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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1363937
審判番号 不服2019-2170  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-18 
確定日 2020-07-08 
事件の表示 特願2016-564064「改善されたマルチ・キャリア通信のための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日国際公開、WO2015/164122、平成29年 6月15日国内公表、特表2017-516395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2015(平成27年)年4月14日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年4月21日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成30年 2月 8日付け 拒絶理由通知書
平成30年 5月18日 意見書及び手続補正書の提出
平成30年10月10日付け 拒絶査定
平成31年 2月18日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,平成30年5月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものと認める。

「複数のキャリアを経由して,プロトコル・スタックを使用して,ユーザ要素(UE)に対してパケット・データを送信するように構成された複数のネットワーク・ノード,を備えており,
前記プロトコル・スタックは,無線リンク制御(RLC)レイヤを含み,
前記RLCレイヤが,一つの上位RLC処理レイヤと複数の下位RLC処理レイヤとに分割され,
前記複数のキャリアの各々が,前記上位RLC処理レイヤ及び前記複数の下位RLC処理レイヤの内の一つの下位RLC処理レイヤに関連付けられており,
前記上位RLC処理レイヤは,前記複数のキャリアを経由したパケット・データ送信をサポートするように構成され,
前記複数の下位RLC処理レイヤの各々は,前記複数のキャリアの内の少なくとも1つを経由したパケット・データ送信をサポートするように構成されており,該構成によって,前記複数のキャリアの各々を経由したパケット・データ送信が,
前記上位RLC処理レイヤ,及び,
前記複数の下位RLC処理レイヤの内の一つの下位RLC処理レイヤ,
によってサポートされることになる,
無線アクセス・ネットワーク(RAN)。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,請求項1-10に対して下記の引用例1が引用され,常套手段であることを示す周知例として引用例2があげられている。

引用例1 特表2013-520096号公報
引用例2 Intel Corporation,Down selection of user plane architecture options,3GPP TSG-RAN WG2#83bis R2-133499,2014年 4月21日

第4 引用発明,及び,周知技術
1 引用例1
原査定の拒絶の理由で引用された特表2013-520096号公報(「引用例1」)には,図面とともに,次の記載がある。

「【0007】
ワイヤレス通信ネットワークにおいてデータを分割する方法およびシステムが,開示される。データは,ユーザ機器への送信のために複数の基地局を使用するように分割されることが可能であり,または複数の基地局に送信するためにユーザ機器によって分割されることが可能である。或る実施形態では,データ分割は,PDCP(パケットデータコンバージェンスプロトコル:Packet Data Convergence Protocol)層において実行され得る。或る実施形態では,データは,RLC(無線リンク制御)層において分割され得る。或る実施形態では,データは,MAC(媒体アクセス制御)層において分割され得る。これらの実施形態のそれぞれにおいて,データは,ユーザ機器上,および/または基地局上で分割され得る。或る実施形態では,データは,代わりに,サービングゲートウェイにおいてなど,ユーザプレーンで分割され得る。本開示の上記,およびさらなる態様が,後段でより詳細に説明される。」

「【0047】
一部のLTE R10実施において,キャリア集約のための複数のCCのサポートが,1つのサービングeノードBに制限され得る。このことは,UEが,異なる複数のeノードBに対して1つのCCを使用してデータ接続を維持することを妨げ得る。UEが,図3に示されるとおり,異なる2つのeノードB上のCCに関してカバレッジの重なり合いが存在するロケーションに移動するシナリオにおいて,ネットワークRRM(無線リソース管理)エンティティが,異なるサイトからの複数のCCを使用することによってデータスループット増加を十分に利用する代わりに,別のセルサイトにハンドオーバすべきかどうかを判定することが可能である。各CC上で利用可能な帯域幅を十分に利用するために,対応するデータストリームが,関連するeノードBにルーティングされること,および関連するeノードBからルーティングされることが可能である。」

「【0085】
図9は,RLC層データ分割が実行される或る実施形態に従って使用され得る例示的なデータフローおよびアーキテクチャを示す。eノードB910が,PDCP層919においてIPパケット990を受信して,そのデータをRLC層917に供給することが可能である。RLC層917で,データ分割エンティティ918が,そのデータをフロー931と932に分割することが可能である。データ分割エンティティ918は,フロー932がピアeノードBに送信されるべきであるのに対して,フロー931がローカルで(すなわち,UE930に直接に)送信されるべきことを判定することが可能である。データ分割エンティティ918は,フロー931をMAC915に供給することが可能である(例えば,バッファ占有率情報を更新した後,要求が行われると)。データ分割エンティティ918は,データ分割エンティティ918がデータを別々のフローに分割すると,RLC SDUを追跡することが可能である。MAC915は,フロー931に関するデータをPHY914に供給することが可能であり,PHY914は,フロー931を,第1のCCを介してUE930に送信することが可能である。
【0086】
eノードBフロー910が,フロー932を,トンネル940を介してeノードB920に供給することが可能である。RLC層927が,フロー932をMAC925に供給することが可能である(例えば,バッファ占有率情報を更新した後,要求が行われると)。MAC925は,フロー932に関するデータをPHY924に供給することが可能であり,PHY924は,フロー932を,第2のCCを介してUE930に送信することが可能である。X2シグナリング950が,eノードB910とeノードB920との間で制御情報を交換するのに使用され得る。
【0087】
UE930で,データフロー931および932が,データフロー931および932をMAC935に供給することが可能なPHY934によって受け取られることが可能であり,MAC935は,フロー931および932のデータをRLC937に供給する。次に,RLC937のデータマージエンティティ936が,それらのデータフローをマージして,適切に順序付けられたSDUにし,さらに,もたらされるデータをPDCP939に供給し,PDCP939は,そのデータをIPパケットとしてネットワークに送信することが可能である。データマージエンティティ938は,RLC SDUを追跡することが可能である。
【0088】
RLC層データ分割実施形態に関して,ハンドオーバ動作は,PDCP層データ分割に関して開示された手段を含め,本明細書で開示される任意の手段または方法を使用して実行され得る。」



引用例1【0007】の「ワイヤレス通信ネットワークにおいてデータを分割する方法およびシステムが,開示される。」との記載より,引用例1には「ワイヤレス通信ネットワーク」が記載されていると認める。
引用例1の図9には,eノードB910,及び,eノードB920のそれぞれにおいて,PDCP,RLC,MAC,PHYからなるプロトコル・スタックを使用してIPパケットの送信を行うことが見てとれる。してみれば,「プロトコル・スタックを使用して,UEに対してIPパケットを送信するeノードB910,及び,eノードB920」,及び,「前記プロトコル・スタックは,RLC層を含」むことが示されているといえる。
引用例1【0085】の「図9は,RLC層データ分割が実行される或る実施形態に従って使用され得る例示的なデータフローおよびアーキテクチャを示す。eノードB910が,PDCP層919においてIPパケット990を受信して,そのデータをRLC層917に供給することが可能である。RLC層917で,データ分割エンティティ918が,そのデータをフロー931と932に分割することが可能である。データ分割エンティティ918は,フロー932がピアeノードBに送信されるべきであるのに対して,フロー931がローカルで(すなわち,UE930に直接に)送信されるべきことを判定することが可能である。データ分割エンティティ918は,フロー931をMAC915に供給することが可能である(例えば,バッファ占有率情報を更新した後,要求が行われると)。データ分割エンティティ918は,データ分割エンティティ918がデータを別々のフローに分割すると,RLC SDUを追跡することが可能である。MAC915は,フロー931に関するデータをPHY914に供給することが可能であり,PHY914は,フロー931を,第1のCCを介してUE930に送信することが可能である。」,同【0086】の「eノードBフロー910(当審注:「eノードB910」の誤記と認める。)が,フロー932を,トンネル940を介してeノードB920に供給することが可能である。RLC層927が,フロー932をMAC925に供給することが可能である(例えば,バッファ占有率情報を更新した後,要求が行われると)。MAC925は,フロー932に関するデータをPHY924に供給することが可能であり,PHY924は,フロー932を,第2のCCを介してUE930に送信することが可能である。X2シグナリング950が,eノードB910とeノードB920との間で制御情報を交換するのに使用され得る。」,及び,同図9の記載より,「eノードB910のRLC層で,データ分割エンティティ918が,データをフロー931と932に分割し,データ分割エンティティ918がフロー931をMAC915に供給し,eノードB910がフロー932をトンネル940を介してeノードB920に供給し,eノードB920のRLC927が,フロー932をMAC925に供給する」ことが見てとれる。

してみれば,引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「プロトコル・スタックを使用して,UEに対してIPパケットを送信するeノードB910,及び,eノードB920,を備えており,
前記プロトコル・スタックは,RLC層を含み,
eノードB910のRLC層で,データ分割エンティティ918が,データをフロー931と932に分割し,データ分割エンティティ918がフロー931をMAC915に供給し,
eノードB910がフロー932をトンネル940を介してeノードB920に供給し,
eノードB920のRLC927が,フロー932をMAC925に供給する,
ワイヤレス通信ネットワーク。」

2 周知技術
(1)引用例3
本願の優先日前に公開された特開2007-195077号公報(以下「引用例3」という。)には,次の記載がある。
「【0034】
上記目的を達成するため,本発明では,(1)IEEE802標準に従ってOSI参照モデルのデータリンク層におけるMAC層をいくつかのレイヤに分割し,上位のプロトコル装置部分と下位のMAC装置部分に分け,このMAC装置に,上位のプロトコル装置に対してMACサービスを提供するIEEE標準802.3-2001で規定された「MACサービスアクセスポイント」(MSAP:MAC Service Access Point)を複数設け,さらに,各MACサービスアクセスポイントがそれぞれ個別MACアドレスで識別される構成としたことを特徴とする。」

(2)引用例4
本願の優先日前に公開された特表2008-501290号公報(以下「引用例3」という。)には,次の記載がある。
「【0010】
既存の無線インタフェースのプロトコルのアーキテクチャに対する影響を最小限にしつつ上述の特徴をサポートするために,MAC層は,MAC-hs副層(サブレイヤ)を追加することによって拡張された。MAC-hs副層は,MAC-d層とPHY層との間に配置されている。どちらの副層も,HS-DSCHでの伝送のために使用される。」

(3)
引用例3,4の記載から「既存のネットワークに機能追加を行うため,既存のプロトコル・スタックの階層をさらに分割する。」ことは周知技術であると認める。

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「プロトコル・スタックを使用して,UEに対してIPパケットを送信するeノードB910,及び,eノードB920」との事項に関し,「eノードB910,及び,eノードB920」との複数のeノードBがUEに対してIPパケットを送信しており,前記IPパケットは,複数のキャリアを経由して送信されることは,当業者にとって明らかである。また,eノードBはネットワーク・ノードに含まれ,IPパケットはパケット・データに含まれる。
してみれば,引用発明の「プロトコル・スタックを使用して,UEに対してIPパケットを送信するeノードB910,及び,eノードB920,を備えており,」は,本願発明の「複数のキャリアを経由して,プロトコル・スタックを使用して,ユーザ要素(UE)に対してパケット・データを送信するように構成された複数のネットワーク・ノード,を備えており」に相当する。

引用発明の「RLC層」は本願発明の「無線リンク制御(RLC)レイヤ」に相当する。してみれば,本願発明と引用発明の「前記プロトコル・スタックは,RLC層を含み」とでは,「前記プロトコル・スタックは,無線リンク制御(RLC)レイヤを含み」との点で一致する。

引用発明の「ワイヤレス通信ネットワーク」は本願発明の,「無線アクセス・ネットワーク(RAN)」に相当する。

よって,本願発明と引用発明とでは,
「複数のキャリアを経由して,プロトコル・スタックを使用して,ユーザ要素(UE)に対してパケット・データを送信するように構成された複数のネットワーク・ノード,
を備えており,
前記プロトコル・スタックは,無線リンク制御(RLC)レイヤを含む,
無線アクセス・ネットワーク(RAN)」
との点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明が「前記RLCレイヤが,一つの上位RLC処理レイヤと複数の下位RLC処理レイヤとに分割され」ているのに対し,引用発明では,「 eノードB910のRLC層で,データ分割エンティティが,データをフロー931と932に分割し,データ分割エンティティがフロー931をMAC915に供給」するものであるものの,RLC層の分割については特定していない点。

(相違点2)
本願発明が
「前記複数のキャリアの各々が,前記上位RLC処理レイヤ及び前記複数の下位RLC処理レイヤの内の一つの下位RLC処理レイヤに関連付けられており,
前記上位RLC処理レイヤは,前記複数のキャリアを経由したパケット・データ送信をサポートするように構成され,
前記複数の下位RLC処理レイヤの各々は,前記複数のキャリアの内の少なくとも1つを経由したパケット・データ送信をサポートするように構成されており,該構成によって,前記複数のキャリアの各々を経由したパケット・データ送信が,
前記上位RLC処理レイヤ,及び,
前記複数の下位RLC処理レイヤの内の一つの下位RLC処理レイヤ,
によってサポートされることになる」
のに対し,引用発明は
「eノードB910のRLC層で,データ分割エンティティが,データをフロー931と932に分割すること,データ分割エンティティがフロー931をMAC915に供給すること,eノードB910がフロー932をトンネル940を介してeノードB920に供給し,eノードB920のRLC927が,フロー932をMAC925に供給する」
ものであって,本願発明の前記各レイヤの前記サポートに相当する特定はない点。

第6 判断
前記相違点について検討する。

(相違点1)
引用発明では,分割されたフロー932が供給されたRLC927は,機能としては,従来型のRLCと同様の上位層から供給されたデータを受け取る機能と,従来型のRLCと異なる他のeノードBから供給されたデータを受け取る機能と,前記上位層,又は,他のeノードBから供給されたデータをMAC層に供給する機能を有するといえるところ,前記第4 2「周知技術」で検討したように,既存のネットワークに機能追加を行うため,既存のプロトコル・スタックの階層をさらに分割することは周知技術であるから,RLC層の上位層から供給されたデータを受け取る機能,及び,前記上位層から供給されたデータを分割する機能を上位層に,分割されたデータを同じeノードB又は異なるeノードBから受けとり,MACに供給する機能を下位層と整理し,RLC層を分割し,もって「前記RLCレイヤが,一つの上位RLC処理レイヤと複数の下位RLC処理レイヤとに分割」することは,当業者が容易に想到することができたものである。

(相違点2)
前記相違点1について検討したとおり,「前記RLCレイヤが,一つの上位RLC処理レイヤと複数の下位RLC処理レイヤとに分割」することは,当業者が容易に想到することができたものであるところ,引用発明において前記RLC層の分割を行った場合,上位RLC処理層においては,複数のキャリアを経由したパケット・データ送信のためのデータを,複数の下位RLC処理層においては,それぞれに対応したキャリアを経由したパケット・データ送信のためのデータを,それぞれ扱うことは明らかである。
してみれば,
「前記RLCレイヤが,一つの上位RLC処理レイヤと複数の下位RLC処理レイヤとに分割され,
前記複数のキャリアの各々が,前記上位RLC処理レイヤ及び前記複数の下位RLC処理レイヤの内の一つの下位RLC処理レイヤに関連付けられており,
前記上位RLC処理レイヤは,前記複数のキャリアを経由したパケット・データ送信をサポートするように構成され,
前記複数の下位RLC処理レイヤの各々は,前記複数のキャリアの内の少なくとも1つを経由したパケット・データ送信をサポートするように構成されており,該構成によって,前記複数のキャリアの各々を経由したパケット・データ送信が,
前記上位RLC処理レイヤ,及び,
前記複数の下位RLC処理レイヤの内の一つの下位RLC処理レイヤ,
によってサポートされることになる」
との事項は,前記RLC層の分割から自ずと導出されることに過ぎない。

よって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-02-06 
結審通知日 2020-02-13 
審決日 2020-02-26 
出願番号 特願2016-564064(P2016-564064)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 紀之  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 本郷 彰
岩間 直純
発明の名称 改善されたマルチ・キャリア通信のための方法および装置  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
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