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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23K |
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管理番号 | 1363935 |
審判番号 | 不服2018-17496 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-28 |
確定日 | 2020-07-08 |
事件の表示 | 特願2017-506686「バルクパッケージ化溶接ワイヤのペイオフのためのフローティング・フィード補助装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月11日国際公開、WO2016/022389、平成29年10月5日国内公表、特表2017-529241〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)7月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年8月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成29年 2月15日 :審査請求 平成30年 1月17日付け:拒絶理由通知 同年 4月13日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 9月 5日付け:拒絶査定 同年12月28日 :審判請求 令和 元年 9月 6日付け:当審による拒絶理由通知 同年12月 9日 :意見書及び手続補正書の提出 第2.本願発明 令和元年12月9日提出の手続補正書により補正がなされた特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 下部面に配置された複数のリブを有するベース部で、前記複数のリブが下部面から突き出るベース部であり、前記ベース部は前記ベース部の上部面に少なくとも1つの凹部を含み、前記少なくとも1つの凹部は前記複数のリブの位置と合致する反対側の位置にあるベース部と、 前記ベース部に連結されたドーム部と、 前記ドーム部内の開口部の軸受を通じて前記ドーム部に回転可能に結合されて、湾曲された形状を有する回転導管部とを備え、その回転導管部は前記ドーム部内に配置された第1端部と前記ドーム部上に配置された第2端部とを有するフィード補助装置。」 第3.拒絶の理由 令和元年9月6日付けの当審が示した拒絶の理由のうち、理由1の主なものは、次のとおりである。 1.(進歩性)この出願の請求項1ないし9に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1及び2に記載された発明並びに周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2007-238323号公報 2.特開2005-53649号公報 3.実願昭51-18209号(実開昭52-110020号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献) 4.実願昭52-146645号(実開昭54-73317号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献) 5.実願昭60-40982号(実開昭61-157567号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献) 6.実願昭59-183453号(実開昭61-98772号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献) 第4.引用文献の記載、及び引用発明等 1.引用文献1 (1)引用文献1の記載 引用文献1には、図面(特に【図10】を参照。)と共に、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 ア.「【0001】 本発明は、線材コイルから引き出される線材を案内する線材ガイド治具に関する。」 イ.「【0005】 本発明の課題は、線材を安定的に引き出させることができる線材ガイド治具を提供することにある。」 ウ.「【0021】 <第1実施形態> 本発明の第1実施形態に係る線材ガイド治具1aが利用される溶接システム100を図1および図2に示す。この溶接システム100は、溶接ワイヤ2(線材)が溶接ワイヤコイル3(線材コイル)から引き出されてトーチ4に供給されるシステムである。溶接ワイヤコイル3は、線材2がコイル状に巻回積層されたものである。 【0022】 線材ガイド治具1aは、溶接ワイヤコイル3と共にコイル収納ドラム5に収納されており、溶接ワイヤコイル3上に載置される。なお、溶接ワイヤコイル3には、芯材となる内筒は設けられておらず、溶接ワイヤコイル3の中心は空洞となっている。 【0023】 溶接ワイヤコイル3から引き出された溶接ワイヤ2は、線材ガイド治具1aによって第1案内ケーブル6(案内ケーブル)に案内され、第1案内ケーブル6を通って送給装置7に送られる。送給装置7は、一対の送給ロール8と、送給ロール8を回転駆動するモータ(図示せず)とを備えており、溶接ワイヤ2は送給ロール8が回転することによって溶接ワイヤコイル3から引き出される。溶接ワイヤ2は、送給装置7から第2案内ケーブル9を通ってトーチ4に送られて溶接作業に使用される。 【0024】 〔線材ガイド治具1aの全体構成〕 線材ガイド治具1aは、コイル収納ドラム5に収納された溶接ワイヤコイル3から引き出される溶接ワイヤ2を案内する治具であり、図2および図3に示すように溶接ワイヤコイル3の上面に載置されている。この状態において線材ガイド治具1aは、コイル収納ドラム5や溶接ワイヤコイル3に固定されておらず、溶接ワイヤ2の増減に応じて鉛直方向に移動することができる。なお、第1案内ケーブル6は柔軟性を有するケーブルであり、線材ガイド治具1aの動きを妨げるものではない。この線材ガイド治具1aは、第1案内部11と第2案内部12と連結部13とを有する。 【0025】 〔第1案内部11〕 第1案内部11は、第1案内孔14が設けられた円盤状の部材であり、コイル収納ドラム5の内径よりも僅かに小さな外径を有する。第1案内部11は、溶接ワイヤコイル3上に載置されており、線材ガイド治具1aの自重によって溶接ワイヤコイル3の上面を下方へ押圧する。第1案内孔14は、第1案内部11の中心に設けられており、第1案内部11を鉛直方向に貫通している。第1案内孔14の内径は溶接ワイヤコイル3の内径と概ね同じか又は溶接ワイヤコイル3の内径よりも僅かに小さい。第1案内孔14は、溶接ワイヤコイル3の内周側部分から解かれた溶接ワイヤ2と接触して上方へと引き出される溶接ワイヤ2を案内する。 【0026】 〔第2案内部12〕 第2案内部12は、第1案内孔14の上方に配置されており、第1案内部11および第1案内孔14の中心を通る軸線と同心に配置されている。第2案内部12の中心には鉛直方向に貫通する第2案内孔15が設けられている。第2案内孔15は、第1案内孔14よりも小径であり、第1案内孔14を通って上方へ延びる溶接ワイヤ2と接触して溶接ワイヤ2をさらに上方へと案内する。第2案内孔15は、第1案内孔14から送られてくる溶接ワイヤ2が第2案内孔15の一部において接触する程度に小径であり、これにより安定的に溶接ワイヤ2を上方に案内することができる。 【0027】 図4に第2案内部12の断面拡大図を示す。第2案内部12は、台座部16、ボルト部17、ナット部18、ワッシャー19を有している。 【0028】 台座部16は、第1案内部11よりも小径の外径を有する円盤状の部材であり、ボルト部17が通される円孔20が中心部に設けられている。 【0029】 ボルト部17には上述した第2案内孔15が設けられており、第2案内孔15はボルト部17の中心軸に沿って鉛直方向に貫通している。ボルト部17は、外周に雄ネジが設けられた円筒形のネジ部21と、ネジ部21の下端に繋がっておりネジ部21よりも大径のヘッド部22とを有しており、台座部16の円孔20に下方から挿入されている。 【0030】 ナット部18は、内周面にボルト部17の雄ネジと螺合する雌ネジを有しており、ボルト部17を台座部16に固定する。 【0031】 ワッシャー19は、台座部16とナット部18との間に設けられる。 【0032】 また、ボルト部17の上部は、ナット部18から上方へ突出しており、第1案内ケーブル6が接続される接続部23となっている。第1案内ケーブル6の先端には、内周面にボルト部17の雄ネジと螺合する雌ネジが設けられた接続治具(図示せず)が取り付けられており、この接続治具が接続部23に固定されることによって、第1案内ケーブル6が第2案内部12に接続される。 【0033】 〔連結部13〕 連結部13は、第1案内部11と第2案内部12と連結する部材であり、第1案内部11と第2案内部12との間の距離を一定に保つ。連結部13は、細長い板状の形状を有しており、その下端は、第1案内部11の上面に固定されており、上端は第2案内部12に固定されている。 【0034】 また、連結部13は、第1案内部11と第2案内部12との間の距離を定めるものであるため、溶接ワイヤ2の引き出し角度に影響を与える。ここで、第1案内孔14の上端の縁と第2案内孔15の下端の縁とを結ぶ仮想線と水平方向とのなす角度θを溶接ワイヤ2の引き出し角度とすると、引き出し角度θが30°以上90°未満となるように、連結部13の長さ及び第1案内部11に対する傾斜角度が設定されている。なお、引き出し角度θは、より望ましくは30°以上75°以下である。 【0035】 〔特徴〕 (1) この線材ガイド治具1aは、溶接ワイヤコイル3上に載置されることにより、自重によって溶接ワイヤコイル3の上面を下方に押圧する。これにより、溶接ワイヤコイル3から複数巻き分の溶接ワイヤ2が一緒に引き出されることを抑えることができる。また、溶接ワイヤコイル3から引き出された溶接ワイヤ2は、まず、第1案内孔14の縁と接触して上方へ案内され、次に、第2案内孔15の縁に接触してさらに上方に案内される。そして、図5に示すように、線材ガイド治具1aが溶接ワイヤコイル3の溶接ワイヤ2の減少に伴ってコイル収納ドラム5内を下方に移動しても、第1案内孔14と第2案内孔15との相対的な位置関係は不変であるため、引き出し角度θを一定に保つことができる。これにより、この線材ガイド治具1aでは、溶接ワイヤコイル3の残量に関わらず溶接ワイヤ2の引き出し状態を安定させることができ、絡みやキンクの発生を抑えることができる。 【0036】 (2) この線材ガイド治具1aでは、引き出し角度θが30°以上90°未満となるように第1案内孔14と第2案内孔15との位置関係が設定されている。ここで、引き出し角度θと、送給ロール8を回転駆動するモータの負荷電流との関係を示すグラフを図6に示す。このグラフでは、引き出し角度θ<30°の範囲でモータの負荷電流が急増しており、溶接ワイヤ2の引き出しのために大きな力が必要であることが分かる。このため、引き出し角度θが30°以上90°未満とされることによって、より小さな力で溶接ワイヤ2を引き出すことができる。 【0037】 また、図6のグラフより、75°<θ<90°の範囲ではモータの負荷電流の変化が小さいことが分かる。引き出し角度θが大きいと第1案内部11と第2案内部12との間の距離が大きくなり、線材ガイド治具1aが鉛直方向に大型化してしまう。このため、線材ガイド治具1aの小型化およびバランスの観点からは、引き出し角度θは30°≦θ≦75°の範囲内であることがより望ましい。」 エ.「【0052】 <第5実施形態> 〔構成〕 本発明の第5実施形態に係る線材ガイド治具1eを図10に示す。この線材ガイド治具1eは、第1案内孔14から上方へ延びる溶接ワイヤ2を第2案内孔15へと案内する第2補助案内部32を備える。なお、図10(b)は、第2補助案内部32を下方から見た図である。第2補助案内部32は、軸線が鉛直方向に対して傾斜して設けられた管状の部材である。第2補助案内部32の上端は第2案内部12に連結されており、第2補助案内部32の上端の開口は第2案内孔15へ接続されている。第2補助案内部32の上端は、第2案内部12に対して回転自在に取り付けられており、第2案内孔15の中心および第2補助案内部32の上端を通る鉛直線を中心に回転自在となっている。 【0053】 なお、図10(a)では、第2案内部12および第2補助案内部32が、第1案内部11の中心を通る軸線から偏心して配置されているが、第2案内部12および第2補助案内部32が第1案内部11の中心を通る軸線と同心に配置されてもよい。 【0054】 他の構成については、第1実施形態と同様である。 【0055】 〔特徴〕 この線材ガイド治具1eでは、溶接ワイヤ2が第1案内部11の第1案内孔14の縁に沿って移動しながら引き出されても、第2補助案内部32が自在に回転するため、溶接ワイヤ2の動きに応じて下端の開口の向きを自在に変更することができる。このため、第1案内孔14から引き出された溶接ワイヤ2を第2案内孔15まで安定的に案内することができる。 【0056】 また、第2補助案内部32は溶接ワイヤ2の出所の変動に合わせて向き変更可能であるため、溶接ワイヤ2が動く範囲に合わせて第2補助案内部32の下端の開口を大径化する必要が無く、第2補助案内部32を小径に形成することができる。このため、第2補助案内部32によって溶接ワイヤ2をより安定的に案内することができる。」 オ.上記エ.の段落【0052】の「第2補助案内部32の上端は第2案内部12に連結されており、第2補助案内部32の上端の開口は第2案内孔15へ接続されている。第2補助案内部32の上端は、第2案内部12に対して回転自在に取り付けられており、第2案内孔15の中心および第2補助案内部32の上端を通る鉛直線を中心に回転自在となっている。」との記載によれば、第2補助案内部32は第2案内部12に回転可能に結合されていることがわかり、第2補助案内部32は第2補助案内部32の上端を通る鉛直線を中心に回転自在となっていることから、第2補助案内部32の回転中心を固定し、回転自在に支持するための構成が、第2案内部12の開口部に設けられることは明らかである。 カ.上記エ.の段落【0052】の「第2補助案内部32は、軸線が鉛直方向に対して傾斜して設けられた管状の部材である。」との記載から、第2補助案内部32は軸線が鉛直方向に対して傾斜して設けられたものであるところ、【図10】(a)及び(b)から、第2補助案内部32は、湾曲された形状を有することが見て取れる。 キ.【図10】(a)から、第2補助案内部32は、その一端部は、第2案内部12より下方の第1案内部11側に配置され、その他端部は第2案内部12側に配置されることが見て取れる。 (2)引用発明 上記(1)ア.ないしエ.の記載事項、及び同オ.ないしキ.の認定事項からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。 「溶接ワイヤコイル3上に載置される第1案内部11と、 前記第1案内部11に連結部13で連結された第2案内部12と、 前記第2案内部12の開口部の回転中心を固定し回転自在に支持するための構成を通じて回転可能に結合されて、湾曲された形状を有する第2補助案内部32とを備え、その第2補助案内部32は前記第2案内部12より下方側に配置された一端部と前記第2案内部12側に配置された他端部とを有する線材ガイド治具1e。」 2.引用文献2 (1)引用文献2の記載 引用文献2には、図面(特に【図3】ないし【図5】を参照。)と共に、以下の事項が記載されている。 ア.「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、ペイル容器から溶接用ワイヤが高速度で取り出されたり、押さえ板が瞬時僅かに持ち上げられた場合などにおいても溶接用ワイヤのからみやもつれがなく円滑に溶接部へと送給することを可能にする、溶接用ワイヤの装填物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明の要旨は、ペイル容器の中央部に円柱状の空洞を形成し、溶接用ワイヤに捩りを与えてループ状に積載収納した溶接用ワイヤの装填物において、収納溶接用ワイヤの上部に円環状の押さえ板を載置し、前記円環状の押さえ板は裏面にループを横切る方向に複数の凸部が設けられていることを特徴とする。 また、押さえ板裏面のループを横切る方向の凸部は3?12列であることを特徴とする溶接用ワイヤの装填物にある。 【発明の効果】 【0008】 本発明の溶接用ワイヤの装填物によれば、ペイル容器から溶接用ワイヤが高速度で取り出されたり、押さえ板が瞬時僅かに持ち上げられた場合などにおいてもからみやもつれがなく円滑に溶接部へと送給することができる。」 イ.「【0012】 図5は、本発明の溶接用ワイヤの装填物に用いる押さえ板3の例を示す平面図である。押さえ板裏面のループを横切る方向に設けた複数の凸部6は、図5(a)に示すようにペイル容器内壁側から押さえ板の内側端14に向かって放射状に複数設ける。また、図5(b)に示すようにペイル容器内壁側から押さえ板の内側端14である内側円の接線方向に複数設けることもできる。この場合、ワイヤの引き出し方向と垂直方向であることが好ましい。また図5(c)のように、図5(a)と図5(b)との中間的な角度だけ放射状の方向から傾けることもできる。またさらに図5(d)に示したように曲線状にして、たとえばペイル容器内壁側から中心方向に行くにしたがって放射状の方向からの傾きを大きくすることもできる。 【0013】 押さえ板裏面のループを横切る方向に設けた凸部6は、3?12列であることが好ましい。凸部6の数が3列未満の場合は、取り出される溶接用ワイヤ5および次のループ10や下層のループ11が、押さえ板裏面に押されてペイル容器の半径方向に並び平行に接触しながら、かつ押さえ板3の内側方向にずれながら取り出される場合があり、溶接用ワイヤ5が高速度で取り出されたり、押さえ板が僅かに持ち上がった場合に次のループおよび下層のループを円柱状空洞4に引き出す場合がある。 【0014】 また、押さえ板裏面のループを横切る方向に設けた凸部6の数が12列を超えると、隣り合う凸部6の間隔が狭くなり、取り出される溶接用ワイヤ5のみならず次のループ10および下層のループ11も凸部6に接する箇所が多くなり、凸部6に接する箇所およびその近傍で取り出される溶接用ワイヤ5および次のループ10や下層のループ11がペイル容器の半径方向に並ぶ機会が多く、溶接用ワイヤ5が高速度で取り出されたり、押さえ板が僅かに持ち上がった場合に次のループおよび下層のループを円柱状空洞4に引き出す場合がある。 【0015】 なお、押さえ板裏面のループを横切る方向に設けた凸部6の高さは、1?10mm程度で、図3に示したように溶接用ワイヤ6に接する先端部は点接触するように幅方向断面形状が円形であることが好ましい。また図4の押さえ板の一部断面図(ペイル容器の一部も併せて示す)に示したように、凸部6は押さえ板3の内側端14より2?20mm程度の間隔Lをあけて設け、凸部の高さが端部に向けて徐々に低くなるように勾配15を付してあることが溶接用ワイヤ5取り出しがスムーズであるので好ましい。同様にペイル容器1の内壁側の凸部も勾配16を付してあることが好ましい。」 (2)引用文献2に記載された技術事項 上記(1)イ.の段落【0012】の「図5は、本発明の溶接用ワイヤの装填物に用いる押さえ板3の例を示す平面図である。押さえ板裏面のループを横切る方向に設けた複数の凸部6は、図5(a)に示すようにペイル容器内壁側から押さえ板の内側端14に向かって放射状に複数設ける。」との記載によれば、「溶接用ワイヤの装填物に用いる押さえ板3の下部面に複数の凸部6を設けること。」(以下、「引用文献2に記載された技術事項」という。)が分かる。 第5.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「溶接ワイヤコイル3上に載置される第1案内部11」は本願発明における「ベース部」に相当し、以下同様に「第2補助案内部32」は「回転導管部」に、「線材ガイド治具1e」は「フィード補助装置」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「連結部13」及び「第2案内部12」は、「ベース部に連結され回転導管部を支持する部材」であることを限度として、本願発明における「ドーム部」に相当する。 さらに、引用発明における「回転中心を固定し回転自在に支持するための構成」は、その機能から本願発明における「軸受」に相当することは明らかである。 また、引用発明における「第2補助案内部32」の「一端部」は、本願発明における「回転導管部」の「第1端部」に相当し、同様に「第2補助案内部32」の「他端部」は「回転導管部」の「第2端部」に相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、下記の点で一致する。 [一致点] 「ベース部と、 前記ベース部に連結されたワイヤ通過部材と、 前記ベース部に連結されたワイヤ通過部材の開口部の軸受を通じて回転可能に結合されて、湾曲された形状を有する回転導管部とを備え、その回転導管部は、ベース部に連結され回転導管部を支持する部材より下方側に配置された第1端部を有するフィード補助装置。」 そして、両者は次の各点で相違する。 [相違点1] 本願発明においては、「ベース部」が、「下部面に配置された複数のリブを有するベース部で、前記複数のリブが下部面から突き出るベース部であり、前記ベース部は前記ベース部の上部面に少なくとも1つの凹部を含み、前記少なくとも1つの凹部は前記複数のリブの位置と合致する反対側の位置にあるベース部」であるのに対し、引用発明においては、第1案内部11(本願発明における「ベース部」に相当。)が、複数のリブを下部面に有するかどうか、上部面に凹部を有するかどうかが明らかでない点。 [相違点2] 「ベース部に連結され回転導管部を支持する部材」の「形状」が、本願発明においては、「ドーム」形状であるのに対し、引用発明においては、「ドーム」形状でない点。 [相違点3] 本願発明においては、「回転導管部は前記ドーム部内に配置された第1端部と前記ドーム部上に配置された第2端部とを有するのに対し、引用発明においては、第2補助案内部32(本願発明における「回転導管部」に相当。)は第2案内部12より下方側に配置された一端部と前記第2案内部12側に配置された他端部とを有するが、他端部がどこまで位置するかは明らかでない点。 第6.検討・判断 上記相違点について検討する。 1.相違点1について 上記第5.2(2)の引用文献2に記載された技術事項における「溶接用ワイヤの装填物に用いる押さえ板3」は、本願発明における「ベース部」に相当し、同様に「凸部6」は「リブ」に相当するから、引用文献2に記載された技術事項は、「ベース部の下部面に複数のリブを設けること。」ということができる。 引用発明及び引用文献2に記載された技術事項は、溶接用ワイヤを安定して供給することを課題とするものであり、引用文献2に記載された技術事項は、引用発明と同様に溶接ワイヤ上に載置して用いるものであるから、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用する動機付けは十分にあると解される。 一方、リブを形成する際に、リブの位置と合致する反対側の位置に凹部を形成することは、溶接ワイヤを供給する部材を機械加工により製造する分野において周知の技術事項(以下、「周知技術1」ともいう。例えば、引用文献3の第3図のリブ5、引用文献4の第3図のリブ5を参照。)であるし、金属板にリブを設けるビード加工などとして一般的な技術である。 そうすると、引用発明に引用文献2に記載されたリブを適用する際に、当該リブについて、上記周知技術1を参酌して、「前記ベース部は前記ベース部の上部面に少なくとも1つの凹部を含み、前記少なくとも1つの凹部は前記複数のリブの位置と合致する反対側の位置にある」ようにして、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易になし得たことである。 2.相違点2について ベース部に連結されたワイヤ通過部材の「形状」を、「ドーム」形状とすることは周知の技術事項(以下、「周知技術2」ともいう。例えば、引用文献5の第1図の円錐部材8、引用文献6の第2図の規制部材7を参照。)である。 引用発明及び上記周知技術2は、溶接用ワイヤの供給装置という共通の技術分野に属するものであり、いずれも溶接ワイヤ上に載置して用いるものであるから、引用発明の「連結部13」及び「第2案内部12」に上記周知技術2を適用して、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 3.相違点3について まず、本願発明の「回転導管部は」「ドーム部内に配置された第1端部」を有する点について検討する。 上記「2.相違点2について」で検討したように、引用発明の「連結部13」及び「第2案内部12」に、ベース部に連結されたワイヤ通過部材の「形状」を、「ドーム」形状とするという上記周知技術2を適用した場合に、引用発明の「第2案内部12より下方側」が「ドーム内」に相当することとなるから、引用発明の「第2補助案内部32」(本願発明の「回転導管部」に相当。)は、「ドーム部内に配置された一端部(本願発明の「第1端部」に相当。)を有する構成となることも明らかである。 次に、本願発明の「回転導管部は」「ドーム部上に配置された第2端部」を有する点について検討する。 引用発明の「第2補助案内部32」(本願発明の「回転導管部」に相当。)の他端部(本願発明の「第2端部」に相当。)は、第2案内部12側に配置されるものであるが、「連結部13」及び「第2案内部12」について、上記周知技術2を適用した場合に、引用発明の「第2補助案内部32」(本願発明の「回転導管部」に相当。)の他端部(本願発明の「第2端部」に相当。)が「ドーム上」に配置されるものといえるかどうかは明らかでない。 一方、ワイヤ通過部材の開口をまたがってワイヤを誘導する部材を設けることが慣用されている(例えば、引用文献1の図4のボルト部17参照。)ことを考慮すれば、引用発明の「連結部13」及び「第2案内部12」に、上記周知技術2を適用した場合に「第2補助案内部32」(本願発明の「回転導管部」に相当。)の他端部(本願発明の「第2端部」に相当。)が、ドームの開口をまたがるように、すなわち、「ドーム上」に配置されるようにすることは当業者が適宜なし得た程度の設計的事項にすぎない。 そうすると、本願発明の「回転導管部は」「ドーム部上に配置された第2端部」を有する点は、引用発明及び上記周知技術2から当業者が容易に想到し得たことである。 4.そして、これらの相違点1ないし3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 5.よって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第7.請求人の主張について 請求人は、令和元年12月9日提出の意見書2ページ17ないし33行において「貴官は引用文献1(特開2007-238323号公報)の『第2補助案内部32』が本願発明における『回転導管部』に相当すると認定されています(拒絶理由通知書第2頁第2段落)。しかしながら、引用文献1の図10(b)に示される第2補助案内部32は、『軸線が鉛直方向に対して傾斜して設けられた管状の部材である。第2補助案内部32の上端は第2案内部12に連結されており、第2補助案内部32の上端の開口は第2案内孔15へ接続されている』ものです(引用文献1の段落[0052])。一方、本願発明の回転導管部は、『ドーム部内の開口部の軸受を通じて前記ドーム部に回転可能に結合され』、『前記ドーム部内に配置された第1端部と前記ドーム部上に配置された第2端部とを有する』ものであり、本願明細書の段落[0036]に記載したように『ドーム部4はドーム部内の開口部12(図5)に配置された軸受10を通じて回転導管部6を保持する。回転導管部6はワイヤがワイヤ積層部から引っ張られる時にワイヤが緩むと絡み合う恐れがあるので、ワイヤが絶対に緩まないようにする機能をもつ。ベース部2の下または回転導管部6内でワイヤを保持することにより、絡み合う可能性は非常に少なくなる。一実施形態で、軸受10はドーム部(4)(図5参照)に固定された外側面と回転導管部6に固定された内部部を有し、それらの間に自由回転を提供する』ものです。このような回転導管部は引用文献1には開示も示唆もされていません。従って、引用文献1の『第2補助案内部32』は本願発明における『回転導管部』に相当するものではありません。」との主張をしている。 当該主張について、まず、「引用文献1の『第2補助案内部32』は本願発明における『回転導管部』に相当するものではありません。」との点について検討すると、引用文献1には、上記第4.1(1)エ.に「この線材ガイド治具1eでは、溶接ワイヤ2が第1案内部11の第1案内孔14の縁に沿って移動しながら引き出されても、第2補助案内部32が自在に回転するため、溶接ワイヤ2の動きに応じて下端の開口の向きを自在に変更することができる。このため、第1案内孔14から引き出された溶接ワイヤ2を第2案内孔15まで安定的に案内することができる。」と記載されているように、「補助案内部32」は「自在に回転」するものであって「溶接ワイヤ2を」「安定的に案内することができる」ものであるから、本願発明の「回転導管部」と同様の機能及び効果を有するものであって、引用発明の「第2補助案内部32」は本願発明における「回転導管部」に相当することは明らかである。 よって、請求人の当該主張を採用することはできない。 また、請求人は「軸受」の有無が、相違点であるとの主張をしているようにも解されるが、引用発明は回転自在に支持するための構成を有するものであるところ、これが本願発明の「軸受」に相当することは、上記第5.で認定したとおりであるから、請求人の当該主張を採用することはできない。 第8.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-02-06 |
結審通知日 | 2020-02-12 |
審決日 | 2020-02-26 |
出願番号 | 特願2017-506686(P2017-506686) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B23K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 奥隅 隆 |
特許庁審判長 |
見目 省二 |
特許庁審判官 |
青木 良憲 中川 隆司 |
発明の名称 | バルクパッケージ化溶接ワイヤのペイオフのためのフローティング・フィード補助装置 |
代理人 | 今井 千裕 |
代理人 | 内藤 忠雄 |
代理人 | 赤松 利昭 |
代理人 | 山崎 行造 |