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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C04B
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C04B
審判 全部申し立て 特39条先願  C04B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
管理番号 1363967
異議申立番号 異議2018-701006  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-12 
確定日 2020-05-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6346360号発明「ジルコニア焼結体、ジルコニア組成物及びジルコニア仮焼体、並びに歯科用補綴物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6346360号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?23〕について訂正することを認める。 特許第6346360号の請求項23に係る特許を取り消す。 特許第6346360号の請求項1、2、4ないし16、18ないし22に係る特許を維持する。 特許第6346360号の請求項3、17に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6346360号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?23に係る特許についての出願は、2013年(平成25年) 5月10日を出願日として特許出願された特願2013-100618号の一部を、平成29年 8月 3日に新たな特許出願としたものであって、平成30年 6月 1日にその特許権の設定登録がされ、平成30年 6月20日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1?23に係る特許について、平成30年12月12日に特許異議申立人中丸剛(以下、「申立人1」という。)により、平成30年12月19日に特許異議申立人土田裕介(以下、「申立人2」という。)及び特許異議申立人末吉直子(以下、「申立人3」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものであり、その後の手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 3月22日付け 取消理由通知
令和 1年 5月27日付け 訂正の請求、意見書の提出
令和 1年 7月10日付け 申立人1による意見書の提出
令和 1年 7月12日付け 申立人2、3による意見書の提出
令和 1年 9月27日付け 取消理由通知(決定の予告)

なお、令和 1年 9月27日付けの取消理由通知(決定の予告)に対して、指定した期間内に特許権者から応答はなかった。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和 1年 5月27日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲のとおり訂正するものであって、以下の訂正事項1?10からなるものである(下線部は、訂正箇所を示す)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤としてイットリアを含有し、組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成し、
前記複数のジルコニア粉末を積層させてジルコニア組成物を形成し、
前記ジルコニア組成物を800℃?1200℃で焼成して製造された状態のジルコニア仮焼体であって、
前記仮焼体を幅50mm×高さ10mm×奥行き5mmの寸法の直方体形状に成形したものを試験片とし、前記試験片において、幅50mm×奥行き5mmとなる面を底面としたとき、前記ジルコニア粉末の積層によって形成される境界面が前記底面と平行になっており、
前記試験片を1500℃で2時間焼成し、
2つの前記底面のうち、凹面に変形した底面を下にして載置したとき、
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.15以下であることを特徴とするジルコニア仮焼体。」
と記載されているのを、
「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤としてイットリアを含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成し、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成し、
前記積層体を800℃?1200℃で焼成して製造された状態のジルコニア仮焼体であって、
前記ジルコニア仮焼体を幅50mm×高さ10mm×奥行き5mmの寸法の直方体形状に成形したものを試験片とし、前記試験片において、幅50mm×奥行き5mmとなる面を底面としたとき、前記ジルコニア粉末の積層によって形成される境界面が前記底面と平行になっており、
前記試験片を1500℃で2時間焼成し、
2つの前記底面のうち、凹面に変形した底面を下にして載置したとき、
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.15以下であり、
JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が38MPa以上かつ41MPa以下であることを特徴とするジルコニア仮焼体。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4?16、18?23も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体を1400℃?1600℃で焼結した状態であることを特徴とするジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体を1400℃?1600℃で焼結した状態であり、
JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が1000MPa以上かつ1219MPa以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。」
に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5?16、18、19、21も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項17を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項18に、
「JISR1607に準拠して測定した破壊靭性が3.5MPa・m^(1/2)以上であることを特徴とする請求項5?17のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「JISR1607に準拠して測定した破壊靭性が3.5MPa・m^(1/2)以上であることを特徴とする請求項5?16のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項19に、
「180℃、1MPaで5時間水熱処理試験を施した後のジルコニア焼結体のX線回折パターンにおいて、2θが30°付近の正方晶由来の[111]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さに対する、2θが28°付近の単斜晶由来の[11-1]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さの比が1以下であることを特徴とする請求項5?18のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「180℃、1MPaで5時間水熱処理試験を施した後のジルコニア焼結体のX線回折パターンにおいて、2θが30°付近の正方晶由来の[111]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さに対する、2θが28°付近の単斜晶由来の[11-1]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さの比が1以下であることを特徴とする請求項5?16、18のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項20に、
「800℃?1200℃で焼成することにより請求項1?3のいずれか一項に記載の仮焼体となることを特徴とするジルコニア組成物。」
と記載されているのを、
「800℃?1200℃で焼成することにより請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体となることを特徴とする積層体。」
に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項21に、
「1400℃?1600℃で焼結することにより請求項5?19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体となることを特徴とするジルコニア組成物。」
と記載されているのを、
「1400℃?1600℃で焼結することにより請求項5?16、18、19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体となることを特徴とする積層体。」
に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項22に、
「請求項1?3のいずれか一項に記載の仮焼体を切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする歯科用補綴物。」
と記載されているのを、
「請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体を切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする歯科用補綴物。」
に訂正する(請求項22の記載を直接的に引用する請求項23も同様に訂正する)。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項23に、
「請求項1?3のいずれか一項に記載の仮焼体を、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする請求項22に記載の歯科用補綴物。」
と記載されているのを、
「請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体を、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする請求項22に記載の歯科用補綴物。」
に訂正する。

2 訂正の適否について
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明は、「複数のジルコニア粉末」について、「組成が異なる」ことを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、「顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における複数のジルコニア粉末の組成の違いを具体的に特定して限定するものである。
また、訂正前の請求項1に係る発明は、「ジルコニア組成物」であるにもかかわらず、「前記複数のジルコニア粉末を積層させ」たことを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、「前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成し、前記積層体を」との記載により、「複数のジルコニア粉末を積層させ」たものは、組成物ではなく「積層体」であることを明確にし、該「積層体」は、「上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した」ものであることも具体的に特定し、また明確化かつ限定するものである。
さらに、訂正前の請求項1に係る発明は、「前記仮焼体」と特定している。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、「前記ジルコニア仮焼体」との記載により、請求項1に係る発明の「仮焼体」についての記載を明確にするものである。
そして、訂正前の請求項1に係る発明は、ジルコニア仮焼体の曲げ強度については特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、「JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が38MPa以上かつ41MPa以下である」との記載により、ジルコニア仮焼体の曲げ強度を特定して限定するものである。
以上のことから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項1は、本件明細書の段落【0059】、【0062】、【0106】、【0108】、【0116】、【0134】及び【0192】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2、4
ア 訂正の目的について
訂正事項2、4は、それぞれ訂正前の請求項3、17を削除するものである。
したがって、訂正事項2、4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
上記アに記載のとおり、訂正事項2、4は、それぞれ訂正前の請求項3、17を削除するものである。
したがって、訂正事項2、4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2、4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項4に係る発明は、ジルコニア焼結体の曲げ強度については特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項4に係る発明は、「JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が1000MPa以上かつ1219MPa以下である」との記載により、ジルコニア焼結体の曲げ強度を特定して限定するものである。
また、訂正事項3は、請求項4において、選択的に引用する請求項の一部を削除するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項3の曲げ強度の特定は、本件明細書の段落【0078】、【0134】の記載に基づくものである。
また、訂正事項3の選択的に引用する請求項の一部を削除する訂正は、何ら新規事項を追加するものではない。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

(4)訂正事項5、6
ア 訂正の目的について
訂正事項5、6は、それぞれの請求項において、選択的に引用する請求項の一部を削除するものである。
したがって、訂正事項5、6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項5、6の選択的に引用する請求項の一部を削除する訂正は、何ら新規事項を追加するものではない。
したがって、訂正事項5、6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5、6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

(5)訂正事項7?10
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項20、21に係る発明は、組成が異なる複数のジルコニア粉末を積層した積層体を「ジルコニア組成物」と特定している。
また、訂正前の請求項20、22、23に係る発明は、ジルコニア仮焼体を単に「仮焼体」と特定している。
これに対して、訂正後の請求項20に係る発明は、「積層体」及び「ジルコニア仮焼体」との記載により、上記「ジルコニア組成物」及び「仮焼体」の記載をそれぞれ明確にするものである。
また、訂正後の請求項21に係る発明は、「積層体」との記載により、上記「ジルコニア組成物」の記載を明確にするものである。
さらに、訂正後の請求項22、23に係る発明は、「ジルコニア仮焼体」との記載により、上記「仮焼体」の記載を明確にするものである。
そして、訂正事項7?10は、それぞれの請求項において、選択的に引用する請求項の一部を削除するものである。
以上のことから、訂正事項7?10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項7?10の「積層体」又は「ジルコニア仮焼体」とする訂正は、訂正前の請求項1、2及び段落【0116】の記載に基づくものである。
また、訂正事項7?10の選択的に引用する請求項の一部を削除する訂正は、何ら新規事項を追加するものではない。
したがって、訂正事項7?10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7?10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

3 一群の請求項について
訂正事項1?10に係る訂正前の請求項1?23は、請求項2?23が、直接的又は間接的に請求項1を引用する関係にあるから、一群の請求項であり、訂正事項1?10は、この一群の請求項について請求されたものである。

4 独立特許要件について
本件特許の請求項1?23の全ての請求項に係る特許について特許異議の申立てがされたので、訂正後の請求項1?23に係る発明について、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件についての規定は適用されない。

5 訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?23〕について訂正することを認める。


第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、2、4?16、18?23に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」・・・「本件発明23」という。)は,次の事項により特定されるものである(下線部は、訂正箇所)。

「【請求項1】
ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤としてイットリアを含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成し、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成し、
前記積層体を800℃?1200℃で焼成して製造された状態のジルコニア仮焼体であって、
前記ジルコニア仮焼体を幅50mm×高さ10mm×奥行き5mmの寸法の直方体形状に成形したものを試験片とし、前記試験片において、幅50mm×奥行き5mmとなる面を底面としたとき、前記ジルコニア粉末の積層によって形成される境界面が前記底面と平行になっており、
前記試験片を1500℃で2時間焼成し、
2つの前記底面のうち、凹面に変形した底面を下にして載置したとき、
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.15以下であり、
JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が38MPa以上かつ41MPa以下であることを特徴とするジルコニア仮焼体。
【請求項2】
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア仮焼体。

【請求項4】
請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体を1400℃?1600℃で焼結した状態であり、
JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が1000MPa以上かつ1219MPa以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。
【請求項5】
一端から他端に向かう第1方向に延在する直線上において、
前記一端から全長の25%までの区間にある第1点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L1,a1,b1)とし、
前記他端から全長の25%までの区間にある第2点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L2,a2,b2)としたとき、
L1が58.0以上76.0以下であり、
a1が-1.6以上7.6以下であり、
b1が5.5以上26.7以下であり、
L2が71.8以上84.2以下であり、
a2が-2.1以上1.8以下であり、
b2が1.9以上16.0以下であり、
L1<L2であり、
a1>a2であり、
b1>b2であり、
前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度の増減傾向が変化しないことを特徴とする請求項4に記載のジルコニア焼結体。
【請求項6】
前記第1点と前記第2点とを結ぶ直線上において、
前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)値が1以上減少する区間が存在せず、
前記第1点から前記第2点に向かってa^(*)値が1以上増加する区間が存在せず、
前記第1点から前記第2点に向かってb^(*)値が1以上増加する区間が存在しないことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体。
【請求項7】
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第1点と前記第2点の間にある第3点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L3,a3,b3)としたとき、
L3が62.5以上80.5以下であり、
a3が-1.8以上5.5以下であり、
b3が4.8以上21.8以下であり、
L1<L3<L2であり、
a1>a3>a2であり、
b1>b3>b2である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体。
【請求項8】
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第3点と前記第2点の間にある第4点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L4,a4,b4)としたとき、
L4が69.1以上82.3以下であり、
a4が-2.1以上1.8以下であり、
b4が3.5以上16.2以下であり、
L1<L3<L4<L2であり、
a1>a3>a4>a2であり、
b1>b3>b4>b2である、
ことを特徴とする請求項7に記載のジルコニア焼結体。
【請求項9】
前記第3点は前記一端から全長の45%の距離にあり、
前記第4点は前記一端から全長の55%の距離にある、
ことを特徴とする請求項8に記載のジルコニア焼結体。
【請求項10】
前記第1点、前記第3点、前記第4点及び前記第2点において、
隣接する2点におけるL^(*)値の差をΔL^(*)とし、
隣接する2点におけるa^(*)値の差をΔa^(*)とし、
隣接する2点におけるb^(*)値の差をΔb^(*)とし、
以下の式1よりΔE^(*)abを算出した場合、
前記第1点と前記第3点間のΔE^(*)abは3.7以上14.3以下であり、
前記第3点と前記第4点間のΔE^(*)abは1.8以上10.5以下であり、
前記第4点と前記第2点間のΔE^(*)abは1.0以上9.0以下である、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のジルコニア焼結体。
[式1]

【請求項11】
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第1点と前記第2点の間にある第3点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L3,a3,b3)としたとき、
L3が69.1以上82.3以下であり、
a3が-2.1以上1.8以下であり、
b3が3.5以上16.2以下であり、
L1<L3<L2であり、
a1>a3>a2であり、
b1>b3>b2である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体。
【請求項12】
一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、
前記一端から前記他端に向かう直線上においてL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度の増減傾向が変化しないことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体。
【請求項13】
前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)値は増加傾向にあり、a^(*)値及びb^(*)値は減少傾向にあることを特徴とする請求項12に記載のジルコニア焼結体。
【請求項14】
前記一端から前記他端までの距離は5mm?18mmであることを特徴とする請求項5?13のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
【請求項15】
前記第1方向と直交する第2方向に沿って色が変化しないことを特徴とする請求項5?14のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
【請求項16】
前記第2方向に延在する直線上の2点において、
前記2点間のL^(*)値の差をΔL^(*)とし、
前記2点間のa^(*)値の差をΔa^(*)とし、
前記2点間のb^(*)値の差をΔb^(*)とし、
以下の式2よりΔE^(*)abを算出した場合、
ΔE^(*)abが1未満であることを特徴とする請求項15に記載のジルコニア焼結体。
[式2]

【請求項18】
JISR1607に準拠して測定した破壊靭性が3.5MPa・m^(1/2)以上であることを特徴とする請求項5?16のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
【請求項19】
180℃、1MPaで5時間水熱処理試験を施した後のジルコニア焼結体のX線回折パターンにおいて、2θが30°付近の正方晶由来の[111]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さに対する、2θが28°付近の単斜晶由来の[11-1]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さの比が1以下であることを特徴とする請求項5?16、18のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
【請求項20】
800℃?1200℃で焼成することにより請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体となることを特徴とする積層体。
【請求項21】
1400℃?1600℃で焼結することにより請求項5?16、18、19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体となることを特徴とする積層体。
【請求項22】
請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体を切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする歯科用補綴物。
【請求項23】
請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体を、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする請求項22に記載の歯科用補綴物。」


第4 取消理由について
1 令和1年 9月27日付けの取消理由通知(決定の予告)について
本件発明23に対して、令和1年 9月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

本件発明23
本件発明23の「仮焼体を、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結した状態である」の記載では、「CAD/CAMシステム」を用いたことにより歯科用補綴物の何が特定されるのか不明であるから、本件発明23は明確でない。
なお、特許権者は、令和 1年 5月27日付けの意見書において「CAD/CAMシステムを用いて切削加工された歯科用補綴物は、表面にドリルによる溝が形成されるため、当業者であればCAD/CAMシステムを用いずに人の手で切削加工された歯科用補綴物と区別できる」と主張しているが、ドリルによる切削加工は、汎用のフライス盤を用いて、CAD/CAMシステムによる制御をしなくても実施可能なものであるから、上記主張は採用できない。

2 平成31年 3月22日付けの取消理由通知について
訂正前の請求項1?23に対して、平成31年 3月22日付けで特権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

請求項1?23に係る発明が解決しようとする課題は、本件明細書【0009】?【0020】によると、積層構造を有する成形体から寸法精度の高いジルコニア焼結体を得ることであると認められ、実施例の工程により得られた仮焼体は上記課題を解決できると認識できるが、請求項1は、顔料の添加率が異なるジルコニア粉末を調整することや、積層時に振動を与えて上下層の境界に混合層を形成することは特定されていないから、請求項1及びこれを引用する請求項2?23に係る発明は、上記課題を解決できる手段を認識することはできない。

取消理由2(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の請求項1?23の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(1)請求項1?23
ア ジルコニア仮焼体は、組成の異なる層を積層した「積層体」であるから、「組成物」の記載は明確でない。
イ 「800?1200℃で焼成して製造された状態のジルコニア仮焼体」との記載は単に焼成温度のみを特定するものであって、「ジルコニア仮焼体」がどのような状態であることを特定するものか明確でない。

(2)請求項4?19、21
「・・・・・ ジルコニア仮焼体を1400℃?1600℃で焼結した状態である ・・・・・ ジルコニア焼結体」との記載は単に焼成温度のみを特定するものであって、「ジルコニア焼結体」がどのような状態であることを特定するものか明確でない。

(3)請求項20
請求項1?3を引用するものであるから、請求項1?3と同様に明確でない。

(4)請求項21
請求項5?19を引用するものであるから、請求項5?19と同様に明確でない。

(5)請求項23
「CAD/CAMシステム」を用いたことにより、「歯科用補綴物」の何が特定されているのか明確でない。

3 取消理由についての判断
(1)令和1年 9月27日付けの取消理由通知(決定の予告)について
上記第4の1に記載のとおり、本件請求項23に係る特許について取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
そして,上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項23に係る特許は,この取消理由によって取り消されるべきものである。

(2)平成31年 3月22日付けの取消理由通知について
上記1において取り消されるべきものであると判断した請求項23及び本件訂正請求により削除された請求項3、17を除く請求項1、2、4?16、18?22に係る発明(まとめて、「本件発明」ということがある。)の特許についての判断を、以下に示す。

ア 取消理由1(特許法第36条第6項第1号)について
本件発明1に係るジルコニア仮焼体は、「顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末」が用いられていること、及び「前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体」が形成されて製造された仮焼体であることが特定されている。
そして、発明の詳細な説明には、顔料の添加率を調整することによりジルコニア粉末を作製する工程(本件明細書 段落【0101】?【0106】)、及び積層体の各層の境界に混合層を形成する工程(本件明細書 【0060】?【0062】、【0108】?【0111】)が具体的に説明されており、当業者であれば、これらの工程を採用し、上下層の境界に上下層の各粉末が適度に混合した混合層を有する積層体を形成し、これを焼成して製造したジルコニア仮焼体は焼成時にジルコニア焼結体の変形量が小さくなることが理解でき、本件発明1に係るジルコニア仮焼体によって、寸法精度の高いジルコニア焼結体が得られることを認識できる。
そうすると、本件発明1及びこれを引用する本件発明2、4?16、18?22は、本件発明の積層構造を有する成形体から寸法精度の高いジルコニア焼結体を得るという課題を解決できるといえる。
よって、取消理由1は、理由がない。

イ 取消理由2(特許法第36条第6項第2号)について
(ア) 「(1)ア」について
本件訂正請求による訂正によって、請求項1、20、21の「組成物」の記載は削除され、組成が異なる複数のジルコニア粉末を積層させることにより「積層体」を形成することが特定されたから、本件発明は明確である。

(イ) 「(1)イ ?(4)」について
請求項1において、本件発明1に係るジルコニア仮焼体は「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤としてイットリアを含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成し、前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体」が焼成された状態のものであって、「JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が38MPa以上かつ41MPa以下である」ことが特定され、また、請求項4において、本件発明4に係るジルコニア焼結体は、本件発明1に係る仮焼体が焼結した状態のものであって、「JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が1000MPa以上かつ1219MPa以下である」ことが特定された。
そうすると、請求項1及び請求項4には、物の製造方法(製造条件)が記載されているが、各請求項の記載及び明細書の記載から、ジルコニア仮焼体に係る本件発明1及びジルコニア焼結体に係る本件発明4が、上記積層体の構造を備え、特定の曲げ強度を有する物の発明であることが理解できるから、本件発明1及び本件発明4、並びにこれに従属する本件発明2、5?16、18?22は、明確であるといえる。

よって、取消理由2は、理由がない。

第5 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
1 採用しなかった特許異議申立理由
取消理由に採用しなかった申立人1?3による特許異議申立書(以下、それぞれ「申立書1」?「申立書3」という。)に記載された特許異議申立の理由(以下、「申立理由」という。)は、次の(1)?(3) のとおりである。

(1)申立人1による申立理由及び証拠方法
ア 申立理由1-1(特許法第36条第4項第1号)
(ア) 実施可能要件
訂正前の請求項1に係る発明は、形状、構造、組成が予測できないものであり、ジルコニア仮焼体の焼成試験による変形量の特定事項は、標準的なものでなく、また、慣用されているものでもないから、本願の発明の詳細な説明に記載された「組成の異なる粉末の積層時に組成物に振動を与える」ことで、「組成の異なる粉末同士を部分的に混合する」こと以外の手段により、訂正前の請求項1に係る仮焼体を作ることはできないから、発明の詳細な説明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない(申立書1 29?32ページ)。

(イ) 委任省令要件
発明の詳細な説明には、人工歯等のジルコニア焼結体を適用する製品における具体的な寸法精度の評価について何ら記載はない等、「組成の異なるジルコニア粉末を積層してジルコニア仮焼体を製造した場合であっても、寸法精度の高いジルコニア焼結体を得る」という課題が解決されたかについて何ら記載されていないから、発明の詳細な説明には、本件発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえない(申立書1 32?34ページ)。

イ 申立理由1-4(特許法第29条第2項)
訂正前の請求項1?23に係る発明は、甲1-1に記載された発明及び甲1-2?甲1-9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立書1 43?68ページ)
(証拠方法)
甲1-1:特開2004-35332号公報
甲1-2:特開平6-39820号公報
甲1-3:特開2004-284840号公報
甲1-4:特開2003-260596号公報
甲1-5:特開2003-73708号公報
甲1-6:特開2010-220779号公報
甲1-7:特開2009-269812号公報
甲1-8:特開2011-73907号公報
甲1-9:「セラミック工学ハンドブック」、2006?2009ページ、 1989年4月10日

(2)申立人2による申立理由及び証拠方法
ア 申立理由2-1(特許法第29条第2項)
訂正前の請求項1?23に係る発明は、甲2-1?甲2-4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立書2 4?6ページ)
(証拠方法)
甲2-1:中国実用新案第202682074号明細書(及び 抄訳)
甲2-2:欧州特許第0870479号明細書(及び 抄訳)
甲2-3:欧州特許第2024300号明細書(及び 抄訳)
甲2-4:特開2008-50246号公報

イ 申立理由2-3(特許法第39条第2項)
訂正前の請求項1?23に係る発明は、甲2-5の請求項1?23に記載された発明と実質的に同一である(申立書2 6、7ページ)。
(証拠方法)
甲2-5:特許第6189627号公報

(3)申立人3による申立理由及び証拠方法
ア 申立理由3-1(特許法第36条第6項第1号)
発明の詳細な説明には、酸化アルミニウム及び酸化チタンを使用した実施例が記載されているのみであるから、訂正前の請求項1?23に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(申立書3 14?17ページ)。

イ 申立理由3-2(特許法第29条第1項第3号)及び申立理由3-3(特許法第29条第2項)
訂正前の請求項1?4、20、22及び23に係る発明は、甲3-1に記載された発明であり、また、訂正前の請求項1?23に係る発明は、甲3-1に記載された発明及び甲3-2?甲3-4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立書3 17?40ページ)。
(証拠方法)
甲3-1:中国特許出願公開第102285795号明細書(及び 抄訳)
甲3-2:特開平1-197421号公報
甲3-3:独国特許出願公開第102006024489号明細書(及び 抄訳)
甲3-4:特開2012-41239号公報

2 採用しなかった申立理由についての判断
(1)申立人1の申立理由について
ア 申立理由1-1(特許法第36条第4項第1号)
(ア) 実施可能要件
上記「第4 3(2)ア」で記載したように、本件発明1に係るジルコニア仮焼体は、「顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末」が用いられていること、及び「前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体」が形成されて製造されたものであることが特定されている。
そして、発明の詳細な説明には、積層体の上下層の境界において混合層を形成するためにジルコニア粉末を積層する際に振動を与えるという具体的手段を採用すること(本件明細書 段落【0101】?【0111】)及びその実施例(本件明細書 特に 段落【0117】?【0140】)により、本件発明で特定する所定の曲げ強度の仮焼体が得られたことが具体的に記載されているから、本件発明1を当業者が実施をすることができないとはいえない。

(イ) 委任省令要件
本件明細書の発明の詳細な説明には、仮焼体を焼結すると変形しやすくなるところ、本件発明1において、仮焼体の焼成試験による変形量の上限を特定した理由について説明されており( 段落【0061】、【0062】)、「寸法精度の高いジルコニア焼結体を得ることができる」との課題及びその解決手段を理解することができるから、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないとはいえない。

イ 申立理由1-4(特許法第29条第2項)
甲1-1の請求項1、5、段落【0005】、【0010】、【0014】?【0017】によると、甲1-1には、次の発明が記載されていると認められる。
「無着色材料を含有し、着色材料の配合を調整することで複数の色のセラミック粉を形成し、 前記複数の色のセラミックス粉を積層させて成形体を成形し、前記成形体を、1100度?1150度で焼成して製造したセラミックスブロック。」
本件発明1と上記甲1-1に記載された発明とを対比すると、本件発明1は、ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤としてイットリアを含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なるジルコニア粉末を形成する点、積層体の上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層が形成される点、並びに仮焼体の焼成試験による変形量及びJISR1601に準拠して測定した仮焼体の曲げ強度が特定されている点で、甲1-1に記載された上記セラミックスブロックに係る発明と相違している。
上記相違点について検討すると、甲1-1には、セラミックブロックの材料の一つとしてジルコニアが記載されているものの(甲1-1:段落【0005】)、具体的には、ネフェリンサイヤナイト、大平長石の天然鉱物を主成分とし、着色材料としてZr-Vが使用することが記載されているのみであり(段落【0010】)、また、積層体の境界については、層の境界をはっきりさせずにぼやかした色合いの加工物を望む場合は、各層の材料でそれぞれしっかりとした成形を行わず、すべての材料を入れてから全体を圧縮することが、また、2種以上の材料を割合を変化させながら常時撹拌し、充填し、最後に成形することで、境界の無い連続な色調のブロックを作成することが記載されているにすぎず(甲1-1:段落【0007】)、上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することはできない。
また、甲1-2、甲1-4及び甲1-5には、振動により粉体の層の境界部に混合層を形成した成形体が開示されているが、甲1-2は、焼成した多層セラミックスを、甲1-4は、粉末冶金による成形体を、それぞれ強固に結合するためのものであり、また、甲1-5は、均一性の向上した焼結体等を得るためものである。
そうすると、甲1-2、甲1-4及び甲1-5の混合層を、強固な結合や均一性の向上ではなく、セラミックブロックの色調を調整することを目的とする甲1-1に記載された発明に適用する動機付けはない。
さらに、甲1-3には、セラミックスラリーの境界を混合して、成形される多孔質セラミックスの境界層を消滅させた均一な多孔質セラミックが、甲1-6には、酸化ジルコニウムを主成分とし酸化イットリウムを含む単層のセラミック仮焼体及びこれを焼成した焼結体が、甲1-7、1-8には、安定化剤としてイットリアを含むジルコニア粉末を焼結して製造された単層のジルコニア焼結体が、甲1-9には、Y_(2)O_(3)を安定化剤とした安定化ジルコニアが、それぞれ記載されているにすぎず、同様に上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することはできない。
次に、本件発明4について検討すると、本件発明4は、本件発明1に係る仮焼体を焼結したものであるから、積層体の境界に混合層を有する焼結体であると認められ、さらに、JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が特定されたものであるから、このような構造の焼結体は、上記の本件発明1の仮焼体の検討と同じく、甲1-1に記載された発明及び甲1-1?甲1-9に記載された事項から導出することはできない。
したがって、本件発明1、4は、甲1-1?甲1-9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明2、5?16、18?22は、本件発明1又は本件発明4を引用するものであるから、同様に、甲1-1?甲1-9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)申立人2の申立理由について
ア 申立理由2-1(特許法第29条第2項)
甲2-1の抄訳を参照すると、甲2-1には、次の発明が記載されていると認められる。
「ジルコニア粉を積層した多層のジルコニアセラミックス」
本件発明1と甲2-1に記載された発明とを対比すると、本件発明1は、ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤としてイットリアを含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なるジルコニア粉末を形成する点、積層体の上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層が形成される点、並びに仮焼体の焼成試験による変形量及びJISR1601に準拠して測定した仮焼体の曲げ強度が特定されている点で、甲2-1に記載された上記ジルコニアセラミックスに係る発明と相違している。
また、本件発明4と甲2-1に記載された発明とを対比すると、本件発明4は、上記本件発明1に係る仮焼体が焼結されたものであって、JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が特定されている点で、甲2-1に記載された上記ジルコニアセラミックスに係る発明と相違している。
上記各相違点について検討すると、甲2-2には、界面にセラミック材料の混合が生じた積層体を焼結した引張強度が100MPaを超えるセラミックス成形体が記載されているが、甲2-2は、SiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を主成分とするジルコニアを含まない焼結体において、積層時に混合が生じた結果、所定の引張強度が得られたことが開示されているにすぎない。
また、甲2-3には、顔料の添加率が異なるZrO_(2)を含む粉末を順次積層した成形体を焼結して得られた焼結体が、甲2-4には、曲げ強度が1200MPa以上で着色剤を含む単層のイットリア安定化ジルコニア焼結体がそれぞれ記載されているにすぎない。
そうすると、甲2-2?甲2-4の記載事項は、上記相違点に係る、本件発明1の積層構造のジルコニア仮焼体が上記焼成試験による変形量及び所定の曲げ強度を有する点、及び本件発明4の積層構造のジルコニア焼結体が所定の曲げ強度を有する点を何ら示唆するものではない。
したがって、本件発明1、4は、甲2-1?甲2-4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明2、5?16、18?22は、本件発明1又は本件発明4を引用するものであるから、同様に、甲1?甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 申立理由2-3(特許法第39条第2項)
本件発明1は、ジルコニア粉末に安定化剤としてイットリアを含有すること及びジルコニア仮焼体の曲げ強度が特定されているのに対して、本件特許の原出願の特許である甲2-5の請求項1に係る発明は、ジルコニア粉末に安定化剤を含有することが特定されているだけであるし、ジルコニア仮焼体の曲げ強度の特定もないから、両者が互いに同一であるとはいえない。
また、本件発明1に従属する本件発明2、4?16、18?22も同様であって、甲2-5に記載された各請求項に係る発明と同一であるとはいえない。

(3)申立人3の申立理由について
ア 申立理由3-1(特許法第36条第6項第1号)
本件明細書の発明の詳細な説明には、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))は、ジルコニア焼結体の強度を高めるために、ジルコニア結晶粒子及び安定化剤の合計質量に対して、0質量%(無含有)?0.3質量%の含有率とすることが記載され(段落【0050】、【0070】)、また、酸化チタン(TiO_(2))は、ジルコニア結晶粒子及び安定化剤の合計質量に対して、0質量%(無含有)?0.3質量%であることが記載されているから(段落【0051】、【0071】)、酸化アルミニウム及び酸化チタンは、当業者が必要に応じて原料粉末に含有させる成分であることが理解できる。
そうすると、実施例において、酸化アルミニウム及び酸化チタンが含有した例が記載されていることのみを根拠として、これらが本件発明において必須成分であるとまではいえない。

イ 申立理由3-2(特許法第29条第1項第3号)及び申立理由3-3(特許法第29条第2項)
甲3-1(段落[0023]、[0025]?[0027]及び図2)の抄訳を参照すると、甲3-1には、次の発明が記載されていると認められる。
「ジルコニア及びY_(2)O_(3)を含有した白色ジルコニア粉体及び黄色ジルコニア粉体を用いて、これらの割合を変えて混合した複数の着色ジルコニア混合粉体を作製し、前記複数の着色ジルコニア混合粉体を積層して複色ジルコニアセラミックス生地を成形し、前記複色ジルコニアセラミックス生地を950℃で仮焼結した複色ジルコニアセラミックス多孔質半製品。」
及び
「上記複色ジルコニアセラミックス多孔質半製品を1450℃で焼結した焼結体。」
本件発明1と上記甲3-1に記載された複色ジルコニアセラミックス多孔質半製品の発明とを対比すると、本件発明1は、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層が形成される点、並びに仮焼体の焼成試験による変形量及びJISR1601に準拠して測定した曲げ強度が特定されている点で、上記甲3-1に記載された複色ジルコニアセラミックス多孔質半製品の発明と相違している。
そして、甲3-1からは、当該相違点に係る事項は導出できないから、実質的な相違点である。
また、本件発明4と上記甲3-1に記載された焼結体の発明とを対比すると、本件発明4は、上記本件発明1に係る仮焼体が焼結されたものであって、JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が特定されている点で、上記甲3-1に記載された焼結体の発明と相違している。
そして、本件発明4は、積層体の境界に混合層を有する焼結体であると認められ、甲3-1からは、このような構造及び上記曲げ強度は導出できないから、これらは実質的な相違点である。
申立書3では、甲3-1において、粉末の積層時に振動を与えることは一般的であり、また、甲3-2に記載されるように粉末の積層時に金型等に振動を与えることはごく一般的なことであるから、本件発明1、4は、甲3-1に記載された発明であるか、あるいは甲3-1に記載された発明に基づいて容易に発明ができたものであると主張している(申立書3 26?28ページ)。
しかし、本件発明1に係る仮焼体の上下層の境界の混合層は、仮焼体を焼成したときに焼結体の変形が抑制され、また、所定の仮焼体及び焼結体の曲げ強度が得られるように、各層の境界に混合層を形成していると認められるところ(本件明細書 段落【0108】?【0111】、【0121】?【0133】)、甲3-1は、上記のとおり、このような混合層を形成することの具体的な記載はない。
また、甲3-2は、色調の異なる化粧料粉末を順次層状に充填する際に、境界部分を互いに混ぜ合わせて、色調の境界をなくすことは記載されているが、プレスして固形化するものであって、本件発明1及び本件発明4の上記相違点に係る特定事項を導出することはできない。
さらに、甲3-3は、顔料の添加率が異なるZrO_(2)を含む粉末を順次積層した成形体を焼結して得られた焼結体が、甲3-4には、所定の強度及び破壊靭性を有する単層のジルコニア焼結体がそれぞれ記載されているにすぎず、本件発明1及び本件発明4の上記相違点に係る特定事項を導出することはできない。
したがって、本件発明1、4は、甲3-1に記載された発明とはいえず、甲3-1?甲3-4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、本件発明2、5?16、18?22は、本件発明1又は本件発明4を引用するものであるから、同様に、本件発明2、20、22は、甲3-1に記載された発明とはいえず、本件発明2、5?16、18?22は、甲3-1?甲3-4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。


第6 申立人の意見について
(1)申立人の主張
申立人1は、令和 1年 7月10日付けで、申立人2、3は、令和 1年 7月12日付けで、それぞれ意見書を提出して、以下の通り主張している。

ア 申立人1の主張
(ア)特許法第36条第6項第1号
下記の点で不備のため、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できる範囲のものであるということができない。
(ア-1)本件発明1において、「ジルコニアと安定化剤とを含む単一の粉末を基に組成の異なる粉末を形成すること」及び「組成の異なる粉末において顔料の添加率のみが異なること」が特定されていない。
(ア-2)本件発明1において、積層帯の上下層の境界に混合層を形成する際に、振動を与えることが特定されていない。

(イ)特許法第36条第6項第2号
(イ-1)本件発明1の仮焼体の焼成温度及び曲げ強度の特定では、ジルコニア仮焼体がどのような状態であるのか明確でない。
(イ-2)本件発明1において、混合層は、「上下層の境界において各粉末が部分的に混合した」ものであることが特定されているため、各粉末が部分的に混合していない部分を有するところ、当該部分が積層方向の端にある場合に、混合層と上下層のいずれを構成するのか不明確である。

(ウ)特許法第29条第2項
本件発明は、甲1-1発明、及び甲1-6?甲1-9に記載の事項から当業者にとって容易に発明することができたものである。

イ 申立人2の主張
下記(ア)?(ウ)の点で、本件発明は、サポート要件を満たさず、また、不明確である。
(ア)「顔料の添加率」について
顔料の種類によって添加率の特定が必要であり、セラミックスでは粒径等が焼結挙動に影響するから、本件発明1の顔料の組成を調整するという特定では不十分である。

(イ)「部分的に混合した混合層」について
「部分的に混合した混合層」の記載では、どの程度混合したものであるのか不明であり、また、どのような混合層とすべきなのかも不明である。

(ウ)仮焼体強度の限定について
原料粉末の焼結挙動が不明であり、どのような強度の仮焼体が製造できるのか不明である。

ウ 申立人3の主張
下記(ア)、(イ)の点で、本件発明は、取り消されるべきものである。
(ア)サポート要件及び実施可能要件
本件発明1の「各粉末が部分的に混合した混合層」が、振動以外の方法で形成されるかどうか不明であり、また、振動による方法についても、具体的な振動条件が不明である。また、本件発明4に係る焼結体の強度は、比較例も含まれる。
よって、本件発明1、4は、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、また、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。

(イ)明確性
本件発明1において、曲げ強度が特定されたが、構造や特性が明らかになったとはいえず外縁が不明確であり、また、「部分的に混合した混合層」は、どの程度混合されているのか理解できず、さらに、本件発明1は、プロダクト・バイ・プロセスクレームに該当する。

(2)当審の判断
下記ア?ウに記載のとおりであるから、申立人1?3の意見書における主張は採用できない。

ア 申立人1の主張について
●(ア-1)について
本件明細書には、ジルコニアと安定化剤とを含む単一の粉末を基にして顔料の添加率が異なるジルコニア粉末を作製したことが記載されているが(段落【0101】?【0107】)、焼結体の色を徐々に変化させる(グラデーション化させる)方法に用いる粉末の一例として示されたものであるところ(段落【0106】)、「単純に積層して作製した組成物及び仮焼体と比べて、変形量を小さくすることができる。これにより、最終製品の寸法精度を高めることができる。」(段落【0062】)との記載、及び「隣接する層間において、上下層の粉末が混合した境界層を形成することができると考えられる。これにより、焼結体において、隣接する層間の密着性を高めることができる。加熱処理時の収縮量又は収縮速度を各層で同等にすることができ、加熱処理時に層間に剥離を生じさせたり、焼結体が目標とする形状に対していびつに変形したりすることを防止することができる。」(段落【0111】)との記載により、本件発明は、混合層を有することで変形が抑制され、所定の強度が得られることが認識できるから、本件発明において、単一の粉末を基に調製した顔料の添加率のみが異なる粉末を用いることまで限定する必要があるとはいえない。

●(ア-2)及び(イ-1)について
上記「第4 3(2)イ(イ)」に記載のとおり、本件発明1は、所期の特性を満足するジルコニア仮焼体に係る物の発明であることは明らかであり、明確である。
また、「上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体」という特定事項によりその構造を把握できるから、振動を与えるという工程を特定する必要があるとはいえない。

●(イ-2)について
「混合層」は、上下層の層間に境界層を形成し、隣接する層間の密着性を高め、また、層間の色の差異を緩和し、これにより、焼結体において、積層方向に色を自然に変化させることがができる(本件明細書 段落【0111】)という作用機序からすると、「混合層」と各層の境界が明らかである必要はないから、各粉末が混合していない部分の境界が不明であるとして、本件発明が明確でないとはいえない。

●(ウ)について
上記「第5 2(1)イ」の判断のとおりであり、甲1-1、甲1-6?甲1-9の記載を検討しても、本件発明は、当業者が容易に発明ををすることができたものであるとはいえない。

イ 申立人2の主張について
●(ア)、(イ)について
上記「ア(ア-1)について」に記載したとおり、本件発明1は、「混合層」を有することにより、発明の課題を解決できると当業者が認識できるものであるから、「ジルコニア粉末」や「混合層」について、さらに限定する必要があるとはいえない。

●(ウ)について
上記「第4 3(2)イ(イ)」に記載のとおり、本件発明は、明確であり、また、実施例において、本件発明1で特定した仮焼体の曲げ強度が得られ変形量が抑制されたことが示されているから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。

ウ 申立人3の主張について
●(ア)について
上記「ア(ア-1)について」に記載したとおりであり、また、本件発明4に係る焼結体は、焼成しても変形量が抑制される本件発明1に係る仮焼体を焼結したものであって、比較例の焼結体と比べて、変形量が小さくなることが理解できるから、比較例とは差異があることが当業者であれば認識できる。
そうすると、本件発明は、発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものである。
また、本件明細書の発明の詳細な説明には、積層体におけるジルコニア粉末の平均粒径を20?40μmとすること(段落【0048】)、混合層を形成するための「振動」は、層間の境界において上下層の粉末の混合が起こるように適宜設定することが記載され(段落【0108】、【0109】)、さらに具体的なジルコニア粉末の調整工程(段落【0118】、【0119】)及び粉末の積層工程(段落【0121】)が記載され、それにより本件発明で特定する仮焼体及び焼結体が得られたこと(段落【0130】?【0140】)が記載されている。
そうすると、振動の程度が明らかにされていないとしても、本件発明1、4に係る仮焼体及び焼結体を製造するために、過度の試行錯誤が必要であるとまではいえず、本件明細書は、当業者が実施できる程度に明確に記載されたものでないとはいえない。

●(イ)について
上記「第4 3(2)イ(イ)」に記載のとおりであって、本件発明は、明確であり、また、プロダクト・バイ・プロセス・クレームであるとはいえない。


第7 むすび
以上のとおり、本件の請求項23に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、通知した取消理由並びに特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1、2、4?16、18?22に係る特許を取り消すことはできない。
他に、本件の請求項1、2、4?16、18?22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件の請求項3、17に係る特許は、訂正により削除されたため、同請求項に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる特許は存在しないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤としてイットリアを含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成し、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成し、
前記積層体を800℃?1200℃で焼成して製造された状態のジルコニア仮焼体であって、
前記ジルコニア仮焼体を幅50mm×高さ10mm×奥行き5mmの寸法の直方体形状に成形したものを試験片とし、前記試験片において、幅50mm×奥行き5mmとなる面を底面としたとき、前記ジルコニア粉末の積層によって形成される境界面が前記底面と平行になっており、
前記試験片を1500℃で2時間焼成し、
2つの前記底面のうち、凹面に変形した底面を下にして載置したとき、
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.15以下であり、
JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が38MPa以上かつ41MPa以下であることを特徴とするジルコニア仮焼体。
【請求項2】
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア仮焼体。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体を1400℃?1600℃で焼結した状態であり、
JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が1000MPa以上かつ1219MPa以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。
【請求項5】
一端から他端に向かう第1方向に延在する直線上において、
前記一端から全長の25%までの区間にある第1点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L1,a1,b1)とし、
前記他端から全長の25%までの区間にある第2点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L2,a2,b2)としたとき、
L1が58.0以上76.0以下であり、
a1が-1.6以上7.6以下であり、
b1が5.5以上26.7以下であり、
L2が71.8以上84.2以下であり、
a2が-2.1以上1.8以下であり、
b2が1.9以上16.0以下であり、
L1<L2であり、
a1>a2であり、
b1>b2であり、
前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度の増減傾向が変化しないことを特徴とする請求項4に記載のジルコニア焼結体。
【請求項6】
前記第1点と前記第2点とを結ぶ直線上において、
前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)値が1以上減少する区間が存在せず、
前記第1点から前記第2点に向かってa^(*)値が1以上増加する区間が存在せず、
前記第1点から前記第2点に向かってb^(*)値が1以上増加する区間が存在しない
ことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体。
【請求項7】
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第1点と前記第2点の間にある第3点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L3,a3,b3)としたとき、
L3が62.5以上80.5以下であり、
a3が-1.8以上5.5以下であり、
b3が4.8以上21.8以下であり、
L1<L3<L2であり、
a1>a3>a2であり、
b1>b3>b2である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体。
【請求項8】
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第3点と前記第2点の間にある第4点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L4,a4,b4)としたとき、
L4が69.1以上82.3以下であり、
a4が-2.1以上1.8以下であり、
b4が3.5以上16.2以下であり、
L1<L3<L4<L2であり、
a1>a3>a4>a2であり、
b1>b3>b4>b2である、
ことを特徴とする請求項7に記載のジルコニア焼結体。
【請求項9】
前記第3点は前記一端から全長の45%の距離にあり、
前記第4点は前記一端から全長の55%の距離にある、
ことを特徴とする請求項8に記載のジルコニア焼結体。
【請求項10】
前記第1点、前記第3点、前記第4点及び前記第2点において、
隣接する2点におけるL^(*)値の差をΔL^(*)とし、
隣接する2点におけるa^(*)値の差をΔa^(*)とし、
隣接する2点におけるb^(*)値の差をΔb^(*)とし、
以下の式1よりΔE^(*)abを算出した場合、
前記第1点と前記第3点間のΔE^(*)abは3.7以上14.3以下であり、
前記第3点と前記第4点間のΔE^(*)abは1.8以上10.5以下であり、
前記第4点と前記第2点間のΔE^(*)abは1.0以上9.0以下である、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のジルコニア焼結体。
[式1]

【請求項11】
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第1点と前記第2点の間にある第3点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L3,a3,b3)としたとき、
L3が69.1以上82.3以下であり、
a3が-2.1以上1.8以下であり、
b3が3.5以上16.2以下であり、
L1<L3<L2であり、
a1>a3>a2であり、
b1>b3>b2である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体。
【請求項12】
一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、
前記一端から前記他端に向かう直線上においてL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度の増減傾向が変化しないことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体。
【請求項13】
前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)値は増加傾向にあり、a^(*)値及びb^(*)値は減少傾向にあることを特徴とする請求項12に記載のジルコニア焼結体。
【請求項14】
前記一端から前記他端までの距離は5mm?18mmであることを特徴とする請求項5?13のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
【請求項15】
前記第1方向と直交する第2方向に沿って色が変化しないことを特徴とする請求項5?14のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
【請求項16】
前記第2方向に延在する直線上の2点において、
前記2点間のL^(*)値の差をΔL^(*)とし、
前記2点間のa^(*)値の差をΔa^(*)とし、
前記2点間のb^(*)値の差をΔb^(*)とし、
以下の式2よりΔE^(*)abを算出した場合、
ΔE^(*)abが1未満であることを特徴とする請求項15に記載のジルコニア焼結体。
[式2]

【請求項17】(削除)
【請求項18】
JISR1607に準拠して測定した破壊靭性が3.5MPa・m^(1/2)以上であることを特徴とする請求項5?16のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
【請求項19】
180℃、1MPaで5時間水熱処理試験を施した後のジルコニア焼結体のX線回折パターンにおいて、2θが30°付近の正方晶由来の[111]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さに対する、2θが28°付近の単斜晶由来の[11-1]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さの比が1以下であることを特徴とする請求項5?16、18のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
【請求項20】
800℃?1200℃で焼成することにより請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体となることを特徴とする積層体。
【請求項21】
1400℃?1600℃で焼結することにより請求項5?16、18、19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体となることを特徴とする積層体。
【請求項22】
請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体を切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする歯科用補綴物。
【請求項23】
請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体を、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする請求項22に記載の歯科用補綴物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-23 
出願番号 特願2017-150418(P2017-150418)
審決分類 P 1 651・ 537- ZDA (C04B)
P 1 651・ 4- ZDA (C04B)
P 1 651・ 853- ZDA (C04B)
P 1 651・ 121- ZDA (C04B)
P 1 651・ 536- ZDA (C04B)
P 1 651・ 851- ZDA (C04B)
P 1 651・ 113- ZDA (C04B)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 小野 久子  
特許庁審判長 服部 智
特許庁審判官 後藤 政博
小川 進
登録日 2018-06-01 
登録番号 特許第6346360号(P6346360)
権利者 クラレノリタケデンタル株式会社
発明の名称 ジルコニア焼結体、ジルコニア組成物及びジルコニア仮焼体、並びに歯科用補綴物  
代理人 加藤 朝道  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 加藤 朝道  
代理人 清水 義憲  
代理人 吉住 和之  
代理人 長谷川 芳樹  

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