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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1363710
審判番号 不服2019-148  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-08 
確定日 2020-07-01 
事件の表示 特願2016-518892「膜カートリッジシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月18日国際公開、WO2014/198501、平成28年8月18日国内公表、特表2016-524533〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は2014年(平成26年)5月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)6月12日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 1月20日 :翻訳文提出
平成29年12月21日付け:拒絶理由通知書
平成30年 4月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 9月 4日付け:拒絶査定
平成31年 1月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成31年1月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 カートリッジエレメントであって、
カートリッジチューブ内に配置された中空糸膜束と、当該中空糸膜束の両端に配置されたチューブシートと、前記カートリッジチューブの両端に設けられたエンドキャップと、
を含み、
前記カートリッジチューブが、0.5?10mmの壁厚を有するとともに前記エンドキャップ間に配置された少なくとも1つの流体入口/出口開口部を含み、
前記エンドキャップがポリマー材料からなり、
前記エンドキャップによって形成されたキャップ層と、
前記エンドキャップと前記カートリッジチューブとの間に設けられた固定層と、
前記カートリッジチューブによって形成されたチューブ層と、
前記樹脂と前記中空糸束によって形成されたチューブシート層と、
を含む多層複合構造を有し、
前記エンドキャップが前記固定層に固定されており、
前記中空糸膜束の両端において、チューブシートが前記中空糸膜束を構成する中空糸膜を接合していることを特徴とするカートリッジエレメント。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年4月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 カートリッジエレメントであって、
カートリッジチューブ内に配置された中空糸膜束と、当該中空糸膜束の両端に配置されたチューブシートと、前記カートリッジチューブの両端に設けられたエンドキャップと、
を含み、
前記カートリッジチューブが、0.5?10mmの壁厚を有するとともに前記エンドキャップ間に配置された少なくとも1つの流体入口/出口開口部を含み、
前記エンドキャップがポリマー材料からなり、
前記エンドキャップが前記カートリッジエレメントに固定されており、
前記中空糸膜束の両端において、チューブシートが前記カートリッジエレメントに接合されていることを特徴とするカートリッジエレメント。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載されたカートリッジエレメントの発明を特定するために必要な事項である「チューブシート」と「カートリッジエレメント」の接合構造について、上記のとおり固定層等を含む多層複合構造を有するとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された特開2013-99703号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお。「・・・」は省略を表す。
「【0001】
本発明は、中空糸膜束を備えた膜モジュールを製造するためのヘッダ部材、膜モジュール及び膜モジュールの製造方法に関する。」
「【0011】
また、本発明に係る膜モジュールは、上記のヘッダ部材を用いて形成される筒状のヘッダ部と、ヘッダ部内に挿入された複数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、中空糸膜束をヘッダ部に固定する封止部と、中空糸膜の内部が開放されたモジュール端面と、を備えることを特徴とする。」
「【0013】
さらに、上記の膜モジュールは、中空糸膜束を環状に取り囲み、中空糸膜束と一緒に封止部によってヘッダ部に固定された筒状の保護部材を更に備え、保護部材には、複数の貫通孔と、ヘッダ部に固定される側の端部から保護部材の軸線方向に突き出した線状の突出部とが設けられていると好適である。保護部材によって中空糸膜束は纏まり良く保持され、外的衝撃などから保護される。・・・。」
「【0015】
また、本発明は、上記のヘッダ部材を用いて膜モジュールを製造する方法において、複数の中空糸膜を束ねて中空糸膜束を形成する工程と、ヘッダ部材を中空糸膜束の端部に装着し、ヘッダ部材の内部に溶融状態の封止材を充填する工程と、ヘッダ部材の内部に充填された封止材を固化させて封止部を形成する工程と、封止部を形成した後に、中空糸膜の端部と一緒にヘッダ部材の底側の一部及び封止部の一部を切断して複数の中空糸膜の内部が開放されたモジュール端面を形成する工程と、を含むことを特徴とする。」
「【0020】
・・・。このような膜ろ過法に用いられる膜ろ過装置としては、ケーシング内に収容された中空糸膜の束がケーシングに固定されてモジュール化されたタイプや、ケーシングは備えずに中空糸膜の束が一体化されて膜モジュールとなり、その膜モジュールがハウジングと称されるケース内に着脱自在に収容されるタイプなどがある。本実施形態に係る膜モジュールは、後者のカートリッジモジュールと称されるタイプである。
【0021】
カートリッジモジュール1(図7参照)は、所定のハウジング3内に着脱自在に収容されて用いられる。カートリッジモジュール1は、例えば、複数の中空糸膜の束(以下、「中空糸膜束」という)7の両端にヘッダ部材9(図1参照)を固定してモジュール前躯体5を製造し、更に、モジュール前躯体5の両端の一部分を切断して中空糸膜7aの端部が開放されたモジュール端面6を形成することで製造される。・・・
【0022】
・・・、モジュール前躯体5は、中空糸膜束7の両端に装着される有底筒状のヘッダ部材9と、中空糸膜束7が挿通されて中空糸膜束7を保護する筒状の保護部材11と、・・・、ヘッダ部材9の内部に充填、固化された封止材Sによって中空糸膜束7、保護部材11、クロス板13及びヘッダ部材9を接着(結合)する封止部15と、を備えている。
【0023】
ヘッダ部材9(図2参照)は、ポリサルホンなどの耐熱製高分子材料からなり、例えば、耐熱製高分子材料からなる丸棒を切削加工することで形成される。ヘッダ部材9は有底円筒状(カップ状)であり、中空糸膜束7が挿入される入口側に設けられた入口側筒部21と、底側に設けられた底側筒部23とを備える。・・・。」
「【0035】
中空糸膜束7は筒状の保護部材11に挿通され、保護部材11によって保護される。保護部材11の形状は、用途などに応じて選択できるが、通常、円筒状である場合が多く、本実施形態でも円筒状を例に説明する。・・・。」
「【0044】
カートリッジモジュール1は、ヘッダ部材9を用いて形成される筒状のヘッダ部1aと、ヘッダ部1a内に挿入された複数の中空糸膜7aからなる中空糸膜束7と、中空糸膜束7をヘッダ部1aに固定する封止部15と、中空糸膜7aの内部が開放されたモジュール端面6と、中空糸膜束7を環状に取り囲み、中空糸膜束7と一緒に封止部15によってヘッダ部1aに固定された筒状の保護部材11と、を備えている。」
「【0055】
・・・。モジュール前躯体5を製造する際、封止材Sは、ヘッダ部材9の内部で隙間を埋めるように充填され(図5及び図6参照)、更に冷却固化して中空糸膜束7、クロス板13、保護部材11、及びヘッダ部材9の内面を接着(結合)する。・・・。」
「【図5】



(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「高分子材料からなる筒状のヘッダ部内に挿入された複数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、
中空糸膜束をヘッダ部に固定する封止部と、
中空糸膜束を環状に取り囲み、中空糸膜束と一緒に封止部によってヘッダ部に固定された、複数の貫通孔を有する筒状の保護部材と、
を備える、カートリッジモジュール。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平11-28341号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、気体や液体等の流体の選択分離に利用される中空糸膜カートリッジおよびカートリッジ型中空糸膜モジュールに関し、さらに詳しくは、使用しやすく、安価で、信頼性の高い中空糸膜カートリッジおよびカートリッジ型中空糸膜モジュールに関するものである。」
「【0011】本発明の中空糸膜カートリッジは、カートリッジケースの材質が繊維強化プラスチック(FRP)であることと、中空糸膜を接着、固定している両端の樹脂の厚さがそれぞれカートリッジケース内径よりも大きいこととの組み合せを特徴とする。FRPを使用する理由は、・・・、FRPは非強化樹脂に比べて強度が高く、耐久性に優れ、また非強化樹脂と同様に樹脂接着が可能で、大きな接着強度が得られるからである。・・・。」
「【0012】 さらに、カートリッジケースの構造にも特徴がある。すなわち、本発明による中空糸膜カートリッジは、多数の流通穴を持つ円筒状のカートリッジケースを用いたことである。・・・。」
「【0021】・・・。ケースの厚みは、その材質やカートリッジの容量等により適宜決定される。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。なお、本件補正発明は、その発明特定事項として「前記樹脂と前記中空糸束によって形成されたチューブシート層」を有するところ、請求項1において「樹脂」について先行する記載はないことから、また【0062】の記載も参酌すると、「前記樹脂」は「樹脂」の誤記と解するのが相当である。同様に、「前記中空糸束」は「前記中空糸膜束」の誤記と解される。
(ア)本件補正発明と引用発明は、いずれも中空糸膜を使用した膜分離装置に関するものであり、引用発明である「カートリッジモジュール」と、本件補正発明である「カートリッジエレメント」とは、単なる表現上の相違にすぎない。
(イ)そして、引用発明における「複数の貫通孔を有する筒状の保護部材」は、中空糸膜束を保護するとともに、カートリッジ全体の外形を保持するものであるから、本件補正発明における「(少なくとも1つの流体入口/出口開口部を含む)カートリッジチューブ」に相当する。
(ウ)また、引用発明の「ヘッダ部」は本件発明の「エンドキャップ」に相当し、引用発明の「封止部」は、中空糸膜束の両端に配置したヘッダ部材の内部に、溶融した封止材を、中空糸膜束を取り囲むように充填して固化させてなるものであるから、本件補正発明における「チューブシート」に相当する。

イ 以上から、本件補正発明と引用発明とは、下記[一致点]において一致し、下記[相違点1]、[相違点2]において、一応相違する。
[一致点]
「カートリッジチューブ内に配置された中空糸膜束と、当該中空糸膜束の両端に配置されたチューブシートと、前記カートリッジチューブの両端に設けられたエンドキャップと、
を含み、
前記カートリッジチューブが、前記エンドキャップ間に配置された少なくとも1つの流体入口/出口開口部を含み、
前記エンドキャップがポリマー材料からなり、
前記中空糸膜束の両端において、チューブシートが前記中空糸膜束を構成する中空糸膜を接合していることを特徴とする、
カートリッジエレメント」である点。

[相違点1]
本件補正発明においては、カートリッジチューブが0.5?10mmの壁厚を有するのに対して、引用発明においては、カートリッジチューブ(保護部材)の壁厚が特定されていない点。
[相違点2]
本件補正発明においては、チューブシートとエンドキャップ、カートリッジチューブとの接合構造について、
「前記エンドキャップによって形成されたキャップ層と、
前記エンドキャップと前記カートリッジチューブとの間に設けられた固定層と、
前記カートリッジチューブによって形成されたチューブ層と、
前記樹脂と前記中空糸束によって形成されたチューブシート層と、
を含む多層複合構造を有し、
前記エンドキャップが前記固定層に固定されて」いるのに対して、引用発明においては、上記対応部分の接合構造について特定されていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。事案に鑑み、相違点2、相違点1の順に検討する。
ア 相違点2について
引用発明における封止部の構造は、引用文献1の図5に具体的に示されているように、筒状のヘッダ部材と、ヘッダ部内に挿入された中空糸膜束と、中空糸膜束を環状に取り囲む筒状の保護部材とを、ヘッダ部材9の内部で隙間を埋めるように充填された封止材によって互いに接着したものである。(【0022】)
そして、上記図5に接した当業者は、そこに示されている封止部の構造を詳細に見れば、カートリッジの外から順(図5の上から順)に、ヘッダ部材9によって形成された層(本件補正発明の「キャップ層」に相当)、ヘッダ部材9と保護部材11との間、すなわち両部材で形成される空隙や浅溝21aに進入して固化した封止材Sによって構成される層(同じく「固定層」に相当)、保護部材11によって形成された層(同じく「チューブ層」に相当)、封止材S(同じく「樹脂」に相当)と中空糸膜束7によって形成された層(同じく「チューブシート層」に相当)を含む多層複合構造であり、ヘッダ部材が固定層に固定されていることを理解する。
してみると、引用発明における封止材による接合部の構造は、相違点2に係る多層複合構造に他ならないから、上記相違点2は引用発明と本件補正発明との相違点たり得ない。

イ 相違点1について
引用発明における保護部材(カートリッジチューブ)は、分離膜モジュールの運転中に、挿通される中空糸膜を保護するための部材であり、かかる部材の形状によってカートリッジエレメント全体の外形が保持されるものと解される。そして、当該保持部材の設計にあたっては、処理対象や処理条件を考慮して必要な強度を備えるものとすること、そのために保護部材を構成する材料や装置全体の大きさ等も考慮した保護部材の壁厚の値を好適な範囲とすることは、当業者による通常の創作能力の発揮にすぎない。
また、同じくカートリッジ型中空糸膜モジュールに関する引用文献2にも、カートリッジの外形を保持する部材としてのカートリッジケースについて、その厚みは、その材質やカートリッジの容量等により適宜決定される旨記載されていることからも上記事項は明らかである。
したがって、引用発明における保護部材(カートリッジチューブ)について、その壁厚として相違点1に係る値を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の発明特定事項に係る構造を採用することによって奏する効果は、引用発明が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、顕著なものと認めることはできない。

(5)審判請求書における請求人の主張について
ア 請求人は審判請求書において、「引用文献1は、・・・、エンドキャップ間に配置された一定厚の壁面を有するカートリッジチューブを含むという技術事項や、・・・、エンドキャップとカートリッジチューブとの間に固定層を有するという技術事項を開示するものでなく、本件発明とは全く異なる技術事項を開示するものに過ぎません。」との主張をする。(8頁下2行?9頁4行)
しかしながら、引用発明における「保護部材」は、引用文献1の【0035】等の記載から把握されるように、貫通孔を設けることによって当該部材内外の被処理流体或いは処理後の流体の自由な流通を確保しつつ、カートリッジの外形を保持するという役割を果たすものであるから、本件補正発明に係る「カートリッジチューブ」と機能を一にすることは明らかである。なお、引用文献1において具体的に例示されている保護部材の構造は、軸線方向に沿った複数の縦ライン部と周方向に沿った複数のサークル部を備えた矩形の貫通孔を形成する網目を複数有する網状の外観を有するものであるが、保護部材として上記機能が期待されていることに鑑みれば、当該部材が本件補正発明におけるカートリッジチューブに相当するとの判断を左右するものではない。
また、引用文献1には、溝ヘッダ部材内面に設けられた環状の溝21aを設けることによって、封止材Sの固定をより強固なものとすることが記載されているが、かかる記載は保護部材とヘッダ部材との間隙に存在する封止材によって両者が固定されることを説明しているものに他ならず、かかる封止材による層が本件補正発明の固定層に相当することも上記(4)アにおいて既に検討したとおりである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

イ また、請求人は、本件補正発明が有する構造により、特に高圧下で使用されるボアフィールドタイプのガス分離モジュールに供した場合において、高い圧力安定性および補強性を発揮し得るという、引用発明1等の記載から当業者が予測し得ない異質かつ顕著に優れた技術的効果を有するとも主張する。(9頁下2行?10頁10行)
しかしながら、本件補正発明は被処理対象を高圧下で使用されるボアフィードモデルのガス分離膜モジュールに用いられることをその発明特定事項とするものではないし、上記(4)イで検討したとおり、操作条件に応じて十分な強度を備えるように設計することは当業者による通常の創作能力の発揮にすぎないものと認められるから、かかる主張も容れられない。

3 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるから、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年1月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、この出願の請求項に係る発明は、平成30年4月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由3は、この出願の請求項1-8、10-12に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-99703号公報
引用文献2:特開平11-28341号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、カートリッジエレメントにおけるチューブシートの接合部に関する、
「 前記エンドキャップによって形成されたキャップ層と、
前記エンドキャップと前記カートリッジチューブとの間に設けられた固定層と、
前記カートリッジチューブによって形成されたチューブ層と、
前記樹脂と前記中空糸束によって形成されたチューブシート層と、
を含む多層複合構造を有し、
前記エンドキャップが前記固定層に固定されており、
前記中空糸膜束の両端において、チューブシートが前記中空糸膜束を構成する中空糸膜を接合している」
について、下線部の限定事項を除いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-01-29 
結審通知日 2020-02-05 
審決日 2020-02-18 
出願番号 特願2016-518892(P2016-518892)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関根 崇  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 服部 智
金 公彦
発明の名称 膜カートリッジシステム  
代理人 特許業務法人あしたば国際特許事務所  

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