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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特174条1項  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1363994
異議申立番号 異議2019-700178  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-05 
確定日 2020-06-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6385801号発明「乳及び植物抽出物を含有する容器詰飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6385801号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6385801号の請求項1、2、5?9に係る特許を維持する。 特許第6385801の請求項3、4及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6385801号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成26年11月11日に出願されたものであって、平成30年8月17日に特許権の設定登録がされ、平成30年9月5日にその特許公報が発行され、その後、平成31年3月5日に、特許異議申立人 篠崎 哲也(「崎」は原文はたつさき。以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年 6月 3日付け:取消理由通知
同年 7月30日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年 9月11日 :意見書の提出(申立人)
同年10月 2日付け:訂正拒絶理由通知
同年11月 8日 :意見書の提出(特許権者)
同年12月10日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和2年 2月12日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年 4月 3日 :意見書の提出(申立人)

なお、令和1年7月30日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否
以下、令和2年2月12日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

1 本件訂正の内容
本件訂正請求による訂正事項は、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「乳原料、乳代替原料又はその両方と、コーヒー抽出物とを含有する容器詰乳入りコーヒー飲料であって、」の後に、「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内であり、」との記載を追加するよう訂正する。
かかる訂正により、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、5?9も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「前記乳原料の乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内であり」と記載されているのを、「前記乳原料が脱脂粉乳であり」と訂正する。
かかる訂正により、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、5?9も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれかに」と記載されているのを、「請求項1又は2に」と訂正する。
かかる訂正により、請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6?9も同様に訂正する。

(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれかに」と記載されているのを、「請求項1?2、5?6のいずれかに」と訂正する。
かかる訂正により、請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8?9も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に、「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内であり、かつ、」との記載を追加するよう訂正する。
かかる訂正により、請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9も同様に訂正する。

(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に、「前記乳原料の乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内である」と記載されているのを、「前記乳原料が脱脂粉乳である」と訂正する。
かかる訂正により、請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9も同様に訂正する。

(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれかに」と記載されているのを、「請求項1?2、5?7のいずれかに」と訂正する。
かかる訂正により、請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9も同様に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

なお、訂正前の請求項1?10について、請求項2?10は請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?10に対応する訂正後の請求項1?10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
a 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内であり、」との発明特定事項を直列的に付加することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5?9の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1は、本件明細書の段落【0027】の「本発明の乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)中に含まれる乳原料の好適な含量としては、乳脂肪分量で0?2重量%の範囲内、好ましくは0?1重量%の範囲内を挙げることができ、また、乳固形分で0.4?6.5重量%の範囲内、好ましくは0.4?3重量%の範囲内を挙げることができる。」(下線は当審による。)との記載に基づいて導き出せる発明特定事項であるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものである。
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5?9の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
a 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に「前記乳原料の乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内であり」と記載されているのを、「前記乳原料が脱脂粉乳であり」と訂正するものである。
本件明細書の【0014】には、「本発明の乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)においては、乳原料としては各種の乳を用いることができるが、該乳及び植物抽出物含有飲料(乳入りコーヒー飲料等)における乳成分の脂肪含量を減少させることにより、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)の異臭味の発生防止効果を増大することができる。かかる場合の脂肪含量を減少させた、特に好ましい乳原料として、脱脂粉乳を挙げることができる。」と記載されているように、本件発明は、乳原料として、乳成分の脂肪含量を減少させることにより、異臭味の発生防止効果を増大することを特徴の1つとした発明であって、そのように乳脂肪含量を減少させた乳原料の特に好ましい例として、脱脂粉乳が記載されていること、及び、脱脂粉乳の乳脂肪分量は通常1.0%程度であること(後記第5(2)エ 参考資料2の(参考2-2)及び後記第5(3)参考資料3の(参考3-1)参照)を併せ考慮すると、訂正後の請求項1に記載された「脱脂粉乳」とは、本件特許明細書及び上記技術常識を前提とすれば、乳脂肪分量が1.0%程度である通常の脱脂粉乳を意図しているといえるから、訂正後の請求項1に記載された「脱脂粉乳」は乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内の乳原料に含まれるものである。
そうすると、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5?9の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項2による「前記乳原料が脱脂粉乳であり」という発明特定事項は、訂正前の請求項3及び4に記載されていた事項であり、また、本件明細書の段落【0027】の「該乳原料としては、牛乳や脂肪分を減少させた加工乳、その各種粉乳やクリームなどであり、上記の乳代替原料とは、食品用の植物油脂や動物油脂、タンパク質類などを用いた乳代替用の組成物を挙げることができる。香味設計・エネルギーに合せていずれも使用可能であるが、乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーに対するより優れた改善効果を得る観点から、乳成分の脂肪分を減少することが好ましく、該脂肪分を減少させた好ましい乳原料として、脱脂粉乳を挙げることができる。」との記載に基づいて導き出せるものであるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものである。
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、5?9の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

c 訂正事項2に対する申立人の主張
申立人は、令和2年4月3日付け意見書において、「前記乳原料の乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内」という発明特定事項は、乳原料中に含まれる乳脂肪分量の「量」を規定しているのに対し、「前記乳原料が脱脂粉乳」という発明特定事項は、乳原料の「種類」を規定しており、意味する技術内容が異なるから、上位概念から下位概念の変更ではなく、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないこと、及び、甲第6号証及び甲第7号証によれば、脱脂粉乳の乳脂肪分が必ず「0?2重量%の範囲内」にあるものではないから、訂正前には含まれていなかった乳脂肪分量が2重量%を超える乳原料(脱脂粉乳)を使用する態様もが訂正後の請求項1には含まれることになり、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に相当する旨主張する。
しかしながら、上記aで説示したように、訂正後の請求項1に記載された「脱脂粉乳」とは、乳脂肪分量が1.0%程度である通常の脱脂粉乳を意図しているといえるのであるから、この「脱脂粉乳」は乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内の乳原料に含まれるものであるといえる。したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものである。
また、甲第6号証には、「主要乳製品の輸入動向」の集計対象乳製品の区分として、脱脂粉乳が記載され、その品名として、脂肪分が1.5%より大きく5%より小さいものに対して、統計番号が付されていることが示されているものの、これは、統計のための分類上の範囲にすぎず、乳脂肪分量が2%を超える脱脂粉乳が必ず存在することを証明するものではないし、そもそも、訂正後の請求項1の「脱脂粉乳」は、乳脂肪分量が1.0%程度の通常の脱脂粉乳を意図していると解釈できることは、上記aのとおりである。したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
以上のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。

(3)訂正事項3、4及び10について
a 訂正の目的について
訂正事項3、4及び10は、それぞれ、訂正前の請求項3、4及び10を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項3、4及び10は、訂正前の請求項3、4及び10を削除するというものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものである。
また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項3、4及び10は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項5について
a 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5における「請求項1?4のいずれかに」という記載を、請求項3及び4の削除に伴い、引用する請求項の数を減少させるように記載を改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項5の上記訂正に連動する請求項6?9の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項5は、訂正前の請求項5における「請求項1?4のいずれかに」という記載を「請求項1又は2に」と改めるものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
さらに、請求項5の上記訂正に連動する請求項6?9の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項6について
a 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項7における「請求項1?6のいずれかに」という記載を、請求項3及び4の削除に伴い、引用する請求項の数を減少させるように記載を改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項7の上記訂正に連動する請求項8?9の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項6は、訂正前の請求項7における「請求項1?6のいずれかに」という記載を「請求項1?2、5?6のいずれかに」と改めるものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
さらに、請求項7の上記訂正に連動する請求項8?9の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項7について
a 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項8に「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内であり、かつ、」との発明特定事項を直列的に付加することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項8の上記訂正に連動する請求項9の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記(1)bで説示したように、訂正事項7は、本件明細書の段落【0027】の記載に基づいて導き出せる発明特定事項であるから、訂正事項7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものである。
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、請求項8の上記訂正に連動する請求項9の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(7)訂正事項8について
a 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項8に「前記乳原料の乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内である」と記載されているのを、「前記乳原料が脱脂粉乳である」と訂正するものである。
上記(2)aで説示したとおり、本件発明は、乳原料として、乳成分の脂肪含量を減少させることにより、異種味の発生防止効果を増大することを特徴の1つとした発明であって、そのように乳脂肪含量を減少させた乳原料の特に好ましい例として、脱脂粉乳が記載されていること、及び、脱脂粉乳の乳脂肪分量は通常1.0%程度であること(後記第5(2)エ 参考資料2の(参考2-2)及び後記第5(3)参考資料3の(参考3-1)参照)を併せ考慮すると、訂正後の請求項8に記載された「脱脂粉乳」とは、乳脂肪分量が1.0%程度である通常の脱脂粉乳を意図しているといえるから、訂正後の請求項8に記載された「脱脂粉乳」は乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内の乳原料に含まれるものである。
そうすると、訂正事項8は、特許請求の範囲を減縮するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項8の上記訂正に連動する請求項9の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項8による「前記乳原料が脱脂粉乳である」という発明特定事項は、訂正前の請求項3及び4に記載されていた事項であり、また、本件明細書の段落【0027】の記載に基づいて導き出せるものであるから、訂正事項8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものである。
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、請求項8の上記訂正に連動する請求項9の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(8)訂正事項9について
a 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項8における「請求項1?7のいずれかに」という記載を、請求項3及び4の削除に伴い、引用する請求項の数を減少させるように記載を改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項8の上記訂正に連動する請求項9の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項9は、訂正前の請求項8における「請求項1?7のいずれかに」という記載を「請求項1?2、5?7のいずれかに」と改めるものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
さらに、請求項8の上記訂正に連動する請求項9の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。

第3 本件発明について
本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1、2、5?9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明5」?「本件発明9」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、5?9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
乳原料、乳代替原料又はその両方と、コーヒー抽出物とを含有する容器詰乳入りコーヒー飲料であって、
前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内であり、
前記乳原料が脱脂粉乳であり、かつ、
飲料全量に対して0.47?4.7重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有したことにより、長期保存により発生する異臭味の発生が防止されたことを特徴とする、長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項2】
飲料全量に対する難消化性デキストリンの含有量が、0.6?3.3重量%であることを特徴とする請求項1に記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として糖類の使用を減少した或いは使用しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項6】
容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として、高甘味度甘味料を用いることを特徴とする請求項5に記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項7】
容器詰乳入りコーヒー飲料が、常温流通品であることを特徴とする請求項1?2、5?6のいずれかに記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項8】
乳原料、乳代替原料又はその両方と、コーヒー抽出物とを含有する容器詰乳入りコーヒー飲料の製造に際して、前記飲料の製造原料に、飲料全量に対して0.47?4.7重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有させること、及び、
前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内であり、かつ、
前記乳原料が脱脂粉乳であること
を特徴とする請求項1?2、5?7のいずれかに記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料の製造方法。
【請求項9】
飲料全量に対して0.6?3.3重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有させることを特徴とする請求項8に記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料の製造方法。
【請求項10】
(削除)」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?10に係る特許に対して令和1年12月10日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。

(1)取消理由1(新規事項)
訂正前の請求項1?10に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し、取り消すべきものである。

(2)取消理由2(サポート要件)
訂正前の請求項1?10に係る特許は、特許請求の範囲に記載された特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、訂正前の請求項1?10に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)取消理由3(実施可能要件)
訂正前の請求項1?10に係る特許は、発明の詳細な説明にその発明を当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
よって、訂正前の請求項1?10に係る特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2 当審の判断
(1)取消理由1(新規事項)について
ア 取消理由1の概要
取消理由1の概要は、以下のとおりである。
本件特許出願は、特許出願後、平成30年3月28日付けの手続補正(甲第5号証)(以下、「本件補正」という。)によって特許請求の範囲が補正され、その後特許されたものであるところ、本件補正は、請求項1に、「前記乳原料の乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内であり」という発明特定事項を追加する補正事項を含むものである。
そして、本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面をも併せて「当初明細書等」という。)には、脂肪分量に関して、「本発明の乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)中に含まれる乳原料の好適な含量としては、乳脂肪分量で0?2重量%の範囲内、好ましくは0?1重量%の範囲内を挙げることができ、また、乳固形分で0.4?6.5重量%の範囲内、好ましくは0.4?3重量%の範囲内を挙げることができる。」(【0027】)と記載されている。
この記載は、乳入りコーヒー飲料中に含まれる乳原料の好適な含量を、乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量において0?2重量%の範囲等となるようにすることを意味するものであり、「乳脂肪分量で0?2重量%の範囲内」という記載は、当該飲料中に含まれる乳原料の含量について記載するものであって、乳原料の乳脂肪分量について記載するものではない。そして、乳入りコーヒー飲料において、乳原料の乳脂肪分量を0?2重量%の範囲内とすることが本願出願時の技術常識であるともいえない。
したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。

イ 取消理由1についての当審の判断
本件訂正により、訂正前の請求項1における「前記乳原料の乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内であり」という記載は、「前記乳原料が脱脂粉乳であり」と訂正された。
本件訂正により、取消理由1で新規事項の追加であるとされた「前記乳原料の乳脂肪分量が0?2重量%の範囲内であり」という記載自体は請求項1からなくなったので、取消理由1は理由がないものとなった。
そして、訂正後の「前記乳原料が脱脂粉乳であり」については、当初明細書等の段落【0014】には、「本発明の乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)においては、乳原料としては各種の乳を用いることができるが、該乳及び植物抽出物含有飲料(乳入りコーヒー飲料等)における乳成分の脂肪含量を減少させることにより、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)の異臭味の発生防止効果を増大することができる。かかる場合の脂肪含量を減少させた、特に好ましい乳原料として、脱脂粉乳を挙げることができる。」(下線は当審による。以下、同様。)と記載され、段落【0027】には、「<乳原料、乳代替原料>本発明の乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)に用いられる乳原料としては、通常、乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)の製造に用いられている乳原料を挙げることができ、乳原料、乳代替原料のいずれか1種又は2種以上(以下、「乳等」とも表示する。)を挙げることができる。該乳原料としては、牛乳や脂肪分を減少させた加工乳、その各種粉乳やクリームなどであり、上記の乳代替原料とは、食品用の植物油脂や動物油脂、タンパク質類などを用いた乳代替用の組成物を挙げることができる。香味設計・エネルギーに合せていずれも使用可能であるが、乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーに対するより優れた改善効果を得る観点から、乳成分の脂肪分を減少することが好ましく、該脂肪分を減少させた好ましい乳原料として、脱脂粉乳を挙げることができる。」と記載され、本件発明1の実施例である試験例11(段落【0047】の【表5】)には、乳原料として、脱脂粉乳のみを使用した容器詰め乳入りコーヒー飲料が記載されていることから、訂正後の「前記乳原料が脱脂粉乳であり」という発明特定事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、本件発明1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2、5?9も同様である。
よって、本件発明1、2、5?9に係る特許は、取消理由1によって取り消すべきものではない。

(2)取消理由2(サポート要件)について
ア 取消理由2の概要
取消理由2の概要は以下のとおりである。
本件発明1において、乳入りコーヒー飲料全量に対する乳原料の含有量は特定されていないところ、乳原料に由来する乳脂肪や乳タンパク質は長期保存時の異臭味の発生の原因となるものであるから、乳入りコーヒー飲料全量に対する乳原料の含有量が多量である場合は、当該飲料に含まれる乳脂肪や乳タンパク質の量も多くなり、そのような場合は、本件発明の課題である「長期保存により発生する異臭味の発生が防止された」乳入りコーヒー飲料を提供できるかは不明である。また、そのような記載や示唆がなくとも本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる本願出願時の技術常識も存在しない。
したがって、乳原料の含有量が多量であるような場合をも包含する本件発明1は、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えて特定されたものである。
よって、請求項1及び同項を引用する請求項2?10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

イ 取消理由2についての当審の判断
(ア)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下のことが記載されている。
a 本件発明の課題について
「【0002】
近年、嗜好性の多様化から、各種飲料が容器詰め飲料として提供されている。コーヒー飲料もその1つであり、中でも、乳入りコーヒー飲料は、旧来より愛用されてきた嗜好性の高い飲料である。乳入りコーヒー飲料は、乳入り飲料の一つの飲料形態であるが、乳入り飲料においては、含有される乳の乳脂肪や乳タンパク質が熱や光によって酸化され易く、酸化すると酸敗臭などの強い異臭が形成されるという問題がある。そのため、乳脂肪や乳タンパク質等の乳成分入り容器詰飲料において、その製造、流通、保存の過程で、これら乳成分の酸化を回避することは難しく、乳成分入り容器詰飲料において、酸敗臭などの異臭の発生が問題となっている。」
「【0010】
本発明の課題は、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(特に容器詰乳入りコーヒー飲料)の長期保存により発生する異臭味の発生を防止し、長期保存に対して香味の保持された乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(特に容器詰乳入りコーヒー飲料)及び、その製造方法を提供することにある。特に、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(特に容器詰乳入りコーヒー飲料)の長期保存により発生する乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーのような異臭味の発生を、効果的に防止し、長期保存に対して香味の保持された乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(特に容器詰乳入りコーヒー飲料)、及び、その製造方法を提供することにある。」

b 難消化デキストリンについて
「【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(特に容器詰乳入りコーヒー飲料)の長期保存により発生する乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバー等の異臭味の発生を防止し、長期保存に対して香味の保持された乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(特に容器詰乳入りコーヒー飲料)を製造する方法について鋭意検討する中で、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(特に容器詰乳入りコーヒー飲料)の製造に際して、特定量の難消化性デキストリンを含有させることによって、該乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(特に容器詰乳入りコーヒー飲料)の長期保存により発生する乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーのような異臭味の発生を効果的に防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料であって、飲料全量に対して0.4重量%以上の難消化性デキストリンを含有したことにより、長期保存により発生する異臭味の発生が防止されたことを特徴とする、長期保存に対して香味の保持された乳及び植物抽出物含有容器詰飲料からなる。
【0013】
乳成分と植物抽出物(コーヒー成分等)とが配合された乳及び植物抽出物含有飲料(乳入りコーヒー飲料等)においては、その長期保存等の際に、乳成分と植物抽出物(コーヒー成分等)とが混合されていることから発生する異臭味、特に、乳製品発酵様と捉えられる乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーの発生があり、その発生原因はまだ完全に解明されていないが、該乳及び植物抽出物含有飲料(乳入りコーヒー飲料等)の長期保存等のために問題となっていた。本発明においては、上記のとおり、該乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)の製造に際して、特定量の難消化性デキストリンを含有させる(好ましくは添加する)という簡便な手段により、該異臭味の発生を効果的に防止し、長期保存に対して香味の保持された乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)の提供を可能とした。
【0014】
本発明において、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)における難消化性デキストリンは、飲料全量に対して0.4重量%以上の量で含有されるが、乳及び植物抽出物含有飲料(乳入りコーヒー飲料等)における難消化性デキストリンの特に好ましい含有量としては、0.6?3.3重量%の範囲が好ましい。本発明の乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)においては、乳原料としては各種の乳を用いることができるが、該乳及び植物抽出物含有飲料(乳入りコーヒー飲料等)における乳成分の脂肪含量を減少させることにより、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)の異臭味の発生防止効果を増大することができる。かかる場合の脂肪含量を減少させた、特に好ましい乳原料として、脱脂粉乳を挙げることができる。」
「【0016】
本発明は、乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)の製造に際して、前記飲料の製造原料に、飲料全量に対して0.4重量%以上の難消化性デキストリンを含有させる(好ましくは、添加する)ことを特徴とする本発明の長期保存に対して香味の保持された乳及び植物抽出物含有容器詰飲料(容器詰乳入りコーヒー飲料等)の製造方法の発明を包含する。かかる場合の難消化性デキストリンの特に好ましい含有量としては、飲料全量に対する難消化性デキストリンの含有量が、0.6?3.3重量%の範囲を挙げることができる」
「【0022】
<難消化性デキストリン>
難消化性デキストリンは、デンプンを加熱及びアミラーゼ処理により加水分解して得られるものである。本発明に用いる難消化性デキストリンは特に制限されるものではなく、通常入手可能な難消化性デキストリンや、難消化性デキストリンを含む原料を用いることができる。難消化性デキストリンは、粉末、細粒、顆粒などの形態で市販されており、いずれの形態のものでも使用することができる。
【0023】
本発明における難消化性デキストリンの使用量(含有量又は添加量、好ましくは添加量)としては、例えば飲料全量に対して0.4重量%以上(好ましくは0.47重量%以上)とすることができるが、乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーに対するより優れた改善効果を得る観点から、0.4?4.7重量%の範囲内とすることが好ましく、0.47?4.7重量%の範囲内とすることがより好ましく、0.6?4.0重量%の範囲内(好ましくは0.65?3.3重量%の範囲内)とすることがさらに好ましく、0.6?2.5重量%の範囲内とすることがより好ましく、0.65?1.7重量%の範囲内とすることが特に好ましい。
【0024】
飲料中の難消化性デキストリン含量は、例えば、平成11年4月26日衛新第13号(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素?HPLC法)により測定することができる。」

c 乳脂肪分量について
「【0027】
<乳原料、乳代替原料>
本発明の乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)に用いられる乳原料としては、通常、乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)の製造に用いられている乳原料を挙げることができ、乳原料、乳代替原料のいずれか1種又は2種以上(以下、「乳等」とも表示する。)を挙げることができる。該乳原料としては、牛乳や脂肪分を減少させた加工乳、その各種粉乳やクリームなどであり、上記の乳代替原料とは、食品用の植物油脂や動物油脂、タンパク質類などを用いた乳代替用の組成物を挙げることができる。香味設計・エネルギーに合せていずれも使用可能であるが、乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーに対するより優れた改善効果を得る観点から、乳成分の脂肪分を減少することが好ましく、該脂肪分を減少させた好ましい乳原料として、脱脂粉乳を挙げることができる。本発明の乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)中に含まれる乳原料の好適な含量としては、乳脂肪分量で0?2重量%の範囲内、好ましくは0?1重量%の範囲内を挙げることができ、また、乳固形分で0.4?6.5重量%の範囲内、好ましくは0.4?3重量%の範囲内を挙げることができる。」

d 甘味料について
「【0028】
<甘味料>
発明の乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)の製造に際して、用いられている添加成分を添加することができる。該添加成分において、甘味料としては、通常、乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)の甘味料として用いられる甘味料を用いることができる。該甘味料としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖等の糖類(特に単糖や二糖)、糖アルコール、高甘味度甘味料(非糖質系甘味料)などの甘味料を挙げることができる。しかしながら、本発明の異臭味の防止効果を更に増大するためには、ショ糖等の糖類を減少させることが好ましく、該糖類を高甘味度甘味料で代替することが更に好ましい。「糖類を減少させた乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)」には、乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)全量に対する糖類の合計含量が、5g/100mL以下、より好ましくは2.5g/100mL以下、さらに好ましくは1g/100mL以下の乳及び植物抽出物含有飲料(好ましくは乳入りコーヒー飲料)が含まれる。」

e 常温流通品について
「【0032】
本発明の乳及び植物抽出物含有容器詰飲料は、チルド流通品、常温流通品、等のいずれであってもよいが、本発明の効果をより多く享受し得る点で、常温流通品であることが好ましい。なお、本明細書において、チルド流通品としては、例えば、保存及び流通温度が0℃より高く10℃以下である容器詰飲料を挙げることができ、常温流通品としては、流通時において特に加温や冷却をしない容器詰飲料であって、例えば流通温度が10℃より高く50℃以下である容器詰飲料を挙げることができる。常温流通品には、販売時に常温(例えば10℃より高く50℃以下)で販売する形態や、販売時に-20℃以上0℃以下で保存して冷凍販売する形態や販売時に0℃より高く10℃以下で保存して冷蔵販売する形態、及び販売時に50℃より高く70℃以下で保存して加温販売する形態の容器詰飲料を含む。」

f 実施例
段落【0033】?【0053】に、試験例2?7、9として、乳原料として乳(牛乳)を使用した場合、及び、試験例11として乳原料として脱脂粉乳を使用した場合は、乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーが改善されたことが示され、試験例1、8、10として、難消化性デキストリンが本件発明1で規定する範囲にない場合の比較例が示されている。そして、それぞれの試験例において、乳原料(牛乳又は脱脂粉乳)の配合量について記載されている。

(イ)取消理由2についての当審の判断
本件発明の課題は、本件明細書の段落【0010】の記載からみて、容器詰乳入りコーヒー飲料の長期保存により発生する異臭味の発生を防止し、長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料及びその製造方法の提供にあるものと認める。
取消理由2は、訂正前の本件発明1?10には、飲料全量に対する乳原料の含有量が特定されていないため、乳原料の含有量が多量である場合をも包含する訂正前の本件発明1?10は、上記課題を解決できるとはいえないことを理由とするものであるが、本件訂正により、独立請求項である請求項1及び8において、「前記乳原料が脱脂粉乳」であること、及び「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%」であることが特定された。
脱脂粉乳の乳脂肪分量は、通常1.0%程度であることを踏まえて(後記第5(2)エ 参考資料2の(参考2-2)及び後記第5(3)参考資料3の(参考3-1)参照)、「前記乳原料が脱脂粉乳」という発明特定事項と「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%」という発明特定事項を併せて考慮すると、飲料全量に対する、脱脂粉乳である乳原料の含有量は間接的に特定されたことになり、上記取消理由2で指摘したような、乳原料が多量に含まれる場合は、本件発明1、2、5?9には含まれないものとなった。

そして、発明の詳細な説明には、容器詰乳入りコーヒー飲料において、特定量の難消化デキストリンを含有させることによって、上記課題を解決できることを見出したこと(【0011】)、難消化デキストリンの使用量としては0.47?4.7重量%の範囲内が好ましいことが記載され(【0023】)、また、乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーに対するより優れた改善効果を得る観点から、乳成分の脂肪分を減少することが好ましく、該脂肪分を減少させた好ましい乳原料として脱脂粉乳を挙げることができること、さらに、飲料中に含まれる乳原料の好適な含量としては、乳脂肪分量で0?2重量%の範囲内が好ましいことが記載され、具体例として試験例11に、難消化デキストリンを1.7重量%、乳原料として脱脂粉乳を1.38重量%(脱脂粉乳の乳脂肪分量を1.2%とすると、飲料全量に対して、乳脂肪分量は0.017重量%)含む容器詰乳入りコーヒー飲料が記載されていることから、容器詰乳入りコーヒー飲料において、飲料全量に対して0.47?4.7重量%の範囲内の難消化デキストリンを含有させること、乳原料として脱脂粉乳を選択すること、及び乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内としたことにより、長期保存により発生する異臭味の発生が防止され、長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料を提供できることが理解できる。
したがって、上記の発明の詳細な説明の記載から、当業者であれば、本件発明1の上記課題を解決できると認識できるといえる。
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

本件発明2、5?9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2は、本件発明1において、「飲料全量に対する難消化性デキストリンの含有量が、0.6?3.3重量%であること」を特定したもの、本件発明5は、本件発明1又は2において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として糖類の使用を減少した或いは使用しないこと」を特定したもの、本件発明6は、本件発明5において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として、高甘味度甘味料を用いること」ことを特定したもの、本件発明7は、本件発明1、2、5?6において、「容器詰乳入りコーヒー飲料が、常温流通品であること」を特定したもの、本件発明8は、本件発明1、2、5?7の製造方法に係る発明であり、本件発明9は、本件発明8において、「飲料全量に対して0.6?3.3重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有させること」を特定したものにすぎず、これらの発明特定事項については、発明の詳細な説明の【0023】、【0028】及び【0032】に技術的限定事項に関する記載があるから、本件発明1において検討したのと同様に、本件発明2、5?9についても、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、本件発明1、2、5?9に係る特許は、取消理由2によって取り消すべきものではない。

(3)取消理由3(実施可能要件)について
ア 取消理由3の概要
取消理由3の概要は以下のとおりである。
サポート要件違反の項で説示したとおり、訂正前の本件発明1?10には、飲料全量に対する乳原料の含有量は特定されておらず、発明の詳細な説明には、飲料全量に対する乳原料の含有量が多量である場合であっても、「長期保存により発生する異臭味の発生が防止された」乳入りコーヒー飲料が得られることが具体的に記載されておらず、本願出願時の技術常識を参酌しても、「長期保存により発生する異臭味の発生が防止された」乳入りコーヒー飲料が得られるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が訂正前の本件発明1?10を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

イ 取消理由3についての当審の判断
取消理由3は、訂正前の本件発明1?10には、飲料全量に対する乳原料の含有量が特定されていないため、乳原料の含有量が多量である場合をも包含する訂正前の本件発明1?10を実施できる程度に発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されたものとはいえないことを理由とするものであるが、本件訂正により、独立請求項である請求項1及び8において、「前記乳原料が脱脂粉乳」であること、及び「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%」であることが特定された。
脱脂粉乳の乳脂肪分量は、通常1.0%程度であることを踏まえて(後記第5(2)エ 参考資料2の(参考2-2)及び後記第5(3)参考資料3の(参考3-1)参照)、「前記乳原料が脱脂粉乳」という発明特定事項と「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%」という発明特定事項を併せて考慮すると、飲料全量に対する、脱脂粉乳である乳原料の含有量は間接的に特定されたことになり、上記取消理由3で指摘したような、乳原料が多量に含まれる場合は、本件発明1、2、5?9には含まれないものとなった。
したがって、上記取消理由3は理由がないものとなった。
そして、上記(2)イで検討したように、本件発明1、2、5?9は、発明の詳細な説明に記載されたものである以上、発明の詳細な説明は、本件発明1、2、5?9を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものである。
よって、本件発明1、2、5?9に係る特許は、取消理由3によって取り消すべきものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
(1)申立人が主張する申立理由及び提出した証拠
申立人は、以下の甲第1号証?甲第7号証、参考資料1及び参考資料2を提出し、訂正前の本件特許に対し、以下の申立理由1?4を主張している。

甲第1号証:特開2004-41118号公報
甲第2号証:特開2008-143843号公報
甲第3号証:改訂新版・ソフトドリンクス編集委員会編、「改訂新版 ソフト・ドリンクス」、株式会社光琳、平成元年12月25日、421?427頁
甲第4号証:平成30年3月28日付け意見書
甲第5号証:平成30年3月28日付け手続補正書
甲第6号証:「需給動向を把握するための機構の業務と用語解説(牛乳乳製品編)」、[online]独立行政法人農畜産業振興機構、酪農乳業部、乳製品課、酪農経営課、2010年3月、[令和2年4月1日検索]、インターネット、,
甲第7号証:鷹尾亨編著、「牛乳・乳製品の実際知識」、第6版、東洋経済新報社、2001年12月25日、目次、60?61、140?143頁
参考資料1:日本食物繊維学会編集委員会編、「食物繊維-基礎と応用-」、第3版第1刷、第一出版株式会社、平成20年10月20日、65?67頁
参考資料2:林弘通ら著、「乳業工業」、初版第1刷、株式会社幸書房、平成10年5月25日、89?91頁

なお、以下、「甲第1号証」?「甲第7号証」を、それぞれ「甲1」?「甲7」という。

ア 申立理由1(新規性)
(申立理由1-ア)
訂正前の請求項1?10に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであり、本件特許は、同法113条第2号に該当する。

イ 申立理由2(進歩性)
(申立理由2-ア)
訂正前の請求項1?10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由2-イ)
訂正前の請求項1?10に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。

ウ 申立理由3(サポート要件)
訂正前の請求項1?10に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。

エ 申立理由4(実施可能要件)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、訂正前の請求項1?10に係る発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。

(2)甲号証の記載
ア 甲1
甲1には、次の事項が記載されている。
(1-1)
「【請求項1】
高甘味度甘味料及び食物繊維を含むことを特徴とする嗜好性飲料。
【請求項2】
飲料中の食物繊維の含有量が0.1?10重量%である請求項1に記載の嗜好性飲料。
【請求項3】
更に、乳成分を含む請求項1又は2に記載の嗜好性飲料。」

(1-2)
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、カロリーを低く抑えるため高甘味度甘味料を使用しても、砂糖などの糖類を使用した場合と同様のコク味が感じられる嗜好性飲料を提供することを目的とする。」

(1-3)
「【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係る嗜好性飲料は、高甘味度甘味料及び食物繊維を含むことを特徴とする。
本発明で言う嗜好性飲料とは、コーヒー;紅茶、抹茶、緑茶、ウーロン茶などの茶類;ココア等の嗜好性成分を有する飲料であって、通常甘味料を使用しているものを挙げることができる。好適にはコーヒー或いは紅茶であり、最も好適なものはコーヒーである。」

(1-4)
「【0009】
更に、本発明で使用する食物繊維としては、澱粉、トウモロコシ、大豆等天然由来の水溶性食物繊維、ポリデキストロース等を挙げることができる。中でも好適なのは、ポリデキストロースである。これら食物繊維は商業上入手することができ、例えば、ダニスコジャパン株式会社製のライテス、松谷工業化学株式会社製のファイバーソル、パインファイバー、日本食品加工株式会社製の日食セルエース、日食セルファー、不二製油株式会社製のソヤファイブ、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のSM-700等を挙げることができる。
【0010】
本発明に係る嗜好性飲料中の食物繊維の含有量は、0.1?10重量%、好ましくは、0.2?7.5重量%、更に好ましくは、0.3?5重量%である。0.1重量%より添加量が少ないと、コク味付与効果や高甘味度甘味料由来の後引き感改善効果が充分でなく、10重量%より添加量が多くなると、食物繊維自体の味が生じて、嗜好性飲料の味に影響を与えるからである。」

(1-5)
「【0015】
更に、本発明では、牛乳、生クリーム、全脂粉乳、脱脂粉乳、全脂加糖練乳、脱脂練乳等の乳成分を含む嗜好性飲料に対して良好な効果を示す。コーヒーや紅茶などの嗜好性成分、高甘味度甘味料及び乳成分のそれぞれの呈味がマッチして、程良い嗜好性成分の呈味、高甘味度甘味料由来の呈味及び乳感が付与され、しかも良好なコク味を付与することができる。
【0016】
このような乳成分を有する嗜好性飲料として、具体的には、乳成分を含有するコーヒー、
カフェオレ、ミルクティー、ミルクココア、抹茶入り乳飲料等の乳成分を含有する嗜好性飲料を挙げることができる。好適には、コーヒーやカフェオレ等のコーヒー成分及び乳成分を含有する嗜好性飲料である。
【0017】
これら嗜好性飲料は、一般的に、例えば、缶、ビン、紙パック、ペットボトル、ラミネートパック等に充填、密封され、密封状態で流通、販売される。また、本発明の嗜好性飲料を大容量の容器にも充填しても良く、一度にたくさんの量飲み干すような飲用形態にも合った嗜好性飲料となる。
【0018】
更には、常温で販売されるものであっても、ホットベンダーで販売されるものでも、チルド流通販売されるものであっても良い。本発明の嗜好性飲料は、高甘味度甘味料及び食物繊維、或いは必要に応じて乳成分を含有する以外は、常法により製造することができる。また、前記成分以外にも、乳化剤、色素、香料、果汁、ピューレ、酸味料、調味料、酸化防止剤、保存料、エキス、糊料、pH調整剤、酒類、ビタミン類、ミネラル類等を任意に添加することができる。」

(1-6)
「【0021】
実施例1?3:低カロリーコーヒー飲料の調製
下記の処方に示す組成のうち、砂糖と乳化剤との粉体混合物を水に加え、80℃10分間加熱溶解後、牛乳、脱脂粉乳を添加し、コーヒー抽出液を加えたものに、炭酸水素ナトリウムにてpHを6.8に調整後、水にて全量補正し、75℃まで加温し、14700kPa(150kg/cm2)の圧力でホモゲナイズ処理した。出来上がったコーヒー飲料の溶液を缶詰め後、レトルト殺菌機にて、121℃20分間の条件で殺菌し、コーヒー飲料(生豆換算4g/100ml)を調製した。調製したコーヒー飲料を、それぞれ対照と比較した評価を表2に記す。
【0022】

【0023】
【表2】


【0024】
※1 サンスイートSA-5050[商標]*;甘味倍率でスクラロース:アセスルファムカリウム=1:1の甘味料製剤(重量で、スクラロース15%、アセスルファムカリウム45%含有)
※2 食物繊維;ポリデキストロース(カロリーは第5訂日本食品標準成分表に基づいて4kcal/gとして計算)」

イ 甲2
甲2には、次の事項が記載されている。
(2-1)
「【請求項1】
植物ステロールエステル、オクテニルコハク酸澱粉及び難消化性デキストリンを含有する粉末化植物ステロールエステル製剤。
・・・
【請求項3】
請求項1に記載の植物ステロールエステル製剤を添加してなる飲食品。
【請求項4】
飲食品が飲料である請求項3に記載の飲食品。」

(2-2)
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、水への分散性、呈味性、非吸湿性及びバイオアベイラビリティに優れた粉末化植物ステロールエステル製剤、その製造方法及びこれを含む飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、水への分散性、呈味性、非吸湿性及びバイオアベイラビリティが改善された粉末化植物ステロールエステル製剤を開発すべく鋭意検討した結果、オクテニルコハク酸を乳化剤とし、難消化性デキストリンを結合材として乳化、粉末化することにより前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下に示す粉末化植物ステロールエステル製剤、その製造方法及びこれを含む飲食品を提供するものである。
1.植物ステロールエステル、オクテニルコハク酸澱粉及び難消化性デキストリンを含有する粉末化植物ステロールエステル製剤。
2.植物ステロールエステルを、オクテニルコハク酸澱粉及び難消化性デキストリンを含む水溶液中で乳化し、次いで粉末化することを特徴とする、粉末化植物ステロールエステル製剤の製造方法。
3.上記1に記載の植物ステロールエステル製剤を添加してなる飲食品。
4.飲食品が飲料である上記3に記載の飲食品。」

(2-3)
「【0013】
本発明で使用される難消化性デキストリンの製造方法としては、焙焼デキストリンにα-アミラーゼを作用させて製造する方法(特許文献8)、焙焼デキストリンにα-アミラーゼ、グルコアミラーゼを順に作用させ、クロマト分画により難消化性画分高含有デキストリンを製造する方法、クロマト分画前にトランスグルコシダーゼを作用させて難消化性画分の含有率を高める方法(特許文献9)などがある。これらは熱分解工程や酵素反応を経るので、得られる構造は、澱粉本来のもつα1→4、α1→6グルコシド結合に加えてα1→2、α1→3グルコシド結合をも含む高分岐構造のグルカンであり、その平均分子量は約2,000である。難消化性デキストリンの市販品の一例として、ファイバーソル2(松谷化学工業株式会社)を挙げることができる。」

(2-4)
「【0023】
参考例2
植物ステロールエステルをオクテニルコハク酸澱粉で乳化した乳化液を粉末化するにあたり、表1に示す配合で粉末化基材を検討したところ、難消化性デキストリン使用の製剤(配合3)が、水分散性、味、非吸湿性のすべての面で優れていた。
なお、植物ステロールエステルにはカルディオエイドS(ADM社)を、オクテニルコハク酸澱粉には参考例1で調製したものを、それぞれ用いた。また、パインデックス#3(DE25)及びパインデックス#1(DE9)は松谷化学工業(株)製のデキストリンであり、ファイバーソル2(DE10)は同社製の難消化性デキストリンである。」

(2-5)
「【0028】実施例1
表3に示す配合により、本発明の粉末化植物ステロールエステル製剤を製造した。
【0029】
【表3】



(2-6)
「【0033】
実施例3:コーヒー乳飲料の調製
表5の配合でコーヒー乳飲料を調製したところ、分散性、風味は良好で、ざらつきもなかった。また、表5の配合で調製したコーヒー乳飲料を60℃まで加温後、T.K.ホモジナイザー(5,000rpm、5分間)、及び高圧ホモジナイザー(200kg/cm^(2)、1パス)で乳化した。これを100ml容量の耐熱性瓶に充填し、125℃、20分間レトルト殺菌後、流水で冷却、常温で3ヶ月間保存した。その結果、本発明品を添加することによる沈殿や浮遊物はみられなかった。
【0034】
【表5】



ウ 甲3
甲3には、次の事項が記載されている。
(3-1)(427頁下から10行?下から6行)
「c.乳類
コーヒー飲料に用いられる乳類は、全脂粉乳、脱脂粉乳、加糖練乳、牛乳、生クリームなどがある。最近の傾向として、牛乳、生クリームなどの加工度の低い乳原料を使用したものがめだってきている。これらはコーヒーの風味をより引き立たせるために使用されている。」

エ 参考資料2
参考資料2には、次の事項が記載されている。
(参考2-1)(90頁下から2行?91頁3行)
「1)粉乳の品質基準
粉乳の製造において、生乳の品質標準は厳しい。表3.1では粉乳1g当りの一般細菌数を50,000以下としている。この値は還元乳に換算すると約5,000以下となる。」

(参考2-2)(91頁表3.1)




(3)当審にて引用する参考資料の記載
当審にて引用する参考資料3(五十嵐脩ら編集代表、「丸善食品総合辞典」、丸善株式会社、平成10年3月25日、654頁)には、次の事項が記載されている。
(参考3-1)(654頁「脱脂粉乳」の項)
「脱脂粉乳[skim milk powder]
生乳から脂肪を分離し除いた脱脂乳を粉末状に乾燥したものである。厚生省の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)の成分規格では、乳固形分95.0%以上、水分5.0%以下と定められている。平均的な組成は、100gあたり水分3.8g、タンパク質34.0g、脂質1.0g、糖質(乳糖)53.3g、灰分7.9g、カルシウム1100mg(四訂日本食品標準成分表)であり、高タンパク・高カルシウム食品といえる。粉乳はほとんどの水分が除去されることによって、栄養成分が長期間損なわれず、乳成分を有効に利用できる製品形態である。さらに、脱脂粉乳は脂肪分をほとんど含まないために、脂肪の酸化が起こりにくいので、全脂肪乳に比べ保存性がよい。」

(4)当審の判断
ア 甲1に記載された発明を引用発明とする申立理由1-ア(新規性)
(ア)甲1に記載された発明
甲1の上記記載事項(1-6)の【0021】及び【0022】には、次の処方に示す組成のコーヒー飲料を缶詰することが記載されている。
「処方
コーヒー抽出液 28部
牛乳 20部
脱脂粉乳 0.5部
高甘味度甘味料
砂糖
食物繊維
乳化剤
炭酸水素ナトリウム
香料
水にて、 計100部」

また、上記記載事項(1-6)の表2及び【0024】によれば、この組成中の食物繊維として、実施例1?3では、ポリデキストロースを1.0部配合したことが記載されている。

そうすると、甲1の実施例1?3には、次の発明が記載されているものと認められる。
「以下の処方に示す組成を示す容器詰めコーヒー飲料。
処方
コーヒー抽出液 28部
牛乳 20部
脱脂粉乳 0.5部
高甘味度甘味料
砂糖
ポリデキストロース 1.0部
乳化剤
炭酸水素ナトリウム
香料
水にて、 計100部」(以下、「甲1発明」という。)

(イ)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における乳原料は、「牛乳」と「脱脂粉乳」であるが、本件発明1は、「乳原料が脱脂粉乳であ」ることが特定されているので、両者の乳原料は、「脱脂粉乳を含む乳原料」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「コーヒー抽出液」は、本件発明1の「コーヒー抽出物」に相当する。
甲1発明の「容器詰めコーヒー飲料」は、乳原料である牛乳及び脱脂粉乳を含むものであるから、「乳入り」であるといえ、本件発明1の「容器詰乳入りコーヒー飲料」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、「脱脂粉乳を含む乳原料と、コーヒー抽出物とを含有する容器詰乳入りコーヒー飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本件発明1では、「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内」であることが特定されているのに対し、甲1発明では乳原料である牛乳及び脱脂粉乳中に含まれる乳脂肪分量は不明である点

相違点2
乳原料が、本件発明1では、「脱脂粉乳であ」ることが特定されているのに対し、甲1発明では、脱脂粉乳に加えて牛乳も含む点

相違点3
本件発明1は、「飲料全量に対して0.47?4.7重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有」することが特定されているのに対し、甲1発明では、ポリデキストロースを1重量%含む点

相違点4
本件発明1では、「長期保存により発生する異臭味の発生が防止された」ものであり、「長期保存に対して香味の保持された」ものであることが特定されているのに対し、甲1発明はそのような特定がない点

b 判断
(a)上記aのとおり、相違点1?相違点4が認められるから、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。

(ウ)本件発明2、5?9について
本件発明2、5?9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2は、本件発明1において、「飲料全量に対する難消化性デキストリンの含有量が、0.6?3.3重量%であること」を特定したものであり、本件発明5は、本件発明1又は2において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として糖類の使用を減少した或いは使用しないこと」を特定したものであり、本件発明6は、本件発明5において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として、高甘味度甘味料を用いること」ことを特定するものであり、本件発明7は、本件発明1、2、5?6において、「容器詰乳入りコーヒー飲料が、常温流通品であること」を特定するものであり、本件発明8は、本件発明1、2、5?7の製造方法に係る発明であり、本件発明9は、本件発明8において、「飲料全量に対して0.6?3.3重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有させること」を特定するものである。
そして、本件発明2、5?9のいずれの発明も、本件発明1の容器詰乳入りコーヒー飲料を含む発明であり、本件発明1と同じ相違点を有するものである。
したがって、本件発明2、5?9は、それぞれ甲1に記載された発明ではない。

(エ)申立人の主張
申立人は、令和2年4月3日付け意見書において、本件発明1は甲1に記載された発明である旨主張するが、上記(a)で説示したとおり、相違点1?相違点4が認められるから、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。

(オ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、5?9に係る特許は、申立理由1-アによって取り消すべきものではない。

イ 甲1に記載された発明を引用発明とする申立理由2-ア(進歩性)
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、上記ア(イ)aで検討したとおりである。

b 判断
(a)相違点2について
事案に鑑みて、まず、相違点2について検討する。
甲1発明では、特定の組成の実施例の処方を基にして認定されたものであって、乳原料として、牛乳及び脱脂粉乳を用いているところ、甲1発明は、実施例に記載された組成全体として発明がなされているものであるから、乳原料として、牛乳及び脱脂粉乳に代えて、脱脂粉乳のみを用いることは、当業者にとって動機付けられるものではない。

(b)相違点3、4及び効果について
甲1発明は、食物繊維としてポリデキストロースを配合したものであるが、甲1の上記記載事項(1-4)には、食物繊維として「ファイバーソル」、「パインファイバー」といった難消化デキストリンを用いることができることが記載されているものの、本件発明1は、難消化デキストリンを「飲料全量に対して0.47?4.7重量%」含有させ、かつ、乳原料を脱脂粉乳とし、「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内」であるとしたこと全体により、容器詰乳入りコーヒー飲料が、相違点4で記載する、「長期保存により発生する異臭味の発生が防止され」、「長期保存に対して香味が保持され」るという効果を奏するものであり、この効果は、甲1に記載された事項から当業者が予想し得ないものである。

c まとめ
よって、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(ウ)本件発明2、5?9
本件発明2、5?9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2は、本件発明1において、「飲料全量に対する難消化性デキストリンの含有量が、0.6?3.3重量%であること」を特定したものであり、本件発明5は、本件発明1又は2において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として糖類の使用を減少した或いは使用しないこと」を特定したものであり、本件発明6は、本件発明5において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として、高甘味度甘味料を用いること」ことを特定するものであり、本件発明7は、本件発明1、2、5?6において、「容器詰乳入りコーヒー飲料が、常温流通品であること」を特定するものであり、本件発明8は、本件発明1、2、5?7の製造方法に係る発明であり、本件発明9は、本件発明8において、「飲料全量に対して0.6?3.3重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有させること」を特定するものである。
本件発明2、5?9のいずれの発明も、本件発明1の容器詰乳入りコーヒー飲料を含む発明であり、本件発明1と同じ相違点を有するものである。
そして、本件発明1の相違点については、上記(イ)で既に検討したとおりであるから、本件発明2、5?9は、本件発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、5?9に係る特許は、申立理由2-アによって取り消すべきものではない。

ウ 甲2に記載された発明を引用発明とする申立理由2-イ(進歩性)
(ア)甲2に記載された発明
甲2の上記記載事項(2-6)には、以下の配合8の組成のコーヒー乳飲料を耐熱性瓶に充填したことが記載されている。
「配合8
コーヒー豆抽出液 54.000質量部
牛乳 9.500質量部
グラニュー糖 5.500質量部
シュガーエステル 0.030質量部
重曹 0.120質量部
配合5 2.520質量部
水 28.330質量部」

そして、甲2の上記記載事項(2-5)の表3には、以下の配合5が記載されている。
「配合5
食物ステロールエステル 13.20質量部
オクテニルコハク酸澱粉 13.20質量部
クエン酸 0.10質量部
難消化デキストリン 73.50質量部」

そうすると、配合8のコーヒー乳飲料において、難消化デキストリンは、1.85重量部(73.5×2.520÷100)含まれていることになるから、配合5を踏まえた配合8に基づいて、甲2には、次の発明が記載されているものと認められる。
「以下の組成の瓶詰めコーヒー乳飲料。
コーヒー豆抽出液 54.000質量部
牛乳 9.500質量部
グラニュー糖 5.500質量部
シュガーエステル 0.030質量部
重曹 0.120質量部
難消化性デキストリン1.85質量部
水 28.330質量部」(以下、「甲2発明」という。)

(イ)本件発明1
a 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「牛乳」は、本件発明1の「脱脂粉乳である」「乳原料」と、「乳原料」である限りにおいて一致する。
甲2発明の「コーヒー豆抽出液」は、本件発明1の「コーヒー抽出物」に相当する。
甲2発明は、飲料全量を100重量部として、難消化性デキストリンを1.85重量部含むものであるが、この含有量は、本件発明1での難消化デキストリンの含有量である「0.47?4.7重量%の範囲内」に含まれる。
甲2発明の「瓶詰めコーヒー乳飲料」は、本件発明1の「容器詰乳入りコーヒー飲料」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明は、「乳原料と、コーヒー抽出物とを含有する容器詰乳入りコーヒー飲料であって、飲料全量に対して0.47?4.7重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有するものである容器詰乳入りコーヒー飲料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本件発明1では、「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内」であることが特定されているのに対し、甲2発明では乳原料である牛乳中に含まれる乳脂肪分量は不明である点

相違点2
乳原料が、本件発明1では、「脱脂粉乳であ」ると特定されているのに対し、甲2発明では牛乳である点

相違点3
本件発明1では、「長期保存により発生する異臭味の発生が防止された」ものであり、「長期保存に対して香味の保持された」ものであることが特定されているのに対し、甲2発明はそのような特定がない点

b 判断
(a)相違点2について
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
甲3の上記記載事項(3-1)によれば、コーヒー飲料に乳原料として脱脂粉乳を用いることは周知技術であって、実際に甲1においても、コーヒー飲料に配合する乳原料として脱脂粉乳が挙げられているとしても(上記記載事項(1-5)の【0015】)、甲2発明は、特定の組成の実施例の処方を基にして認定されたものであって、乳原料として牛乳のみを用いているところ、甲2発明は、実施例に記載された組成全体として発明がなされているものであるから、乳原料として、牛乳に代えて脱脂粉乳のみを用いることは、当業者にとって動機付けられるものではない。

(b)相違点3及び効果について
本件発明1は、乳原料を脱脂粉乳とし、「前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内」であるとし、かつ、難消化デキストリンを特定量含有させたこと全体により、容器詰乳入りコーヒー飲料が、相違点3で記載する、「長期保存により発生する異臭味の発生が防止され」、「長期保存に対して香味が保持され」るという効果を奏するものであり、この効果は、甲1?3に記載された事項から予測し得ないものである。

c まとめ
よって、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲2発明及び甲1、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(ウ)本件発明2、5?9
本件発明2、5?9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2は、本件発明1において、「飲料全量に対する難消化性デキストリンの含有量が、0.6?3.3重量%であること」を特定したものであり、本件発明5は、本件発明1又は2において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として糖類の使用を減少した或いは使用しないこと」を特定したものであり、本件発明6は、本件発明5において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として、高甘味度甘味料を用いること」ことを特定するものであり、本件発明7は、本件発明1、2、5?6において、「容器詰乳入りコーヒー飲料が、常温流通品であること」を特定するものであり、本件発明8は、本件発明 の製造方法に係る発明であり、本件発明9は、本件発明8において、「飲料全量に対して0.6?3.3重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有させること」を特定するものである。
本件発明2、5?9のいずれの発明も、本件発明1の容器詰乳入りコーヒー飲料を含む発明であり、本件発明1と同じ相違点を有するものである。
そして、本件発明1の相違点については、上記(イ)で既に検討したとおりであるから、本件発明2、5?9は、本件発明1と同様に、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、5?9に係る特許は、申立理由2によって取り消すべきものではない。

エ 申立理由3(実施可能要件)、申立理由4(サポート要件)
(ア)申立人の主張する具体的な理由は、以下のとおりである。
本件発明には、飲料全量に対する乳原料、乳代替原料、又はその両方の量については何ら規定がないところ、本件明細書には、乳代替原料を含有する場合、乳代替原料と乳原料の両方を含有する場合、それらの含有量にかかわらず、「長期保存により発生する異臭味の発生が防止された」飲料が得られることを裏付ける実験結果は示されておらず、実施可能に記載されていないし、また、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(イ)当審の判断
本件明細書の【0027】によれば、乳脂肪分は、乳酸敗臭、酸味、オフフレーバーの原因となるところ、本件訂正により、乳原料中に含まれる乳脂肪分量について、「飲料全量に対して0?2重量%の範囲内」であることが特定されたので、訂正後の本件発明1に係る「長期保存により発生する異臭味の発生が防止されたことを特徴とする長期保存に対して香味の保持された容器詰め乳入りコーヒー飲料」を作ることができるといえるし、また、前記第4 2(2)で認定した、「容器詰乳入りコーヒー飲料の長期保存により発生する異臭味の発生を防止し、長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料及びその製造方法の提供」という本件発明の課題を解決できることを理解できる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

本件発明2、5?9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2は、本件発明1において、「飲料全量に対する難消化性デキストリンの含有量が、0.6?3.3重量%であること」を特定したもの、本件発明5は、本件発明1又は2において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として糖類の使用を減少した或いは使用しないこと」を特定したもの、本件発明6は、本件発明5において、「容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として、高甘味度甘味料を用いること」ことを特定したもの、本件発明7は、本件発明1、2、5?6において、「容器詰乳入りコーヒー飲料が、常温流通品であること」を特定したもの、本件発明8は、本件発明1、2、5?7の製造方法に係る発明であり、本件発明9は、本件発明8において、「飲料全量に対して0.6?3.3重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有させること」を特定したものにすぎず、これらの発明特定事項については、本件明細書の【0023】、【0028】及び【0032】に技術的限定事項に関する記載があるから、本件発明1において検討したのと同様に、本件発明2、5?9についても、発明の詳細な説明に記載されたものである。

したがって、本件発明1、2、5?9に係る特許は、申立理由3によって取り消すべきものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件請求項1、2、5?9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1、2、5?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項3、4、10に係る特許は訂正により削除され、本件特許の請求項3、4、10に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳原料、乳代替原料又はその両方と、コーヒー抽出物とを含有する容器詰乳入りコーヒー飲料であって、
前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内であり、
前記乳原料が脱脂粉乳であり、かつ、
飲料全量に対して0.47?4.7重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有したことにより、長期保存により発生する異臭味の発生が防止されたことを特徴とする、長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項2】
飲料全量に対する難消化性デキストリンの含有量が、0.6?3.3重量%であることを特徴とする請求項1に記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として糖類の使用を減少した或いは使用しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項6】
容器詰乳入りコーヒー飲料における甘味成分として、高甘味度甘味料を用いることを特徴とする請求項5に記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項7】
容器詰乳入りコーヒー飲料が、常温流通品であることを特徴とする請求項1?2、5?6のいずれかに記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料。
【請求項8】
乳原料、乳代替原料又はその両方と、コーヒー抽出物とを含有する容器詰乳入りコーヒー飲料の製造に際して、前記飲料の製造原料に、飲料全量に対して0.47?4.7重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有させること、及び、
前記乳原料中に含まれる乳脂肪分量が飲料全量に対して0?2重量%の範囲内であり、かつ、
前記乳原料が脱脂粉乳であること
を特徴とする請求項1?2、5?7のいずれかに記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料の製造方法。
【請求項9】
飲料全量に対して0.6?3.3重量%の範囲内の難消化性デキストリンを含有させることを特徴とする請求項8に記載の長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入りコーヒー飲料の製造方法。
【請求項10】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-05-25 
出願番号 特願2014-229171(P2014-229171)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 55- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坂崎 恵美子  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 冨永 みどり
安孫子 由美
登録日 2018-08-17 
登録番号 特許第6385801号(P6385801)
権利者 キリンビバレッジ株式会社
発明の名称 乳及び植物抽出物を含有する容器詰飲料  
代理人 廣田 雅紀  
代理人 堀内 真  
代理人 堀内 真  
代理人 小澤 誠次  
代理人 小澤 誠次  
代理人 廣田 雅紀  
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