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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L |
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管理番号 | 1363797 |
審判番号 | 不服2019-560 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-01-16 |
確定日 | 2020-07-02 |
事件の表示 | 特願2014-174588「電気掃除機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 49141〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年8月28日の出願であって、平成29年12月26日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年3月5日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年6月4日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年10月9日付けで拒絶査定がなされ(発送日 同年10月16日)、これに対して平成31年1月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同時に手続補正がなされ、その後、当審において、令和元年11月27日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和2年1月30日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1,2に係る発明は、令和2年1月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「電動ブロワとしても使用可能な電気掃除機であって、 吸気口と排気口を有し電動送風機を内蔵する掃除機本体と、 前記掃除機本体の前部に着脱自在に取り付けられた集塵容器と、 この掃除機本体の後部に設けられた排気口を覆うアダプタと、 このアダプタに接続されるアタッチメントとを有し、 前記吸気口が前記掃除機本体の前側に設けられ、 前記掃除機本体が、この掃除機本体の前後方向に延設された把持部を有し、 前記アダプタが、前記掃除機本体に対し着脱可能に取り付けられて前記排気口全体を覆う広部と、前記アタッチメントを着脱可能に接続する筒状部を有し、 前記アダプタの内面には、円周方向に3箇所のバヨネット用突起が設けられ、 隣接する前記バヨネット用突起の間には、前記アダプタの内径方向に突出した補強リブが形成され、 前記排気口の外周部分に形成された外周面部には、後方に立設したバヨネット基部が3箇所形成され、 前記バヨネット基部には、前記バヨネット用突起を挿入して係止するバヨネット用溝が設けられ、 前記電気掃除機として使用する場合も、前記電動ブロワとして使用する場合も、前記アダプタを取り付けて使用可能であり、 前記アダプタが前記アタッチメントを接続せずに前記排気口を覆うように取り付けて使用することも可能に構成されることを特徴とする電気掃除機。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由のうち、本願の請求項1に係る発明についての理由は、概略、次のとおりのものである。 本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用例1に記載された発明又は引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用例3に記載された発明及び引用例1に記載された技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用例1.特開平1-155815号公報 引用例2.実公昭53-5390号公報 引用例3.特開2014-68749号公報 引用例4.実公昭49-15398号公報 引用例5.実願昭60-120145号(実開昭62-27548号)の マイクロフィルム 第4 引用例の記載及び引用発明 1.引用例1の記載及び引用発明 (1)引用例1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。 ア.「この発明は、電気掃除機の空気吹き出し口に吹き出し空気捕集部を接続し、吹き出し空気捕集部に空気吹き出し管を、空気吹き出し管に空気吹き出しノズルを接続した空気吹き付け装置付電気掃除機に関するものである。 」(第1ページ左下欄第18行?右下欄第2行) イ.「吹き出し空気捕集部とは、ファン駆動装置部から吹き出す空気をスムースに空気吹き出し管に送ることと、ファン駆動装置部と空気吹き出し管を、接続する働きをする。 尚、吹き出し空気捕集部は、ファン駆動装置部あるいは、空気吹き出し管のどちらかに組み込まれていてもよい。」(第1ページ右下欄第3?9行) ウ.「本発明は以上のような欠点を除き機能性を加えるために発明されたもので、これを図面について説明すると、 (イ) フィルター部(3)に空気吸い込み管(2)を接続する。 (ロ) 空気吸い込み管(2)に塵吸い込みノズル(1)を接続する。 (ハ) ファン駆動装置部(4)に吹き出し空気捕集部(5)を接続する。(ファン駆動装置部に吹き出し空気捕集部が組み込まれている場合は、既に接続済と見なす。) (ニ) 吹き出し空気捕集部(5)に空気吹き出し管(6)を接続する。(吹き出し空気捕集部に空気吹き出し管が組みこまれている場合は、既に接続済と見なす。) (ホ) 空気吹き出し管(6)に空気吹き出しノズル(7)を接続する。 (ヘ) フィルター部(3)とファン駆動装置部(4)を接続する。」(第2ページ左上欄第10行?右上欄第10行) エ.「本発明は、以上のような構造であるから、これを使用するときは、最初フィルター部(3)とファン駆動装置部(4)を切り放し、ファン駆動装置部(4)と吹き出し空気捕集部(5)を接続(ファン駆動装置に、吹き出し空気捕集部が組み込まれている場合は、既にファン駆動装置と吹き出し空気捕集部が、接続されていると見なす。)、吹き出し空気捕集部(5)と空気吹き出し管(6)を接続(吹き出し空気捕集部に空気吹き出し管が組込まれている場合は、既に吹き出し空気捕集部と空気吹き出し管が接続されていると見なす。)、空気吹き出し管(6)と空気吹き出しノズル(7)を接続し、狭い場所あるいは障子戸の桟、机、テーブル、棚の上にかかった塵、置物の上や額の裏、電気の傘の上、本棚の中の本の上などにかかった塵を、空気吹き出しノズルから吹き出す空気で、吹き払う。なおフィルター部(3)とファン駆動装置部(4)を接続した状態で塵を吹き払う事もできる。」(第2ページ右上欄第11行?左下欄第11行) オ.「塵吹き払い終了後、ファン駆動装置部(4)に接続された吹き出し空気捕集部(5)を取り外してから(ファン駆動装置に吹き出し空気捕集部が組み込まれている場合は、空気捕集部から空気吹き出し管を取り外す)、ファン駆動装置部(4)をフィルター部(3)に接続し、フィルター部(3)に空気吸い込み管(2)を接続し、空気吸い込み管(2)に塵吸い込みノズル(1)を接続し、従来の電気掃除機と同じ様にして、吹き払われた塵を吸い込み捕集する。」(第2ページ左下欄第14行?右下欄第4行) そして、電気掃除機は、一般的に、塵吸い込みノズルが接続される空気吸い込み管が接続される側が前側であることからすれば、記載ア及びウ並びに図面の記載からみて、次の事項が理解できる。 カ.ファン駆動装置部(4)は、後部に空気吹き出し口を有する。 記載ウ及びエ並びに図面の記載からみて、次の事項が理解できる。 キ.フィルター部(3)は、ファン駆動装置部(4)の前部に切り放し可能に接続され、空気吸い込み管(2)が接続される部分を有し、当該部分はファン駆動装置部(4)よりも前側に設けられている。 記載ア,イ及び図面の記載並びに事項カからみて、次の事項が理解できる。 ク.吹き出し空気捕集部(5)は、空気吹き出し口全体を覆うようにファン駆動装置部(4)の空気吹き出し口に接続され、前記空気吹き出し口全体を覆うように前記空気吹き出し口に接続される部分と空気吹き出し管(6)が接続される部分を有する。 図面の記載からみて、次の事項が看取できる。 ケ.ファン駆動装置部(4)は、その前後方向に延設される把持部を有する。 記載イ及びオ並びに事項クからみて、次の事項が理解できる。 コ.電気掃除機は、吹き出し空気捕集部(5)がファン駆動装置部(4)に接続されたままでも塵を吸い込み捕集可能である。 サ.吹き出し空気捕集部(5)は、空気吹き出し管(6)が接続される部分に空気吹き出し管(6)を接続しなくても、空気吹き出し口全体を覆うようにファン駆動装置部(4)に接続して使用可能である。 (2)そうすると、これらの事項からみて、本願の請求項1の記載に倣って整理すれば、引用例1には次の発明又は技術(以下、「引用発明1」又は「引用例1記載の技術」という。)が記載されていると認められる。 「空気吹き付け装置付電気掃除機であって、 後部に空気吹き出し口を有するファン駆動装置部(4)と、 空気吸い込み管(2)が接続される部分を有し、ファン駆動装置部(4)の前部に切り放し可能に接続されるフィルター部(3)と、 ファン駆動装置部(4)の前記空気吹き出し口に接続され、前記空気吹き出し口全体を覆う吹き出し空気捕集部(5)と、 吹き出し空気捕集部(5)に接続される空気吹き出し管(6)と、を有し、 フィルター部(3)の、空気吸い込み管(2)が接続される部分がファン駆動装置部(4)よりも前側に設けられ、 ファン駆動装置部(4)がその前後方向に延設される把持部を有し、 吹き出し空気捕集部(5)が前記空気吹き出し口全体を覆うように前記空気吹き出し口に接続される部分と空気吹き出し管(6)が接続される部分を有し、 吹き出し空気捕集部(5)がファン駆動装置部(4)に接続されたままでも塵を吸い込み捕集可能であり、 吹き出し空気捕集部(5)は、空気吹き出し管(6)が接続される部分に空気吹き出し管(6)を接続しなくても、空気吹き出し口全体を覆うようにファン駆動装置部(4)に接続して使用可能である、 電気掃除機。」 2.引用例2の記載 引用例2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア.「排気圧力を利用して霧吹きあるいは狭い場所等に溜った塵を吹飛ばす場合には集中排気口を必要とするが、通常の使用では人体に不快感を与えたり床上の塵を舞い上げるのを防ぐためには分散排気が効果的である。」(第1欄第22?26行) イ.「本体ケース1には電動送風機2およびコード巻取装置3が内装され、その上部には運搬用ハンドル4が設けられている。またその後部には分散排気口5が設けられており、通常掃除機を運転すると図示していないが吸込具およびホース等を吸込まれた塵を含んだ空気は本体1の前方に設けられた集塵箱6に吸込まれる。そして集塵箱6に吸込まれた空気は前記集塵箱内に設けられたフィルター装置(図示せず)で濾過され、さらに電動送風機2内を通過し分散排気口5より排出される。またブロアーとして使用する場合は第2図に示すように、床用吸込具7を本体1に設けられた突出片Aおよび突出片Bの間に側面よりスライドさせて装着させて、床用吸込具7を集中排気口としてホース8を接続すれば、電動送風機2を通過した空気は分散排気口5を通過した後床用吸込具7を経てホース8に導かれ、狭い場所等に溜った塵を吹飛ばすことができる。」(第2欄第2?19行) 3.引用例3の記載 (1)引用例3には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。 ア.「【0015】 図1?図13は実施例1を示す。1はサイクロン式電気掃除機である。この電気掃除機1は、掃除機本体2と、この掃除機本体2の前部に着脱自在に取り付けられる集塵容器3と、この集塵容器3に着脱可能に取り付けられるフィルタ組立体4とを備える。」 イ.「【0016】 前記掃除機本体2は、電動送風機5が内蔵されたケース6と、把持部7と、電源コード8とを有して構成されている。また、前記把持部7には、前記集塵容器3を着脱するための操作部9及びスイッチ操作部10が設けられている。そして、このスイッチ操作部10を操作することにより、前記電動送風機5が駆動する。」 ウ.「【0017】 前記集塵容器3は、一端(後端)が開放し、他端(前端)が閉塞した有底筒状に形成され、略円筒形の周壁部11と、この周壁部11の前側を閉塞する前面部12とを一体に備えている。なお、これらの周壁部11及び前面部12は、比較的硬質で透光性を有する合成樹脂により一体成型される。また、前記前面部12には、不透光性の飾り板13が取り付けられている。 【0018】 前記周壁部11の後側には、気流を前記周壁部11の周方向に導入する導入部14を連通形成し、この導入部14に、吸引経路が内部に設けられた接続筒部15を接続すると共に、この接続筒部15を前記周壁部11の外周に固定している。また、前記接続筒部15の前側部15Aは前後方向に向くと共に、前記接続筒部15の後側部15Bは前記集塵容器3の周方向に向いている。そして、前記接続筒部15の前端には、ノズル16が着脱可能に設けられる。」 エ.「【0043】 ・・・(中略)・・・なお、前記掃除機本体2のケース6の後部には、排気口88が設けられている。」 オ.「【0050】 そして、前記装着部61に前記集塵容器3を正しく装着した状態で、前記スイッチ操作部10を操作して前記電動送風機5を駆動すると、前記ノズル16から吸引された塵埃を含む空気が、前記集塵容器3の周方向に接続した接続筒部15から前記集塵容器3に流れ込み、この集塵容器3内で渦流が形成され、この渦流に含まれる粗い塵埃が遠心分離され、前記周壁部11と返し部25との間から前記塵埃貯溜部26に移動すると共に、砂等の粗くて重い塵埃が分離された気流は、前記小孔23Hから前記筒状体21内に流入する。なお、気流が前記返し部25を乗り越える際に、この気流に含まれる塵埃の多くは、前記返し部25によって下方に返されることになる。そして、気流に含まれる軽い塵埃は、前記筒状体21内に流入する際に、一次フィルタとして作用する前記小孔23H、或いは前記フィルタ本体31によって捕捉される。このようにして、前記フィルタ本体31によって細かい塵埃が分離された清浄な気流は、前記フィルタ64Fを設けた吸込筒部64を通過して、前記電動送風機5に至る。なお、前記吸込筒部64から前記ケース6に吸い込まれた空気は、後部の前記排気口88から排出される。」 そして、記載ウ並びに図2及び3の記載からみて、次の事項が理解できる。 カ.吸引経路が内部に設けられる接続筒部15は、集塵容器3の周壁部11の外周に固定され、ノズル16が着脱可能に設けられる前端が掃除機本体2の前側に位置している。 記載イ並びに図2及び3の記載からみて、次の事項が理解できる。 キ.把持部7は、掃除機本体2の前後方向に延設されている。 (2)そうすると、これらの事項からみて、本願の請求項1の記載に倣って整理すれば、引用例3には次の発明又は技術(以下、「引用発明3」又は「引用例3記載の技術」という。)が記載されていると認められる。 「電気掃除機1であって、 後部に排気口88が設けられ、電動送風機5が内蔵されたケース6を有する掃除機本体2と、 前記掃除機本体2の前部に着脱自在に取り付けられる集塵容器3と、を備え、 吸引経路が内部に設けられる接続筒部15が集塵容器3の周壁部11の外周に固定され、接続筒部15の、ノズル16が着脱可能に設けられる前端が掃除機本体2の前側に位置し、 前記掃除機本体2は、前記掃除機本体2の前後方向に延設された把持部7を有する、 電気掃除機1。」 4.引用例4の記載 引用例4には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア.「まず通常清掃の場合は第5図に示すように吸込口3に可撓ホース12その他適宜吸込部材を装着する。」(第3欄第3?5行) イ.「次にこの掃除機をブロワーとして使用する場合は、まず排気分散体8の覆合を解いて、吸込口3から可撓ホース12を外し、これを排気口5に接続する。」(第3欄第18?21行) ウ.「本考案は以上詳述したように、排気口に排気分散体を選択的に覆合することによって掃除機に通常清掃とブロワーとの2つの機能を与え、しかも排気分散体の存在によって排気口から高速で排出される空気を分散して低速となし、これにより従来みられた排気風による種々の悪影響を解決すると共に、騒音の発生を防止し、」(第4欄第2?8行) 5.引用例5の記載 引用例5には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア.「本考案は、吸引清掃の他に、吹出しにより乾燥及びエアタービンブラシや泡立てによる清掃装置等の駆動が可能な、吸排気両用清掃装置に関する。」(明細書第2ページ第1?4行) イ.「吸引清掃は、集塵袋(6)をセットし、吸込口(4)に、先端に吸口を有する延長管等(図示を略す。)を連結すると共に、集塵室補助孔(10)を閉じ送風機室補助孔(11)を開いて行う。」(明細書第4ページ第15?18行) ウ.「空気吹出しにより、ある種の清掃装置、例えば、空気吹出しにより泡立てられた洗剤をカーペットに吹出しつつエアタービンブラシによりブラッシングしてカーペットを洗浄する如き装置を駆動する場合は、集塵袋(6)や塵埃等を集塵室(2)から取り出し、排気口(8)に当該装置を連結すると共に、集塵室補助孔(10)を開き送風機室補助孔(11)を閉じて行う。」(明細書第5ページ第10?17行) 第5 対比・判断 1.引用例1を主引用例とする理由について (1)対比 本願発明と引用発明1を対比する。 ア.引用例1の記載エにあるように、引用発明1は、空気吹き出し管(6)に接続される空気吹き出しノズル(7)から空気を吹き出させるように使用可能なものであって、当該使用は、本願発明の「電動ブロワとしても使用」に相当するから、引用発明1の「空気吹き付け装置付電気掃除機」は、本願発明の「電動ブロワとしても使用可能な電気掃除機」に相当する。 イ.引用例1の記載エにあるように、引用発明1は、フィルター部(3)をファン駆動装置部(4)から切り放した状態においても空気吹き出し口から空気を吹き出すことが可能であるから、ファン駆動装置部(4)が駆動装置により駆動されるファンを備えていることは明らかであって、当該ファンは、本願発明の「電動送風機」に相当し、引用発明1の「空気吹き出し口」は、本願発明の「排気口」に相当する。 そうすると、引用発明1の「後部に空気吹き出し口を有するファン駆動装置部(4)」は、本願発明の「吸気口と排気口を有し電動送風機を内蔵する掃除機本体」と、「排気口を有し電動送風機を内蔵する掃除機本体」の点で一致する。 そして、本願明細書及び図面を参照すると、本願発明の「吸気口」は、吸引掃除用のアタッチメントが取り付けられる部位であるから、引用発明1の「フィルター部(3)」の「空気吸い込み管(2)が接続される部分」は、本願発明の「吸気口」に相当する。 ウ.引用例1の記載ウ及びオにあるように、引用発明1は、塵吸い込みノズル(1)が接続される空気吸い込み管(2)をフィルター部(3)に接続して、塵を吸い込み捕集するものであって、フィルター部(3)内に塵が捕集されることは明らかである。そうすると、引用発明1の「フィルター部(3)」は、本願発明の「集塵容器」に相当するから、引用発明1の「ファン駆動装置部(4)の前部に切り放し可能に接続されるフィルター部(3)」は、本願発明の「前記掃除機本体の前部に着脱自在に取り付けられた集塵容器」に相当する。 エ.引用発明1は、ファン駆動装置部(4)が後部に空気吹き出し口を有しているから、引用発明1の「ファン駆動装置部(4)の前記空気吹き出し口に接続され、前記空気吹き出し口全体を覆う吹き出し空気捕集部(5)」は、本願発明の「この掃除機本体の後部に設けられた排気口を覆うアダプタ」に相当する。 オ.引用発明1の「吹き出し空気捕集部(5)に接続される空気吹き出し管(6)」は、その機能からみて、本願発明の「このアダプタに接続されるアタッチメント」に相当する。 カ.引用発明1の「把持部」は、本願発明の「把持部」に相当するから、引用発明1の「ファン駆動装置部(4)がその前後方向に延設される把持部を有」することは、本願発明の「前記掃除機本体が、この掃除機本体の前後方向に延設された把持部を有」することに相当する。 キ.引用発明1は、ファン駆動装置部(4)が空気吹き出し口を有しているから、引用発明1の「前記空気吹き出し口全体を覆うように前記空気吹き出し口に接続される部分」と「空気吹き出し管(6)が接続される部分」は、その機能からみて、それぞれ、本願発明の「前記掃除機本体に対し着脱可能に取り付けられて前記排気口全体を覆う広部」と「前記アタッチメントを着脱可能に接続する筒状部」に相当する。 してみれば、引用発明1の「吹き出し空気捕集部(5)が前記空気吹き出し口全体を覆うように前記空気吹き出し口に接続される部分と空気吹き出し管(6)が接続される部分を有」することは、本願発明の「前記アダプタが、前記掃除機本体に対し着脱可能に取り付けられて前記排気口全体を覆う広部と、前記アタッチメントを着脱可能に接続する筒状部を有」することに相当する。 ク.引用例1の記載エにあるように、引用発明1は、空気吹き出し管(6)に接続される空気吹き出しノズル(7)から空気を吹き出させるように使用する場合には空気捕集部(5)をファン駆動装置部(4)に接続するものであって、前記「ア」で検討したように、当該使用は、本願発明の「前記電動ブロワとして使用」相当するから、引用発明1の「吹き出し空気捕集部(5)がファン駆動装置部(4)に接続されたままでも塵を吸い込み捕集可能であ」ることは、本願発明の「前記電気掃除機として使用する場合も、前記電動ブロワとして使用する場合も、前記アダプタを取り付けて使用可能であ」ることに相当する。 ケ.引用発明1の「吹き出し空気捕集部(5)は、空気吹き出し管(6)が接続される部分に空気吹き出し管(6)を接続しなくても、空気吹き出し口全体を覆うようにファン駆動装置部(4)に接続して使用可能である」ことは、本願発明の「前記アダプタが前記アタッチメントを接続せずに前記排気口を覆うように取り付けて使用することも可能に構成される」ことに相当する。 コ.以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。 【一致点】 電動ブロワとしても使用可能な電気掃除機であって、 排気口を有し電動送風機を内蔵する掃除機本体と、 前記掃除機本体の前部に着脱自在に取り付けられた集塵容器と、 この掃除機本体の後部に設けられた排気口を覆うアダプタと、 このアダプタに接続されるアタッチメントとを有し、 前記掃除機本体が、この掃除機本体の前後方向に延設された把持部を有し、 前記アダプタが、前記掃除機本体に対し着脱可能に取り付けられて前記排気口全体を覆う広部と、前記アタッチメントを着脱可能に接続する筒状部を有し、 前記電気掃除機として使用する場合も、前記電動ブロワとして使用する場合も、前記アダプタを取り付けて使用可能であり、 前記アダプタが前記アタッチメントを接続せずに前記排気口を覆うように取り付けて使用することも可能に構成される電気掃除機。 【相違点】 1.本願発明は、掃除機本体が吸気口を有し、前記吸気口が前記掃除機本体の前側に設けられているのに対し、 引用発明1は、掃除機本体(ファン駆動装置部(4))ではなく、集塵容器(フィルター部(3))が吸気口(空気吸い込み管(2)が接続される部分)を有し、前記吸気口が前記掃除機本体よりも前側に設けられている点。 2.本願発明は、前記アダプタの内面には、円周方向に3箇所のバヨネット用突起が設けられ、隣接する前記バヨネット用突起の間には、前記アダプタの内径方向に突出した補強リブが形成され、前記排気口の外周部分に形成された外周面部には、後方に立設したバヨネット基部が3箇所形成され、前記バヨネット基部には、前記バヨネット用突起を挿入して係止するバヨネット用溝が設けられているのに対し、 引用発明1は、そのような事項を備えていない点。 (2)判断 ア.相違点1について検討する。 (ア)当該相違点に係る本願発明を特定する事項である「吸気口」「を有」する「掃除機本体」との記載は、本願明細書及び図面の記載との関係で必ずしも明確ではない。すなわち、吸気口の配置に関連して、本願明細書及び図面には、本願発明の好適な実施例として、特に段落0014,0015及び図4に、吸気口100が前端に形成されている接続筒部15が集塵容器3に固定されたもの(以下、「本願明細書等記載の態様」という。)は記載されているが、これ以外に吸気口100の配置についての記載はない。これを考慮すれば、前記発明特定事項は、少なくとも本願明細書等記載の態様を包含するといえる。 一方、本願明細書等記載の態様は、引用例3に記載されている(前記「第4 3」参照)。更に、引用例3記載の技術は、接続筒部15の、ノズル16が着脱可能に設けられる前端が掃除機本体2の前側に位置するものであって、当該前端は、前記「(1)イ」と同様の理由により、本願発明の「吸気口」に相当する。 そして、引用発明1と引用例3記載の技術は、電気掃除機に係るものである点において技術分野を一とするものであって、引用発明1のフィルター部(3)と引用例3記載の技術の集塵容器3は、本願発明の「集塵容器」に相当する点において一致する。 そうすると、引用例3の技術を引用発明1に適用し、引用発明1において、前記相違点1に係る本願発明を特定する事項を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。 (イ)前記「(ア)」で検討したことからすれば、前記発明特定事項は、吸気口が掃除機本体自体に形成されていなくても、吸気口が形成された部品が取り付けられる掃除機本体をも包含するともいえる。 そうすると、引用発明1は、吸気口(空気吸い込み管(2)が接続される部分)を有する集塵容器(フィルター部(3))が前記掃除機本体に取り付けられるものであるから、掃除機本体が吸気口を有する点においても本願発明と一致するといえ、更に引用発明1の「フィルター部(3)の、空気吸い込み管(2)が接続される部分がファン駆動装置部(4)よりも前側に設けられ」ていることは、本願発明の「前記吸気口が前記掃除機本体の前側に設けられ」ていることに相当することとなる。 してみると、相違点1は、実質的な相違点ではないともいえる。 (ウ)更に、仮に、本願発明を特定する事項である「吸気口」「を有」する「掃除機本体」は、本願明細書等記載の態様をも包含せず、吸気口が形成された掃除機本体のみを包含するとしても、電気掃除機において、吸気口が形成された掃除機本体であって、前記吸気口が前側に設けられているものは、引用例を挙げるまでもなく周知であって、当該周知技術を引用発明1に適用することは、当業者にとって容易である。 してみれば、引用発明1において、前記相違点1に係る本願発明を特定する事項を備えるようにすることは、前記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。 イ.相違点2について検討する。 一の部材を他の部材に取り外し可能に固定する手段として、バヨネット用突起と前記突起を挿入して係止するバヨネット用溝とを備えるバヨネット機構は慣用されている。引用発明1は、アダプタ(吹き出し空気捕集部(5))が掃除機本体(ファン駆動装置部(4))に着脱可能に取り付けられるものであるから、アダプタを掃除機本体にバヨネット機構により取り付けるようにすることは、当業者が適宜なし得る事項である。その際、引用例1の図面の記載からみて、アダプタは排気口(空気吹き出し口)全体を覆うように掃除機本体に外嵌するから、バヨネット用突起とバヨネット用溝の一方をアダプタの内面に、他方を排気口の外周部分に設けることとなり、バヨネット用突起とバヨネット用溝のいずれの一方をアダプタ側に、いずれの他方を排気口側に設けるかは、当業者が適宜選択し得る事項である。そして、バヨネット機構による固定を安定かつ強固なものとするため、バヨネット機構を周方向に複数箇所設けることもまた通常行われている。 補強リブを形成して機械製品の強度を向上させることもまた慣用されており、その際使用者の目に触れないよう補強リブを機械製品の内部に形成することも一般的に行われている。必要な強度を持たせることは機械分野における一般的な技術課題であるから、引用発明1において、アダプタの内面に補強リブを形成することは、当業者が適宜なし得る事項である。そして、強度に偏りがあると弱い箇所に応力集中が発生することになるから、補強リブを形成するにあたり、周方向に複数箇所形成するようにすることは、当業者が当然に考慮する事項である。 そして、バヨネット機構と補強リブとをいずれも周方向に複数箇所設け又は形成すれば、おのずと、補強リブは隣接するバヨネット機構の間に位置することとなり、バヨネット機構及び補強リブが設け又は形成される箇所を3箇所とすることは、当業者が通常発揮し得る創作力の範囲内のものである。 そうすると、引用発明1において、前記相違点2に係る本願発明を特定する事項を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得る事項である。 ウ.本願発明の奏する効果に、引用例1及び3に記載された事項及び前記周知又は慣用されている事項に基いて、当業者が容易に予測し得る範囲を越えるものは見いだせない。 この点に関し、請求人は、令和2年1月30日付けの意見書(「【意見の内容】4.(2)本願発明の作用・効果について」参照)において、「本願発明は、アダプタを掃除機本体に取り付ける場合には、アダプタの内面に設けられた3箇所のバヨネット用突起をバヨネット基部に設けられたバヨネット用溝に挿入して係止します。そのため、アダプタを掃除機本体に強固に取り付けることができ、掃除機本体とアダプタとの隙間から漏れる空気や電動送風機の作動音を抑制することができます。」と主張している。 しかしながら、先に検討したとおり、アダプタを掃除機本体に強固に取り付けることは、バヨネット機構を周方向に複数箇所設けることによりおのずと奏される効果であって、引用例1及び3に記載された事項並びに前記周知又は慣用されている事項に基いて当業者が容易に予測し得る範囲を越える、本願発明特有の効果であるとはいえない。また、掃除機本体とアダプタとの隙間から漏れる空気の量や電動送風機の作動音の大きさは、前記隙間の大きさに依存し、アダプタの掃除機本体への取付けの強度には直接関係しない。本願の請求項1には、「この掃除機本体の後部に設けられた排気口を覆うアダプタ」が「前記掃除機本体に対し着脱可能に取り付けられて前記排気口全体を覆う広部」を有するとしか記載されておらず、広部が掃除機本体の外周に密着して取り付けられるのかあるいは両者の間に隙間を有して取り付けられるのかについて何ら記載されていない。そうすると、掃除機本体とアダプタとの隙間から漏れる空気や電動送風機の作動音を抑制することができるという効果は、本願発明を特定する事項に基づくものではなく、本願発明が奏する効果とは認められない。 請求人は、前記意見書において、「アダプタを掃除機本体に取り付ける際に、バヨネット用突起をバヨネット用溝の位置に合わせる必要がありますが、バヨネット用突起がバヨネット基部のうちバヨネット用溝が形成されていない位置であった場合には、バヨネット用突起がバヨネット基部に当接するため、誤った位置でアダプタが取り付けられることを防止すると共に、使用者はバヨネット用突起がバヨネット用溝の位置に合っていないことを認識することができます。また、バヨネット用突起が、隣接するバヨネット基部とバヨネット基部との間の位置であった場合でも、補強リブがバヨネット基部に当接するため、誤った位置でアダプタが取り付けられることを防止すると共に、使用者はバヨネット用突起がバヨネット用溝の位置に合っていないことを認識することができます。」とも主張している(「【意見の内容】4.(2)本願発明の作用・効果について」参照)。 しかしながら、バヨネット機構は、バヨネット用溝が、例えば本願の図1にもあるように、軸方向に延在する第1の溝と前記第1の溝の端部から周方向の一方向に延在する第2の溝とからなり、バヨネット用突起がまず前記第1の溝に挿入され次いで相対回動されて前記第2の溝に挿入されることにより固定をなすものである。すなわち、バヨネット用突起が前記第1の溝に挿入されない限りバヨネット機構による固定はなされないから、誤った位置で取り付けられることを防止すると共に、バヨネット用突起がバヨネット用溝の位置に合っていないことを認識することができるという効果は、バヨネット機構によりおのずと奏される効果であって. 引用例1及び3に記載された事項並びに前記周知又は慣用されている事項に基いて当業者が容易に予測し得る範囲を越える、本願特有の効果であるとはいえない。 請求人は、前記意見書において、「補強リブが形成されることで、アダプタに外力が付加された場合にアダプタの形状が変形し難くなります。 また、バヨネット用突起と補強リブは、アダプタの内面に設けられていることから、アダプタの使用時にバヨネット用突起と補強リブが外観に現れず、外観意匠性を低下させることがなく、また、アダプタを取り付けた状態で電気掃除機や電動ブロワとして使用する際に、使用者の手などにバヨネット用突起及びアダプタが触れることながく、操作性を低下させることもありません。」とも主張している。 しかしながら、先に述べたとおり、補強リブは強度を向上させるために形成されるものであるから、外力が付加された場合に形状が変形し難くなるという効果は、補強リブを形成することによりおのずと奏される効果であって、引用例1及び3に記載された事項並びに前記周知又は慣用されている事項に基いて当業者が容易に予測し得る範囲を越える、本願特有の効果であるとはいえない。更に、外観意匠性や操作性を低下させないという効果もバヨネット機構及び補強リブをアダプタの内面に設けることによりおのずと奏される効果であって. 引用例1及び3に記載された事項並びに前記周知又は慣用されている事項に基いて当業者が容易に予測し得る範囲を越える、本願特有の効果であるとはいえない。 更に、請求人は、前記意見書において、「バヨネット基部は、排気口の外周部分に形成された外周面部から後方に立設されています。そのため、電気掃除機を集塵容器が上側、掃除機本体が下側となるように載置することができ、その際、バヨネット基部を電気掃除機が載置された載置面に当接させて電気掃除機を縦置きすることができます。また、バヨネット基部は3箇所に形成されており、隣接するバヨネット基部とバヨネット基部との間には空間が形成されていることから、バヨネット基部を載置面に当接させて電気掃除機を縦置きした状態であっても排気口が閉塞されず、排気口から排気を行うことができます。」とも主張している。 しかしながら、本願の明細書及び図面には、電気掃除機を集塵容器が上側、掃除機本体が下側となるように載置(以下、単に「縦置き」という。)することは記載されていない。更に、本願の請求項1には、仮に縦置きした際に載置側となる掃除機本体の後部について、「この掃除機本体の後部に設けられた排気口」と「前記排気口の外周部分に形成された外周面部には、後方に立設したバヨネット基部が3箇所形成され」としか記載されておらず、排気口がどのような形状であって、掃除機本体の後部の全体を占めているのかあるいは一部であるのか、また排気口が掃除機本体の後部の一部である場合、残余の部分がどのような形状であって、排気口と掃除機本体の前後方向に関してどのような位置関係になっているのか、更に後方に立設するバヨネット基部と排気口は掃除機本体の前後方向に関してどのような位置関係になっているのか等について何ら記載されていない。そして、これらに応じて、電気掃除機が縦置きできるか否かが異なることは明らかである。そうすると、電気掃除機を縦置きすることができるという効果は、本願発明を特定する事項に基づくものではなく、本願発明が奏する効果とは認められない。 以上のとおり、請求人の前記主張は、いずれも採用することができない。 エ.したがって、本願発明は、引用発明1及び引用例3記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2.引用例3を主引用例とする理由について (1)対比 本願発明と引用発明3を対比する。 ア.引用発明3の「電気掃除機1」は、本願発明の「電動ブロワとしても使用可能な電気掃除機」と「電動掃除機」の点で一致する。 イ.引用発明3の「排気口88」及び「電動送風機5」は、それぞれ、本願発明の「排気口」及び「電動送風機」に相当する。 そうすると、引用発明3の「後部に排気口88が設けられ、電動送風機5が内蔵されたケース6を有する掃除機本体2」は、本願発明の「吸気口と排気口を有し電動送風機を内蔵する掃除機本体」と、「排気口を有し電動送風機を内蔵する掃除機本体」の点で一致し、更に引用発明3は、本願発明と、排気口が掃除機本体の後部に設けられている点でも一致する。 そして、本願明細書及び図面を参照すると、本願発明の「吸気口」は、吸引掃除用のアタッチメントが取り付けられる部位であるから、引用発明3の「接続筒部15」の「ノズル16が着脱可能に設けられる前端」は、本願発明の「吸気口」に相当する。 ウ.引用発明3の「集塵容器3」は、本願発明の「集塵容器」に相当するから、引用発明3の「前記掃除機本体2の前部に着脱自在に取り付けられる集塵容器3」は、本願発明の「前記掃除機本体の前部に着脱自在に取り付けられた集塵容器」に相当する。 エ.引用発明3の「把持部」は、本願発明の「把持部」に相当するから、引用発明3の「前記掃除機本体2は、前記掃除機本体2の前後方向に延設された把持部7を有する」ことは、本願発明の「前記掃除機本体が、この掃除機本体の前後方向に延設された把持部を有」することに相当する。 オ.以上のことから、本願発明と引用発明3との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。 【一致点】 電気掃除機であって、 排気口を有し電動送風機を内蔵する掃除機本体と、 前記掃除機本体の前部に着脱自在に取り付けられた集塵容器とを有し、 前記排気口が前記掃除機本体の後部に設けられ、 前記掃除機本体が、この掃除機本体の前後方向に延設された把持部を有する電気掃除機。 【相違点】 1.本願発明は、電気掃除機が電動ブロワとしても使用可能であって、掃除機本体の後部に設けられた排気口を覆うアダプタと、このアダプタに接続されるアタッチメントとを有し、前記アダプタが、前記掃除機本体に対し着脱可能に取り付けられて前記排気口全体を覆う広部と、前記アタッチメントを着脱可能に接続する筒状部を有し、前記アダプタの内面には、円周方向に3箇所のバヨネット用突起が設けられ、隣接する前記バヨネット用突起の間には、前記アダプタの内径方向に突出した補強リブが形成され、前記排気口の外周部分に形成された外周面部には、後方に立設したバヨネット基部が3箇所形成され、前記バヨネット基部には、前記バヨネット用突起を挿入して係止するバヨネット用溝が設けられ、前記電気掃除機として使用する場合も、前記電動ブロワとして使用する場合も、前記アダプタを取り付けて使用可能であり、前記アダプタが前記アタッチメントを接続せずに前記排気口を覆うように取り付けて使用することも可能に構成されるのに対し、 引用発明3は、そのような事項を備えていない点。 2.本願発明は、掃除機本体が吸気口を有し、前記吸気口が前記掃除機本体の前側に設けられているのに対し、 引用発明3は、集塵容器(集塵容器3)の周壁部11の外周に固定される接続筒部15が吸気口(ノズル16が着脱可能に設けられる前端)を有し、前記吸気口が掃除機本体(掃除機本体2)の前側に位置する点。 (2)判断 ア.相違点1について検討する。 前記「1.(1)」において検討したように、引用例1記載の技術は、前記相違点1に係る本願発明を特定する事項である、電気掃除機が電動ブロワとしても使用可能であって、掃除機本体の後部に設けられた排気口を覆うアダプタと、このアダプタに接続されるアタッチメントとを有し、前記アダプタが、前記掃除機本体に対し着脱可能に取り付けられて前記排気口全体を覆う広部と、前記アタッチメントを着脱可能に接続する筒状部を有し、前記電気掃除機として使用する場合も、前記電動ブロワとして使用する場合も、前記アダプタを取り付けて使用可能であり、前記アダプタが前記アタッチメントを接続せずに前記排気口を覆うように取り付けて使用することも可能に構成されることを備えている。 そして、電気掃除機を電動ブロワとしても使用可能とすることは、例えば引用例1,2,4,5に記載されているように、周知の技術課題であるから、引用発明3に引用例1に記載された技術を適用することは、当業者にとって容易である。 更に、前記「1.(2)イ」において検討したように、一の部材を他の部材に取り外し可能に固定する手段として、バヨネット用突起と前記突起を挿入して係止するバヨネット用溝とを備えるバヨネット機構は慣用されており、引用例1記載の技術は、アダプタ(吹き出し空気捕集部(5))を掃除機本体(ファン駆動装置部(4))に着脱可能に取り付けるものであるから、引用例1記載の技術を引用発明3に適用するにあたり、アダプタを掃除機本体にバヨネット機構により取り付けるようにすることは、当業者が適宜なし得る事項である。その際、引用例1の図面の記載からみて、アダプタは排気口(空気吹き出し口)全体を覆うように掃除機本体に外嵌するから、バヨネット用突起とバヨネット用溝の一方をアダプタの内面に、他方を排気口の外周部分に設けることとなり、バヨネット用突起とバヨネット用溝のいずれの一方をアダプタ側に、いずれの他方を排気口側に設けるかは、当業者が適宜選択し得る事項である。そして、バヨネット機構による固定を安定かつ強固なものとするため、バヨネット機構を周方向に複数箇所設けることもまた通常行われている。 また、補強リブを形成して機械製品の強度を向上させることも慣用されており、その際使用者の目に触れないよう補強リブを機械製品の内部に形成することも一般的に行われている。必要な強度を持たせることは機械分野における一般的な技術課題であるから、引用例1記載の技術を引用発明3に適用するにあたり、アダプタの内面に補強リブを形成することは、当業者が適宜なし得る事項である。そして、強度に偏りがあると弱い箇所に応力集中が発生することになるから、補強リブを形成するにあたり、周方向に複数箇所形成するようにすることは、当業者が当然に考慮する事項である。 そして、バヨネット機構と補強リブとをいずれも周方向に複数箇所設け又は形成すれば、おのずと、補強リブは隣接するバヨネット機構の間に位置することとなり、バヨネット機構及び補強リブが設け又は形成される箇所を3箇所とすることは、当業者が通常発揮し得る創作力の範囲内のものである。 そうすると、引用発明3に引用例1記載の技術を適用し、前記相違点2に係る本願発明を特定する事項を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。 イ.相違点2について検討する。 (ア)前記「1.(2)ア(ア)」において検討したように、本願明細書及び図面の記載を考慮すれば、本願発明を特定する事項である「吸気口」「を有」する「掃除機本体」は、少なくとも本願明細書等記載の態様(前記「1.(2)ア(ア)」参照)を包含し、引用発明3は、本願明細書等記載の態様を備えているから、掃除機本体が吸気口を有する点においても本願発明と一致するといえ、更に引用発明3の「接続筒部15の、ノズル16が着脱可能に設けられる前端が掃除機本体2の前側に位置し」ていることは、本願発明の「前記吸気口が前記掃除機本体の前側に設けられ」ていることに相当することとなる。 してみると、相違点2は、実質的な相違点ではない。 (イ)仮に、本願発明を特定する事項である「吸気口」「を有」する「掃除機本体」は、本願明細書等記載の態様をも包含せず、吸気口が形成された掃除機本体のみを包含するとしても、電気掃除機において、吸気口が形成された掃除機本体であって、前記吸気口が前側に設けられているものは、引用例を挙げるまでもなく周知であって、当該周知技術を引用発明3に適用することは、当業者にとって容易である。 してみれば、引用発明3において、前記相違点2に係る本願発明を特定する事項を備えるようにすることは、前記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。 ウ.前記「1.(2)ウ」において検討した理由と同様の理由により、本願発明の奏する効果に、引用例3及び1に記載された事項及び前記周知又は慣用されている事項に基いて、当業者が容易に予測し得る範囲を越えるものは見いだせない。 エ.したがって、本願発明は、引用発明3及び引用例1記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-04-22 |
結審通知日 | 2020-04-28 |
審決日 | 2020-05-15 |
出願番号 | 特願2014-174588(P2014-174588) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A47L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柿沼 善一 |
特許庁審判長 |
佐々木 芳枝 |
特許庁審判官 |
久保 竜一 窪田 治彦 |
発明の名称 | 電気掃除機 |
代理人 | 牛木 護 |
代理人 | 特許業務法人牛木国際特許事務所 |