• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G05D
審判 全部申し立て 2項進歩性  G05D
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  G05D
管理番号 1363992
異議申立番号 異議2019-700665  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-26 
確定日 2020-06-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6475191号発明「パトロール作業用ロボット及びパトロール作業用ロボットを用いた警報システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6475191号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。 特許第6475191号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 本件特許異議申立の主な経緯
平成28年 5月26日 特許第6475191号
(以下、「本件特許」という。)の請求項1
ないし3に係る特許についての出願
(特願2016-104895号)
平成31年 2月 8日 本件特許権の設定登録
同 年 2月27日 本件特許に係る特許掲載公報の発行
令和 1年 8月26日 特許異議申立人桜井裕(以下「異議申立
人」という。)による本件特許異議の申立て
同 年10月21日付け 取消理由通知書
同 年12月20日 特許権者による意見書の提出
令和 2年 1月17日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同 年 3月17日 特許権者による意見書の提出及び訂正の
請求
同 年 4月28日 異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)?(3)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「・・・記録手段と、を有すること・・・」と記載されているのを、
「・・・記録手段と、を有し、前記三次元マップが、制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、前記複数の格納手段は、所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、前記制御部120は、前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いること・・・」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部と」と記載されているのを、
「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20と」に訂正する。

(3)訂正事項3
本件特許明細書の段落[0010]に、
「上記目的を達成するための請求項1に記載のパトロール作業用ロボットは、プラント設備領域を含む領域の三次元マップと、周囲の立体的形状データを取得可能な周囲データ取得センサと、該周囲データ取得センサにより得られた前記立体的形状データと前記三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定する現在位置決定手段と、予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部と、を有し、前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであり、前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、前記周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に前記三次元マップ上に前記物理量の情報を前記現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録する記録手段と、を有することを特徴とする。」と記載されているのを、
「上記目的を達成するための請求項1に記載のパトロール作業用ロボットは、プラント設備領域を含む領域の三次元マップと、周囲の立体的形状データを取得可能な周囲データ取得センサと、該周囲データ取得センサにより得られた前記立体的形状データと前記三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定する現在位置決定手段と、予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20と、を有し、前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであり、前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、前記周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に前記三次元マップ上に前記物理量の情報を前記現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録する記録手段と、を有し、前記三次元マップが、制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、前記複数の格納手段は、所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、前記制御部120は、前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いることを特徴とする。」に訂正する。

本件特許請求の範囲に係る訂正(訂正事項1ないし2)は、一群の請求項〔1ないし3〕に対して請求されたものである。また、本件特許明細書に係る訂正(訂正事項3)は、一群の請求項〔1ないし3〕について請求されたものである。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1に係る「三次元マップ」の構成を加入するものである。
これについて、三次元マップに関し、訂正前の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。なお、同様に訂正前の請求項2ないし3に係る発明を「本件発明2」等という。)は、
ア 「プラント設備領域を含む領域の三次元マップ」であること、
イ 「前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであ」ること、
の二点のみを特定していたものであって、特に他に限定を生じさせる事項はないから、段落【0028】?【0076】に示される実施例(特に段落【0046】?【0048】に記載された三次元マップ)のみを想定していたとはいえず、段落【0077】?【0122】、図5?図10に記載された三次元画像表示システムによって得られる三次元マップも含まれていたものと解される。この点について、段落【0083】にも、第1?第4格納手段に格納される三次元データが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであることが記載されており、三次元マップの構成自体、段落【0028】?【0076】に示される実施例のものと変わりはない。
そうすると、訂正事項1は、本件発明1が内在していた三次元マップを、三次元画像表示システムによって得られるものに限定しようとするものであるから、この訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、訂正事項1に係る発明特定事項は、上記のとおり、段落【0077】?【0122】、図5?図10に記載されていた事項であって、本件発明1が内在していたものであるから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、請求項1に係る「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部」について、当該制御部に対応する図面中の符号「20」を加入するものである。
ここで、本件特許明細書(特に、段落【0033】、【0041】、【0052】?【0059】)及び図面(特に、図1及び図4)を参酌すれば、「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部」は、作業用ロボット10が有する「制御部20」であることが明らかであるところ、この訂正事項は、上記訂正事項1において、サーバ102の「制御部120」が加入されたことに伴い、いずれの「制御部」であるかが判別可能となるように「20」の符号を付したものと理解できる。
そうすると、訂正事項2は、本件発明1の「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部」を明確化するためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められるところ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、上記訂正事項1、2の請求項1に係る訂正に合わせて、本件明細書の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、訂正後の本件請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
プラント設備領域を含む領域の三次元マップと、
周囲の立体的形状データを取得可能な周囲データ取得センサと、
該周囲データ取得センサにより得られた前記立体的形状データと前記三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定する現在位置決定手段と、
予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20と、を有し、
前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであり、
前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、
前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、
前記周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に前記三次元マップ上に前記物理量の情報を前記現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録する記録手段と、を有し、
前記三次元マップが、
制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、
前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、
前記複数の格納手段は、
所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、
少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、
少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、
前記制御部120は、
前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、
該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いることを特徴とするパトロール作業用ロボット。
【請求項2】
前記周囲の雰囲気の物理量が、温度、放射線、有害物質及び可燃性ガスの物理量から選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のパトロール作業用ロボット。
【請求項3】
前記三次元マップデータを無線で発信する発信手段を有する請求項1又は2に記載のパトロール作業用ロボットと、
前記発信手段により発信された情報を受信する受信手段と、該受信手段が受信した前記三次元マップデータに記録された前記物理量の情報に基づき警報を発する警報手段と、を備える警報装置と、
を有することを特徴とするパトロール作業用ロボットを用いた警報システム。」

第4 取消理由の概要
本件発明1ないし3についての特許に対して、当審が令和2年1月17日付けの取消理由通知書(決定の予告)において、特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件発明1ないし3は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証ないし甲第4号証に記載の事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし3についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、本件発明1ないし3についての特許は、取り消されるべきものである。

第5 引用文献の記載
取消理由通知において提示した引用文献は以下のとおりである。
甲第1号証:特開平7-281753号公報
甲第2号証:特開2013-132748号公報
甲第3号証:再公表特許WO2013/030929号
甲第4号証:特開2014-44143号公報
(以下、甲第1号証ないし甲第4号証を「甲1」ないし「甲4」という。)

1.甲1の記載事項、甲1発明
甲1には、「移動ロボット」に関し、図1?7とともに以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自律制御する移動ロボットに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、原子力プラントやその他悪環境下の各種プラントでは、プラント内に設置されている機器や配管に加熱や漏洩等の異常が発生した場合に、早期に発見できるように作業員が移動して点検を行っている。・・・この巡視点検作業は、人体への危害やコスト、さらに最近では作業員の確保の面などで問題があり、作業員に代替する移動式の点検装置への要求が強い。」
(イ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来の移動ロボットにおいては、原子力プラントやその他悪環境下の各種プラントの非常に複雑でかつ広いエリア等の使用条件において機能を満足させことが困難であった。移動ロボットを自律的に移動制御を行って、目的位置まで確実に移動させるには、移動する環境を把握し、常にロボット自身の位置や向きを求める機能(以下自己位置同定処理という)が必要となる。しかも、移動ロボットをスムーズに移動させるには、高速に自己位置同定処理を行う必要がある。人間の場合、目にとらえた映像すなわちパッシブな視覚情報から、短時間で容易に自己位置同定処理を行っている。一方、ロボットにパッシブな視覚情報で自己位置同定処理を行う場合は、人間の目に相当するテレビカメラを取り付けて、画像認識を行う必要があるが、視覚認識機能が人に比べて非常に劣る。そのため、短時間で正確な自己位置同定することが困難である。現状の認識技術は単純背景での単純物体に対しては、ある程度まで短時間で正確な認識が可能となってきているが、複雑環境では認識率が極端に低くなり、かつ10秒以上と長時間を必要とするなど、実用レベルには程遠い。複雑環境での認識技術が実用レベルに到達するまでには、今後かなりの年月がかかると思われる。このため、現状では複雑環境を移動させるロボットにはパッシブな視覚情報による自己位置同定処理は実現性に乏しい。
【0006】本発明は係る従来の事情に対処してなされたものであり、その目的は、プラントに悪影響を及ぼさず、視覚情報に代わる外界センサの採用を行い、複雑な教示やプラントに対する加工処理の不要な自己位置同定処理を構築し、複雑環境下で自己位置同定処理の正確さを向上させ、しかも高速に処理可能な移動ロボットを提供するものである。」
(ウ)「【0012】
【実施例】・・・図1は本発明に係る移動ロボットの第1の実施例における移動ロボットの外形図を示しており、移動ロボット1は移動量検出用の回転角度センサ15を有する車輪50で駆動する移動台車7に、点検用センサ9を設けた雲台8,点検用センサ信号処理装置21を備えている。また、無線伝送装置10,通信制御装置20,ロボット用の前述の視覚情報に代わる外界センサであるスキャン式レーザ距離計12,超音波センサ13a,13b,ジャイロ14,ロボットコントローラ19を搭載している。この移動ロボット1は、操作室2にある操作盤3からの指令に基づいて、プラント内に設置された点検対象物まで移動し、点検用センサ9を用いて点検を行うものである。
【0013】本実施例で用いた雲台8は、下部にはスキャン式レーザ距離計12を搭載し、ロボットコントローラ19の姿勢制御指令に基づいて旋回駆動、ふ仰駆動を行うものである。無線伝送装置10は通信制御装置20からの要求および制御で、地上局とロボット制御に必要となる制御信号、状態信号の送受と、点検用センサ9の送信を無線で行うものである。ジャイロ14は、ロボットの旋回角度と傾き角度と検出するものである。
【0014】スキャン式レーザ距離計12はレーザ光を発光してから被測定物から反射してくるまでの時間を計測することで、被測定物までの距離を求めるものである。スキャンニングは水平方向に270度で1秒間に10回程度行うものである。
【0015】超音波センサ13a,13bは超音波を発信するトランスデゥーサ13bと被測定物から反射してくる超音波を受信するレシーバ13aとが独立に設けられたもので、発信から受信までの時間を計測することで被測定物までの距離を求める。」
(エ)「【0017】また、通信制御装置4からの通信制御信号を無線で移動ロボット1に伝送あるいは受信するための追尾装置付き無線伝送装置11が設けられている。操作盤3は移動台車7や点検用センサ9の遠隔操作を行う操作器17、点検結果や移動ロボット1の状態を表示する状態表示モニタ16、これらを制御するマンマシンインターフェイス用制御装置18から構成されている。
【0018】オペレータは操作器17を用いて目的位置と方向に関する移動要求を入力する。ロボット統括制御装置5はオペレータからの移動要求を受けて、プラントCAD(コンピュータ支援による設計)データを用いて現在位置から目的地までの経路生成を行う機能を有し、さらに操作盤3と移動ロボット1間の通信管理を行う。このプラントCADデータは、機器の配置設計を行うためのものであり、データの内容としてはポンプ、弁、熱交換器等の機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が、機器、配管等の占める容積全体の部分で3次元的に与えられる。
【0019】通信制御装置4は移動ロボット1の走行コントローラ24,雲台コントローラ25,点検用センサ信号処理装置21からの状態信号および点検用センサ9からのセンサ信号を入力し、ロボット統括制御装置5,診断装置6へ送信する機能を有する。また、逆にロボット統括制御装置5,診断装置6からの要求信号を入力し、移動ロボット1の走行コントローラ24,雲台コントローラ25,点検用センサ信号処理装置21へ送信する機能および追尾装置付き無線伝送装置11の制御を行う機能も有している。
【0020】診断装置6は、点検箇所において検出されるセンサ信号を入力し、内蔵されたデータベースに追記するとともに、予め記憶された正常時でのセンサ信号との比較、時間的な変動状態の検出を行い、基準値に対して大きいか否かを判定し、大きい場合には異常が発生した可能性があると診て、詳細な点検方法(新たな点検箇所と点検手段)を立案し、ロボット統括制御装置5に点検要求を出力する。また、詳細な点検結果が得られると、異常の判定と異常箇所および異常原因の推定を行う。これらの処理結果は、逐次状態表示モニタ16を介してオペレータに伝えるものである。
・・・
【0022】図2(b)において、移動ロボット1は、点検用センサ9としてテレビカメラ27、マイクロフォン28、レーザ振動計29、赤外線カメラ30、臭いセンサ31を備えている。これらの点検用センサ9は上述のとおり、操作器17を用いて雲台8を遠隔操作することによって、任意の点検する向きへ向けることが可能となっている。」
(オ)「【0026】位置同定コントローラ23の構成については図3に示す。ジャイロ14と移動量検出用の回転角度センサ15のデータはロボット用センサ信号処理回路22を介して、ロボットの概略位置を検出するための概略位置検出回路34に入力される。この回路で得られた概略位置はセンサシミュレーション回路37に入力され、センサシミュレーション回路37内に格納されたプラントCADデータを用いてセンサシミュレーションされて、そのプラントCADデータ上の位置データとして画像メモリ36aに記憶される。
【0027】ここで、センサシミュレーションとは、移動ロボット1が点検走行する建屋内部の位置データから構成されるプラントCADデータを用いて、移動ロボット1の移動に基づくジャイロ14および回転角度センサ15の変化量を追跡し、プラントCADデータ上での現在位置を求める操作をいう。
【0028】一方、スキャン式レーザ距離計12,超音波センサ13a,13bによって測定される距離データは、実測された距離を示している。この距離データは座標変換回路35を用いてセンサ座標系からロボット座標系に座標変換される。ここで、センサ座標系とは、スキャン式レーザ距離計12あるいは超音波センサ13a,13bを中心とした相対的な極座標系をいい、ロボット座標系とは移動ロボット1を中心とした相対的な直交座標系をいう。このロボット座標系に変換されたデータは画像メモリ36b,36cに記憶される。
【0029】さらに、上記センサシミュレーション結果のデータと実測したセンサデータの分布の対応づけを画素相関回路38を用いて行い、差分を求める。また、位置同定回路39でその差分を上記概略位置検出回路34で得られた概略位置に加えることによってロボットの自己位置を決定する。」
(カ)「【0035】図2に戻って、走行コントローラ24は、目標位置までの軌道データと上記自己位置同定結果から、走行モードと移動ロボット1の車輪50に対するステアリング角度、走行速度を算出する演算回路(図示せず)と、算出した結果を走行用ドライバ33への出力と制御状態や自己位置情報を通信制御装置20へ出力する出力回路(図示せず)からなる。ここで、走行モードには、移動ロボット1の直進・後進や、その場旋回、平行移動などがある。」
(キ)「【0038】次に、本実施例の作用について説明する。移動ロボット1は図4に示す手順で点検箇所まで移動し、所定の点検を行う。この点検の手順について以下に説明する。
【0039】移動ロボット1を点検箇所まで移動させ、所定の点検を行わせるには、まず、移動ロボット1に対して目標位置、作業要求を入力する処理、すなわち点検ルートの決定(S1)が必要である。この処理は操作盤3の操作器17を用いてオペレータが入力する。入力された目標位置、作業要求はマンマシンインターフェイス用制御装置18を介してロボット統括制御装置5に入力される。ロボット統括制御装置5は、入力された目標位置、作業要求データからプラント機器配置用のプラントCADデータを用いて、目標位置までの経路および点検する時の雲台8の姿勢を求める。また、この処理はオペレータが操作器17から直接、目標位置までの経路および点検するときの雲台8の姿勢を指示することとしてもよい。
【0040】目標位置までの経路および点検するときの雲台8の姿勢が得られたら、目標位置までの経路生成結果を通信制御装置4,追尾装置付き無線伝送装置11,無線伝送装置10,通信制御装置20を介して移動ロボット1上の走行コントローラ24へ送信する。上記走行コントローラ24は、目標位置までの経路生成結果を受信すると移動ロボット1を駆動させて、経路に沿うように走行制御(移動速度制御およびステアリング角度制御)を行って、目標位置まで移動させる処理を行う。
【0041】この処理は、移動ロボット1上に搭載した走行コントローラ24,走行用ドライバ33,回転角度センサ15,モータ32,スキャン式レーザ距離計12を用いて目標位置まで図4に示されるA(S2?S5)の処理ルーチンを繰り返して行う。
【0042】以下に、Aの処理ルーチンの各々について説明する。自己位置同定処理(S2)は、前述のとおり、位置同定コントローラ23を用いて行われる。
【0043】目標軌道とのずれ算出(S3)は、走行コントローラ24で行う。走行コントローラ24は地上局にあるロボット統括制御装置5で算出した目標軌道データを通信制御装置4,追尾装置付き無線伝送装置11を介して入力するとともに、前記位置同定コントローラ23で算出する現在の移動ロボット1の位置および向きデータとからずれを算出する。
【0044】走行コントローラ24はずれの算出を行うと次に走行モードを決定、各車輪50のステアリング角度および走行速度算出処理(S4)を行う。地上局にあるロボット統括制御装置5から新たな指令や大幅なずれが発生しない限り現状の走行モードを維持する。ロボット統括制御装置5から新たな指令があると、その指令に基づいた走行モードに切り替える。また、大幅なずれが発生し、現状の走行モードでは対応できない、あるいはずれが増加していくような場合には、例えば一度移動ロボット1を停止させて、その場旋回、平行移動などのモードで目標軌道に戻し、再び元の走行モードに切り替えて走行を再開させるなどの操作も可能である。
【0045】走行モードが決定すると、各車輪50のステアリング角度および走行速度を決定する。ずれがない場合は、ずれ量と速度からどの地点で目標軌道に一致させるか経路を決め、一致させる地点までの各車輪50のステアリング角度および走行速度を算出し、そのデータを走行用ドライバ33に出力する。
【0046】ステアリング駆動制御、速度制御処理(S5)は、各車輪50にそれぞれ備えている走行用ドライバ33で行う。走行用ドライバ33は走行コントローラ24から送られてくる各車輪50のステアリング角度および走行速度データを入力し、各車輪50のモータ32がそのデータになるようサーボ制御する。
【0047】以上の処理ルーチンAを繰り返し行うことで移動ロボット1を目標軌道に沿って移動させ、目標位置に到達させる。この処理の状態は、常に走行コントローラ24で送信用データに変換し、通信制御装置20,無線伝送装置10,通信制御装置4を介してロボット統括制御装置5へ送信される。ロボット統括制御装置5は、移動ロボット1の処理状態データを受信し、移動ロボット1の制御状態を記録するとともに、オペレータにわかりやすい表示データに変換してマンマシンインターフェイス用制御装置18を介して状態表示モニタ16に表示する。
【0048】移動ロボット1が目標位置に到達すると、ロボット統括制御装置5は雲台8の姿勢を算出する(S6)。雲台コントローラ25は、この算出結果を受信し、雲台8を制御する(S7)。
【0049】ロボット統括制御装置5は雲台8の制御が終了したことを、状態データによって受信すると、点検制御を行う。点検制御は、点検用センサ信号処理装置21を介して行う。点検用センサ9で検出したデータは無線伝送装置10を介して操作室2側に伝送され、診断装置6へ入力される。診断装置6はセンサデータから機器の異常を診断し、異常がないことをロボット統括制御装置5へ伝える。異常の疑いがあると判断すると、詳細な点検計画を生成し、その結果をロボット統括制御装置5に伝送する。ロボット統括制御装置5は診断装置6からの診断処理結果に基づいて、次の点検箇所への移動計画を作成する(S8)。」
(ク)上記(エ)から、プラントCADデータは、その内容としてはポンプ、弁、熱交換器等の機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が、機器、配管等の占める容積全体の部分で3次元的に与えられるものであることが理解できる。
(ケ)上記(オ)、(カ)、(キ)から、ロボット統括制御装置5が、入力された目標位置、作業要求データからプラント機器配置用のプラントCADデータを用いて、目標位置までの経路を求めるが、目標位置までの経路生成結果は、移動ロボット1上の走行コントローラ24へ送信され、同じく移動ロボット1上の位置同定コントローラ23が、プラントCADデータ上の移動ロボット1の位置を把握し、走行コントローラ24は、移動ロボット1を駆動させて、経路に沿うように走行制御(移動速度制御およびステアリング角度制御)を行って、目標位置まで移動させる処理を行うもの、すなわち、目標位置までの経路の生成は、ロボット統括制御装置5が行うが、経路が生成された後の走行の制御自体は移動ロボット1の走行コントローラ24が自律的に行うものであることが理解できる。

そうすると、上記(ア)?(キ)の記載、当該記載から理解される(ク)、(ケ)の事項および図1?4を参酌すれば、甲1には、
「プラント建屋内の機器配置を示すプラントCADデータと、
周囲構造物との距離を計測する距離計測手段であるスキャン式レーザ距離計および超音波センサと、
プラントCADデータを用いて、移動ロボットの移動に基づくジャイロおよび回転角度センサの変化量を追跡し、プラントCADデータ上での現在位置の概略位置をシミュレーションして求めるとともに、スキャン式レーザ距離計、超音波センサに基づく実測したセンサデータの分布との相関から求めた差分を概略位置に加えることで自己位置を決定する位置同定コントローラと、
目標位置までの軌道データと自己位置同定結果から、前記プラント建屋内の移動を制御する走行コントローラと、を有し、
プラントCADデータは、機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が三次元的に与えられるものであり、
プラント建屋内で直進・後進やその場旋回、平行移動などをしつつ、該プラント建屋内の点検作業を行う移動ロボットであって、
移動経路の点検箇所において、テレビカメラ、マイクロフォン、レーザ振動計、赤外線カメラ、臭いセンサの点検用センサの、センサ信号を検出し、
移動ロボットとは別の操作室に診断装置を有し、点検箇所において検出されるセンサ信号をデータベースに追記するとともに、基準値に対して大きいか否かを判定し、大きい場合には、異常が発生した可能性があると診て、詳細な点検結果から、異常の判定と異常箇所および異常原因の推定を行い、処理結果を逐次状態表示モニタを介してオペレータに伝える、移動ロボット」(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

2.甲2の記載事項
甲2には、「移動装置及び移動装置の位置認識方法」に関し、図1?13とともに以下の記載がある
(ア)「【0001】
本発明は、移動装置に装着された複数のセンサを通じて検出された情報を用いて、移動装置自身の位置を推定する位置認識方法に関する。」
(イ)「【0037】
格納部400は、歩行ロボット10が位置認識を行うために必要とする事前情報、及び位置認識の結果を格納するためのもので、格納部400には、リンク(関節部と関節部との間を連結する機構構造)の機構情報(長さ情報)、歩行ロボット10の歩行過程で複数のアルゴリズム(複数のフィルタ)を用いて算出される歩行ロボット10の位置認識結果(標識の位置情報、歩行ロボットの位置/姿勢情報)、及び複数のアルゴリズムのうち、特にSLAMアルゴリズムを用いて作成される移動空間(作業空間)に対するローカルマップなどが格納される。」
(ウ)「【0055】
図6を参照して、本発明の実施例に係るノード認識方法をより具体的に説明すると、次の通りである。図6は、本発明の実施例に係るノード設定状態を示した図である。ノード認識は、現在の映像から抽出した特徴点情報を用いて、格納部400に格納されているローカルマップ上の特徴点情報と比較することを意味する。このとき、対応する特徴点の数が多いノードを決定して、歩行ロボット10の現在の位置に隣接したノードを判断する。
【0056】
本発明の実施例では、融合フィルタ360に絶対位置認識情報を提供するために、図6のように歩行ロボット10の移動空間上の一定地点をノードA?Eに設定する。ノードA?Eは、廊下の交差点やコーナーのような構造的特徴を有する地点や、多様な視覚情報を含む視覚的特徴を有する地点、または歩行ロボット10の移動時に正確な位置情報を必要とする地点などに指定できる。与えられた建物の設計図あるいは平面図からワールド原点座標系に対するノード座標系の位置を定めることができ、これから絶対位置情報が含まれたノードで構成される位相学的地図を構築できる。決定されたそれぞれのノードA?Eにおいて、ノード認識及びマッチングのために、視覚センサベースのSLAMアルゴリズムを用いて映像情報から抽出した特徴点の3次元位置と、歩行ロボット10の3次元位置/姿勢情報とを同時に推定する。歩行ロボット10の移動空間上のどの一点をノード原点O1とし、このノード原点O1を中心にカメラ120を移動させて、カメラ120を通じて確保される映像情報から位置認識に必要な特徴点を抽出する。抽出された特徴点情報は、第5ローカルフィルタ350の状態変数として登録され、確率的なフィルタ技法を用いて持続的に特徴点の位置及びカメラの位置/姿勢情報を推定する。このような視覚センサベースのSLAMアルゴリズムの結果物として得たノードA?Eの周辺の特徴点で構成されたローカルマップは格納部400に格納される。仮に3次元点群データ(3D Point Cloud Data)を得ることができるカメラ(例えば、ステレオカメラ又はTOFカメラなど)を使用する場合には、特徴点及び点群データで構成される3次元地図をノード情報として追加的に活用できる。」

3.甲3の記載事項
甲3には、「監視装置、監視システム及び監視方法」に関し、図1?24とともに以下の記載がある
(ア)「【0001】
本発明は、建物内の設備要素を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
監視装置を用いて建物内の設備要素を監視するにあたっては、建物内における監視装置の自己位置を推定する必要がある。
【0003】
建物内では、GPS(全地球測位システム)を利用することができないので、これに代わる自己位置推定方法が必要であり、そのような方法の一つとして、非特許文献1に開示される自立走行ロボットのための自己位置推定方法を利用することができる。
【0004】
この方法によれば、特許文献1に開示されるようなレーザレンジファインダを用いて周囲の物体の形状や配置を計測し、計測結果と予め用意された地図とを照合(マッチング)することによって、自己位置を推定することができる。このような自己位置推定方法はスキャンマッチングと呼ばれる。」
(イ)「【0008】
本発明の目的は、建物内の設備要素を監視する監視装置において、監視中の設備要素が何であるかを特定できるようにすることである。」
(ウ)「【0018】
監視装置100は、本体101、センサ102?105及び無線通信装置106を有する。監視作業中は、作業者が本体101を把持してセンサ102?105を前方に向け、センサ102?105によって監視装置100の周囲を計測する。ここで、「建物」とは電力・配電設備、化学プラント等の建屋であり、「設備要素」とは、建物内部に設置される配管、ポンプ、バルブ等の要素である。
【0019】
センサ102?105は、本体101の正面に取り付けられている。センサ102?105は、レーザレンジファインダ(「スキャナ式レンジセンサ」ともいう。)102、熱赤外線カメラ103、可視光カメラ104及び加速度センサ105を含む。
【0020】
レーザレンジファインダ102は、レーザ照射部と受光部を有する。レーザレンジファインダ102は、回転式の反射鏡等を用いてレーザ照射部からのレーザビームを放射状に放射し、レーザビームが直近の物体の表面で反射して受光部まで戻ってくるまでの時間を計測することで、直近の物体までの距離を計測する。様々な方向について計測を行うことによって、レーザレンジファインダ102は監視装置100の周囲の三次元形状を計測する。ここで「周囲」とは、監視装置100を中心とした所定半径の領域(例えば、レーザレンジファインダ102によって距離を計測可能な範囲)を意味する。」
(エ)「【0042】
自己位置推定用地図411は、壁、柱等の建物内の構造物(設置誤差が少なく、位置及び向きが不変の固定物)の形状及び位置を含む地図である。自己位置推定用地図411は、建物の設計データである構造物CAD(Computer Aided Design)421で管理されている壁、柱等のデータを変換処理422によって自己位置推定に適した形式に変換して作成される。
【0043】
自己位置推定に適した形式とは、レーザレンジファインダ102によって計測される三次元形状との照合に適した形式である。例えば、自己位置推定用地図411は、建物内の構造物の表面形状に関するデータのみを含む。」
(オ)「【0070】
自己位置推定部401は、監視装置100の自己位置(「位置」には監視装置100の「向き」が含まれる、以下同じ。)を複数の計測結果に基づき推定する。具体的には、加速度センサ105によって計測される加速度を2回積分して第1の予測自己位置を算出するとともに、レーザレンジファインダ102によって計測される周囲の三次元形状を自己位置推定要地図401と照合して第2の予測自己位置を算出する。そして、自己位置推定部401は、統計的な誤差に基づくばらつきを含んだこれら二つの予測自己位置をカルマンフィルタを用いて統合し、最も確からしい自己位置を推定する。
・・・
【0072】
設備要素特定部402は、自己位置推定部401によって推定された自己位置とレーザレンジファインダ102による三次元計測の結果とを用いて、監視中の設備要素の設備ID及び位置を特定する。
【0073】
図5は、設備要素特定部402の詳細を示す機能ブロック図である。
【0074】
設備要素特定部402は、周辺設備要素抽出部501、設置誤差分布算出部502、差分抽出部503、設備要素候補抽出部504、一致度評価部505及び設備要素特定部506を含む。
【0075】
周辺設備要素抽出部501は、自己位置推定部401によって推定された自己位置に基づき、設備要素照合用地図413から自己位置の周辺の設備要素の形状タイプ及び位置・大きさ、すなわち形状及び位置を検索し、周辺設備要素として抽出する。」

4.甲4の記載事項
甲4には、「放射線検出装置および放射線検出方法」に関し、図1?22とともに以下の記載がある
(ア)「【0001】
本発明は、放射線検出装置に関し、特に、局所的に放射線量が多くなっているホットスポットを探索するのに適した放射線検出装置に関するものである。」
(イ)「【0103】
ホットスポット判定部19は、算出された線量レベルが所定の閾値以上である場合に、カメラ20およびGPS22にその旨の通知をする。カメラ20は、ホットスポット判定部19から線量レベルが所定の閾値以上であるとの通知を受けたら、撮影を行なって、撮影画像をホットスポット判定部19に返す。GPS22は、ホットスポット判定部19から線量レベルが所定の閾値以上であるとの通知を受けたら、そのときの位置情報を取得して、ホットスポット判定部19に返す。
【0104】
ホットスポット判定部19は、線量レベルが所定の閾値以上である場合に、カメラ20から撮影画像を取得し、GPS22から位置情報を取得すると、表示部17に図18に示す確認画面を表示させる。この確認画面では、GPS22にて取得された位置情報に基づいて、線量レベルが所定の閾値以上となった場所が地図上に示され、カメラ20から取得された撮影画像が表示される。また、図18に示すように、確認画面には「新たにホットスポットが見つかりました」というメッセージとともに、その場所を新たなホットスポットとして登録することを指示する「新規登録」ボタンと、その場所をホットスポットとして登録しないことを指示する「キャンセル」ボタンが表示される。」

第6 対比・判断
1.本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「プラントCADデータ」は、プラント建屋内の機器配置を示し、機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が三次元的に与えられるものであって、これに基づき自己位置を決定するものであるところ、本件訂正発明1の「三次元マップ」とは、「プラント設備領域を含む領域のマップ」である限りで一致する。
甲1発明の「スキャン式レーザ距離計および超音波センサ」と、本件訂正発明1の「周囲データ取得センサ」とは、「周囲のデータを取得可能な周囲データを取得するセンサ」である限りで一致する。
甲1発明の「位置同定コントローラ」と、本件訂正発明1の「現在位置決定手段」とは、「マップ上における現在位置を決定する手段」である限りで一致する。
甲1発明の「走行コントローラ」は、「目標位置までの軌道データと自己位置同定結果から、前記プラント建屋内の移動を制御する」ものであるから、本件訂正発明1の「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20」に相当する。
甲1発明の「テレビカメラ、マイクロフォン、レーザ振動計、赤外線カメラ、臭いセンサの点検用センサ」は、本件訂正発明1の「周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段」に相当する。
甲1発明の「移動ロボット」は、「プラント建屋内で直進・後進やその場旋回、平行移動など」をするものであるから、前後左右及び高さ方向に移動することは自明であり、プラント建屋内の点検作業を行うから、本件訂正発明1の「パトロール作業用ロボット」に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
一致点:プラント設備領域を含む領域のマップと、
周囲のデータを取得可能な周囲データを取得するセンサと、
前記マップ上における現在位置を決定する手段と、
予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部と、を有し、
前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、
前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、を有するパトロール作業用ロボット。

相違点1:本件訂正発明1の現在位置決定手段は、周囲データ取得センサにより得られた立体的形状データと三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定するのに対し、甲1発明の位置同定コントローラは、プラントCADデータを用いて、移動ロボットの移動に基づくジャイロおよび回転角度センサの変化量を追跡し、プラントCADデータ上での現在位置の概略位置をシミュレーションして求めるとともに、スキャン式レーザ距離計、超音波センサに基づく実測したセンサデータの分布との相関から求めた差分を概略位置に加えることで自己位置を決定するものである点。
相違点2:本件訂正発明1の三次元マップは、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであるのに対し、甲1発明のプラントCADデータは、機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が三次元的に与えられるものである点。
相違点3:本件訂正発明1のパトロール作業用ロボットは記録手段を有し、周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に三次元マップ上に前記物理量の情報を現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録するのに対し、甲1発明は、移動ロボットとは別の操作室に診断装置を有し、点検箇所において検出されるセンサ信号をデータベースに追記するとともに、基準値に対して大きいか否かを判定し、大きい場合には、異常が発生した可能性があると診て、詳細な点検結果から、異常の判定と異常箇所および異常原因の推定を行い、処理結果を逐次状態表示モニタを介してオペレータに伝えるものである点。
相違点4:本件訂正発明1の三次元マップは、「制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、前記複数の格納手段は、所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、前記制御部120は、前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いる」ものであるのに対し、甲1発明のプラントCADデータは、そのような構成を有するものではない点。

事案に鑑み、上記相違点4から検討する。
相違点4に係る、三次元マップとして、「制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、前記複数の格納手段は、所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、前記制御部120は、前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いる」ことは、甲1ないし甲4のいずれにも記載も示唆もされておらず、甲1発明について、相違点4に係る構成を採用することは、当業者が容易に想定し得た程度のことということはできない。
したがって、他の相違点1?3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明および甲2ないし甲4に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到することができたものということはできない。

2.本件訂正発明2、3について
本件訂正発明2及び本件訂正発明3は、本件訂正発明1を引用するものであって、本件訂正発明1のすべての発明特定事項を含むものであるところ、上記1.のとおり、本件訂正発明1が甲1発明および甲2ないし甲4に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到することができたものということはできないから、本件訂正発明2及び本件訂正発明3についても同様に、甲1発明および甲2ないし甲4に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到することができたものということはできない。

第7 異議申立人の意見書における主張について
異議申立人は、令和2年4月28日提出の意見書において、本件訂正は認められるべきでないこと及び本件訂正発明1に関し、
ア 本件訂正発明1は、前段の構成(訂正前の本件発明1の構成)と後段の構成(訂正事項1により加わった構成)とでは、作業用ロボットの移動領域や必要とするデータの種類が相違するため、前段の構成と後段の構成との関係が明瞭でなく、課題を解決するための構成が不明瞭となっている
イ 訂正事項1では符号が多くの構成要件に付与されたところ、このような記載は、第三者に発明の詳細な説明や図面との照合を必要以上に強いるものであり、本件訂正発明1の理解や権利範囲の判断を著しく妨げるものである
ウ 訂正事項1の「三次元マップ画像」は、「航空レーザ計測による航空三次元データ」等が必要であり、そのような構成について記載も示唆もないため発明特定事項を減縮したものではなく、また、仮に訂正事項1が特許請求の範囲の減縮に相当したとしても、訂正事項1の「三次元画像表示システム」に関する構成は、航空三次元データ等を用いてプラント全体の画像表示を行うもので、本件発明1に係る「パトロール作業ロボット」の技術的範囲を拡張、変更している旨主張をしている。

しかしながら、本件訂正が認められることは、上記第2に詳述したとおりである。
また、上記アの主張については、訂正前の本件発明1は、三次元画像表示システムによって得られる三次元マップも内在していたものであるから、本件訂正発明1の記載についても、何ら矛盾はなく、発明が不明確ということはできない。
上記イの主張について、請求項の内容を理解するために必要があるときは、図面において使用した符号を用いることが許容されているところ、これによって、第三者の本件訂正発明1の理解を過度に妨げるものではなく、むしろ理解を容易にするものであるといえる。
上記ウの主張について、上記第2の2.(1)で検討したとおり、訂正事項1に係る発明特定事項は、本件発明1が内在していたものであるから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
したがって、異議申立人の上記ア、イ、ウの主張はいずれも採用できない。

第8 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パトロール作業用ロボット及びパトロール作業用ロボットを用いた警報システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用ロボットに関し、特に、所定作業領域内における作業を行うための作業用ロボット及び作業用ロボットを用いた警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鉄所や発電所等のプラントの改修・解体等は、プラントの現場で重機を操縦して行われていたが、ロボットによりこの作業を代替することも提案されていた。例えば、出願人は、従来、磁力で球形ガスタンクの外周面に接着しつつ外周面上を移動して球形ガスタンクを溶断することができる溶断ロボットを開発した。この溶断ロボットによれば、作業者は、プラントの解体作業の現場において、溶断ロボットを離れた位置から視認しつつ操縦して安全に球形ガスタンクの解体作業を行うことが可能となる。
【0003】
球形ガスタンクの溶断作業に限らず、まだまだ様々な作業をロボットで行うことのニーズはある。さらに、プラントの作業用ロボットとは技術分野が異なるものの、自動車の分野において、車両を自動運転する装置が特許文献1に開示されている。具体的には、特許文献1には、機械が見るための三次元機械マップと、車両周囲の映像を取得する車載カメラとを備え、車載カメラが出力するリアルタイム映像と車載された三次元機械マップとを比較して自車両及び自車両以外の物体との位置、姿勢、速度、加速度及び方向等の情報を取得し、これらに基づき自車の走行速度と走行方向を決定して走行する車両の自動運転装置が開示されている。
【0004】
特許文献1の自動運転装置によれば、三次元マップ及びリアルタイム映像に基づき車両の自動運転を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5227065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、球形ガスタンクの溶断ロボットによれば、作業者による操縦が必要であるから、その間作業者は他の作業を行うことができない。また、作業時には離れた位置で操縦可能であるものの、作業現場において球形ガスタンクの溶断作業を監視しつつ行う必要がある。
【0007】
したがって、作業現場が高温である場合や有害な物質が発生している場所である場合、あるいは足場が不安定な場所である場合には、作業者が作業現場に近づくことができず、溶断ロボットを用いた作業を行うことができなかった。
【0008】
さらに、特許文献1の三次元機械マップを備えた自動運転装置によれば、三次元機械マップの範囲内において自動車を自動運転させることが可能となるが、それ以上の作業を行うことを意図したものではない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラント等の危険な場所における作業をより安全に、且つ効率的に行うことができる作業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1に記載のパトロール作業用ロボットは、プラント設備領域を含む領域の三次元マップと、周囲の立体的形状データを取得可能な周囲データ取得センサと、該周囲データ取得センサにより得られた前記立体的形状データと前記三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定する現在位置決定手段と、予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20と、を有し、前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであり、前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、前記周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に前記三次元マップ上に前記物理量の情報を前記現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録する記録手段と、を有し、前記三次元マップが、制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、前記複数の格納手段は、所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、前記制御部120は、前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いることを特徴とする。以下、本明細書において、「現在地周囲」というときは「周囲」のことをいうものとし、「現在地の雰囲気」又は「現在地雰囲気」というときは、「周囲の雰囲気」又は「周囲雰囲気」のことをいうものとする。
【0011】
この構成によれば、作業用ロボットは、周囲データ取得センサにより得られた現在地周囲の立体的形状データと三次元マップのデータとを対比して自己の現在位置を決定し、予め設定された経路にしたがって自律的に移動して作業を行うことが可能となる。
【0012】
したがって、作業領域内に危険な箇所があった場合に、その危険な場所まで人が直接出向くことなく安全に作業を行うことができる。
【0013】
さらに、作業中は作業者による操縦は不要となるから、作業効率が向上している。
【0014】
また、この構成によれば、作業領域の場全体が三次元の点群により表現されることから、例えば、レーザスキャナにより計測された点群データをそのまま三次元マップとして用いることができる。また、点群データをそのまま三次元マップとして用いることで、複数の三次元マップ同士をそれらの縮尺及び基準点を合わせて積層及び/又は連結させることが可能となり、利便性が高いものとなっている。さらに、二次元マップ上に障害物等の情報を貼りつけた従来型の車両の自動運転マップとは異なり高さ方向に十分な点群を有するので、車両に限らず様々な移動体のマップとして活用することができる。
【0015】
この構成によれば、作業領域において、作業用ロボットが通過した経路が安全か否かを、作業用ロボットが通過した後の三次元マップを確認することにより把握することができる。これにより、その後に作業を行う者は、ロボットによる作業後の三次元マップを確認することで危険を回避し、安全にその後の作業を行うことが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパトロール作業用ロボットにおいて、前記現在地雰囲気の物理量が、温度、放射線、有害物質及び可燃性ガスの物理量から選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、温度等が基準値を外れた場所を回避しつつ、その後に作業を行う作業者は安全に作業を行うことが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、前記三次元マップデータを無線で発信する発信手段を有する請求項1又は2に記載のパトロール作業用ロボットと、前記発信手段により発信された情報を受信する受信手段と、該受信手段が受信した前記三次元マップデータに記録された前記物理量の情報に基づき警報を発する警報手段と、を備える警報装置と、を有することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、作業用ロボットが検知した物理量の情報を記録した三次元マップデータが無線で発信され、警報装置はそのデータを受信し、警報を発する。
【0023】
したがって、作業者は、作業領域から離れた安全な場所において、警報装置により物理量が基準値範囲を外れたか否かを把握することができる。そして、警報により作業領域における作業用ロボットの現在地雰囲気の物理量が基準値範囲を外れたと分かった時点で、迅速にその状況に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の作業用ロボットによれば、周囲データ取得センサにより得られた現在地周囲の立体的形状データと三次元マップのデータとを対比して自己の現在位置を決定し、予め設定された経路にしたがって自律的に移動して作業を行うことが可能となるから、作業領域内の危険な場所においても人が直接出向くことなく安全に作業を行うことができる。同時に、操縦者も不要となるから、作業効率も向上する。そのうえ、取得した現在地周囲の立体的形状データと三次元マップのデータとを対比して自己の現在位置を決定可能であるから、電波の届かない場所や強電場が発生している場所のようにGPS(グローバル・ポジショニング・システム)が使用不能な環境(例えば、原子力発電所内等)においても自律的に移動して作業を行うことが可能となる。
【0025】
また、本発明の作業用ロボットを用いた警報システムによれば、作業用ロボットが検知した物理量の情報を記録した三次元マップデータが無線で発信され、警報装置はそのデータを受信し、警報を発する。
【0026】
したがって、作業者は、作業領域から離れた安全な場所において、警報装置により物理量が基準値範囲を外れたか否かを把握することができる。そして、警報により作業領域における作業量ロボットの現在地雰囲気の物理量が基準値範囲を外れたと分かった時点で、迅速にその状況に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る作業用ロボット10を示すブロック図である。
【図2】作業用ロボット10の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】所定作業領域内における作業用ロボット10の動作を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る作業用ロボット50を用いた警報システム80を説明するためのブロック図である。
【図5】プラント設備の画像表示システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図6】三次元マップ画像の表示処理における制御部の動作のフローチャートである。
【図7】表示部に表示された第1格納手段の航空三次元データによる三次元マップ画像の例を示す図である。
【図8】表示部に表示された第2格納手段の広域地上三次元データによる三次元マップ画像の例を示す図である。
【図9】表示部に表示された第3格納手段における第1狭域データ格納手段の狭域地上三次元データによる三次元マップ画像の例を示す図である。
【図10】表示部に表示された第3格納手段における第1狭域データ格納手段及び第2狭域データ格納手段の狭域地上三次元データによる三次元マップ画像の例を示す図である。
【図11】三次元画像表示装置の一実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<作業用ロボット>
本発明の実施の形態に係る作業用ロボット10を、図1?図3を参照して詳細に説明する。図1は本実施の形態に係る作業用ロボット10を示すブロック図であり、図2は作業用ロボット10の動作を説明するためのフローチャートであり、図3は所定作業領域内における作業用ロボット10の動作を説明するための斜視図である。
【0029】
本発明の作業用ロボット10は、所定作業領域内における作業を行うロボットである。所定作業領域とは、作業用ロボット10が作業を行うための領域であればよく、例えば、製鉄所、発電所、石油化学コンビナート、造船所、自動車工場等、各種プラント設備が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0030】
なお、プラント設備は、設備を構成する複数の構造物が多種の大型装置や多数の配管を有する複合的な設備である。
【0031】
作業用ロボット10が行う作業は、上記所定作業領域内における作業であればどのような作業であってもよいが、例えば、プラントの改修・解体作業、所定作業領域のパトロール、所定作業領域の清掃、所定作業領域内における荷物の運搬等、種々の作業を挙げることができる。
【0032】
本実施の形態においては、所定作業領域として危険箇所を含むと想定されるプラント設備領域において、プラントのパトロール作業を行う場合を例に本発明に係る作業用ロボット10を説明する。
【0033】
図1に示すように、作業用ロボット10は、現在地周囲の立体的形状データを取得可能な周囲データ取得センサ12と、現在地雰囲気の物理量を検知する検知手段14と、移動のための移動手段18と、移動手段18による移動を制御する制御部20と、を有する。
【0034】
周囲データ取得センサ12は、レーザスキャナ、カメラ等が挙げられる。周囲データ取得センサ12が自己の現在地周囲の立体的形状データを取得することで、現在地周囲の立体物までの距離を把握することが可能となる。本実施の形態において、現在地周囲とは、作業用ロボット10を中心として前後左右上下のあらゆる方向にわたる周囲を意味する。これにより、作業用ロボット10は、後述する現在位置決定手段21により、後述する三次元マップ22上における現在位置を決定することができるからである。なお、作業用ロボット10が水中作業用である場合には、周囲データ取得センサ12として音響測深機を用いることができる。
【0035】
検知手段14は、現在地雰囲気の物理量を検知する手段である。現在地雰囲気の物理量とは、温度、放射線、有害物質及び可燃性ガスの情報から選択される少なくとも一種以上である。一般にこれらの情報は不可視情報である。不可視情報であるがゆえに、作業者が作業現場に立ち入った際に気付かずにこれらの温度等の影響による害を被るおそれがあるからであり、その害を未然に防ぐ観点から、これらの情報は不可視情報であることが好ましい。
【0036】
ここで、放射線とは、放射性元素が崩壊する時に放射される粒子線および電磁波をいい、例えば、α線、β線、γ線が挙げられる。
【0037】
有害物質とは、人体にとって危険な物質であれば全て含む。例えば、一酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物、塩化水素、酸性ガス、ダイオキシン、ジクロロエタン、四塩化炭素等が挙げられる。
【0038】
可燃性ガスは、エタン、メタン、アセチレン、プロパン、ブタン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン等の可燃性ガスが挙げられる。
【0039】
また、作業用ロボット10は、現在地雰囲気の物理量が所定基準値範囲を超えた場合に三次元マップ22上にその物理量の情報を現在位置決定手段21により決定された現在位置とともに記録する記録手段16を有する。記録手段16は、後述する制御部20のROM又はNVRAM等の不揮発性メモリに記憶されたプログラムである。
【0040】
所定基準値範囲とは、現在地雰囲気の物理量として選択される項目に基づいて任意に定めることができる。例えば、温度が検知手段14により検知される場合、所定の基準値範囲を、人が触れても害の無い範囲(すなわち、低温やけどややけどを生じない範囲)と設定することができる。より具体的には、所定基準値範囲を、所定作業領域内の大気温度として-10℃以上150℃未満などと定めることができる。
【0041】
移動手段18は、作業用ロボット10の作業領域内での移動を可能とする手段であり、エンジン、モータ等の駆動機構により動力が伝達される車輪、クローラ、プロペラ、スクリュー等が挙げられる。移動手段18は、制御部20により制御される。本実施の形態においては、モータにより駆動されるクローラである。
【0042】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータである。制御部20は、ROMに記憶させたプログラムをRAM上に展開して対応する処理をCPUに実行させる。
【0043】
なお、上記プログラムはROMに記憶されている場合に限らず、NVRAM(Non-Volatile Randam Access Memory)に記憶されていればよい。
【0044】
制御部20は、移動手段18を制御するほか、ROM又はNVRAMに格納された現在位置決定手段21及び記録手段16等のプログラムに基づき、自己位置の決定を行い、検知手段14が検知した現在地雰囲気の物理量の情報を三次元マップ上に記録する。
【0045】
制御部20には、三次元マップ22を格納するための三次元マップデータベース24が接続されている。本実施の形態においては、三次元マップデータベース24としては記憶媒体としての内蔵型のハードディスクを用いているが、外付けのハードディスクを用いてもよく、メモリーカードを用いてもよい。
【0046】
三次元マップ22は、x、y及びz軸の三次元の位置情報により表現されるマップである。三次元マップ22としては、例えば、立体物を計測した三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群データのマップ、これらの点群を結ぶ多角形により表されるポリゴンデータのマップ、CADデータのマップ及びこれらの合成物を挙げることができる。中でも、点群データのマップであることが好ましい。
【0047】
点群データマップは、作業領域の場全体が三次元の点群により表現されることから、例えば、レーザスキャナにより計測された点群データをそのまま三次元マップとして用いることができ、また、点群データをそのまま三次元マップとして用いることで、複数の三次元マップ同士をそれらの縮尺及び基準点を合わせて積層及び/又は連結させることが可能となり、利便性が高いからである。
【0048】
さらに、点群データマップは、二次元マップ上に障害物等の情報を貼りつけた従来型の車両の自動運転マップとは異なり高さ方向に十分な点群を有するので、車両に限らず様々な移動体のマップとして活用することができる。
【0049】
現在位置決定手段21は、ROMに記憶されたプログラムである。具体的には、現在位置決定手段21は、周囲データ取得センサ12により得られた現在地周囲の立体的形状データと、三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、三次元マップ22上における現在位置を決定するプログラムである。
【0050】
すなわち、周囲データ取得センサ12により得られた現在地周囲の立体的形状データが三次元マップ22のデータの中のある部位の立体的形状データと一致した場合、現在位置決定手段21は、作業用ロボット10が、三次元マップ中のこのある部位(=現在位置)にいると決定する。
【0051】
次に、本実施の形態に係る作業用ロボット10を用いたプラントのパトロール作業について、図2を参照しつつ説明する。
【0052】
まず、作業領域内のスタート位置Sに作業用ロボット10が配置され、電源が投入され、制御部20のROMに記憶されているプログラムがRAM上に展開されると、ステップS101では、周囲データ取得センサ12による現在地周囲の立体的形状データの取得が行われる。得られた現在地周囲の立体的形状データは、制御部20に伝達される。
【0053】
次に、ステップS102において、制御部20は、三次元マップデータベース24に格納された三次元マップ22にアクセスする。そして、三次元マップ22のデータと周囲データ取得センサ12により得られた現在地周囲の立体的形状データとを対比し、三次元マップ22上における現在位置を決定する。
【0054】
ステップS103では、現在地雰囲気の物理量の検知を行う。検知手段14は、現在地雰囲気の物理量を検知し、その情報を制御部20に伝達する。
【0055】
ステップS104では、制御部20は、検知手段14により検知された現在地雰囲気の物理量が、予め設定された所定基準値範囲から外れているか否かを判定する。現在地雰囲気の物理量が所定基準値範囲から外れている場合(YES判定)、ステップS105に移行する。所定基準値範囲内である場合(NO判定)、ステップS106に移行する。
【0056】
ステップS105では、記録手段16は、現在地雰囲気の物理量をステップSS102で決定された現在位置とともに三次元マップ22上に記録し、その情報を更新する。更新された三次元マップ22Uは、三次元マップデータベース24に格納される。なお、原則として当初の三次元マップ22は上書きされずにそのまま保存される。
【0057】
ステップS106では、図3に示すように、作業領域A内において、作業用ロボット10は、予め設定された経路R上で、位置Pnから位置Pn+1までの所定距離を移動する。なお、経路Rは、予め三次元マップ22上に書き込まれていてもよく、作業用ロボット10が入力手段を備える場合には、この入力手段を介して三次元マップ上に書き込まれても良い。その後、ステップS107に移行する。
【0058】
ステップS107では、作業用ロボット10が目的地D(図3参照)に到着したか否かが判定される。作業用ロボット10が目的地Dに到着した場合には(YES判定)、フローが終了する。作業用ロボット10が目的地Dに到着していない場合には(NO判定)、ステップS101に移行し、作業ロボット10が目的地Dに到着するまでステップS101?S107までを繰り返す。
【0059】
したがって、本実施の形態に係る作業用ロボット10によれば、作業用ロボット10は、周囲データ取得センサ12により得られた現在地周囲の立体的形状データと三次元マップ22のデータとを対比して自己の現在位置を決定し、予め設定された経路Rにしたがって自律的に移動して作業を行うことが可能となる。
【0060】
したがって、作業領域A内に危険な箇所があった場合に、その危険な場所まで人が直接出向くことなく安全に作業を行うことができる。
【0061】
さらに、作業中は作業者による操縦は不要となるから、作業効率が向上している。
【0062】
また、作業領域Aにおいて、作業用ロボット10が通過した経路Rが安全か否かを、作業用ロボット10が通過した後の三次元マップ22Uを確認することにより把握することができる。これにより、その後に作業を行う者は、ロボットによる作業後の三次元マップ22Uを確認することで、危険を回避し、安全にその後の作業を行うことが可能となる。
【0063】
なお、上記実施の形態においては、もとの三次元マップ22には物理量の情報及び物理量が存在する位置の情報は記録されていないが、予め三次元マップ22にそれらの情報が記録されていてもよい。
【0064】
これにより、予め三次元マップ22に記録された物理量の情報及びその物理量が存在する位置の情報とその後に三次元マップ22に記録された、検知手段14により検知した物理量の情報およびその物理量が存在する位置の情報とを対比することで、作業領域A内における作業用ロボット10が通過した経路Rの雰囲気の物理量の変化を把握することが可能となる。
【0065】
さらに、上記実施の形態においては、作業領域A内のスタート位置Sに作業用ロボット10を配置したが、作業領域A外の位置をスタート位置Sとし、及び/又は作業領域A外の位置を目的地Dの位置としてもよい。これによれば、例えば、作業領域A内のどの部位に有害な物質が発生しているか予想がつかない場合に、作業領域A内に作業用ロボット10の配置のために立ち入ることによって有害な物質による害をこうむる危険を回避することができる。
【0066】
また本発明は、作業用ロボットだけでなく、作業用ロボットを用いた警報システムを提供する。以下に、本実施の形態にかかる作業用ロボット50を用いた警報システム60を説明する。
【0067】
<作業用ロボットを用いた警報システム>
図4に示すように、本実施の形態にかかる作業用ロボット50を用いた警報システム80は、作業用ロボット50と、警報装置70と、を有する。
【0068】
作業用ロボット50は、制御部20に発信手段52が接続されていることを除き、上記実施の形態に係る作業用ロボット10と同様の構成を有する。
【0069】
発信手段52は、検知手段14が検知した所定基準値範囲を外れる物理量の情報を記録した三次元マップ22Uのデータを無線で発信する手段である。発信の頻度は、例えば、作業用ロボット50の現在位置及び現在地雰囲気の物理量の情報が更新されたタイミング(すなわち、図2におけるステップS105後であって、ステップS106の前)とすることができる。
【0070】
警報装置70は、受信手段72と、表示手段74と、を有する。
【0071】
受信手段72は、発信手段52から発信された上記情報を受信する手段である。
【0072】
表示手段74は、受信した三次元マップ22(更新された場合は、更新された三次元マップ22U)内における作業用ロボット50の現在位置及び検知手段14が検知した現在地雰囲気の物理量の情報を表示する表示手段である。表示手段74は、例えば、コンピュータの出力表示装置である。
【0073】
なお、表示手段74において、検知手段14が検知した現在地雰囲気の物理量の情報は、当該現在地雰囲気の物理量の情報がその位置情報とともに点滅表示されることで警報として発せられる。例えば、温度が所定基準値範囲から外れていることが検知された場合、表示手段74(出力表示装置)は、その温度が検知された三次元マップ上の位置のプロットを点滅させ、且つ、当該プロットの横に温度を数値表示させてそのプロットと同時に点滅させる、といった警報を発する。すなわち、表示手段74は、受信手段72が受信した危険箇所の情報に基づき警報を発する警報手段と言うことができる。
【0074】
したがって、本実施の形態にかかる作業用ロボット50を用いた警報システム80によれば、作業用ロボット50が検知した現在地雰囲気の物理量の情報を記録した三次元マップデータが無線で発信され、警報装置70はそのデータを受信し、警報を発する。
【0075】
したがって、作業者は、作業領域から離れた安全な場所において、警報装置70により物理量が基準値範囲を外れたか否かを把握することができる。そして、警報により作業領域における作業用ロボット50の現在地雰囲気の物理量が基準値範囲を外れたと分かった時点で、迅速にその状況に対応することが可能となる。
【0076】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでは無く、種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態において、警報手段として表示手段74を用いているが、これに限られるものではない。警報手段として、音により警報するブザーや、点滅や回転により警報するランプを用いてもよい。
【0077】
また、本発明に用いられる三次元マップ22は、以下の三次元画像表示システムにより表示される三次元マップ画像を用いることができる。
【0078】
<三次元画像表示システム>
図5は、プラント設備の三次元画像表示システム100の一実施形態を示す概略構成図である。
【0079】
本実施形態のプラント設備の三次元画像表示システム(コンピュータシステム)100は、少なくとも、所定の製鉄プラント(プラント設備)150と、その周辺領域の三次元マップ画像を表示するものであり、サーバ102と、ネットワーク104を介してサーバ102に接続された一以上の端末装置103とを含む。なお、本実施形態では、プラント設備の一例として、製鉄プラント150(図7参照)を採用しているが、プラント設備はこれに限られず、例えば、原子力発電や火力発電等の発電プラント、化学プラント、環境プラント等、様々なプラント設備を対象とすることができる。
【0080】
サーバ102は、三次元データを記憶する記憶部110と、制御部120と、通信部127とを有する。端末装置103は、入力手段131と、表示部132と、端末記憶部133と、端末制御部134と、通信部140とを有する。
【0081】
サーバ102の通信部127は、ネットワーク104を介して端末装置103と情報の送受信を行う通信インタフェースにより構成される。
【0082】
サーバ102の記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段111,112,113,114を有しており、これらの格納手段に格納された三次元データを関連付けて記憶している。記憶部110に含まれる格納手段は、第1格納手段111と、第2格納手段112と、第3格納手段113と、第4格納手段114とを含む。ここで、各格納手段111,112,113,114にける第1?第4の表記は、格納の順番を表すものではなく、単なる格納手段の識別を表すものである。また、以下の説明に記載された、第1の格納工程、第2の格納工程、第3の格納工程及び第4の格納工程における第1?第4の表記は、格納の順番を表すものではなく、単なる格納手段の識別を表すものである。
【0083】
各格納手段111,112,113,114に格納される三次元データは、三次元の位置情報のプロットの集合体(三次元座標)から構成される点群データであり、記憶部110において、それぞれの格納手段111,112,113,114における三次元データは、この点群データに基づいて互いに関連付けられている。具体的には、各格納手段111,112,113,114における三次元データ、つまり点群データが、各格納手段111,112,113,114において共通する複数の点群データによって互いに関連付けられている。
【0084】
以下に説明するように、第1?第4格納手段111,112,113,114には、地形等の立体物の計測方法(すなわち、三次元データの取得方法)の相違によって、精度の異なる三次元データ、つまり、一定の領域における点群の粗密の度合が異なる三次元データが格納されている。ここで、立体物とは、陸域161や水域162を含む地形の形態や、製鉄プラント150を構成する構造物151の形態等、自然的及び人為的な立体物を含む意味である(図7参照)。製鉄プラント150を構成する構造物151の例としては、燃結路、コークス炉、高炉、転炉、鋳造設備、圧延設備等や、これらを構成する機械装置や配管等が含まれる。
【0085】
第1格納手段111には、航空レーザ計測によって立体物を計測した航空三次元データが格納される(第1の格納工程)。この航空三次元データは、少なくとも、所定のプラント設備と、該プラント設備の周辺領域との立体物データを含む。製鉄プラント150等のプラント設備は、通常、海路から原料を搬入できるように海岸付近に設置されているので、周辺領域の立体物データ(地形データ)には、プラント設備が設置される陸域と、プラント設備付近の海岸に隣接する海域とのデータが含まれている。本実施形態の第1格納手段111は、製鉄プラント150と、該製鉄プラント150の周辺領域(製鉄プラント150が設置されている陸域161、及び、原料搬入口となる、製鉄プラント150の周辺の海域162)の立体物データを含んでいる。
【0086】
第2格納手段112には、例えば自動車にカメラ及びレーザスキャナを搭載した、モービルマッピングシステム(MMS)によって立体物を計測した広域地上三次元データが格納される(第2の格納工程)。この広域地上三次元データは、少なくとも、第1格納手段111に格納された航空三次元データに含まれる製鉄プラント150を含む地上領域を計測することによって取得した三次元データを含む。MMSによる計測では、航空レーザ計測よりも精度の高い三次元データを取得することができる。本実施形態の第2格納手段112は、製鉄プラント150(より具体的には、製鉄プラント150の外観)と、該製鉄プラント150の周辺の地上領域(陸域161)との立体物データを含んでいる。
【0087】
第3格納手段113には、移動式のMMSに対して非移動式となる、地上型レーザ計測によって立体物を計測した狭域地上三次元データが格納される(第3の格納工程)。この狭域地上三次元データは、製鉄プラント150の内部構造の三次元データを含む。この非移動式の地上型レーザ計測は、少なくとも製鉄プラント150の内部構造の立体物データを取得可能なレーザ計測であって、MMSに比して精度の高い三次元データを取得することが可能なものである。このような非移動式の地上型レーザ計測としては、例えば、非移動式の地上固定型レーザスキャナや地上型ハンディスキャナを用いることができる。また、第3格納手段113は、レーザ計測による点群データの精度の違い(すなわち、一定の領域における点群の粗密の度合の違い)によって、さらに、複数の格納手段に分割した構成であってもよい。
【0088】
本実施形態では、第3格納手段113が、第1狭域データ格納手段116と、第2狭域データ格納手段117とを含む。第1狭域データ格納手段116には、非移動式の地上固定型レーザスキャナによって計測した第1狭域地上三次元データが格納され、第2狭域データ格納手段117には、地上型ハンディスキャナによって計測した、第1狭域地上三次元データよりも点群データの精度の高い三次元データである第2狭域地上三次元データが格納される。第2狭域データ格納手段117には、非移動式の地上固定型レーザスキャナによって計測することのできない、構造物151の細部の立体物データが格納されている。
【0089】
第4格納手段114には、少なくとも第1格納手段111に格納された航空三次元データに含まれる海域162における水中を測量した、水域測量による水域三次元データが格納される(第4の格納工程)。水域測量としては、例えば、音響測深機や、浅海底観測システム等を用いることができる。第4格納手段114の水域三次元データは、第1格納手段111の三次元データよりも点群データの精度が高く、第2及び第3格納手段112,113の三次元データと点群データの座標が異なっている。本実施形態において、第4格納手段114の水域三次元データは、少なくとも製鉄プラント150の周辺の海域162の地形データを含んでいる。
【0090】
上述した複数の格納手段111,112,113,114において、製鉄プラント150を構成する構造物151の三次元データは、構造物151の機能によって分類されている。機能分類としては、例えば、内部を流通する蒸気、水、ガス、油等の違いによる配管の分類、ガス系統、電気系統、熱系統等による設備の分類、原料の移動経路による分類、構造物151を構成する設備の機能による分類、危険性の高さによる分類などを単独又は組み合わせて行うことができる。なお、このような構造物151の機能分類は、少なくとも2つの格納手段においてなされていることが好ましく、特に、第2格納手段112と第3格納手段113において、このような機能分類がなされていることが好ましい。さらに第1格納手段111についても第2格納手段112及び第3格納手段113と同様に機能分類がなされていることがより好ましい。記憶部110は、それぞれの格納手段111,112,113,114における同一分類の構造物151の三次元データを互いに関連付けて記憶している。
【0091】
サーバ102の制御部120は、地図表示手段121と、データ更新手段122とを含み、地図表示手段121は、格納部選択手段125と、階層マップ画像表示手段126とを含む。
【0092】
地図表示手段121は、端末装置103からの地図表示を指示する信号を受信した場合に、記憶部110に格納された三次元データから、三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を端末装置103の表示部132に表示させるように端末装置103へ送信するものである。
【0093】
格納部選択手段125は、端末装置103からの地図表示の信号を受信した場合に、端末装置103の入力手段131から入力された、記憶部110に格納された三次元データ(すなわち、立体物データ)に関する位置指定と縮尺指定とに基づいて、複数の格納手段111,112,113,114から、端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出するものである。本実施形態の格納部選択手段125は、さらに、抽出された格納手段のうち、端末装置103によって指定された縮尺に最も適合する一つの格納手段を選択する。
【0094】
また、格納部選択手段125は、端末装置103の入力手段131から入力された、記憶部130に格納された立体物データに関する指定が、位置指定のみの場合に、予め設定された所定の格納手段を選択する。本実施形態では、端末装置103からの指定が位置指定のみの場合に、格納部選択手段125は第1格納手段111を選択する。
【0095】
また、格納部選択手段125は、端末装置103からの位置指定と縮尺指定とがない場合、すなわち、地図表示の指示のみの場合、予め設定された所定の格納手段を選択する。本実施形態では、位置指定と縮尺指定とがない場合に、第1格納手段111を選択する。
【0096】
階層マップ画像表示手段126は、格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって、端末装置103によって指定された縮尺に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を端末装置103の表示部132に表示させるように端末装置103へ送信するものである。格納部選択手段125によって二以上の格納手段が選択された場合には、選択された複数の格納手段の三次元データに基づいて、指定された縮尺に適した三次元マップ画像を生成する。
【0097】
既述のとおり、本実施形態では、格納部選択手段125によって複数の格納手段から一つの格納手段を選択しており、階層マップ画像表示手段126は、選択された一つの格納手段の三次元データから、三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を表示部132に表示させるように端末装置103へ送信する。本実施形態では、格納部選択手段125によって一つの格納手段を選択することで、縮尺の選択(つまり、端末装置によって指定された縮尺に適した縮尺の選択)を行っており、階層マップ画像表示手段126では、それぞれの格納手段111,112,113,114において、予め設定された縮尺の三次元マップ画像を生成するようにしている。なお、階層マップ画像表示手段126による縮尺の選択はこれに限られず、格納部選択手段125によって選択された一つの格納手段において、予め設定された縮尺ではなく、入力手段131によって指定された縮尺に適した詳細な縮尺の選択が可能な構成であってもよい。
【0098】
また、階層マップ画像表示手段126は、端末装置103からの位置指定と縮尺指定とがない場合、格納部選択手段125によって選択された格納手段(本実施形態では、第1格納手段111)から、予め設定された領域の三次元マップ画像を生成し、端末装置103の表示部132に表示させるように端末装置103へ送信する。
【0099】
データ更新手段122は、端末装置103から送信された立体物に関する三次元データを記憶部110の中の一つの格納手段に格納して、該格納手段の三次元データを更新するとともに、更新した三次元データを他の格納手段の三次元データと関連付けるものである。端末装置103から送信された三次元データを格納する一つの格納手段の選択は、該三次元データの取得方法によって決定される。つまり、航空レーザ計測によって取得された場合には第1格納手段111に、MMSによって取得された場合には第2格納手段112に、非移動式の地上型レーザ計測によって取得された場合には第3格納手段113に、水域測量によって取得された場合には第4格納手段114に格納される。さらに、本実施形態では、非移動式の地上型レーザ計測において、非移動式の地上固定型レーザスキャナによって取得された三次元データは、第1狭域データ格納手段116に格納され、地上型ハンディスキャナによって取得された三次元データは、第2狭域データ格納手段117に格納される。
【0100】
端末装置103は、例えばインターネット等のネットワーク104を介して、サーバ102と通信可能な装置であり、既述のとおり、入力手段131と、表示部132と、端末記憶部133と、端末制御部134と、通信部140とを有する。通信部140は、ネットワーク104を介してサーバ102と情報の送受信を行う通信インタフェースにより構成される。入力手段131は、端末装置103の使用者(ユーザ)からの操作入力を受け付けるものであり、表示部132は、画像を表示するものである。このような端末装置103としては、例えば、キーボードやマウス等の入力装置(入力手段131)、液晶表示装置等の表示装置(表示部132)等を備えるパーソナル・コンピュータ、タッチパネル(入力手段131、表示部132)を備える携帯端末機等を用いることができる。
【0101】
端末記憶部133は、端末装置103によって作成したデータや、サーバ102や他の端末機器103やユニバーサルシリアルバス(USB)等の外部機器から入力されたデータを記憶する部位である。
【0102】
端末制御部134は、寸法算出手段135と、表示選択手段136と、合成画像生成手段137と、機能分類作成手段138と、機能別表示手段139とを含む。
【0103】
寸法算出手段135は、記憶部110に記憶された三次元データ、すなわち点群データに基づいて、製鉄プラント150の構造物151及び/又は地形の寸法を算出するものである。具体的には、端末装置103の入力手段131によって、表示部132に表示された三次元マップ画像における構造物151や地形の中から、寸法を算出したい範囲が選択される(入力される)と、点群データに基づいて寸法を算出し、算出結果を表示部132に表示させる。なお、寸法の算出は、三次元マップ画像として表示部に表示されているものに限られず、記憶部10に格納された三次元データを有する立体物(地形や構造物)に関する寸法を算出することができる。
【0104】
表示選択手段136は、表示部132に表示された三次元マップ画像における構造物131の一部又は全部を表示状態又は非表示状態となるように選択可能にするものである。具体的には、端末装置103の入力手段131によって、三次元マップ画像における構造物151の一部又は全部を選択し、入力手段131によって、非表示を入力指示することで、選択した構造物151を表示部132において非表示状態にすることができる。また、入力手段131によって、非表示状態となっている構造物151について表示を入力指示することで、非表示状態の構造物151を再度、表示させることができる。なお、構造物151のみならず、地形の一部又は全部についても表示状態又は非表示状態に選択可能とすることができる。
【0105】
合成画像生成手段137は、端末装置103が有するCADデータやポリゴンデータによる表示画像を、階層マップ画像表示手段126によって表示された三次元マップ画像に重ねあわせて表示部132に表示させるものである。このようなCADデータ及びポリゴンデータとしては、端末記憶部133に記憶された三次元CADデータ等を用いることができる。合成画像生成手段137は、表示選択手段136と組み合わせて使用することができる。具体的には、表示選択手段136によって表示部132における三次元マップ画像の構造物151の一部を非表示状態とし、合成画像生成手段137によって、非表示状態となった部位に、CADデータによる表示画像を重ねあわせて表示させることができる。
【0106】
機能分類作成手段138は、入力手段131によって記憶部110の三次元データに含まれる構造物151を機能ごとに分類し、分類した情報をサーバ102の記憶部110に記憶させるものである。機能分類としては、例えば、配管の分類や設備の機能による分類等、ユーザが入力手段131によって任意に設定した分類や、サーバ102の記憶部110に予め登録された分類を行うことができる。
【0107】
機能別表示手段139は、製鉄プラント150を構成する構造物151をその機能ごとに視覚的に識別できるように表示部132に表示させるものである。具体的には、サーバ102の記憶部110において設定されている機能分類に関して、端末装置103の入力手段131からの機能分け指示を行った場合に、指示された機能を有する構造物151を色彩によって他の構造物151と識別可能となるように表示部132に表示させる。例えば、表示部132に表示された構造物151の三次元マップ画像において、入力手段131により、水(液体)が流通す配管と、蒸気が流通する配管とを機能分け指示した場合に、水の配管を赤色に表示し、蒸気の配管を黄色に表示させる等によって、異なる機能の配管を視覚的に識別できるようにする。
【0108】
また、機能別表示手段139は、異なる縮尺の三次元マップ画像において、同一の機能の構造物151を同一の色彩によって表示させることができる。例えば、地図表示手段121によって、縮尺の異なる2つの三次元マップ画像を表示部132に表示させ、それぞれの三次元マップ画像において、同一機能を有する構造物151を同一色に表示させることで、同一機能を有する構造物151のマクロ的管理とミクロ的管理とを並行して行うことができる。
【0109】
なお、機能別表示手段139における視覚的な識別表示は、色彩による識別表示に限られない。例えば、指示された機能を有する構造物151を点滅表示させる等、他の機能を有する構造物151と視覚的に識別可能な方法であればよい。
【0110】
上述した三次元画像表示システムでは、表示選択手段136によって、構造物151等の表示・非表示を選択し、合成画像生成手段137によって、CADデータやポリゴンデータの表示画像を三次元マップ画像に重ねあわせることで、製鉄プラント150の設計や改修工事のシミュレーションを行うことができる。また、寸法算出手段135によって、地形や構造物151の寸法を簡易に算出することができるので、設計作業の効率化を図ることができる。また、点群データを用いて三次元マップ画像を生成することで、陸域161及び海域162を含む広域の地図情報にCADデータを重ねあわせることができるので、海域162を含む製鉄プラント150全体の地形的な管理にも適している。
【0111】
また、機能別表示手段139によって、製鉄プラント150の設備を機能ごとに識別できるように画像表示させることができるので、改修作業を行った場合に、改修の影響が生じる可能性のある部位や関連する領域を改修作業前に視覚的に認識することができる。これにより、改修工事における不具合の発生を回避して、改修作業の効率化を図ることができる。また、構造物151が危険度の高さによって分類されている場合には、機能別表示手段139によって、危険度の高い構造物151を表示させることにより、改修工事における事故の未然防止に活用することができる。また、危険度の低い構造物151を表示させることにより、避難場所の確保等に利用することができる。
【0112】
なお、サーバ102の制御部120は、端末制御部134における各手段を実行させるユーザインタフェース要素を、端末装置103の表示部132に表示させるように端末装置103に送信する構成とすることができる。例えば、ネットワーク104を介して端末装置103からサーバ102へアクセスがなされた場合に、サーバ102の制御部120は、寸法計測手段135を機能させるユーザインタフェース要素を端末装置103の表示部132に表示させるように端末装置103へ送信し、端末装置103が寸法計測手段135を実行可能となるようにすることができる。表示選択手段136、合成画像生成手段137、機能分類作成手段138及び機能別表示手段139についても、同様な構成とすることができる。
【0113】
次に、上述した製鉄プラント150の三次元画像表示システム100における三次元マップ画像の表示処理について説明する。図6は、三次元マップ画像の表示処理における制御部120の動作のフローチャートである。
【0114】
まず、端末装置103の入力手段131によってユーザからの三次元マップ画像の地図表示指示が受け付けられ、この地図表示指示がネットワーク104を介してサーバ102に受信されると(ステップS200)、サーバ102の地図表示手段121は、地図表示指示の中に、地図表示に関する位置指定が含まれるか否かを判断する(ステップS201)。
【0115】
地図表示指示に位置指定が含まれていない場合(ステップS201:No)、格納部選択手段125は、予め設定された格納手段である第1格納手段111を選択する。階層マップ画像表示手段126は、第1格納手段111の三次元データから予め設定された所定領域の三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を端末装置103の表示部132に表示させるように端末装置103へ送信し(ステップS202)、表示処理を終了する。
【0116】
地図表示指示に位置指定が含まれる場合(ステップS201:Yes)、制御部120の格納部選択手段125は、端末装置103からの地図表示指示に縮尺指定が含まれるか否かを判断する(ステップS203)。
【0117】
地図表示指示に縮尺指定が含まれていない場合(ステップS103:No)、格納部選択手段125は、予め設定された格納手段である第1格納手段111を選択する。階層マップ画像表示手段126は、第1格納手段111の三次元データから、端末装置103によって指定された位置を含む所定範囲領域の三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を端末装置103の表示部132に表示させるように端末装置103へ送信し(ステップS204)、表示処理を終了する。
【0118】
地図表示指示に縮尺指定が含まれる場合(ステップS203:Yes)、格納部選択手段125は、指定された位置の三次元データを含む格納手段を抽出し、抽出した格納手段の中から指定された縮尺に適した一つの格納手段を選択する(ステップS205)(格納部選択工程)。選択された格納手段が第3格納手段13である場合には、格納部選択手段25は、さらに、第1狭域データ格納手段116と第2狭域データ格納手段117とのうち、指定された縮尺に適した一つの格納手段をする構成とすることができる。
【0119】
次に、階層マップ画像表示手段126は、ステップS205において選択された一つの格納手段の三次元データから、端末装置103によって指定された位置を含む所定範囲領域の三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を端末装置103の表示部132に表示させるように端末装置103へ送信し(ステップS206)(階層マップ画像表示工程)、表示処理を終了する。
【0120】
図7?図10は、階層マップ画像表示手段126によって端末装置103の表示部132に表示された三次元マップ画像の例を示す図である。図7は、第1格納手段111の航空三次元データによる三次元マップ画像の例を示し、図8は、第2格納手段112の広域地上三次元データによる三次元マップ画像の例を示す。図9は、第3格納手段113における第1狭域データ格納手段116の狭域地上三次元データによる三次元マップ画像の例を示し、図10は、第3格納手段における第1狭域データ格納手段16及び第2狭域データ格納手段117の狭域地上三次元データによる三次元マップ画像の例を示す。
【0121】
端末装置103が指定可能な縮尺の範囲において、指定された縮尺が小さい場合(陸海の広域指定の場合)や、端末装置103からの縮尺指定がない場合には、図7に示すように、製鉄プラント150を広域にわたって視認可能な三次元マップ画像が表示される。指定可能な縮尺の範囲において、指定された縮尺が中程度の場合(陸海狭域指定の場合)には、図8に示すように、製鉄プラント150の一部の設備(構造物151)の外観と、製鉄プラント150の敷地内の道路152等を含む、該設備の周辺の景観とを含むような、図7に比して狭い領域の三次元マップ画像が表示される。指定可能な縮尺の範囲において、指定された縮尺が大きい場合(構造物広域指定の場合)には、図9に示すように、製鉄プラント150の設備の外観構造を三次元マップ画像としてより詳細に表示させることができる。指定可能な縮尺の範囲において、指定された縮尺が非常に大きい場合(構造物狭域指定の場合)には、製鉄プラント150の設備の外観だけではなく、図10に示すように、製鉄プラント150を構成する構造物151の内部構造(内部配管154や内部通路155等)を三次元マップ画像として表示させることができる。さらに、第4格納手段114の水域三次元データによる三次元マップ画像では、水中の地形や、水中の構造物の三次元画像を表示させることができる。
【0122】
このように、本実施形態の三次元画像表示システム100は、地形の広域マップ、地形の狭域マップ、構造物151の広域マップ、構造物151の狭域マップ(構造物151の内部構造マップ)及び水中マップを統合して管理することができる。そのため、広大な敷地面積を有するとともに、海岸付近に設置され、さらに、構造物151の詳細な設計図を必要とするプラント設備の管理に適している。特に、水域マップを備えることで、護岸工事に利用することができ、海岸付近に設置されるプラント設備の管理に好適である。また、必要な領域のみ点群データの精度の高い三次元マップ画像を用いることができるので、データ量を抑えながら、プラント設備の統合的な管理を行うことができる。
【0123】
次に、上述した製鉄プラント150の三次元画像表示システム100における三次元データの更新処理について説明する。
【0124】
更新する立体物の三次元データ(地形の三次元データや構造物の三次元データ)は、端末装置103からネットワーク104を介してサーバ102へ送信される。サーバ102が立体物の三次元データを受信すると、データ更新手段122は、三次元データの取得方法によって、第1?第4格納手段111,112,113,114から一つの格納手段を選択する。
【0125】
この三次元データの取得方法に基づく格納手段の選択は、例えば、端末装置103の使用者が三次元データをサーバ102へ送信する際に、取得方法を指定し、この取得方法の指定に基づいてデータ更新手段122が格納手段を選択する構成とすることができる。また、端末装置103からの三次元データの取得方法の指定によって、格納手段を選択するとともに、データ更新手段122が、選択された格納手段の点群データの精度と、端末装置103から送信された点群データの精度とを比較し、精度が同程度である場合に、選択された格納手段に格納して三次元データを更新し、精度が異なる場合に、エラー表示を端末装置103の表示部132に表示させるようにすることができる。また、端末装置103から送信された三次元データの精度(点群データの精度)の違いによって、データ更新手段122が、同程度の点群データの精度を有する格納手段を選択する構成としてもよい。
【0126】
格納手段が選択されると、データ更新手段122は、端末装置103から受信した三次元データによって、選択された格納手段の三次元データの一部又は全部を更新する。その後、更新された三次元データを他の格納手段の三次元データと関連付けて、記憶部110に記憶させる。
【0127】
データ更新手段122によって、それぞれの格納手段111,112,113,114ごとにデータの更新ができるので、取得方法の異なる三次元データの更新を容易に行うことができる。そのため、改修工事等によって製鉄プラント150に関する三次元データの変更が生じた場合に、一つの格納手段の三次元データを更新することによって、他の格納手段の三次元データに反映させることができるので、地形の広域マップ、地形の狭域マップ、構造物151の広域マップ、構造物151の狭域マップ及び水中マップを個別に更新する手間を省くことができる。その結果、製鉄プラント150の管理コストを低減し、管理作業の効率を向上させることができる。さらに、データ更新手段122によって、自動的に格納手段を選択させた場合には、端末装置103のユーザの操作がより簡易になる。また、複数のユーザが三次元画像表示システム100を利用する場合、例えば、サーバ102に複数の端末装置103が接続されている場合に、それぞれの端末装置103のユーザが最新の三次元データによる三次元マップ画像を利用することができる。
【0128】
上述した三次元画像表示システム100は、複数のユーザが端末装置103及びインターネット(ネットワーク104)を介してサーバ102へアクセス可能なクラウド型のシステムとして好適に利用することができる。
【0129】
次に、三次元画像表示装置105について説明する。図11は、三次元画像表示装置105の一実施形態を示す概略構成図である。図11に示す実施形態において、図5に示す三次元画像表示システム100と同様の機能を有するものには同一の符号を付しており、同様の機能についてはその詳細な説明を省略する。
【0130】
本実施形態の三次元画像表示装置(コンピュータシステム)105は、入力手段131と、表示部132と、三次元データを記憶する記憶部110と、制御部120と、通信部とを有する。通信部は、ネットワークを介して外部機器と情報の送受信を行う通信インタフェースにより構成される。
【0131】
入力手段131は、ユーザからの操作入力を受け付けるものであり、表示部132は、画像を表示するものである。
【0132】
記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段111,112,113,114を有しており、これらの格納手段に格納された三次元データを関連付けて記憶している。記憶部110に含まれる格納手段は、第1格納手段111と、第2格納手段112と、第3格納手段113と、第4格納手段114とを含む。第3格納手段113は、第1狭域データ格納手段116と、第2狭域データ格納手段117とを含む。
【0133】
本実施形態における三次元画像表示装置105の記憶部110及び第1?第4格納手段111,112,113,114のそれぞれは、図5に示すサーバ102の記憶部110及び第1?第4格納手段111,112,113,114のそれぞれと同様の構成であって、同様の機能を奏する。
【0134】
制御部120は、地図表示手段121と、データ更新手段122と、寸法算出手段135と、表示部選択手段136と、合成画像生成手段137と、機能分類作成手段138と、機能別表示手段139とを含む。地図表示手段121は、格納部選択手段125と、階層マップ画像表示手段126とを含む。
【0135】
地図表示手段121は、三次元画像表示装置105の入力手段131からの地図表示指示により、記憶部110に格納された三次元データから、三次元マップ画像を生成し、三次元画像装置105の表示部132に表示させる。
【0136】
格納部選択手段125は、入力手段から地図表示指示を受けた場合に、記憶部110に格納された三次元データ(すなわち、立体物データ)に関する、入力手段131からの位置指定と縮尺指定とに基づいて、複数の格納手段111,112,113,114から、指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出するものである。格納部選択手段125は、さらに、抽出された格納手段のうち、入力手段131によって指定された縮尺に最も適合する一つの格納手段を選択する。
【0137】
階層マップ画像表示手段126は、格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって、入力手段131によって指定された縮尺に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を表示部132に表示させるものである。
【0138】
データ更新手段122は、外部機器から入力された三次元データを記憶部110の中の一つの格納手段に格納して、該格納手段の三次元データを更新するとともに、更新した三次元データを他の格納手段の三次元データと関連付けるものである。
【0139】
寸法算出手段135は、記憶部110に記憶された三次元データ、すなわち点群データに基づいて、プラント設備の構造物及び/又は地形の寸法を算出するものである。
【0140】
表示部選択手段136は、表示部132に表示された三次元マップ画像における構造物の一部又は全部を表示状態又は非表示状態となるように選択可能にするものである。
【0141】
合成画像生成手段137は、三次元画像表示装置105の記憶部110が有するCADデータやポリゴンデータによる表示画像を、階層マップ画像表示手段126によって表示された三次元マップ画像に重ねあわせて表示部132に表示させるものである。合成画像生成手段137は、また、外部機器から入力されたCADデータやポリゴンデータによる表示画像を三次元マップ画像に重ねあわせて表示させることができる。
【0142】
機能分類作成手段138は、入力手段131によって記憶部110の三次元データに含まれる構造物を機能ごとに分類し、分類した情報を記憶部110に記憶させるものである。
【0143】
機能別表示手段139は、プラント設備を構成する構造物をその機能ごとに視覚的に識別できるように表示部132に表示させるものである。
【0144】
上述した三次元マップ画像装置105は、図5に示す三次元画像表示システム100と同様の効果を奏することができ、プラント設備のマクロ的及びミクロ的な管理を容易に行うことができる。
【0145】
なお、図5に示す三次元画像表示システム1及び図11に示す三次元画像表示装置105において、制御部120及び端末制御部124内の各手段は、制御部120及び端末制御部124内のプロセッサ(演算手段)で、記憶部110及び端末記憶部133に格納されているアプリケーションプログラムの各ソフトウェアモジュールを実行することによって実現させることができる。上記アプリケーションプログラムは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどのコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に格納して頒布することができる。また、上記アプリケーションプログラムは、アプリケーションプログラムを伝送可能な伝送媒体(通信ネットワークまたは放送波等)を介してコンピュータに供給することができる。
【0146】
なお、上述した三次元画像表示システム1及び三次元画像表示装置105は、プラント設備に限らず、教育施設や公共施設、さらには、より広域の都市施設等の施設管理にも好適に利用することができる。なお、必要に応じて第4格納手段114における水域三次元データは、海中のみならず、河川水中を測量した水域三次元データを含むものとしてもよい。また、河川水中を測量した水域三次元データをさらに別の格納手段(第5格納手段)に格納する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0147】
10,50 作業用ロボット
12 周囲データ取得センサ
14 検知手段
16 記録手段
18 移動手段
20 制御部
21 現在位置決定手段
22 三次元マップ
52 発信手段
70 警報装置
72 受信手段
74 表示手段(警報手段)
80 警報システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント設備領域を含む領域の三次元マップと、
周囲の立体的形状データを取得可能な周囲データ取得センサと、
該周囲データ取得センサにより得られた前記立体的形状データと前記三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定する現在位置決定手段と、
予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20と、を有し、
前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであり、
前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、
前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、
前記周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に前記三次元マップ上に前記物理量の情報を前記現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録する記録手段と、を有し、
前記三次元マップが、
制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、
前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、
前記複数の格納手段は、
所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、
少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、
少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、
前記制御部120は、
前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、
該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いることを特徴とするパトロール作業用ロボット。
【請求項2】
前記周囲の雰囲気の物理量が、温度、放射線、有害物質及び可燃性ガスの物理量から選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のパトロール作業用ロボット。
【請求項3】
前記三次元マップデータを無線で発信する発信手段を有する請求項1又は2に記載のパトロール作業用ロボットと、
前記発信手段により発信された情報を受信する受信手段と、該受信手段が受信した前記三次元マップデータに記録された前記物理量の情報に基づき警報を発する警報手段と、を備える警報装置と、
を有することを特徴とするパトロール作業用ロボットを用いた警報システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-05-29 
出願番号 特願2016-104895(P2016-104895)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (G05D)
P 1 651・ 851- YAA (G05D)
P 1 651・ 121- YAA (G05D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大野 明良  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 見目 省二
松原 陽介
登録日 2019-02-08 
登録番号 特許第6475191号(P6475191)
権利者 ベステラ株式会社
発明の名称 パトロール作業用ロボット及びパトロール作業用ロボットを用いた警報システム  
代理人 江藤 聡明  
代理人 江藤 聡明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ