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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02K
管理番号 1364032
異議申立番号 異議2019-701020  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-12 
確定日 2020-07-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6585826号発明「回転電機の固定子及びそれを用いた回転電機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6585826号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第6585826号の請求項1-8に係る特許についての出願は、2017年1月19日(優先権主張 平成28年3月31日)を国際出願日とする出願であって、令和元年9月13日にその特許権の設定登録がなされ、令和元年10月2日に特許掲載公報が発行された。
これに対して、特許異議申立人増淵貞夫より、令和元年12月12日に、本件請求項1-8に係る発明の特許について特許異議の申立て(以下、区別のために「01申立て」という。)がなされ、特許異議申立人増淵貞夫より、令和2年4月1日に、本件請求項1-8に係る発明の特許について特許異議の申立て(以下、区別のために「02申立て」という。)がなされたものである。


2.本件発明
特許第6585826号の請求項1-8の特許に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1-8に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ステータコアの一方側に配置されかつスロットに対して同一のスロットピッチで接続される接続側巻線部と、前記ステータコアの他方側に配置されかつ前記スロットに対して複数種のスロットピッチで挿入される反接続側巻線部と、を有し、互いに接続されて3相の巻線を形成する複数のセグメントコイルを備え、
前記接続側巻線部において、
前記複数のセグメントコイル同士を接続する複数の端末部が設けられる第1接続群と、
前記第1接続群とは異なる層間を接続しかつ複数の端末部が設けられる第2接続群と、
各相の口出し線と、を有し、
n=1以上であって、
前記第1接続群は、2n-1層と2n層のセグメント同士の前記端末部を接続し、
前記第2接続群は、2n層と2n+1層のセグメント同士の前記端末部を接続する回転電機の固定子。
【請求項2】
請求項1に記載された回転電機の固定子であって、
前記接続側巻線部は、前記スロットに対して前記ステータコアの径方向の前記セグメントコイル各層ごとに円周方向に同一のスロットピッチで接続される回転電機の固定子。
【請求項3】
請求項1ないし2に記載されたいずれかの回転電機の固定子であって、
前記接続側巻線部において、互いに接続される各相の中性点をさらに有し、
前記第1接続群の複数の前記端末部は、径方向に沿って並べられ、
前記口出し線、前記中性点および前記第2接続群の複数の前記端末部は、径方向に沿って並べられる回転電機の固定子。
【請求項4】
請求項3に記載された回転電機の固定子であって、
前記口出し線は、径方向の最外周側または最内周側の一方に配置され、
前記中性点は、前記最外周側または前記最内周側の他方に配置される回転電機の固定子。
【請求項5】
請求項4に記載された回転電機の固定子であって、
3相の前記口出し線および前記中性点は、周方向に沿って、前記最外周側または前記最内周側に交互に配置される回転電機の固定子。
【請求項6】
請求項5に記載された回転電機の固定子であって、
3相の前記口出し線および前記中性点を2組有し、
前記2組の前記口出し線および前記中性点は、径方向に沿って並べられた前記第1接続群の複数の前記端末部を間に挟んで、周方向に並べて配置される回転電機の固定子。
【請求項7】
請求項3ないし6に記載されたいずれかの回転電機の固定子であって、
径方向に沿って並べられた前記第1接続群の複数の前記端末部と、径方向に沿って並べられた前記口出し線、前記中性点および前記第2接続群の複数の前記端末部とは、周方向に沿って交互に配置される回転電機の固定子。
【請求項8】
請求項1ないし7にいずれかの回転電機の固定子を備える回転電機。」


3.特許異議申立理由の概要
特許異議申立人増淵貞夫は、01申立てにおいて、本件請求項1-8に係る特許を取り消すべきものとする旨の特許異議を申立て、証拠として、米国特許出願公開第2003/0214190号明細書(以下、「甲第1号証」という。)、特開2015-84635号公報(以下、「甲第2号証」という。)、特開2004-23807号公報(以下、「甲第3号証」という。)、特開2003-134711号公報(以下、「甲第4号証」という。)を提出し、本件発明1、2、8は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の事項を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の事項を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に周知技術(甲第2号証及び甲第3号証)を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたもの(以下、本件発明1、2、8に係る上記主張を「理由1A」という。)であり、本件発明3?7は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の事項及び周知技術(甲第4号証)を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の事項及び周知技術(甲第4号証)を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に周知技術(甲第2号証、第3号証及び甲第4号証)を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許を取り消すべきものと主張している。
また、特許異議申立人増淵貞夫は、02申立てにおいて、本件請求項1-8に係る特許を取り消すべきものとする旨の特許異議を申立て、証拠として、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、特開2000-69729号公報(以下、「甲第5号証」という。)、特開2013-121183号公報(以下、「甲第6号証」という。)、米国特許出願公開第2012/0104885号明細書(以下、「甲第7号証」という。)、特開2014-113047号公報(以下、「甲第8号証」という。)を提出し、本件発明1、2、8は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の事項を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の事項を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に周知技術(甲第2号証及び甲第3号証)を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたもの(以下、本件発明1、2、8に係る上記主張を「理由1B」という。)であり、本件発明3、4は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の事項及び周知技術(甲第4号証又は甲第4?6号証)を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の事項及び周知技術(甲第4号証又は甲第4?6号証)を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に周知技術(甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証又は甲第2号証、甲第3号証及び甲第4?6号証)を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明5、6は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の事項及び周知技術(甲第4号証又は甲第4?8号証)を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の事項及び周知技術(甲第4号証又は甲第4?8号証)を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に周知技術(甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証又は甲第2号証、甲第3号証及び甲第4?8号証)を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の事項及び周知技術(甲第4号証又は甲第4?7号証)を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の事項及び周知技術(甲第4号証又は甲第4?7号証)を適用することにより、又は、甲第1号証に記載された発明に周知技術(甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証又は甲第2号証、甲第3号証及び甲第4?7号証)を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許を取り消すべきものと主張している。


4.理由1A、1Bについて
理由1A、1Bは、特許異議申立ての対象となる請求項が同じで、示された証拠が甲第1?3号証と同じで、容易性を主張する論理が同じであるため、一つの理由(以下、「理由1」という。)として扱う。
(1)甲第1?3号証
甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(訳は申立人提示のもの)。
a「This invention addresses the field of manufacture and assembly of armatures for electric machines andparticularly hairpin wound armatures for mid- to small-sized electric machines.」([0003])
(本発明は、電気機器用の電機子、特に中小型電気機器用のヘアピン巻線電機子の製造及び組立の分野に関する。)
b「Hairpin wound statorsare known in the art.FIG.1 shows an exemplary perspective view of a hairpinwound stator. The stator includes a stator core 12 having a number ofconductors or “hairpins” 14 inserted into the slots of the stator core. Asshown in FIG. 2, a hairpin is a segment of wire that is used to form part of awinding. The wire segment is bent into a “U” shape to form two legs 16 and anend-turn 18 on the “hairpin”. The wire segment typically has a rectangularcross-section. The legs of the hairpins are inserted into the slots of thestator with each leg of the hairpin in a different stator slot such that theend-turn of the hairpin extends over several stator slots (e.g., each hairpinmay extend three stator slots). Each hairpin inserted into a stator slot isstaggered or “interleaved” with respect to adjacent hairpins. When a hairpin isfully inserted into the slots of the stator, the end turn 18 will extend fromone end of the stator, and the legs will extend from the opposite end 19 of thestator. Any given stator slot will include a number of hairpin legs (e.g., 4),and each hairpin leg is referred to as a layer within the stator slot.Insulation 15 is included on the portion of each leg situated within a statorslot to prevent electrical connection between the legs in different layers ofthe same stator slot.」([0005])
(ヘアピン巻きの固定子は、当該技術分野で知られている。図1は、ヘアピン巻きの固定子の例を示す斜視図である。固定子は、固定子コアのスロットに挿入された多数の導体すなわち「ヘアピン」14を有する固定子コア12を含む。図2に示すように、ヘアピンは、巻線の一部を形成するために使用されるワイヤのセグメントである。ワイヤセグメントは、「U」字形に曲げられて、「ヘアピン」上に2つの脚部16とエンドターン18とを形成する。ワイヤセグメントは、典型的には、長方形の断面を有する。ヘアピンの脚部は、ヘアピンの各脚部が異なる固定子スロット内に入り、ヘアピンのエンドターンがいくつかの固定子スロット上に延在するように、固定子のスロット内に挿入される(例えば、各ヘアピンは3つの固定子スロットに延在することができる)。ステータスロットに挿入された各ヘアピンは、隣接するヘアピンに対して互い違いに配置されているか、または「インターリーブ」されている。ヘアピンが固定子のスロット内に完全に挿入されると、エンドターン18は固定子の一端から延び出し、脚部は固定子の反対側の端19から延び出す。任意の所与の固定子スロットは、いくつかのヘアピン脚部(例えば、4つ)を含み、各ヘアピン脚部は、固定子スロット内の層と呼ばれる。同じ固定子スロットの異なる層の脚部間の電気的接続を防止するために、各脚部の固定子スロット内に位置する部分上に絶縁体15を備えている。)
c「Once all hairpins areinserted into the slots of the stator, the ends of the legs extending from theend 17 of the stator are bent. To reduce winding height, the legs onalternating layers are bent in opposite directions (e.g., the legs on layer oneare bent counter-clockwise in the same direction and the legs on layer two arebent in the opposite direction, clockwise). The number of stator slots thateach leg is bent is determined upon the design of the electric machine (e.g.,each leg may be bent three slots so that the hairpin extends a total of twelveslots from end-to-end if the end turn extends six slots). FIG. 3 shows a close-up view of a typical arrangement of the hairpin legs once the legs are inserted intothe slots of a stator and bent the desired amount. As shown in FIG. 3, the legsare bent such that each leg terminates adjacent to another leg. This allows anelectrical connection be easily established between each hairpin leg. Inparticular, once all hairpin legs are inserted into the stator and bent, anautomated connection device can be used to weld legs together. For example,adjacent legs 21 and 22 may be welded together and adjacent legs 23 and 24 maybe welded together. Similar welds would be made for other adjacent legs aroundthe stator. The automatic connection device may also provide insulation thatcovers the ends of the legs to prevent electrical shorts between two nearbylegs that are not intended to be connected. The term “adjacent leg ends” isused herein to refer to two hairpin leg ends from different hairpins that areimmediately adjacent to one another (such as leg ends 21 and 22 and 23 and 24of FIG. 3) when the legs are bent into the proper arrangement in the statorcore. Non-adjacent leg ends are any leg ends that are not adjacent leg ends(e.g., leg ends diagonally opposed to each other such as leg ends 21 and 26 of FIG. 3, and leg ends removedby several positions such as leg ends 21 and 27 of FIG. 3). This portion of thestator winding extending above the stator core forms the winding head 28. Theterm “coil end” is also used herein to refer to the end of a conductor thatrequires connection to another conductor in order to form a completed winding.」([0006])
(すべてのヘアピンが固定子のスロットに挿入されると、固定子の端部17から延び出す脚部の端部が曲げられる。巻線の高さを減らすために、脚部は、層毎に交互に反対方向に曲げられる(例えば、第1層の脚部は、反時計回りの同じ方向に曲げられ、第2層の脚部は、反対方向、時計回りに曲げられる)。各脚部が曲げられる固定子スロットの数は、電気機器の設計に基づいて決定される(例えば、各脚部は、3スロット分曲げて、エンドターンが6つのスロットに延在する場合にヘアピンが端部から端部まで合計12個のスロットに延在するようにしてもよい)。図3は、脚部が固定子のスロットに挿入され、所望の量だけ曲げられた状態の、ヘアピン脚部の典型的な配置の拡大図を示す。図3に示すように、脚部は、各脚部の末端が別の脚部に隣接するように曲げられる。これにより、各ヘアピン脚部間の電気的接続を容易に確立することができる。特に、全てのヘアピン脚部が固定子に挿入され、曲げられると、自動接続装置を用いて脚部を互いに溶接することができる。例えば、隣接する脚部21と22とを互いに溶接し、隣接する脚部23と24とを互いに溶接することができる。同様の溶接が、固定子の周上の他の隣接する脚に対して行われる。また、自動接続装置は、接続されることを意図されていない2つの近接する脚部間の電気的短絡を防止するために、脚部の端部を覆う絶縁体を供給してもよい。用語「隣接する脚端部」は、本明細書では、脚部が固定子コア内で適切な配置に曲げられたときに、異なるヘアピンから延びてすぐ隣に位置する2つのヘアピン脚端部(例えば、図3の脚端部21、22、23、24)を指すために使用する。非隣接の脚端部は、隣接する脚端部ではない任意の脚端部である(例えば、図3の脚端部21および26のような互いに対角線上で対向する脚端部、および図3の脚端部21および27のようないくつかの配置位置によって隔てられた脚端部)。ステータコアの上方に延在するステータ巻線のこの部分は、巻線頭部28を形成する。用語「コイル端」は、本明細書では、完全な巻線を形成するために別の導体へ接続されることを要する導体の端部を指すためにも用いる。)
d「An exemplary hairpinwinding arrangement that may be used for a typical sixty slot stator is shownin FIGS.4-6. FIG.4 shows an exemplary winding arrangement for phase A. FIG.5 showsan exemplary winding arrangement for phase B. FIG.6 shows an exemplary windingarrangement for phase C. The A, B, and C phase windings are connected in atypical Y-connection. As shown in FIGS.4-6, a series of special windingconnections are involved with the hairpins found in stator slots 54-60 and 1-6.In particular, terminal connections, ground connections, jumper connections,and different non-standard slot-pitch lengths must be made for the hairpins inthese stator slots. All other hairpins are simply joined to an adjacent hairpin(i.e., the ends of the legs from layer 1 are connected to the ends of adjacentlegs from layer 2 and the ends of the legs from layer 3 are connected to theends of adjacent legs from layer 4).」([0007])
(図4?図6に、典型的な60スロット固定子に使用され得るヘアピン巻線の構成例を示す。図4は、A相用の巻線の構成例を示す。図5は、B相用の巻線の構成例を示す。図6は、C相用の巻線の構成例を示す。A相用、B相用及びC相用の巻線は、典型的なY接続で接続されている。図4?6に示すように、一連の特殊な巻線接続が、固定子スロット54?60および1?6に見られるヘアピンに含まれる。特に、端子接続、接地接続、ジャンパ接続、および異なる非標準スロットピッチ長さは、これらの固定子スロット内のヘアピンに対して行われなければならない。他のすべてのヘアピンは、単に、隣接するヘアピンに接合される(すなわち、第1層からの脚部の端部は、第2層からの隣接する脚部の端部に接続され、第3層からの脚部の端部は、第4層からの隣接する脚部の端部に接続される)。)
e「While connection of adjacent leg ends is easily accomplished with an automatic connection machine,the special non-standard winding connections described above are difficult toaccomplish as they require tedious manual connection using jumpers from one legend to another non-adjacent leg end. This labor intensive process when making the connections to match the winding schematic increases manufacturing costs for the electric machine.」([0008])
(隣接する脚端部の接続は自動接続機で容易に実現されるが、上述の特殊な非標準巻線接続は、一方の脚端部から他方の隣接しない脚端部へのジャンパを使用する面倒な手作業での接続を必要とするので、自動接続機での実現が困難である。この労働集約的なプロセスは、巻線配線に適合するように接続を作るとき、電気機器の製造コストを増加させる。)
f「FIG. 7 shows an example of the required non-standard connections for the winding schematic of FIGS.4-6. The required jumper and terminal connections shown in FIGS. 4-6 (e.g., F_(B4),S_(A2), etc.) are also noted. FIG. 7 shows a top view of adjacent legends for the hairpins inserted into stator slots 53 to 7 for layers 1 and 3 andthe hairpins inserted into stator slots 59 to 13 for layers 2 and 4. Each boxin FIG. 7 represents a leg end, and the number in the box represents the statorslot number where the leg is inserted in the stator. Note that the adjacent legends are offset by six slots because layers 1 and 3 were bent three slotscounterclockwise and layers 2 and 4 were bent three slots clockwise. Tocomplete the winding connections for these slots as shown in the windingschematic of FIGS. 4-6, the connections indicated by solid lines between theleg ends will need to be made. While some of these connections could be easilymade because they are adjacent leg ends (e.g., leg ends 1 and 55 in layers 2and 3), many other connections are difficult to make because they are not adjacent leg ends (e.g., leg ends 7 and 2 in layers 4 and 3). These leg endsrequire labor intensive manual connections that take a good deal of time andsignificantly increase manufacturing costs. Accordingly it would beadvantageous to provide a fast, efficient, and simple apparatus and related method for electrically connecting the non-standard connections required withhairpin wound stators.」([0009])
(図7に、図4?図6の巻線配線に必要な非標準接続の一例を示す。図4?6に示される、必要なジャンパおよび端子接続(例えば、F_(B4)、S_(A2)など)も注記している。図7は、第1層および第3層を形成すべく固定子スロット53?7に挿入されたヘアピンによる、隣接する脚端部および、第2層および第4層を形成すべく固定子スロット59?13に挿入されたヘアピンによる、隣接する脚端部の上面図である。図7の各ボックスは脚端部を表し、ボックス内の番号は、脚が固定子に挿入される位置の固定子スロットの番号を表す。第1層および第3層は反時計回りに3スロット分曲げられ、第2層および第4層は時計回りに3スロット分曲げられているので、隣接する脚端は6スロット分ずれた位置にあることに留意されたい。図4?6の巻線配線図に示すように、これらのスロットの巻線接続を完成させるためには、脚端部間の実線で示される接続を行う必要がある。これらの接続のいくつかは、それらが隣接する脚端部(例えば、第2層の脚端部1と第3層の脚端部55)であるために容易に形成され得るが、多くの他の接続は、それらが隣接する脚端部ではない(例えば、第4層の脚端部7と第3層の脚端部2)ために、形成することが困難である。これらの脚端部には、多大な時間を要し、製造コストを著しく増加させる労働集約的な手作業での接続が必要である。したがって、ヘアピン巻き固定子に必要な非標準接続を電気的に接続するための、迅速で、効率的で、かつ簡単な装置および関連する方法を提供することが有用である。)
g「As discussed above, thepresent technology of “winding” stators involves forming “U-shaped” or “hairpin”shaped conductors, nesting the hairpins, inserting the hairpins into the statorcore, and twisting the leg ends of the hairpins to the desired pitch or span toset up connections for the coil windings. To complete the winding of thestator, the leg ends of the hairpins (i.e., the “coil ends”) are connected toeach other in order to match the desired winding schematic. Unfortunately, notall connections are made with the same pitch or span. For example, when manufacturing stators according to a certain winding schematic with a six-slotpitch/span, the hairpin legs are twisted three slots clockwise and three slotscounter-clockwise, giving an overall pitch/span of six. Nevertheless, to matchthe winding schematic some of the hairpins still need to be connected as afive-slot pitch/span. Using current technology, wires are pulled out of the topof the winding, or winding head, are bent into place and bonded by variousmeans (soldering, welding, or crimping). This can lead to a very complicatedand labor-intensive process.」([0010])
(上述したように、「巻線」固定子の本技術は、「U字形」又は「ヘアピン」形状の導体を形成し、ヘアピンを入れ子にし、ヘアピンを固定子コアに挿入し、ヘアピンの脚端部を所望のピッチ又はスパンになるようにねじってコイル巻線のための接続ができるようにすることを含む。固定子の巻線を完成させるために、ヘアピンの脚端部(すなわち、「コイル端部」)は、所望の巻線配線に一致するように互いに接続される。残念ながら、すべての接続が同じピッチまたはスパンで行われるわけではない。例えば、6スロットのピッチ/スパンの特定の巻線配線に従って固定子を製造する場合、ヘアピン脚部は、3スロット分時計回りに、3スロット分反時計回りにねじることにより、全体のピッチ/スパンを6にする。それにもかかわらず、巻線配線と整合させるために、いくつかのヘアピンは、5スロットピッチ/スパンで接続される必要がある。現在の技術を用いて、ワイヤは、巻線または巻線頭部の頂部から引き出され、所定の位置に曲げられ、種々の手段(はんだ付け、溶接、または圧着)によって接合される。これは、非常に複雑で労働集約的なプロセスが発生する原因となり得る。)
h「In one embodiment of the invention, the connection device will not overhang the inner diameter of thestator lamination. However, it is possible to produce an embodiment where theconnection device overhangs the inner diameter of the stator lamination. In this situation, the designer of the connection device and the partymanufacturing the stator must be sure to discuss the assembly of the completeelectrical machine to avoid damage to parts during assembly. To avoid damage to an overhanging connection device, the completed stator should be placed in themotor housing so the rotor can still be positioned in the stator. For example,if the connection device is on end A and of the stator and the rotor enters from end B, then it is possible for the connection device to overhang thestator lamination without damage during assembly.」([0041])
(本発明の一実施形態では、接続装置は、固定子積層体の内径に張り出さない。しかしながら、接続装置が固定子積層体の内径に張り出している実施形態を製造することが可能である。この場合、接続装置の設計者および固定子の製造者は、組み立て中の部品の損傷を避けるために、電気機器の完成品の組み立てを必ず議論しなければならない。張り出している接続装置の損傷を避けるために、完成した固定子は、回転子が固定子内に依然として配置できるように、モータハウジング内に配置する必要がある。例えば、接続装置が固定子の端部A上にあり、回転子が端部Bから入る場合、接続装置が固定子積層を張り出しても、組み立て中に損傷しないようにできる。)

上記記載及び図1を参照すると、固定子コア12の一方側の端19から延び出すヘアピン14の脚端部により形成される、巻線頭部28を含む脚部16側巻線部が配置され、固定子コア12の他方側に、ヘアピン14のエンドターン18により形成される巻線部が配置されている。
上記記載及び図2を参照すると、ヘアピン14は、2本の脚部16及びそれらを接続するエンドターン18を備えている。
上記記載及び図3を参照すると、脚端部21?24を含むヘアピン14の脚端部により巻線頭部28が形成され、脚端部21?24の間の接続部は固定子コア12の径方向に沿って並んでいる。
上記記載及び図4-6を参照すると、ヘアピン14の脚端部により形成される巻線頭部28側に、A相、B相、C相の各相における口出し線となる端子(S_(A2),S_(B1),S_(C1))と、Y接続の中性点(S_(A1),S_(B2),S_(C2))とが設けられ、多くの脚端部は、第1層からの脚端部が第2層からの隣接する脚端部に接続され、第3層からの脚端部が第4層からの隣接する脚端部に接続される第1接続群を形成し、6スロットピッチで接続されている。
上記記載及び図7を参照すると、少なくとも1番スロットの第2層に挿入された脚部の脚端部と、55番スロットの第3層に挿入された脚部の脚端部とが、隣接した位置にあり接続され、3番スロットの第2層に挿入された脚部と57番スロットの第3層に挿入された脚部、5番スロットの第2層に挿入された脚部と59番スロットの第3層に挿入された脚部、7番スロットの第2層に挿入された脚部と1番スロットの第3層に挿入された脚部、9番スロットの第2層に挿入された脚部と3番スロットの第3層に挿入された脚部、11番スロットの第2層に挿入された脚部と5番スロットの第3層に挿入された脚部との間も、同様に接続されているから、第1接続群とは異なる層間を接続しかつ複数の脚端部が設けられる第2接続群が設けられ、且つ、A相、B相、C相の各相における口出し線となる端子(S_(A2),S_(B1),S_(C1))と、Y接続の中性点(S_(A1),S_(B2),S_(C2))とは、それぞれ最も内側の第4層に配置されている。

上記記載事項からみて、甲第1号証には、
「固定子コアの一方側に配置される脚部側巻線部と、前記固定子コアの他方側に配置されるエンドターンにより形成される巻線部と、を有し、互いに接続されてY接続を形成する複数のヘアピンを備え、
前記脚部側巻線部において、
前記複数のヘアピン同士を接続する複数の脚端部が設けられる第1接続群と、
前記第1接続群とは異なるスロット層間を接続しかつ複数の脚端部が設けられる第2接続群と、
各相の口出し線と、を有し、
スロット第1層からの脚端部がスロット第2層からの隣接する前記脚端部に接続され、スロット第3層からの脚端部がスロット第4層からの隣接する前記脚端部に接続される第1接続群を形成し
スロット第2層の前記脚端部がスロット第3層の前記脚端部に接続される第2接続群を形成するモータ固定子。」
との発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

甲第2号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
i「〔実施形態1〕
本実施形態に係る固定子20が搭載された回転電機1は、車両用電動機として使用されるものである。この回転電機1は、図1に示すように、有底筒状の一対のハウジング部材10a,10bが開口部同士で接合されてなるハウジング10と、ハウジング10に軸受け11,12を介して回転自在に支承される回転軸13に固定された回転子14と、ハウジング10内の回転子14を包囲する位置でハウジング10に固定された固定子20と、を備えている。」(【0018】)
j「固定子コア30は、円環状の複数の電磁鋼板を固定子コア30の軸方向に積層して形成された一体型のものである。この固定子コア30は、円環状のバックコア33と、バックコア33から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース34とからなり、隣り合うティース34の間にスロット31が形成されている。固定子コア30に形成されたスロット31の数は、回転子14の磁極数(8磁極)に対し、固定子巻線40の一相あたり2個の割合で形成されている。本実施形態では、8×3×2=48より、スロット数は48個とされている。即ち、48個のスロット31は、周方向に順番に繰り返し2個ずつ配置されたU相スロット、V相スロット及びW相スロットよりなる。
固定子巻線40は、図6に示すように、それぞれ4本の並列巻線U1?U4,V1?V4,W1?W4が並列接続された各相巻線41U,41V,41Wの巻線端が星型結線で結線されている。この固定子巻線40は、U字形状をなす複数の導体セグメント50を固定子コア30の軸方向一端側からスロット31に挿入して、軸方向他端側に延出した一対の開放端部を互いに周方向反対側へ捻った後、所定の捻り部の端末同士が溶接により接合されて所定のパターンで電気的に接続されている。この導体セグメント50は、断面が長方形の導体と、導体の外周面を被覆する絶縁被膜とからなる平角線をU字形状に折り曲げて形成されている。
U字形状の導体セグメント50は、図4に示すように、互いに平行な一対の直線部51,51と、一対の直線部51,51の一端同士を連結するターン部52とからなる。ターン部52の中央部には、固定子コア30の端面30aに沿って延びる頭頂段部53が設けられており、頭頂段部53の両側には、固定子コア30の端面30aに対して所定の角度で傾斜した傾斜部54が設けられている。なお、符号24は、固定子コア30と固定子巻線40との間を電気絶縁するインシュレータである。
図4には、周方向に隣接する同一相の2個のスロット31A,31Bに挿入配置される2個で一組の導体セグメント50A,50Bが示されている。この場合、2個の導体セグメント50A,50Bは、それらの一対の直線部51,51が、同一のスロット31ではなく、隣接した2個のスロット31A,31Bに別々に軸方向一端側(図4の上側)から挿入される。即ち、図4の右側にある2個の導体セグメント50A,50Bにおいて、一方の導体セグメント50Aは、一方の直線部51が一のスロット31Aの最外層(第6層)に挿入され、他方の直線部51が固定子コア30の反時計回り方向に1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の第5層に挿入される。
そして、他方の導体セグメント50Bは、一方の直線部51がスロット31Aと隣接したスロット31Bの最外層(第6層)に挿入され、他方の直線部51が固定子コア30の反時計回り方向に1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の第5層に挿入される。即ち、2個の導体セグメント50A,50Bは、周方向に1スロットピッチずれた状態に配置される。このようにして、全スロット31に対して偶数本の導体セグメント50の直線部51が挿入配置される。本実施形態の場合には、各スロット31内に、合計6本の直線部51が径方向1列に整列した状態で収容されている。
スロット31から軸方向他端側(図4の下側)へ延出した一対の直線部51,51の開放端部は、固定子コア30の端面30aに対して所定の角度をもって斜めに斜行するように互いに周方向反対側へ捻られて、略半磁極ピッチ分の長さの捻り部55(図2参照)が形成されている。そして、固定子コア30の軸方向他端側において、導体セグメント50の所定の捻り部55の先端部同士が例えば溶接により接合されて所定のパターンで電気的に接続される。即ち、所定の導体セグメント50が直列に接続されて、各スロット31内に収容された第m層(mは1以上の自然数)と第m+1層のスロット収容部(直線部51)同士が電気的に接続されることにより、固定子コア30のスロット31に沿って周方向に波巻きにて巻回された3本の相巻線41U,41V,41Wよりなる固定子巻線40が形成される。」(【0021】-【0026】)
k「このようにして固定子コア30に巻装された固定子巻線40の軸方向一端側には、固定子コア30の軸方向一端側の端面30aからスロット31の外部に突出した複数のターン部により全体としてリング状の第1コイルエンド部41(図2参照)が形成されている。また、固定子巻線40の軸方向他端側には、固定子コア30の軸方向他端側の端面からスロット31の外部に突出した複数の捻り部55及び端末接合部56により全体としてリング状の第2コイルエンド部42(図2参照)が形成されている。
以下、固定子巻線40の巻線仕様について、図7A、図7B、図8?図10を参照して説明する。なお、固定子巻線40を構成する三相の相巻線41U,41V,41Wは、電気的位相が異なるだけで巻線仕様が同じであるため、それらの代表としてU相巻線41Uの巻線仕様を説明する。
なお、図8において、周方向に隣接して2個ずつ配置されたU相スロットA,Bは、それぞれ6スロットごとに配置されている。図8の上方のU相スロットA,Bは、図7Aに示される2番スロット(UA)及び3番スロット(UB)である。各U相スロットA,Bには、U相巻線41Uが径方向1列に偶数本(本実施形態では6本)ずつ収容されている(図5参照)。また、U相スロットのA-A、A-B、B-Bを結ぶ実線は、導体セグメントのターン部側を示し、U相スロットのA-A、A-B、B-Bを結ぶ破線は、導体セグメントの捻り側(溶接側)を示す。
U相巻線41Uの並列巻線U3は、図8に示すように、始端側のスロット収容部が2番スロット(UA)の第6層(最外層)に収容され、図8の(1)の位置から内周側に向かって時計回り方向に周回を開始する。そして、始端側から2番目以降のスロット収容部は、8番スロット(UA)の第5層、14番スロット(UA)の第6層、20番スロット(UA)の第5層、27番スロット(UB)の第6層、33番スロット(UB)の第5層、39番スロット(UB)の第6層、45番スロット(UB)の第5層に順番に収容されて1周する。このとき、20番スロット(UA)の第5層から27番スロット(UB)の第6層へ移る際には、U相スロットAから7スロット飛び越えてU相スロットBにスイッチしている。これにより、U相スロットA,Bの第6層及び第5層には、図10に示すように、並列巻線U3のスロット収容部がU相スロットA,Bの両方に2本ずつ均等に配置されている。
続いて、45番スロット(UB)の第5層から6スロット離れた3番スロット(UB)の第4層に渡り線57で層渡りして2周目の周回を開始する。この場合、渡り線57は、固定子コア30への巻き始め側(外周側)を基準として、各U相スロットA,B内の第E層(E=2で第2層(第5層))と第E+1層(E=2で第3層(第4層))との間を層渡りしている。
そして、2周目の2番目以降のスロット収容部は、9番スロット(UB)の第3層、15番スロット(UB)の第4層、21番スロット(UB)の第3層、26番スロット(UA)の第4層、32番スロット(UA)の第3層、38番スロット(UA)の第4層、44番スロット(UA)の第3層に順番に収容されて1周する。このとき、21番スロット(UB)の第3層から26番スロット(UA)の第4層へ移る際には、U相スロットBから5スロット飛び越えてU相スロットAにスイッチしている。これにより、U相スロットA,Bの第4層及び第3層には、図10に示すように、並列巻線U3のスロット収容部がU相スロットA,Bの両方に2本ずつ均等に配置されている。
続いて、44番スロット(UA)の第3層から6スロット離れた2番スロット(UA)の第2層に渡り線57で層渡りして3周目の周回を開始する。この場合、渡り線57は、固定子コア30への巻き始め側(外周側)を基準として、各U相スロットA,B内の第E層(E=4で第4層(第3層))と第E+1層(E=4で第5層(第2層))との間を層渡りしている。
そして、3周目の2番目以降のスロット収容部は、8番スロット(UA)の第1層(最内層)、14番スロット(UA)の第2層、20番スロット(UA)の第1層、27番スロット(UB)の第2層、33番スロット(UB)の第1層、39番スロット(UB)の第2層、45番スロット(UB)の第1層に順番に収容されて1周し、終端側が引き出される。このとき、20番スロット(UA)の第1層から27番スロット(UB)の第2層へ移る際には、U相スロットAから7スロット飛び越えてU相スロットBにスイッチしている。これにより、U相スロットA,Bの第2層及び第1層には、図10に示すように、並列巻線U3のスロット収容部がU相スロットA,Bの両方に2本ずつ均等に配置されている。
なお、この並列巻線U3の渡り線57は、全て6スロットピッチとされているとともに、固定子巻線40の第1コイルエンド部41の周方向の所定範囲(44番スロットから3番スロットの間)に配置されている。そして、渡り線57が配置されている所定範囲内に、並列巻線U3の巻き始め端部(2番スロット)と巻き終わり端部(45番スロット)が位置している。
そして、並列巻線U4は、始端側のスロット収容部が3番スロット(UB)の第6層(最外層)に収容され、図8の(2)の位置から内周側に向かって時計回り方向に周回を開始し3周する。この場合にも、21番スロット(UB)から26番スロット(UA)、及び20番スロット(UA)から27番スロット(UB)へ移る際には、U相スロットのAとBの間でスイッチしている。これにより、U相スロットA,Bの第1層?第6層の全ての層において、図10に示すように、並列巻線U4のスロット収容部がU相スロットA,Bの両方に2本ずつ均等に配置されている。
また、並列巻線U1は、始端側のスロット収容部が2番スロット(UA)の第1層(最内層)に収容され、図8の(3)の位置から外周側に向かって反時計回り方向に周回を開始し3周する。この場合にも、32番スロット(UA)から27番スロット(UB)、及び33番スロット(UB)から26番スロット(UA)へ移る際には、U相スロットのAとBの間でスイッチしている。これにより、U相スロットA,Bの第1層?第6層の全ての層において、図10に示すように、並列巻線U1のスロット収容部がU相スロットA,Bの両方に2本ずつ均等に配置されている。
また、並列巻線U2は、始端側のスロット収容部が3番スロット(UB)の第1層(最内層)に収容され、図8の(4)の位置から外周側に向かって反時計回り方向に周回を開始し3周する。この場合にも、33番スロット(UB)から26番スロット(UA)、及び32番スロット(UA)から27番スロット(UB)へ移る際には、U相スロットのAとBの間でスイッチしている。これにより、U相スロットA,Bの第1層?第6層の全ての層において、図10に示すように、並列巻線U2のスロット収容部がU相スロットA,Bの両方に2本ずつ均等に配置されている。
よって、各並列巻線U1?U4は、各U相スロットA,B内の全ての層において、周方向に隣接する2個のU相スロットA,Bの両方に均等に配置されている。
なお、並列巻線U3と並列巻線U4のスイッチ部においては、図9(b)に示すように、7スロットを飛び越える一方の並列巻線U3が、5スロット飛び越える他方の並列巻線U4を跨ぐ状態となる。また、スイッチ部以外の通常部においては、図9(a)に示すように、並列巻線U3と並列巻線U4が、第6層と第5層の間、第4層と第3層の間、第2層と第1層の間でそれぞれ交差した状態となる。
なお、V相巻線41Vの並列巻線V1?V4及びW相巻線41Wの並列巻線W1?W4は、上記のU相巻線41Uの並列巻線U1?U4と同じであるので説明を省略する。」(【0021】-【0042】)

上記記載及び図2を参照すると、固定子コア30の一方側に、導体セグメント50の直線部51,51に形成される捻り部55及び端末接合部56により第2コイルエンド部42が形成され、他方側に、導体セグメント50のターン部による第1コイルエンド部41が形成されている。
上記記載及び図7A、Bを参照すると、導体を溶接により結線する第2コイルエンド部42(図で右側)では、6スロットピッチの一定のスロットピッチで導体セグメント同士が接続されており、ターン部による第1コイルエンド部41(図で左側)では、複数種のスロットピッチで接続がなされ、導体セグメント50の2本の直線部51,51が挿入されるスロットのピッチには複数種あること(特に図7B)が示されている。
上記記載及び図8を参照すると、破線(捻り側)で示される、第2コイルエンド部42によるスロット間の接続は、全てA-A間の接続あるいはB-B間の接続であるので、6スロットピッチであり、実線(ターン部側)で示される、第1コイルエンド部41における1周目のスロット間の接続には、A-A間及びB-B間の6スロットピッチの接続と、A-B間の7スロットピットの接続と、B-A間の5スロットピッチの接続とが含まれ、複数種のスロットピッチで接続がなされていることが示されている。
甲第2号証【0030】には、「U相スロットのA-A、A-B、B-Bを結ぶ破線は、導体セグメントの捻り側(溶接側)を示す。」とあるが、図8には、A-Bを結ぶ破線は記されておらず、【0031】?【0040】でも、捻り側でA-B間を接続するものはなく、【0030】の上記記載は誤記と認められる。

上記記載事項からみて、甲第2号証には、
「導体セグメントを接続して回転電機の固定子コアに3相巻線を形成するために、固定子コアの一方側に配置されかつスロットに対して同一のスロットピッチで接続される第2コイルエンド部と、前記固定子コアの他方側に配置されかつ前記スロットに対して複数種のスロットピッチで挿入される第1コイルエンド部とを設けること。」が記載されている。

甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
l「次に、U字状に形成され、周方向に整列された各セグメントをコアの各スロットに挿入される工程が行われる。この工程は、U字状に変形され、周方向に整列された各セグメントの頭部を保持しつつ脚部を上記一対の穴付きリングから抜き出し、コアの各スロットに挿入することにより行なわれる。
次に、スロットから飛び出した各飛び出し端部を周方向へ屈曲する工程が行われる。好適には、各飛び出し端部は1/2磁極ピッチだけ周方向へ屈曲される。このような周方向屈曲は、たとえば上記特許3196738号の第4図、第5図に示される同軸の複数の穴付きリングを用い、各穴付きリングの各穴に各飛び出し端部の先端を挿入し、各穴付きリングをそれぞれ周方向へ半磁極ピッチ(電気角π/2)回動して、各飛び出し端部をそれぞれ周方向へ半磁極ピッチ屈曲させればよい。なお、各穴付きリングを回動させる際、各穴付きリングを飛び出し端部に向けて軸方向に付勢しながら行うと、屈曲点の曲率半径を大きくできるので好適である。次に、各飛び出し端部の先端部を所定の順序で溶接する工程が行われる。
これにより各相のコイルを意味する相コイルがエンドレスに形成されるので、適切な部位でU字状セグメントのU字状の頭部を切断することにより、頭部側にて各相コイルの引き出し端子を形成することができる。これら引き出し端子をあらかじめ長く形成しておけば、この長く形成した部分を周方向へ屈曲することにより、中性点用の渡り線などとして用いることができる。なお、これらの引き出し端子を頭部側コイルエンドに設けるのは、端部側コイルエンドでは、溶接工程があるため、長い引き出し端子が邪魔になるからである。」(【0008】-【0010】)
m「【発明の実施の形態】
以下、この発明のセグメント順次接合型ステータコイルを有する高電圧車両用回転電機の例を図に示す各実施形態に基づいて説明する。図1はこの高電圧車両用回転電機の軸方向断面図である。」(【0025】)
n「図2は固定子1の径方向部分断面図である。固定子鉄心2の内周面には、18の倍数のスロットSが周方向等間隔に配置されている。
ステータコイル3は、U字状の導体片(セグメントという)30を各スロットSへ図1において軸方向右側から左側へ挿通し、各セグメントの先端部を一対づつ溶接して形成された3個の相コイル(U相コイル、V相コイル、W相コイル)を接続した三相星形巻線からなる。
セグメント30は、図9に示すように、U字状の頭部31と、頭部31の両端からそれぞれ延在する一対の脚部32とからなる。脚部は、スロットS内に収容されているスロット導体部33と、固定子鉄心2の前端部から突出した後、略周方向へ屈曲し、径方向に隣接する他の飛び出し端部34と溶接されて端部側コイルエンド8を構成する飛び出し端部34とからなる。セグメント30の頭部31も固定子鉄心2の後端部から突出して頭部側コイルエンド9を構成している。
一つのスロットSには、図2に示すように、6本のスロット導体部33が径方向へ一列に配置されている。スロット導体部33の各スロット導体部挿入位置は径方向内周面外側側から順番に、1層、2層、3層、4層、5層、6層と呼ばれるものとする。すなわち、スロット導体部331は1層に、スロット導体部332は2層に、スロット導体部333は3層に、スロット導体部334は4層に、スロット導体部335は5層に、スロット導体部336は6層に収容されている。同一セグメント30の一対のスロット導体部33、33は、互いに1磁極ピッチ(電気角π)離れた一対のスロットSに挿通され、同一のセグメント30の一対のスロット導体部33、33は、径方向において異なる位置に収容されている。
以下、図3?図8を参照して、この実施例の特徴をなすステータコイル3の構造、配置を説明する。ただし、三相星形巻線を構成する3つの相コイルの構造、配置は周方向へずれているだけで本質的に同じであるので、以下においてはU相コイルだけを説明する。図10、図11は、このU相コイルの巻線展開図である。
この実施例では、周方向に隣接する3つのスロットSに同一相のスロット導体部33が収容されている。スロット番号4?6、13?15、22?24、31?33、40?42、49?51は、U相コイルを構成するスロット導体部33を収容するのでU相スロットと呼称される。スロット番号7?9、16?18、25?27、34?36、43?45は、V相コイルを構成するスロット導体部33を収容するのでV相スロットと呼称される。スロット番号1?3、10?12、19?21、28?30、37?39、46?48は、W相コイルを構成するスロット導体部33を収容するのでW相スロットと呼称される。ただし、図3?図8では、一部のスロット番号だけが図示されている。また、この明細書では、理解を簡素化するためにスロット番号と他の構成要素とは同一符号を有しているが、これらは別の構成要素であることは明らかである。
図3、図5、図7は、頭部側コイルエンド9を軸方向にみた部分模式側面図であり、U相コイルの頭部側コイルエンド9を構成するセグメント30の頭部31とスロット導体部33との配置状態を示す。
図4、図6、図8は、端部側コイルエンド8を軸方向にみた部分模式側面図であり、U相コイルの端部側コイルエンド8を構成するセグメント30の飛び出し端部34とスロット導体部33との配置状態を示す。
スロット番号22?24、40?42は、このU相電流が軸方向一側(たとえば奥側)に流れる往き導体を収容する往き導体収容スロットを構成し、スロット番号31?33、49?51は、このU相電流が軸方向他側(たとえば手前側)に流れる還り導体を収容する還り導体収容スロットを構成している。したがって、同一セグメントの一対のスロット導体部の一方は上記往き導体を、他方は還り導体を構成している。
U1は、それぞれ往き導体収容スロットを構成する同相隣接3スロットのうち一番左の往き導体スロット(最もスロット番号が小さいスロット)である。U2は、それぞれ往き導体収容スロットを構成する同相隣接3スロットのうち中央の往き導体収容スロットである。U3は、それぞれ往き導体収容スロットを構成する同相隣接3スロットのうち一番右の往き導体スロット(最もスロット番号が大きいスロット)である。U1’は、それぞれ還り導体収容スロットを構成する同相隣接3スロットのうち一番左の還り導体スロット(最もスロット番号が小さいスロット)である。U2’は、それぞれ還り導体収容スロットを構成する同相隣接3スロットのうち中央の還り導体収容スロットである。U3’は、それぞれ還り導体収容スロットを構成する同相隣接3スロットのうち一番右の還り導体スロット(最もスロット番号が大きいスロット)である。U相コイルは、U1、U2、U3、U1’、U2’、U3’スロットに収容されるU相セグメントを直列に接続して構成される。
ただし、この実施例では、往き導体がスロット番号40?42の各スロットに収容されるか又はスロット番号31の一層に収容されるU相セグメントの一部(特別U相セグメントと呼ぶ)は、通常U相セグメントと呼ばれる他のU相セグメントと形状および配置が異なっている。これは、これら特別U相セグメントにより、直列接続されてU相コイルを構成する複数の部分コイル間の接続を行うとともに、U相引き出し端子、中性点引き出し端子を構成するためである。特別U相セグメントについては後述するものとする。
(通常U相セグメントの説明)
通常U相セグメントは、往き導体が往き導体収容スロットU1に、還り導体が還り導体収容スロットU1’に収容されるU1セグメントと、往き導体が往き導体収容スロットU2に、還り導体が還り導体収容スロットU2’に収容されるU2セグメントと、往き導体が往き導体収容スロットU3に、還り導体が還り導体収容スロットU3’に収容されるU3セグメントとからなる。
各U1セグメントは直列接続されてU1コイルを構成し、各U2セグメントは互いに直列接続されてU2コイルを構成し、各U3セグメントは互いに直列接続されてU3コイルを構成する。これらU1コイル、U2コイル、U3コイルは互いに直列接続されてU相コイルを構成する。
U1セグメントの配置を図3、図4に示す。
図3において、U1セグメントは、それぞれ周方向9スロットピッチのスロット導体部ピッチを有する6種類のセグメント101?106からなる。
セグメント101の往き導体は往き導体収容スロットU1(たとえば22)の1層位置に、その還り導体は還り導体収容スロットU1’(たとえば31)の4層位置に収容される。セグメント102の往き導体は往き導体収容スロットU1(たとえば22)の2層位置に、その還り導体は還り導体収容スロットU1’(たとえば31)の3層位置に収容される。セグメント103の往き導体は往き導体収容スロットU1(たとえば22)の5層位置に、その還り導体は還り導体収容スロットU1’(たとえば31)の6層位置に収容される。
同様に、セグメント104の往き導体は往き導体収容スロットU1’(たとえば49)の1層位置に、その還り導体は還り導体収容スロットU1(たとえば58)の4層位置に収容される。セグメント105の往き導体は往き導体収容スロットU1’(たとえば49)の2層位置に、その還り導体は還り導体収容スロットU1(たとえば58)の3層位置に収容される。セグメント106の往き導体は往き導体収容スロットU1’(たとえば49)の5層位置に、その還り導体は還り導体収容スロットU1(たとえば58)の6層位置に収容される。
セグメント101と104、セグメント102と105、セグメント103とセグメント106は同一形状となる。
各セグメント101?106の1層、2層、5層の各位置の往き導体は、この往き導体が収容される往き導体スロットよりもスロット番号が大きい側の還り導体収容スロットの3層、4層、6層の各位置の還り導体と同一セグメントを構成する。各セグメント101?106の1層、2層、5層の各位置の還り導体は、この還り導体が収容される還り導体スロットよりもスロット番号が大きい側の往き導体収容スロットの3層、4層、6層の各位置の往き導体と同一セグメントを構成する。
これらU1セグメントを構成する6種類のセグメント101?106の飛び出し端部34により構成される端部側コイルエンド8を図4に示す。」(【0030】-【0049】)
o「ある往き導体収容スロットU1の5層位置から出た往き導体に連なる飛び出し端部34は、この往き導体収容スロットU1よりもスロット番号が小さい還り導体収容スロットU1’の6層位置から出た還り導体U1に連なる飛び出し端部34に溶接される。
ある往き導体収容スロットU1の6層位置から出た往き導体に連なる飛び出し端部34は、この往き導体収容スロットU1よりもスロット番号が大きい還り導体収容スロットU1’の5層位置から出た還り導体U1に連なる飛び出し端部34に溶接される。
通常U相セグメントであるセグメント101?106を上述したように順次接続することにより、U相部分コイルの一つを構成するU1コイルの通常U相セグメント部分が構成される。
このU1コイルの通常U相セグメント部分は、セグメント101、102、104、105を順次直列接続してなる通常U相セグメント部分と、セグメント103、106を順次直列接続してなる通常U相セグメント部分とからなる。」(【0054】-【0057】)
p「セグメント103、106の通常U相セグメント部分は、セグメント103の還り導体(6層)、セグメント103の往き導体(5層)、セグメント103の還り導体(6層)の繰り返しからなる第3コイルの通常U相セグメント部分と、セグメント106の往き導体(6層)、セグメント106の還り導体(5層)、セグメント106の往き導体(6層)の繰り返しからなる第4コイルの通常U相セグメント部分とからなる。」(【0059】)
q「(スロット番号40に往き導体が収容される特別U相セグメントの説明)
往き導体がスロット番号40に収容される特別U相セグメントの配置について、図3を参照して以下に説明する。」(【0065】)
r「略U字状の特別U相セグメント204は、スロット番号40のスロットの6層位置に収容される往き導体と、スロット番号32のスロットの5層位置に収容される還り導体とを有する。
すなわち、スロット番号40とスロット番号32とを接続する特別U相セグメント201、202、204は、9スロットピッチを有する通常U相セグメントよりも1スロットピッチ少ない8スロットピッチを有している。
(スロット番号41に往き導体が収容される特別U相セグメントの説明)
往き導体がスロット番号41に収容される特別U相セグメントの配置について、図5を参照して以下に説明する。」(【0069】-【0071】)
s「略U字状の特別U相セグメント204は、スロット番号41のスロットの6層位置に収容される往き導体と、スロット番号33のスロットの5層位置に収容される還り導体とを有する。
略L字状の特別U相セグメント205は、特別U相セグメント204と同一形状を有しており、スロット番号41のスロットの5層位置に収容される往き導体と、スロット番号49のスロットの6層位置に収容される還り導体とを有する。
すなわち、スロット番号41とスロット番号33とを接続する特別U相セグメント201、202、204は、9スロットピッチを有する通常U相セグメントよりも1スロットピッチ少ない8スロットピッチを有している。また、スロット番号41とスロット番号49とを接続する特別U相セグメント205は、9スロットピッチを有する通常U相セグメントよりも1スロットピッチ少ない8スロットピッチを有している。」(【0074】-【0076】)
t「結局、通常U相セグメントであるU1セグメントにより構成されてU1コイルを構成する第1?第4コイル、通常U相セグメントであるU2セグメントにより構成されてU2コイルを構成する第1?第4コイル、通常U相セグメントであるU3セグメントにより構成されてU3コイルを構成する第1?第4コイルは、上記した各特別セグメント200?208により直列接続されてU相コイルが完成される。V相コイル、W相コイルもU相コイルと同じ方法により構成される。」(【0083】)
u「(実施例の特徴および作用効果2)
この実施例では、通常U相セグメントの他にこの通常U相セグメントとスロットピッチが異なる特別U相セグメントを採用することにより、セグメント順次接合型ステータコイルにおいて隣接複数スロットに同一相のセグメントを配置できることを見いだしたものであり、セグメント順次接合型ステータコイルが奏するスロット占積率向上などの効果を奏すると同時に、隣接複数スロットを同一相とすることによる以下の効果を実現することが可能となる。」(【0087】)
v「(変形態様)
上記実施例の特別U相セグメントの形状および配置は、一例を示すものであり、隣接複数スロットに同一相の通常U相セグメントが挿入できるものであれば、各通常U相セグメントからなる部分コイルを順次直列接続する特別U相セグメントとして、他の形状および配置を採用することができることは当然である。また、上記実施例では、同一相の隣接スロットの数を3としたが、2又は4以上としてもよいことは当然である。更に、上記実施例では、1スロットに径方向へ6本のスロット導体部(すなわち往き導体又は還り導体)を収容したが、それ以上の本数のスロット導体部を収容してもよいことはもちろんである。」(【0092】)

上記記載及び図1を参照すると、固定子鉄心2の一方側に、セグメント(導体片)の脚部32間が溶接された端部側コイルエンド8が形成され、他方側に、U字状の頭部31により頭部側コイルエンド9が形成されている。
上記記載及び図4、6、8を参照すると、端部側コイルエンド8では、9スロットピッチの一定のスロットピッチでセグメントが接続されている。
上記記載及び図3、5、7を参照すると、頭部側コイルエンド9では、図3のスロット番号22とスロット番号31とを9スロットピッチで接続するセグメント103と、図3のスロット番号32とスロット番号40とを8スロットピッチで接続するセグメント204と、図3のスロット番号41とスロット番号49とを8スロットピッチで接続するセグメントとがあり、複数種のスロットピッチで接続がなされている。

上記記載事項からみて、甲第3号証には、
「導体セグメントを接続して回転電機の固定子コアに三相巻線を形成するために、固定子鉄心の一方側に配置されかつスロットに対して同一のスロットピッチで接続される端部側コイルエンドと、前記固定子鉄心の他方側に配置されかつ前記スロットに対して複数種のスロットピッチで挿入される頭部側コイルエンドとを設けること。」が記載されている。


(2)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「固定子コア」、「脚部側巻線部」、「エンドターンにより形成される巻線部」、「ヘアピン」、「モータ固定子」は、本件発明1の「ステータコア」、「接続側巻線部」、「反接続側巻線部」、「セグメントコイル」、「回転電機の固定子」に相当する。

甲1発明の「互いに接続されてY接続を形成する複数のヘアピン」は、本件発明1の「互いに接続されて3相の巻線を形成する複数のセグメントコイル」に相当する。
甲1発明の「前記複数のヘアピン同士を接続する複数の脚端部が設けられる第1接続群」は、本件発明1の「前記複数のセグメントコイル同士を接続する複数の端末部が設けられる第1接続群」に相当する。
甲1発明の「前記第1接続群とは異なるスロット層間を接続しかつ複数の脚端部が設けられる第2接続群」は、本件発明1の「前記第1接続群とは異なる層間を接続しかつ複数の端末部が設けられる第2接続群」に相当する。
甲1発明の「スロット第1層からの脚端部がスロット第2層からの隣接する前記脚端部に接続され、スロット第3層からの脚端部がスロット第4層からの隣接する前記脚端部に接続される第1接続群を形成し」は、第1層のヘアピンと第2層のヘアピンの脚端部同士を接続し、第3層のヘアピンと第4層のヘアピンの脚端部同士を接続しているから、nが1以上で2n-1層と2n層のセグメント同士の端末部を接続していることとなるので、本件発明1の「n=1以上であって、前記第1接続群は、2n-1層と2n層のセグメント同士の前記端末部を接続し」に相当する。
甲1発明の「スロット第2層の前記脚端部がスロット第3層の前記脚端部に接続される第2接続群を形成する」は、第2層のヘアピンと第3層のヘアピンの脚端部同士を接続しているから、nが1以上で2n層と2n+1層のセグメント同士の端末部を接続することとなるので、本件発明1のn=1以上の「前記第2接続群は、2n層と2n+1層のセグメント同士の前記端末部を接続する」に相当する。

甲1発明の「固定子コアの一方側に配置される脚部側巻線部」と、本件発明1の「ステータコアの一方側に配置されかつスロットに対して同一のスロットピッチで接続される接続側巻線部」は、「ステータコアの一方側に配置される接続側巻線部」で一致する。
甲1発明の「前記固定子コアの他方側に配置されるエンドターンにより形成される巻線部」と、本件発明1の「前記ステータコアの他方側に配置されかつ前記スロットに対して複数種のスロットピッチで挿入される反接続側巻線部」は、「前記ステータコアの他方側に配置される反接続側巻線部」で一致する。

したがって、両者は、
「ステータコアの一方側に配置される接続側巻線部と、前記ステータコアの他方側に配置される反接続側巻線部と、を有し、互いに接続されて3相の巻線を形成する複数のセグメントコイルを備え、
前記接続側巻線部において、
前記複数のセグメントコイル同士を接続する複数の端末部が設けられる第1接続群と、
前記第1接続群とは異なる層間を接続しかつ複数の端末部が設けられる第2接続群と、
各相の口出し線と、を有し、
n=1以上であって、
前記第1接続群は、2n-1層と2n層のセグメント同士の前記端末部を接続し、
前記第2接続群は、2n層と2n+1層のセグメント同士の前記端末部を接続する回転電機の固定子。」の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
接続側巻線部に関し、本件発明1は、スロットに対して同一のスロットピッチで接続されるのに対し、甲1発明は、この様な構成を有しておらず、反接続側巻線部に関し、本件発明1は、スロットに対して複数種のスロットピッチで挿入されるのに対し、甲1発明は、この様な構成を有していない点。


(3)判断
甲第1号証には、接続側巻線部が6スロットピッチ又は5スロットピッチであることが示されており、反接続側巻線部が同一スロットピッチである6スロットピッチであることが示されている。
これを、本件発明1のように、接続側巻線部をスロットに対して同一のスロットピッチで接続し、反接続側巻線部をスロットに対して複数種のスロットピッチで挿入するには、まず、スロットに配置される巻線のピッチを変えなければならないが、甲第1号証には開示された巻線配置以外の具体的な巻線配置は記載も示唆も無い。確かに、甲第1号証[0010]には、ヘアピン脚部間の接続が、全体的に6スロットピッチである中で、いくつかのヘアピンを5スロットピッチで接続する必要があり、そのため非常に煩雑で労働集約的なプロセスが発生することが記載されてはいるが、当該変更を行ってモータとして動作させるためには、固定子スロットに三相コイル全てを収納し、反接続側巻線部が同一スロットピッチである6スロットピッチを複数種のスロットピッチに変えた上で、モータとしてスムーズな回転ができるようにコイルを配置しなければならないが、全体として6スロットピッチのコイルの一部を本件明細書記載のように7スロットと5スロットの同心巻にすれば、当該同心巻の箇所と他の箇所で発生する磁場が異なり、スムーズな回転を阻害することとなるが、スムーズな回転を犠牲にしてまでもコイル接続の作業性を向上させようとすることは記載も示唆も無く、動機付けも無い。

そうであれば、甲第2、3号証記載の事項及び周知技術を検討するまでもなく、甲1発明の接続側巻線部をスロットに対して同一のスロットピッチで接続されるようにし、反接続側巻線部をスロットに対して複数種のスロットピッチで挿入されるようにすることは、当業者が容易に考えられたとすることはできない。

したがって、本件発明1は、甲1発明に甲第2号証記載の事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲1発明に甲第3号証記載の事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲1発明に周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。本件発明2-8に係る請求項2-8は本件発明1に係る請求項1の従属項であるから、本件発明1が当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、本件発明2-8も同様に当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては本件発明1-8の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-8の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-07-08 
出願番号 特願2018-508421(P2018-508421)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H02K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 堀川 一郎
松本 泰典
登録日 2019-09-13 
登録番号 特許第6585826号(P6585826)
権利者 日立オートモティブシステムズ株式会社
発明の名称 回転電機の固定子及びそれを用いた回転電機  
代理人 特許業務法人サンネクスト国際特許事務所  

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