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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1364028
異議申立番号 異議2019-701006  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-10 
確定日 2020-07-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第6530803号発明「容器詰めバジルソース及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6530803号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6530803号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成29年11月30日に出願され、令和元年5月24日にその特許権の設定登録がされ、同年6月12日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年12月10日に特許異議申立人奥谷宏邦(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 2月21日付け:取消理由通知
同年 4月27日 :意見書の提出(特許権者)
同年 5月12日付け:審尋(申立人宛)
同年 5月28日 :回答書の提出(申立人)

第2 本件発明について
本件の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明3」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「[請求項1]
バジルの葉及び茎を合わせたバジル細断物を40?60%(生換算)、食塩を1?5%、植物油脂を35?60%含有する容器詰め加熱済みバジルソースであって、
前記バジルの葉1部に対する茎の割合が0.1?0.3部(生換算)であり、
該バジルソースをビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、
L値70以下の割合が3%以上15%以下であり、
a値0未満の割合が70%以上である、
容器詰め加熱済みバジルソース。
[請求項2]
請求項1に記載の加熱済みバジルソースを含有する食品。
[請求項3]生のバジルの葉及び茎40?60%(生換算)を、食塩1?5%及び植物油脂35?60%と混合後、細断し、バジル細断物を得る工程と、
前記バジル細断物を78?83℃で加熱する工程を含む、
容器詰め加熱済みバジルソースの製造方法であって、
前記バジルの葉1部に対する茎の割合が0.1?0.3部(生換算)である、
容器詰め加熱済みバジルソースの製造方法。」

第3 取消理由の概要
本件の請求項1及び2に係る特許に対して令和2年2月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由I(進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2015-100273号公報(甲第1号証)
2.特開平10-75737号公報(甲第2号証)
3.株式会社オルガフーズが東京都で販売した茨城県産生バジルの葉と茎の割合を示す表(甲第4号証の1)
4.エスビー食品株式会社が東京都で販売した沖縄県産生バジルの葉と茎の割合を示す表(甲第4号証の2)
5.東三温室園芸農業協同組合が東京都で販売した愛知県産生バジルの葉と茎の割合を示す表(甲第4号証の3)
6.asyrielあしゅ, "茎まで丸ごとジェノバソース", クックパッド, レシピID:3168691, [online], 2015年10月20日, [検索日 2020年2月6日], <URL:https://cookpad.com/recipe/3168691>
7.saipanmama,"スイートバジルのバジルペスト", クックパッド, レシピID:2857687, [online], 2014年10月28日, [検索日 2020年2月5日], <URL:https://cookpad.com/recipe/2857687>

第4 取消理由通知に記載した取消理由(理由I(進歩性))についての判断
1.引用文献及びその記載事項
(i)引用文献1には以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1]
シソ科野菜含有液状食品の製造方法であって、
生のシソ科野菜の葉を、78℃以上180℃以下の温度の食用油に浸漬する浸漬工程、
前記食用油に浸漬した状態で、78℃以上180℃以下で加熱する加熱処理工程1、
前記加熱処理物を、生のシソ科野菜の葉1部に対して食用油0.5部以上含有した状態で細断、粉砕する細断処理工程、
得られた細断物を60℃以上90℃以下で加熱する加熱処理工程2、
を含む、シソ科野菜含有液状食品の製造方法。
・・・
[請求項5]
シソ科野菜含有液状食品において、
シソ科野菜の葉を生換算で2%以上50%以下、
食用油を2%以上65%以下含有し、
シソ科野菜の葉の大きさが平均6mm以下であり、
色差計による測定において、a値が-5以下である、
シソ科野菜含有液状食品。」

(1-2)「[0002]
バジル、大葉等のシソ科野菜を含有する、ソース、ペースト等の液状食品は、鮮やかな緑色と良好な香りが好まれ、様々な料理に利用されている。
シソ科野菜は、収穫直後は鮮やかな緑色を呈しており、料理に最適な状態であるが、シソ科野菜を細断、粉砕すると、酸化作用や酵素作用により褐変し、また、加熱によっても褐変し、シソ科野菜本来の緑色が損なわれる。
上記の細断、粉砕及び加熱処理は、シソ科野菜を含有する液状食品を加工する段階において必要とされる工程であるため、得られるペースト食品の品位が著しく低下するという課題がある。」

(1-3)「[0009]
本発明の目的は、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色が維持され、さらに良好な香りが引き立つ、シソ科野菜含有液状食品を提供するものである。
[課題を解決するための手段]
[0010]
本発明者等は、前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた。
その結果、
生のシソ科野菜の葉を、特定の温度に調整した食用油に浸漬して加熱処理した後に細断、粉砕処理し、
得られた細断物を特定の温度でさらに加熱処理することにより、
意外にも、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色が維持され、さらに良好な香りが引き立つことを見出し、本発明を完成するに至った。」

(1-4)「[0015]
<液状食品>
本発明の液状食品は、ソース、ペースト等、一定の体積を有するが一定の形状は保持しない食品であり、そのままパスタ、サンドイッチ、おにぎり等の料理に用いて喫食する、あるいは他の食品素材と併せて料理に用いる等、様々に使用することができる。
本発明のシソ科野菜含有液状食品は、シソ科野菜の細断、粉砕物と食用油脂とを含有し、さらに必要に応じて調味料、添加物等を含む食品である。
このような食品としては、例えば、バジルソース、大葉ペースト等が挙げられる。」

(1-5)「[0016]
<シソ科野菜>
シソ科野菜としては、シソ科に属する草木植物で食用に適するもの、例えば、青紫蘇、バジル、セージ、タイム、ミント、マジョラム、ローズマリー、レモンバーム等が挙げられる。
本発明の液状食品には、料理によく用いられて汎用性が高く良好な香りを有する、青紫蘇、バジルを用いるのがよい。
生のシソ科野菜とは、収穫した状態そのままのものであって、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものを指す。上記以外の処理、例えば洗浄等は行ってもよい。
シソ科野菜の葉とは、収穫の際に摘み取る葉の部分をいい、一部茎が入っていてもよい。」

(1-6)「[0017]
<食用油>
本発明のシソ科野菜含有液状食品において、食用油とは、常温で液体であり、食用に適するものであればいずれのものでもよい。
このような食用油としては、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、オリーブ油、紅花油、綿実油、米油、ヒマワリ油、魚油、卵黄油等の動植物油、又はこれらの精製油(サラダ油)、及びMCT(中佐脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる食用油等が挙げられる。
これらの食用油は、一種で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。」

(1-7)「[0018]
<シソ科野菜と食用油の割合>
本発明のシソ科野菜含有液状食品において、生のシソ科野菜1部に対する食用油の割合は0.5部以上であり、0.7部以上であるとよい。
シソ科野菜1部に対する食用油の割合が前記範囲より少ないと、後述の細断処理工程において、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色と良好な香りを維持することが難しく、また、好ましい食味及び物性の液状食品が得られない。
シソ科野菜1部に対する食用油の割合の上限値は特に設けないが、食用油を多量に含むと油っぽい食味となり、シソ科野菜の風味が感じられにくくなる。
よって、シソ科野菜と食用油の配合割合は、生のシソ科野菜1部に対して食用油10部以下がよく、さらに5部以下がよい。
シソ科野菜の含有量としては、シソ科野菜の食感、香りが感じられる程度であればよい。
具体的には、液状食品全量に対して生換算で2%以上50%以下であり、さらに10%以上40%以下であるとよい。
食用油の含有量としては、シソ科野菜の風味が感じられ、好ましい食味及び物性の液状食品を得られる程度であればよい。
具体的には、液状食品全量に対して2%以上65%以下であり、さらに10%以上50%以下であるとよい。」

(1-8)「[0019]
<その他原料>
本発明のシソ科野菜含有液状食品には、本発明の必須原料である、シソ科野菜及び食用油以外の原料を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し、含有することができる。
具体的には、例えば、醤油、砂糖、食塩、食酢、核酸系旨味調味料、柑橘果汁、ケチャップ等の各種調味料、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、乳清蛋白、チーズ等の乳類及び乳加工品類、卵黄、卵白、全卵、ホスフォリパーゼA処理卵黄などの卵類、各種スパイスオイル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、オクテニルコハク酸化澱粉などの乳化剤、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、グアガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉などの澱粉、湿熱処理澱粉、加工澱粉などの増粘材、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸又はその塩、アスコルビン酸、ビタミンE等の
酸化防止剤、各種ペプチド、香辛料、色素などが挙げられる。」

(1-9)「[0021]
<浸漬工程>
浸漬工程は、加熱した食用油に生のシソ科野菜の葉を投入し、シソ科野菜の葉が油の表面に浮かないよう油中に浸す工程である。
生のシソ科野菜の葉を油中に浸すことで、シソ科野菜の葉が酸化作用を受けにくい状態となり、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色を維持することができる。
食用油の温度は、78℃以上180℃以下であり、80℃以上140℃以下であるとよく、さらに85℃以上105℃以下であるとよい。
食用油の温度が前記範囲より低いと、投入した生のシソ科野菜の葉が褐変して黒色になり、鮮やかな緑色を維持することができない。
食用油の温度が前記範囲より高いと、投入した生のシソ科野菜の葉が過剰に加熱され、鮮やかな緑色を維持することができない。
浸漬工程に用いる食用油の量は、シソ科野菜の葉を十分に浸せる程度であればよい。
[0022]
<加熱処理工程1>
加熱処理工程1は、前記浸漬工程で油中に浸した生のシソ科野菜の葉を、そのままの状態で加熱処理する工程である。
この工程により、生のシソ科野菜の葉中の酵素を失活させて鮮やかな緑色を維持できると共に、シソ科野菜の良好な香りが引き立つ。
通常、シソ科野菜を加熱処理すると、熱によって褐変し、鮮やかな緑色を維持できず、香りも損なわれる。この変化は、加熱温度が高温であるほど顕著なものとなる。
しかしながら、本発明によれば、高温での処理にもかかわらず、シソ科野菜の褐変を抑制して鮮やかな緑色を維持することができ、さらに意外にも、シソ科野菜の良好な香りを引き立たせることができる。
加熱処理温度は78℃以上180℃以下であり、80℃以上140℃以下であるとよく、さらに85℃以上105℃以下であるとよい。
加熱処理温度が前記範囲より低いと、酵素を十分に失活させることができず、加熱処理中に褐変し、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色を維持できない。
加熱処理温度が前記範囲より高いと、投入した生のシソ科野菜の葉が過剰に加熱され、鮮やかな緑色を維持することができない。
加熱処理時間は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、高温の時には短時間、低温の時には長時間となる。
具体的には3秒以上900秒以下で処理するとよい。
加熱処理は、投入した生のシソ科野菜の葉が均一に加熱される方法で行えばよい。
[0023]
<取り出し工程>
本発明のシソ科野菜含有液状食品の製造方法において、前記加熱処理工程1と後述する細断処理工程の間に、取り出し工程を設けるとよい。
取り出し工程とは、前記加熱処理工程1において食用油中で加熱処理を行ったシソ科野菜の葉を、後述の細断処理工程を行う前に油中から取り出す工程である。
この工程により、シソ科野菜が加熱した油中に留まる時間を短縮できるため、シソ科野菜の葉の熱による褐変を抑制できる。
[0024]
<冷却工程>
本発明のシソ科野菜含有液状食品の製造方法において、前記加熱処理工程1と後述する細断処理工程の間に、冷却工程を設けてもよい。
冷却工程とは、前記加熱処理工程1において食用油中で加熱処理を行ったシソ科野菜の葉を、後述する細断処理工程を行う前に一定以下の温度に冷却する工程である。
冷却温度は30℃以下であり、25℃以下であるとよい。
冷却温度が前記範囲より高いと、シソ科野菜の葉の熱による褐変を十分に抑制することができない。
冷却温度の下限値は特に設けないが、シソ科野菜の葉に冷却による悪影響が出ない程度であればよい。
冷却方法は特に限定されないが、加熱処理したシソ科野菜の葉の熱による褐変を抑制するために、短時間で冷却できる方法で行うとよい。
また、冷却効率の観点から、冷却工程は、前記取り出し工程と後述の細断処理工程の間に設けるとよい。」

(1-10)「[0025]
<細断処理工程>
細断処理工程は、前記加熱処理工程1で処理したシソ科野菜の葉、又は、取り出し工程及び冷却工程を行った場合は各工程により得られたシソ科野菜の葉を、食用油と共に細断、粉砕を行う工程である。
細断処理は、コミトロール等の裁断機、粉砕機、すり潰し機等によって行うことができる。
細断処理後のシソ科野菜の葉の細断物の大きさは、液状食品の滑らかな食感を損なわないよう平均6mm以下であるが、前記値より大きい細断物を一部含んでいてもよい。
ここで、シソ科野菜の葉の細断物の大きさとは、葉の細断物の最大長さのことであり、例えば、四角形であれば対角線の長さ、円形であれば直径が最大長さに相当する。
食用油は、前記加熱処理工程1の食用油をそのまま用いてもよく、別途用意した食用油を用いてもよい。
取り出し工程において取り出したシソ科野菜の葉は、生のシソ科野菜の葉1部に対して食用油0.5部以上含有した状態で細断処理工程を行うため、必要に応じて食用油を加え、配合割合を調整してもよい。
食用油の配合量の上限は特に設けないが、食用油を多量に含むと油っぽい食味となり、シソ科野菜の風味が感じられにくくなる。
よって、食用油の配合割合は、生のシソ科野菜の葉1部に対して10部以下がよく、さらに5部以下がよい。
加える食用油は、前記加熱処理工程1で用いた食用油を用いてもよく、別途用意した食用油を用いてもよいが、好ましい味の液状食品を得るには、別途用意した食用油を加えるとよい。
本発明のシソ科野菜含有液状食品が、シソ科野菜の葉及び食用油以外の調味料、添加物等を含有する場合には、細断処理工程において、調味料、添加物等を加えてもよい。」

(1-11)「[0026]
<加熱処理工程2>
加熱処理工程2は、前記細断処理工程で得られた細断物を加熱処理し、液状食品とする工程である。
この工程により、シソ科野菜含有液状食品の保存中の褐変が抑制され、シソ科野菜の良好な香りをさらに引き立たせることができる。
加熱処理温度は60℃以上90℃以下であり、65℃以上80℃以下がよい。
加熱処理温度が前記範囲より低いと、保存中のシソ科野菜の褐変は抑制されるが、良好な香りが立ちづらい。
加熱処理温度が前記範囲より高いと、シソ科野菜が過剰に加熱されて褐変し、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色を維持することができない。
加熱処理の方法は特に限定されず、釜等を用いて行ってもよく、液状食品をパウチ等の容器に充填、密封した後に行ってもよい。」

(1-12)「[0027]
<シソ科野菜含有液状食品>
本発明のシソ科野菜含有液状食品は、
シソ科野菜の葉を生換算で2%以上50%以下、
食用油を2%以上65%以下含有し、
シソ科野菜の葉の大きさが平均6mm以下であり、
生のシソ科野菜の葉を、加熱した食用油に浸漬する浸漬工程、
前記食用油に浸漬した状態で、特定の範囲の温度で加熱する加熱処理工程1、
前記加熱処理物を、生のシソ科野菜と食用油とを特定量含有した状態で細断、粉砕する細断処理工程、
得られた細断物を特定の範囲の温度でさらに加熱する加熱処理工程2、
を含む工程を経て製造されることにより、
アルカリ剤、銅、亜鉛等の金属塩、色素等の食品添加物を含有することなく、70℃以上の温度で加熱処理を行っても、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色が維持され、さらに良好な香りが引き立つことに特徴を有する。
具体的には、色差計による測定においてa値が-5以下であり、-10以下であるとよい。
さらに、色差計による測定において、L値が24以上であるとよい。」

(1-13)「[0029]
[実施例1]
<浸漬工程及び加熱処理工程1における食用油の温度>
菜種油3kgを加熱して90℃とし、そこに生のバジルの葉150gを投入して浸漬した後(浸漬工程)、90℃で150秒間加熱処理を行った(加熱処理工程1)。
加熱処理したバジルの葉を菜種油中から取り出し(取り出し工程)、バジルの葉と食用油の配合比を、生バジルの葉1部に対して菜種油1部となるように菜種油を追加して調整し、コミトロールを用いて細断処理を行った(細断処理工程)。
得られた細断物を、透明のパウチ容器に充填後、密封し、68℃で30分間加熱処理を行い(加熱処理工程2)、本発明のシソ科野菜含有液状食品を得た。
得られたシソ科野菜含有液状食品中のバジルの葉の大きさは、平均6mm以下であった。
なお、実施例2?14及び比較例1?5においても、シソ科野菜含有液状食品中のバジルの葉の大きさは平均6mm以下である。
[0030]
実施例2?10、及び比較例1、2は、実施例1の製造工程において、加熱処理工程1の加熱処理温度を変化させ、実施例1と同様にシソ科野菜含有液状食品を製造し、試験例1に準じて、得られた液状食品の色調及び香りを評価した。
[0031]
[試験例1]
実施例1?10及び比較例1、2により得られたシソ科野菜含有液状食品の色調及び香りについて、以下の評価基準に基づいて、3名のパネラーにより評価した。
[0032]
<評価基準>
液状食品の色調
4:鮮やかな緑色が維持されている。
3:緑色が維持されている。
2:やや褐変が見られるが、おおむね緑色が維持されており、問題のない程度である。
1:褐変しており、緑色は維持されていない。
液状食品の香り
4:シソ科野菜の良好な香りがよく引き立っている。
3:シソ科野菜の良好な香りが引き立っている。
2:シソ科野菜の良好な香りはやや弱いが、問題のない程度である。
1:シソ科野菜の良好な香りがほとんど感じられない。
[0033]
[試験例2]
実施例1、6?8、10及び比較例1により得られたシソ科野菜含有液状食品の色調及び香りについて、色差測定を行った。
測定条件は以下のとおりである。
<測定条件>
・測定装置:測色色差計型番ZE-2000 (日本電色工業株式会社)
・試料台:30φ試料台
・受光条件:JISZ-8722反射「条件d(n-d)」
・光源条件:D65/10
・測定条件:透明なパウチに充填後、密封された状態のシソ科野菜含有ペースト食品を、常温において3回測定し、その平均を測定値とした。
<測定値>
・a値:値が小さくなるほど緑色が強くなることを示す。
・L値:値が大きくなるほど色が明るいことを示す。
[0034]
[表1]

[0035]
[表2]



(1-14)「[0046]
加熱処理工程2における加熱処理温度が60℃以上90℃以下であるシソ科野菜含有液状食品(実施例1?14)は、保存中においても、シソ科野菜本来の緑色を維持しており、良好な香りも立つ好ましいものであった。
加熱処理工程2における加熱処理温度が65℃以上80℃以下のもの(実施例1?13)は、色・香りとも特に優れていた。」

(ii)引用文献2には以下の事項が記載されている。
(2-1)「[請求項1]細断した生バジル、食塩及び油脂からなるペーストが気密容器中に密封・調理されてあることを特徴とする容器詰めバジルペースト。
[請求項2]細断した生バジル100部に対して食塩を3?50部配合してある請求項1記載の容器詰めバジルペースト。」

(2-2)「[0008]食塩は、バジルペーストに塩味を付けると同時に、後に示す試験例にも示すように、バジルペースト中の細断した生バジルが鮮やかな緑色に発色させるために配合する。食塩は細断した生バジル100部に対して、3?50部配合するのが望ましい。その配合量が3部未満であると上記発色が不十分であり、一方、50部を越えるとバジルペ-ストをパスタ等に振り掛けた場合、パスタ等が塩辛くなり過ぎ望ましくない。」

(2-3)「[0016]次に本発明の実施例と試験例に基づき、詳細に説明する。
[実施例]
実施例1(密封前に調理した瓶詰常温流通品)
茎を取り除いたバジルの葉(生バジル)10Kgを水洗した後遠心分離機にて水切りし、これに食塩1Kg(生バジル100部に対して10部)と油脂20Kg(オリーブ油10Kgと大豆サラダ油10Kgの混合油)を添加・混合し、これを細断機(TKフードマシナリー社(仏)製、商品名「ロボクープ」)にかけてバジルの葉を2?5mm^(2) に細断したところ、バジルペースト30.5Kgが得られた。得られたバジルペーストを加熱装置(かき取り式連続加熱装置)にかけて75℃で10分間加熱して調理した後100cc容ガラス瓶容器に100gずつ充填・密封後、冷却水中で冷却したところ容器詰めバジルペースト300瓶が得られた。この製品は、一般小売り用として、常温で流通させた。」

(2-4)「[0021]試験例2(食塩配合の影響)
生バジル100部に対して、表2に示す割合の食塩を配合した他は、実施例1と同じ原料を同じ割合用いて、実施例1と同じ製法で、それぞれ食塩の配合割合を異なった7種類のサンプル(容器詰めバジルペースト:瓶詰常温流通品)を得た。得られた各サンプルを可及的速やかに開封し、試験例1と同じ試験を行った。
[0022]試験結果
表2に示すとおりである。すなわち、表2より食塩を配合するとバジルペーストが鮮やかな緑色を呈することが理解できる。また生バジル100部に対して食塩を3部以上配合するとかかる緑色を呈する傾向があることを理解できる。
[表2]



(iii)引用文献3には以下の事項が記載されている。
(3-1)「
商品名:バジル
販売者:株式会社オルガフーズ
産 地:茨城県
購入地:東京都

」(第1頁)

(iv)引用文献4には以下の事項が記載されている。
(4-1)「
商品名:スィートバジル
販売者:エスビー食品株式会社
産 地:沖縄県
購入地:東京都

」(第1頁)

(v)引用文献5には以下の事項が記載されている。
(5-1)「
商品名:スイートバジル
販売者:東三温室園芸農業協同組合
産 地:愛知県
購入地:東京都

」(第1頁)

(vi)引用文献6には以下の事項が記載されている。
(6-1)「茎まで丸ごとジェノバソース
・・・
材料
バジルの葉 適宜
にんにく 1片
クルミ 大5片
カシュナッツ(ロースト) 大5片
岩塩 小さじ1
エキストラバージンオリーブオイル 200cc
・・・
作り方
1 バジルの葉は傷つきやすいので丁寧に、柔らかい布・キッチンペーパーで水拭きします
2 葉と茎を分けます。・・・
3 ニンニク・クルミ・カシュナッツ・岩塩・オリーブオイル100ccとバジルの茎をFPにかけます
4 オリーブオイル100ccほどと、バジルの葉をFPにかけ、ざっくりとペースト状にします
5 ・・・冷凍保存。
・・・茎まで使って、香りの強いジェノバソースに、葉っぱだけだと、優しい風味に・・・お好みで」(第1頁)

(vii)引用文献7には以下の事項が記載されている。
(7-1)「スイートバジルのバジルペスト
・・・
材料
バジルの茎と新芽 カップ3
にんにく 3-4かけ
パインナッツ松の実 カップ1
・・・
エキストラバージンオリーブオイル カップ2から3
パルメザンチーズ 適量
塩 適量
・・・
作り方
1 バジルをさっと水洗いします
2 ブレンダーかミルにちぎったバジルを入れます。
3 皮をむいて包丁で一度潰したにんにくのかけらをいれる、ナッツも入れる。
少しオリーブオイルを入れて回す。
4 除きフタを開けながらオリーブオイルを入れて全てがピューレ状になるまで回す。
5 味見をしながらパルメザンチーズと塩を入れて整える。
6 ガラスの容器に入れて冷蔵保存。」(第1頁)

2.引用文献1に記載された発明
引用文献1の請求項5及び1(摘記1-1)には、「シソ科野菜含有液状食品において、シソ科野菜の葉を生換算で2%以上50%以下、食用油を2%以上65%以下含有し、シソ科野菜の葉の大きさが平均6mm以下であり、色差計による測定において、a値が-5以下である、シソ科野菜含有液状食品」及び「シソ科野菜含有液状食品の製造方法であって、生のシソ科野菜の葉を、78℃以上180℃以下の温度の食用油に浸漬する浸漬工程、前記食用油に浸漬した状態で、78℃以上180℃以下で加熱する加熱処理工程1、前記加熱処理物を、生のシソ科野菜の葉1部に対して食用油0.5部以上含有した状態で細断、粉砕する細断処理工程、得られた細断物を60℃以上90℃以下で加熱する加熱処理工程2、を含む、シソ科野菜含有液状食品の製造方法」が記載されており、[0015](摘記1-4)には、上記液状食品について、「ソース、ペースト等、一定の体積を有するが一定の形状は保持しない食品であり、・・・例えば、バジルソース、大葉ペースト等が挙げられる」ことが記載されている。
また、[0016](摘記1-5)には、上記シソ科野菜について、「バジルを用いるのがよい」こと及び「シソ科野菜の葉とは、収穫の際に摘み取る葉の部分をいい、一部茎が入っていてもよい」ことが記載され、[0017](摘記1-6)には、上記食用油について、「菜種油、大豆油、コーン油、オリーブ油、紅花油、綿実油、米油、ヒマワリ油、魚油、卵黄油等の動植物油」等を用いることができることが記載され、[0018](摘記1-7)には、「シソ科野菜の含有量としては・・・液状食品全量に対して生換算で2%以上50%以下であり、さらに10%以上40%以下であるとよい。食用油の含有量としては・・・液状食品全量に対して2%以上65%以下であり、さらに10%以上50%以下であるとよい」ことが記載されている。
また、[0025](摘記1-10)には、上記細断処理工程について、「シソ科野菜の葉を、食用油と共に細断、粉砕を行う工程」であり、「細断処理工程において、調味料、添加物等を加えてもよい」ことが記載され、[0019](摘記1-8)には、シソ科野菜及び食用油以外の原料の一つとして「食塩」が記載されている。
また、[0026](摘記1-11)には、上記加熱工程2について、「前記細断処理工程で得られた細断物を加熱処理し、液状食品とする工程である」こと、及び「加熱処理の方法は特に限定されず・・・液状食品をパウチ等の容器に充填、密封した後に行ってもよい」ことが記載されている。
また、[0029](摘記1-13)には、実施例1として、植物油の一種である菜種油と、シソ科野菜の一種であるバジルを原料として用いており、菜種油3kgを加熱して90℃とし、そこに生のバジルの葉150gを投入して浸漬する工程(浸漬工程)、90℃で150秒間加熱処理を行う工程(加熱処理工程1)、加熱処理したバジルの葉を菜種油中から取り出す工程(取り出し工程)、バジルの葉と食用油の配合比を、生バジルの葉1部に対して菜種油1部となるように菜種油を追加して調整し、コミトロールを用いて細断処理を行う工程(細断処理工程)、及び得られた細断物を、透明のパウチ容器に充填後、密封し、68℃で30分間加熱処理を行う工程(加熱処理工程2)によりシソ科野菜含有液状食品を得たことが記載されており、[0046](摘記1-14)には、「加熱処理工程2における加熱処理温度が60℃以上90℃以下であるシソ科野菜含有液状食品(実施例1?14)は、保存中においても、シソ科野菜本来の緑色を維持しており、良好な香りも立つ好ましいものであった」ことが記載され、[0035]の[表2](摘記1-13)には、実施例1、6、7、8、10のa値が-5.9?-13であったことが記載されている。
これらの記載を勘案すると、引用文献1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「バジル含有液状食品において、細断処理工程により細断されたバジルの葉を生換算で2%以上50%以下、植物油を2%以上65%以下含有し、透明のパウチ容器に充填後、密封し、加熱処理されたものであるバジル含有液状食品であって、バジルの葉の大きさが平均6mm以下であり、色差計による測定において、a値が-5以下である、バジル含有液状食品。」(以下、「引用発明」という。)

また、引用文献1の[0015](摘記1-4)には、「本発明の液状食品は・・・そのままパスタ、サンドイッチ、おにぎり等の料理に用いて喫食する、あるいは他の食品素材と併せて料理に用いる等、様々に使用することができる」ものであることが記載されているから、引用文献1には、以下の発明も記載されているものと認められる。
「引用発明の加熱処理されたバジル含有液状食品を含有する食品。」(以下、「引用発明b」という。)

3.本件発明1について
(1)本件発明1と引用発明との対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「バジルの葉」、「植物油」、「透明のパウチ容器に充填後、密封」、「加熱処理されたものである」は、それぞれ本件発明1における「バジルの葉」、「植物油脂」、「容器詰め」、「加熱済み」に相当し、引用発明においてバジルの葉が「細断処理工程により細断され」ており、「バジルの葉の大きさが平均6mm以下であ」る点は、本件発明1における「細断物」に相当する。また、引用発明の「バジル含有液状食品」と本件発明1の「バジルソース」とは、「バジル含有液状食品」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「バジルの葉の細断物、及び植物油脂を含有する容器詰め加熱済みバジル含有液状食品。」
の点で一致し、
相違点1:バジルが、本件発明1においては「バジルの葉及び茎を合わせた」ものであり、「バジルの葉1部に対する茎の割合が0.1?0.3部(生換算)」であるのに対し、引用発明においてはバジルの葉である点
相違点2:バジル細断物と植物油脂の含有割合が、本件発明1においては「バジル細断物を40?60%(生換算)・・・植物油脂を35?60%」であるのに対し、引用発明においては「細断されたバジルの葉を生換算で2%以上50%以下、植物油を2%以上65%以下」である点
相違点3:本件発明1は「食塩を1?5%」含有するのに対し、引用発明は食塩を含有しない点
相違点4:本件発明1は「バジルソース」であるのに対し、引用発明は「バジルソース」に特定されていない「液状食品」である点
相違点5:本件発明1は、「バジルソースをビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、L値70以下の割合が3%以上15%以下であり、a値0未満の割合が70%以上である」のに対し、引用発明は、「色差計による測定において、a値が-5以下である」点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。

(2)相違点5について
事案に鑑み、まず、相違点5について検討する。
ア 本件発明1におけるL値及びa値について
本件明細書の[0030]には、本件発明の実施例の色差が以下の測定条件で「ビジュアルアナライザー」を用いて測定されたことが記載されている。
「<測定条件>
・測定装置:ビジュアルアナライザーIRIS 型番 VA300 (アルファ・モス社製)
カメラ:Basler_acA2500‐14gc
レンズ:Computer 5mm
・測定条件:バジルソース15gを直径9cmの円筒形容器に入れ、均一に広げて測定した。
照明モード:上下照明」
ここで、例えば、甲第9号証(アルファ・モス・ジャパン株式会社,「ビジュアルアナライザー IRIS」webページ,)に記載されているように、上記「ビジュアルアナライザー」は、「サンプルを高解像度CMOSセンサーで簡単に撮影し、細分割されたサンプル表面の色や大きさのばらつきを・・・パターン認識ソフトウェアで・・・解析」することができる測定装置であり、「色・形・大きさを数値化できる」もの、具体的には、「隣接するピクセル間の色差の程度に基づいて色が変化する境界を囲むことで、 ある固有の色範囲、および面積を求める」ことができるものと理解することができる。

イ 引用文献1におけるa値及びL値について
引用文献1の[0009](摘記1-3)には、引用発明の解決しようとする課題が「シソ科野菜本来の鮮やかな緑色が維持され、さらに良好な香りが引き立つ、シソ科野菜含有液状食品を提供する」ことにあることが記載されており、引用文献1の[0027](摘記1-12)には、「鮮やかな緑色」とは、「具体的には、色差計による測定においてa値が-5以下であり、-10以下であるとよい。さらに、色差計による測定において、L値が24以上であるとよい」と記載されている。
そして、引用文献1の[0033](摘記1-13)には、引用文献1におけるa値及びL値が以下の測定条件で「測色色差計」を用いて測定されるものであることが記載されている。
「<測定条件>
・測定装置:測色色差計型番ZE-2000 (日本電色工業株式会社)
・試料台:30φ試料台
・受光条件:JISZ-8722反射「条件d(n-d)」
・光源条件:D65/10
・測定条件:透明なパウチに充填後、密封された状態のシソ科野菜含有ペースト食品を、常温において3回測定し、その平均を測定値とした。」
ここで、上記「測色色差計」による測定では、サンプル表面を細分割してピクセルごとの色差を測定したことは読み取れないから、引用文献1におけるa値及びL値は、シソ科野菜含有ペースト食品全体の平均値と解されるものであり、本件発明1におけるa値及びL値の特定と直接比較することはできない。
また、引用文献1には、シソ科野菜含有ペースト食品の色差をビジュアルアナライザーで測定し、色の種類と各色が表面積に占める割合を分析することについては、記載も示唆もされていない。

ウ 引用文献1記載の実施例について
引用文献1の[0035]の[表2]には、引用文献1の実施例1、6、7、8及び10のL値がそれぞれ27、24、29、32及び28であったことが記載されていることから、いずれの実施例についてもL値70以下の部分の面積の割合が、L値70超の面積の割合よりも高いと推測できる。
また、乙第1号証(キユーピー株式会社研究開発本部藤原義和が2020年4月3日に作成した実験成績証明書)に記載された実験結果を参照すると、引用文献1に記載された実施例2、4、6、7及び8におけるL値70以下の部分が表面積に占める割合は、それぞれ68%、67.3%、86.5%、76.6%及び70.3%であり、いずれも相違点5に係る「L値70以下の割合が3%以上15%以下」の要件を満たしていないといえる。

エ 引用文献1の一般記載について
引用文献1の[0021]?[0024](摘記1-9)及び[0026](摘記1-11)には、<浸漬工程>において「生のシソ科野菜の葉を油中に浸すことで、シソ科野菜の葉が酸化作用を受けにくい状態となり、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色を維持することができる」こと、<加熱処理工程1>において「前記浸漬工程で油中に浸した生のシソ科野菜の葉を、そのままの状態で加熱処理する工程・・・この工程により、生のシソ科野菜の葉中の酵素を失活させて鮮やかな緑色を維持できると共に、シソ科野菜の良好な香りが引き立つ」こと、<取り出し工程>を設けることによって「シソ科野菜が加熱した油中に留まる時間を短縮できるため、シソ科野菜の葉の熱による褐変を抑制できる」こと、<冷却工程>において「細断処理工程を行う前に一定以下の温度に冷却」し、冷却温度が高いと「シソ科野菜の葉の熱による褐変を十分に抑制することができない」こと、及び<加熱処理工程2>において「細断処理工程で得られた細断物を加熱処理し、液状食品とする工程・・・により、シソ科野菜含有液状食品の保存中の褐変が抑制され、シソ科野菜の良好な香りをさらに引き立たせることができる」ことが記載されている。
しかし、引用文献1には、上記の各工程により、相違点5に係る「L値70以下の割合が3%以上15%以下」の要件を満たすシソ科野菜含有液状食品を調製できることは記載も示唆もされていない。
そして、本件明細書の実施例1?3([0030]?[0033])に、中心品温が78?83℃に達温後、すぐに冷凍した場合にL値の要件が満足されることが記載されていることから、L値の要件を満足するためには短時間の加熱にとどめることが必要と推認されるところ、引用文献1の[0029]の[実施例1](摘記1-13)においては、<加熱処理工程2>として「68℃で30分間加熱処理」という、比較的長時間の加熱が行われていることを考慮し、また、乙第1号証の実験データも踏まえると、引用文献1に記載された事項から相違点5に係る「L値70以下の割合が3%以上15%以下」の要件を満たすシソ科野菜含有液状食品を調製できるとはいえない。

オ 引用文献2?7について
引用文献2?7(摘記2-1?摘記7-1)にも、相違点5に係る「L値70以下の割合が3%以上15%以下」の要件を満たすシソ科野菜含有液状食品については記載も示唆もされていない。

カ 相違点5についての判断
以上のとおり、引用文献1には、シソ科野菜含有ペースト食品の色差をビジュアルアナライザーで測定し、色の種類と各色が表面積に占める割合を分析することについては記載も示唆もされていない。特に、「L値70以下の割合が3%以上15%以下」とすることについては具体的に記載されておらず、引用文献1に記載された実施例は、乙第1号証を参酌すると、いずれも「L値70以下の割合が3%以上15%以下」の要件を満たしていないものと認められる。
また、引用発明は「シソ科野菜本来の鮮やかな緑色が維持され」ることを課題の一つとするものであるが、引用文献1に記載された実施例及び各処理工程の温度調整についての記載を参酌しても、「L値70以下の割合が3%以上15%以下」の要件を満たすシソ科野菜含有液状食品を調製することが動機付けられるものではないし、実際に当該条件を満たすシソ科含有液状食品を調製できるものとも認められない。
さらに、引用文献2?7を参照しても、引用発明において「L値70以下の割合が3%以上15%以下」の要件を満たすシソ科野菜含有液状食品を調製することができるものとは認められない。
よって、相違点5は、引用発明及び引用文献1?7に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることとは認められない。

(3)本件発明1の効果について
本件明細書に記載された実施例及び比較例の実験データ等を参酌すると、本件発明1は、上記相違点5に係る要件を満たし、さらに相違点1?4に係る構成を備えることにより、「生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りが感じられる」という効果が得られるものであり、引用文献1に記載された実施例のL値等を参酌すると、本件発明1は引用文献1?7から予測し得ない顕著な効果を奏するものといえる。

(4)申立人の主張について
申立人は、令和2年5月28日に提出した回答書(第8頁)において、相違点5について「臨界的意義はなく、当業者の通常の創作能力の発揮といえることから、進歩性は認められない」と主張している。
しかし、上記3.(2)「相違点5について」に記載したとおり、相違点5に係る「L値70以下の割合が3%以上15%以下」の要件については、引用文献1?7のいずれにも記載も示唆もされていないから、当業者が当該要件を満たすシソ科野菜含有液状食品を調製することはいずれの引用文献からも動機付けられることとはいえない。また、引用文献1に記載された処理工程の温度の調整によって、上記要件を満たすことができるとも認められないから、相違点5を当業者の通常の創作能力の発揮により到達し得る事項であるとすることはできない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

(5)本件発明1についてのまとめ
以上のことから、相違点5については引用文献1?7に基づいて当業者が容易に想到し得たこととは認められない。
そして、本件発明1は、引用文献1?7から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点1?4について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明及び引用文献1?7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

4.本件発明2について
本件発明2と引用発明bとを対比すると、引用発明bの「加熱処理された」は、本件発明2の「加熱済み」に相当し、引用発明bの「バジル含有液状食品を含有する食品」と本件発明2の「バジルソースを含有する食品」とは、「バジル含有液状食品を含有する食品」である点で共通する。そうすると、両者は、
「加熱済みバジル含有液状食品を含有する食品。」
の点で一致し、
相違点6:加熱済みバジル含有液状食品が、本件発明2においては「請求項1に記載の加熱済みバジルソース」であるのに対し、引用発明bにおいては「引用発明の加熱処理されたバジル含有液状食品」である点
で相違する。
そこで、上記相違点6について検討すると、相違点6は実質的に上記3.(1)「本件発明1と引用発明との対比」に記載した相違点1?相違点5に相当する。
そして、相違点5については、同(2)「相違点5について」に記載したとおり、引用発明及び引用文献1?7に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることとは認められない。
よって、相違点1?4について検討するまでもなく、本件発明2は引用発明及び引用文献1?7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

5.理由I(進歩性)のまとめ
以上まとめると、本件発明1及び2は、いずれも引用発明、引用発明b及び引用文献1?7に記載された公知ないし周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、取消理由通知に記載した理由I(進歩性)の取消理由により、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。
理由1(進歩性、甲第1号証を主引用例とする場合)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証の1?甲第4号証の3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(進歩性、甲第3号証を主引用例とする場合)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第3号証、甲第1号証及び甲第4号証の1?甲第4号証の3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2015-100273号公報(引用文献1)
甲第2号証:特開平10-75737号公報(引用文献2)
甲第3号証:特開2016-86772号公報
甲第4号証の1:株式会社オルガフーズが東京都で販売した茨城県産生バジルの葉と茎の割合を示す表(引用文献3)
甲第4号証の2:エスビー食品株式会社が東京都で販売した沖縄県産生バジルの葉と茎の割合を示す表(引用文献4)
甲第4号証の3:東三温室園芸農業協同組合が東京都で販売した愛知県産生バジルの葉と茎の割合を示す表(引用文献5)
以下、「甲第1号証」?「甲第4号証の3」をそれぞれ「甲1」?「甲4の3」という。まとめて、「甲号証」ということもある。

理由3(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1?3に係る発明についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

理由4(明確性)
本件特許は、訂正前の特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、請求項1、2係る発明についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2.理由1(進歩性、甲第1号証を主引用例とする場合)について
申立人が主張する理由1(進歩性、甲第1号証を主引用例とする場合)の取消理由のうち、本件発明1及び2についての取消理由は、取消理由通知に記載した理由I(進歩性)に当たるから、本件発明3について検討する。
(1)本件発明3について
ア 甲1に記載された発明
甲1(引用文献1)には、上記第4 1.「引用文献及びその記載事項」に摘記した(1-1)?(1-14)の事項が記載されている。
甲1の[0027](摘記1-12)には、「本発明のシソ科野菜含有液状食品は、シソ科野菜の葉を生換算で2%以上50%以下、食用油を2%以上65%以下含有し、シソ科野菜の葉の大きさが平均6mm以下であり、生のシソ科野菜の葉を、加熱した食用油に浸漬する浸漬工程、前記食用油に浸漬した状態で、特定の範囲の温度で加熱する加熱処理工程1、前記加熱処理物を、生のシソ科野菜と食用油とを特定量含有した状態で細断、粉砕する細断処理工程、得られた細断物を特定の範囲の温度でさらに加熱する加熱処理工程2、を含む工程を経て製造される」ことが記載されており、[0026](摘記1-11)には、上記加熱処理工程2について、「前記細断処理工程で得られた細断物を加熱処理し、液状食品とする工程である」こと、及び「加熱処理の方法は特に限定されず・・・液状食品をパウチ等の容器に充填、密封した後に行ってもよい」ことが記載されている。また、甲1の請求項1(摘記1-1)には、「シソ科野菜含有液状食品の製造方法であって、生のシソ科野菜の葉を、78℃以上180℃以下の温度の食用油に浸漬する浸漬工程、前記食用油に浸漬した状態で、78℃以上180℃以下で加熱する加熱処理工程1、前記加熱処理物を、生のシソ科野菜の葉1部に対して食用油0.5部以上含有した状態で細断、粉砕する細断処理工程、得られた細断物を60℃以上90℃以下で加熱する加熱処理工程2、を含む、シソ科野菜含有液状食品の製造方法」が記載されている。これらの記載及び上記第4 2.「引用文献1に記載された発明」における検討を踏まえると、甲1には以下の発明が記載されているものと認められる。
「細断されたバジルの葉を生換算で2%以上50%以下、植物油を2%以上65%以下含有し、バジルの葉の大きさが平均6mm以下である、加熱処理されたものであるバジル含有液状食品の製造方法であって、
生のバジルの葉を、78℃以上180℃以下の温度の植物油に浸漬する浸漬工程、
前記植物油に浸漬した状態で、78℃以上180℃以下で加熱する加熱処理工程1、
前記加熱処理物を、生のバジルの葉1部に対して食用油0.5部以上含有した状態で細断、粉砕する細断処理工程、
得られた細断物を透明のパウチ容器に充填、密封した後、60℃以上90℃以下で加熱する加熱処理工程2、
を含む、バジル含有液状食品の製造方法。」(以下、「甲1発明」という。)

イ 本件発明3と甲1発明との対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「生のバジルの葉」、「植物油」、「透明のパウチ容器に充填、密封」、「加熱処理されたものである」は、それぞれ本件発明3における「生のバジルの葉」、「植物油脂」、「容器詰め」、「加熱済み」に相当する。甲1発明における「生のバジルの葉1部に対して食用油0.5部以上含有した状態で細断、粉砕する細断処理工程」、及びそれにより「バジルの葉の大きさが平均6mm以下」の「細断されたバジルの葉」が得られることは、本件発明3における「バジルの葉・・・を、・・・植物油脂・・・と混合後、細断し、バジル細断物を得る工程」に相当し、甲1発明における「得られた細断物を透明のパウチ容器に充填、密封した後、60℃以上90℃以下で加熱する加熱処理工程2」は、本件発明3における「前記バジル細断物を・・・加熱する工程」に相当する。また、引用発明の「バジル含有液状食品」と本件発明3の「バジルソース」とは、「バジル含有液状食品」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「バジルの葉を、植物油脂と混合後、細断し、バジル細断物を得る工程と、
前記バジル細断物を加熱する工程を含む、
容器詰め加熱済みバジル含有液状食品の製造方法。」
の点で一致し、
相違点1’:本件発明3は生のバジルの葉及び茎を細断するのに対し、甲1発明は「生のバジルの葉を、78℃以上180℃以下の温度の植物油に浸漬する浸漬工程」及び「前記植物油に浸漬した状態で、78℃以上180℃以下で加熱する加熱処理工程1」を有し、加熱処理物(加熱処理されたバジルの葉)を細断処理する点
相違点2’:バジルが、本件発明3においては「生のバジルの葉及び茎」であり、「バジルの葉1部に対する茎の割合が0.1?0.3部(生換算)」であるのに対し、甲1発明においては生のバジルの葉である点
相違点3’:バジルと植物油脂との混合割合が、本件発明3においては「生のバジルの葉及び茎40?60%(生換算)・・・植物油脂35?60%」であるのに対し、甲1発明においては「生のバジルの葉1部に対して食用油0.5部以上」であり、かつ「細断されたバジルの葉を生換算で2%以上50%以下、植物油を2%以上65%以下」である点
相違点4’:バジル及び植物油脂とともに、本件発明3は「食塩1?5%」を混合するのに対し、甲1発明は食塩を混合しない点
相違点5’:本件発明3は「バジルソースの製造方法」であるのに対し、甲1発明は「バジルソース」に特定されていない「液状食品の製造方法」である点
相違点6’:バジル細断物の加熱温度が、本件発明3では「78?83℃」であるのに対し、甲1発明では「60℃以上90℃以下」である点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。

ウ 相違点1’について
事案に鑑み、まず、相違点1’について検討する。
(ア)甲1について
甲1の[0009](摘記1-3)には、甲1発明が「シソ科野菜本来の鮮やかな緑色が維持され、さらに良好な香りが引き立つ、シソ科野菜含有液状食品を提供する」ことを課題とする発明であることが記載されている。
ここで、甲1の[0021](摘記1-9)には、甲1発明における浸漬工程が「加熱した食用油に生のシソ科野菜の葉を投入し、シソ科野菜の葉が油の表面に浮かないよう油中に浸す工程であ」り、「生のシソ科野菜の葉を油中に浸すことで、シソ科野菜の葉が酸化作用を受けにくい状態となり、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色を維持することができる。食用油の温度は、78℃以上180℃以下・・・食用油の温度が前記範囲より低いと、投入した生のシソ科野菜の葉が褐変して黒色になり、鮮やかな緑色を維持することができない」ことが記載されているから、当業者は、甲1発明における浸漬工程は上記課題解決に必須の工程であり、仮にこの工程を行わなければ、「生のシソ科野菜の葉が褐変して黒色になり、鮮やかな緑色を維持することができない」と理解する。
また、甲1の[0022](摘記1-9)には、甲1発明における加熱処理工程1が「前記浸漬工程で油中に浸した生のシソ科野菜の葉を、そのままの状態で加熱処理する工程であ」り、「この工程により、生のシソ科野菜の葉中の酵素を失活させて鮮やかな緑色を維持できると共に、シソ科野菜の良好な香りが引き立つ。通常、シソ科野菜を加熱処理すると、熱によって褐変し、鮮やかな緑色を維持できず、香りも損なわれる。この変化は、加熱温度が高温であるほど顕著なものとなる。しかしながら、本発明によれば、高温での処理にもかかわらず、シソ科野菜の褐変を抑制して鮮やかな緑色を維持することができ、さらに意外にも、シソ科野菜の良好な香りを引き立たせることができる。加熱処理温度は78℃以上180℃以下・・・加熱処理温度が前記範囲より低いと、酵素を十分に失活させることができず、加熱処理中に褐変し、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色を維持できない」ことが記載されているから、当業者は、甲1発明における加熱処理工程1は上記課題解決に必須の工程であり、仮にこの工程を行わなければ、「酵素を十分に失活させることができず、加熱処理中に褐変し、シソ科野菜本来の鮮やかな緑色を維持できない」と理解する。
そうすると、甲1発明において、上記相違点1’に係る浸漬工程及び加熱処理工程1を行わないこととすることには、阻害要因があるといえる。

(イ)甲2及び甲4の1?甲4の3について
甲2及び甲4の1?甲4の3を参照しても、甲1発明において、上記相違点1’に係る浸漬工程及び加熱処理工程1を行わないこととすることに、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

(ウ)本件明細書及び技術常識について
念のため、本件明細書についても検討すると、本件明細書の[0011]には、「本発明の容器詰めバジルソースに用いるバジルは、生のバジルであり、収穫後、乾燥、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものを指す」ことが記載されているから、本件発明3の「バジル細断物を得る工程」において加熱処理されたバジルを用いることは想定されていないといえる。
また、例えば甲1の[0022](摘記1-9)に記載されているように、「通常、シソ科野菜を加熱処理すると、熱によって褐変し、鮮やかな緑色を維持できず、香りも損なわれる」というのが技術常識であるから、上記相違点1’に係る加熱処理の有無が、単なる設計的事項にすぎないとはいえない。

(エ)相違点1’についての判断
よって、相違点1’は、甲1発明並びに甲1、甲2及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることとは認められない。

エ 本件発明3の効果について
本件明細書に記載された実施例及び比較例の実験データ等を参酌すると、本件発明3は、上記相違点1’に係る要件を満たし、さらに相違点2’?6’に係る構成を備えることにより、「生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りが感じられる」バジルソースの製造方法を提供することができるものであり、甲1、甲2及び甲4の1?甲4の3からは導き出せない製造工程を採用することにより顕著な効果を奏するものといえる。

オ 申立人の主張について
申立人は、令和2年5月28日に提出した回答書(第10?12頁)において、「特許発明3は・・・特許発明1のような装置を用いて色を数値化する要件は記載されていない」ことを主張している。
しかし、上記2.(1)ウ「相違点1’について」における検討を踏まえると、本件発明3においてビジュアルアナライザーによるL値及びa値の要件が特定されていないことにより、相違点1’についての判断が変わるものではない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

カ 本件発明3についてのまとめ
以上のことから、相違点1’については甲1発明並びに甲1、甲2及び甲4の1?甲4の3に基づいて当業者が容易に想到し得たこととは認められない。
そして、本件発明3は、甲1、甲2及び甲4の1?甲4の3から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点2’?6’について検討するまでもなく、本件発明3は甲1発明並びに甲1、甲2及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(2)理由1(進歩性、甲第1号証を主引用例とする場合)のまとめ
以上のとおり、本件発明3は甲1に記載された発明並びに甲1、甲2及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、特許異議申立書に記載された理由1(進歩性、甲第1号証を主引用例とする場合)の取消理由によって、本件請求項3に係る特許を取り消すことはできない。

3.理由2(進歩性、甲第3号証を主引用例とする場合)について
(1)甲3に記載された事項
甲3には以下の事項が記載されている。
(甲3-1)「[特許請求の範囲]
[請求項1]
細断したハーブを含むハーブ含有食品であって、生のハーブを油脂によりブランチング処理した後細断したことを特徴とするハーブ含有食品。
[請求項2]
生のハーブがハーブの葉である、請求項1に記載のハーブ含有食品。
[請求項3]
生のハーブが、バジル、ルッコラ、セルバチカ、紫蘇、ローズマリー、タイム、チャービル、セージ、ディル、ミント、イタリアンパセリ、パセリ、パクチー、オレガノ、マジョラム、フェンネル、セイボリー、コリアンダー、タラゴン、チャイブ及びレモングラスからなる群より選択される1以上である、請求項1又は2に記載のハーブ含有食品。
[請求項4]
さらに油脂を含む、請求項1?3のいずれか1項に記載のハーブ含有食品。
[請求項5]
油脂がブランチング処理に用いた後の油脂を含む、請求項4に記載のハーブ含有食品。
[請求項6]
細断したハーブを生のハーブの重量換算で30重量%以上80重量%以下及び油脂を20重量%以上70重量%以下含む、請求項4又は5に記載のハーブ含有食品。
[請求項7]
食塩を20重量%以下含む、請求項1?6のいずれか1項に記載のハーブ含有食品。
[請求項8]
ペースト状である請求項1?7のいずれか1項に記載のハーブ含有食品。
[請求項9]
生のハーブを油脂によりブランチング処理した後細断する工程を含むことを特徴とする、ハーブ含有食品の製造方法。」

(甲3-2)「[発明が解決しようとする課題]
[0004]
・・・
本発明の目的は、生のハーブの香りを十分に残しかつ鮮やかな色調を有するハーブ含有食品及びその製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、栽培期間が長くひねたハーブを用いた場合でも、上記目的を達成できる製品を提供することである。
[課題を解決するための手段]
[0005]
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、細断前の生のハーブを油脂によりブランチング処理することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。」

(甲3-3)「[0007]
本発明のハーブ含有食品は、生のハーブを油脂によりブランチング処理することによって製造される。
ハーブ原料としては、特に限定されず、例えば、バジル、ルッコラ、セルバチカ、紫蘇、ローズマリー、タイム、チャービル、セージ、ディル、ミント、イタリアンパセリ、パセリ、パクチー、オレガノ、マジョラム、フェンネル、セイボリー、コリアンダー、タラゴン、チャイブ及びレモングラス等から選択される1種以上を用いることができる。
本発明においては、これらのハーブ原料を細断前に油脂によるブランチング処理に供する。ブランチング処理を行う前に葉を予め細断すると、細断中又は細断後に褐変しやすくなる。ハーブ原料は、茎部分を取り除き、葉を用いることが好ましい。」

(甲3-4)「[0008]
本発明において用いるブランチング処理は、油脂による加熱処理を意味する。油脂によるブランチング処理は、加熱した油脂中にハーブを投入して一定の温度及び時間で加熱処理する方法である。つまり、ハーブを油脂中にくぐらせることによって加熱処理する方法である。ハーブは、ブランチング処理中静置状態でもよく又は攪拌してもよい。本発明の油脂によるブランチング処理によれば、ハーブに含まれる酵素を効果的に不活化することができ、褐変を防ぐことができる。したがって、本発明によれば、生のハーブの鮮やかな色調を呈し、かつ生のハーブの香りを十分に残存させたハーブ含有食品を得ることができる。
ブランチング処理に用いる油脂の種類は、食用油であれば特に限定されないが、オリーブ油、菜種油、コーン油、大豆油、紅花油、バター、ラード及び牛脂等が挙げられる。製造時や喫食時の取扱いのしやすさの観点からは、常温で液体であるものが好ましく、なかでもオリーブ油、菜種油及び大豆油が好ましい。
ブランチング処理に用いる設備は、油を用いた食品の調理で用いる通常の器具を用いることができ、フライヤー、平型釜及び半球型釜等が挙げられる。連続式の設備として、リテーナコンベアの回転移動により順次フライヤーの油槽にハーブを導入する形式のフライヤー等、バッチ式の設備として、加熱手段を備えた横軸ニーダー等が挙げられる。
ブランチング処理に用いる油脂の量は、生のハーブ原料の量や装置の容量等に応じて適宜決定すればよいが、例えば生のハーブ100重量部に対して50重量部以上10,000重量部以下とすることができ、好ましくは生のハーブ100重量部に対して100重量部以上5,000重量部以下とすることができる。
ブランチング処理は、ハーブに含まれる褐変に寄与する酵素を不活化するのに十分で、かつ生のハーブの香りが実質的に失われない条件で行う。ブランチング処理の条件は、生のハーブ原料の量や装置の容量等に応じて適宜決定すればよいが、具体的には、連続式の設備を用いる場合は、70℃以上140℃以下、好ましくは80℃以上120℃以下の油脂に、生のハーブを5秒以上10分以下、好ましくは10秒以上5分以下の間浸漬させることにより行うとよい。バッチ式の設備を用いる場合は、70℃以上140℃以下、好ましくは80℃以上120℃以下の油脂に、生のハーブを5秒以上20分以下、好ましくは10秒以上5分以下の間浸漬させることにより行うとよい。ブランチング処理を70℃未満の温度や上記処理時間よりも短い時間で行った場合には、十分に失活せずに残った酵素が褐変の原因となることがあり、また、140℃を超える温度や上記処理時間よりも長い時間で行った場合には、ハーブに含まれる褐変に寄与する酵素以外の成分が逸失してしまう可能性がある。」

(甲3-5)「[0009]
本発明においては、生のハーブを油脂によりブランチング処理した後に細断する。ハーブの細断方法は、特に限定されないが、コミトロール、カッターミキサー、マスコロイダー及びラインミル等の細断設備を用い、ハーブの大きさが例えば1mm^(2)以上9mm^(2)以下程度となるように行えばよい。細断する大きさは限定されない。ハーブを細断(切断を含む)する際に褐変するのであれば、当該細断は本発明でいう細断に含まれる。なお、細断は、本発明のハーブ含有食品が油脂及び必要に応じて食塩等の原料を含む場合、ブランチング処理した後のハーブとこれらの原料の全部又は一部とを混合して行ってもよい。実質的にハーブ及び油脂からなる系、あるいはハーブ、油脂及び食塩からなる系で細断すれば、細断の際にハーブの香気成分が失われにくいことから、これらの系で細断することが望ましい。」

(甲3-6)「[0010]
本発明のハーブ含有食品は、上記処理で得られた細断したハーブを含み、ハーブの種類や目的とする食品に応じて、任意の様々なハーブ含有食品として調製することができる。
本発明のハーブ含有食品の形態としては、ハーブを含有する食品であって、固形状、ペースト状及び液状等いずれであってもよい。ペースト状及び液状の食品とすることが好ましく、ハーブを含む原料の全部を細断したペースト状の食品とすることが特に好ましい。
またハーブを含むこれらのペースト状又は液状等の食品を、菓子、パン類、麺類及び米飯類等に含めた食品であってもよい。食品の種類としては、菓子、パン類、麺類、米飯類、クリーム、ジャム、ハーブペースト、カレー類、ソース、ケチャップ、マヨネーズ及びドレッシング等の調味料、飲料ならびにスープ等が挙げられる。
本発明のハーブ含有食品に配合するハーブの量は、目的とする食品に応じて適宜決定することができる。ブランチング処理して細断したハーブの含有量は、生のハーブの重量換算で、ハーブ含有食品中1重量%以上90重量%以下、好ましくは2重量%以上70重量%以下となるように配合することができる。また、例えば本発明のハーブ含有食品をハーブペースト等のペースト状食品とする場合には、生のハーブの重量換算で、ハーブ含有食品中30重量%以上80重量%以下、好ましくは40重量%以上70重量%以下とすることができる。」

(甲3-7)「[0011]
本発明のハーブ含有食品は、油脂を含んでいてもよい。ブランチング処理して細断したハーブと共に配合する油脂の種類としては、上記のブランチング処理に用いる油脂の種類と同様のものが挙げられる。・・・
ハーブ含有食品に配合する油脂の量は、目的とする食品に応じて適宜決定すればよい。油脂の含有量は、ハーブ含有食品中0重量%以上80重量%以下、好ましくは1重量%以上50重量%以下とすることができる。また、例えば本発明のハーブ含有食品をハーブペースト等のペースト状食品とする場合には、油脂の含有量は、ハーブ含有食品中20重量%以上70重量%以下、好ましくは30重量%以上60重量%以下とすることができる。さらに、配合する油脂がブランチング処理に用いた後の油脂を含む場合には、配合油脂全量に対するブランチング処理に用いた後の油脂の量は、目的とする食品に応じて適宜決定すればよいが、例えば20重量%以上100重量%以下、好ましくは50重量%以上100重量%以下とすることができる。」

(甲3-8)「[0012]
本発明のハーブ含有食品は、さらに食塩を含んでいてもよい。食塩の含有量は、ハーブ含有食品中0重量%以上20重量%以下、好ましくは0.5重量%以上10重量%以下であればよい。またハーブペースト等のペースト状食品では、食塩の含有量は当該食品中0重量%以上10重量%以下、好ましくは1重量%以上5重量%以下とすればよい。
本発明のハーブ含有食品は、目的に応じて適宜他の原料を含んでいてもよい。例えば、調味成分、澱粉類、香料及び増粘剤等を含んでいてもよい。これらの原料は、本発明の効果が損なわれない範囲で含むことができる。本発明のハーブ含有食品は、実質的にハーブに含まれる水分以外に水分を含まないものであることが望ましい。」

(甲3-9)「[0013]
以上のようにして得られる本発明のハーブ含有食品は、容器に充填し、適宜加熱殺菌処理を行ってもよい。加熱殺菌処理は、60℃以上130℃以下、好ましくは70℃以上100℃以下の温度で、3分以上120分以下、好ましくは10分以上60分以下の時間行うことができる。容器は内容物を取り出し可能なものであれば特に限定されないが、例えばパウチ状容器、口栓付きパウチ、チューブ状容器、ボトル状容器、缶及び瓶容器等を利用することができる。加熱殺菌処理後のハーブ含有食品は、適宜凍結させて冷凍ハーブ含有食品としてもよい。
このようにして得られる本発明のハーブ含有食品は、ハーブの好ましい香気・風味と色調を有するものとなる。」

(甲3-10)「[実施例]
[0014]
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
<ハーブペースト>
(実施例1?8)
生のハーブ原料として、バジル、ルッコラ及びイタリアンパセリを用い、ハーブから茎を取り除き、葉を水洗いして水切りしたものを用いた。バジルについては、栽培期間の異なるものを用いた。
フライヤーの油槽に菜種油50Kgを入れて加熱した。生のハーブの葉45Kgを、リテーナコンベアの回転移動により順次フライヤーの油槽に導入し、特定の温度と時間油槽に浸漬されるようにして加熱処理(連続式の設備によるブランチング処理)した。ブランチング処理後、ハーブの葉を油を切って回収した。実施例5においては、生のバジルの葉90Kgを菜種油50Kgに導入して同様にブランチング処理を行って回収し、このうちの半量を用いてバジルペーストを調製した。
ブランチング処理後のハーブの葉と、菜種油50Kgと、食塩5Kgとをコミトロールに導入し、ハーブの葉が約4mm^(2)となるように細断してハーブペーストを製造した。ここで前記のハーブペーストに配合した菜種油としては、実施例1においては新しい菜種油を配合し、実施例2?8においてはブランチング処理に用いた後の菜種油を用いた。
このようにして調製したハーブペースト200gをパウチに充填し、85℃の湯に10分間浸漬して低温加熱殺菌処理を行った。これを-20℃に冷凍して冷凍ハーブペーストとした。」

(甲3-11)「[0015]
上記のとおり製造した実施例及び比較例の冷凍ハーブペーストを、8週間冷凍保存した後室温まで解凍し、以下の基準を用いてハーブの香気・風味及び色調について評価した。結果を表1に示す。
[香気・風味評価]
◎:非常に強く良好なハーブの香りがあり、青臭さはない
○:良好なハーブの香りがあり、青臭さはあまりない
△:ハーブの香りが弱い、又は少し青臭さが残っている
×:ハーブの香りに乏しい、又は青臭さが残っている、又は褐変臭がある
[色調評価]
◎:非常に鮮やかな緑色を呈している
○:鮮やかな緑色を呈している
△:ややくすんだ緑色を呈している
×:褐変により暗い濃緑色を呈している
[0016]



(甲3-12)「[0017]
実施例1?9で得られたハーブペーストは、生のハーブ原料が有する青臭さが抜ける一方、ハーブの好ましい香りを有し、かつバジルは鮮やかな緑色を、ルッコラは深い濃緑色を、イタリアンパセリは鮮やかな黄緑色を呈していた。特に、ブランチング処理に用いた後の油脂を配合した実施例2?9のハーブペーストは、より一層豊かなハーブの香りを有する高品質のものであった。なかでも実施例5のハーブペーストは、ハーブの香りがとりわけ強く感じられた。また、各々のハーブペーストを調製する工程でハーブを細断し、充填した後に加熱処理を施した場合に、ハーブが褐変することがなく、また加熱処理したハーブペーストは、こもり臭がなく、生のハーブの色調と香気・風味を有する高品質のものであった。
一方、栽培期間5ヶ月のバジルを用い、油脂によるブランチング処理を行わなかった比較例1では、細断時にハーブが著しく褐変してしまい、パウチ充填後のハーブペーストに褐変に伴う色調の劣化が生じ、褐変臭、こもり臭が生じて、香り及び色調ともに好ましくなかった。栽培期間2ヶ月のバジルを用いた比較例2では、比較例1に比べて細断時の褐変は発生しなかったが、青臭さ、こもり臭が生じていた。湯を用いてブランチング処理を行った比較例3では、褐変は抑制されたものの、バジルの香りが非常に弱いものであった。また、予め細断した生のバジルをブランチング処理した比較例4においては、生のハーブの葉を細断する際に著しい褐変が生じ、ブランチング処理を行っても、鮮やかな緑色を回復させることはできなかった。」

(2)甲3に記載された発明
甲3の特許請求の範囲(摘記甲3-1)には、「細断したハーブを含むハーブ含有食品であって、生のハーブを油脂によりブランチング処理した後細断したことを特徴とするハーブ含有食品」(請求項1)が記載されており、「さらに油脂を含」み「油脂がブランチング処理に用いた後の油脂を含」み、「細断したハーブを生のハーブの重量換算で30重量%以上80重量%以下及び油脂を20重量%以上70重量%以下含む」こと(請求項4?6)、「食塩を20重量%以下含む」こと(請求項7)、「ペースト状である」こと(請求項8)が記載されている。
また、請求項2(摘記甲3-1)には、「生のハーブがハーブの葉である」ことが記載され、請求項3(摘記甲3-1)及び[0007](摘記甲3-3)には、生のハーブの選択肢の一つとして「バジル」が記載されている。
また、[0009](摘記甲3-5)には、「細断は、本発明のハーブ含有食品が油脂及び必要に応じて食塩等の原料を含む場合、ブランチング処理した後のハーブとこれらの原料の全部又は一部とを混合して行ってもよ」く、「ハーブ、油脂及び食塩からなる系で細断すれば、細断の際にハーブの香気成分が失われにくいことから、これらの系で細断することが望ましい」ことが記載されている。
また、[0013](摘記甲3-9)には、「以上のようにして得られる本発明のハーブ含有食品は、容器に充填し、適宜加熱殺菌処理を行ってもよ」く、「容器は・・・例えばパウチ状容器、口栓付きパウチ、チューブ状容器、ボトル状容器、缶及び瓶容器等を利用することができる」ことが記載されている。
また、実施例の一つとして、[0014](摘記甲3-10)?[0017](摘記甲3-12)には、「生のハーブ原料として、バジル・・・を用い、ハーブから茎を取り除き、葉を水洗いして水切りしたものを用い」、「フライヤーの油槽に菜種油50Kgを入れて加熱し・・・生のハーブの葉45Kgを・・・順次フライヤーの油槽に導入し・・・ブランチング処理」し、「ブランチング処理後のハーブの葉と、菜種油50Kgと、食塩5Kgとをコミトロールに導入し、ハーブの葉が約4mm^(2)となるように細断してハーブペーストを製造し」、「調製したハーブペースト200gをパウチに充填し、85℃の湯に10分間浸漬して低温加熱殺菌処理を行った」ことが記載されている。
そうすると、甲3には以下の発明が記載されているものと認められる。
「細断したバジルの葉を生の重量換算で30重量%以上80重量%以下、食塩を20重量%以下、油脂を20重量%以上70重量%以下含み、容器に充填し、加熱殺菌処理されたバジル含有ペースト状食品であって、細断したバジルの葉は生のバジルの葉を油脂によりブランチング処理した後細断したものである、バジル含有ペースト状食品。」(以下、「甲3発明」という。)

また、甲3の[0010](摘記甲3-6)には、「ハーブを含むこれらのペースト状又は液状等の食品を、菓子、パン類、麺類及び米飯類等に含めた食品であってもよい。食品の種類としては、菓子、パン類、麺類、米飯類、クリーム、ジャム、ハーブペースト、カレー類、ソース、ケチャップ、マヨネーズ及びドレッシング等の調味料、飲料ならびにスープ等が挙げられる」ことが記載されているから、甲3には以下の発明が記載されているものと認められる。
「甲3発明の加熱殺菌処理されたバジル含有ペースト状食品を含有する食品。」(以下、「甲3発明b」という。)

また、甲3の請求項9(摘記甲3-1)には、「生のハーブを油脂によりブランチング処理した後細断する工程を含むことを特徴とする、ハーブ含有食品の製造方法」が記載されており、[0008](摘記甲3-4)には、「本発明において用いるブランチング処理は、油脂による加熱処理を意味する。油脂によるブランチング処理は、加熱した油脂中にハーブを投入して一定の温度及び時間で加熱処理する方法である」ことが記載されている。
さらに、上記甲3発明について検討したとおり、[0009](摘記甲3-5)には、「細断は、本発明のハーブ含有食品が油脂及び必要に応じて食塩等の原料を含む場合、ブランチング処理した後のハーブとこれらの原料の全部又は一部とを混合して行ってもよ」く、「ハーブ、油脂及び食塩からなる系で細断すれば、細断の際にハーブの香気成分が失われにくいことから、これらの系で細断することが望ましい」こと、[0013](摘記甲3-9)には、「以上のようにして得られる本発明のハーブ含有食品は、容器に充填し、適宜加熱殺菌処理を行ってもよ」く、「加熱殺菌処理は、60℃以上130℃以下・・・の温度で、3分以上120分以下・・・の時間行うことができる」こと等が記載されているから、甲3には以下の発明が記載されているものと認められる。
「細断したバジルの葉を生の重量換算で30重量%以上80重量%以下、食塩を20重量%以下、油脂を20重量%以上70重量%以下含み、容器に充填し、加熱殺菌処理されたバジル含有ペースト状食品の製造方法であって、
生のバジルの葉を、加熱した油脂中に投入して加熱処理するブランチング処理、
ブランチング処理した後のバジルの葉と、油脂及び食塩を含む原料を混合し、細断する工程、
得られたハーブ含有食品を、容器に充填し、60℃以上130℃以下の温度で加熱殺菌処理を行う工程、
を含む、バジル含有ペースト状食品の製造方法。」(以下、「甲3発明c」という。)

(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「バジルの葉」、「食塩」、「容器に充填」、「加熱殺菌処理された」は、それぞれ本件発明1における「バジルの葉」、「食塩」、「容器詰め」、「加熱済み」に相当し、甲3発明においてバジルの葉が「細断した」ものである点は、本件発明1における「細断物」に相当する。また、甲3発明の「油脂」と本件発明1の「植物油脂」とは、「油脂」である点で共通し、甲3発明の「バジル含有ペースト状食品」と本件発明1の「バジルソース」とは、「バジル含有ペースト状食品」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「バジルの葉の細断物、食塩及び油脂を含有する容器詰め加熱済みバジル含有液状食品。」
の点で一致し、
相違点1”:バジルが、本件発明1においては「バジルの葉及び茎を合わせた」ものであり、「バジルの葉1部に対する茎の割合が0.1?0.3部(生換算)」であるのに対し、甲3発明においてはバジルの葉である点
相違点2”:バジル細断物、食塩及び油脂の含有割合が、本件発明1においては「バジル細断物を40?60%(生換算)、食塩を1?5%、植物油脂を35?60%」であるのに対し、甲3発明においては「細断したバジルの葉を生の重量換算で30重量%以上80重量%以下、食塩を20重量%以下、油脂を20重量%以上70重量%以下」である点
相違点3”:油脂が、本件発明1においては植物油脂であるのに対し、甲3発明においては植物油脂に特定されていない点
相違点4”:本件発明1は「バジルソース」であるのに対し、甲3発明は「バジルソース」に特定されていない「ペースト状食品」である点
相違点5”:本件発明1は、「バジルソースをビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、L値70以下の割合が3%以上15%以下であり、a値0未満の割合が70%以上である」のに対し、甲3発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。

イ 相違点5”について
事案に鑑み、まず、相違点5”について検討する。
(ア)甲3について
甲3には、シソ科野菜含有ペースト食品の色差をビジュアルアナライザーで測定し、色の種類と各色が表面積に占める割合を分析することについては、記載も示唆もされていない。
また、甲3の[0004](摘記甲3-2)には、甲3発明の課題が「生のハーブの香りを十分に残しかつ鮮やかな色調を有するハーブ含有食品」を提供することにあることが記載され、[0008](摘記甲3-4)には、「本発明の油脂によるブランチング処理によれば、ハーブに含まれる酵素を効果的に不活化することができ、褐変を防ぐことができる」ことが記載されている。また、[0017](摘記甲3-12)には、「実施例1?9で得られたハーブペーストは、・・・バジルは鮮やかな緑色を・・・呈していた」ことが記載されている。
しかし、甲3の[0015](摘記甲3-11)には、甲3における色調評価が「◎:非常に鮮やかな緑色を呈している、○:鮮やかな緑色を呈している、△:ややくすんだ緑色を呈している、×:褐変により暗い濃緑色を呈している」の4段階で評価されたことが記載されているにとどまるから、シソ科野菜含有ペースト食品の色差をビジュアルアナライザーで測定し、色の種類と各色が表面積に占める割合を特定の数値範囲に設定することは、甲3から動機づけられることではない。
また、上記甲3に記載されたブランチング処理により、相違点5”に係る要件を満たすバジル含有ペースト状食品を調製できることは記載も示唆もされていない。
(イ)甲1及び甲4の1?甲4の3について
上記第4 3.(2)「相違点5について」における検討を踏まえると、甲1(引用文献1)及び甲4の1(引用文献3)?甲4の3(引用文献5)の記載を参照しても、相違点5”に係る要件を満たすバジル含有ペースト状食品については記載も示唆もされていないといえる。

(ウ)相違点5”についての判断
以上のことから、相違点5”は、甲3発明並びに甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることとは認められない。

ウ 本件発明1の効果について
本件明細書に記載された実施例及び比較例の実験データ等を参酌すると、本件発明1は、上記相違点5”に係る要件を満たし、さらに相違点1”?4”に係る構成を備えることにより、「生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りが感じられる」という甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3から予測し得ない顕著な効果を奏するものといえる。

エ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書(第19?20頁)において、上記相違点5”について「甲第1号証には、装置を用いて好ましい色を数値化することが記載されており、色を数値化する際に適宜の装置として例えばビジュアルアナライザーを用いて色の種類と各色が表面積に占める割合を数値化することは当業者であれば容易になし得ることである」と主張している。
しかし、上記第4 3.(2)「相違点5について」における検討を踏まえると、甲1(引用文献1)の記載を参酌しても、相違点5”に係るビジュアルアナライザーを用いたL値、a値及びそれらが表面積に占める割合を特定することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

オ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、相違点5”については甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3に基づいて当業者が容易に想到し得たこととは認められない。
そして、本件発明1は、甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点1”?4”について検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明並びに甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(4)本件発明2について
本件発明2と甲3発明bとを対比すると、甲3発明bの「加熱殺菌処理された」は、本件発明2の「加熱済み」に相当し、甲3発明bの「バジル含有ペースト状食品を含有する食品」と本件発明2の「バジルソースを含有する食品」とは、「バジル含有ペースト状食品を含有する食品」である点で共通する。そうすると、両者は、
「加熱済みバジル含有ペースト状食品を含有する食品。」
の点で一致し、
相違点6”:加熱済みバジル含有ペースト状食品が、本件発明2においては「請求項1に記載の加熱済みバジルソース」であるのに対し、甲3発明bにおいては「甲3発明の加熱殺菌処理されたバジル含有ペースト状食品」である点
で相違する。
そこで、上記相違点6”について検討すると、相違点6”は実質的に上記3.(3)ア「本件発明1と甲3発明との対比」に記載した相違点1”?相違点5”に相当する。
そして、相違点5”については、同イ「相違点5”について」に記載したとおり、甲3発明並びに甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることとは認められない。
よって、相違点1”?4”について検討するまでもなく、本件発明2は甲3発明並びに甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(5)本件発明3について
ア 本件発明3と甲3発明cとの対比
本件発明3と甲3発明cとを対比すると、甲3発明cにおける「生のバジルの葉」、「食塩」、「容器に充填」、「加熱殺菌処理された」は、それぞれ本件発明3における「生のバジルの葉」、「食塩」、「容器詰め」、「加熱済み」に相当する。甲3発明cにおける「バジルの葉と、油脂及び食塩を含む原料を混合し、細断する工程」、及びそれにより「細断されたバジルの葉」が得られることは、本件発明3における「バジルの葉・・・を、食塩・・・及び植物油脂・・・と混合後、細断し、バジル細断物を得る工程」に相当し、甲3発明cにおける「得られたハーブ含有食品を、容器に充填し、60℃以上130℃以下の温度で加熱殺菌処理を行う工程」は、本件発明3における「前記バジル細断物を・・・加熱する工程」に相当する。また、甲3発明cの「油脂」と本件発明3の「植物油脂」とは、「油脂」である点で共通し、甲3発明cの「バジル含有ペースト状食品」と本件発明3の「バジルソース」とは、「バジル含有ペースト状食品」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「バジルの葉を、食塩及び油脂と混合後、細断し、バジル細断物を得る工程と、
前記バジル細断物を加熱する工程を含む、
容器詰め加熱済みバジル含有液状食品の製造方法。」
の点で一致し、
相違点1’’’:甲3発明cは「生のバジルの葉を、加熱した油脂中に投入して加熱処理するブランチング処理」の工程を有し、ブランチング処理した後のバジルの葉を細断するのに対し、本件発明3においては、生のバジルの葉及び茎を細断する点
相違点2’’’:バジルが、本件発明3においては「生のバジルの葉及び茎」であり、「バジルの葉1部に対する茎の割合が0.1?0.3部(生換算)」であるのに対し、甲3発明cにおいては生のバジルの葉である点
相違点3’’’:バジル細断物、食塩及び油脂の含有割合が、本件発明3においては「生のバジルの葉及び茎40?60%(生換算)を、食塩1?5%及び植物油脂35?60%」であるのに対し、甲3発明cにおいては「細断したバジルの葉を生の重量換算で30重量%以上80重量%以下、食塩を20重量%以下、油脂を20重量%以上70重量%以下」である点
相違点4’’’:油脂が、本件発明3においては植物油脂であるのに対し、甲3発明cにおいては植物油脂に特定されていない点
相違点5’’’:本件発明3は「バジルソースの製造方法」であるのに対し、甲3発明cは「バジルソース」に特定されていない「ペースト状食品の製造方法」である点
相違点6’’’:バジル細断物の加熱温度が、本件発明3では「78?83℃」であるのに対し、甲3発明cでは「60℃以上130℃以下」である点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。

ウ 相違点1’’’について
事案に鑑み、まず、相違点1’’’について検討する。
(ア)甲3について
甲3の[0004]?[0005](摘記甲3-2)には、甲3発明cが「生のハーブの香りを十分に残しかつ鮮やかな色調を有するハーブ含有食品・・・の製造方法を提供すること」を課題とする発明であること、及び「細断前の生のハーブを油脂によりブランチング処理することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った」ことが記載されている。
また、甲3の[0008](摘記甲3-4)には、「本発明の油脂によるブランチング処理によれば、ハーブに含まれる酵素を効果的に不活化することができ、褐変を防ぐことができる。したがって、本発明によれば、生のハーブの鮮やかな色調を呈し、かつ生のハーブの香りを十分に残存させたハーブ含有食品を得ることができる」こと、及び「ブランチング処理の条件は、・・・連続式の設備を用いる場合は、70℃以上140℃以下・・・の油脂に、生のハーブを5秒以上10分以下・・・の間浸漬・・・バッチ式の設備を用いる場合は、70℃以上140℃以下・・・の油脂に、生のハーブを5秒以上20分以下・・・の間浸漬させることにより行うとよい。ブランチング処理を70℃未満の温度や上記処理時間よりも短い時間で行った場合には、十分に失活せずに残った酵素が褐変の原因となることがあ」ることが記載されているから、当業者は、甲3発明cにおけるブランチング処理は上記課題解決に必須の工程であり、仮にこの処理を行わなければ、「十分に失活せずに残った酵素が褐変の原因となる」と理解する。
また、甲3の[0017](摘記甲3-12)には、「実施例1?9で得られたハーブペーストは、生のハーブ原料が有する青臭さが抜ける一方、ハーブの好ましい香りを有し、かつバジルは鮮やかな緑色を・・・呈していた」のに対し、「栽培期間5ヶ月のバジルを用い、油脂によるブランチング処理を行わなかった比較例1では、細断時にハーブが著しく褐変してしまい、パウチ充填後のハーブペーストに褐変に伴う色調の劣化が生じ、褐変臭、こもり臭が生じて、香り及び色調ともに好ましくなかった」ことが記載されているから、当業者は、甲3発明cにおけるブランチング処理は上記課題解決に必須の工程であり、仮にこの処理を行わなければ、「細断時にハーブが著しく褐変してしまい、パウチ充填後のハーブペーストに褐変に伴う色調の劣化が生じ、褐変臭、こもり臭が生じて、香り及び色調ともに好ましくな」くなるものと理解する。
そうすると、甲3発明cにおいて、上記相違点1’’’に係るブランチング処理を行わないこととすることには、阻害要因があるといえる。

(イ)甲1、甲4の1?甲4の3、本件明細書及び技術常識について
上記第5 2.(1)ウ「相違点1’について」における検討を踏まえると
、甲1及び甲4の1?甲4の3を参照しても、甲3発明cにおいて、上記相違点1’’’に係るブランチング処理を行わないこととすることに、当業者が容易に想到し得るとは認められない。
また、念のため、本件明細書について検討しても、本件発明3の「バジル細断物を得る工程」において加熱処理されたバジルを用いることは想定されていないといえるし、上記相違点1’’’に係る加熱処理の有無が、単なる設計的事項にすぎないとはいえない。

(ウ)相違点1’’’についての判断
よって、相違点1’’’は、甲3発明c並びに甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることとは認められない。

エ 本件発明3の効果について
本件明細書に記載された実施例及び比較例の実験データ等を参酌すると、本件発明3は、上記相違点1’’’に係る要件を満たし、さらに相違点2’’’?6’’’に係る構成を備えることにより、「生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りが感じられる」バジルソースの製造方法を提供することができるものであり、甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3からは導き出せない製造工程を採用することにより顕著な効果を奏するものといえる。

オ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書(第21?22頁)において、「本件特許発明3の細断工程は、生のバジルの葉及び茎・・・を、食塩・・・及び植物油脂・・・と混合後、細断し、バジル細断物を得る工程である(構成要件H)。この点、甲第1号証では細断工程の前に加熱処理工程が行われているものの、構成要件A?C(当審注:それぞれ「生のバジルの葉及び茎40?60%(生換算)」、「食塩1?5%」及び「植物油脂35?60%」の発明特定事項に相当する。)を満たした状態で細断が行われているから、甲第1号証には構成要件Hが記載されているといえる」こと、及び甲第3号証については、「上記したように、甲第1号証には構成要件Hが記載され・・・当業者であれば容易になし得ることである」と主張している。
しかし、上記3.(5)ウ「相違点1’’’について」における検討を踏まえると、甲1の記載を参酌しても、相違点1’’’に係るブランチング処理を行わないこととすることに、当業者が容易に想到し得るとは認められない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

カ 本件発明3についてのまとめ
以上のことから、相違点1’’’については甲3発明c並びに甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たこととは認められない。
そして、本件発明3は、甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点2’’’?6’’’について検討するまでもなく、本件発明3は甲3発明c並びに甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(6)理由2(進歩性、甲第3号証を主引用例とする場合)のまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、いずれも甲3に記載された発明並びに甲3、甲1及び甲4の1?甲4の3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、特許異議申立書に記載された理由2(進歩性、甲第3号証を主引用例とする場合)の取消理由によって、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

4.理由3(サポート要件)について
(1)本件発明の課題について
本件明細書の[0002]には、「バジルの葉は、収穫直後は鮮やかな緑色とバジル特有の好ましい香りを有するものの、時間の経過とともに、退色し、香りも失われてしまう」こと、及び「バジルは熱にも弱く、高温で加熱殺菌等すると、変色や、風味の低下を起こす」ことが記載されている。また、[0003]には、「従来より収穫したバジルの色調や風味を保持するために様々な方法が検討されて」おり、「ある程度はバジルの退色、風味の低下を抑制できるものの、さらなる改善が求められていた」ことが記載されている。そして、上記の記載を受けて[0005]には、「そこで、本発明の目的は、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰めバジルソースを提供することを目的とする」ことが記載されている。
これらの記載及び本件発明1?3の発明特定事項等を参酌すると、本件発明1、2が解決しようとする課題は、「生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰めバジルソース」又は上記バジルソースを含有する食品を提供することにあり、本件発明3が解決しようとする課題は、「生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰めバジルソース」の製造方法を提供することにあるものと認められる。

(2)本件発明1について
本件発明1は、上記第2「本件発明について」に記載した特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項により特定される「容器詰め加熱済みバジルソース」の発明であり、「バジルの葉及び茎を合わせたバジル細断物」を含有すること、及び「加熱済み」であることが特定されている。

(3)本件明細書の記載について
ア 課題解決手段について
本件明細書の[0006]には、上記課題を解決するための手段に関し、「バジルの原料として、通常用いる葉だけでなく、あえて所定量の茎を併用し、さらに、バジル原料を食用油脂、食塩を含む他の原料とともに細断した後、従来よりも高い温度で加熱することにより、意外にも生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰めバジルソースが得られることを見出し」たことが記載されている。

イ バジルの原料について
上記課題解決手段の「バジルの原料」について、本件明細書の[0011]には、「本発明の容器詰めバジルソースに用いるバジルは、生のバジルであり、収穫後、乾燥、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものを指す」ことが記載されている。また、[0012]には、「前記バジルは、通常用いる葉だけでなく、あえて特定量の茎を併用している。バジルの葉及び茎の割合は、葉1部に対して茎が生換算で0.05?0.5部であるとよく、さらに0.1?0.3部であるとよく・・・葉に対する茎の割合が前記範囲であることにより、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰めバジルソースが得られやすい」ことが記載されている。

ウ 植物油脂及び食塩について
本件明細書の[0014]には、「バジルの良好な香りを感じやすいため、菜種油または大豆油を用いるとよい」こと、及び「食用油脂を配合することにより、細断した生バジルをソース状に仕上げると同時に、ソース中の生バジルが酸化して退色したり、香りが消失してしまうのを防止することができ・・・さらに30?60%であるとよい。食用油脂の配合量が前記範囲であることにより、バジルの褐変を抑制しやすい」ことが記載されている。
また、[0015]には、「食塩は、バジルソースに塩味を付けると同時に・・・バジルソース中の細断した生バジルが鮮やかな緑色に発色させるために配合する」こと、及び「食塩の配合量は・・・さらに1?5%であるとよりよい。食塩の配合量が前記範囲であることにより、生バジルが鮮やかな緑色を保持できるとともに、塩味が強くなりすぎず、様々な食品に利用しやすい」ことが記載されている。

エ 容器詰めバジルソースの色差について
上記課題における「生バジル本来の鮮やかな緑色」に関して、本件明細書の[0018]?[0019]には、「<容器詰めバジルソースの色差> 本発明の容器詰めバジルソースは、ビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、L値70未満の割合が3%以上15%以下であり、・・・a値0未満の割合が70%以上であり、・・・a値及びL値の両方の値が前記範囲であることにより、初めてバジル特有の鮮やかな緑色を呈するものとなる」ことが記載されている。

オ 容器詰めバジルソースの製造方法について
上記課題を解決する手段となる具体的な製造方法について、本件明細書の[0024]には、混合工程、細断工程及び加熱工程を含むことが記載され、[0025]には、混合工程が「上述のバジルと、食用油脂、食塩等の原料を混合する工程である」こと、[0026]には、細断工程が「前記混合工程で混合したバジル、食用油脂、食塩の混合物を、コミットロール等で細断し、バジル細断物を得る」工程であること、[0027]には、加熱工程が「前記細断工程で得たバジル細断物を、77?84℃で加熱する」工程であり、「前記温度で加熱するということは、バジル細断物の品温が前記範囲に加熱されていることを意味する」こと、「加熱温度が前記範囲以下である場合、酵素の失活が不十分となり、保存によりバジルが黒く変色する。また、加熱温度が前記範囲以上である場合、加熱によりバジルが褐変し、いずれの場合も生バジル本来の鮮やかな緑色が失われる」ことが記載されている。また、加熱時間については「特に限定していないが、バジル中の酵素を失活させるために、前記加熱温度に達温すればよく、また、加熱時間の上限としては、バジル特有の鮮やかな緑色を呈するバジルソースが得られやすいことから20分以下であるとよく、さらに10分以下であるとよい」ことが記載されている。

カ 実施例及び比較例について
本件明細書の[0030]?[0031]の実施例1には、バジルの原料として「収穫当日の生バジルの葉400gと生バジルの茎80g(葉1部対する茎の割合は0.2部)」を用いたこと、加熱工程において「中心品温80℃に達温」させたこと、得られた容器詰めバジルソースの色差をビジュアルアナライザーIRIS 型番VA300(アルファ・モス社製)で測定した結果、L値70以下の割合は7%であり、a値0以下の割合は84%であったことが記載されている。
また、[0032]?[0039]には、加熱温度を変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例2、3、比較例1及び2を調製し、加熱温度の影響について評価したところ、「加熱温度が77?84℃(実施例1乃至3)、特に80?83℃(実施例1及び3)、であることにより、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有するバジルソースが得られ」たことが記載されている。
また、[0040]?[0046]には、生バジルの葉と茎の割合を変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例4、5、比較例3及び4を調製し、バジル原料の影響について評価したところ、「バジルの葉1部に対する茎の割合が0.05?0.5部、特に0.1?0.3部であることにより、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有するバジルソースが得られ」たことが記載されている。
また、[0047]?[0050]には、原料の割合を変更した以外は実施例1と同様の方法で調製した実施例6、加熱時間を中心品温80℃で10分間に変更した以外は実施例1と同様の方法で調製した実施例7、生バジルとして生のバジルの葉500gのみを用いた以外は比較例1と同様の方法で調製した比較例5について評価したところ、「実施例6及び7の容器詰めバジルソースは実施例1と同様に生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りが感じられるものであったが、比較例5の容器詰めバジルソースは、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持されていなかった」ことが記載されている。

(4)本件発明1についての判断
ア バジルについて
本件明細書の[0011]には、「容器詰め加熱済みバジルソース」の原料として「生のバジルの葉及び茎」を用いることが記載されている。
ここで、[0002]?[0003]に記載されているように、生のバジルの葉そのものは「収穫直後は鮮やかな緑色とバジル特有の好ましい香りを有するものの、時間の経過とともに、退色し、香りも失われてしまう」ものであり、「熱にも弱く、高温で加熱殺菌等すると、変色や、風味の低下を起こす」という課題を有するものであるが、本件発明においては、[0012]に記載されているように、「通常用いる葉だけでなく、あえて特定量の茎を併用」するとともに、[0024]?[0027]に記載された混合工程、細断工程及び加熱工程を含む製造工程を経ることにより、「生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰めバジルソース」を提供するという課題が解決されるものと理解することができる。
そうすると、上記課題が解決される「容器詰め加熱済みバジルソース」には、「生」の状態のバジルの葉及び茎が含まれているのではなく、[0024]?[0027]の工程を経て細断及び加熱加工された状態のバジルの葉及び茎が含まれていると理解することができる。

イ バジルの葉と茎の割合について
本件明細書の[0012]には、「バジルの葉及び茎の割合は、葉1部に対して茎が生換算で・・・さらに0.1?0.3部であるとよく、・・・葉に対する茎の割合が前記範囲であることにより、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰めバジルソースが得られやすい」ことが記載されており、実際、[0030]?[0050]に記載された実施例においては、「生のバジルの葉及び茎」が原料として用いられており、葉1部に対する茎の割合は0.2(実施例1?3、6、7)、0.1(実施例4)又は0.3(実施例5)であるところ、いずれの実施例も、専門パネラーによるバジルソースの色調の評価は「○:鮮やかな緑色が維持されている」又は「△:やや変色が見られるが、問題のない程度である」であり、バジルソースの香りの評価は「○:生バジル特有の良好な香りが引き立っている」であったことが読み取れる。
そうすると、「容器詰め加熱済みバジルソース」の原料として、「生のバジルの葉及び茎」を「バジルの葉1部に対する茎の割合が0.1?0.3部(生換算)」の割合で用い、[0024]?[0027]の工程を経て製造された「容器詰め加熱済みバジルソース」は、「生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する」ものであり、上記課題が解決されるものと理解することができる。

ウ 食塩及び植物油脂について
本件明細書の[0014]及び[0015]には、植物油脂の配合量が30?60%、食塩の配合量が1?5%である場合に、原料である生バジルの退色や香りの消失を防止することができることが記載されており、実際、[0030]?[0050]に記載された実施例においては、菜種油の配合量は50%(実施例1?5、7)又は35%(実施例6)、食塩の配合量は2%(実施例1?5、7)又は5%(実施例6)であるところ、いずれの実施例も、専門パネラーによるバジルソースの色調の評価は「○:鮮やかな緑色が維持されている」又は「△:やや変色が見られるが、問題のない程度である」であり、バジルソースの香りの評価は「○:生バジル特有の良好な香りが引き立っている」であったことが読み取れる。
そうすると、「容器詰め加熱済みバジルソース」の原料として、上記「生のバジルの葉及び茎」とともに、食塩を1?5%、植物油脂を35%?60%用い、[0024]?[0027]の工程を経て製造された「容器詰め加熱済みバジルソース」は、生バジルの退色や香りの消失が防止され、上記課題が解決されるものと理解することができる。

エ 色差について
上記課題における「生バジル本来の鮮やかな緑色」は、[0018]?[0019]に記載されたように「ビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析」したときに「L値70未満の割合が3%以上15%以下」であり、「a値0未満の割合が70%以上」であり、「a値及びL値の両方の値が前記範囲であることにより、初めてバジル特有の鮮やかな緑色を呈する」と評価されるものであるが、実際、[0030]?[0050]に記載された実施例及び比較例の評価結果を参酌すると、当該「a値及びL値の両方の値が前記範囲であること」は、専門パネラーによるバジルソースの色調の評価で「○:鮮やかな緑色が維持されている」又は「△:やや変色が見られるが、問題のない程度である」と評価されることに対応している。
そうすると、原料のバジルが「生のバジルの葉及び茎」であり、さらに[0024]?[0027]に記載された工程を経て細断及び加熱加工された状態のバジルの葉及び茎が含まれるものとなった「容器詰め加熱済みバジルソース」においても、その原料の「本来の鮮やかな緑色」が維持されることにより、上記課題が解決されることを理解することができる。
また、[0030]?[0050]に記載された実施例及び比較例におけるバジルソースの香りの評価結果を参酌すると、上記の場合、風味の評価でも「○:生バジル特有の良好な香りが引き立っている」と評価されることが読み取れるから、上記課題における「(生バジル本来の)良好な香りを有する」という課題も解決されるものと理解することができる。

オ 本件発明1についての判断
以上のことを踏まえると、本件発明1に特定されるとおりの
「バジルの葉及び茎を合わせたバジル細断物を40?60%(生換算)、食塩を1?5%、植物油脂を35?60%含有する容器詰め加熱済みバジルソースであって、
前記バジルの葉1部に対する茎の割合が0.1?0.3部(生換算)であり、
該バジルソースをビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、
L値70以下の割合が3%以上15%以下であり、
a値0未満の割合が70%以上である、
容器詰め加熱済みバジルソース。」は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者が上記課題を解決し得ると認識できるものであるといえる。

カ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書(第22?25頁)において、(a)「本件特許明細書(甲第5号証)の[0011]に『本発明の容器詰めバジルソースに用いるバジルは、生のバジルであり、収穫後、乾燥、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものを指す。』と記載されている。しかしながら、本件特許発明1にはそのような限定はなされていない」こと、(b)?(c)「本件特許明細書(甲第5号証)の同[0027]には『加熱工程は、前記細断工程で得たバジル細断物を、77?84℃で加熱するものであり、・・・』と記載され、・・・温度条件は重要な要件であるにも関わらずその特定がなされていない」こと、(d)「本件特許発明1は・・・どのような製造工程を経たのかについては要件とされていない」ため「詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されて」いないこと、及び(e)「バジルの葉及び茎を合わせたバジル細断物を40?60%(生換算)」「40%以上以上48%未満の実施例は示されていない」ため「詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されて」いないことを主張している。
しかし、(a)について、上記4.(4)ア「バジルについて」に記載したとおり、本件発明1の「容器詰め加熱済みバジルソース」には、「生」の状態のバジルの葉及び茎が含まれているのではなく、[0024]?[0027]の工程を経て細断及び加熱加工された状態のバジルの葉及び茎が含まれていると理解することができるものであるから、本件発明1における「バジル」に「生」の限定がなされていないことは、[0011]の記載と矛盾することではない。
また、(b)?(d)について、上記4.(4)エ「色差について」等に記載したように、本件発明1に特定される成分を含有し、かつビジュアルアナライザーによる色差についての要件を満たす「容器詰め加熱済みバジルソース」は、実質的に「生のバジルの葉及び茎」等の原料を用い、さらに[0024]?[0027]に記載された工程を経て細断及び加熱加工された状態のバジルの葉及び茎が含まれるものとなった「容器詰め加熱済みバジルソース」に対応するものと理解することができるものであるから、本件発明1の発明特定事項を備えた「容器詰め加熱済みバジルソース」であれば、上記課題を解決し得るものと理解することができ、加熱温度の条件や製造工程が明示的に特定されていないとしても、上記課題が解決できない範囲が含まれることになるとはいえない。
さらに、(e)について、本件明細書の[0030]?[0050]には、バジルの葉及び茎を合わせたバジル細断物の割合(生換算)が48%である実施例1?5において上記課題が解決されることが記載され、[0014]及び[0015]には、他の原料である植物油脂及び食塩が、いずれも生バジルの退色や香りの消失を防止する作用をもたらすことが記載されているから、バジル細断物の割合を40?48%未満に減らし、代わりに植物油脂及び食塩の割合を増やした場合も、生バジルの退色や香りの消失を防止する作用がもたらされ、上記課題が解決されると理解することができ、本件発明1における「バジルの葉及び茎を合わせたバジル細断物を40?60%(生換算)」の範囲で上記課題が解決できないとはいえない。
よって、申立人の主張はいずれも採用することができない。

キ 本件発明1のまとめ
よって、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者が上記課題を解決し得ると認識できるものであるから、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

(5)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、本件発明1の加熱済みバジルソースを含有する食品の発明であるから、本件発明1と同様のことがいえる。
よって、本件発明2は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者が上記課題を解決し得ると認識できるものであるから、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

(6)本件発明3について
ア 本件発明3についての判断
上記4.(4)「本件発明1についての判断」における検討を踏まえると、「生のバジルの葉及び茎」等の原料を所定の割合で用い、さらに[0024]?[0027]に記載された混合工程、細断工程及び加熱加工を経る「容器詰め加熱済みバジルソースの製造方法」、すなわち、本件発明3に特定されるとおりの
「生のバジルの葉及び茎40?60%(生換算)を、食塩1?5%及び植物油脂35?60%と混合後、細断し、バジル細断物を得る工程と、
前記バジル細断物を78?83℃で加熱する工程を含む、
容器詰め加熱済みバジルソースの製造方法であって、
前記バジルの葉1部に対する茎の割合が0.1?0.3部(生換算)である、
容器詰め加熱済みバジルソースの製造方法。」によれば、製造された「容器詰め加熱済みバジルソース」は、専門パネラーによるバジルソースの色調の評価で「○:鮮やかな緑色が維持されている」又は「△:やや変色が見られるが、問題のない程度である」と評価され、かつ風味の評価でも「○:生バジル特有の良好な香りが引き立っている」と評価されるものとなると理解することができるから、上記「生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰めバジルソース」の製造方法を提供するという課題が解決されるといえる。
よって、本件発明3は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者が上記課題を解決し得ると認識できるものであるといえる。

イ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書(第25?27頁)において、(a)?(b)「本件特許明細書[0010]には、『<本件発明の特徴>・・・ビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、L値70未満の割合が3%以上15%以下であり、a値0未満の割合が70%以上である、特徴を有する。』と記載されている。そして、本件特許発明3はそのような容器詰めバジルソースを製造する方法なのであるから・・・要件がないということは詳細な説明に記載した範囲を超えるものである」こと、(c)「出願人(特許権者)は・・・意見書(甲第7号証)において・・・減縮補正を行った旨を主張している」が「本件特許発明3は・・・主張と明らかに矛盾しており、詳細な説明に記載した範囲を超えるものである」こと、及び(d)「実施例1?7では、所定の処理を行って加熱した後に、全て冷凍されている。・・・冷凍工程が含まれていない本件特許発明3は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである」ことを主張している。
しかし、(a)?(c)について、上記4.(4)エ「色差について」等に記載したように、[0030]?[0050]に記載された実施例及び比較例の評価結果を参酌すると、「ビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、L値70未満の割合が3%以上15%以下であり、a値0未満の割合が70%以上である」ことは、専門パネラーによるバジルソースの色調の評価で「○:鮮やかな緑色が維持されている」又は「△:やや変色が見られるが、問題のない程度である」と評価されることに対応しているといえる。
そして、本件発明3に特定されるとおりの「生のバジルの葉及び茎」等の原料を所定の割合で用い、さらに[0024]?[0027]に記載された混合工程、細断工程及び加熱加工を経る「容器詰め加熱済みバジルソースの製造方法」によって、専門パネラーによるバジルソースの色調の評価で「○:鮮やかな緑色が維持されている」又は「△:やや変色が見られるが、問題のない程度である」と評価される容器詰め加熱済みバジルソースを製造することができ、上記課題を解決できることを理解することができるから、明示的な減縮補正がなされていないとしても、実質的に、本件発明3は「ビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、L値70未満の割合が3%以上15%以下であり、a値0未満の割合が70%以上である」容器詰め加熱済みバジルソースの製造方法の発明であると解することができ、上記課題を解決できるものと理解することができる。
また、(d)について、本件明細書の[0027]には、加熱工程について「加熱温度が前記範囲以下である場合、酵素の失活が不十分となり、保存によりバジルが黒く変色する。また、加熱温度が前記範囲以上である場合、加熱によりバジルが褐変し、いずれの場合も生バジル本来の鮮やかな緑色が失われる」ことが記載されており、さらに、「加熱時間は特に限定していないが、バジル中の酵素を失活させるために、前記加熱温度に達温すればよく、また、加熱時間の上限としては、バジル特有の鮮やかな緑色を呈するバジルソースが得られやすいことから20分以下であるとよく、さらに10分以下であるとよい」ことも記載されているから、当該記載に接した当業者は、本件発明3に特定される「78?83℃」という温度範囲が「バジル中の酵素を失活させる」目的で設定されたものであることを理解することができ、加熱時間等は当該目的が達成される範囲内で適宜調節することができることも理解することができる。そして、そのような理解の下では、本件発明3に「冷凍工程」が含まれていないことをもって、上記課題が解決できないとまではいえないから、本件発明3が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとはいえない。
よって、申立人の主張はいずれも採用することができない。

ウ 本件発明3のまとめ
よって、本件発明3は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者が上記課題を解決し得ると認識できるものであるから、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

(7)理由3(サポート要件)のまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであり、それらの発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、特許異議申立書に記載された理由3(サポート要件)の取消理由によって、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

5.理由4(明確性)について
ア 申立理由について
特許異議申立書(第27?28頁)には、(a)「本件特許発明1・・・『生の』という限定はされていない。しかしながら、詳細な説明には『生のバジル』についてのみしか記載されておらず、・・・従って、発明の詳細な説明は請求項に係る発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない」こと、(b)「本件特許発明1・・・『加熱済み』とあるだけで、温度条件は記載されていない。しかしながら、本件特許明細書には、『・・・77?84℃で加熱・・・』と記載され、・・・従って、発明の詳細な説明は請求項に係る発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない」こと、(c)「本件特許発明1は・・・どのような製造工程を経たのかについては要件とされていない。しかしながら、詳細な説明には・・・所定の製造工程を経ることで初めて得ることができると記載され、・・・従って、発明の詳細な説明は請求項に係る発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない」こと、及び(d)「従って、本件特許発明1は特許請求の範囲が特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)に規定する要件を満たしていない」ことが申立ての具体的理由として記載されており、本件発明2についても同様の申立てがなされているものと解される。

イ 本件発明1及び2についての判断
しかし、(a)?(c)について、上記4.(4)カ「申立人の主張について」における検討を踏まえると、本件発明1において、「生の」という特定、加熱工程の温度条件の特定及び製造工程の特定が含まれなくとも、当業者は本件明細書の発明の詳細な説明に基づいて発明を実施することができると理解することができるから、本件明細書の発明の詳細な説明が本件発明1について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないということはできないし、(d)について、本件発明1が明確でないということもできない。
本件発明1を引用し、本件発明1の加熱済みバジルソースを含有する食品の発明であるから、本件発明1と同様のことがいえる。

ウ 本件発明1及び2のまとめ
よって、申立ての理由はいずれも採用することができず、本件発明1及び2は明確であり、いずれも特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

エ 理由4(明確性)のまとめ
以上のとおり、本件発明1及び2は、いずれも特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであり、それらの発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、特許異議申立書に記載された理由4(明確性)の取消理由によって、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-06-30 
出願番号 特願2017-231129(P2017-231129)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松田 芳子  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 齊藤 真由美
天野 宏樹
登録日 2019-05-24 
登録番号 特許第6530803号(P6530803)
権利者 キユーピー株式会社 くにみ農産加工有限会社
発明の名称 容器詰めバジルソース及びその製造方法  
代理人 小島 一真  
代理人 砂山 麗  
代理人 柏 延之  
代理人 中村 行孝  
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