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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C01B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C01B
管理番号 1364011
異議申立番号 異議2020-700289  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-23 
確定日 2020-07-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6595137号発明「金属酸化物粒子材料の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6595137号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6595137号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成31年 2月27日を出願日とするものであって、令和 1年10月 4日にその請求項1?4に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年10月23日に特許掲載公報が発行され、その後、その全請求項に係る特許について、令和 2年 4月23日付けで特許異議申立人村野親(以下、「申立人」という。)により甲第1?6号証を添付して特許異議の申立がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」?「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程と、
前記金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程と、
を有する金属酸化物粒子材料の製造方法であって、
前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、
前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガスの少なくとも一部は空気であり、
前記水分量制御工程は、前記空気中に含まれる水分の少なくとも一部を除去する乾燥工程を有する金属酸化物粒子材料の製造方法。
【請求項2】
金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程と、
前記金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程と、
を有する金属酸化物粒子材料の製造方法であって、
前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、
前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガスの少なくとも一部は空気であり、
前記水分量制御工程は、前記空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に前記燃焼工程を行う工程である金属酸化物粒子材料の製造方法。
【請求項3】
金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程と、
前記金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程と、
を有する金属酸化物粒子材料の製造方法であって、
前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、
前記水分量制御工程は前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含まれる水分量を10.0g/Nm^(3)以下に制御する工程である金属酸化物粒子材料の製造方法。
【請求項4】
金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程と、
前記金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程と、
を有する金属酸化物粒子材料の製造方法であって、
前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、
前記水分量制御工程は、得られた金属酸化物粒子材料の水分量が、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になるように制御する工程である金属酸化物粒子材料の製造方法。」

第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証?甲第6号証を提出し、以下の特許異議申立理由によって、本件発明1?4の特許は取り消すべきものである旨を主張している。

甲第1号証:特許第3229353号公報
甲第2号証:日本工業規格 JIS K1101:2017
甲第3号証:清水雅夫,「工業用ガス脱湿装置について」,日立評論,第44巻第6号,昭和37年 6月,p.124-128
甲第4号証:日本LPガス協会 LPガス技術総覧編集委員会編,「新版 LPガス技術総覧」,2版1刷,技報堂出版株式会社,1981年 5月25日,p.539
甲第5号証:「体積分率(水分濃度)、絶対湿度(蒸気密度)、相対湿度から大気圧露点(霜点)への換算表」,株式会社コガネイ
甲第6号証:後藤弘太郎ら,「エポキシ樹脂成形用フィラーの吸湿誘電特性」,高分子論文集,Vol.42,No.9,1985年 9月,p.559-565

1 特許法第29条第1項第3号(新規性)、第2項(進歩性)について(特許異議申立書11頁8行?10行、19頁1行?21頁27行)
本件発明1?4は、甲第2?5号証の記載事項を参酌すれば、甲第1号証に記載される発明であるか、甲第1号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 特許法第29条第2項(進歩性)について(特許異議申立書11頁11行?16行、21頁28行?24頁23行)
本件発明1?2は、甲第1号証に記載される発明と、甲第2?3、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明3?4は、甲第1号証に記載される発明と、甲第2?6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について(特許異議申立書11頁17行?18行、24頁24行?26頁28行)
(1)本件発明1?4について
本件特許明細書においては、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程」における水分量の一定値がどのような数値であるかが特定されていないから、当業者は、分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分量をどのような数値以下に制御すればいいのかを理解できないので、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(2)本件発明2について
本件特許明細書においては、「空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に燃焼工程を行う工程」で空気の絶対湿度がどのような数値以下である場合に燃焼工程を行うのかが特定されていないから、当業者は、空気の絶対湿度がどのような数値以下である場合に燃焼工程を行うのかを理解できない。
また、「水分量制御工程」において「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する」ことと「空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に燃焼工程を行う」こととの関係が特定されていないから、当業者は、どのようにして、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する」と共に、「空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に燃焼工程を行う」のかを理解できないので、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(3)本件発明3について
本件特許明細書の実施例においては、分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含まれる水分量について何ら実証されておらず、10.0g/Nm^(3)以下であれば本件発明の課題を解決できるのか否かが理解できない。
水分量が10.0g/Nm^(3)である露点は11℃であり、甲第4、5号証を参照すれば、水分体積分率として13,000ppmもの水分が含まれ、このように多量に水分が含まれる分散媒及び酸化雰囲気ガスを工業プラントに用いようとしても、安全面及び製品の品質保持を考慮すると操業することは通常不可能であるため、このような多量の水分が含まれるガスを用いて、どのようにプラントを安定に操業させればよいかを理解することは、当業者であっても不可能である。
また、本件特許明細書の【0031】に開示される湿度や水分を低下させる手法は、従来極めてよく知られている手段に過ぎず、仮に、10.0g/Nm^(3)以下が従来の水分調整方法で達成できない特殊なものであれば、10.0g/Nm^(3)以下を実現するための手段が不明であり、当業者は本件発明3を実施できない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(4)本件発明4について
本件特許明細書の実施例においてカールフィッシャー法により測定された水分量は、シリカ粒子中に含まれる水分量であって、シリカ粒子の表面積(m^(2))あたりの水分量ではない。それ故、実施例において、得られた金属酸化物粒子材料の水分量が、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下であるか否かが記載されていないので、当業者は、このような特定の水分量を有する金属酸化物粒子材料を得るための水分量制御工程を理解できない。
また、本件特許明細書の【0031】に開示される湿度や水分を低下させる手法は、従来極めてよく知られている手段に過ぎず、仮に、表面積(m^(2))あたり40ppm以下が従来の水分調整方法で達成できない特殊なものであれば、表面積(m^(2))あたり40ppm以下を実現するための手段が不明であり、当業者は本件発明4を実施できない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

4 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について(特許異議申立書11頁19行?20行、26頁29行?30頁23行)
(1)本件発明1?4について
本件特許明細書の実施例においては、具体的にどのような方法により分散媒及び酸化雰囲気ガスの水分量を制御したのか、その制御方法について記載されていない。
本件特許明細書の【0041】には、試験例1、2のVMC供給エアーにおける温度、相対湿度、絶対湿度の値が記載されているが、これらの値が水分量を制御する前の値であるのか、後の値であるのか、分散媒の値であるのか、酸化雰囲気ガスの値であるのか、分散媒及び酸化雰囲気ガスの両方のガスの平均値であるのか、全く記載がなく、これらの値が何を意味するのかが理解できない。
そうすると、本件特許明細書に、本件発明において「水分量制御工程」を有することで、本件発明の課題を解決できることが記載されているとはいえない。
更に、本件特許明細書の【0024】、【0028】によれば、本件発明においては、分散媒及び酸化雰囲気ガスは、その中にごく微量の空気を含みさえすればよく、それ以外の大部分が酸素、酸化性ガス、不活性ガス、液体・固体の化合物等であってもよいのであるが、本件特許明細書の実施例では、空気を用いた例しか記載されていない。そして、本件特許明細書には、空気を用いた場合でさえ、本件発明の課題を解決し得るとする技術的根拠が記載されているとはいえず、空気以外の物質を様々な組成で有する複雑な混合ガスにおいて、どのような「水分量制御工程」により本件発明の課題を解決できるのかを理解できないし、複雑な混合ガスにおいても一律に水分量が制御できるような工程が存在するとの技術常識も存在しない。
なお、本件特許明細書の【0031】に開示される湿度や水分を低下させる手法は、従来極めてよく知られている手段に過ぎず、本件発明が、従来解決されていない課題を解決するのであれば、従来知られていない特別な方法や条件により水分量を制御したと考えるのが自然であるところ、本件特許明細書にはそのような条件は記載されていない。
したがって、本件発明は、技術的に裏付けられているとはいえず、本件発明は、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように本件特許明細書に記載されている範囲を超えており、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。

(2)本件発明1について
本件特許明細書の【0024】、【0028】によれば、本件発明においては、分散媒及び酸化雰囲気ガスは、その中にごく微量の空気を含みさえすればよく、それ以外の大部分が酸素、酸化性ガス、不活性ガス、液体・固体の化合物等であってもよいのであるが、本件発明1は、それら空気以外の物質が水分を含んでいてもよく、空気以外の物質に含まれる水分は除去されなくてもよいものである。
ところが、分散媒及び酸化雰囲気ガスがごく微量の空気を含む場合、空気中に含まれる水分の少なくとも一部を除去すれば、空気以外の物質の水分が除去されなくても本件発明の課題を解決できるとは認められないから、本件発明1は、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように本件特許明細書に記載されている範囲を超えており、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。

(3)本件発明2について
本件特許明細書の実施例には、「空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に燃焼工程を行う」「水分量制御工程」について記載されていない。また、実施例において、水分量を制御する前のVMC供給エアー中に含まれる水分量が記載されていないので、水分量を制御したことによる水分量低減の効果も確認できない。
そして、本件発明2においても、分散媒及び酸化雰囲気ガスは、その中にごく微量の空気を含みさえすればよいのであるが、ごく微量の空気に含まれる水分量が一定値以下であることにより、すなわち、空気以外のそのほかの物質に含まれる水分を除去することなく、どのようにして物理吸着水及び結合水等を減少させた金属酸化物を得て、本件発明の課題を解決できるのかを理解できない。
なお、本件特許明細書の【0031】に開示される湿度や水分を低下させる手法は、従来極めてよく知られている手段に過ぎず、本件発明が、従来解決されていない課題を解決するのであれば、従来知られていない特別な方法や条件により水分量を制御したと考えるのが自然であるところ、本件特許明細書にはそのような条件は記載されていない。
したがって、本件発明2は、技術的に裏付けられているとはいえず、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように本件特許明細書に記載されている範囲を超えており、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。

(4)本件発明3について
本件特許明細書の実施例においては、分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含まれる水分量について何ら実証されておらず、10.0g/Nm^(3)以下であれば本件発明の課題を解決できるのか否かが理解できないから、当業者は、10.0g/Nm^(3)以下であれば本件発明の課題を解決できることを認識できない。
また、水分量が10.0g/Nm^(3)のように多量に水分が含まれる分散媒及び酸化雰囲気ガスを工業プラントに用いようとしても、安全面及び製品の品質保持を考慮すると操業することは通常不可能であるため、このような多量の水分が含まれるガスを用いて、どのようにプラントを安定に操業して本件発明の課題を解決できる金属酸化物粒子材料を製造できるのかを理解できない。
なお、本件特許明細書の【0031】に開示される湿度や水分を低下させる手法は、従来極めてよく知られている手段に過ぎず、本件発明が、従来解決されていない課題を解決するのであれば、従来知られていない特別な方法や条件により水分量を制御したと考えるのが自然であるところ、本件特許明細書にはそのような条件は記載されていない。
したがって、本件発明3は技術的に裏付けられているとはいえず、当業者は、本件発明3により本件発明の課題を解決できることを認識できないから、本件発明3は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。

(5)本件発明4について
本件特許明細書の実施例には、得られた金属酸化物粒子材料における、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたりの水分量が一切記載されていないので、当業者は、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたりの水分量が400ppm以下であれば本件発明の課題を解決できることを認識できない。
本件特許明細書の実施例においては、特定の水分量を有する金属酸化物粒子材料を得るための水分量制御工程について記載されていないから、どのようにして本件発明の課題を解決できる金属酸化物粒子材料を製造するのかを理解できない。
なお、本件特許明細書の【0031】に開示される湿度や水分を低下させる手法は、従来極めてよく知られている手段に過ぎず、本件発明が、従来解決されていない課題を解決するのであれば、従来知られていない特別な方法や条件により水分量を制御したと考えるのが自然であるところ、本件特許明細書にはそのような条件は記載されていない。
したがって、本件発明4は、技術的に裏付けられているとはいえず、当業者は、本件発明4により本件発明の課題を解決できることを認識できないから、本件発明4は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。

5 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について(特許異議申立書11頁21行?22行、30頁24行?31頁8行)
(1)本件発明1?4について
本件発明1?4においては、「水分量制御工程」における具体的な水分の量が特定されていないから、本件発明1?4は明確でない。

(2)本件発明2について
本件発明2においては、「水分量制御工程」における具体的な絶対湿度が特定されていないから、本件発明2は明確でない。

第4 特許異議申立理由についての当審の判断
1 特許法第29条第1項第3号(新規性)、第2項(進歩性)について
(1)各甲号証の記載事項
(1-1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載される発明
甲第1号証には、以下(1a)?(1c)の記載がある。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属粉末をキャリアガスとともに酸化性雰囲気下の反応容器内に供給して該反応容器内で該金属粉末を燃焼させることにより、金属酸化物粉末を合成し、合成した金属酸化物粉末を回収手段で回収する金属酸化物粉末の製造方法において、
前記回収手段を加熱しつつ合成された金属酸化物粉末を固気相分離することを特徴とする金属酸化物粉末の製造方法。」

(1b)「【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)図1に概略的に示す製造装置は、内壁がアルミナれんがで内張りされた反応容器1と、反応容器1の上流側に連結された金属粉末供給装置2と、反応容器1と金属粉末供給装置2との間に配設されたバーナ3と、反応容器1の下流側に連結された回収装置4とから構成されている。
【0018】金属粉末供給装置2は、一端がバルブ21を介してキャリアガスボンベ(図示せず)に接続され他端がバーナ3に接続されて、金属粉末を分散したキャリアガスをバーナ3に導入する導入管22と、この導入管22に下端が連結され、金属粉末を収納したホッパ23とを備えている。バーナ3には、バルブ31を介してLPGガスボンベ(図示せず)に接続された可燃性ガス供給管32と、バルブ33を介して酸素ボンベ(図示せず)に接続された支燃性ガス供給管34とが接続されている。なお、この可燃性ガス供給管32、支燃性ガス供給管34から供給される可燃性ガス、支燃性ガスは反応容器1内に供給される。
【0019】回収装置4は、反応容器1の側壁に開口する捕集管41と、この捕集管41の下流側に配設されたバグフィルタ42と、バグフィルタ42の下流側に接続管43を介して配設された排気ガス処理装置44と、排気ガス処理装置の下流側に同じく接続管43を介して配設された排風機45とを備えている。バグフィルタ42は耐熱性のもので、加熱用のヒータ42aを備えている。
【0020】このように構成された製造装置を用いて、約2mmに調整された市販の粉粒状金属珪素を平均粒径15μmに粒度調整した金属珪素粉末からシリカ粉末を合成した。バルブ31を開いて可燃性ガス供給管32からLPGガスを1Nm^(3 )/hrの流量で供給し、バルブ33を開いて支燃性ガス供給管32から酸素を15Nm^(3)/hrの流量で供給し、図示しない着火手段により着火して種火としてのLPG火炎を形成しておく。そして、バルブ21を開いてキャリアガスとしての空気を4Nm^(3 )/hrの流量で供給するとともに、ホッパ23から金属珪素粉末を9kg/hrの流量で供給した。これにより、キャリアガスとともに金属珪素粉末はバーナ3に導入され、LPG火炎と接触して、燃焼火炎を形成し、金属酸化物粉末としてのシリカ粉末を合成した。そして、排風機45の吸引力によりシリカ粉末を含む燃焼排気ガスを吸引し、バグフィルタ42でシリカ粉末を分離、回収した。このとき、バグフィルタ42のヒータ42aの制御により、回収温度は所定温度に制御されている。なお、反応容器1内の圧力は、排風機45の吸引力により大気圧基準で-100mmAqに設定されている。また、回収されたシリカ粉末のBET比表面積は9m^(2 )/gであり、排気ガスのNO_(x )濃度は1620ppmだった。
…」

(1c)「【図1】



(ア)前記(1a)によれば、甲第1号証には「金属酸化物粉末の製造方法」が記載されており、前記(1b)、(1c)によれば、当該「金属酸化物粉末の製造方法」は、内壁がアルミナれんがで内張りされた反応容器と、反応容器の上流側に連結された金属粉末供給装置と、反応容器と金属粉末供給装置との間に配設されたバーナと、反応容器の下流側に連結された回収装置とから構成される製造装置により、約2mmに調整された市販の粉粒状金属珪素を平均粒径15μmに粒度調整した金属珪素粉末からシリカ粉末を合成するものであって、バルブを開いて可燃性ガス供給管からLPGガスを1Nm^(3 )/hrの流量で供給し、バルブを開いて支燃性ガス供給管から酸素を15Nm^(3)/hrの流量で供給し、着火手段により着火して種火としてのLPG火炎を形成しておき、そして、バルブを開いてキャリアガスとしての空気を4Nm^(3 )/hrの流量で供給するとともに、ホッパから金属珪素粉末を9kg/hrの流量で供給し、これにより、キャリアガスとともに金属珪素粉末はバーナに導入され、LPG火炎と接触して、燃焼火炎を形成し、金属酸化物粉末としてのシリカ粉末を合成するものであり、排風機の吸引力によりシリカ粉末を含む燃焼排気ガスを吸引し、バグフィルタでシリカ粉末を分離、回収するものであり、このとき、バグフィルタのヒータの制御により、回収温度は所定温度に制御されているものであり、反応容器内の圧力は、排風機の吸引力により大気圧基準で-100mmAqに設定されているものであり、また、回収されたシリカ粉末のBET比表面積は9m^(2 )/gであり、排気ガスのNO_(x )濃度は1620ppmであるものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「内壁がアルミナれんがで内張りされた反応容器と、反応容器の上流側に連結された金属粉末供給装置と、反応容器と金属粉末供給装置との間に配設されたバーナと、反応容器の下流側に連結された回収装置とから構成される製造装置により、約2mmに調整された市販の粉粒状金属珪素を平均粒径15μmに粒度調整した金属珪素粉末からシリカ粉末を合成するものであって、
バルブを開いて可燃性ガス供給管からLPGガスを1Nm^(3 )/hrの流量で供給し、バルブを開いて支燃性ガス供給管から酸素を15Nm^(3)/hrの流量で供給し、着火手段により着火して種火としてのLPG火炎を形成しておき、そして、バルブを開いてキャリアガスとしての空気を4Nm^(3 )/hrの流量で供給するとともに、ホッパから金属珪素粉末を9kg/hrの流量で供給し、これにより、キャリアガスとともに金属珪素粉末はバーナに導入され、LPG火炎と接触して、燃焼火炎を形成し、金属酸化物粉末としてのシリカ粉末を合成するものであり、
排風機の吸引力によりシリカ粉末を含む燃焼排気ガスを吸引し、バグフィルタでシリカ粉末を分離、回収するものであり、このとき、バグフィルタのヒータの制御により、回収温度は所定温度に制御されているものであり、反応容器内の圧力は、排風機の吸引力により大気圧基準で-100mmAqに設定されているものであり、また、回収されたシリカ粉末のBET比表面積は9m^(2 )/gであり、排気ガスのNO_(x )濃度は1620ppmであるものである、金属酸化物粉末の製造方法。」(以下、「甲1発明」という。)

(1-2)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下(2a)?(2b)の記載がある。
(2a)「1 適用範囲
この規格は,高圧ガス容器に充填した工業用の酸素(液化酸素及び圧縮酸素)(以下,酸素という。)について規定する。」(3頁6?8行)

(2b)「

」(4頁5行?13行)

(1-3)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下(3a)?(3c)の記載がある。
(3a)「1.緒言
湿ったガスから水分を少なくすること,すなわち湿度を下げることは除湿または脱湿と呼ばれているが,ここでは脱湿と呼ぶことにする。
脱湿は,(1)保健衛生,(2)産業における諸工程,(3)物品の貯蔵,(4)原料ガスの精製などに必要であり,ガス中の水分が製品の品質を低下させたり,酸化,還元などの作用を妨げたりすることは周知のとおりである。この脱湿は以前から空気調和の一環として行われていたが,第2次世界大戦後,特にプロセス工業の発達とともに,この問題に対する関心が高まってきた。すなわち,プロセスの自動化に伴い,プロセス中のガスの脱湿,計装空気の脱湿などが多くなってきた。
最近,日立製作所で作製した,富士製鉄株式会社室蘭製鉄所納めの酸素脱湿装置と,日本タングステン株式会社納めの水素脱湿装置の二つについてその概要と特長を述べ,これらの方式の得失について考察を加える。」(124頁左欄1行?18行)

(3b)「2.富士製鉄株式会社室蘭製鉄所納め酸素脱湿装置
2.1 装置の概要
本装置は製鋼用転炉に使用する12,000Nm^(3)/hの酸素を,15?2℃の露点まで脱湿する装置で,酸素中の水分解による水素の脱炭作用を防止する目的で設置されたものである。第1図はこの系統図を示す。」(124頁左欄19行?25行)

(3c)「3.日本タングステン株式会社納め水素脱湿装置
3.1 装置の概要
本装置はタングステン焼結用に使用する180Nm^(3)/hの水素を,-40℃の露点まで脱湿する装置である。第2図はこの系統を示している。」(125頁右欄13行?18行)

(1-4)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には以下(4a)の記載がある。
(4a)「



(1-5)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には以下(5a)の記載がある。
(5a)「



(1-6)甲第6号証の記載事項
甲第6号証には以下(6a)?(6d)の記載がある。
(6a)「要旨 エポキシ樹脂成形用フィラーとして用いられるシリカ粉とガラスビーズの誘電率ε’と誘電損率ε”は水分吸着により低周波数帯で非常に大きくなる.フィラーの表面に吸着した水分層の誘電率ε’は,1Hzで105以上大きな値となる.この結果は,フィラー表面に作られる吸着水の水素結合連鎖の大きな分極として説明される.同様なことはフィラーを充填したエポキシ樹脂成形品の高湿度での誘電特性にみられる.この誘電率の増大はフィラーの表面処理をすることによって抑制することができる.」(559頁5行?10行)

(6b)「本研究において,ガラスビーズ,シリカ粉などのエポキシ樹脂成形用フィラーの吸湿誘電特性の測定を行ってフィラー表面への吸着水の誘電特性を検討した.」(559頁左欄11行?13行)

(6c)「3.2 フィラーの誘電特性
各フィラーの誘電特性をFig.4?6に示す.誘電特性測定時の試料の容積充てん率が異なるため試料間の誘電特性差をこの図から定量的に議論することはできないが,吸湿率の大きい試料は,ε’,ε”の増大となる程度が大きい.」(560頁右欄7行?561頁左欄4行)

(6d)「



(2)対比・判断
(2-1)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「金属酸化物粉末の製造方法」は、本件発明1における「金属酸化物粒子材料の製造方法」に相当し、甲1発明における「キャリアガス」は、本件発明1における「分散媒」に相当し、甲1発明において、「バルブを開いてキャリアガスとしての空気を4Nm^(3 )/hrの流量で供給するとともに、ホッパから金属珪素粉末を9kg/hrの流量で供給」することは、本件発明1における「金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程」に相当し、甲1発明において、「キャリアガスとともに金属珪素粉末はバーナに導入され、LPG火炎と接触して、燃焼火炎を形成し、金属酸化物粉末としてのシリカ粉末を合成する」ことは、本件発明1における「前記金属粒子材料分散系」を「供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程」に相当する。
また、甲1発明において「キャリアガス」が「空気」であることは、本件発明1において「分散媒」の「少なくとも一部は空気であ」ることに相当する。

(イ)前記(ア)によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程と、
前記金属粒子材料分散系を供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程と、
を有する金属酸化物粒子材料の製造方法であって、
前記分散媒の少なくとも一部は空気である、
金属酸化物粒子材料の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1-1:本件発明1は、「金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給」するものであって、「前記酸化雰囲気ガスの少なくとも一部は空気であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「キャリアガスとともに金属珪素粉末」を「バーナに導入」する点。

・相違点1-2:本件発明1は、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し」、「前記水分量制御工程は、前記空気中に含まれる水分の少なくとも一部を除去する乾燥工程を有する」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記ア(イ)の相違点1-2から検討すると、前記(1)(1-2)(2a)、(2b)によれば、甲第2号証には、高圧ガス容器に充填した工業用の酸素(液化酸素及び圧縮酸素)のJIS規格が記載されており、当該工業用の酸素は、純度が体積分率で99.5%以上、露点が-55℃以下であるものであり、露点-55℃は水分体積分率20.7ppmに相当するものである。
また、前記(1)(1-3)(3a)?(3c)によれば、甲第3号証には、湿ったガスから水分を少なくする脱湿について記載されており、脱湿は、(1)保健衛生、(2)産業における諸工程、(3)物品の貯蔵、(4)原料ガスの精製などに必要であるが、第2次世界大戦後、特にプロセス工業の発達とともに、プロセスの自動化に伴い、プロセス中のガスの脱湿、計装空気の脱湿などが多くなってきたものであり、脱湿装置として、富士製鉄株式会社室蘭製鉄所納めの、製鋼用転炉に使用する酸素脱湿装置と、日本タングステン株式会社納めの、タングステン焼結用に使用する水素脱湿装置の二つについての概要と特長、これらの方式の得失について記載されるものである。
更に、前記(1)(1-6)(6a)?(6d)によれば、甲第6号証には、エポキシ樹脂成形用フィラーとして用いられるシリカ粉とガラスビーズの誘電率ε’と誘電損率ε”は水分吸着により低周波数帯で非常に大きくなるものであり、同様なことはフィラーを充填したエポキシ樹脂成形品の高湿度での誘電特性にみられるものであるが、この誘電率の増大はフィラーの表面処理をすることによって抑制することができること、ガラスビーズ、シリカ粉などのエポキシ樹脂成形用フィラーの吸湿誘電特性の測定を行ってフィラー表面への吸着水の誘電特性を検討すると、吸湿率の大きい試料はε’,ε”の増大となる程度が大きいことが記載されている。
ここで、甲1発明は、「金属酸化物粒子材料」の製造における「分散媒」として空気を用いるものである一方、甲第2、3号証は、高圧ガス容器に充填した工業用の酸素や製鋼用転炉に使用する酸素の水分を少なくすることが開示されるに過ぎず、甲第6号証は、エポキシ樹脂成形用フィラーとして用いられるシリカ粉とガラスビーズの水分吸着による誘電率の増大は、フィラーの表面処理をすることによって抑制することができることを開示するにとどまるものであり、甲第2、3、6号証には、「金属酸化物粒子材料」の製造における「分散媒」である空気に含有される水分を一定値以下に制御することが記載も示唆もされるものではない。
してみれば、甲第2、3、6号証の記載事項から、甲1発明が、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有」することが明らかであるとはいえず、甲1発明が、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し」、「前記水分量制御工程は、前記空気中に含まれる水分の少なくとも一部を除去する乾燥工程を有する」、との発明特定事項を有することが明らかであるともいえないので、前記相違点1-2は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。

(イ)また、甲第2、3、6号証には、「金属酸化物粒子材料」の製造における「分散媒」である空気に含有される水分を一定値以下に制御することが記載も示唆もされるものではないことは前記(ア)の記載のとおりであり、してみれば、甲第2、3、6号証には、「金属酸化物粒子材料」の製造において、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程」を備えることが記載も示唆もされているとはいえないので、甲1発明において、「金属酸化物粒子材料の製造方法」を、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し」、「前記水分量制御工程は、前記空気中に含まれる水分の少なくとも一部を除去する乾燥工程を有する」、との前記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを、甲第2、3、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2、3、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-2)本件発明2について
ア 対比
本件発明1の場合と同様にして本件発明2と甲1発明とを対比すると、本件発明2と甲1発明とは、
「金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程と、
前記金属粒子材料分散系を供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程と、
を有する金属酸化物粒子材料の製造方法であって、
前記分散媒の少なくとも一部は空気である、
金属酸化物粒子材料の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点2-1:本件発明2は、「金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給」し、「前記酸化雰囲気ガスの少なくとも一部は空気であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「キャリアガスとともに金属珪素粉末」を「バーナに導入」する点。

・相違点2-2:本件発明2は、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し」、「前記水分量制御工程は、空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に燃焼工程を行う工程である」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記アの相違点2-2から検討すると、前記(2-1)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、甲第2、3、6号証の記載事項から、甲1発明が、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し」、「前記水分量制御工程は、空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に燃焼工程を行う工程である」、との発明特定事項を有することが明らかであるとはいえないので、前記相違点2-2は実質的な相違点であるから、本件発明2が甲1発明であるとはいえない。

(イ)また、前記(2-1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲第2、3、6号証に、「金属酸化物粒子材料」の製造において、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程」を備えることが記載も示唆もされるものではない。
してみれば、甲1発明において、「金属酸化物粒子材料の製造方法」を、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し」、「前記水分量制御工程は、空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に燃焼工程を行う工程である」、との前記相違点2-2に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることを、甲第2、3、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲第2、3、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-3)本件発明3について
ア 対比
本件発明1、2の場合と同様にして本件発明3と甲1発明とを対比すると、本件発明3と甲1発明とは、
「金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程と、
前記金属粒子材料分散系を供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程と、
を有する、
金属酸化物粒子材料の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点3-1:本件発明3は、「金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「キャリアガスとともに金属珪素粉末」を「バーナに導入」する点。

・相違点3-2:本件発明3は、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、前記水分量制御工程は前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含まれる水分量を10.0g/Nm^(3)以下に制御する工程である」との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記アの相違点3-2から検討すると、前記(2-1)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、甲第2、3、6号証の記載事項から、甲1発明が、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、前記水分量制御工程は前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含まれる水分量を10.0g/Nm^(3)以下に制御する工程である」との発明特定事項を有することが明らかであるとはいえない。
また、前記(1)(1-4)(4a)、同(1-5)(5a)によれば、甲第4、5号証には、それぞれ、露点と水分の関係及び体積分率(水分濃度)、絶対湿度(蒸気密度)、相対湿度から大気圧露点(霜点)への換算表が記載されているに過ぎず、甲第4、5号証の記載事項から、甲1発明が、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、前記水分量制御工程は前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含まれる水分量を10.0g/Nm^(3)以下に制御する工程である」との発明特定事項を有することが明らかであるともいえないので、前記相違点3-2は実質的な相違点であるから、本件発明3が甲1発明であるとはいえない。

(イ)また、前記(2-1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲第2、3、6号証に、「金属酸化物粒子材料」の製造において、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程」を備えることが記載も示唆もされるものではないし、甲第4、5号証にも、このことが記載も示唆もされているとはいえないから、甲1発明において、「金属酸化物粒子材料の製造方法」を、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、前記水分量制御工程は前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含まれる水分量を10.0g/Nm^(3)以下に制御する工程である」、との前記相違点3-2に係る本件発明3の発明特定事項を有するものとすることを、甲第2?6号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明及び甲第2?6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-4)本件発明4について
ア 対比
本件発明1?3の場合と同様にして本件発明4と甲1発明とを対比すると、本件発明4と甲1発明とは、
「金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程と、
前記金属粒子材料分散系を供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程と、
を有する、
金属酸化物粒子材料の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点4-1:本件発明4は、「金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「キャリアガスとともに金属珪素粉末」を「バーナに導入」する点。

・相違点4-2:本件発明4は、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、前記水分量制御工程は、得られた金属酸化物粒子材料の水分量が、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になるように制御する工程である」との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記アの相違点4-2から検討すると、前記(2-1)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、甲第2、3、6号証の記載事項から、甲1発明が、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、前記水分量制御工程は、得られた金属酸化物粒子材料の水分量が、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になるように制御する工程である」との発明特定事項を有することが明らかであるとはいえないし、前記(2-3)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、甲第4、5号証の記載事項から、甲1発明が前記発明特定事項を有することが明らかであるともいえないので、前記相違点4-2は実質的な相違点であるから、本件発明4が甲1発明であるとはいえない。

(イ)また、前記(2-1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲第2、3、6号証に、「金属酸化物粒子材料」の製造において、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程」を備えることが記載も示唆もされるものではないし、甲第4、5号証にも、このことが記載も示唆もされているとはいえないから、甲1発明において、「金属酸化物粒子材料の製造方法」を、「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有し、前記水分量制御工程は、得られた金属酸化物粒子材料の水分量が、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になるように制御する工程である」、との前記相違点4-2に係る本件発明4の発明特定事項を有するものとすることを、甲第2?6号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明及び甲第2?6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるので、本件発明1?4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、前記第3の1及び2(特許法第29条第1項第3号、第2項)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。

2 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
(1)本件発明1?4について
(ア)本件特許明細書には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(a)「【0001】
本発明は、誘電正接が小さい金属酸化物粒子材料を製造できる金属酸化物粒子材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の封止材、基板材料、その他の電子材料として金属酸化物粒子材料が採用されており、特に樹脂材料中に金属酸化物粒子材料を分散させた樹脂組成物が知られている(特許文献1?3など)。
【0003】
金属酸化物粒子材料を製造する方法の1つとして、金属から構成される粒子材料を酸化雰囲気ガス中に投入して燃焼させることで金属酸化物粒子材料にする方法(VMC法)が知られている(特許文献3、4など)。
【0004】
ところで、特許文献2には、金属酸化物粒子材料を樹脂材料中に分散させた樹脂組成物を電子材料に応用する際に、分散させる金属酸化物粒子材料について物理吸着水の量を50ppm以下にすることによりプレッシャークッカ試験の結果が好ましくなることが開示されている。
【0005】
特許文献2において金属酸化物粒子材料の物理吸着水の量を減少させる方法としては、熱処理法を採用すること、すなわち、製造された金属酸化物粒子材料について加熱・乾燥させることが開示されている。なお、シリカは200℃を超えて加熱すると表面OH基(結合水)が除去され始めるため(例えば非特許文献1参照)、シリカの物理吸着水は200℃まで加熱することで測定する。
【0006】
また、特許文献3においては「金属粉末を反応容器内で可燃性ガスと助燃性ガスとからなる高温火炎中に供給し、該火炎中で該金属粉末を酸化させることにより、金属酸化物粉末を合成する金属酸化物粉末の製造方法」について、可燃性ガスの燃焼に伴い発生する水蒸気量を適度に制御することにより優れた金属酸化物が得られることを要旨とする発明である(特許文献3の0034段落)。ここで特許文献3において問題になる水蒸気は外部からは供給されないため、主に反応性ガス(例えばプロパン)の燃焼によって発生する理論水蒸気量として計算される(特許文献3の0035段落)。特許文献3に開示の発明は、「半導体封止材料の流動性と成形性改善効果に優れ、機械的強度およびはんだ耐熱性を高めることができる金属酸化物粉末とその製造方法」を提供することを目的とする発明である。

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、金属酸化物粒子材料を電子材料に応用するに当たって、物理吸着水の量を減少することに加え、物理吸着水以外にも含有する水(結合水など)についても減少させることによって電気的特性を向上する(例えば誘電正接:Dfを低くする)ことができるとの知見を得た。【0010】
ここで、特許文献2に開示の発明においては、請求項1に粒径が20?100μmと規定されている通り、比較的粒径の大きな粒子を扱うことを想定している。近年の電子材料用フィラーは半導体素子構造や回路の微細化に伴い粒径がサブミクロンからナノメートルオーダーにまで小さくなっている。物理吸着している水分量は粒子材料の表面積に比例して大きくなるため、粒径が小さくなると表面積も大きくなって物理吸着水の量も大きくなる。例えば、粒径がサブミクロンからナノメートルオーダーになった粒子材料では、特許文献2にて規定するところの「水分量を50ppm以下」と同等の水分量は数十倍となって1000ppmを超えるような量となった。その程度の水分量を目指して水分量を減少させることを目的として加熱しても電気的特性の向上が実現できるほどにまで含まれる水分を減少することは期待できず、充分な電気的特性とはならなかった。特に物理吸着水の量を減らしても、その後に空気中の水分が速やかに再結合することもあった。
【0011】
更に、適正な電気的特性を実現させるとの観点からは、水分量は少ない方が好ましく、特許文献3に開示の発明のように(例えば0034段落)、積極的に水分を供給しようとすることは望ましくないことが分かった。
【0012】
本発明者らは、物理吸着水以外にも含有する水分を減少することができる金属酸化物粒子材料の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。」

(b)「【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明者らは、上記課題を解決する目的で鋭意検討を行った結果、VMC法での製造条件を調節することにより物理吸着水やそれ以外の水分の量を減少することができることを発見し以下の発明を完成した。
【0014】
すなわち、上記課題を解決する本発明の金属酸化物粒子材料の製造方法は、
金属粒子材料と、前記金属粒子材料を分散する分散媒とをもつ金属粒子材料分散系を調製する調製工程と、
前記金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給し、前記金属粒子材料を燃焼させることにより、金属酸化物粒子材料を製造する燃焼工程と、
を有する金属酸化物粒子材料の製造方法であって、
前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する水分量制御工程を有する。
【0015】
VMC法は金属粒子材料を酸化させることにより金属酸化物を製造する方法である。金属粒子材料を酸化させる雰囲気に含まれる水分量を減少させることにより製造された金属酸化物に含まれる結合水などと称される水分量が減少できる。金属酸化物粒子材料を製造した後に水分を除去するよりも簡単に水分量を制御することができる。
【0016】
(2)上述した(1)の発明において、前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガスの少なくとも一部は空気であり、前記水分量制御工程は、前記空気中に含まれる水分の少なくとも一部を除去する乾燥工程を有することができる。積極的に水分を除去することで水分量を減少させる工程を備えることにより、製造される金属酸化物の水分含有量が制御できる。なお、本明細書中における「空気」とは、「外気」である。
【0017】
(3)上述した(1)の発明において、前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガスの少なくとも一部は空気であり、前記水分量制御工程は、前記空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に前記燃焼工程を行う工程であることができる。金属粒子材料を酸化させる雰囲気中に空気を導入し、導入する空気の湿度を管理することにより、製造される金属酸化物の水分量が制御できる。
【0018】
(4)上述した(1)?(3)の発明において、具体的に制御する水分量として、前記水分量制御工程は前記分散媒及び前記酸化雰囲気ガス中に含まれる水分量を10.0g/Nm^(3)以下に制御する工程とすることができる。なお、本明細書において体積を「Nm^(3)」として表記している場合には標準状態(25℃、1atm)における体積に換算した値であることを表している。
【0019】
(5)上述した(1)?(4)の発明において、前記水分量制御工程は、得られた金属酸化物粒子材料の水分量は、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になるように制御する工程であることができる。水分量をこの範囲にすることで電気的特性を向上することができる。200℃で加熱することにより物理吸着水の量が測定されている。表面積(m^(2))あたりの水分量は(200℃で加熱したときの水分量:ppm)÷(比表面積:m^(2)/g)で算出される。比表面積は窒素ガスを用いたBET法にて測定した値である。」

(c)「【0024】
分散媒は含有する水分量が制御されること以外は特に限定しない。分散媒としては気体であることが好ましい。分散媒中には金属粒子材料と反応して酸化物を形成する酸素や、熱分解により酸素を放出する化合物である酸化ガスを含有していても良い。気体としては酸化性ガス以外は、金属粒子材料との間で反応性が低い不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスとしては窒素、アルゴンが例示できる。気体以外には液体・固体の化合物を分散媒中に含有することができる。分散媒としては、空気を含むもの、更には空気からなるものが好ましい。

【0027】
金属粒子材料分散系の調製の方法は特に限定しない。分散媒として気体と液体のものを混合して採用する場合には、金属粒子材料、液体の分散媒、気体の分散媒のそれぞれの混合順序は限定しない。例えば、液体の分散媒に金属粒子材料を先に分散させた後に気体の分散媒中に分散させたり、気体の分散媒に液体の分散媒を分散させた後に金属粒子材料を分散させたり、気体の分散媒に金属粒子材料を分散させた後に液体の分散媒を分散させたりすることができる。更に、金属粒子材料分散系としては組成比が異なる(金属粒子材料の濃度が異なるなど)ものを採用して、それぞれを用いることができる。
【0028】
・燃焼工程
燃焼工程は、金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガス中に供給し、含有される金属粒子材料を燃焼させることで金属酸化物粒子材料を製造する工程である。酸化雰囲気ガスとしては酸素を含有するものや、熱分解により酸素を発生する化合物である。酸化させる雰囲気ガスとしては、特に空気を含むもの、さらには空気からなるものが好ましい。」

(d)「【0031】
・水分量制御工程
水分量制御工程は、分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する工程である。水分量を一定値以下に制御する方法としては特に限定しない。例えば、分散媒や酸化雰囲気ガスから水分を除去する乾燥工程を採用したり、元々、水分量が少ない分散媒や酸化雰囲気ガスを採用したりすることができる。乾燥させる方法としては、乾燥剤を用い、分散媒や酸化雰囲気ガスを通過させて乾燥する方法や、冷却して水分を過飽和状態にして凝集する方法などが採用できる。
【0032】
分散媒や酸化雰囲気ガスとして少なくとも一部に空気を採用する場合には、その空気を乾燥させる工程を採用したり、空気(大気)の絶対湿度を測定する測定工程を行ってその絶対湿度が所定値以下の場合に調製工程及び燃焼工程を実行するようにしたりできる。例えば、季節や天候によって空気中の湿度が変動するので、測定工程により必要な水分量の空気が得られた場合に調製工程及び燃焼工程を行うこともできる。
【0033】
水分量としては、所定値以下になるように制御できれば充分であるが、低下させるように乾燥乃至は除湿することが好ましい。水分量の所定値としては特に限定しないが、20.0g/Nm^(3)、10.0g/Nm^(3)、5.0g/Nm^(3)などが例示できる。また、製造された金属酸化物粒子材料の水分量から限定することもできる。分散媒、酸化雰囲気ガス中における水分量を制御したり、燃焼時に水分が生成する可燃性ガスの量を制御することで製造される金属酸化物粒子材料が含有する水分量(例えば表面OH基などとして存在する結合水も含む)も制御できる。金属酸化物粒子材料の水分量が単位面積あたり40ppm以下になるように、分散媒や酸化雰囲気ガスの水分量や可燃性ガスの量を制御することができる。可燃性ガスの量を減らすと金属酸化物粒子材料の水分量も減少傾向になる。また特に結合水の量も減少させることで、物理吸着水の量も減少する。
【0034】
本明細書中において「金属酸化物粒子材料の水分量」とは、燃焼工程後に金属酸化物粒子材料が加熱されて200℃に到達するまでに放出する水分量を意味する。なお、必要に応じて加熱の温度を500℃にすることもできる。500℃まで加熱して生成する水分の量は物理吸着水の量に加えて結合水も生成する。」

(e)「【実施例】
【0038】
本発明の金属酸化物粒子材料の製造方法について実施例に基づいて説明を行う。
【0039】
(試験)
金属粒子材料としての金属ケイ素(体積平均粒径15μm)を、分散媒としての空気中に分散させて金属粒子材料分散系を調製した(調製工程)。金属粒子材料分散系を4Nm^(3)/時間の速度で、酸化雰囲気ガスとしての空気中に供給した。酸化雰囲気ガスは15Nm^(3)/時間の速度で反応炉中に供給した。反応炉中では、1Nm^(3)/時間の速度で供給したプロパンガスを燃焼させて発火源としており、金属粒子材料分散系はこの発火源中に供給した。得られた金属酸化物粒子材料をバグフィルタにて収集した。
【0040】
分散媒及び酸化雰囲気ガスとしては空気(VMC供給エアー)を採用しているが、湿度を調節することで水分含有量を2段階に調節した(水分量制御工程)。得られた金属酸化物粒子材料としてのシリカ粒子について、200℃まで加熱した場合、500℃まで加熱した場合のそれぞれについて水分量をカールフィッシャー法にて測定した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1より明らかなように、用いた空気に含まれる水分量に応じて得られたシリカ粒子中の水分量も変化することが分かった。従って、金属酸化物を製造する際に用いる環境に含まれる水分量を制御(減少)することにより、製造される金属酸化物に含まれる水分量も制御(減少)することができることが分かった。なお、今回の試験はVMC供給エアーに含まれる水分量を減らすことで金属酸化物粒子材料の水分量を減らすことができることを確認する試験である。今回の製造条件では可燃性ガスの燃焼に由来する水分や冷却雰囲気中の水分などの分散媒及び酸化雰囲気ガス以外の要因により金属酸化物粒子材料の水分量が高くなっている。
【0043】
詳細は示さないが200℃まで加熱したときに生成する水分量、500℃まで加熱して生成する水分量共に低下させることによって誘電正接の値が低下できることを確認している。」

(イ)前記(ア)(b)(【0018】)には、「水分量制御工程」において具体的に制御する水分量として、分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含まれる水分量を10.0g/Nm^(3)以下に制御する工程とすることができること、「Nm^(3)」は、標準状態(25℃、1atm)における体積に換算した値であることが記載され、同(e)(【0041】【表1】の試験例2)には、VMC供給エアーの絶対湿度を4.3g/Nm^(3)とすることが記載されている。
そして、本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、本件発明における「水分量制御工程」が、分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分量を、例えば絶対湿度で10.0g/Nm^(3)以下とするものであることを理解できるから、本件発明の「水分量制御工程」における分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分の量をどのような数値以下に制御すればよいのかを理解できるというべきである。

(ウ)したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるので、前記第3の3(1)の特許異議申立理由は理由がない。

(2)本件発明2について
(ア)本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、本件発明における「水分量制御工程」が、分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分量を、例えば絶対湿度で10.0g/Nm^(3)以下とするものであることを理解できることは、前記(1)(イ)に記載のとおりであるから、当業者は、本件発明2の「水分量制御工程」において、絶対湿度がどのような数値以下である場合に燃焼工程を行うのかを理解できるというべきである。

(イ)また、前記(1)(ア)(b)(【0017】)には、「水分量制御工程」は、空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下の場合に燃焼工程を行うことが記載されている。
そして、本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、本件発明2における「水分量制御工程」が、水分を一定値以下に制御した上で、空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下の場合に燃焼工程を実行するものであることを理解できるから、「水分量制御工程」において、どのようにして「分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する」と共に「空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に燃焼工程を行う」のかを理解できるというべきである。

(ウ)したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるので、前記第3の3(2)の特許異議申立理由は理由がない。

(3)本件発明3について
(ア)前記(1)(ア)(a)によれば、本件発明は、誘電正接が小さい金属酸化物粒子材料を製造できる金属酸化物粒子材料の製造方法に関するものであって、金属酸化物粒子材料を電子材料に応用するに当たって、物理吸着水の量を減少することに加え、物理吸着水以外にも含有する水(結合水など)についても減少させることによって電気的特性を向上する(例えば誘電正接:Dfを低くする)ことができるとの知見に基づくものである。

(イ)すなわち、従来は、金属酸化物粒子材料として粒径が20?100μmの比較的粒径の大きな粒子を扱うことを想定していたのであるが、近年の電子材料用フィラーは半導体素子構造や回路の微細化に伴い粒径がサブミクロンからナノメートルオーダーにまで小さくなっており、物理吸着している水分量は粒子材料の表面積に比例して大きくなるため、粒径が小さくなると表面積も大きくなって物理吸着水の量も大きくなり、水分量を減少させることを目的として加熱しても電気的特性の向上が実現できるほどにまで含まれる水分を減少することは期待できず、充分な電気的特性とはならなかった、という課題や、特に物理吸着水の量を減らしても、その後に空気中の水分が速やかに再結合することもあった、という課題や、適正な電気的特性を実現させるとの観点からは、水分量は少ない方が好ましく、積極的に水分を供給しようとすることは望ましくない、といった課題を解決して、物理吸着水以外にも含有する水分を減少することができる金属酸化物粒子材料の製造方法を提供することを目的とするものである。

(ウ)一方、前記(1)(ア)(e)には、金属粒子材料としての金属ケイ素(体積平均粒径15μm)を、分散媒としての空気中に分散させて金属粒子材料分散系を調製し(調製工程)、金属粒子材料分散系を4Nm^(3)/時間の速度で、酸化雰囲気ガスとしての空気中に供給し、酸化雰囲気ガスは15Nm^(3)/時間の速度で反応炉中に供給し、分散媒及び酸化雰囲気ガスとして空気(VMC供給エアー)を採用し、反応炉中では、1Nm^(3)/時間の速度で供給したプロパンガスを燃焼させて発火源としており、金属粒子材料分散系はこの発火源中に供給し、得られた金属酸化物粒子材料をバグフィルタにて収集する「(試験)」が記載されている。
そして、前記「(試験)」は、VMC供給エアーに含まれる水分量を減らすことで金属酸化物粒子材料の水分量を減らすことができることを確認する試験であって、試験例1において、VMC供給エアーの絶対湿度が17.79g/Nm^(3)の場合、200℃まで加熱したときに生成する水分量が710ppmであったものが、試験例2において、VMC供給エアーの絶対湿度を4.3g/Nm^(3)としたとき、200℃まで加熱したときに生成する水分量は279ppmとなるものであり、VMC供給エアーの絶対湿度が4.3g/Nm^(3)である試験例2は、VMC供給エアーの絶対湿度が17.79g/Nm^(3)である試験例1よりも金属酸化物粒子材料の水分量を減らすことができるものである。
前記「(試験)」によれば、本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量を減少させることにより、金属酸化物粒子材料の水分量を減らすことができることを理解できるものであり、このことと前記(ア)によれば、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量を例えば10g/Nm^(3)以下に減少させると、金属酸化物粒子材料の水分量が減ることで、金属酸化物粒子材料の電気的特性が向上し、前記(イ)の課題を解決できることを理解できるものである。
これらのことからみれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量が例えば10g/Nm^(3)以下となったとき、本件発明の前記(イ)の課題を解決できることを理解できるというべきである。

(エ)また、仮に、水分量が10.0g/Nm^(3)であり、多量に水分が含まれる分散媒及び酸化雰囲気ガスを工業プラントに用いようとしても、安全面及び製品の品質保持を考慮すると操業することは通常不可能であるとしても、前記「(試験)」によれば、VMC供給エアーの絶対湿度が17.79g/Nm^(3)の場合や4.3g/Nm^(3)の場合においても金属酸化物粒子材料が製造されているから、本件発明において、どのようにプラントを安定に操業させればよいかを理解することが不可能であるとはいえない。

(オ)更に、前記(1)(ア)(d)(【0031】)によれば、「水分量制御工程」は、分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分を一定値以下に制御する工程であり、水分量を一定値以下に制御する方法としては特に限定しないものであり、例えば、分散媒や酸化雰囲気ガスから水分を除去する乾燥工程を採用したり、元々、水分量が少ない分散媒や酸化雰囲気ガスを採用したりすることができるものであり、乾燥させる方法としては、乾燥剤を用い、分散媒や酸化雰囲気ガスを通過させて乾燥する方法や、冷却して水分を過飽和状態にして凝集する方法などが採用できるものである。
そして、このことからみれば、「水分量制御工程」は、従来から用いられる一般的な方法を採用できるものであり、10.0g/Nm^(3)以下が従来の水分調整方法で達成できない特殊なものであるとはいえないので、10.0g/Nm^(3)以下を実現するための手段が不明であるとはいえない。

(カ)したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるので、前記第3の3(3)の特許異議申立理由は理由がない。

(4)本件発明4について
(ア)前記(1)(ア)(b)(【0019】)には、水分量制御工程は、得られた金属酸化物粒子材料の水分量を、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になるように制御する工程であること、水分量をこの範囲にすることで電気的特性を向上することができること、表面積(m^(2))あたりの水分量は(200℃で加熱したときの水分量:ppm)÷(比表面積:m^(2)/g)で算出されること、比表面積は窒素ガスを用いたBET法にて測定した値であることが記載されている
そして、本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、200℃で加熱したときの表面積(m^(2))あたりの金属酸化物粒子材料の水分量を、200℃で加熱したときの水分量:ppmと、窒素ガスを用いたBET法にて測定した値である比表面積:m^(2)/gに基づいて、(200℃で加熱したときの水分量:ppm)÷(比表面積:m^(2)/g)により算出されることを理解できる。

(イ)一方、前記(3)(ウ)によれば、前記「(試験)」により、金属酸化物粒子材料を200℃まで加熱したときの水分量:ppmが測定できるものであり、更に、前記「(試験)」により、VMC供給エアーに含まれる水分量を減少させることにより、金属酸化物粒子材料の水分量を減らすことができることを理解できるものである。
更に、前記(1)(ア)(d)(【0031】)によれば、VMC供給エアーに含まれる水分量は、従来極めてよく知られている手段によって減らすことができるものであり、これらのことと前記(ア)によれば、当業者は、VMC供給エアーに含まれる水分量を、従来極めてよく知られている手段により減少させることで、金属酸化物粒子材料の水分量を減少させて、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になるように制御できることを推認できるものであり、実施例において、得られた金属酸化物粒子材料の水分量が、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になることが記載されていないとしても、当業者は、表面積(m^(2))あたり40ppm以下を実現するための水分量制御工程を理解できるというべきである。

(ウ)また、前記(1)(ア)(d)(【0031】)によれば、表面積(m^(2))あたり40ppm以下を実現するための水分調整方法が特殊なものであるとはいえないから、当業者は、本件特許明細書の記載に基づいて本件発明4を実施できるというべきである。

(エ)したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるので、前記第3の3(4)の特許異議申立理由は理由がない。

(5)小括
以上のとおりであるので、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するから、前記第3の3(特許法第36条第4項第1号)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。

3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)本件発明1?4について
(ア)前記2(3)(ウ)によれば、前記「(試験)」においては、反応炉中に供給する分散媒及び酸化雰囲気ガスとして空気(VMC供給エアー)を採用し、湿度を調節することで水分含有量を2段階に調節したものが用いられるものであるが、前記2(1)(ア)(d)(【0031】)によれば、「水分量制御工程」は、従来から用いられる一般的な方法を採用できるものであることは、前記2(3)(オ)に記載のとおりである。
そうすると、本件特許明細書に、前記「(試験)」における「水分量制御工程」の具体的な手段が記載されていないとしても、当業者は、前記「(試験)」における「水分量制御工程」が、従来から用いられる一般的な方法、すなわち、分散媒や酸化雰囲気ガスから水分を除去する乾燥工程、元々、水分量が少ない分散媒や酸化雰囲気ガスを採用する、といったものからなり、乾燥させる方法は、乾燥剤を用い、分散媒や酸化雰囲気ガスを通過させて乾燥する方法や、冷却して水分を過飽和状態にして凝集する方法、といったものからなることを理解できる。

(イ)また、前記2(1)(ア)(e)(【0039】)には、前記「(試験)」において、金属粒子材料としての金属ケイ素を、分散媒としての空気中に分散させて金属粒子材料分散系を調製し、金属粒子材料分散系を酸化雰囲気ガスとしての空気中に供給し、酸化雰囲気ガスは反応炉中に供給することが記載され、同(e)(【0041】【表1】)には、前記分散媒及び酸化雰囲気ガスとしてのVMC供給エアーの温度、相対湿度、絶対湿度の値が記載されているのであり、本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、前記【0041】【表1】に記載される数値が、反応炉中に供給される、分散媒及び酸化雰囲気ガスとして採用される空気(VMC供給エアー)の温度、相対湿度、絶対湿度を意味していることを理解できる。

(ウ)前記(ア)、(イ)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、前記「(試験)」における「水分量制御工程」の具体的な方法や、前記【0041】【表1】に記載される数値の意味を理解できるというべきである。
そして、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量を例えば10g/Nm^(3)以下に減少させると、金属酸化物粒子材料の水分量が減ることで、金属酸化物粒子材料の電気的特性が向上し、前記2(3)(イ)の課題を解決できることを理解できることは、同(ウ)に記載のとおりであり、本件特許明細書には、本件発明が「水分制御工程」を有することで、同(イ)の課題を解決できることが記載されているというべきである。

(エ)前記2(1)(ア)(c)によれば、本件特許明細書には、本件発明における分散媒及び酸化雰囲気ガスとして、酸素や酸化ガスを含有する酸化性ガス、特に空気を含むもの、更には空気からなるものが好ましいことが記載され、また、酸化性ガス以外の気体としては、不活性ガスが好ましいこと、不活性ガスとしては窒素、アルゴンが例示できること、気体以外には液体・固体の化合物を分散媒中に含有することができることが記載されている。
そして、本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、本件発明における分散媒及び酸化雰囲気ガスが、酸素や酸化ガスを含有する酸化性ガス、特に空気によるものが好ましいと認識するものであり、本件特許明細書に、本件発明における分散媒及び酸化雰囲気ガスが、ごく微量の空気を含み、それ以外の大部分が様々な不活性ガスや液体、固体の化合物等である、複雑な組成を有する混合ガスである場合についても、前記2(3)(イ)の課題を解決できることが記載されているとは認識しない。
また、本件発明における「水分量制御工程」は、従来から用いられる一般的な方法を採用できるものであることは、前記2(3)(オ)に記載のとおりであり、本件発明が、従来解決されていない課題を解決するものであっても、従来知られていない特別な条件や方法により水分量を制御したと考えるのが自然であるとはいえない。
そして、本件特許明細書には、本件発明が「水分制御工程」を有することで、前記2(3)(イ)の課題を解決し得ることが記載されているというべきであることは、前記(ウ)に記載のとおりである。

(オ)前記(エ)によれば、本件特許明細書に、分散媒及び酸化雰囲気ガスが、ごく微量の空気を含み、それ以外の大部分が様々な不活性ガスや液体、固体の化合物等である、複雑な組成を有する混合ガスである場合についての実施例が記載されておらず、そのような複雑な混合ガスを用いた場合の水分量の制御工程が存在するとの技術常識が存在せず、更に、水分量の制御工程として従来知られていない特別な方法や条件が記載されていないとしても、本件特許明細書には、本件発明により前記2(3)(イ)の課題を解決できることが記載されているというべきである。

(カ)前記(ウ)、(オ)によれば、本件発明が技術的に裏付けられていないとはいえないし、前記2(3)(イ)の課題が解決できることを当業者が認識できるように本件特許明細書に記載されている範囲を超えているともいえないから、本件発明は、本件特許明細書に記載された発明というべきである。
したがって、前記第3の4(1)の特許異議申立理由は理由がない。

(2)本件発明1について
(ア)本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、本件発明における分散媒及び酸化雰囲気ガスが、酸素や酸化ガスを含有する酸化性ガス、特に空気によるものが好ましいと認識し、本件特許明細書に、本件発明における分散媒及び酸化雰囲気ガスが、ごく微量の空気を含み、それ以外の大部分が様々な不活性ガスや液体、固体の化合物等である、複雑な組成を有する混合ガスである場合についても、前記2(3)(イ)の課題を解決できることが記載されているとは認識しないことは、前記(1)(エ)に記載のとおりである。

(イ)そして、前記(ア)によれば、当業者は、本件発明1が、分散媒及び酸化雰囲気ガスがごく微量の空気を含む場合に、その空気中に含まれる水分の少なくとも一部を除去し、空気以外の物質に含まれる水分が除去されないものを包含し得るとも認識しない。
すると、本件発明1において、分散媒及び酸化雰囲気ガスがごく微量の空気を含み、その空気中に含まれる水分の少なくとも一部が除去され、空気以外の物質に含まれる水分が除去されない場合に、前記2(3)(イ)の課題が解決できないとしても、本件発明1は、そもそもそのような場合を包含するとは認識しないのであるから、本件発明1が、前記2(3)(イ)の課題が解決できることを当業者が認識できるように本件特許明細書に記載されている範囲を超えているとはいえない。
したがって、前記第3の4(2)の特許異議申立理由は理由がない。

(3)本件発明2について
(ア)本件特許明細書の記載に接した当業者は、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量を減少させることにより、金属酸化物粒子材料の水分量を減らすことができることを理解でき、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量を例えば10g/Nm^(3)以下に減少させると、金属酸化物粒子材料の水分量が減ることで、金属酸化物粒子材料の電気的特性が向上し、前記2(3)(イ)の課題を解決できることを理解できることは、同(ウ)に記載のとおりである。
そうすると、本件特許明細書の実施例に、「空気の絶対湿度を測定し、測定した絶対湿度が所定値以下である場合に燃焼工程を行う」「水分量制御工程」について記載されておらず、実施例において、水分量を制御する前のVMC供給エアー中に含まれる水分量が記載されていないとしても、当業者は、水分量を制御したことによる水分量低減の効果を確認できるものである。

(イ)また、本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、本件特許明細書に、本件発明における分散媒及び酸化雰囲気ガスが、ごく微量の空気を含み、それ以外の大部分が様々な不活性ガスや液体、固体の化合物等である、複雑な組成を有する混合ガスであってもよいことが記載されているとは認識しないこと、このため、当業者は、本件発明1が、分散媒及び酸化雰囲気ガスがごく微量の空気を含む場合に、その空気中に含まれる水分の少なくとも一部を除去し、空気以外の物質に含まれる水分が除去されないものを包含し得るとも認識しないことは、前記(2)(ア)、(イ)に記載のとおりであり、このことは、本件発明2についても同様である。
すると、分散媒及び酸化雰囲気ガスがごく微量の空気を含み、その空気中に含まれる水分の少なくとも一部が除去され、空気以外の物質に含まれる水分が除去されない場合に、前記2(3)(イ)の課題が解決できないとしても、本件発明2は、そもそもそのような場合を包含するとは認識されないのであるから、本件発明2が、前記2(3)(イ)の課題が解決できることを当業者が認識できるように本件特許明細書に記載されている範囲を超えているとはいえない。
また、本件発明が、従来解決されていない課題を解決するものであっても、従来知られていない特別な条件や方法により水分量を制御したと考えるのが自然であるとはいえないことは、前記(1)(エ)に記載のとおりである。

(ウ)前記(ア)、(イ)によれば、本件発明2が、技術的に裏付けられていないとはいえないし、前記2(3)(イ)の課題が解決できることを当業者が認識できるように本件特許明細書に記載されている範囲を超えているとはいえないから、前記第3の4(3)の特許異議申立理由は理由がない。

(4)本件発明3について
(ア)本件特許明細書の記載に接した当業者は、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量を減少させることにより、金属酸化物粒子材料の水分量を減らすことができることを理解でき、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量を例えば10g/Nm^(3)以下に減少させると、金属酸化物粒子材料の水分量が減ることで、金属酸化物粒子材料の電気的特性が向上し、前記2(3)(イ)の課題を解決できることを理解できることは、同(ウ)に記載のとおりであり、仮に、水分量が10.0g/Nm^(3)であり、多量に水分が含まれる分散媒及び酸化雰囲気ガスを工業プラントに用いようとしても、安全面及び製品の品質保持を考慮すると操業することは通常不可能であるとしても、本件発明において、どのようにプラントを安定に操業させればよいかを理解することが不可能であるとはいえないことは、前記2(3)(エ)に記載のとおりである。
また、本件発明が、従来解決されていない課題を解決するものであっても、従来知られていない特別な条件や方法により水分量を制御したと考えるのが自然であるとはいえないことは、前記(1)(エ)に記載のとおりである。

(イ)前記(ア)によれば、本件発明3が技術的に裏付けられていないとはいえないし、前記2(3)(イ)の課題が解決できることを当業者が認識できるように本件特許明細書に記載されている範囲を超えているとはいえないから、前記第3の4(4)の特許異議申立理由は理由がない。

(5)本件発明4について
(ア)本件特許明細書の記載に接した当業者は、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量を減少させることにより、金属酸化物粒子材料の水分量を減らすことができることを理解でき、分散媒及び酸化雰囲気ガスに含まれる水分量を例えば10g/Nm^(3)以下に減少させると、金属酸化物粒子材料の水分量が減ることで、金属酸化物粒子材料の電気的特性が向上し、前記2(3)(イ)の課題を解決できることを理解できることは、同(ウ)に記載のとおりである。

(イ)そして、本件発明4は、「水分量制御工程」において、得られた金属酸化物粒子材料の水分量が、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になるように制御するものであり、これは、金属酸化物粒子材料の水分量を減少させるものにほかならない。
このことと、前記(ア)によれば、本件発明4は、金属酸化物粒子材料の水分量を減少させることで、金属酸化物粒子材料の電気的特性が向上し、前記2(3)(イ)の課題を解決できるものといえる。

(ウ)一方、実施例において、得られた金属酸化物粒子材料の水分量が、200℃で加熱したときに表面積(m^(2))あたり40ppm以下になることが記載されていないとしても、当業者は、表面積(m^(2))あたり40ppm以下を実現するための水分量制御工程を理解できるというべきであることは、前記2(4)(イ)に記載のとおりであるから、当業者は、本件発明4において、前記2(3)(イ)の課題を解決できる金属酸化物粒子材料をどのようにして製造するのかを理解できるというべきである。
また、本件発明が、従来解決されていない課題を解決するものであっても、従来知られていない特別な条件や方法により水分量を制御したと考えるのが自然であるとはいえないことは、前記(1)(エ)に記載のとおりである。

(エ)前記(イ)、(ウ)によれば、本件発明4が技術的に裏付けられていないとはいえないし、前記2(3)(イ)の課題が解決できることを当業者が認識できるように本件特許明細書に記載されている範囲を超えているとはいえないから、前記第3の4(5)の特許異議申立理由は理由がない。

(6)小括
以上のとおりであるので、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するから、前記第3の4(特許法第36条第6項第1号)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。

4 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
(1)本件発明1?4について
(ア)本件特許明細書の前記2(1)(ア)(b)の記載に接した当業者は、本件発明における「水分量制御工程」が、分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分量を、例えば絶対湿度で10.0g/Nm^(3)以下とするものであることを理解できるから、本件発明1?4において、「水分量制御工程」における水分量の一定値が特定されていないとしても、「水分量制御工程」における分散媒及び酸化雰囲気ガス中に含有される水分の量をどのような数値以下に制御すればよいのかを理解できるというべきであることは、前記2(1)(イ)に記載のとおりである。

(イ)してみれば、本件発明において、「水分量制御工程」における水分量が特定されていないとしても、本件発明1?4は明確であるというべきである。
したがって、前記第3の5(1)の特許異議申立理由は理由がない。

(2)本件発明2について
前記(1)(ア)に記載したのと同様の理由により、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明2の「水分量制御工程」における絶対湿度の数値を理解できるから、本件発明2において、「水分量制御工程」における絶対湿度が特定されていないとしても、本件発明2は明確であるというべきである。
したがって、前記第3の5(2)の特許異議申立理由は理由がない。

(3)小括
以上のとおりであるので、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するから、前記第3の5(特許法第36条第6項第2号)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-06-30 
出願番号 特願2019-34937(P2019-34937)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C01B)
P 1 651・ 536- Y (C01B)
P 1 651・ 537- Y (C01B)
P 1 651・ 121- Y (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 須藤 英輝岡田 隆介  
特許庁審判長 服部 智
特許庁審判官 川村 裕二
金 公彦
登録日 2019-10-04 
登録番号 特許第6595137号(P6595137)
権利者 株式会社アドマテックス
発明の名称 金属酸化物粒子材料の製造方法  
代理人 特許業務法人 共立  
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