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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01M
管理番号 1363708
審判番号 不服2019-4449  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-04 
確定日 2020-07-21 
事件の表示 特願2014- 91866「正極材料、ペースト及びナトリウムイオン電池」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-210956、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月25日の出願であって、平成28年11月22日付けで手続補正がされ、平成29年12月11日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年1月31日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ、同年6月22日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月22日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ、平成31年1月18日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると共に手続補正(以下、「審判請求時の補正」という。)がされ、令和1年6月4日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月2日付けで意見書が提出されたものである。


第2 原査定及び令和1年6月4日付け拒絶理由通知の概要
原査定(平成31年1月18日付け拒絶査定)及び令和1年6月4日付け拒絶理由通知(以下、「拒絶理由通知」という。)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献4に記載された発明、引用文献5に記載された事項、引用文献6に記載された事項、引用文献7に記載された事項及び引用文献8に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
4.国際公開2013/114102号
5.特開2011-76931号公報
6.特開2012-216473号公報
7.特開2013-225471号公報
8.特開2013-4284号公報


第3 審判請求時の補正について

1 特許法第17条の2第3項(新規事項の追加)について
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0028】には、「炭素質被膜の平均厚さ」として「0.1nm?20nm」が好ましいことが記載され、【0071】の【表1】には、実施例1、6において、それぞれ「炭素質被膜の平均厚さ」を「2.1nm」、「16.3nm」としたことが記載されているから、審判請求時の補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定される要件を満たすものである。

2 特許法第17条の2第4項(シフト補正)について
上記引用文献4の記載に照らすと、審判請求時の補正前後の請求項1の特別な技術的特徴は、いずれも「炭素質被膜」を備えることであって、審判請求時の補正により特別な技術的特徴が変更されたとはいえないから、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第4項に規定される要件を満たすものである。

3 特許法第17条の2第5項(目的外補正)について
ア 審判請求時の補正は、補正前の請求項1における「炭素質被膜の平均厚さが2.1μm以上かつ16.3μm以下」を「炭素質被膜の平均厚さが2.1nm以上かつ16.3nm以下」に変更する補正事項を含むものであるが、下記イに示すとおり、当該補正事項は、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。

イ 本願明細書において「炭素質被膜の平均厚さ」について記載した部分は、【0028】、【0060】、【0064】?【0068】、【0071】であるが、いずれにおいても、「炭素質被膜の平均厚さ」としては「nm」のみが用いられており、「μm」は用いられていないこと、及び、【0019】において「炭素質被膜で被覆された正極活物質粒子」の好ましい平均粒子径が「0.05μm?20μm以下」とされているが、「2.1μm以上かつ16.3μm以下」の「炭素質被膜の平均厚さ」は、当該平均粒子径の粒子における被膜の厚さとしては明らかに不合理であることから、補正前の請求項1において「炭素質被膜の平均厚さ」の単位として記載された「μm」が「nm」の誤記であることは明らかである。したがって、上記補正は、「誤記の訂正」を目的とするものである。

4 特許法第17条の2第6項(独立特許要件)について
上記3のとおり、審判請求時の補正は「誤記の訂正」を目的とするものであるから、特許法第17条の2第6項の要件は課されない。

5 まとめ
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項から第6項に規定される要件を満たすものである。


第4 本願発明について

本願の特許を受けようとする発明は、平成31年4月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本願発明1」等という。)である。

「 【請求項1】
構造内の2つのMO_(6)が稜共有して二量体を形成したM_(2)O_(10)二量体結晶構造を有するNa_(x)M_(y)(SO_(4))_(z)(但し、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Agの群から選択される1種または2種以上、1.6≦x≦2.4、1.6≦y≦2.4、2.4≦z≦3.6)で表されるナトリウム硫酸塩化合物を含有してなる正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面を被覆する炭素質被膜とからなる炭素質電極活物質複合粒子を含み、
前記正極活物質粒子の表面における前記炭素質被膜の被覆率は、60%以上、
前記炭素質被膜の平均厚さが2.1nm以上かつ16.3nm以下、
前記炭素質電極活物質複合粒子の炭素の含有率が0.71質量%以上かつ7.12質量%以下であることを特徴とする正極材料。
【請求項2】
前記炭素質被膜が、500℃以下の低温プロセスによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記炭素質電極活物質複合粒子は、前記炭素質被膜で被覆された前記正極活物質粒子の一次粒子を複数個凝集した凝集粒子からなり、かつ、前記一次粒子間に前記炭素質被膜を介在させてなることを特徴とする請求項1または2に記載の正極材料。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の正極材料と、導電助剤と、結着剤と、を含有してなることを特徴とするペースト。
【請求項5】
請求項4に記載のペーストを用いて集電体の一主面に正極が形成されてなる電極板を備えてなることを特徴とするナトリウムイオン電池。」


第5 引用文献に記載された事項及び引用文献に記載された発明

1 引用文献4について
(1)引用文献4の記載
引用文献4には、次の事項が記載されている(下線は当審による(以下、同様)。また、日本語訳は日本国特許庁に提出された翻訳文(特表2015-507333号公報を参照。)による)。

ア 「In a first aspect, the present invention aims to provide a cost effective electrode that contains an active material that is straightforward to manufacture and easy to handle and store. A further object of the present invention is to provide an electrode that has a high initial charge capacity and which is capable of being recharged multiple times without significant loss in charge capacity.

Therefore, the present invention provides an electrode containing an active material of the formula:

A_(a)M_(b)(SO_(4))_(c)X_(x)
wherein
A is a single or mixed alkali metal phase comprising one or more of sodium, potassium, lithium mixed with sodium, lithium mixed with potassium, and lithium mixed with both sodium and potassium;

M is selected from one or more transition metals and/or non-transition metals and/or metalloids;

X is a moiety comprising one or more atoms selected from halogen and OH; and further wherein
1 < a < 3; b is in the range: 0
(日本語訳)「第1の態様において、本発明は、製造が複雑でない、取扱い及び貯蔵が容易な活物質を含有する費用効果のある電極を提供することを目指している。本発明のさらなる目的は、高い初期電荷容量を有し、電荷容量の顕著な損失なしに複数回充電可能な電極を提供することである。

それゆえ本発明は、以下の式:
A_(a)M_(b)(SO_(4))_(c)X_(x)
( 式中、
Aはナトリウム、カリウム、ナトリウムが混合されたリチウム、カリウムが混合されたリチウム、及びナトリウムとカリウムとの両方が混合されたリチウムの1個以上を有する単一のもしくは混合アルカリ金属相である;
Mは、1個以上の遷移金属及び/ 又は非遷移金属及び/ 又は半金属から選択される;
Xは、ハロゲン、O及びOHから選択される1個以上の原子を有する部分である;
及びさらに式中、
1 < a < 3 ;
b は0 < b ≦ 2 の範囲にある;
c は2 ≦ c ≦ 3 の範囲にある、及び
x は0 ≦ x ≦ 1 の範囲にある) の活物質を含有する電極を提供する。」

イ 「Other preferred materials of the present invention include: Na_(2)M(S0_(4))_(2)and Na_(2)M_(2)(S0_(4))_(3) such as Na_(2)Fe(S0_(4))_(2),Na_(2)Fe_(2)(S0_(4))_(3), Na_(2)Mn(S0_(4))_(2)and Na_(2)Mn_(2)(S0_(4))_(3).」(第3頁第24?25行)

(日本語訳)「本発明のその他の好ましい材料は、Na_(2)M(SO_(4))_(2)及びNa_(2)M_(2)(SO_(4))_(3)(例えばNa_(2)Fe(SO_(4))_(2),Na_(2)Fe_(2)(SO_(4))_(3),Na_(2)Mn(SO_(4))_(2)及びNa_(2) Mn_(2)(SO_(4))_(3))を包含する。」

ウ 「Electrodes according to the present invention are suitable for use in many different applications, for example energy storage devices, rechargeable batteries, electrochemical devices and electrochromic devices. Advantageously,the electrodes according to the invention are used in conjunction with a counter electrode and one or more electrolyte materials. The electrolyte materials may be any conventional or known materials and may comprise either aqueous electrolyte(s) or non-aqueous electrolyte(s) or mixtures thereof.」(第3頁第27?31行)

(日本語訳)「本発明による電極は、多くの異なる用途における使用、例えばエネルギー貯蔵デバイス、充電式電池、電気化学デバイス及びエレクトロクロミックデバイスに好適である。有利には、本発明による電極は対電極及び1個以上の電解質材料と合わせて使用される。電解質材料は、いずれの慣用もしくは周知の材料でよく、水性電解質もしくは非水電解質のいずれか、もしくはそれらの混合物を有してよい。」

(2)引用文献4に記載された発明
上記(1)で摘記した事項より、引用文献4には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「Na_(2)Fe_(2)(SO_(4))_(3)を含有する、充電式電池の電極用の活物質。」

2 引用文献5について
(1)引用文献5の記載
引用文献5には、次の事項が記載されている。

「【0017】
カーボンナノ構造体は、粒子表面に垂直な方向の厚さが1?500nmであることが望ましく、1?300nmであるとより望ましい。また、正極材に対するカーボンナノ構造体の質量比は、1?10wt%であることが望ましく、1?5wt%であるとより望ましい。また、カーボンナノ構造体は、リチウム金属リン酸塩化合物の粒子表面の50%以上を被覆することが望ましく、表面全面を被覆することが最も望ましい。カーボンナノ構造体の厚さ、質量、被覆率が上記の範囲であれば、正極材の電子伝導性をより良好とすることができる。」
「【0034】
また、第5の発明によれば、低温でカーボンナノ構造体をリチウム金属リン酸塩化合物粒子の表面に形成することができるので、リチウム金属リン酸塩化合物粒子を熱により劣化させることがない。また、カーボンナノ構造体は、リチウム金属リン酸塩化合物粒子の表面に、その表面に対して垂直方向にひげ状、壁状に伸びた形状に形成されるため、粒子表面からカーボンナノ構造体表面までに連続する空孔が多数形成される。したがって、リチウム金属リン酸塩化合物粒子のリチウムイオンの離脱、吸収において、リチウムイオンの移動が阻害されず、リチウムイオンの伝導性に優れている。また、カーボンナノ構造体は、電子伝導性にも優れている。そのため、第5の発明によって得られる正極材を用いれば、単位体積あたりの放充電量に優れたリチウムイオン二次電池を製造することができる。」

3 引用文献8について
(1)引用文献8の記載
引用文献8には、次の事項が記載されている。

「【0003】
また正極として、資源的な観点、高い環境調和性の他、電気化学的な安定性、熱的安全性などの観点からオリビン型を持つリチウムリン酸鉄(LiFePO_(4))が注目されている。
リチウムチタン複合酸化物を負極に、リチウムリン酸鉄を正極に用いた電池では、従来のリチウムイオン二次電池よりも、はるかに安全、長寿命を有する革新的な二次電池となりうる。
ところが、リチウムリン酸鉄は水分と容易に反応し、正極活物質から鉄が溶出しやすいといった問題がある。また、負極として用いる粒子サイズの非常に細かいリチウムチタン複合酸化物には大量の結晶水が含まれていることを発明者らは確認した。つまり、このような正極・負極の組み合わせの場合、負極に含まれる大量の結晶水により、リチウムリン酸鉄は溶解し、容量劣化を招きやすく、本来の正極・負極のポテンシャルを十分に引き出すことができなかった。
【0004】
このような水分等との反応を抑制するために、例えば水に不活性なLi_(3)PO_(4)といった物質や、電子導電性をもたらすカーボンを被覆するといった手法は既に知られている。しかし例に挙げた物質等はそれ自身リチウムを吸蔵・放出することがないため、充放電容量に寄与しない。また、リチウムリン酸鉄が反応に寄与する平衡電極電位では、Li_(3)PO_(4)やカーボン内においてリチウム拡散が固体内部で殆ど起こらない。従って、このような被覆はリチウムリン酸鉄への拡散阻害要因になるため、大電流を必要とする用途には不向きである。」


第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明の「Na_(2)Fe_(2)(SO_(4))_(3)」は、本願発明1の「Na_(x)M_(y)(SO_(4))_(z)(但し、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Agの群から選択される1種または2種以上、1.6≦x≦2.4、1.6≦y≦2.4、2.4≦z≦3.6)」に含まれるものであって、「M」を「Fe」、「x」を2、「y」を2、「z」を3としたものであるから、引用発明の「Na_(2)Fe_(2)(SO_(4))_(3)」は、本願発明1の「Na_(x)M_(y)(SO_(4))_(z)(但し、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Agの群から選択される1種または2種以上、1.6≦x≦2.4、1.6≦y≦2.4、2.4≦z≦3.6)で表されるナトリウム硫酸塩化合物」と、「Na_(2)Fe_(2)(SO_(4))_(3)で表されるナトリウム硫酸塩化合物」において一致する。
イ 引用発明の「Na_(2)Fe_(2)(SO_(4))_(3)」は、上記アのとおり、本願発明1の「ナトリウム硫酸塩化合物」に含まれるものであり、また、本願明細書に記載の実施例にて用いられた「ナトリウム硫酸塩化合物」と同一の組成を有するものであるから、これらと同一の結晶構造を有する蓋然性が高い。したがって、引用発明の「Na_(2)Fe_(2)(SO_(4))_(3)」は、本願発明1の「構造内の2つのMO_(6)が稜共有して二量体を形成したM_(2)O_(10)二量体結晶構造を有する」点を備えると認められる。
ウ 引用発明は「Na_(2)Fe_(2)(SO_(4))_(3)」が活物質であることから引用発明の「充電式電池の電極」が正極であることは明らかであり、また、活物質は一般に粒子状で用いられるから、引用発明の「充電式電池の電極用の活物質」は、本願発明1の「正極活物質粒子」及び「正極活物質粒子を含む、正極材料」に相当する。
エ 上記ア?ウより、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]
「構造内の2つのMO_(6)が稜共有して二量体を形成したM_(2)O_(10)二量体結晶構造を有するNa_(2)Fe_(2)(SO_(4))_(3)で表されるナトリウム硫酸塩化合物を含有してなる正極活物質粒子を含む、正極材料。」

[相違点]
本願発明1は、「該正極活物質粒子の表面を被覆する炭素質被膜」を含み、「正極活物質粒子」と「炭素質被膜」とが「炭素質電極活物質複合粒子」を構成し、「前記正極活物質粒子の表面における前記炭素質被膜の被覆率は、60%以上、前記炭素質被膜の平均厚さが2.1nm以上かつ16.3nm以下、前記炭素質電極活物質複合粒子の炭素の含有率が0.71質量%以上かつ7.12質量%以下である」のに対し、引用発明は、「該正極活物質粒子の表面を被覆する炭素質被膜」を備えるものではない点。

(2)相違点についての判断
ア 上記第5 2で摘記した、引用文献5の【0017】、【0034】には、「カーボンナノ構造体」により「リチウム金属リン酸塩化合物」を被覆することで「正極材」の電子伝導性を向上させることが記載されている。
イ また、上記第5 3で摘記した、引用文献8の【0003】、【0004】には、「リチウムリン酸鉄は水分と容易に反応し、正極活物質から鉄が溶出しやすいといった問題」を防止するために、「電子導電性をもたらすカーボン」を被覆する手法が知られていることが記載されている。
ウ 一方で、本願明細書の【0025】には、上記相違点のうち、「炭素質被膜の被覆率は、60%以上」との事項の効果につき、以下の記載がある。
「【0025】
正極活物質粒子の表面における炭素質被膜の被覆率は、透過電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型X線分光器(EDX)等を用いて測定することができる。
本実施形態における正極活物質粒子では、ナトリウムイオン電池の正極材料として用いる際にナトリウムイオンの脱挿入に関わる反応を正極活物質粒子の表面全体で均一に行うために、その表面の60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上が炭素質被膜にて被覆されていることが好ましい。
ここで、正極活物質粒子の表面における炭素質被膜の被覆率を60%以上とした理由は、被覆率が60%未満では、正極活物質粒子の表面が露出して水分が吸着し易くなり、この吸着した水分により生成するフッ化水素酸により電池構成部材が劣化し、また、充放電による水の分解によりガス発生が発生して電池内の内圧が増大し、電池が破壊するおそれがあるので好ましくないからである。
本実施形態において、正極活物質粒子の表面における炭素質被膜の被覆率は、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて得られる正極活物質粒子断面の粒子表面長さに対して、炭素質被膜で覆われている表面長さの割合を測定し、50個の粒子に対して同様に測定して平均した値とする。」
エ 上記ウより、本願発明1は、上記相違点の「炭素質被膜の被覆率は、60%以上」との事項により、「正極活物質粒子の表面が露出して水分が吸着し易くなり、この吸着した水分により生成するフッ化水素酸により電池構成部材が劣化し、また、充放電による水の分解によりガス発生が発生して電池内の内圧が増大し、電池が破壊する」ことを防止する効果を奏すると認められる。
オ ここで、上記ア、イのとおり、引用文献5、8においては、「炭素質被膜」や「炭素被膜の被覆率」と「正極活物質粒子の表面が露出して水分が吸着を防止し、この吸着した水分により生成するフッ化水素酸により電池構成部材が劣化し、また、充放電による水の分解によりガス発生が発生して電池内の内圧が増大し、電池が破壊する」こととの関連が記載も示唆もされておらず、また、「炭素質被膜の被覆率は、60%以上」とすることで上記効果を奏し得ることが本願出願時の技術常識であったとも認められないから、上記効果は、引用文献5、8に記載された事項から当業者が予測し得たものとはいえない。
カ また、引用文献6、7にも「炭素質被膜の被覆率は、60%以上」とすることやその効果については記載されていない。
キ したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献5に記載された事項、引用文献6に記載された事項、引用文献7に記載された事項及び引用文献8に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。


2 本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献5に記載された事項、引用文献6に記載された事項、引用文献7に記載された事項及び引用文献8に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?5は、当業者が、引用文献4に記載された発明、引用文献5に記載された事項、引用文献6に記載された事項、引用文献7に記載された事項及び引用文献8に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定及び上記拒絶理由通知の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-07-06 
出願番号 特願2014-91866(P2014-91866)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川口 陽己宮田 透松村 駿一青木 千歌子正 知晃立木 林  
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 北村 龍平
粟野 正明
発明の名称 正極材料、ペースト及びナトリウムイオン電池  
代理人 佐藤 彰雄  
代理人 萩原 綾夏  
代理人 西澤 和純  
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