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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
管理番号 1363965
異議申立番号 異議2019-700603  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-30 
確定日 2020-05-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6460508号発明「金型交換装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6460508号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6460508号の請求項1に係る特許を維持する。 特許第6460508号の請求項2及び3に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第6460508号((以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成30年8月1日を出願日とする特願2018-145144号に係るものであって、平成31年1月11日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、特許掲載公報が同年同月30日に発行され、その後、その特許に対し、令和1年7月30日に特許異議申立人 キャノン株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3)がされた。
当審において、令和1年10月17日付けで取消理由が通知され、同年12月20日に特許権者 ニチエツ株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されると共に訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)が提出され、令和2年1月27日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされたが、異議申立人からは応答がなかったものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1ないし6である。ここで、訂正事項1ないし6は、訂正前の請求項1?5の一群の請求項に係る訂正である。なお、下線は、訂正箇所に合議体が付したものである。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「前記搬送手段と協働して前記金型の加速と減速を補助する補助動力手段とを備え」との記載の後に、「前記搬送手段が、直線状の搬送経路を構成するアクチュエータであって、このアクチュエータが、前記金型を搬送路に沿って移動させる牽引部を備え」の記載を付加する。
請求項1の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する。

イ 訂正事項2
上記訂正事項1により付加された、特許請求の範囲の請求項1の「前記搬送手段が、直線状の搬送経路を構成するアクチュエータであって、このアクチュエータが、前記金型を搬送路に沿って移動させる牽引部を備え」との記載の後に、「前記補助動力手段が空圧若しくは油圧等の流体圧シリンダであって、流体圧シリンダのピストンロッドの先端部に、前記牽引部に係脱可能に係合させられる係合部が設けられている」の記載を付加する。
請求項1の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

オ 訂正事項5
請求項4の引用請求項を「3」から「1」に訂正する。

カ 訂正事項6
請求項5の引用請求項を「3」から「1」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件

(1) 訂正事項1及び2に係る請求項1についての訂正について
ア 請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1に係る発明の「搬送手段」について、「前記搬送手段が、直線状の搬送経路を構成するアクチュエータであって、このアクチュエータが、前記金型を搬送路に沿って移動させる牽引部を備え」との限定を付加するとともに、「補助動力手段」について、「前記補助動力手段が空圧若しくは油圧等の流体圧シリンダであって、流体圧シリンダのピストンロッドの先端部に、前記牽引部に係脱可能に係合させられる係合部が設けられている」との限定を付加するものである。
そうすると、訂正事項1及び2に係る請求項1についての訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項2及び本件特許明細書の段落【0028】の記載から、また、訂正事項2に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項3及び本件特許明細書の段落【0027】及び【0032】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項1及び2に係る請求項1の訂正は、上記アのとおりのものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 請求項1の訂正に伴って訂正される請求項4及び5についての訂正も同様である。

(2) 訂正事項3及び4に係る請求項2及び3についての訂正について
訂正事項3及び4は、訂正前の請求項2及び3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3) 訂正事項5及び6に係る請求項4及び5についての訂正について
ア 訂正事項5及び6は、訂正前の請求項4及び5において、引用する請求項2及び3を引用しないように書き下したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項5及び6は、引用する請求項の一部を除いたものであり、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正後の請求項4及び5は、上述のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がされたものである。そして、訂正前の請求項4及び5は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、請求項4及び5についての訂正が認められるためには、これらの請求項について、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件が課せられる。
そこで、訂正後の請求項4及び5に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

(ア) 訂正後の請求項4及び5に係る発明の独立特許要件
訂正後の請求項4及び5は、訂正後の請求項1を引用するものであるところ、後述のとおり、訂正後の請求項1に係る発明は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によって取り消されるべきものではない。
そうすると、訂正後の請求項4及び5に係る発明は、訂正後の請求項1に係る発明をさらに限定するものであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によって独立して特許を受けることができないものであるということはできない。
また、他に訂正後の請求項4及び5に係る発明が特許を受けることができないとする理由も発見しない。

(イ) まとめ
したがって、訂正後の請求項4及び5に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項乃至第7項の規定に適合するので、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-5]について訂正することを認める。

第3 本件発明

1 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、令和1年12月20日に提出した訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。

「【請求項1】
射出成形機に併設される金型交換装置であって、前記射出成形機へ金型の搬入および搬出を行なうとともに、前記金型の位置決めを行う駆動力を備えた搬送手段と、前記搬送手段と協働して前記金型の加速と減速を補助する補助動力手段とを備え、
前記搬送手段が、直線状の搬送経路を構成するアクチュエータであって、このアクチュエータが、前記金型を搬送路に沿って移動させる牽引部を備え、
前記補助動力手段が空圧若しくは油圧等の流体圧シリンダであって、流体圧シリンダのピストンロッドの先端部に、前記牽引部に係脱可能に係合させられる係合部が設けられていることを特徴とする金型交換装置。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)」

第4 特許異議申立書に記載した申立理由の概要

令和1年7月30日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した理由の概要は次のとおりである。

1 証拠方法

甲第1号証 :特開2018-1738号公報(以下、「甲1」という。)

2 申立理由1(特許法第29条第1項第3号:甲1に基づく新規性)

本件特許の請求項1及び2に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

3 申立理由2(特許法第29条第2項:甲1に基づく進歩性)

本件特許の請求項1及び2に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

4 申立理由3(特許法第36条第6項第2号:明確性)

請求項3には「前記牽引部に係脱可能に係合させられる係合部が設けられている」との記載があるが、請求項3で引用する請求項1には「前記牽引部」に該当する記載はない。そうすると、請求項3に係る発明は明確でないから、本件特許の請求項3に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

第5 取消理由の概要

令和1年10月17日付けで通知した取消理由において、本件特許の本件訂正請求前の請求項1ないし3に係る特許に対する取消理由の概要は、以下のとおりである。なお、下記取消理由の理由1ないし3は、異議申立人の申立理由1ないし3と同旨である。

「【理由1】(新規性) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
【理由2】(進歩性) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
【理由3】(明確性要件) 本件特許の請求項3についての特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。

・・・
1 【理由3】(明確性)について
請求項3には「前記牽引部に係脱可能に係合させられる係合部が設けられている」との記載があるが、請求項3が請求項1を引用する場合、請求項1の記載内容を含めて請求項3の「前記牽引部」より前には「牽引部」の記載はなく、「前記牽引部」は明確でない。

2 【理由1】及び【理由2】(新規性及び進歩性)について
(1) 刊行物
甲1
・・・」

第6 取消理由についての当審の判断

当合議体は、以下述べるように、上記取消理由の理由1ないし3には、理由がないと判断する。

1 【理由1】及び【理由2】(新規性及び進歩性)について
(1) 刊行物
甲1

(2)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1には、以下の記載がある。

「【0013】
<システムの概要>
図1は本発明の一実施形態に係る射出成形システム1の平面図である。射出成形システム1は、横型の射出成形機2と、搬送装置3Aおよび3Bと、制御装置4とを備え、一台の射出成形機2に対して、搬送装置3Aおよび3Bによって複数の金型を入れ替えながら成形品を製造するシステムである。本実施形態の場合、二つの金型100Aおよび100Bを用いる。金型100Aおよび100Bを総称して金型100と呼ぶ場合がある。
【0014】
金型100は、固定金型101と、固定金型101に対して開閉される可動金型102との組である。固定金型101と可動金型102との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出することで成形品が成形される。固定金型101および可動金型102には、それぞれ取付板101a、102aが固定されている。取付板101a、102aは金型100を射出成形機の成形動作位置11(金型取付位置)にロックするために用いられる。」

「【0018】
搬送装置3Aは金型100Aを射出成形機2の成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3Bは金型100Bを成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3A、射出成形機2および搬送装置3Bは、この順にX方向に並んで配置されている。すなわち、搬送装置3Aおよび搬送装置3Bは、射出成形機2をX方向に挟むように、射出成形機2の左右に配置されている。搬送装置3Aおよび3Bは、互いに対向して配置され、搬送装置3Aは射出成形機2の左右の一側方に、搬送装置3Bは他側方にそれぞれ隣接して配置されている。成形動作位置11は搬送装置3Aと搬送装置3Bとの間に位置している。
【0019】
搬送装置3Aおよび3Bは、それぞれ、フレーム30と、搬送ユニット31と、複数のローラ32と、複数のローラ33とを備える。搬送装置3Aおよび3Bは、それぞれ、金型100を工場内で搬送する台車であってもよい。
【0020】
フレーム30は、装置の骨格を構成し、搬送ユニット31や、複数のローラ32および33を支持する。搬送ユニット31は、金型100をX方向に往復移動して、成形動作位置11に対して金型100を出し入れする装置である。
【0021】
搬送ユニット31は、本実施形態の場合、モータを駆動源とした電動シリンダであり、シリンダに対して進退するロッドを備え、シリンダはフレーム30に固定され、ロッドの端部には固定金型101が固定されている。搬送ユニット31は、流体アクチュエータ、電動アクチュエータのいずれも使用可能であるが、電動アクチュエータを利用することで、金型100の搬送に際して、その位置や速度の制御の精度を向上できる。流体アクチュエータとしては例えば油圧シリンダ、エアシリンダを挙げることができる。電動アクチュエータとしては、電動シリンダの他、モータを駆動源としたラック&ピニオン機構、モータを駆動源としたボールねじ機構等を挙げることができる。 」

「【0080】
<第四実施形態>
金型100の搬出と搬入を短時間で行うことにより、より高い生産性を実現することができる。そのためには、搬送ユニット31として、より高出力のユニットの採用が考えられるがコストアップの要因となる。そこで、錘の重力を利用して金型100の移動を補助するバランサ装置を設けてもよい。
【0081】
図13はその一例を示している。状態ST21は金型100A、100Bがそれぞれ搬送装置3A、3B上に位置している場合を示し、状態ST22は金型100Bを成形動作位置11に搬入した状態を示している。
【0082】
バランサ装置8は、二つの金型100毎に設けられている。バランサ装置8は、錘Wa、Wbと、連結部材81a、81bと、複数の回転部材82と、ストッパ83とを備える。連結部材81a、81bは、チェーン、ワイヤ等の線部材である。連結部材81aは、金型100Aと錘Waとを連結し、連結部材81bは金型100Bと錘Waとを連結する。回転部材82は、連結部材81a、81bを支持する回転自在な部材であり、例えば、ローラ、スプロケット、プーリ、動滑車である。ストッパ83は錘Wa、Wbの下限位置を規定する。ストッパ83は、金型100が成形動作位置11と搬送装置3Aまたは3B上の位置との中間位置に到達した場合に、錘Wa、Wbの降下を停止するように設けられている。錘Wa、Wbの移動量(下降量)は金型100の移動ストロークの半分以下である。
【0083】
金型100が搬送装置3Aまたは3B上や、成形動作位置11に位置している場合、搬送ユニット31のサーボモータのブレーキ機構によって、金型100を停止することができる。金型100を搬入または搬出する際、ブレーキ機構を解除する。すると、錘WaまたはWbが降下し、金型100の移動が加速する。
【0084】
金型100の移動の途中で錘WaまたはWbがストッパ83に到達すると、今度は金型100に引っ張られるようにして錘WaまたはWbは上昇に転じ、金型100を減速するように作用する。したがって、搬送ユニット31が金型100を移動させるために必要となる駆動力を削減できる。
【0085】
具体例を説明する。図13において、状態ST21の状態から、搬送装置3Bの搬送ユニット31のサーボモータのブレーキを解除する。すると、錘Wbが初期位置から降下し、金型100Bが成形動作位置11へ向けて加速する。金型100Bの移動の途中で錘Wbがストッパ83に到達すると、今度は金型100に引っ張られるようにして錘Wbは上昇に転じ、金型100を減速するように作用する。そして、金型100Bが成形動作位置11に到達したときに搬送装置3Bの搬送ユニット31のサーボモータのブレーキをロックする。これにより、金型100Bが成形動作位置11に停止する。錘Wbは初期位置または初期位置に近い位置に戻っている。」





イ 甲1の段落【0013】、【0014】、【0018】、【0020】、【0021】、【0080】?【0085】及び図13の記載からみて、甲1の第四実施形態には、成形品を製造する装置における金型を入れ替えるための装置として、次のとおりの発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1発明>
「一台の射出成形機に対して、搬送装置によって複数の金型を入れ替えるための金型交換装置であって、
固定金型および可動金型には、それぞれ取付板が固定されていて、当該取付板は金型を射出成形機の成形動作位置(金型取付位置)にロックするために用いられるものであり、
搬送装置は、金型を射出成形機の成形動作位置に搬入および搬出するものであって、フレームと、搬送ユニットと、複数のローラとを備え、
搬送ユニットは、ブレーキ機構を有するサーボモータであり、
2つの金型毎に、錘Wa、Wbと、連結部材81a、81bと、複数の回転部材82と、ストッパ83とを備えるバランサ装置8が設けられ、
金型を搬入または搬出する際には、搬送ユニットのサーボモータに付属するブレーキ機構を解除すると、錘が下降をはじめ、金型の移動を加速させ、金型の移動の中間付近で錘がストッパ83に到達すると、錘は、今度は金型に引っ張られて上昇し、金型を減速するように作用し、金型が成形動作位置に到達したときにサーボモータのブレーキ機構をロックするものである、金型交換装置。」

(3) 本件発明1について(甲1発明との対比、判断)
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「金型交換装置」は、一台の射出成形機に対して、搬送装置によって複数の金型を入れ替えるためのものであるから、本件発明1の「射出成形機に併設される金型交換装置」に相当する。
甲1発明の「搬送装置」は、その搬送装置を構成する「搬送ユニット」として、ブレーキ機構を有するサーボモータを利用し、当該サーボモータに付属するブレーキ機構により成形動作位置に金型を位置決めするものであるから、本件発明1の「金型の位置決めを行う駆動力を備えた搬送手段」に相当する。
甲1発明の「バランサ装置」は、錘の重力を利用して金型の移動の動きを加速及び減速して補助するものである。一方、本件発明1の「搬送手段と協働して」における「協働」の意味は、「協力して働くこと」(広辞苑第六版)であることを踏まえると、引用発明の金型の動きを加速及び減速して補助している「バランサ装置」は、本件発明1の「搬送手段と協働して前記金型の加速と減速を補助する補助駆動手段」に相当する。
甲1発明の「搬送装置」の「搬送ユニット」は、図13から見て、本件発明1の「直線状の搬送経路を構成するアクチュエータ」に相当する。
また、甲1発明の搬送ユニットについても、金型を搬送路に沿って移動させるものであって金型が交換可能であることも自明であるから、搬送ユニットと金型との間には着脱可能な連結部があることは明らかであり、その連結部が牽引部といえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明とを対比すると、一致点及び相違点は下記のとおりである。

<一致点>
「射出成形機に併設される金型交換装置であって、前記射出成形機へ金型の搬入および搬出を行なうとともに、前記金型の位置決めを行う駆動力を備えた搬送手段と、前記搬送手段と協働して前記金型の加速と減速を補助する補助動力手段とを備え、前記搬送手段が、直線状の搬送経路を構成するアクチュエーを備え、このアクチュエータが、前記金型を搬送路に沿って移動させる牽引部を備えている金型交換装置。」

<相違点>
補助動力手段に関し、本件発明1は、「補助動力手段が空圧若しくは油圧等の流体圧シリンダであって、流体圧シリンダのピストンロッドの先端部に、前記牽引部に係脱可能に係合させられる係合部が設けられている」と特定するのに対し、甲1発明は、「錘Wa、Wbと、連結部材81a、81bと、複数の回転部材82と、ストッパ83とを備えるバランサ装置8」である点。

以下、相違点について検討する。
上記相違点は、実質的な相違点であると認められることから、本件発明1は甲1に記載された発明でない。
また、甲1には、相違点に係る本件発明1の発明特定事項について、何ら記載されておらず、また、この発明特定事項を採用する動機付けとなる記載も示唆もない。
さらに、他の証拠にも、相違点に係る本件発明1の発明特定事項についての記載はないし、それらを採用する動機付けとなる記載もない。
したがって、甲1発明において、相違点に係る本件発明1の発明特定事項を想到することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

よって、本件発明1は、甲1に記載された発明とはいえないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4) 本件発明2について
本件発明2は、本件訂正請求により削除されている。

(5) まとめ
以上のとおりであるから、取消理由の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)は、理由がない。

2 【理由3】(明確性)について
本件訂正請求により、訂正前の請求項3は削除されているので、理由3は、理由がない。

第7 付言

本件において、特許権者は請求項1について減縮を目的とする訂正を行ったので、上述のように、請求項1について、その申立て理由である新規性及び進歩性について説示したが、仮に、請求項1及び2を削除し、請求項3を削除しない訂正がされた場合には、請求項3に対しては新規性及び進歩性についての取消理由は申立てられていないので、請求項3についてはその検討は不要となるところ、念のため付言する。

第8 むすび

以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2及び3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2及び3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機に併設される金型交換装置であって、前記射出成形機へ金型の搬入および搬出を行なうとともに、前記金型の位置決めを行う駆動力を備えた搬送手段と、前記搬送手段と協働して前記金型の加速と減速を補助する補助動力手段とを備え、
前記搬送手段が、直線状の搬送経路を構成するアクチュエータであって、このアクチュエータが、前記金型を搬送路に沿って移動させる牽引部を備え、
前記補助動力手段が空圧若しくは油圧等の流体圧シリンダであって、流体圧シリンダのピストンロッドの先端部に、前記牽引部に係脱可能に係合させられる係合部が設けられていることを特徴とする金型交換装置。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記流体圧シリンダが引き込み型の単動シリンダであることを特徴とする請求項1に記載の金型交換装置。
【請求項5】
前記流体圧シリンダが複動シリンダであることを特徴とする請求項1に記載の金型交換装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-05-15 
出願番号 特願2018-145144(P2018-145144)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (B29C)
P 1 652・ 121- YAA (B29C)
P 1 652・ 537- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田代 吉成  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 大島 祥吾
植前 充司
登録日 2019-01-11 
登録番号 特許第6460508号(P6460508)
権利者 ニチエツ株式会社
発明の名称 金型交換装置  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 辻田 朋子  
代理人 辻田 朋子  
代理人 阿部 琢磨  

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