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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1364016
異議申立番号 異議2020-700175  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-13 
確定日 2020-07-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6577114号発明「容器詰めバジルソース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6577114号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6577114号の請求項1に係る特許についての出願は、平成30年10月11日の出願であって、令和1年8月30日に特許権の設定登録がされ、令和1年9月18日にその特許公報が発行され、令和2年3月13日に、その請求項1に係る発明の特許に対し、奥谷 宏邦(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6577114号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「バジル細断物を10?80%(生換算)、食塩を0.1?10%、食用油脂を15?70%含有する容器詰めバジルソースであって、
以下の成分(A)?(B):(A)リナロール;及び(B)3-ヘキセン-1-オールを含有し、
揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により測定した際に、成分(B)を1.60ppm以上2.58ppm以下含有し、かつ成分(A)100に対し、成分(B)を20?85となる割合で含有する、容器詰めバジルソース。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた申立理由の概要は、以下のとおりである。

1 (サポート要件)本件発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件発明に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)本件発明の「バジル細断物」は、上葉、下葉、茎等の部位に関わらず、また、乾燥等の加工がなされたものまでも含み得るものとなっており、生バジルの葉の上葉以外を含み得る本件発明は、詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

(2)本件発明の「バジル細断物を10?80%(生換算)」の具体的根拠が記載されていないため詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
甲第1号証:「バジルソースの試験結果を示す表」(以下「甲1」という。)を用いている。

(3)本件発明の「食用油脂」について、菜種油以外の食用油脂を含み得る本件発明は、詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

(4)「混合・細断」について、バジル細断物が生バジルの葉(上葉のみ)に食塩及び食用油脂を予め混合してから細断したもの以外のバジル細断物を含み得る本件発明は、詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

(5)「加熱」について、加熱条件(温度及び時間)が限定されておらず、加熱方法も特定されていない本件発明は、詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

(6)「冷凍」について、バジル細断物を加熱後に冷凍することが記載されていない本件発明は、詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

2 (明確性)本件発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件発明に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
甲第5号証:特許第6577114号公報(以下「甲5」という。本件明細書である。)を用いている。

(1)本件発明に記載の「バジル細断物」について、発明の詳細な説明には、本件発明の容器詰めバジルソースは「生バジルの葉」しかも「上葉のみ」を使用すると記載されているが、「生バジルの葉及び茎」を用いたものとの記載もなされており、「バジル細断物」がどのようなものであるか判然としない。

(2)本件発明に記載の「(生換算)」について、生バジルの葉(上葉のみ)しか使用していないにもかかわらず、「(生換算)」と記載されていることから、「(生換算)」とは、何を意味しているのか不明である。

(3)本件発明に記載の「成分(B)を1.60ppm以上2.58ppm以下含有し」は、本件明細書の段落【0007】、【0010】、【0015】及び【0018】の「成分(B)を0.65ppm以上含有し」という記載と整合していない。

(4)本件発明に記載の「バジル細断物を10?80%(生換算)」は、本件明細書の「【0012】・・前記バジルは、生バジル換算で10?80%配合し、30?70%配合するとよく、40?70%配合するとよりよい。生バジルの配合量が前記範囲であると、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースが得られにくい。」との記載と整合していない。

(5)本件発明に記載の「揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により測定」について、本件明細書の段落【0022】及び【0032】の「<固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法>本発明の酸性液状調味料の具材を除いた水相部の香気成分は、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(・・)で測定することができる」との記載を踏まえると、本件発明の容器詰めバジルソースに対しどのような調整を行って揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法で測定するのかが不明である。

(6)本件発明に記載の「成分(A)100に対し、成分(B)を20?85となる割合で含有する」について、本件明細書の段落【0020】の記載より、成分(A)については検量線を用いた定量は行わず、成分(B)についても正確な含有量の測定は不可能と考えられ、分析に供した試料の量も不明であり、実施例1の段落【0033】には「[0018]記載の方法により成分(B)の含有量を測定した」と記載されているが、段落【0018】には測定方法が記載されていないので、成分(A)及び(B)の含有量を測定できず不明である。

3 (進歩性)本件発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の甲第2号証に記載された発明並びに甲第3及び4号証に記載された技術的事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第2号証:特開平10-75737号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:日本食品科学工学会誌、第58巻、第5号、(2011年5月)、p.222-228(以下「甲3」という。)
甲第4号証:東京農大農学集報、第52巻、第4号、(2008年)、p.167-172(以下「甲4」という。)

第4 当審の判断

1 理由1(特許法第36条第6項第1号)について

(1)特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。

(2)発明の詳細な説明の記載

ア 背景技術に関する記載
「【背景技術】
【0002】
バジルは、シソ科に属するインド原産の一年草であり、ハーブ類の一つとして、生のままスパゲティ等の風味付けに使用されている。ところで、バジルの葉は、収穫直後は鮮やかな緑色とバジル特有の好ましい香りを有するものの、時間の経過とともに、退色し、香りも失われてしまう。バジルに含まれる酵素の作用や、大気中の酸素による酸化によるものだと考えられる。また、バジルは熱にも弱く、高温で加熱殺菌等すると、変色や、風味の低下を起こす。
【0003】
そのため、従来より収穫したバジルの色調や風味を保持するために様々な方法が検討されている。例えば、バジルの葉を特定比率の食用油脂、食塩と混合した後、速やかに細断し、所定温度で加熱することで、バジルの退色を抑制する方法が提案されている。しかしながら、ある程度はバジルの退色、風味の低下を抑制できるものの、さらなる改善が求められていた。(特許文献1)・・・・」

イ 発明が解決しようとする課題に関する記載
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、容器詰めバジルソースであるにもかかわらず、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースを提供するものである。」

ウ 本件発明の技術的特徴の実施の態様に関する記載
「【0012】
<バジル>
本発明の容器詰めバジルソースに用いるバジルは、生のバジルであり、収穫後、乾燥、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものを指す。上記以外の処理、例えば洗浄等は行ってもよい。また、バジルは、時間の経過とともに変色するため、本発明に用いるバジルは収穫後24時間以内のものであるとよい。
前記バジルは、生バジル換算で10?80%配合し、30?70%配合するとよく、40?70%配合するとよりよい。生バジルの配合量が前記範囲であると、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースが得られにくい。
【0013】
<食塩>
本発明の容器詰めバジルソースは食塩を配合する。食塩は、バジルソースに塩味を付けると同時に、後に示す試験例にも示すように、バジルソース中の細断した生バジルが鮮やかな緑色に発色させるために配合する。本発明の容器詰めバジルソース中の食塩の配合量は、0.1?10%であり、0.5?7%であるとよく、さらに1?5%であるとよい。
【0014】
<食用油脂>
本発明のバジルソースは食用油脂を配合する。配合する食用油脂としては、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、オリーブ油等の植物油脂、ラード、精製魚油等の動物油脂があるが、このうちバジルの良好な香りを感じやすいため、菜種油または大豆油を用いるとよい。また、食用油脂を配合することにより、細断した生バジルをソース状に仕上げると同時に、ソース中の生バジルが酸化して退色したり、香りが消失してしまうのを防止することができる。本発明の容器詰めバジルソース中の食用油脂の配合量は、15?70%であり、30?60%であるとよい。食用油脂の配合量が前記範囲外であると、バジルの褐変を抑制しにくく、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースが得られにくい。
【0015】
<成分(A)(B)分析値>
本発明の容器詰めバジルソースは、以下の成分(A)?(B):(A)リナロール;及び(B)3-ヘキセン-1-オール を含有し、揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により測定した際に、成分(B)を0.65ppm以上含有し、かつ成分(A)100に対し、成分(B)を20?85となる割合で含有する。
これらの成分(A)、(B)に着目した理由は、これらのフレーバーバランスを考慮することにより、ペースト処理および殺菌処理された容器詰めバジルソースであるにもかかわらず、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースを得ることができるためである。
【0016】
<成分(A)リナロール>
成分(A)は、多くの植物の精油成分であり、本発明においてはバジルが持つ多くの香気成分の中からリナロールに着目する。これは、種々のバジルに必ずその閾値以上の量で含有されており、最終的に得られる容器入りバジルソースとしての好ましい香りに直結する成分であるためである。
【0017】
<成分(B)3-ヘキセン-1-オール>
成分(B)は、不飽和アルコールの一つであり、野菜などの青臭い香りの主成分である。本発明においては、後述するように容器入りバジルソース中に一定量以上含有すること、さらに前記成分(A)リナロールと特定比率でソース中に含有することにより、特に好ましい香りを有する点に着目する。
【0018】
<成分(B)の含有量>
本発明のバジルソースは、成分(B)を0.65ppm以上含有し、1.0ppm以上であるとよく、1.5ppm以上であるとよりよい。成分(B)が前記範囲未満の場合は、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースが得られないものとなる。
【0019】
<成分(A)100に対する成分(B)>
本発明の容器詰めバジルソースにおいては、上述の成分について、その揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS法)により測定した際に、測定結果を出力したチャートの積分面積比で成分(A)100部に対し、成分(B)を20?85部、好ましくは50?85部となる割合で含有する。成分(A)に対する成分(B)の含有量が前記範囲外である」場合は、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースが得られないものとなる。
【0020】
<成分(A)(B)の測定方法>
本発明において、成分(A)、(B)の揮発性成分の測定は、揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS法)により測定する。具体的には、以下に示す固相マイクロ抽出条件で揮発性成分を抽出し、抽出した成分をガスクロマトグラフ条件で各成分を分離し、分離した各成分を質量分析条件で成分を同定し、チャートを出力する。また、揮発性成分(A)(B)の割合は、各成分の積分面積比から求める。また、成分(B)の含有量は3-hexen-1ol(東京化成工業株式会社)を食用油に添加し、検量線を作成して算出した。・・・
【0021】
<定量イオンの選定>
定量イオンの選定は、質量スペクトルチャートにおいてそれぞれの化合物の特有のフラグメントイオンの中から、信頼性のある積分面積比の算出が困難になるほど成分(A)、(B)のピークと他の成分のピークが接近しておらずあるいは重複しておらず、しかもできるだけ高強度かつ高質量のイオン種を優先的に選定することにより行う。本発明においては、以下の質量(m/z値)の定量イオン種を選択することが好ましい。
成分(A)リナロール 定量イオン質量m/z136
成分(B)3-ヘキセン-1-オール 定量イオン質量m/z82
【0022】
<固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法>
本発明の酸性液状調味料の具材を除いた水相部の香気成分は、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS)で測定することができる。
<分析条件>
(1)香気成分の分離濃縮方法
SPMEファイバーと揮発性成分抽出装置を用い、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー(製品名:StableFlex50/30μm、DVB/Carboxen/PDMS(Sigma-Aldrich社製))
・揮発性成分抽出装置:GC Sampler 120,AgilentTechnologies製
・予備加温:40℃,15min
・攪拌速度:300rpm
・揮発性成分抽出:40℃,20min
・脱着時間:10min
(2)香気成分の測定方法
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent7890B(AgilentTechnologies社製)
・カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm(製品名:SOLGEL-WAX(SGE社製)長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm)
・温度条件:35℃(5min)保持→120℃まで5℃/min昇温→2
20℃まで15℃/min昇温:6min保持
・キャリアー:Heガス、ガス流量:1.0mL/min
・インジェクション方法:パルスド・スプリットレス:
スプリットレス1.5min保持→パージ50mL/min
パルス圧100kPa1.6 min保持→ 47kPa
(スタート時)
・インレット温度:250℃
・ワークステション:MSDChemStation Build 75(Agilent Technologies,Inc.)
<質量分析条件>
・質量分析計:四重極型質量分析計(製品名:Agilent5977A(AgilentTechnologies社製))
・スキャン質量m/z29.0?290.0
・イオン化方式EI(イオン化電圧70eV)
なお、信号強度が低い場合等は、スキャン測定ではなく、SIM(選択イオンモニタリング)測定を行っても良い。
また、測定装置は上記に限られず、例えばAgilent6890N、Agilent 5977Sなどを使用してもよく、使用する測定機器の仕様に合わせて条件を適宜調整し測定することができる。」

エ 本件発明の製造方法の実施の態様に関する記載
「【0024】
<バジルソースの製造方法>
本発明の容器詰めバジルソースの製造方法は、生のバジルの上葉を、食用油脂、食塩、その他原料と混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を細断し、細断物を得る細断工程と、前記細断物を77?84℃で加熱殺菌する加熱殺菌工程を含むものである。なかでも、本願発明の効果が得られやすいことから、加熱殺菌工程においてチューブ加熱方法を用いるとよい。
【0025】
<生のバジルの上葉>
本発明の容器詰めバジルソースの製造方法に用いるバジルは、上葉を用いることを特徴とする。本発明において上葉とは、上から2節目までのバジルの葉をいう。このようなバジル原料を用いることで、上述した成分(B)の含有量、および成分(A)に対する成分(B)の含有量を特定範囲とすることができる。
【0026】
<本発明の容器詰めバジルソースの製造方法>
本発明の容器詰めバジルソースの製造方法は、生のバジルの葉及び茎を、食塩及び油脂と混合し、混合物を得る混合工程と、前記混合物を細断し、細断物を得る細断工程と、前記細断物を77?84℃で加熱する加熱工程を含むものである。
【0027】
<混合工程>
混合工程は、上述のバジルと、その他混合する食用油脂、食塩等の原料を混合する工程である。混合の方法は特に限定されないが、バジルに万遍なく食用油脂、食塩等のその他原料が付着すればよい。
【0028】
<細断工程>
前記混合工程で混合したバジル、食用油脂、食塩の混合物を、コミットロール等で細断し、バジル細断物を得る。前記バジル細断物の大きさは特に限定されないが、1?6mm2程度に細断したものを用いるとよい。細断物の大きさが前記範囲であることにより、バジルソースをパスタ等に振りかけた際にバジルの存在感を感じやすく、またバジルの風味を感じやすくなる。
【0029】
<加熱工程>
加熱工程は、前記細断工程で得たバジル細断物を、77?84℃で加熱するものであり、好ましくは78?83℃で加熱するとよく、さらに80?83℃で加熱するとより良い。なお、前記温度で加熱するということは、バジル細断物の品温が前記範囲に加熱されていることを意味する。
加熱温度が前記範囲以下である場合、酵素の失活が不十分となり、保存によりバジルの風味が変化し、摘みたてのバジル特有の香りを感じにくいものとなる。また、加熱温度が前記範囲以上である場合、加熱によりバジルが褐変し、それにより風味変化が発生し摘みたてのバジル特有の香りを感じにくいものとなる。
加熱時間は特に限定していないが、バジル中の酵素を失活させるために、前記加熱温度に達温すればよく、また、加熱時間の上限としては、摘みたてのバジル特有の香りを感じる容器詰めバジルソースが得られやすいことから、20分以下であるとよく、さらに10分以下であるとよい。
また、前記加熱工程において、加熱の方法は特に限定しないが、ポリプロピレン糖の容器に充填密封後、熱湯等で加熱してもよいし、タンクやチューブ等で加熱した後、容器に充填してもよい。」

オ 本件発明の実施例に関する記載
「【0030】
・・・・・
なお、以下の実施例又は比較例において、成分(A)?(B)の揮発性成分の測定は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS法)により行った。即ち、以下に示す固相マイクロ抽出条件で揮発性成分を抽出し、抽出した成分をガスクロマトグラフ条件で各成分を分離し、分離した各成分を質量分析条件で成分を同定し、チャートを出力した。また、揮発性成分(A)?(B)の割合は、各成分の積分面積比で行った。なお、各成分の定量イオン質量は以下の通りである。
【0031】
成分(A)リナロール 定量イオン質量m/z136
成分(B)3-ヘキセン-1-オール 定量イオン質量m/z82
【0032】
<固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法>
本発明の酸性液状調味料の具材を除いた水相部の香気成分は、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS)で測定することができる。
<分析条件>
(1)香気成分の分離濃縮方法
SPMEファイバーと揮発性成分抽出装置を用い、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー(製品名:StableFlex50/30μm、DVB/Carboxen/PDMS(Sigma-Aldrich社製))
・揮発性成分抽出装置:GCSampler 120,AgilentTechnologies製
・予備加温:40℃,15min
・攪拌速度:300rpm
・揮発性成分抽出:40℃,20min
・脱着時間:10min
(2)香気成分の測定方法
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent7890B(AgilentTechnologies社製)
・カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm(製品名:SOLGEL-WAX(SGE社製)長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm)
・温度条件:35℃(5min)保持→120℃まで5℃/min昇温→220℃まで15℃/min昇温:6min保持
・キャリアー:Heガス、ガス流量:1.0mL/min
・インジェクション方法:パルスド・スプリットレス:
スプリットレス1.5min保持→パージ50mL/min
パルス圧100kPa1.6 min保持→ 47kPa
(スタート時)
・インレット温度:250℃
・ワークステション:MSDChemStation Build 75(Agilent Technologies,Inc.)
<質量分析条件>
・質量分析計:四重極型質量分析計(製品名:Agilent5977A(AgilentTechnologies社製))
・スキャン質量m/z29.0?290.0
・イオン化方式EI(イオン化電圧70eV)
なお、信号強度が低い場合等は、スキャン測定ではなく、SIM(選択イオンモニタリング)測定を行っても良い。
また、測定装置は上記に限られず、例えばAgilent6890N、Agilent 5977Sなどを使用してもよく、使用する測定機器の仕様に合わせて条件を適宜調整し測定することができる。
【実施例】
【0033】
[実施例1]
7月収穫の生バジルの葉480g(上葉のみ)を、収穫日当日に水洗した後、遠心分離機にて水切りし、これに食塩20gと菜種油500gを添加・混合し、これを細断機にかけてバジルの葉を2?5mm^(2)に細断した。次いで得られた細断物をチューブ加熱により80℃に加熱後、冷凍し、本発明の容器詰めバジルソース1kgを得た。
得られた容器詰めバジルソースについて、[0020]記載の固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により成分(A)リナロール、(B)3-ヘキセン-1-オールの含有割合、及び[0018]記載の方法により成分(B)の含有量を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、成分(B)の含有量は2.26ppmであった。
【0034】
[実施例2]
実施例1において、用いる生バジルの葉を、8月収穫の生バジルの葉400g(上葉のみ)に変更する以外は、実施例1と同様に容器詰めバジルソースを得た。
得られた容器詰めバジルソースについて、実施例1と同様に、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により成分(A)リナロール、(B)3-ヘキセン-1-オールの含有割合、及び成分(B)の含有量を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、成分(B)の含有量は1.92ppmであった。
【0035】
[実施例3]
実施例1において、用いる生バジルの葉を、6月収穫の生バジルの葉400g(上葉のみ)に変更する以外は、実施例1と同様に容器詰めバジルソースを得た。
得られた容器詰めバジルソースについて、実施例1と同様に、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により成分(A)リナロール、(B)3-ヘキセン-1-オールの含有割合、及び(B)3-ヘキセン-1-オールの含有量を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、成分(B)の含有量は2.58ppmであった。
【0036】
[実施例4]
実施例2において、得られた細断物をポリプロピレン製の容器に充填し、中心品温80℃に達温後、冷凍する方法に変更する以外は、実施例2と同様に容器詰めバジルソースを得た。
得られた容器詰めバジルソースについて、実施例1と同様に、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により成分(A)リナロール、(B)3-ヘキセン-1-オールの含有割合、及び(B)3-ヘキセン-1-オールの含有量を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、成分(B)の含有量は1.60ppmであった。
【0037】
[比較例1]
実施例2において、用いる生バジルの葉を下葉のみに変更する以外は、実施例1と同様に容器詰めバジルソースベースを得た。
得られた容器詰めバジルソースについて、実施例1と同様に、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により成分(A)リナロール、(B)3-ヘキセン-1-オールの含有割合、及び(B)3-ヘキセン-1-オールの含有量を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、成分(B)の含有量は0.65ppm未満(0.60ppm)であった。
【0038】
[試験例1]
容器詰めバジルソースベースにおいて、3-ヘキセン-1-オールに対するリナロールの含有割合がソースへ与える影響を検討するため、実施例1?4、比較例1の容器詰めバジルソースベースを表1記載の評価基準により評価した。結果を表に示す。
【0039】
<評価基準>
○:フレッシュな摘みたての生バジル特有の香りを有しており好ましい
△:摘みたてのバジル特有の香りがやや弱い、又は青臭い香りがやや強い
×:摘みたてのバジル特有の香りが弱い、又は青臭い香りが強い
【0040】
<評価結果>
[表1]

【0041】
評価の結果、実施例1?3の容器詰めバジルソースは、ペースト処理および殺菌処理された容器詰めバジルソースであるにもかかわらず、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有するものであり、好ましかった。また、実施例4の容器詰めバジルソースは、実施例1?3と比較して摘みたてのバジル特有の香りがやや弱いものの、問題のない範囲であった。
一方、比較例1の容器詰めバジルソースは、摘みたての生バジルのような香りが弱く、青臭い香りを強く感じるものであった。」

(3)本件発明の解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の、背景技術の記載(【0002】?【0004】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0005】)及び実施例の記載(【0033】?【0041】)等からみて、本件発明の解決しようとする課題は、容器詰めバジルソースであるにもかかわらず、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースを提供することであると認める。

(4)特許請求の範囲の記載
前記第2に記載したとおりである。

(5)判断

ア 前記第3 1(1)及び(2)について
前記第3 1(1)及び(2)について、纏めて検討する。

(ア)発明の詳細な説明において、本件発明の具体例として、実施例1?4(【0033】?【0041】)には、生バジルの葉(上葉のみ)を用いた細断物を、実施例1では48%(生換算)[=100×480g/(480g+20g+500g)]及び実施例2?4では43%(生換算)[=100×400g/(400g+20g+500g)]で含有し、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを1.60ppm以上2.58ppm以下含有し、かつ成分(A)リナロール100に対し、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを41.8?84.2となる割合で含有する容器詰めバジルソースを調製し、これらは摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有するものであることを客観的に確認したことが記載されている。

(イ)本件発明の「バジル」について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として「【0012】<バジル>本発明の容器詰めバジルソースに用いるバジルは、生のバジルであり、収穫後、乾燥、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものを指す。」と定義されていることから、本件発明の「バジル」は、生のバジルであり、収穫後、乾燥、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものといえる。
さらに、発明の詳細な説明には「【0025】・・本発明の容器詰めバジルソースの製造方法に用いるバジルは、上葉を用いることを特徴とする・・【0026】・・本発明の容器詰めバジルソースの製造方法は、生のバジルの葉及び茎を、食塩及び油脂と混合・・工程を含む・・」(審決注:下線は当審が付与。以下同様。)と記載されており、本件発明の「バジル」として、生のバジルの葉のみならず茎も用いることができることが記載されている。
これらの記載より、本件発明の「バジル」は、生のバジルであり、収穫後、乾燥、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものであれば、葉のみならず茎も含むものであると理解される。

(ウ)本件発明の「バジル細断物を10?80%(生換算)」について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として「【0012】<バジル>・・・前記バジルは、生バジル換算で10?80%配合し、30?70%配合するとよく、40?70%配合するとよりよい。生バジルの配合量が前記範囲であると、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースが得られにくい。」と記載されている。
そして、それを裏付けるように、実施例1?4には、前記(ア)で述べたように、生バジルの葉を用いた細断物を48%又は43%(生換算)で含有し、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを1.60ppm以上2.58ppm以下含有し、かつ成分(A)リナロール100に対し、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを41.8?84.2となる割合で含有する容器詰めバジルソースを調製し、これらは摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有するものであることを客観的に確認したことが記載されている。

(エ)そうすると、実施例1?4で調製された容器詰めバジルソースにおける、バジル(葉)細断物の含有%(48%又は43%)(生換算)、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを1.60ppm以上2.58ppm以下含有し、かつ成分(A)リナロール100に対し、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを41.8?84.2となる割合で含有する容器詰めバジルソースを調製すれば、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有するものとなることを考慮に入れると、バジルの適用部位(葉又は茎等)やバジル細断物の含有%についての前記実施の態様の記載に基づき、バジルの適用部位(葉又は茎等)やバジル細断物の含有%を適宜選択・調整して、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを所定の範囲内である1.60ppm以上2.58ppm以下含有し、かつ成分(A)リナロール100に対し、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを所定の範囲内である20?85となる割合で含有する容器詰めバジルソースを調製でき、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースを得ることができるといえる。
したがって、本件明細書の記載及び技術常識から、当業者であれば、バジルの適宜選択した部位の細断物を用いて、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを所定の範囲内(1.60ppm以上2.58ppm以下)含有し、かつ成分(A)リナロール100に対し、成分(B)3-ヘキセン-1-オールを所定の範囲内(20?85)となる割合で含有する容器詰めバジルソースを調整し得ると理解でき、本件発明の前記課題を解決できることを認識するといえる。

(オ)なお、甲第1号証「バジルソースの試験結果を示す表」(以下「甲1」という。)は、実験日、実験場所、実験者及び実験目的が明らかでなく、実験成績証明書として認められない。
仮に、甲1を実験成績証明書として認めて実験結果を検討したとしても、特許異議申立人は、生バジルの葉の適用部位のみが異なるサンプルNo.1とサンプルNo.5とを比較し、サンプルNo.1に比べサンプルNo.5は、成分(B)が本件発明の所定の範囲内であっても、必ずしもフレッシュなバジルの香りがするわけではない旨を主張しているが、原料バジルの収穫時期が本件明細書の実施例とは全く異なることはさておき、サンプルNo.5の比較対象であるサンプルNo.1は、成分(B)3-ヘキセン-1-オールの含有量が本件発明の所定の範囲外であり、かつ成分(A)リナロール100に対する、成分(B)3-ヘキセン-1-オールの含有割合も所定の範囲外のものであり、本件発明とは異なるものである。そのような比較対象を基にした評価の差が前記(エ)の結論に影響を与えるとはいえない。

イ 前記第3 1(3)について
発明の詳細な説明において、本件発明の具体例として、実施例1?4(【0033】?【0041】)には、食用油脂として菜種油を用いて容器詰めバジルソースを調製し、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有するものであることを客観的に確認したことが記載されている。

本件発明の「食用油脂」について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として「【0014】<食用油脂>・・食用油脂としては、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、オリーブ油等の植物油脂、ラード、精製魚油等の動物油脂がある・・・。・・食用油脂を配合することにより、細断した生バジルをソース状に仕上げると同時に、ソース中の生バジルが酸化して退色したり、香りが消失してしまうのを防止することができる。」と記載されており、食用油脂は、細断した生バジルをソース状に仕上げるためと同時に、ソース中の生バジルの酸化による退色や香りの消失を防止するために用いられるものと理解され、これらは、技術常識より、油脂一般の性質を利用したものと理解される。
それ故、本件発明の「食用油脂」として、実施例で用いられている菜種油のみならず、例示されている、上記実施の態様に記載の、大豆油、ヒマワリ油、オリーブ油等の植物油脂や、ラード、精製魚油等の動物油脂は、油脂一般の性質に基づき、細断した生バジルをソース状に仕上げると同時に、ソース中の生バジルの酸化による退色や香りの消失を防止し得ると理解される。
そして、本件発明の「食用油脂」は、植物油脂のみならずラードや精製魚油等の動物油脂を含むものであるが、技術常識に基づき、油脂それぞれの特徴を考慮し、油脂の種類の選択やその添加量等を、実施例の記載を参考に、本件発明の油脂の所定の含有範囲内(15?70%)で適宜調整し、本件発明の構成を有する容器詰めバジルソースを調製すれば、細断した生バジルをソース状に仕上げると同時に、ソース中の生バジルの酸化による退色や香りの消失を防止し、結果として、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有し得るもの調製し得ると理解できる。

そうすると、本件明細書の実施例1?4の記載、食用油脂についての実施の態様の記載(【0014】)に及び技術常識から、当業者であれば、本件発明の「食用油脂」として示されている食用油脂を用いることにより、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースを提供し得ると理解でき、本件発明の前記課題を解決できることを認識するといえる。

ウ 前記第3 1(4)?(6)について

(ア)本件発明の容器詰めバジルソースの製造における「混合・細断」、「加熱」及び「冷凍」に関し、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
a 「混合」については、「【0027】<混合工程>・・混合の方法は特に限定されないが、バジルに万遍なく食用油脂、食塩等のその他原料が付着すればよい。」
b 「細断」については、「【0028】<細断工程>前記混合工程で混合したバジル、食用油脂、食塩の混合物を、コミットロール等で細断し、バジル細断物を得る。」
c 「加熱」については、「【0029】<加熱工程>加熱工程は、前記細断工程で得たバジル細断物を、77?84℃で加熱するものであり・・加熱温度が前記範囲以下である場合、酵素の失活が不十分となり、保存によりバジルの風味が変化し、摘みたてのバジル特有の香りを感じにくいものとなる。また、加熱温度が前記範囲以上である場合、加熱によりバジルが褐変し、それにより風味変化が発生し摘みたてのバジル特有の香りを感じにくいものとなる。加熱時間は特に限定していないが、バジル中の酵素を失活させるために、前記加熱温度に達温すればよく・・。加熱の方法は特に限定しない・・・」
d 「冷凍」については、実施の態様の記載は特段ない。

(イ)当業者は、本件明細書のこれらの記載をみれば、「混合」は、バジルに万遍なく食用油脂、食塩等のその他原料が付着すればよく、混合方法は特に限定されないこと、「細断」は、混合したバジル、食用油脂、食塩の混合物を細断すること、「加熱」は、保存によりバジルの風味が変化し摘みたてのバジル特有の香りを感じにくいものとならないよう、酵素を失活させる目的で行うものであり、その目的に沿って行えば、加熱温度、加熱時間及び加熱方法を特段限定しないこと、冷凍は必須ではないと理解される。
そして、本件明細書の実施例1?4は、このような理解の下、上記課題の解決手段を調製する具体例を記載しているにすぎないといえる。

そうすると、本件明細書の記載及び技術常識から、当業者であれば、混合、細断、加熱、冷凍方法を適宜工夫して、本件発明の構成を有する容器詰めバジルソースを調製することにより、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースを得ることができると理解され、本件発明の前記課題を解決できることを認識するといえる。

(6)まとめ
したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

2 理由2(特許法第36条第6項第2号)について

(1)前記第3 2(1)について
前記1(5)ア(イ)で述べたように、本件発明の「バジル」について、発明の詳細な説明の段落【0012】に記載の定義、並びに、段落【0025】及び【0026】の記載より、本件発明の「バジル」は、生のバジルであり、収穫後、乾燥、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものであれば、葉のみならず茎も含むものであると理解されることから、本件発明に記載の「バジル」が不明確であるとはいえない。

(2)前記第3 2(2)について
本件明細書の、バジル細断物の配合量(%)についての実施の態様の記載(【0012】)及び実施例1?4の記載(【0033】?【0041】)より、バジル細断物の配合量(%)は、生バジルを用いて算出されており、生バジル換算として本件発明に記載の「(生換算)」と整合されているから、本件発明に記載の「(生換算)」が不明確であるとはいえない。

(3)前記第3 2(3)について
本件明細書の段落【0007】、【0010】、【0015】及び【0018】の「成分(B)を0.65ppm以上含有し」という記載は、本件出願当初の請求項1の記載に沿った記載であり、特許査定時の本件発明の「成分(B)を1.60ppm以上2.58ppm以下含有し」という特定と異なっているからといって、不明確になるものではないから、本件発明に記載の「成分(B)を1.60ppm以上2.58ppm以下含有し」が不明確であるとはいえない。

(4)前記第3 2(4)について
本件明細書の段落【0012】の「生バジルの配合量が前記範囲であると、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースが得られにくい」という記載について、同段落の「前記バジルは、生バジル換算で10?80%配合し、30?70%配合するとよく、40?70%配合するとよりよい。」という記載、及び、実施例1?4の記載(【0033】?【0041】)より、「バジル細断物を10?80%(生換算)」の範囲内であると、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースが得られたことが示されていることを踏まえると、前記「前記範囲であると」という記載は、「前記範囲外であると」の誤記であると認められる。
そうすると、本件明細書の段落【0012】の上記記載は、本件発明に記載の「バジル細断物を10?80%(生換算)」に影響を及ぼすものではなく、本件発明に記載の「バジル細断物を10?80%(生換算)」が不明確であるとはいえない。

(5)前記第3 2(5)について
本件明細書の段落【0022】及び【0032】の「<固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法>」の実施の態様における「酸性液状調味料の具材を除いた水相部の」という記載は、本件明細書全体の記載を検討しても、本件発明とは関係のない技術的事項であることは明らかであるから、「酸性液状調味料の具材を除いた水相部の」という記載は誤記であることが当然に理解できる。
そうすると、本件明細書の段落【0022】及び【0032】の上記記載は、本件発明に記載の「揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により測定」に影響を及ぼすものではなく、本件発明に記載の「揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により測定」が、第三者に不測の不利益を与えるほどに不明確であるとはいえない。

(6)前記第3 2(6)について
本件明細書の段落【0020】「<成分(A)(B)の測定方法>」には「成分(A)、(B)の揮発性成分の測定は、揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS法)により測定する。」と記載されている。固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS法)による成分の測定方法の技術常識を踏まえると、同段落に「成分(B)の含有量は・・検量線を作成して算出した」と記載されているように、成分(A)の含有量についても、検量線を作成して算出したと通常理解され、本件発明に含有量が特定されている成分(B)について検量線に関する記載を明記したものと考えらえる。そして、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS法)による成分の測定方法の技術常識を踏まえれば、成分(A)及び(B)の含有量の測定も可能であると理解される。
なお、実施例1の段落【0033】の「[0018]」という記載は、成分(B)の含有量の測定方法が記載されている段落「【0020】」の誤記と認められる。
したがって、本件発明に記載の「成分(A)100に対し、成分(B)を20?85となる割合で含有する」が不明確であるとはいえない。

(7)まとめ
したがって、本件発明は明確であるといえ、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。
よって、本件発明に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

3 理由3(特許法第29条第2項)について

(1)甲2?甲4の記載

ア 甲2
甲2a「【請求項1】細断した生バジル、食塩及び油脂からなるペーストが気密容器中に密封・調理されてあることを特徴とする容器詰めバジルペースト。」

甲2b「【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本願発明は生バジルと同等の色、味及び香りを有する容器詰めバジルペーストを提供することを目的とする。」

甲2c「【0007】本発明の容器詰めバジルペーストのペーストは、細断した生バジル、食塩及び油脂からなっている。生バジルは、1?6mm2 程度に細断したものを用いるのが望ましい。その大きさが1mm^(2 )未満であると、バジルが細かくなり過ぎてバジルペーストをパスタ等に振り掛けても生バジルを振り掛けた感じがしなくなる傾向にあり、一方、6mm^(2 )を越えるとペーストの上部に生バジルが浮いてしまう傾向にあるからである。細断した生バジルは、バジルペースト全量に対し20?60%配合させることが望ましい。配合量が少な過ぎるとペースト中の生バジルが目立たなくなり、一方、多過ぎると原料をペースト状に仕上げにくくなるからである。
【0008】食塩は、バジルペーストに塩味を付けると同時に、後に示す試験例にも示すように、バジルペースト中の細断した生バジルが鮮やかな緑色に発色させるために配合する。食塩は細断した生バジル100部に対して、3?50部配合するのが望ましい。その配合量が3部未満であると上記発色が不十分であり、一方、50部を越えるとバジルペ-ストをパスタ等に振り掛けた場合、パスタ等が塩辛くなり過ぎ望ましくない。
【0009】油脂は、細断した生バジルをペースト状に仕上げると同時に、ペースト中の生バジルが酸化して退色したり、香りが消失してしまうのを防止するために配合する。その配合量は、バジルペースト全量に対し30?70%が望ましい。その配合量が少な過ぎると原料をペースト状に仕上げにくくなり、一方、多過ぎると生バジルが目立たなくなるからである。配合する油脂としては、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、オリーブ油等の植物油脂、ラード、精製魚油等の動物油脂があるが、このうちオリーブ油は生バジルの風味を引き立てる作用があるので特に望ましい。
・・・・・
【0014】本発明の容器詰めバジルペーストは、その色、味及び香りが生バジル(生バジルのフレーク)に酷似しているので、スパゲティ等のパスタ用調味料としてばかりでなく、各種サラダ、魚・肉料理用等の調味料としても使用できる。」

甲2d「【0016】・・・
【実施例】
実施例1(密封前に調理した瓶詰常温流通品)
茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)10Kgを水洗した後遠心分離機にて水切りし、これに食塩1Kg(生バジル100部に対して10部)と油脂20Kg(オリーブ油10Kgと大豆サラダ油10Kgの混合油)を添加・混合し、これを細断機(TKフードマシナリー社(仏)製、商品名「ロボクープ」)にかけてバジルの葉を2?5mm^(2)に細断したところ、バジルペースト30.5Kgが得られた。得られたバジルペーストを加熱装置(かき取り式連続加熱装置)にかけて75℃で10分間加熱して調理した後100cc容ガラス瓶容器に100gずつ充填・密封後、冷却水中で冷却したところ容器詰めバジルペースト300瓶が得られた。・・・
【0017】実施例2(密封後に調理した袋詰冷凍品)
茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)10Kgを水洗した後遠心分離機にて水切りし、これに食塩4Kg(生バジル100部に対して40部)と油脂20Kg(オリーブ油10Kgと大豆サラダ油10Kgの混合油)を添加・混合し、実施例1と同じ細断機にかけてバジルの葉を3?5mm^(2)に細断したところ、バジルペースト33Kgが得られた。得られたバジルペーストを1L容ポリエチレン製シートからなる袋に1Kgずつ充填・密封後、75℃の湯中に50分間浸漬して調理し、その後冷却水中で冷却したところ容器詰めバジルペースト32袋が得られた。・・・
【0018】
【試験例】
試験例1(バジル原料の影響)
次の5個のサンプルを用意した。
対照品:茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)を水洗した後水切り、風乾し、これを細断機にて3?5mm^(2 )の小片に細断した作りたての生バジルのフレーク
発明品○1:実施例1の瓶詰常温流通品を20℃で2ヶ月間保管した後開封したもの。
発明品○2:実施例2の袋詰冷凍品を-30℃で6ヶ月間保管した後解凍・開封したもの。
比較品○1:市販の乾燥バジルを水戻ししたバジルフレーク
比較品○2:比較品○1 100部、食塩10部及び油脂200部(オリーブ油100部、大豆サラダ油100部)からなる作りたてのバジルペースト
【0019】上記各サンプルについて、よく訓練したパネル10名に、色、味及び香りを観察させた。
試験結果
表1に示すとおりである。すなわち、表1より発明品○1、○2は、色、味及び香りが生バジルのフレークに比べ遜色がないことが理解できる。
【0020】

」(審決注:○1及び○2は、それぞれ1及び2の丸付き数字を表す。)

イ 甲3
甲3a「香気成分と組織構造の比較解析による乾燥スィートバジルの品質評価」(222頁 標題)

甲3b「2.実験結果および考察
(1)生の風味に寄与する香気成分と乾燥方法の影響
・・・生および3種類の乾燥スィートバジルから調製されたバーブティーのGC-MS分析の結果により,主要成分としてシネール,リナロール,オイゲノールが確認(図1-A)された・・・・・・
・・・そこで,シネオール,リナロール,オイゲノールを主要3成分(図2-A)として,オクタナール,1-オクタノール,(E)?2?ヘキセナール,(Z)?3?ヘキセノールを微量成分(図2-B)として分けて解析を行う事とした.・・・・」(223頁右欄31行?224頁左欄1行)

甲3c「3.要約
・・・・・スィートバジルの香気寄与成分として特定したシネオール,リナロール,オイゲノール,オクタナール,1-オクタノール,(E)?2?ヘキセナール,(Z)?3?ヘキセノールの7修理の香気成分は官能評価の特徴を説明する因子となると考えられる.その中でも,生スィートバジルの香りを特徴づける因子としては,微量成分バランスが大きな役割を果たし,ハーブ自体には(E)?2?ヘキセナールや(Z)?3?ヘキセノールが存在するが,それがバーブティーに溶出されずオクタナールが高い比率で溶出されることが重要であった.・・・・但し,今回確認された(E)?2?ヘキセナールや(Z)?3?ヘキセノールはみどりの香りと称される物質の1つである.」(227頁左欄下から14行?右欄8行)

ウ 甲4
甲4a「スイートバジルの生育ステージならびに器官別の精油含量と精油成分」(167頁 標題)

甲4b「2.植物体の器官による差異
・・・・・
2)精油含量と精油成分
・・・・・葉で認められて茎で認められない成分はα-pineneを初め,β-pinene,sabinene,α-terpinene,cis?3?hexenol,1?octene?3?ol,octanolおよびmethylchavicolの8成分であったのに対し,茎で認められて葉で認められない成分はsabinenehydrateとepi-cubenolの2成分のみであった。葉で認められて花穂で認められない成分はα-pineneを初め,β-pinene,sabinene,α-terpinene,cis?3?hexenol,1?octene?3?ol,octanol,methylchavicol,methyl eugenolの9成分であったのに対し,花穂で認められて葉で認められない成分はsabinenehydrateの1成分のみであった。茎で認められて花穂で認められない成分は,methyleugenolとepi-cubenolの2成分であったが,逆の成分は認められなかった。
精油成分組成については、葉ではlinaloolとeugenolが30%以上と多く,次いで1,8-cineolが約10%で,葉ではこれら3成分が主な成分であり・・・

」(169頁左欄3行?右欄表2)

(2)甲2に記載された発明
甲2は、「細断した生バジル、食塩及び油脂からなるペーストが気密容器中に密封・調理されてあることを特徴とする容器詰めバジルペースト」(甲2a)に関し記載するものであって、該容器詰めバジルペーストの具体例として、実施例1には「茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)10Kgを水洗した後遠心分離機にて水切りし、これに食塩1Kg(生バジル100部に対して10部)と油脂20Kg(オリーブ油10Kgと大豆サラダ油10Kgの混合油)を添加・混合し、これを細断機(TKフードマシナリー社(仏)製、商品名「ロボクープ」)にかけてバジルの葉を2?5mm^(2)に細断したところ、バジルペースト30.5Kgが得られた。得られたバジルペーストを加熱装置(かき取り式連続加熱装置)にかけて75℃で10分間加熱して調理した後100cc容ガラス瓶容器に100gずつ充填・密封後、冷却水中で冷却したところ容器詰めバジルペースト300瓶が得られた」(甲2d)ことが記載されている。

そうすると、実施例1で得られた容器詰めバジルペーストに着目すると、甲2には、
「茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)10Kgを水洗した後遠心分離機にて水切りし、これに食塩1Kg(生バジル100部に対して10部)と油脂20Kg(オリーブ油10Kgと大豆サラダ油10Kgの混合油)を添加・混合し、これを細断機(TKフードマシナリー社(仏)製、商品名「ロボクープ」)にかけてバジルの葉を2?5mm^(2)に細断して、バジルペースト30.5Kgを得、得られたバジルペーストを加熱装置(かき取り式連続加熱装置)にかけて75℃で10分間加熱して調理した後100cc容ガラス瓶容器に100gずつ充填・密封後、冷却水中で冷却して得られた容器詰めバジルペースト」
の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比

ア 甲2発明の「茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)」「を細断機(TKフードマシナリー社(仏)製、商品名「ロボクープ」)にかけてバジルの葉を2?5mm^(2)に細断」したものは、生バジルの葉の細断物であるから、本件発明の「バジル細断物」に相当する。

イ 甲2発明の「油脂・・(オリーブ油・・と大豆サラダ油・・の混合油)」は、オリーブ油及び大豆サラダ油が共に食用油脂であるから、本件発明の「食用油脂」に相当する。

ウ 本件発明の「バジルソース」について、本件明細書には「【0011】・・本発明のバジルソースは、少なくともバジルを含有するものであり、様々な料理に生バジル本来の鮮やかな緑色と良好な風味を付与することができるソースであり、そのまま各種ソースとして用いることもできるが、その他原料と混合することによりパスタソースや調理ソース等のバジルソース含有食品を調製することもできる。」と記載されている。
甲2発明の「バジルペースト」は、少なくともバジルを含有するものであり、「その色、味及び香りが生バジル(生バジルのフレーク)に酷似しているので、スパゲティ等のパスタ用調味料としてばかりでなく、各種サラダ、魚・肉料理用等の調味料としても使用できる」(甲2c)と記載され、パスタ用調味料すなわちパスタソースとして使用できるものであるから、本件発明の「バジルソース」に相当する。

エ 甲2発明の「茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)・・を水洗した後・・水切りし、これに食塩・・と油脂・・を添加・混合し、これを・・細断して、バジルペースト・・を得、得られたバジルペーストを・・加熱して調理した後・・ガラス瓶容器に・・充填・密封後・・得られた容器詰めバジルペースト」は、前記ア?ウで述べたことを踏まえると、バジル細断物、食塩と油脂を含有する容器詰めバジルソースといえるから、本件発明の「バジル細断物」、「食塩」、「食用油脂を」「含有する容器詰めバジルソース」に相当する。

オ 甲2発明の各原料の配合割合(質量%)を検討する。
甲2発明の原料合計は31Kg(=10Kg+1Kg+20Kg)であり、各原料を添加・混合し、細断して得られた「バジルペースト30.5Kg」より0.5Kg多い。
しかし、添加、混合、細断時に損失した重量に特に偏りがある理由はないから、得られたバジルペーストにおける各原料の配合割合(質量%)は、原料合計を基に算出した配合割合とほぼ同じと考えられる。
それ故、甲2発明における各原料の配合割合(質量%)については、原料合計31kgを分母として算出する。

(ア)甲2発明の「茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)10Kg」「を細断機(TKフードマシナリー社(仏)製、商品名「ロボクープ」)にかけてバジルの葉を2?5mm^(2)に細断」したものは、32質量%[=100×10Kg/(10Kg+1Kg+20Kg)]であり、これは「(生バジル)」の質量%であり、本件明細書の「【0012】・・生バジル換算で10?80%配合し・・」との記載からみて、「(生換算)」を意味するといえる。
そうすると、甲2発明の「茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)10Kg」「を細断機(TKフードマシナリー社(仏)製、商品名「ロボクープ」)にかけてバジルの葉を2?5mm^(2)に細断」したものは、前記アで述べたことを踏まえると、本件発明の「バジル細断を10?80%(生換算)」に相当する。

(イ)甲2発明の「食塩1Kg」は、3.2質量%[=100×1Kg/(10Kg+1Kg+20Kg)]であるから、本件発明の「食塩を0.1?10%」に相当する。

(ウ)甲2発明の「油脂20Kg(オリーブ油10Kgと大豆サラダ油10Kgの混合油)」は、64質量%[=100×20Kg/(10Kg+1Kg+20Kg)]であるから、前記イで述べたことを踏まえると、本件発明の「食用油脂を15?70%」に相当する。

前記ア?オより、本件発明と甲2発明とは、
「バジル細断物を10?80%(生換算)、食塩を0.1?10%、食用油脂を15?70%含有する容器詰めバジルソース」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:容器詰めバジルソースが、本件発明では、成分(A)?(B):(A)リナロール;及び(B)3-ヘキセン-1-オールを含有するものであるのに対し、甲2発明では、そのような成分(A)?(B):(A)リナロール;及び(B)3-ヘキセン-1-オールを含有するものであるか明らかでない点

相違点2:容器詰めバジルソースが、本件発明では、揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により測定した際に、成分(B)を1.60ppm以上2.58ppm以下含有し、かつ成分(A)100に対し、成分(B)を20?85となる割合で含有するものであるのに対し、甲2発明では、成分(B)の含有量、及び、成分(A)100に対する成分(B)の含有割合は、明らかでない点

(4)判断

ア 相違点について

(ア)相違点1について
甲3及び甲4の記載(甲3c、甲4b)より、スィートバジルには、香気成分(精油成分)として、リナロール及び(Z)?3?ヘキセノールが含まれていることが確認されている。
一般に、バジルとして料理等に多く使われる品種は、スイートバジルである(国際公開第2014/126199号「【0033】・・バジル(学術名Ocimum basilicum)は、シソ科メボウキ属の植物である。バジルは・・イタリア料理等に多く使われる品種として、「バジリコ」、「バジル」あるいは「スイートバジル(Sweet basil)」の名で知られている。」参照。)。それ故、甲2発明の「バジル」も、スイートバジルであるといえる。
そうすると、甲2発明は、生バジルの葉の細断物を含有するバジルペーストで、生バジル特有の香りを呈するもの(甲2e)であるので、バジルの香気成分(精油成分)を含有しているものといえ、該香気成分(精油成分)として、甲3及び甲4の前記記載より、リナロール及び(Z)?3?ヘキセノールを含有していると理解されるから、甲2発明が、リナロール及び(Z)?3?ヘキセノールを含有するものと特定することは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
甲3及び甲4の記載(甲3b、甲3c、甲4b)より、一般に、スィートバジルは、香気成分(精油成分)として、リナロール、オイゲノール及びシネオールを主要成分として含み、シス?3?ヘキセノール、オクタノール等の多種類の精油を微量成分として含むことが、本件出願前に良く知られていた技術的事項であるとしても、甲2?甲4の記載や周知技術を参酌しても、これらの香気成分の中から、リナロール及びシス?3?ヘキセノールの2成分に着目し、シス?3?ヘキセノールの含有量、及び、リナロールに対するシス?3?ヘキセノールの含有割合を、それぞれ所定の範囲とすることを導き出す記載あるいは示唆が存在するということができない。
そうすると、甲2発明、甲3及び甲4の記載を組み合わせたとしても、バジルの香気成分として良く知られていた複数の香気成分の中から、リナロール及び3-ヘキセン-1-オールの2成分に着目すること、並びに、揮発性成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により測定した際に、3-ヘキセン-1-オールを所定範囲の1.60ppm以上2.58ppm以下含有し、かつ、リナロール100に対し、3-ヘキセン-1-オールを所定割合範囲の20?85となる割合で含有するものとすることについては、甲2?甲4のいずれの甲号証にも記載も示唆もなく、本件出願当時の技術常識であったとも認められず、他に動機付けられるものもない以上、本件発明の相違点2に係る構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。

イ 本件発明の効果について
本件発明の効果は、本件明細書の段落【0008】に記載され、実施例1?4により裏付けられているように(【0033】?【0041】)、ペースト処理及び殺菌処理された容器詰めバジルソースであるにもかかわらず、摘みたての生バジルのようなフレッシュな風味を有する容器詰めバジルソースを提供できるという、顕著な効果を奏するものである。

ウ 以上より、本件発明は、甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-06-30 
出願番号 特願2018-192575(P2018-192575)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉門 沙央里牧野 晃久  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 齊藤 真由美
瀬良 聡機
登録日 2019-08-30 
登録番号 特許第6577114号(P6577114)
権利者 キユーピー株式会社
発明の名称 容器詰めバジルソース  
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