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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1363990
異議申立番号 異議2019-700027  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-17 
確定日 2020-06-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6360516号発明「ホットメルト接着剤及びこれを用いてなる使い捨て製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6360516号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第6360516号の請求項1及び3に係る特許を維持する。 特許第6360516号の請求項2に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6360516号(以下「本件特許」という。)の請求項1?3に係る特許についての出願は、
平成28年4月25日〔優先権主張 平成27年4月23日(JP)日本国〕に特願2016-87019号として特許出願され、平成30年6月29日に特許権の設定登録がされ、同年7月18日に特許掲載公報が発行され、その請求項1?3に係る発明の特許に対し、平成31年1月17日に齋藤整(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成31年 3月28日付け 取消理由通知
令和元年 6月 3日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 6月 5日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 7月 5日 意見書(特許異議申立人)
同年 9月 3日付け 訂正拒絶理由通知
同年10月 4日 意見書・手続補正書(特許権者)
同年10月11日 取消理由通知(決定の予告)
同年12月 6日 面接
同年12月11日 上申書(特許権者)
同年12月13日 通知書
令和2年 1月15日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 1月20日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 2月18日 意見書(特許異議申立人)

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和元年6月3日付けの訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げされたものとみなされるところ、
令和2年1月15日付けの訂正請求による訂正(以下「第2訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第6360516号の明細書、特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3からなる一群の請求項について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?7からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「スチレン含有量が40?50質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が100?250mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)、並びに、スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン系ブロック共重合体(A4)を含んでおり、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対してスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)を30?70質量%含有しているスチレン系共重合体(A)100質量部と、
粘着付与剤(B)100?400質量部と、
可塑剤(C)とを含み、
120℃における溶融粘度が6000mPa・s以下であり、
粘着付与剤(B)が、完全水添粘着付与剤(B1)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤とを含有し、且つ完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂10?100質量部を含んでいることを特徴とするホットメルト接着剤。」との記載を、
訂正後の請求項1の「スチレン含有量が40?50質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が100?250mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)、並びに、スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン系ブロック共重合体(A4)を含んでおり、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対してスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)を30?70質量%含有しているスチレン系共重合体(A)100質量部と、
粘着付与剤(B)100?400質量部と、
可塑剤(C)50?150質量部とを含み、
120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6000mPa・s以下であり、
粘着付与剤(B)が、完全水添粘着付与剤(B1)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としての部分水添石油樹脂とを含有し、且つ完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂30?70質量部を含んでいることを特徴とするホットメルト接着剤。」との記載に訂正する。
(また、請求項1を直接的に引用する請求項3も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
訂正前の請求項2を削除するとともに、訂正前の請求項3の「請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤」との記載部分を、訂正後の請求項3の「請求項1に記載のホットメルト接着剤」との記載に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落0016の「可塑剤(C)とを含み、120℃における溶融粘度が6,000mPa・s以下であることを特徴とする。」との記載部分を、訂正後の「可塑剤(C)50?150質量部とを含み、120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6000mPa・s以下であることを特徴とする。」との記載に訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落0017の「環球式軟化点が100℃以下である完全水添粘着付与剤(B1)10?100質量部を含有している」との記載部分を、訂正後の「環球式軟化点が100℃以下である完全水添粘着付与剤(B1)30?70質量部を含有している」との記載に訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の段落0021の「可塑剤(C)とを含み、120℃における溶融粘度が6,000mPa・s以下である」との記載部分を、訂正後の「可塑剤(C)50?150質量部とを含み、120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6,000mPa・s以下である」との記載に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落0090の「(実施例1?10及び比較例1?5)」との記載部分を、訂正後の「(実施例1?9及び比較例1?6)」との記載に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の段落0101の表2の中の「実施例9」及び「実施例10」との記載部分を、それぞれ訂正後の「比較例6」及び「実施例9」との記載に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的
訂正事項1は、本件特許の請求項1について、(a)訂正前の「可塑剤(C)とを含み」との記載部分を「可塑剤(C)50?150質量部とを含み」との記載に限定して改め、(b)訂正前の「120℃における溶融粘度が6000mPa・s以下であり」との記載部分を「120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6000mPa・s以下であり」との記載に限定して改め、(c)訂正前の「完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤とを含有し」との記載部分を「完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としての部分水添石油樹脂とを含有し」との記載に限定して改め、(d)訂正前の「完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂10?100質量部を含んでいる」との記載部分を「完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂30?70質量部を含んでいる」との記載に限定して改める訂正からなるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ.特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、上記ア.で述べたように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
訂正事項1は、(a)本件特許明細書の段落0069の「可塑剤(C)の含有量は…50?150質量部がより好ましい。」との記載、(b)同段落0075の「120℃における溶融粘度は、1500mPa・s以上が好ましく」との記載、(c)同段落0046の「完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としては…部分水添石油樹脂が特に好ましい。」との記載、及び(d)同段落0053の「完全水添粘着付与剤(B1)の含有量は…30?70質量部がより好ましい。」との記載に基づいて導き出されるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア.訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するとともに、訂正前の請求項3のうちの請求項2を引用する場合のものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ.特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項2は、上記ア.で述べたように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
訂正事項2は、上記ア.で述べたように訂正前の請求項2を削除するとともに、訂正前の請求項3のうちの請求項2を引用する場合のものを削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)訂正事項3?7について
ア.訂正の目的について
訂正事項3?7は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ.特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項3?7は、明細書の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲に記載された用語の定義や発明特定事項の技術的範囲を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
訂正事項3?7は、上記ア.で述べたように、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、上記(1)ウ.に示した理由と同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(4)一群の請求項、及び明細書の訂正と関連する請求項について
訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1?3について、その請求項3は請求項1又は2を引用するものであるから、訂正前の請求項1?3に対応する訂正後の請求項1?3は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
また、訂正事項3?7による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1?3であって、訂正事項1及び2と関係する一群の請求項が請求の対象とされているから、訂正事項3?7による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。
したがって、訂正事項1?7による第2訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

3.まとめ
以上総括するに、訂正事項1?7による第2訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2」のとおり第2訂正は容認し得るものであるから、第2訂正による訂正後の請求項1?3に係る発明(以下「本1発明」?「本3発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】スチレン含有量が40?50質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が100?250mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)、並びに、スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン系ブロック共重合体(A4)を含んでおり、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対してスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)を30?70質量%含有しているスチレン系共重合体(A)100質量部と、
粘着付与剤(B)100?400質量部と、
可塑剤(C)50?150質量部とを含み、
120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6000mPa・s以下であり、
粘着付与剤(B)が、完全水添粘着付与剤(B1)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としての部分水添石油樹脂とを含有し、且つ完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂30?70質量部を含んでいることを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項3】 (削除)
【請求項3】請求項1に記載のホットメルト接着剤を用いてなることを特徴とする使い捨て製品。」

第4 取消理由通知の概要
平成31年3月28日付け及び同年10月11日付けの取消理由通知で通知された取消理由の概要は、次の理由1及び2からなるものである。

〔理由1〕本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の第5 1.(1)に記載の刊行物1?9に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許の請求項1?3に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。

〔理由2〕本件特許の請求項1?3に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件特許の請求項1?3に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
1.理由1(進歩性)について
(1)引用刊行物及びその記載事項
刊行物1:特開2008-239931号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証に同じ。)
刊行物2:特開2000-282006号公報(特許異議申立人が提出した甲第2号証に同じ。)
刊行物3:特開2012-12437号公報(特許異議申立人が提出した甲第3号証に同じ。)
刊行物4:特表2014-508832号公報
刊行物5:特開2014-214185号公報(特許異議申立人が提出した甲第5号証に同じ。)
刊行物6:特開2000-119620号公報
刊行物7:特開昭63-189485号公報
刊行物8:特開2014-227461号公報
刊行物9:特開2010-180390号公報

上記刊行物1には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1及び7
「【請求項1】スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体を含み、スチレン-ブタジエンジブロック含有率が0?30重量%、スチレン含有率が20?40重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が2000?20000mPa・sであるスチレン-ブタジエン共重合体組成物(A)の配合量が、全体の5?50重量%であることを特徴とするホットメルト接着剤。…
【請求項7】請求項1?請求項6のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤が用いられていることを特徴とする使い捨て製品。」

摘記1b:段落0002及び0007
「【0002】紙おむつ及び生理用ナプキン等に代表される使い捨て製品には、スチレン系ブロック共重合体をベースとするホットメルト接着剤が広く利用されている。
上記のような使い捨て製品に用いられるホットメルト接着剤に要求される性能としては、接着性及び保持性の高さ、軟化点の高さ、溶融粘度の低さ、熱安定性の高さ等が挙げられる。…
【0007】上記目的を達成するために、本発明にかかるホットメルト接着剤は、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体を含み、スチレン-ブタジエンジブロック含有率が0?30重量%、スチレン含有率が20?40重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が2000?20000mPa・Sであるスチレン-ブタジエン共重合体組成物(A)の配合量が、全体の5?50重量%であることを特徴としている。」

摘記1c:段落0030、0045及び0049
「【0030】粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、例えば、…C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油系樹脂;石油系樹脂の水添又は部分水添樹脂等を挙げることができ、これらの粘着付与樹脂は、単独又は組み合わせて用いることができる。これらの粘着付与樹脂の市販品としては、例えば、…荒川化学社製の商品名アルコンM100、出光石油化学社製の商品名アイマーブS100…等を挙げることができる。…
【0045】得られたホットメルト接着剤は、作業性が良好なことから、160℃での溶融粘度が、30000mPa・s以下であることが好ましい。…
【0049】…塗布温度は、特に限定されないが、120?170℃が好ましく、130?160℃がより好ましい。」

摘記1d:段落0056?0058及び0062
「【0056】(実施例1?4、比較例1?6)
以下の表1に示す組成割合で配合し、各成分を攪拌機付きの溶融混合釜に投入して、150℃で加熱溶融混合することによりホットメルト接着剤を作製した。得られたホットメルト接着剤について、それぞれ溶融粘度、保持力、剥離強度、プローブタックを以下に示す方法によって測定し、その結果を表1に併せて示した。
【0057】なお、表1中、SBS1は、スチレン-ブタジエン共重合体組成物(A)としての旭化成エラストマー社製の商品名アサプレンT-432(スチレン-ブタジエンジブロック含有率25重量%、スチレン含有率30重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度3100mPa・s、リニアタイプ)、SBS2は、スチレン-ブタジエン共重合体組成物(B)としての旭化成エラストマー社製の商品名アサプレンT-439(スチレン-ブタジエンジブロック含有率62重量%、スチレン含有率45重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度25mPa・s、リニアタイプ)、SBS3は、スチレン-ブタジエン共重合体組成物(C)としての旭化成エラストマー社製の商品名アサプレンT-438(スチレン-ブタジエンジブロック含有率70重量%、スチレン含有率35重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度50mPa・s、リニアタイプ)、SBS4は、旭化成エラストマー社製のスチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体組成物、商品名タフプレンA(スチレン-ブタジエンジブロック含有率0重量%、スチレン含有率40重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度650mPa・s)、粘着付与樹脂1は23℃で固形のC5C9系石油樹脂である水添C5C9系石油樹脂(イーストマンケミカル社製商品名リガライトC6100)、粘着付与樹脂2は23℃で液状のC5C9系石油樹脂である液状水添C5C9系石油樹脂(イーストマンケミカル社製商品名リガライトC8010)、オイル1は軟化剤としてのパラフィン系プロセスオイル(出光興産社製商品名PS-32)、安定剤1はヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカル社製商品名イルガノックス1010)、安定剤2はイオウ系酸化防止剤(住友化学工業社製商品名スミライザーTP-D)をそれぞれ意味する。
【0058】[溶融粘度]
溶融粘度は、ホットメルト接着剤を加熱して溶融し、160℃において、溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定した。…
【0062】【表1】



上記刊行物2には、次の記載がある。
摘記2a:請求項15?16
「【請求項15】粘着付与樹脂及び可塑化オイルが含有されていることを特徴とする請求項1?14のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項16】ベースポリマーの合計100重量部に対して、粘着付与樹脂5?500重量部及び可塑化オイル5?350重量部が含有されていることを特徴とする請求項15に記載のホットメルト接着剤組成物。」

摘記2b:段落0008
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来のホットメルト接着剤における問題を解決するもので、その目的とするところは、低い溶融粘度で熱安定性がよく、塗工作業性がよく、しかも低温から高温までに広い温度範囲において高い接着性を有し、さらに製造の際に熱可塑性ブロック共重合がべとつかずに取扱い作業性の良好なホットメルト接着剤を提供することにある。」

摘記2c:段落0083
「【0083】さらに、請求項15及び16の発明について、以下に詳細に説明する。本発明においては、上述の請求項1?14の発明で得られるホットメルト接着剤組成物に、粘着付与剤及び可塑化オイルが含有される。これ等を含有させることにより接着性能をさらに向上させることができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等の中からベースポリマーと相溶性のよいものが単独で或いは混合して用いられる。」

摘記2d:段落0101、0107及び0115?0116
「【0101】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例及び比較例を示す。
(実施例1?26及び比較例1?11)下記の原材料を用いて、これ等を表1?表7に示すような割合で配合し、これを万能混合攪拌機により140℃で溶融混練して、ホットメルト接着剤を製造した。…
【0107】
粘着付与剤 :脂環族系石油樹脂(荒川化学社製のアルコンP-100)
:脂環族系石油樹脂(荒川化学社製のアルコンM-100)
可塑化オイル:出光興産社製のダイアナプロセスオイルNu-80
出光興産社製のダイアナプロセスオイルPW-90
酸化防止剤 :チバガイギー社製のイルガノックス1010…
【0115】【表1】

【0116】【表2】



摘記2e:段落0122?0123
「【0122】
【発明の効果】上述の通り、本発明のホットメルト接着剤は、低い溶融粘度で熱安定性がよく、塗工作業性がよく、しかも、低温から高温までに広い温度範囲において高い接着性を有し、さらにホットメルト接着剤の製造の際に熱可塑性ブロック共重合体がべとつかずに、常温で良好な造粒(ペレット化)ができ、製造時の取扱い作業性が向上する。また、本発明のホットメルト接着剤は、使用の際にべとつきがなく、使用時のハンドリング性が改善される。
【0123】したがって、本発明のホットメルト接着剤は、特に、多数の細かい通気孔を有するポリオレフィンフィルムや不織布が使用され、筋状又は点状又は面状の接着が行われる使い捨てのおしめ、衛生ナプキン、ベットパット等の製造に適している。」

上記刊行物3には、次の記載がある。
摘記3a:段落0012及び0039
「【0012】本発明者等は、鋭意検討を行った結果、熱可塑性ブロック共重合体とα-メチルスチレン系樹脂とを配合し、配合物の貯蔵弾性率を特定範囲にすると、塗工適性および剥離強度に優れ、糊残りが殆どなく、吸収性物品の位置決め用接着剤として優れたホットメルト接着剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0039】本発明において、(B)α-メチルスチレン系樹脂は、α-メチルスチレン重合体又はスチレン-α-メチルスチレン共重合体が用いられる。本発明の態様として、(B)α-メチルスチレン系樹脂は、スチレン-α-メチルスチレン共重合体がより好ましく、特に軟化点85?120℃(JISK2207に規定する環球法で測定)のものがより好ましい。具体的には、イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、クリスタレックス3100(商品名)、クリスタレックス1120(商品名)、クリスタレックス5140(商品名)、三井化学社製のFTR-2120(商品名)等の市販品を例示できる。
(B)α-メチルスチレン系樹脂は、(A)と(B)との総重量100重量部に対し、5?40重量部配合されることが好ましく、更に5?20重量部配合されることがより好ましく、10?20重量部配合されることが特に好ましい。」

摘記3b:段落0058
「【0058】本発明のさらなる好ましい態様として、ホットメルト接着剤は、130℃での粘度(又は溶融粘度)が15000mPa・s以下であることが好ましく、6000mPa・s未満であることが特に好ましい。ホットメルト接着剤を均一に塗工できる粘度は、15000mPa・s以下であり、均一な塗工を容易に行える粘度は、6000mPa・s未満である。粘度が15000mPa・sを超えると、塗工が困難になる。本明細書の130℃での粘度(又は溶融粘度)とは、27番ローターを用い、ブルックフィールド粘度計で測定された値を意味する。」

摘記3c:段落0070?0072、0081及び0086
「【0070】(B)α-メチルスチレン系樹脂…
(B2)スチレン-α-メチルスチレン共重合体(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名))…
【0071】(C)粘着付与樹脂
(C1)芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(荒川化学社製のアルコンM100(商品名))
(C2)環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(エクソンモービル社製のECR179EX(商品名))
(C3)環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(エクソンモービル社製のECR5400(商品名))
【0072】(D)可塑剤…
(D2)パラフィン系オイル(Kukdon Oil&Chem社製のWHITE OIL BROOM350(商品名))…
【0081】【表1】

…【0086】130℃での粘度、剥離試験、糊残り試験の結果から明らかなように、ホットメルト接着剤は、要件1?3の全てを充足することで、塗工適性(低粘度)、保持力(高剥離強度)に優れ、且つ、糊残りの発生を防止でき、吸収性物品の位置決め用接着剤として非常に有用となる。」

上記刊行物4には、次の記載がある。
摘記4a:段落0002及び0017
「【0002】本発明は、約110℃から約130℃の範囲の比較的低温でのホットメルト工程を使用する塗布に適した接着剤に関する。重要なことには、かかる接着剤は、望ましい粘弾性特性を示し、使い捨てオムツなどの使い捨ての物品の製造における弾性アタッチメントの接着に適している。…
【0017】本発明の低塗布温度ホットメルト接着剤は、120℃で約8,500センチポワズ(cP)未満の粘度を含めて、望ましい特性を示す。別の実施形態において、ホットメルト接着剤の粘度は120℃で約8,000cP未満である。かかる粘度では、基材へ容易に塗布することができる。」

摘記4b:段落0022?0024
「【0022】好ましくは、粘着付与樹脂は、典型的にはASTME28によって測定される約105℃未満の環球式軟化点を有する。
【0023】…特定の粘着付与樹脂の望ましさおよび選択は、使用される具体的なスチレンブロックコポリマーに依存し得る。2種以上の粘着付与樹脂の組合せが、本発明の接着剤において使用されてよい。
【0024】加えて、末端ブロック粘着付与樹脂を約30重量%まで接着剤中に含むことが望ましい場合がある。…好ましいのは、商品名KristalexでEastmanから入手可能なアルファ-メチルスチレンをベースとする樹脂である。末端ブロック樹脂は、含まれる場合は、約5から約30重量%、好ましくは約20重量%未満の量で一般的に使用される。」

上記刊行物5には、次の記載がある。
摘記5a:段落0018、0045?0046及び0050?0051
「【0018】本発明のホットメルト接着剤は、溶融粘度が低いために低温塗工が可能で、ポリオレフィン基材への接着性に優れ、かつ耐クリープ性にも優れている。…
【0045】(A1)の25重量%トルエン溶液の25℃での粘度は、250mPa・s以下であり、100?250mPa・sであり、特に130?200mPa・sであることがより好ましい。
【0046】本発明のホットメルト接着剤は、(A1)の25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が上記範囲にあることによって、溶融粘度が著しく低くなり、低温で塗工し易いものとなる。…
【0050】…(A2)スチレンブロック共重合体は、25℃での25重量%トルエン溶液の粘度が好ましくは290?500mPa・sであり、より好ましくは310?400mPa・sである。
【0051】本発明のホットメルト接着剤は、(A2)を含むことによって、糸ゴムの弾性保持(耐クリープ性)と接着性に優れたものとなる。」

摘記5b:段落0059?0061
「【0059】(B)粘着付与樹脂は、エンドブロック樹脂と称される芳香族樹
脂を含むのが好ましい。エンドブロック樹脂は、重合性の不飽和基を有する芳香族モノマーの重合体である。上記芳香族モノマーの典型的な例は、スチレン性モノマーである、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、第3級ブチルスチレン、クロルスチレンなど、インデン及びメチルインデンを含むインデンモノマーを含む。
【0060】本発明のホットメルト接着剤は、エンドブロック樹脂を含むことによって、凝集力が向上して接着性が高くなり、耐クリープ性も向上する。
【0061】本発明では、エンドブロック樹脂としては、α-メチルスチレン樹脂が好ましい。α-メチルスチレン樹脂の市販品としては、イーストマンケミカル社のKRISTALEXシリーズ、PLASTOLYNシリーズが挙げられる。」

上記刊行物6には、次の記載がある。
摘記6a:段落0013?0014
「【0013】粘着付与樹脂としては使用する熱可塑性ブロック共重合体に比較的相溶性の高いものが好ましいが、例えば、(安定化)ロジン、(水添)石油樹脂、(水添)テルペン樹脂、テルペン-石油樹脂の共重合体等、一般的な樹脂類及び粘着付与樹脂の殆ど全てのものを用いることができる。
【0014】但し、水添された樹脂の場合、相溶性の点からは水添率がやや低い方が好ましく、熱安定性、臭気、色調の面からは水添率が高い方が好ましいので、使用条件、目的に応じて適宜選択する必要がある。」

摘記6b:段落0022及び0025
「【0022】…粘着付与樹脂
C9系完全水添石油樹脂(荒川化学社製,商品名「アルコンP-100」)
C9系部分水添石油樹脂(荒川化学社製,商品名「アルコンM-100」)…
【0025】【表1】



摘記6c:段落0027
「【0027】
【発明の効果】本発明の接着剤組成物は以上の構成であるから、セルロース質製品や不織布、、紙製品等の繊維製品、オレフィン系樹脂シートなどに対し、特に湿潤状態における接着性が向上する。特に低温時でのオレフィン系重合体シートに対して良好な接着性を示し、且つ、塗布適性及び作業性に優れるので、例えば、紙おむつなどの使い捨て製品の組み立てに用いると優れた製品を提供することができる。」

上記刊行物7には、次の記載がある。
摘記7a:第2頁左下欄第19行?右下欄第14行
「粘着性付与樹脂(b)は、無色もしくは白色で且つ実質的に無臭である。特に水添された芳香族系石油樹脂がSEBSとの相溶性にすぐれ、耐熱(大気温程度)接着性が優れている点で好ましく用いられ、これは例えば荒川化学工業(株)より「アルコンP、アルコンM」(商品名)として入手出来る。…
更に本発明接着剤組成物には、溶融粘度の低下や柔軟性の付与を目的として可塑化オイル(c)が用いられる。」

摘記7b:第3頁右下欄第11?13行
「水添芳香族系石油樹脂(荒川化学製、アルコンP-100、完全水添品、環球法による軟化温度100℃)60部」

上記刊行物8には、次の記載がある。
摘記8a:段落0055及び0067
「【0055】…これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色?淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、樹脂等の水素化誘導体が好ましい。…
【0067】本発明に係るホットメルト接着剤は、120℃での溶融粘度が20000mPa・s以下、140℃での溶融粘度が5000mPa・s以下と低いため、低温(140℃以下)塗工が可能である。」

摘記8b:段落0079?0080
「【0079】…
(A2-3)トリブロック型スチレン-ブタジエンブロック共重合体(スチレン含有率 30重量%、ジブロック含有率 0重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度1200mPa・s アサプレンT420(旭化成ケミカルズ社製))…
【0080】…
(A3-1)リニア型スチレン-ブタジエンブロック共重合体(スチレン含有率 43重量%、ジブロック含有率 70重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度 360mPa・s アサプレンT438(旭化成ケミカルズ社製))
(A3-2)リニア型スチレン-ブタジエンブロック共重合体(スチレン含有率 43重量%、ジブロック含有率 60重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度 170mPa・s アサプレンT439(旭化成ケミカルズ社製))」

摘記8c:段落0082
「【0082】(B)粘着付与樹脂…
(B2)水添粘着付与樹脂(アルコンM100(荒川化学社製))…
(B5)水添粘着付与樹脂(アイマーブS110(出光興産社製))」

上記刊行物9には、次の記載がある。
摘記9a:段落0059
「【0059】表1に記載の粘着付与樹脂(B)の略号を以下に示す。…
P-100:アイマーブP-100(出光興産社製)、完全水添石油樹脂、軟化点100℃
S-100:アイマーブS-100(出光興産社製)、部分水添石油樹脂、軟化点100℃…
M-100:アルコンM-100(荒川化学工業社製)、部分水添石油樹脂、軟化点100℃」

(2)刊行物1に記載された発明
刊行物1の段落0062(摘記1d)の表1の「実施例4」の記載からみて、刊行物1には、
『SBS2(スチレン含有率45重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度25mPa・sのスチレン-ブタジエン共重合体組成物:商品名アサプレンT-439)12重量部、
SBS3(スチレン含有率35重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度50mPa・sのスチレン-ブタジエン共重合体組成物:商品名アサプレンT-438)6重量部、
SBS1(スチレン含有率30重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度3100mPa・sのスチレン-ブタジエン共重合体組成物:商品名アサプレンT-432)6重量部、
粘着付与樹脂1(23℃で固形のC5C9系石油樹脂である水添C5C9系石油樹脂:商品名リガライトC6100)58.2重量部、
粘着付与樹脂2(23℃で液状のC5C9系石油樹脂である液状水添C5C9系石油樹脂:商品名リガライトC8010)7重量部、
オイル1(軟化剤としてのパラフィン系プロセスオイル:商品名PS-32)10重量部、
安定剤1(ヒンダードフェノール系酸化防止剤:商品名イルガノックス1010)0.4重量部、及び
安定剤2(イオウ系酸化防止剤:商品名スミライザーTP-D)0.4重量部の 合計100重量部からなる、160℃における溶融粘度が3705mPa・sであるホットメルト接着剤。』についての発明(以下「刊1発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本1発明」ともいう。)と刊1発明とを対比する。
刊1発明の「SBS2(スチレン含有率45重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度25mPa・sのスチレン-ブタジエン共重合体組成物:商品名アサプレンT-439)」は、トルエン溶液の濃度を「15重量%」とした場合での粘度を表記しているところ、当該トルエン溶液の濃度を「25重量%」とした場合での粘度は、摘記8bの「(A3-2)リニア型スチレン-ブタジエンブロック共重合体(スチレン含有率 43重量%、ジブロック含有率 60重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度 170mPa・s アサプレンT439(旭化成ケミカルズ社製)」との記載を参酌するに、その「ジブロック含有率」が「60重量%」であって、トリブロック含有率が40重量%であるものの、本件特許明細書の段落0083においては「アサプレンT-439」のジブロック率を考慮せずに、その全量を「スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SB S)共重合対(A1)」として扱っているので、その「ジブロック含有率」を含めた全量で、本1発明の「スチレン含有量が40?50質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が100?250mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)」に相当するものと解する。
刊1発明の「SBS3(スチレン含有率35重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度50mPa・sのスチレン-ブタジエン共重合体組成物:商品名アサプレンT-438)」は、トルエン溶液の濃度を「15重量%」とした場合での粘度を表記しているところ、当該トルエン溶液の濃度を「25重量%」とした場合での粘度は、摘記8bの「(A3-1)…25重量%トルエン溶液の25℃での粘度 360mPa・s アサプレンT438(旭化成ケミカルズ社製)」との記載を参酌するに、本1発明の「スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)」に相当する(本件特許明細書の段落0083の製品名「アサプレンT-438」に対応する)。
刊1発明の「SBS1(スチレン含有率30重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度3100mPa・sのスチレン-ブタジエン共重合体組成物:商品名アサプレンT-432)」は、トルエン溶液の濃度を「25重量%」とした場合での粘度であり、本1発明の「スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)」に相当する(本件特許明細書の段落0083の製品名「アサプレンT-432」に対応する)。
刊1発明の「粘着付与樹脂1(23℃で固形のC5C9系石油樹脂である水添C5C9系石油樹脂:商品名リガライトC6100)」及び「粘着付与樹脂2(23℃で液状のC5C9系石油樹脂である液状水添C5C9系石油樹脂:商品名リガライトC8010)」は、本1発明の「粘着付与剤(B)」に相当する。
刊1発明の「オイル1(軟化剤としてのパラフィン系プロセスオイル:商品名PS-32)」は、刊行物1の段落0037の「軟化剤(可塑剤)としては、…パラフィン系…のプロセスオイル」との記載を参酌するに、本1発明の「可塑剤(C)」に相当する(本件特許明細書の段落0087の「可塑剤…パラフィン系プロセスオイル(C1)」に対応する)。
そして、刊1発明の「SBS2(…)12重量部、SBS3(…)6重量部、SBS1(…)6重量部」は、その「SBS2」が本1発明の「スチレン含有量が40?50質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が100?250mPa・sその「SBS3」と「SBS1」が本1発明の「スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン系ブロック共重合体(A4)」に相当するところ、
刊1発明の「SBS2…12重量部」と「SBS3…6重量部」と「SBS1…6重量部」の合計24重量部に対する「SBS2…12重量部」の配合割合は50重量%となることから、本1発明の「スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対してスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)を30?70質量%含有しているスチレン系共重合体(A)」に相当する。
また、刊1発明の「SBS2(…)12重量部、SBS3(…)6重量部、SBS1(…)6重量部、粘着付与樹脂1(…)58.2重量部、粘着付与樹脂2(…)7重量部、オイル1(…)10重量部、安定剤1(…)0.4重量部、及び安定剤2(…)0.4重量部の合計100重量部からなる…ホットメルト接着剤」の「粘着付与樹脂1…58.2重量部」と「粘着付与樹脂2…7重量部」の合計65.2重量部の配合割合は、SBS樹脂の合計24重量部を100質量部とした場合に、65.2÷24×100=271.67質量部となることから、本1発明の「スチレン系共重合体(A)100質量部」に対する「粘着付与剤(B)100?400質量部」に相当する。
してみると、本1発明と刊1発明は、両者とも『スチレン含有量が40?50質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が100?250mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)、並びに、スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン系ブロック共重合体(A4)を含んでおり、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対してスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)を30?70質量%含有しているスチレン系共重合体(A)100質量部と、粘着付与剤(B)100?400質量部と、可塑剤(C)とを含む、ホットメルト接着剤。』という点において一致し、次の〔相違点α〕?〔相違点γ〕の点において相違する。

〔相違点α〕ホットメルト接着剤の溶融粘度が、本1発明は「120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6000mPa・s以下」であるのに対して、刊1発明は「160℃における溶融粘度が3705mPa・s」である点。

〔相違点β〕粘着付与剤(B)が、本1発明は「完全水添粘着付与剤(B1)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としての部分水添石油樹脂とを含有し、且つ完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂30?70質量部を含んでいる」のに対して、刊1発明は「粘着付与樹脂1(23℃で固形のC5C9系石油樹脂である水添C5C9系石油樹脂:商品名リガライトC6100)58.2重量部」と「粘着付与樹脂2(23℃で液状のC5C9系石油樹脂である液状水添C5C9系石油樹脂:商品名リガライトC8010)7重量部」とを含んでいる点。

〔相違点γ〕可塑剤(C)の含有量が、本1発明は「スチレン系共重合体(A)100質量部」に対し「50?150質量部」であるのに対して、刊1発明は、SBS樹脂の合計24重量部を100質量部とした場合に、10÷24×100=41.67質量部である点。

(4)判断

ア.本1発明の効果について
事案に鑑み、まず、本1発明の効果について検討する。
本1発明の効果について本件特許明細書には以下の記載がある。
「本発明のホットメルト接着剤は、常温における接着力及び保持力、並びに、低温における粘着力に優れている。更に、本発明のホットメルト接着剤は、優れた熱安定性を有し、比較的低温での塗工性にも優れている。」(【0020】)
「ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度は、6000mPa・s以下であり、5500mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましい。ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度が6000mPa・s以下であると、ホットメルト接着剤は、低温塗工性に優れている。ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度は、1500mPa・s以上が好ましく、2000mPa・s以上がより好ましい。ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。なお、ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度は、ホットメルト接着剤を加熱溶融し、120℃において溶融状態のホットメルト接着剤の粘度をブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定した値をいう。」(【0075】)
「ホットメルト接着剤中におけるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の含有量は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対して、30?70質量%が好ましく、40?60質量%がより好ましい。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の含有量が30質量%以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して常温における保持力が向上すると共に低温塗工性が向上する。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の含有量が70質量%以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり、低温における粘着力が向上する。」(【0028】)
「ホットメルト接着剤中の可塑剤(C)の含有量は、スチレン系共重合体(A)100質量部に対し25?250質量部が好ましく、50?150質量部がより好ましい。可塑剤の含有量が25質量部以上であると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が低下し、低温における粘着力及び低温塗工性が向上する。可塑剤の含有量が250質量部以下であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。」(【0069】)


」(【表1】)


」(【表2】)

以上によれば、本1発明は、相違点α?γに係る構成を備えることによって、「120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6000mPa・s以下」、「完全水添粘着付与剤(B1)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としての部分水添石油樹脂とを含有し、且つ完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂30?70質量部を含んでいる」、あるいは、「可塑剤(C)の含有量が、スチレン系共重合体(A)100質量部に対し50?150質量部」を充足しない態様と比べて、常温における接着力及び保持力、並びに、低温における粘着力に優れ、更に、優れた熱安定性を有し、比較的低温での塗工性にも優れているという効果を、同時に全て奏するものであることが説明されている。

加えて、令和2年1月15日付けの意見書の第16頁では「下記<表F>に示す乙第2号証の「4)追試5?7」からわかるように、<刊1発明>の認定の基礎である刊行物1の実施例4のホットメルト接着剤において、粘着付与樹脂として、段落【0030】の教示に従って「部分水添石油樹脂」および「完全水添石油樹脂」を採用した追試6?7のホットメルト接着剤では、「常温における接着力(N/25mm)」は「0.2」程度、「低温における粘着力(N/25mm)」は「0.1」程度と低いものであって、本件明細書の実施例1?9のホットメルト接着剤のように、「12.0?18.2N/25mm」という常温における高い接着力、「0.9?1.2N/25mm」という低温における高い粘着力を示すものではありません。したがって、仮に、<刊1発明>において、刊行物2、6等に記載された「粘着付与樹脂」を採用できたとしても、訂正発明1のホットメルト接着剤のような作用効果が奏されるものではありません。」との主張がなされている。
すなわち、上記「乙第2号証」の試験結果では、スチレン系共重合体(A)100質量部に対し、完全水添石油樹脂(B1)を、0質量部(追試5)、29.1÷24×100=121.25質量部(追試6)、46.6÷24×100=194質量部(追試7)の量で配合したものは、その常温における接着力が「0.2?3.3」程度、その低温における粘着力が「0.1」程度であるのに対し、完全水添石油樹脂(B1)の配合量を「30?70質量部」とした場合には、本件特許明細書の実施例1?9の試験結果にあるように、その常温における接着力は「12.0?18.2N/25mm」で、その低温における粘着力が「0.9?1.2N/25mm」となっていることも確認できる。
してみると、刊行物1?9に記載の技術事項の全てを精査しても、完全水添石油樹脂(B1)の配合量を「30?70質量部」とすることを含め、相違点α?γに係る構成をいずれも備えることによって得られる効果を、当業者が予測できるとはいえない。

(5)本1発明の進歩性についてのまとめ
以上のとおりであるから、刊1発明において相違点α?γに係る構成を備えるものとすることの容易想到性について検討するまでもなく、本1発明は、刊行物1?9に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

(6)特許異議申立人の主張について
令和2年1月20日付けの意見書の第8頁において、特許異議申立人は「この追試には大きな不備がある。…刊行物1発明のホットメルト接着剤の粘着付与剤として、「アイマープP-100」ではなく「アルコンP-100」を用い、アルコンM-100と併用すれば、結果が異なった可能性がある。…このような追試は、多数の実験を行い、その中から所望の結果を導くために、恣意的な選択を行ったと解されても何ら不思議ではないものであり、本件特許の進歩性を認定する材料として採用すべきではない。」と主張している。
しかしながら、完全水添石油樹脂(B1)として、追試6?7で用いられた「アイマープP-100」の代わりに「アルコンP-100」を用いた場合に、その結果が実際に異なることを裏付ける実験成績証明書などの証拠は特許異議申立人により提示されておらず、乙第2号証の追試が「恣意的な選択を行った」ものであるといえる具体的な根拠も見当たらないので、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(7)本3発明について
本3発明は、本1発明を引用し、さらに限定したものであるから、本1発明の進歩性が刊行物1?9によって否定できない以上、本3発明が、刊行物1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。

2.理由2(サポート要件)について
(1)本件発明の解決しようとする課題
本件特許明細書の段落0015を含む発明の詳細な説明の全体の記載からみて、本1及び本3発明の解決しようとする課題は『常温における接着力及び保持力を維持しながらも、低温における粘着力を損なわず、熱安定性も良好であり、比較的低温での塗工が可能なホットメルト接着剤の提供』にあるものと認められる。

(2)B1とB2以外の粘着付与剤Bについて
先の取消理由通知では、天然ロジンなどの広範な粘着付与剤の全てが、実施例で用いられている製品名「アルコンM-100」等の粘着付与剤と同様の有用性を示すといえる根拠が見当たらないので、本1発明の「B1とB2以外の粘着付与剤B」の範囲の全てがサポート要件を満たさない旨の指摘をしていたところ、訂正前の請求項1に記載された「完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤」という広範な範囲の発明特定事項は、第2訂正により「完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としての部分水添石油樹脂」に限定された。
してみると、本件特許明細書の段落0084及び0100?0100には、当該(B1)及び(B2)を除いた粘着付与剤(B)として、製品名「アルコンM-100」の「部分水添石油樹脂(B-1)」と、製品名「アイマープS-110」の「部分水添石油樹脂(B-2)」を、製品名「アルコンP-90」の「完全水添石油樹脂(B1-1)」又は製品名「アイマープP-100」の「完全水添石油樹脂(B1-2)」と併用して用いたものが実施例1?4及び7?9として具体的に記載され、これらのものが上記課題を解決できることを裏付ける試験結果も示されているところ、製品名「アルコンM-100」と製品名「アイマープS-110」は、いずれも「部分水添石油樹脂」に属する粘着付与剤であるから、訂正後の「完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としての部分水添石油樹脂」が、上記課題を解決できると認識できる範囲にあるといえる。
したがって、本件特許の請求項1及びその従属項に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることは明らかなので、本件特許の請求項1及びその従属項の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。

(3)溶融粘度について
先の取消理由通知では、溶融粘度が1500mPa・s未満の低い範囲では、その接着力や保持力が著しく低下するので、本1発明の課題を解決できると認識できる範囲にあるとはいえない旨を指摘していたところ、訂正前の請求項1に記載された「120℃における溶融粘度が6000mPa・s以下」という広範な範囲の発明特定事項は、第2訂正により「120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6000mPa・s以下」に限定されたので、その接着力や保持力が著しく低下する溶融粘度の低すぎる範囲のものが除外されており、先の取消理由通知における「当該「溶融粘度」が1500mPa・s未満の範囲においても、上記課題(特に「常温における接着力及び保持力を維持」するという課題)を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとは認められない。」との指摘にある不備は解消したものといえる。
また、可塑剤(C)の種類と量について、第2訂正により、可塑剤(C)の配合量は「50?150質量部」に限定され、また、可塑剤の種類として「プロセスオイル」と、それ以外の例えば「液状ポリブタジエン」等の可塑剤との有用性が顕著に異なるといえる具体的な根拠も見当たらないので、訂正後の「可塑剤(C)50?150質量部」が、上記課題を解決できると認識できる範囲にないとはいえない。
したがって、本件特許の請求項1及びその従属項に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることは明らかなので、本件特許の請求項1及びその従属項の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。

(4)粘着付与剤の配合量について
先の取消理由通知では、完全水添付与剤(B1)を50質量部含む実施例の記載しかないので、訂正前の請求項1に記載された「完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂10?100質量部を含んでいる」との発明特定事項にある広範な範囲がサポート要件を満たす範囲にない旨の指摘をしていたところ、当該発明特定事項は、第2訂正により「完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂30?70質量部を含んでいる」に限定された。
そして、本件特許明細書の段落0053の「完全水添粘着付与剤(B1)の含有量は…30?70質量部がより好ましい。」との記載をも斟酌するに、訂正後の「30?70質量部」の範囲で、上記『常温における接着力及び保持力を維持しながらも、低温における粘着力を損なわず、熱安定性も良好であり、比較的低温での塗工が可能なホットメルト接着剤の提供』という課題を解決できることは明らかである。
したがって、本件特許の請求項1及びその従属項に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることは明らかなので、本件特許の請求項1及びその従属項の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。

3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人が主張する申立理由1(進歩性)は、本1及び本3発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に違反するものというものであって、この理由は、上記第4〔理由1〕において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。
特許異議申立人が主張する申立理由2(進歩性)は、本2及び本3発明は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に違反するものというものであって、この理由は、上記第4〔理由1〕において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。
特許異議申立人が主張する申立理由3(サポート要件)は、(a)「完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤」についてと、(b)「120℃における溶融粘度が6000mPa・s以下」についてと、(c)「完全水添石油樹脂10?100質量部を含む」について、特許請求の範囲まで、明細書において開示された内容を拡張ないし一般化することができないというものであって、この理由は、上記第4〔理由2〕において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。

第6 むすび
以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、訂正後の本1及び本3発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本1及び本3発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、訂正前の請求項2は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ホットメルト接着剤及びこれを用いてなる使い捨て製品
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温における接着力及び保持力を損なわず、低温における粘着力も良好な、比較的低温での塗工が可能な低温塗工型のホットメルト接着剤に関し、特に、紙おむつなどの使い捨て製品を製造するために好適に用いられるホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙おむつや生理用ナプキンなどの使い捨て製品には、ポリオレフィン系樹脂フィルム、不織布、ティッシュ、及び天然ゴムなどの構成部材が用いられている。これらの構成部材を、ホットメルト接着剤を用いて接着することによって使い捨て製品が組み立てられている。
【0003】
使い捨て製品に用いられるホットメルト接着剤としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とを共重合させてなる熱可塑性ブロック共重合体を主成分とするゴム系ホットメルト接着剤、及びエチレン-プロピレン共重合体を主成分とするオレフィン系ホットメルト接着剤が用いられている。なかでも、オレフィン系ホットメルト接着剤よりも塗工性及び凝集力が優れていることから、ゴム系ホットメルト接着剤が広く用いられている。
【0004】
ホットメルト接着剤は、各種被着体に塗工される前に、加熱溶融タンク内で加熱溶融される。加熱溶融させたホットメルト接着剤の塗工方法としては、接触塗工方法、非接触塗工方法がある。接触塗工方法としては、スロットコーター塗工、ロールコーター塗工などが挙げられる。非接触塗工方法としては、スパイラル塗工、オメガ塗工、カーテンスプレー塗工などが挙げられる。なかでも、適度な接着力を発現するために必要なホットメルト接着剤の塗布量が比較的少なく、使い捨て製品の風合いを損なわないことから、非接触塗工方法が好んで用いられる。
【0005】
一般的に、紙おむつや生理用ナプキンなどの使い捨て製品の製造に用いられるゴム系ホットメルト接着剤においては、適切な接着力及び保持力を発現させるため、ポリマー成分が15?35質量%含有されており、さらに粘着付与剤及び可塑剤を配合することでホットメルト使用に適した溶融粘度としている。かかるホットメルト接着剤は、一般的に、160℃における溶融粘度が3000mPa・s以上となるため、その使用時には、150?170℃でホットメルト接着剤を溶融させ各種基材へ塗布される。
【0006】
150?170℃の高温でホットメルト接着剤が基材へ塗布されると、ホットメルト接着剤の熱により基材の損傷がおこり、紙おむつや生理用ナプキンなどの使い捨て製品の外観及び性能を損なう可能性があるという問題がある。更に、ホットメルト接着剤を使用する作業従事者の安全性の観点からも、より低温、好ましくは120℃以下でホットメルト接着剤を塗布することが望まれる。
【0007】
比較的低温での塗布を可能とするためには、スチレン系ブロック共重合体の配合量を減らし、ホットメルト接着剤の溶融粘度を下げることが考えられる。しかしながら、かかる方法ではホットメルト接着剤の保持力も低下し、ホットメルト接着剤としての性能を著しく損なう恐れがある。
【0008】
一般的にホットメルト接着剤は、各種被着体に塗布される前に、加熱溶融タンク内で溶融される。ホットメルト接着剤の熱安定性が悪いと、タンク内でホットメルト接着剤の劣化が進行し、ホットメルト接着剤の溶融粘度が低下する恐れがある。かかる場合、ホットメルト接着剤は所定の性能を発現することが困難となる虞れがあり、使い捨て製品の製造においては、熱安定性の良好なホットメルト接着剤が望まれる。
【0009】
特許文献1には、スチレン系ブロック共重合体の配合量を少なくしても保持力を向上させることができるホットメルト接着剤が開示されている。
【0010】
特許文献2には、約110?130℃の範囲の比較的低温での塗布が可能な、使い捨て製品の弾性アタッチメント接着に好適なホットメルト接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】 特開2008-239931号公報
【特許文献2】 特表2014-508832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のホットメルト接着剤は、160℃における溶融粘度が3500mPa・s以上であり、120℃以下での非接触塗工には適さない。そのため、ホットメルト接着剤の適度な接着力及び保持力を維持しながらも、溶融粘度が低く、120℃以下での非接触塗工が可能なホットメルト接着剤が望まれている。
【0013】
特許文献2のホットメルト接着剤は、ポリマー成分としてスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体のみからなり、一般的にスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体は加熱による分子切断が起こりやすいため、熱安定性の改良が望まれる。
【0014】
又、比較的低温でホットメルト接着剤を基材へ塗布したとき、別の基材と貼り合わされ圧着されるまでに、ホットメルト接着剤が冷却され、ホットメルト接着剤の粘着力が低下するおそれがある。特に冬場での使用に関しては、ホットメルトの冷却による粘着力の低下がより促進される。かかる場合、粘着力が低下したホットメルト接着剤では基材同士の貼り合せが適切に行われず、紙おむつなど使い捨て製品の製造において問題を生じてしまう。そのため、比較的低温で塗布されても粘着力を損なわないホットメルト接着剤が望まれる。
【0015】
本発明は、上記事情を鑑み、常温における接着力及び保持力を維持しながらも、低温における粘着力を損なわず、熱安定性も良好であり、比較的低温での塗工が可能なホットメルト接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のホットメルト接着剤は、スチレン含有量が40?50質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が100?250mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)、並びに、スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン系ブロック共重合体(A4)を含んでおり、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対してスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)を30?70質量%含有しているスチレン系共重合体(A)100質量部と、
粘着付与剤(B)100?400質量部と、
可塑剤(C)50?150質量部とを含み、
120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6,000mPa・s以下であることを特徴とする。
【0017】
上記ホットメルト接着剤において、粘着付与剤(B)は、スチレン系共重合体(A)100質量部に対して環球式軟化点が100℃以下である完全水添粘着付与剤(B1)30?70質量部を含有していることを特徴とする。
【0018】
上記ホットメルト接着剤において、粘着付与剤(B)は、環球式軟化点が95℃以下である末端ブロック粘着付与剤(B2)を含んでいることを特徴とする。
【0019】
本発明の使い捨て製品は、上記ホットメルト接着剤を用いてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のホットメルト接着剤は、常温における接着力及び保持力、並びに、低温における粘着力に優れている。更に、本発明のホットメルト接着剤は、優れた熱安定性を有し、比較的低温での塗工性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記ホットメルト接着剤を詳細に説明する。本発明のホットメルト接着剤は、スチレン系共重合体(A)と、粘着付与剤(B)100?400質量部と、可塑剤(C)50?150質量部とを含み、120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6,000mPa・s以下であることを特徴とする。
【0022】
(スチレン系共重合体(A))
本発明のホットメルト接着剤は、スチレン系共重合体(A)を含んでいる。
【0023】
スチレン系共重合体(A)は、
スチレン含有量が40?50質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が100?250mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)と、
スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン系ブロック共重合体(A4)とを含有している。
【0024】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)は、水添されていても水添されていなくてもよいが、ホットメルト接着剤の低温塗工性が優れているので、未水添であることが好ましい。
【0025】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)中のスチレン含有量は、40?50質量%であり、42?48質量%が好ましく、44?46質量%がより好ましい。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)のスチレン含有量が40質量%以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)のスチレン含有量が50質量%以下であると、ホットメルト接着剤の低温における粘着力が向上する。なお、本発明において、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体中のスチレン含有量とは、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体中におけるスチレンブロックの総含有割合をいう。
【0026】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の25%トルエン溶液粘度は、100?250mPa・sであり、120?230mPa・sが好ましく、140?210mPa・sがより好ましく、160?190mPa・sが特に好ましい。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の25%トルエン溶液粘度が100mPa・s以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の25%トルエン溶液粘度が250mPa・s以下であると、ホットメルト接着剤の低温塗工性が向上する。
【0027】
本発明において、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の25%トルエン溶液粘度は、トルエンを溶媒とする25質量%濃度のスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体溶液の23℃における粘度をいう。25%トルエン溶液粘度は、各種粘度計を用いて測定することができ、例えば、ブルックフィールドBM型粘度計を用いて測定できる。なお、測定時に使用されるスピンドルは、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の25質量%トルエン溶液の粘度に応じて適宜選択して用いられればよく、例えば、スピンドルNo.2が用いられる。
【0028】
ホットメルト接着剤中におけるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の含有量は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対して、30?70質量%が好ましく、40?60質量%がより好ましい。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の含有量が30質量%以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して常温における保持力が向上すると共に低温塗工性が向上する。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の含有量が70質量%以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり、低温における粘着力が向上する。
【0029】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)は、市販されている製品を用いることができる。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)の市販品は、例えば、旭化成ケミカルズ社製の商品名「アサプレンT-439」などが挙げられる。
【0030】
スチレン系ブロック共重合体(A4)は、スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいる。
【0031】
スチレン系ブロック共重合体(A4)は、ホットメルト接着剤の熱安定性が向上するので、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)を含有していることが好ましい。
【0032】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)は、水添されていても水添されていなくてもよいが、ホットメルト接着剤の低温塗工性が優れているので、未水添であることが好ましい。
【0033】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)中におけるスチレン含有量は、15?40質量%であり、20?38質量%が好ましく、25?37質量%がより好ましく、30?36質量%が特に好ましい。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)中におけるスチレン含有量が15質量%以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)中におけるスチレン含有量が40質量%以下であると、ホットメルト接着剤の低温における粘着力が向上する。
【0034】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)の25%トルエン溶液粘度は、300?3500mPa・sであり、350?2500mPa・sが好ましく、400?2000mPa・sがより好ましい。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)の25%トルエン溶液粘度が300mPa・s以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)の25%トルエン溶液粘度が3500mPa・s以下であると、ホットメルト接着剤の低温塗工性が向上する。
【0035】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)は、市販されている製品を用いることができる。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)の市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の商品名「アサプレンT-438」及び「アサプレンT-432」などが挙げられる。
【0036】
ホットメルト接着剤中におけるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)の含有量は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対して、30?70質量%が好ましく、40?60質量%がより好ましい。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)の含有量が30質量%以上であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり、低温における粘着力が向上する。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)の含有量が70質量%以下であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して常温における保持力が向上すると共に低温塗工性が向上する。
【0037】
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)は、水添されていても水添されていなくてもよいが、ホットメルト接着剤の低温塗工性が優れているので、未水添であることが好ましい。
【0038】
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)は、市販されている製品を用いることができる。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)の市販品としては、例えば、日本ゼオン社製の商品名「クインタック3433N」、Kraton社製の商品名「D1161」などが挙げられる。
【0039】
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)中におけるスチレン含有量は、10?40質量%が好ましく、11?35質量%がより好ましく、12?30質量%が更に好ましく、13?25質量%が特に好ましい。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)中におけるスチレン含有量が10質量%以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)中におけるスチレン含有量が40質量%以下であると、ホットメルト接着剤の低温における粘着力が向上する。
【0040】
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)の25%トルエン溶液粘度は、300?3500mPa・sが好ましく、400?2000mPa・sがより好ましい。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)の25%トルエン溶液粘度が300mPa・s以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)の25%トルエン溶液粘度が3500mPa・s以下であると、ホットメルト接着剤の低温塗工性が向上する。
【0041】
ホットメルト接着剤中におけるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)の含有量は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対して、30?70質量%が好ましく、40?60質量%がより好ましい。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)の含有量が30質量%以上であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり、低温における粘着力が向上する。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)の含有量が70質量%以下であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して常温における保持力が向上すると共に低温塗工性が向上する。
【0042】
ホットメルト接着剤中におけるスチレン系ブロック共重合体(A4)の含有量は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対して、30?70質量%が好ましく、40?60質量%がより好ましい。スチレン系ブロック共重合体(A4)の含有量が30質量%以上であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり、低温における粘着力が向上する。スチレン系ブロック共重合体(A4)の含有量が70質量%以下であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して常温における保持力が向上すると共に低温塗工性が向上する。
【0043】
スチレン系共重合体(A)は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)と、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン系ブロック共重合体(A4)とを含んでいるが、これらブロック共重合体以外のスチレン系ブロック共重合体を含んでいてもよい。このようなスチレン系ブロック共重合体としては、特に限定されず、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)及びこれらの水素添加物などが挙げられる。水素添加物としては、例えば、スチレン-ブタジエン/ブチレン-スチレン(SBBS、SBSの部分水添物)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS、SBSの部分水添物)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS、SISの完全水添物)、スチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEEPS)などが挙げられる。
【0044】
(粘着付与剤(B))
本発明のホットメルト接着剤は、粘着付与剤(B)を含んでいる。粘着付与剤(B)としては、特に限定されず、例えば、完全水添粘着付与剤(B1)、末端ブロック粘着付与剤(B2)、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、テルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂に水素を部分的に添加した部分水添物;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂などの石油樹脂;上記石油樹脂が部分的に水素添加された部分水添石油樹脂などが挙げられる。なお、粘着付与剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0045】
粘着付与剤(B)は、市販されている製品を用いることができる。完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤の市販品としては、例えば、トーネックス社製の商品名「エスコレッツ5600」、丸善石油化学社製の商品名「マルカクリアーH」、荒川化学社製の商品名「アルコンM-100」、出光興産社製の商品名「アイマーブS-100」、トーネックス社製の商品名「ECR231C」、イーストマンケミカル社製の商品名「リガライトR7100」、イーストマンケミカル社製の商品名「リガライトC6100」、Kolon社製の商品名「スコレッツSU400」などが挙げられる。
【0046】
完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としては、ホットメルト接着剤の低温塗工性及び熱安定性に優れていることから、未水添の粘着付与剤及び部分水添された粘着付与剤が好ましく、未水添の石油樹脂及び部分水添石油樹脂がより好ましく、部分水添石油樹脂が特に好ましい。
【0047】
完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤の環球式軟化点温度は、ホットメルト接着剤の常温における接着力及び保持力並びに熱安定性に優れていることから、95℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤の環球式軟化点温度は、ホットメルト接着剤が柔らかくなり、低温塗工性が向上するので、125℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。なお、本発明において、粘着付与剤の環球式軟化点温度は、JIS K2207に準拠して測定された温度をいう。
【0048】
ホットメルト接着剤中における粘着付与剤(B)の含有量は、スチレン系共重合体(A)100質量部に対して100?400質量部であり、200?350質量部が好ましい。粘着付与剤(B)の含有量が100質量部以上であると、ホットメルト接着剤の常温における接着力が向上する。粘着付与剤(B)の含有量が400質量部以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり、低温における粘着力が向上する。
【0049】
ホットメルト接着剤中において、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤の含有量は、スチレン系共重合体(A)100質量部に対して、200?400質量部が好ましく、250?350質量部がより好ましい。完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤の含有量が200質量部以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤の含有量が400質量部以下であると、ホットメルト接着剤の低温における粘着力が向上する。
【0050】
粘着付与剤(B)は、完全水添粘着付与剤(B1)を含有していることが好ましく、完全水添粘着付与剤(B1)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤とを含有していることがより好ましい。完全水添粘着付与剤(B1)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤とを含有していると、ホットメルト接着剤は、常温における接着力及び保持力、並びに、低温における粘着力が向上する。完全水添粘着付与剤(B1)とは、粘着付与剤中の全ての二重結合に水素が付加されている粘着付与剤をいう。完全水添粘着付与剤(B1)としては、特に限定されず、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂などの石油樹脂が完全に水素添加された完全水添石油樹脂、テルペン樹脂が完全に水素添加された完全水添テルペン樹脂などが挙げられ、完全水添石油樹脂が好ましい。
【0051】
完全水添粘着付与剤(B1)は市販されている製品を用いることができる。完全水添粘着付与剤(B1)の市販品としては、例えば、荒川化学社製の商品名「アルコンP-90」、荒川化学社製の商品名「アルコンP-100」、出光興産社製の商品名「アイマーブP-100」、安原化学社製の商品名「クリアロンP85」などが挙げられる。
【0052】
完全水添粘着付与剤(B1)の環球式軟化点は100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。完全水添粘着付与剤(B1)の環球式軟化点が100℃以下であると、ホットメルト接着剤の低温における粘着力が向上する。完全水添粘着付与剤(B1)の環球式軟化点は80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましい。完全水添粘着付与剤(B1)の環球式軟化点が80℃以上であると、ホットメルト接着剤の常温における接着力が向上する。
【0053】
ホットメルト接着剤中における完全水添粘着付与剤(B1)の含有量は、スチレン系共重合体(A)100質量部に対して10?100質量部が好ましく、30?70質量部がより好ましい。完全水添粘着付与剤(B1)の含有量が10質量部以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して常温における保持力が向上すると共に低温塗工性が向上する。完全水添粘着付与剤(B1)の含有量が100質量部以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり、低温における粘着力が向上する。
【0054】
粘着付与剤(B)は、末端ブロック粘着付与剤(B2)を含有していることが好ましく、末端ブロック粘着付与剤(B2)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤とを含有していることがより好ましい。末端ブロック粘着付与剤(B2)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤とを含有していると、ホットメルト接着剤は、常温における接着力及び保持力、並びに、低温における粘着力が向上する。
【0055】
末端ブロック粘着付与剤(B2)は、スチレン系モノマーの単独重合体又は共重合体、及び、スチレン系モノマーとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体である。末端ブロック粘着付与剤(B2)は、スチレン系ブロック共重合体のスチレンブロックに対して相溶性を有する。
【0056】
スチレン系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、インデン、ビニルトルエン又はこれらの誘導体などが挙げられる。なお、スチレン系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0057】
末端ブロック粘着付与剤(B2)の環球式軟化点は、95℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。環球式軟化点が95℃以下であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力を維持しつつ、ホットメルト接着剤の溶融粘度を低下させて低温塗工性を向上させることができる。末端ブロック粘着付与剤(B2)の環球式軟化点は、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましい。末端ブロック粘着付与剤(B2)の環球式軟化点が80℃以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。
【0058】
末端ブロック粘着付与剤(B2)は市販されている製品を用いることができる。末端ブロック粘着付与剤(B2)の市販品としては、例えば、イーストマンケミカル社製の商品名「クリスタレックス3085」、三井化学社製の商品名「FTR6100」などが挙げられる。
【0059】
ホットメルト接着剤中における末端ブロック粘着付与剤(B2)の含有量は、スチレン系共重合体(A)100質量部に対して、5?35質量部が好ましく、10?25質量部がより好ましい。末端ブロック粘着付与剤(B2)の含有量が5質量部以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。末端ブロック粘着付与剤(B2)の含有量が35質量部以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり、低温における粘着力が向上する。
【0060】
粘着付与剤(B)が、完全水添粘着付与剤(B1)及び/又は末端ブロック粘着付与剤(B2)などの複数種類の粘着付与剤を含有している場合、全ての粘着付与剤の合計量がスチレン系共重合体(A)100質量部に対して100?400質量部となるように調整する必要がある。
【0061】
(可塑剤)
ホットメルト接着剤は、可塑剤(C)を含有する。可塑剤(C)としては、特に限定されず、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び芳香族系プロセスオイルなどのプロセスオイルなどが挙げられる。なかでも、パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイルが好ましく、ホットメルト接着剤の熱安定性、常温における接着力及び保持力が向上するので、ナフテン系プロセスオイルがより好ましい。可塑剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0062】
パラフィン系プロセスオイルは、脂肪族系鎖状炭化水素を含む。パラフィン系プロセスオイルに含まれる脂肪族系鎖状炭化水素の炭素数は、特に制限されないが、16?40が好ましく、20?30がより好ましい。
【0063】
パラフィン系プロセスオイルの数平均分子量(Mn)は、100?1500が好ましく、250?1000がより好ましい。数平均分子量(Mn)が100以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して常温における保持力が向上すると共に低温塗工性が向上する。数平均分子量(Mn)が1500以下であると、ホットメルト接着剤の低温塗工性が向上する。
【0064】
パラフィン系プロセスオイルとしては市販されている製品を用いることができる。パラフィン系プロセスオイルの市販品としては、例えば、日本油脂製の商品名「NAソルベント」、出光興産製の商品名「PW-380」、商品名「ダイアナフレシアS32」、商品名「PS-32」、製品名「ダイアナプロセスオイルPS-32」及び商品名「IP-ソルベント2835」、三光化学工業製の商品名「ネオチオゾール」などが挙げられる。
【0065】
ナフテン系プロセスオイルは、脂肪族系環状炭化水素を含めば特に制限されないが、ナフテン系プロセスオイルに含まれる脂肪族系環状炭化水素の炭素数は、3以上であることが好ましく、3?8であることがより好ましい。
【0066】
ナフテン系プロセスオイルの数平均分子量(Mn)は、100?1500が好ましく、250?1000がより好ましい。数平均分子量(Mn)が100以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して常温における保持力が向上すると共に低温塗工性が向上する。数平均分子量(Mn)が1500以下であると、ホットメルト接着剤の低温塗工性が向上する。
【0067】
ナフテン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。ナフテン系プロセスオイルの市販品としては、例えば、出光興産社製の商品名「ダイアナフレシアN28」、商品名「ダイアナフレシアU46」及び商品名「ダイアナプロセスオイルNR」、シェル化学社製の製品名「シェルフレックス371N」)などが挙げられる。
【0068】
なお、本発明において、パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイルの数平均分子量(Mn)とは、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いて、標準ポリスチレンで換算することにより得られる測定値のことを意味する。
【0069】
ホットメルト接着剤中の可塑剤(C)の含有量は、スチレン系共重合体(A)100質量部に対し25?250質量部が好ましく、50?150質量部がより好ましい。可塑剤の含有量が25質量部以上であると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が低下し、低温における粘着力及び低温塗工性が向上する。可塑剤の含有量が250質量部以下であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。
【0070】
本発明のホットメルト接着剤は、その物性を損なわない範囲内において、ワックスを含むことができる。ワックスとしては、特に限定されず、例えば、シュラックワックス、蜜ろうなどの動物系ワックス、カルナバワックス、はぜろうなどの植物系ワックス、パラフィンワックス、マクロクリスタリンワックスなどの鉱物系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックスを含むポリオレフィン系ワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。ワックスとしては、ホットメルト接着剤の熱安定性を低下させることがなく、ホットメルト接着剤の常温における接着力も優れているので、ポリオレフィン系ワックスが好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックスがより好ましい。
【0071】
ワックスとしては、市販品されている製品を用いることができる。ポリオレフィン系ワックスの市販品としては、例えば、Honeywell社製の製品名「A-C7」、INNOSPEC社製の商品名「VISCOWAX 122」などが挙げられる。エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックスの市販品としては、例えば、Honeywell社製の商品名「A-C400」及び製品名「A-C405S」、INNOSPEC社製の商品名「VISCOWAX 334」及び商品名「VISCOWAX 343」などが挙げられる。
【0072】
ホットメルト接着剤は、その物性を損なわない範囲内で、酸化防止剤を含んでいることが好ましい。酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0073】
ホットメルト接着剤は、その物性を損なわない範囲内において、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0074】
ホットメルト接着剤は、その物性を損なわない範囲内において、液状ゴムを含んでいてもよい。液状ゴムとしては、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン及びこれらの水添樹脂などが挙げられる。液状ゴムは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0075】
ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度は、6000mPa・s以下であり、5500mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましい。ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度が6000mPa・s以下であると、ホットメルト接着剤は、低温塗工性に優れている。ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度は、1500mPa・s以上が好ましく、2000mPa・s以上がより好ましい。ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上であると、ホットメルト接着剤の常温における保持力が向上する。なお、ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度は、ホットメルト接着剤を加熱溶融し、120℃において溶融状態のホットメルト接着剤の粘度をブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定した値をいう。
【0076】
本発明のホットメルト接着剤を用いて二個の被着体を接着する方法としては、例えば、次の方法が用いられる。先ず、ホットメルト接着剤を加熱することにより溶融状態とする。次に、溶融状態のホットメルト接着剤を一方の被着体に塗工する。そして、一方の被着体に他方の被着体を積層した後、ホットメルト接着剤を冷却固化させ、これにより二個の被着体を接着することができる。
【0077】
加熱溶融させたホットメルト接着剤の被着体への塗工方法としては、特に制限されず、公知の方法が用いられる。例えば、スロットコーター塗工、ロールコーター塗工、スパイラル塗工、オメガ塗工、コントロールシーム塗工、カーテンスプレー塗工、及びドット塗工などが挙げられる。この中でも特に、使い捨て製品の風合いが良好なことから、スパイラル塗工、オメガ塗工、カーテンスプレー塗工が好ましい。
【0078】
本発明のホットメルト接着剤は、使い捨て製品の製造に好適に用いられる。使い捨て製品としては、特に限定されないが、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、ペットシート、病院用ガウン、及び手術用白衣などのいわゆる衛生材料などが挙げられる。
【0079】
使い捨て製品は、特に制限されないが、第1の構成部材と、第2の構成部材と、本発明のホットメルト接着剤とを含有している。ホットメルト接着剤によって、第1の構成部材が第2の構成部材に接着一体化される。
【0080】
第1の構成部材及び第2の構成部材としては、使い捨て製品に用いられている構成部材であればよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルム、不織布、織布、天然ゴム、親水性多孔質基材などが挙げられる。構成部材は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。また、親水性多孔質基材としては、セルロース又はコットンを含む多孔質基材、及び親水化処理が施された多孔質基材などが挙げられる。セルロース又はコットンを含む多孔質基材としては、例えば、ティッシュなどが挙げられる。また、親水化処理が施された多孔質基材としては、親水化処理が施された不織布や織布などが挙げられる。
【実施例】
【0081】
以下に本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0082】
後記する実施例及び比較例において、ホットメルト接着剤の製造に用いたスチレン系共重合体(A)、粘着付与剤(B)、可塑剤(C)、ワックス、及び酸化防止剤のそれぞれについて、以下に詳細な説明を記載する。
【0083】
〔スチレン系共重合体(A)〕
(スチレン系ブロック共重合体(A1))
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SBS)共重合体(A1)(旭化成ケミカルズ社製 製品名「アサプレンT-439」、未水添、スチレン含有量:45質量%、25%トルエン溶液粘度:170mPa・s)
(スチレン系ブロック共重合体(A2))
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SBS)共重合体(A2-1)(旭化成ケミカルズ社製 製品名「アサプレンT-438」、未水添、スチレン含有量:35質量%、25%トルエン溶液粘度:470mPa・s)
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SBS)共重合体(A2-2)(旭化成ケミカルズ社製 製品名「アサプレンT-432」、未水添、スチレン含有量:30質量%、25%トルエン溶液粘度3100mPa・s)
(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3))
・スチレン-イソプレン-スチレンブロック(SIS)共重合体(A3)(日本ゼオン社製 製品名「クインタック3433N」、未水添、スチレン含有量:15質量%、25%トルエン溶液粘度810mPa・s)
【0084】
〔粘着付与剤〕
・部分水添石油樹脂(B-1)(荒川化学社製 製品名「アルコンM-100」、脂肪族石油炭化水素樹脂、環球式軟化点:100℃)
・部分水添石油樹脂(B-2)(出光興産社製 製品名「アイマーブS-110」、脂肪族芳香族石油炭化水素樹脂、環球式軟化点:110℃)
【0085】
(完全水添粘着付与剤(B1))
・完全水添石油樹脂(B1-1)(荒川化学社製、製品名「アルコンP-90」、脂肪族石油炭化水素樹脂、環球式軟化点:90℃)
・完全水添石油樹脂(B1-2)(出光興産社製 製品名「アイマーブP-100」、脂肪族芳香族石油炭化水素樹脂、環球式軟化点:100℃)
【0086】
(末端ブロック粘着付与剤(B2))
・末端ブロック粘着付与剤(B2-1)(イーストマンケミカル社製 製品名「クリスタレックス3085」、スチレン-α-メチルスチレン共重合体、未水添、環球式軟化点:85℃)
・末端ブロック粘着付与剤(B2-2)(三井化学社製 製品名「FTR6100」、スチレンモノマーと脂肪族系モノマーとの共重合体、環球式軟化点:95℃)
【0087】
〔可塑剤〕
・パラフィン系プロセスオイル(C1)(出光興産社製 製品名「ダイアナプロセスオイルPS-32」、数平均分子量:980)
・ナフテン系プロセスオイル(C2)(シェル化学社製 製品名「シェルフレックス371N」、数平均分子量:1500)
【0088】
〔ワックス〕
・エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックス(ポリエチレンに酢酸ビニルからなる分子鎖が枝状についているグラフト共重合体、融点94℃、Honeywell社製 製品名「A-C405S」)
【0089】
〔酸化防止剤〕
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製 製品名「IRGANOX1010」)
【0090】
(実施例1?9及び比較例1?6)
それぞれ上述した、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロック共重合体(A1)、(A2-1)及び(A2-2)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロック共重合体(A3)、部分水添石油樹脂(B-1)及び(B-2)、完全水添石油樹脂(B1-1)及び(B1-2)、末端ブロック粘着付与剤(B2-1)及び(B2-2)、パラフィン系プロセスオイル(C1)、ナフテン系プロセスオイル(C2)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックス及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を、それぞれ表1及び表2に示した配合量で、加熱装置を備えた攪拌混練機中に投入した後、145℃で90分に亘って加熱しながら混練することにより、ホットメルト接着剤を製造した。
【0091】
(評価)
ホットメルト接着剤について、上記の要領で120℃における溶融粘度を測定した。ホットメルト接着剤について、下記に示す要領に従って、粘度維持率、低温塗工性、常温における接着力及び保持力、並びに、低温における粘着力を測定した。これらの結果を表1及び表2に示した。
【0092】
(粘度維持率)
ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度(養生前溶融粘度)を測定した。次に、ホットメルト接着剤をガラス瓶に入れて180℃条件下で3日間に亘って放置した。その後、ホットメルト接着剤を120℃に加熱し、120℃において溶融状態のホットメルト接着剤の溶融粘度(養生後溶融粘度)をブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定し、下記式に基づいて粘度維持率を算出した。
粘度維持率(%)=100×(養生後溶融粘度)/(養生前溶融粘度)
【0093】
(低温塗工性)
ホットメルト接着剤を120℃に加熱することにより溶融させた後、オメガ塗工によってポリエチレンテレフタレートフィルム上にホットメルト接着剤を6g/m^(2)の塗布量、ライン速度300m/分の条件下にて塗布した。しかる後、ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上に、別のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層して積層体を作製した。積層体にその厚み方向に23℃、圧力50gf/cm^(2)(4903Pa)の条件で0.01秒間、プレスして圧着した。ポリエチレンテレフタレートフィルムを透してホットメルト接着剤を目視観察し、オメガ塗工のパターンが綺麗に確認できる場合は低温塗工性を「◎」、わずかな乱れはあるがオメガ塗工のパターンが確認できる場合は低温塗工性を「○」、パターンが乱れている場合は低温塗工性を「×」として評価した。
【0094】
(常温における接着力)
ホットメルト接着剤を120℃に加熱することにより溶融させた後、スロット塗工によってポリエチレンテレフタレートフィルム上にホットメルト接着剤を塗布量50g/m^(2)、塗布幅25mmの条件で塗布した。しかる後、ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上に、表面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムを積層して積層体を作製した。積層体をその厚み方向に23℃、圧力50gf/cm^(2)(4903Pa)の条件で0.01秒間、プレスして圧着した。積層体から離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、ポリエチレンテレフタレートのホットメルト接着剤塗布面上に、非通気タイプのポリエチレンフィルムを積層した後、ポリエチレンフィルム上に2kgのローラーを1往復させて試験片を得た。
【0095】
次に、試験片を23℃、相対湿度50%雰囲気下にて24時間に亘って放置してホットメルト接着剤を冷却固化させた。この試験片について、ポリエチレンフィルムの面方向に引張速度300mm/分にてT型剥離試験を23℃の雰囲気下で行うことによって、接着強度(×10^(-2)N/25mm)を測定した。
【0096】
(常温における保持力)
ホットメルト接着剤を120℃に加熱することにより溶融させた後、スロット塗工によってポリエチレンテレフタレートフィルム上にホットメルト接着剤を塗布量50g/m^(2)、塗布幅25mmの条件で塗布した。しかる後、ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上に、表面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムを積層して積層体を作製した。積層体をその厚み方向に23℃、圧力50gf/cm^(2)(4903Pa)の条件で0.01秒間、プレスして圧着した。積層体から離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、ポリエチレンテレフタレートのホットメルト接着剤塗布面上に、非通気タイプのポリエチレンフィルムを積層した。ホットメルト接着剤とポリエチレンフィルムとの接触部分が縦10mm×横25mmの平面長方形状となるようにした。しかる後、ポリエチレンフィルム上に2kgのローラーを1往復させて試験片を得た。試験片のポリエチレンフィルムの面方向が垂直方向となるように試験片を配設した。試験片のポリエチレンフィルムの下端部に1kgのおもりを取り付けて、試験片を40℃の雰囲気下に放置した。試験片のポリエチレンフィルムの下端部におもりを取り付けてから、ポリエチレンフィルムがホットメルト接着剤から完全に離脱しておもりが落下するまでの時間を測定し、この時間を「常温における保持力」とした。
【0097】
(低温における粘着力)
ホットメルト粘着剤について、下記する要領に従って、10℃の温度環境下においてループタック試験を行い、これにより低温における粘着力を評価した。
【0098】
先ず、ホットメルト接着剤を120℃に加熱することにより溶融させた後、スロット塗工によってポリエチレンテレフタレートフィルム上にホットメルト接着剤を塗布量50g/m^(2)、塗布幅25mmの条件で塗布した。しかる後、ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上に、表面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムを積層して積層体を作製した。積層体をその厚み方向に23℃、圧力50gf/cm^(2)(4903Pa)の条件で0.01秒間プレスした。この積層シートを切断することにより、長方形状のシート片(幅25mm×長さ230mm)を得た。シート片から離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、シート片をそのホットメルト接着剤層を外側にしてループ状に湾曲させた後、シート片のポリエチレンテレフタレートフィルムの両端部同士を重ね合わせ、この重ね合わせた両端部をチャックで固定することにより、ループ状の試験片(長径80mm、周長180mm)を作製した。
【0099】
次に、10℃の温度環境下において、試験片におけるチャックによって固定している重ね合わせ部分を上側に向けると共に、試験片の円弧状に湾曲した部分を下側に向けた状態にして試験片を吊り下げた。試験片の下方にポリエチレン板をその上面が水平となるように配設した。そして、チャックとポリエチレン板の上面との間の距離が50mmとなるところまで300m/分の速度で試験片を降下させた後、試験片を直ちに300m/分の速度で引き上げてポリエチレン板から引き剥がし、このときの引き剥がし強度[N/25mm]を測定した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン含有量が40?50質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が100?250mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)、並びに、スチレン含有量が15?40質量%で且つ25%トルエン溶液粘度が300?3500mPa・sであるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A2)、及び、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン系ブロック共重合体(A4)を含んでおり、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)及びスチレン系ブロック共重合体(A4)の総量に対してスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)を30?70質量%含有しているスチレン系共重合体(A)100質量部と、
粘着付与剤(B)100?400質量部と、
可塑剤(C)50?150質量部とを含み、
120℃における溶融粘度が1500mPa・s以上6000mPa・s以下であり、
粘着付与剤(B)が、完全水添粘着付与剤(B1)と、完全水添粘着付与剤(B1)及び末端ブロック粘着付与剤(B2)を除いた粘着付与剤としての部分水添石油樹脂とを含有し、且つ完全水添粘着付与剤(B1)として環球式軟化点が80?100℃である完全水添石油樹脂30?70質量部を含んでいることを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載のホットメルト接着剤を用いてなることを特徴とする使い捨て製品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-05-20 
出願番号 特願2016-87019(P2016-87019)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松原 宜史  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 木村 敏康
川端 修
登録日 2018-06-29 
登録番号 特許第6360516号(P6360516)
権利者 積水フーラー株式会社
発明の名称 ホットメルト接着剤及びこれを用いてなる使い捨て製品  
代理人 山本 拓也  
代理人 山本 拓也  

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