16を成長させた場合、光スポットから離れた部分での発光ピーク波長は約505nmであった。一方、光スポットの中心付近での発光ピーク波長は390nmであった。このように、光を照射することでInGaN発光層の成長温度に分布を生じさせ、発光ピーク波長をシフトさせることができた。なお、光路の一部にガラスなどを入れて光強度を弱くしたり、あるいは焦点を故意にずらすことで光スポット部分の温度を下げることが可能であるので、本実施例において390nm?505nmの範囲で波長を任意にシフトさせることが可能である。」


イ ここで、図9および図10は以下のものである。
図9


図10


ウ 以上を総合すると、引用例2には、以下の事項が記載されているといえる。
a
「窒化ガリウム系化合物半導体装置を製造する方法であって、基板上に窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する際に、面内で温度分布を生じさせつつ前記窒化ガリウム系化合物半導体層を形成するステップを有し、
面内温度分布を生じさせることで組成変化を生じさせ、InGaNやAlGaN、あるいは一般的にAl_(y)In_(x)Ga_(1-x-y)Nを形成する際、その組成が温度変化に対して高感度に変化し、組成変化は発光波長の変化を生じさせ、したがって、同一デバイス内で意図的に面内温度分布を生じさせることで、同一デバイス内で発光波長を広範囲に変化させることが可能となり、組成の異なる領域を同時に駆動することで多数の発光ピーク波長が互いに重畳された広帯域スペクトル特性を得ることができる。」
b
「GaN系化合物半導体層に面内温度分布を生じさせるには、基板面内で温度分布を形成することでGaN系化合物半導体の成長温度に分布を形成する他、基板面内は均一温度とし、GaN系化合物半導体成長時に外部から熱エネルギを局所的に印加する方法がある。
前者の場合、基板裏面を加工して熱伝導特性に分布を形成すればよく、基板裏面に不連続的に膜(例えば金属膜)を形成して局所的に熱伝導率を増減させる、あるいは基板裏面に溝を形成して熱伝導率を局所的に低下させればよい。InGaNの場合、温度が高いとInの組成が低下して発光ピーク波長が短波長側にシフトし、温度が低いとInの組成が増大して発光ピーク波長が長波長側にシフトする。シフト量は、温度分布量で制御される。
後者の場合、熱エネルギは光を照射することで印加できる。面内温度分布を形成するには、光を十分絞り込んで局所的に照射することが必要であり、光源とレンズの組み合わせが好適である。レーザ光を絞り込んで照射することも可能である。MOCVD法を用いて基板上にGaN系化合物半導体を成長させる際、MOCVD装置の内部あるいは外部に光源を設け、光源からの光で局所的に加熱する。温度分布は照射エネルギで制御される。」

(3)引用例3:特開2003-86890号公報
ア 原査定の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2003-86890号公報(以下「引用例3」という。)には、図とともに、以下の記載がある。
a
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、半導体レーザに適用して好適な、半導体発光素子とその製造方法に関するものである。」

b
「【0007】
【課題を解決するための手段】そこで、この発明は下記のような構成上の特徴を有する。
【0008】すなわち、この発明の半導体レーザアレイの製造方法では、半導体基板上に、回折格子を複数区分領域に形成し、回折格子を備える半導体基板上に結晶成長させる際に、半導体基板と半導体基板を加熱する発熱体との間に、半導体基板と発熱体との間の熱伝導度を、半導体基板の区分領域毎に異なる熱伝導度変異部を介在させて半導体基板を加熱する。
【0009】このように熱伝導度を変えると、半導体基板の区分領域毎に温度が異なる。
【0010】従って、半導体基板の温度分布と結晶構造との関係を予め調べておけば、所望の結晶構造に応じた熱伝導度を設定すれば良い。このように熱伝導度を設定することにより、半導体基板上に、複数の結晶構造(組成)の異なる成長結晶層、例えば、多重量子井戸構造となる井戸層及び障壁層を設計値通りに形成でき、製品歩留まりが向上する。また、選択成長用マスクが不要となり製造工程が減るため、従来よりも安価に各半導体発光素子を製造することができる。」

c
「【0012】<第1の実施の形態>図1?図4を参照して、この発明の半導体発光素子の製造方法につき、半導体レーザを例に挙げて、説明する。ここでは、一例として、先ず、BH構造を有する分布帰還型半導体レーザアレイの製造方法につき説明する。
【0013】
・・・(中略)・・・
【0019】この気相結晶成長装置14によって、回折格子を備える半導体基板の第1主面(表面)に対して結晶成長を行う際に、半導体基板を加熱する。この発明では、この加熱処理を、半導体基板とこの半導体基板を加熱する発熱体との間に、熱伝導度変異部50を介在させて、行なう。この熱伝導度変異部50は、半導体基板と発熱体との間の熱伝導度を、半導体基板の区分領域毎に異ならせる作用を有している。このように、この熱伝導度変異部50は、区分領域毎の温度、従って、半導体基板での温度分布を決める作用を有している。
【0020】
・・・(中略)・・・
【0030】このように、ヒータ22から基板10の第2主面(裏面)への熱伝導度が、基板の裏面の部分領域毎に変わると、基板の裏面から表面に至る区分領域毎に温度差が生じる。すなわち、基板の表面での温度が区分領域毎に異なってくる。
【0031】従って、基板10表面の温度分布と基板表面に成膜される各層の層厚及び組成との相関関係の実測データを予め求めれば、成膜すべき結晶層の種類に応じた熱伝導度変異部50が形成されたウェハキャリア16を用意することが出来る。
【0032】よって、形成しようとする多重量子井戸構造に適した構造のウェハキャリア16を用いて、ウェハに結晶構造(組成)の異なる多重量子井戸層を設計値通りに複数形成できるため、各素子ごとに利得ピーク波長を異ならせることができる。その上、各多重量子井戸層の膜厚を実質的に同一に形成できることから、得られる半導体発光素子の閾値電流、スロープ効率及び温度特性等の各種特性を所望の設計値通りに形成でき、製品歩留まりが向上する。
【0033】従って、回折格子ピッチで決まる発振波長と結晶構造で決まる利得ピーク波長との差(ディチューニング量)を、従来よりも精度良く制御することができるので、高信頼性でかつ広範囲の発振波長をもつ半導体発光素子アレイを得ることができる。
【0034】また、選択成長用マスクが不要なため製造工程が減り、従来よりも安価に各半導体発光素子を製造することができる。」

d
「【0038】<第2の実施の形態>第2の実施の形態によれば、n型InP基板10とヒータ22との間の熱伝導度を、n型InP基板10の区分領域毎に異ならせる熱伝導度変異部50として、n型InP基板10のうちヒータ22と対向する側の面、すなわち第2主面(裏面)自体に形成する。
【0039】すなわち、この実施の形態では、ウェハキャリア16は、第1の実施の形態とは異なり、上述したような熱伝導度変異部を備えておらず、ウェハキャリア16の裏面は、例えば、平坦構造(図示せず)である。しかし、この実施の形態での構成例では、n型InP基板10のうち、ヒータ22と対向する側の第2主面自体に加工を施すことによって熱伝導度変異部50を形成して、n型InP基板10とヒータ22との間の熱伝導度を、n型InP基板10の区分領域毎に異ならせている。
【0040】図6(A)は、第2の実施の形態における熱伝導度変異部50を説明するための、n型InP基板10の第2主面(裏面)側からみた概略平面図である。この実施の形態では、熱伝導度変異部50として、n型InP基板10のうち、ヒータ22と対向する第2主面すなわち裏面自体に、複数の厚みの異なる区分領域として同心円状に形成してある。
【0041】各区分領域間に段差46a,46bを設けてある。尚、段差46a,46bは、任意好適なエッチング等の切削加工によって、基板10裏面側に底面までの距離の異なる貫通しない凹部47a,47bを形成することによって、得ることが出来る。
【0042】また、n型InP基板10の裏面形状を同心円状とすることにより、ウェハポケット18内でのn型InP基板10を、安定な状態で支持させることができる。
【0043】そして、この実施の形態では、この熱伝導度変異部50が形成されたウェハ上に、第1の実施の形態と同様の工程を経て、半導体発光素子アレイを形成する。尚、切削加工によって形成された段差46a,46bは、後工程において任意好適な研磨処理によって平坦化することが出来る。尚、この場合も、熱伝導度変異部50の形態は、半導体基板に成長させる結晶層に所望の結晶構造を与えることが出来るように、半導体基板に温度分布を形成させる形態ならば良い。
【0044】上述した説明から明らかなように、この実施の形態では、これまでの結晶成長装置をそのまま適用させることができるとともに、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。」

e ここで、図6は以下のものである。


イ ここで、上記アの段落【0040】?【0041】の記載とともに図6(A)を参照すると、「区分領域」、すなわち、熱伝導度が異なる部分が3か所あることがわかる。

ウ 以上を総合すると、引用例3には、以下の事項が記載されているといえる。
「半導体基板と半導体基板を加熱する発熱体との間に、半導体基板と発熱体との間の熱伝導度を、半導体基板の区分領域毎に異なる熱伝導度変異部を介在させて半導体基板を加熱して、半導体基板の区分領域毎に温度が異なるようにし、半導体基板の温度分布と結晶構造との関係を予め調べておいて、所望の結晶構造に応じた熱伝導度を設定することにより、半導体基板上に、複数の結晶構造(組成)の異なる成長結晶層、例えば、多重量子井戸構造となる井戸層及び障壁層を設計値通りに形成でき、製品歩留まりが向上でき、また、選択成長用マスクが不要となり製造工程が減るため、従来よりも安価に各半導体発光素子を製造することができる。
第2の実施の形態は、n型InP基板10とヒータ22との間の熱伝導度を、n型InP基板10の区分領域毎に異ならせる熱伝導度変異部50として、n型InP基板10のうちヒータ22と対向する側の面、すなわち第2主面(裏面)自体に形成するものであり、熱伝導度変異部50として、n型InP基板10のうち、ヒータ22と対向する第2主面すなわち裏面自体に、複数の厚みの異なる区分領域として同心円状に形成してあり、3か所ある各区分領域間に段差46a,46bを設けてあり、段差46a,46bは、任意好適なエッチング等の切削加工によって、基板10裏面側に底面までの距離の異なる貫通しない凹部47a,47bを形成することによって、得ることが出来る。」

4 対比
本願発明と引用発明1とを比較する。
ア 引用発明の「単一の発光層1」は、本願発明の「発光層」に相当する。

イ 引用発明にかかる「白色LEDは、基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4、単一の発光層1、p-AlGaNからなるp型クラッド層5、およびp-GaNからなるp型コンタクト層6、がこの順に積層され」たものであり、「単一の発光層1」は「基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4」を積層した上に形成されるから、前記「基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4」を積層したものは、本願発明の「支持体(50、10)」に相当する。また、引用発明においては「有機金属気相成長法又は分子線エピタキシー法により前記発光層1を形成する」から、引用発明の「基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4」を積層したものの「n-GaNからなるn型層4」側上に、「有機金属気相成長法又は分子線エピタキシー法により前記発光層1を形成する」ことは、本願発明の「支持体の前面上に発光層を準備するステップ」に相当する。

ウ 引用発明にかかる「白色LED」は、「単一の発光層1は、窒化アルミニウムインジウムガリウム(Al_(x)In_(y)Ga_(1-x-y)N:0≦x≦1、0≦y≦1)の単一量子井戸構造からなり、3つの発光部1a,1b,1cに区分され、各発光部1a,1b,1cのInモル比率は、発光部1a,1b,1cを異なる波長で発光させ」るものであるところ、当該「単一の発光層1」は、「局所的に基板の温度を上昇させることにより、同一の成膜条件において、同一の発光層1内に3つの発光部1a,1b,1cを複数の処理温度で区分して成膜」されるものであるから、「単一の発光層1」の「3つの発光部1a,1b,1cに区分され」た「単一量子井戸構造」は、隣接していることは明らかである。よって、引用発明の「単一の発光層1」が「窒化アルミニウムインジウムガリウム(Al_(x)In_(y)Ga_(1-x-y)N:0≦x≦1、0≦y≦1)の単一量子井戸構造からなり、3つの発光部1a,1b,1cに区分され、各発光部1a,1b,1cのInモル比率は、発光部1a,1b,1cを異なる波長で発光させ」るものであることは、本願発明の「前記発光層は、異なる波長を放射する少なくとも三つの隣接する量子井戸を含」むことに相当する。

エ 前記イのとおり、引用発明においては「基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4」を積層したものの「n-GaNからなるn型層4」側上に、「有機金属気相成長法又は分子線エピタキシー法により前記発光層1を形成する」から、「発光層1」が「基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4」を積層したものに接触していることは明らかである。よって、引用発明の当該構成は、本願発明の「前記量子井戸は、前記支持体の前記前面と接触して」いることに相当する。

オ 引用発明においては、「同一の成膜条件において、前記3つの発光部1a,1b,1cを成膜できる複数の処理温度を設定し、」「前記発光部1a,1b,1cを形成する一部又は全部に、加熱用レーザ光を照射し、局所的に基板の温度を上昇させることにより、同一の成膜条件において、同一の発光層1内に3つの発光部1a,1b,1cを複数の処理温度で区分して成膜でき、各発光部の組成が処理温度に依存した組成となる」ものであるから、「基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4」を積層したものの「n-GaNからなるn型層4」側上に、「有機金属気相成長法又は分子線エピタキシー法により前記発光層1を形成する」際に、「基板2上に、GaNからなるバッファ層3、n-GaNからなるn型層4」を積層したものの「n-GaNからなるn型層4」側が複数の処理温度となることは明らかである。よって、引用発明の当該構成は、本願発明の「前記発光層を堆積させる前記ステップは、前記支持体の前記前面が異なる温度の少なくとも三つの領域を含むように、前記前面の反対側の前記支持体の背面の温度を局所的に変化させ」ることに相当する。

カ 引用発明の「白色LEDの製造方法」は、本願発明の「発光ダイオードを製造する方法」に相当する。

キ 一致点
したがって、引用発明と本願発明とは、次の点で一致する。
「発光ダイオードを製造する方法であって、前記方法は、支持体の前面上に発光層を準備するステップを含み、前記発光層は、異なる波長を放射する少なくとも三つの隣接する量子井戸を含み、前記量子井戸は、前記支持体の前記前面と接触しており、
前記発光層を堆積させる前記ステップは、前記支持体の前記前面が異なる温度の少なくとも三つの領域を含むようにする、
方法。」

ク 相違点
一方両者は、次の点で相違する。
《相違点》
本願発明は、「前記発光層を堆積させる前記ステップは、前記支持体の前記前面が異なる温度の少なくとも三つの領域を含むように、前記前面の反対側の前記支持体の背面の温度を局所的に変化させることにあり、前記支持体の局所的な温度変化は、前記支持体の異なる厚みの領域上で達成される」構成を備えるのに対して、引用発明は、「前記発光層を堆積させる前記ステップは、前記支持体の前記前面が異なる温度の少なくとも三つの領域を含むように」するものの、その際に「前記発光部1a,1b,1cを形成する一部又は全部に、加熱用レーザ光を照射し、局所的に基板の温度を上昇させる」ものであって、本願発明の「前記支持体の前記前面が異なる温度の少なくとも三つの領域を含むように、前記前面の反対側の前記支持体の背面の温度を局所的に変化させることにあり、前記支持体の局所的な温度変化は、前記支持体の異なる厚みの領域上で達成される」とは特定されない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
ア 前記3(2)ウおよび同(3)ウのとおり、引用例2および引用例3には、同一デバイス内に発光波長が異なる発光層を単一成長工程で形成する際に、成長面内に温度分布を生じさせる製造方法であって、当該成長面内に温度分布を生じさせる手法として、加熱される基板裏面に厚さが異なるような溝ないし凹部を設け、熱伝導度を変えることが記載されている。
ここで、引用例2には、成長面内に温度分布を生じさせる手法の他の方法として、レーザ光を絞り込んで照射することも併記されていることから見て、成長面内に温度分布を生じさせる手法として、加熱される基板裏面に厚さが異なるような溝ないし凹部を設けることと、レーザ光を絞り込んで照射することは、置換可能な手段ということができる。
また、引用例3には、前記厚さが異なる部分を3段階以上設けることも記載されている。

イ よって、引用発明において、「同一の成膜条件において、前記3つの発光部1a,1b,1cを成膜できる複数の処理温度」実現するために、引用発明にかかる「加熱用レーザ光を照射し、局所的に基板の温度を上昇させる」手法に代えて、前記引用例2及び引用例3に記載された、基板裏面に、厚さが異なるような溝ないし凹部を設ける手法を採用して、相違点にかかる「前記支持体の前記前面が異なる温度の少なくとも三つの領域を含むように、前記前面の反対側の前記支持体の背面の温度を局所的に変化させることにあり、前記支持体の局所的な温度変化は、前記支持体の異なる厚みの領域上で達成される」構成を備えるようにすることは、当業者が適宜になしえたことである。

ウ ところで、引用例1には、前記3(1)アa(特に段落【0009】?【0012】)に摘記したとおり、「特許文献4」ないし「特許文献6」に記載された技術における「製造工程が複雑になる問題点」を解決することを課題とする旨が記載されている。

エ そして、当該「特許文献4」ないし「特許文献6」に記載された技術における「製造工程が複雑になる問題点」として、具体的には、以下のとおりの記載がある。
「特許文献4」に記載された技術については、「R,G,Bの各色のLEDをエッチング除去して形成したホールに順次形成するので、エッチング工程と成膜工程を繰り返す必要があり、製造工程が複雑である」こと。
「特許文献5」に記載された技術については、「発光層が多層量子井戸構造の場合には、原理的には3色の発光が可能であるが、各層毎に原料ガス中のH_(2)分圧を変化させてそれぞれ独立した条件で成膜するため、製造工程が複雑になる」こと。
「特許文献6」に記載された技術については、「互いにバンドギャップエネルギーの異なる複数の活性層の間に、n型ドーパントとp型ドーパントが共にドープされたキャリア発生層を形成するため、各層毎にそれぞれ独立した条件で成膜するため、製造工程が複雑になる」こと。

オ 上記エの、「特許文献4」ないし「特許文献6」に記載された各技術にかかる「製造工程が複雑になる問題点」を見ると、発光色(バンドギャップエネルギー)の異なる各発光層を異なる時点で個別に成膜するか、あるいは異なる条件で成膜するために異なる時点で成膜する必要のあることが、「製造工程が複雑になる」共通した要因とされていることがわかる。

カ 一方、引用例2および引用例3に記載された技術は、前記3(2)ウおよび同(3)ウのとおり、同一デバイス内に発光波長が異なる発光層を単一成長工程で形成する際に、成長面内に温度分布を生じさせる方法であるから、当該成長面内に温度分布を生じさせるために、加熱される基板裏面に厚さが異なるような溝ないし凹部を設ける工程が付随するものの、上記オの、発光色(バンドギャップエネルギー)の異なる各発光層を異なる時点で形成するという工程上の複雑さは解消されることは明らかである。

キ したがって、前記イのとおり、引用発明において、「加熱用レーザ光を照射し、局所的に基板の温度を上昇させる」手法に代えて、前記引用例2及び引用例3に記載された、基板裏面に、厚さが異なるような溝ないし凹部を設ける手法を採用することによっても、前記ウの「製造工程が複雑になる問題点」を解決することが阻害されるとまではいえない。

6 小括
よって、本願発明は、引用発明、並びに引用例2及び引用例3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

7 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-01-21 
結審通知日 2020-01-27 
審決日 2020-02-10 
出願番号 特願2015-554148(P2015-554148)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 近藤 幸浩
松川 直樹
発明の名称 モノリシックな白色ダイオードを製造するための方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  
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