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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1364293
審判番号 不服2019-6785  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-24 
確定日 2020-07-16 
事件の表示 特願2015- 67077「冷媒回路装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-186403〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年9月5日付け:拒絶理由通知書
平成31年3月1日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和元年5月24日付け:審判請求書および手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和元年5月24日付け手続補正書に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「室の内部に配設された庫内熱交換器と、前記庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記室の外部に配設された庫外熱交換器と、前記庫外熱交換器を通過した冷媒を断熱膨張させる膨張機構とを冷媒管路にて順次接続して構成された主経路と、
前記圧縮機の吐出側の冷媒管路より分岐し、かつ該圧縮機で圧縮された冷媒を前記庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設された第1加熱庫内熱交換器に供給する第1高圧冷媒管路と、前記圧縮機の吐出側の冷媒管路より分岐し、かつ前記第1加熱庫内熱交換器が配設された室とは異なる加熱対象となる室に配設された第2加熱庫内熱交換器に対して前記圧縮機で圧縮された冷媒を供給する第2高圧冷媒管路とを有する高圧冷媒導入経路と、
前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方を通過した冷媒を前記主経路における前記庫外熱交換器の上流側に供給する放熱経路と
を備えた冷媒回路を有する冷媒回路装置において、
入口が前記圧縮機の出口側の冷媒管路に接続され、第1出口が前記庫外熱交換器の入口側の冷媒管路に接続され、第2出口が前記第1高圧冷媒管路に接続され、並びに第3出口が前記第2高圧冷媒管路に接続されてなり、前記入口と前記第1出口とを連通する第1送出状態、前記入口と前記第2出口とを連通する第2送出状態、前記入口と前記第3出口とを連通する第3送出状態、並びに前記入口と前記第2出口及び前記第3出口とを連通する第4送出状態のいずれかに切替可能な四方弁と、
前記庫外熱交換器を通過した冷媒を導入して前記圧縮機に戻すためのバイパス管路と、
前記バイパス管路に開閉可能に配設され、かつ開成する場合は該バイパス管路に冷媒が通過することを許容する一方、閉成する場合は該バイパス管路に冷媒が通過することを規制するバイパスバルブと、
前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方が配設された室の内部空気を加熱するとともに他の庫内熱交換器が配設された室の内部空気を冷却する冷却加熱運転を行う場合には、前記四方弁を前記第2送出状態、前記第3送出状態及び前記第4送出状態のいずれかに調整して前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記第1高圧冷媒管路及び第2高圧冷媒管路の少なくとも一方に導入されるようにして前記庫外熱交換器を通過した冷媒が前記膨張機構で断熱膨張して庫内熱交換器に送出されるようにする制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方が配設された室の内部空気のみを加熱する加熱単独運転を行う場合には、前記四方弁を前記第2送出状態、前記第3送出状態及び前記第4送出状態のいずれかに調整して前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記第1高圧冷媒管路及び第2高圧冷媒管路の少なくとも一方に導入されるようにするとともに、前記バイパスバルブを開成させて前記庫外熱交換器を通過した冷媒が前記バイパス管路を通過するようにし、
いずれかの室の内部空気のみを冷却する冷却単独運転を行う場合には、前記四方弁を前記第1送出状態に調整して前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記庫外熱交換器を通過するようにするとともに、前記バイパスバルブを閉成させて前記庫外熱交換器を通過した冷媒が前記膨張機構で断熱膨張して庫内熱交換器に送出されるようにすることを特徴とする冷媒回路装置。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
この出願の請求項1?3に係る発明は、下記の引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2011-170441号公報
引用文献2:特開2001-325651号公報
引用文献3:特開2014-112012号公報

第4 引用文献
1.引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-170441号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)引用文献1の記載
1a)「【0014】
(実施例1) 以下に添付図面を参照して、本発明に係る自動販売機における冷媒回路の好適な実施例1を詳細に説明する。なお、この実施例1によりこの発明が限定されるものではない。
・・・(中略)・・・
【0019】
冷却/加熱ユニット60は、機械室50内に圧縮機61、室外熱交換器62、膨張器(膨張手段)63a、63b、63c、アキュムレータ69、室外補助熱交換器76を取設し、底板11を跨いで室内に蒸発器(第1室内熱交換器)65a、室内熱交換器(第1室内熱交換器、第2室内熱交換器を兼用する)65b、65cを有して各機器を冷媒配管で接続されることにより構成されている。冷却/加熱ユニット60は、冷却加熱の設定モードに応じて、室内に冷却または加熱した空気を循環させて商品収納ラックR内の商品Sを冷却または加熱するものである。」

1b)「【0023】
蒸発器65aは、商品収納室40aを冷却するためのものであり、室内熱交換器65b、65cは、商品収納室40b、40cを冷却もしくは加熱するためのものである。また、蒸発器65a、室内熱交換器65b、65cは、各商品収納室の下部に取設され、風胴167で囲繞され、その後方にファン65fが取設され、その後方にダクト167dが取設されている。商品収納室内の冷却と加熱は、蒸発器65a、室内熱交換器65b、65cにより冷却もしくは加熱された空気を商品収納室内の商品Sに送風し、図2中の矢印で示すようにダクト167dより循環回収することで行われる。」

1c)「【0025】
室外補助熱交換器76は、フィンチューブ型の熱交換器であり、加熱運転時に余剰な凝縮熱を排出するためのものである。」

1d)「【0026】
凝縮器電磁弁68は、圧縮機61から吐出される冷媒を室外熱交換器62または室内熱交換器65b、65cへ流れを切替えるための3方電磁弁である。加熱器電磁弁68b、68cは、圧縮機61と室内熱交換器65b、65c間の圧縮された冷媒の通路を開閉するものである。第1の冷却器入口電磁弁70a,第2の冷却器入口電磁弁70b,70cは分流器64と蒸発器65a、室内熱交換器65b、65c間の膨張された冷媒の通路を開閉するものであり、冷却器出口電磁弁72b,72cは、室内熱交換器65b、65cと圧縮機61と間の蒸発された冷媒の通路を開閉するものである。」

1e)「【0029】
第1バイパス管路80は、加熱単独運転時に室外熱交換器62に冷媒を流して蒸発器として使用するためのものであり、膨張器63aと蒸発器65a間に接続されたバイパス切替電磁弁83の一の出口から室外熱交換器62の入口部とを接続する管路である。また、第1バイパス管路80には第2逆止弁81が接続されている。」

1f)「【0031】
第2バイパス管路85は、加熱単独運転時に室外熱交換器62にて蒸発した冷媒を圧縮機61へ戻すためのものであり、室外熱交換器62と第1逆止弁79との接続点185と、集合器67とアキュムレータ69との接続点186とを接続する管路である。また、第2バイパス管路85には、第2バイパス管路85へ冷媒の流入出を制御するバイパス電磁弁86が接続されている。」

1g)「【0033】
冷却単独回路60Aは、圧縮機61より、凝縮器電磁弁68、室外熱交換器62、第1逆止弁79を経由して分流器64に接続し、分流器より一方は第1の冷却器入口電磁弁70a、膨張器63a、バイパス切替電磁弁83、蒸発器65aを経由して集合器67に接続し、また、分流器64より他方は第2の冷却器入口電磁弁70b、70c、膨張器63b、63c、室内熱交換器65b、65c、冷却器出口電磁弁72b、72cを経由して集合器67に接続し、集合器67よりアキュムレータ69を経由して圧縮機61に戻る回路である。
【0034】
一方、冷却加熱回路60Bには、冷却単独回路60Aに加えて、凝縮器電磁弁68の一の出口より並列接続された加熱器電磁弁68b、68cを介して、逆止弁71b、71cと室内熱交換器65b、65c入口側との接続点168b、168cとそれぞれ接続し、また、室内熱交換器65b、65cの出口側(図中右側)からそれぞれ逆止弁71,71を介して結合した後、室外補助熱交換器76を経由して分流器64へ接続する管路とが設けられている。

1h)「【0038】
制御手段90は、商品収納室40a、40b、40cを冷却加熱の設定モード、運転モードにより冷却もしくは加熱の制御をするものである。図4に示すように内部にCPU、メモリを有し、冷却加熱モード設定SW91の設定モードおよび各室の温度状況による運転モードに応じて冷媒回路の圧縮機運転、電磁弁開閉などの制御を行う。冷却加熱の設定モードは、商品収納室40a、40b、40cの冷却もしくは加熱の運転をC、Hで示すものであり、商品収納室の左側から(40a、40b、40c)順に、例えば、すべてが冷却の場合にはCCCモード、右の商品収納室のみが加熱の場合にはCCHモードなどと記す。運転モードは、各室の温度状況により冷却、加熱、休止をそれぞれC、H、-で示すものであり、冷却加熱の設定モードと同様に商品収納室の左側から順に、例えば、左の商品収納室の冷却が適温となり、中、右の商品収納室のみが加熱の場合には-HHモードなどと記す。なお、制御手段90は、室内の温度センサTa、Tb、Tcにより検知した温度により、圧縮機61、凝縮器電磁弁68、第1の冷却器入口電磁弁70a、第2の冷却器入口電磁弁70b、70c、冷却器出口電磁弁72b、72c、加熱器電磁弁68b、68cなどを制御し、室内を一定温度範囲内でON・OFF制御するサーモサイクル運転を行うことにより室内温度を適温に維持する。
【0039】
かかる構成で冷却加熱モード設定SW91の操作により設定モードをCCCモードに設定すると、制御手段90は第1の冷却器入口電磁弁70a、第2の冷却器入口電磁弁70b、70c、冷却器出口電磁弁72b、72cを開成し、加熱器電磁弁68b、68c、バイパス電磁弁86を閉止し、凝縮器電磁弁68を冷媒が室外熱交換器62側に流通する態様で、バイパス切替電磁弁83を冷媒が蒸発器65a側に流通する態様に通路切替えを行う。このとき、冷媒は図5の太線で示すように流れ、具体的には、圧縮機61で圧縮された高温冷媒は、凝縮器電磁弁68を介して室外熱交換器62にて凝縮され液体となり、分流器64で三方に分流され第1の冷却器入口電磁弁70a、第2の冷却器入口電磁弁70b、70cを介して膨張器63a、63b、63cで膨張して低温の気液二相流となり、蒸発器65a、室内熱交換器65b、65cに流入する。流入した冷媒は、蒸発器65a、室内熱交換器65b、65cで蒸発して商品収納室40a、40b、40cを冷却し、蒸発した冷媒は集合器67にて集合しアキュムレータ69を介して気液分離されて、気相が圧縮機61に戻る。なお、この冷却は、制御装置90にて室内の温度センサTa、Tb、Tcによるサーモサイクル運転により室内温度が適温に制御される。
【0040】
次に、冷却加熱モード設定SW91の操作により設定モードを左側の商品収納室40aを冷却し、中、右側の商品収納室40b、40cを加熱するCHHモードに設定すると、制御手段90は、加熱器電磁弁68b、68c、第1の冷却器入口電磁弁70aを開成し、第2の冷却器入口電磁弁70b、70c、冷却器出口電磁弁72b、72c、バイパス電磁弁86を閉止し、凝縮器電磁弁68を冷媒が加熱器電磁弁68b、68c側に流通する態様で、バイパス切替電磁弁83を冷媒が蒸発器65a側に流通する態様に通路切替えを行う。このとき圧縮機61で圧縮された高温冷媒は、図6の太線で示すように、凝縮器電磁弁68、加熱器電磁弁68b、68c、接続点168b、168cを経由して室内熱交換器65b、65cに流入する。室内熱交換器65b、65cに流入した冷媒は凝縮して商品収納室40b、40cを加熱し、逆止弁71,71を介して集合し、室外補助熱交換器76でさらに凝縮して分流器64、第1の冷却器入口電磁弁70aを経由して膨張器63aに流入する。膨張器63aに流入した冷媒は、膨張して低温低圧の気液二相流となり、バイパス切替電磁弁83を介して蒸発器65aに流入する。蒸発器65aに流入した冷媒は、蒸発して商品収納室40aを冷却し、集合器67、アキュムレータ69を経由して圧縮機61に戻る。このヒートポンプ運転も前述のようにサーモサイクル運転で室内が適温に維持される。
【0041】
なお、このとき、制御手段90がバイパス電磁弁86を開成させると、接続点186の圧力が低圧であるので、室外熱交換器62内に貯留する冷媒は、図中の矢印で示すように冷媒循環回路内のアキュムレータ69に回収されるので、回路内に適正な冷媒循環量が保持される。
【0042】
そして、商品収納室40aが適温に冷却されると、制御手段90は、商品収納室40b、40cの加熱単独の運転モード(-HHモード)を行う。具体的には、制御手段90は、加熱器電磁弁68b、68c、第1の冷却器入口電磁弁70a、バイパス電磁弁86を開成し、第2の冷却器入口電磁弁70b、70c、冷却器出口電磁弁72b、72cを閉止し、凝縮器電磁弁68を冷媒が加熱器電磁弁68b、68c側に流通する態様で、バイパス切替電磁弁83を冷媒が第1バイパス管路80側に流通する態様に通路切替えを行う。このとき圧縮機61で圧縮された高温冷媒は、図7の太線で示すように、凝縮器電磁弁68、加熱器電磁弁68b、68c、接続点168b、168cを経由して室内熱交換器65b、65cに流入する。室内熱交換器65b、65cに流入した冷媒は凝縮して商品収納室40b、40cを加熱し、逆止弁71,71を介して集合し、室外補助熱交換器76でさらに凝縮して分流器64、第1の冷却器入口電磁弁70aを経由して膨張器63aに流入する。膨張器63aに流入した冷媒は、膨張して低温低圧の気液二相流となり、バイパス切替電磁弁83、第1バイパス管路80を経由して室外熱交換器62に流入する。室外熱交換器62に流入した冷媒は、蒸発して室外に冷熱を放出して、バイパス電磁弁86、アキュムレータ69を介して圧縮機61に戻る。」

1i)「【0044】
なお、上述の説明は、冷却加熱の設定モードをCHHモードで説明をしたが、加熱を1室の商品収納室で行うCCHモード、CHCモードでも同様な効果が得られる。また、上述の説明は、2室の商品収納室を冷却加熱兼用とした自動販売機で説明をしたが、1室のみの商品収納室を冷却加熱兼用とした自動販売機でも同様な効果が得られる。」

1j)段落【0019】、【0033】及び図3、図5?7によれば、冷却単独回路60Aは、商品収納室内に配設された蒸発器65a、第1室内熱交換器65b及び第2室内熱交換器65cと、圧縮機61と、機械室50内に配設された室外熱交換器62と、膨張器63a、63b、63cとを冷媒配管にて順次接続して構成されていることが理解できる。

1k) 段落【0034】及び図3、図5?7によれば、圧縮機の吐出側の凝縮器電磁弁68の一の出口より並列接続された加熱器電磁弁68b、68cを介して第1室内熱交換器65b及び第2室内熱交換器65c入口側とそれぞれ接続する通路を備えることが理解できる。

1l)段落【0025】、【0034】及び図6、図7によれば、前記第1及び第2室内熱交換器65b、65cの少なくとも一方を通過した冷媒を、余剰な凝縮熱を排出するための室外補助熱交換器76の上流側に供給する管路を備えることが理解できる。

1m)段落【0026】、【0039】、【0040】、【0044】、図5及び6によれば、凝縮器電磁弁68は、入口が圧縮機61の吐出側に接続され、出口が室外熱交換器62または第1及び第2室内熱交換器65b、65cへ流れを切り替えられるようになっている。さらに、前記凝縮器電磁弁68から室内熱交換器65b、65c側に流出した冷媒は、途中で分岐し、それぞれ加熱器電磁弁68b、68cを介して前記第1及び第2室内熱交換器65b、65cに流入する。そして、前記凝縮器電磁弁68及び2つの加熱器電磁弁68b、68cを制御することにより、圧縮機61から吐出した冷媒を前記室外熱交換器62に流入させる状態、圧縮機61から吐出した冷媒を第1室内熱交換器65bに流入させる状態、圧縮機61から吐出した冷媒を第2室内熱交換器65cに流入させる状態、圧縮機61から吐出した冷媒を第1及び第2室内熱交換器65b、65cに流入させる状態のいずれかに切り替え可能に構成されていることが理解できる。

(2)引用発明
上記(1)及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「商品収納室40a、40b、40cの内部に配設された蒸発器65a、第1室内熱交換器65b及び第2室内熱交換器65cと、圧縮機61と、機械室50内に配設された室外熱交換器62と、膨張器63a、63b、63cとを冷媒配管にて順次接続して構成された冷却単独回路60Aと、
前記圧縮機61の吐出側の凝縮器電磁弁68の一の出口より並列接続された加熱器電磁弁68b、68cを介して第1室内熱交換器65b及び第2室内熱交換器65c入口側とそれぞれ接続する通路と、
前記第1及び第2室内熱交換器65b、65cの少なくとも一方を通過した冷媒を、余剰な凝縮熱を排出するための室外補助熱交換器76の上流側に供給する管路と、
を備えた冷媒回路を有する冷却/加熱ユニットにおいて、
入口が前記圧縮機61の吐出側に接続され、出口が室外熱交換器62または第1及び第2室内熱交換器65b、65cへ流れを切り替えられる3方電磁弁である凝縮器電磁弁68と、
前記凝縮器電磁弁68から第1及び第2室内熱交換器65b、65c側へ流出した冷媒が分岐した後、前記第1及び第2室内熱交換器65b、65cにそれぞれ流入するのを制御する2つの加熱器電磁弁68b、68cとを有し、
前記凝縮器電磁弁68及び2つの加熱器電磁弁68b、68cを制御することにより、圧縮機61から吐出した冷媒を前記室外熱交換器62に流入させる状態、圧縮機61から吐出した冷媒を第1室内熱交換器65bに流入させる状態、圧縮機61から吐出した冷媒を第2室内熱交換器65cに流入させる状態、圧縮機61から吐出した冷媒を第1及び第2室内熱交換器65b、65cに流入させる状態のいずれかに切替可能に構成され、
前記室外熱交換器62にて蒸発した冷媒を前記圧縮機61に戻すための第2バイパス管路85と、前記第2バイパス管路85への冷媒の流入出を制御するバイパス電磁弁86と、
商品収納室40a、40b、40cを冷却もしくは加熱の制御をする制御手段90を備え、
商品収納室40aを冷却し、商品収納室40b、40cを加熱するCHHモードに設定すると、制御手段90は、前記凝縮器電磁弁68を冷媒が加熱用電磁弁68b、68c側に流通する態様として、前記圧縮機61で圧縮された高温冷媒が室内熱交換器65b、65cに流入して凝縮し、その後前記室外補助熱交換器76でさらに凝縮し、前記膨張器63aで膨張した後に前記蒸発器65aに流入するようにし、
前記制御手段90は、商品収納室40b、40cの加熱単独の運転モードである-HHモードでの運転を行う場合には、バイパス電磁弁86を開成し、前記凝縮器電磁弁68を、冷媒が前記加熱器電磁弁68b、68c側に流通する態様とし、前記圧縮機61で圧縮された高温冷媒が、凝縮器電磁弁68、加熱器電磁弁68b、68cを経由して室内熱交換器65b、65cに流入して凝縮し、室外補助熱交換器76でさらに凝縮し、膨張器63aに流入して膨張し、第1バイパス管路80を経由して室外熱交換器62に流入して蒸発し、前記バイパス電磁弁86を介して圧縮機に戻るようにし、
すべての商品収納室を冷却するCCCモードに設定すると、制御手段90は、バイパス電磁弁86を閉止し、前記凝縮器電磁弁68を、冷媒が室外熱交換器62側に流通する態様にして、前記圧縮機61で圧縮された高温冷媒が、前記室外熱交換器62で凝縮し、前記膨張器63a、63b、63cで膨張し、蒸発器65a、室内熱交換器65b、65cに流入するようにした冷却/加熱ユニット。」

2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-325651号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)引用文献2の記載
2a)「【0016】これらの冷媒流入口としての入口A、冷媒流出口としての弁ポートB、弁ポートC及び弁ポートDが、図1の回路図における、電動式切換弁20の各符号A,B,C,Dにそれぞれ対応する。」

2b)「【0025】
【表1】



2c)「【0031】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、次のような効果が得られる。
・・・(中略)・・・
(2)前記の複数モードを、1基の電動式切換弁をステッピングモータで回転することで行うことができるため、複数の電磁弁を必要とする従来例のものに比べて、省スペース性に富み、かつ、配線、配管などの設置コストも抑制できて、コスト面で有利である。」

2d)「【図3】



2e)「【図4】



2f)「【図5】



3.引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された特開2014-112012号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)引用文献3の記載
3a)「【0003】
図15に示しているように、主経路と、高圧冷媒導入経路と、放熱経路と、戻経路とを有する冷媒回路を備えた冷媒回路装置の主経路120には、圧縮機21、庫外熱交換器122、ドライヤ23、入口側電子膨張弁24(24a、24b、24c)、キャピラリーチューブ26(26a、26b、26c)、庫内熱交換器27(27a、27b、27c)などが冷媒配管28で順次接続されて環状に構成されている。圧縮機21は、庫内熱交換器27を通過した冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態にして吐出するものである。庫外熱交換器122は、圧縮機21で圧縮した冷媒を導入して凝縮させるものである。入口側電子膨張弁24、キャピラリーチューブ26は、入口側電子膨張弁24の弁開度を調整して冷媒流量を制御するとともに、庫外熱交換器122で凝縮した冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。そして、庫内熱交換器27は、対象となる商品収容庫3(3a、3b、3c)の内部に配設されている。」

3b)「【0006】
放熱経路140には、加熱側電子膨張弁42とキャピラリーチューブ43が接続してあり、加熱側電子膨張弁42の弁開度を調整して冷媒流量を制御するとともに、冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。そして放熱経路140は、庫外熱交換器122に隣接する態様で配設された加熱側庫外熱交換器45の入口側に接続された経路である。この放熱経路140は、庫内熱交換器27cで凝縮した冷媒を加熱側庫外熱交換器45に供給するためのものである。」

3c)「【0012】
このように、冷媒回路110には、圧縮機21で圧縮された冷媒を凝縮するための庫外熱交換器122と、庫外熱交換器122に隣接する態様で配設され、庫内熱交換器27cで凝縮した冷媒を放熱させる加熱側庫外熱交換器45と、2つの庫外熱交換器を備える必要がある。しかしながら、このように2つの庫外熱交換器を備えると冷媒回路装置の製造コストが嵩むという課題がある。」

3d)「【0021】
請求項1の発明によれば、対象室の内部に配設された庫内熱交換器と、前記庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した冷媒を導入して凝縮させる庫外熱交換器と、を第1送出状態の流路切替弁を介して冷媒配管で順次接続して構成した主経路と、前記流路切替弁を第2送出状態に切り替えることにより前記圧縮機で圧縮した冷媒を導入し、前記庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設されたものに供給することにより該庫内熱交換器で冷媒を凝縮させて該室の内部雰囲気を加熱させる高圧冷媒導入経路と、前記加熱対象となる室に配設された前記庫内熱交換器で凝縮した冷媒を導入して前記庫外熱交換器に供給し、前記主経路の前記庫内熱交換器の上流側に戻す放熱経路と、前記加熱対象となる室に配設された前記庫内熱交換器で凝縮した冷媒を導入して前記庫外熱交換器に供給された冷媒を前記主経路の前記圧縮機の上流側に戻すバイパス経路と、から構成されることにより、庫外熱交換器を主経路と放熱経路とで共有させ、2つの庫外熱交換器を大型化させた1つの庫外熱交換器とすることで、加熱単独運転時に周囲温度が低い場合にも庫外熱交換器の吸熱量を増加させ、庫内熱交換器が商品収容庫内へ放熱するのに必要な熱量を吸熱できるようにして加熱能力を向上させ、消費電力量を低減して、加熱運転時の性能アップ、省エネを図ることができ、さらに、2つの庫外熱交換器を1つの庫外熱交換器とすることにより、製造コストの低減化を図ることができるので、製造コストの低減化、および、加熱運転時の性能アップ、省エネを図ることができる冷媒回路装置を提供することが可能となる。」

3e)「【0053】
左庫内熱交換器27cで凝縮した冷媒は、放熱経路40を構成する放熱配管41に配設された後述するように作用する加熱側電子膨張弁42(第1の膨張機構)とキャピラリーチューブ43を通過して第3合流点P5で冷媒配管28(主経路20)に流入し、庫外熱交換器22に至り、該庫外熱交換器22で周囲空気に放熱する。庫外熱交換器22で放熱した冷媒は、ドライヤ23を経由して開成する入口側電子膨張弁24a、24b(第2の膨張機構)とキャピラリーチューブ26a、26bを通過する。入口側電子膨張弁24a、24bおよびキャピラリーチューブ26a、26bを通過した冷媒は、それぞれ断熱膨張して右庫内熱交換器27aおよび中庫内熱交換器27bに至り、これら右庫内熱交換器27aおよび中庫内熱交換器27bでそれぞれ蒸発して右庫3aおよび中庫3bの内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファン(F1:図2参照)の駆動により右庫3aおよび中庫3bの内部を循環し、これにより右庫3aおよび中庫3bに収容された商品は循環する内部空気により冷却される。右庫内熱交換器27aおよび中庫内熱交換器27bで蒸発した冷媒は、圧縮機21に吸引され、圧縮機21で圧縮されて上述した循環を繰り返す。」

3f)「【図3】




3g)「【図5】



3h)「【図15】



第5 対比
引用発明の「商品収納室」は、本願発明の「室」に相当し、同じく、「商品収納室の内部に配設された蒸発器65a、第1室内熱交換器65b及び第2室内熱交換器65c」は、「室の内部に配設された庫内熱交換器」に相当する。
引用発明の「圧縮機61」、「機械室50内に配設された室外熱交換器62」、「膨張器63a、63b、63c」は、それぞれ、本願発明の「庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機」、「室の外部に配設された庫外熱交換器」、「庫内熱交換器を通過した冷媒を断熱膨張させる膨張機構」に相当する。
そうすると、引用発明の「蒸発器65a、第1室内熱交換器65b及び第2室内熱交換器65cと、圧縮機61と、機械室50内に配設された室外熱交換器62と、膨張器63a、63b、63cとを冷媒配管にて順次接続して構成された冷却単独回路60A」は、本願発明の「室の内部に配設された庫内熱交換器と、前記庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記室の外部に配設された庫外熱交換器と、前記庫外熱交換器を通過した冷媒を断熱膨張させる膨張機構とを冷媒管路にて順次接続して構成された主経路」に相当する。
引用発明の「前記圧縮機の吐出側の凝縮器電磁弁68の一の出口より」「加熱器電磁弁68b」「を介して第1室内熱交換器65b」「入口側と」「接続する通路」は、「CHHモード」及び「-HHモード」において「第1室内熱交換器65b」に冷媒を供給して商品収納室を加熱するものであるから、本願発明の「前記圧縮機の吐出側の冷媒管路より分岐し、かつ該圧縮機で圧縮された冷媒を前記庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設された第1加熱庫内熱交換器に供給する第1高圧冷媒管路」に相当する。
同様に、引用発明の「前記圧縮機の吐出側の凝縮器電磁弁68の一の出口より」「加熱器電磁弁68cを介して」「第2室内熱交換器65c入口側と」「接続する通路」は、本願発明の「前記圧縮機の吐出側の冷媒管路より分岐し、かつ前記第1加熱庫内熱交換器が配設された室とは異なる加熱対象となる室に配設された第2加熱庫内熱交換器に対して前記圧縮機で圧縮された冷媒を供給する第2高圧冷媒管路」に相当し、引用発明の上記各通路を合わせたものが本願発明の「高圧冷媒導入経路」に相当する。
引用発明の「前記第1及び第2室内熱交換器65b、65cの少なくとも一方を通過した冷媒を、余剰な凝縮熱を排出するための室外補助熱交換器76の上流側に供給する管路」は、本願発明の「前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方を通過した冷媒を前記主経路における前記庫外熱交換器の上流側に供給する放熱経路」と、「前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方を通過した冷媒を室外の熱交換器の上流側に供給する放熱経路」との限りで一致する。
引用発明の「冷却/加熱ユニット」は、本願発明の「冷媒回路を有する冷媒回路装置」に相当する。

引用発明の「前記室外熱交換器62にて蒸発した冷媒を前記圧縮機61に戻すための第2バイパス管路85」は、前記室外熱交換器62の出口と前記圧縮機61の入口側に設けられたアキュムレータ69とを接続するものであるから、本願発明の「前記庫外熱交換器を通過した冷媒を導入して前記圧縮機に戻すためのバイパス管路」に相当する。
引用発明の「第2バイパス管路85への冷媒の流入出を制御するバイパス電磁弁86」は、本願発明の「前記バイパス管路に開閉可能に配設され、かつ開成する場合は該バイパス管路に冷媒が通過することを許容する一方、閉成する場合は該バイパス管路に冷媒が通過することを規制するバイパスバルブ」に相当する。
引用発明の「商品収納室40aを冷却し、商品収納室40b、40cを加熱するCHHモード」での運転は、本願発明の「前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方が配設された室の内部空気を加熱するとともに他の庫内熱交換器が配設された室の内部空気を冷却する冷却加熱運転」に相当する。そして、引用発明の「前記圧縮機61で圧縮された高温冷媒が室内熱交換器65b、65cに流入して凝縮し、その後前記室外補助熱交換器76でさらに凝縮し、前記膨張器63aで膨張した後に前記蒸発器65aに流入するように」する「制御手段90」と、本願発明の「前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記第1高圧冷媒管路及び第2高圧冷媒管路の少なくとも一方に導入されるようにして前記庫外熱交換器を通過した冷媒が前記膨張機構で断熱膨張して庫内熱交換器に送出されるようにする制御手段」は、「前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記第1高圧冷媒管路及び第2高圧冷媒管路の少なくとも一方に導入されるようにして前記室外の熱交換器を通過した冷媒が前記膨張機構で断熱膨張して庫内熱交換器に送出されるようにする制御手段」との限りで一致する。
引用発明の「商品収納室40b、40cの加熱単独の運転モードである-HHモードでの運転」は、本願発明の「前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方が配設された室の内部空気のみを加熱する加熱単独運転」に相当する。そして、引用発明の「前記圧縮機61で圧縮された高温冷媒が、凝縮器電磁弁68、加熱器電磁弁68b、68cを経由して室内熱交換器65b、65cに流入して凝縮し、室外補助熱交換器76でさらに凝縮し、膨張器63aに流入して膨張し、第1バイパス管路80を経由して室外熱交換器62に流入して蒸発し、前記バイパス電磁弁86を介して圧縮機に戻るように」することは、本願発明の「前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記第1高圧冷媒管路及び第2高圧冷媒管路の少なくとも一方に導入されるようにするとともに、前記バイパスバルブを開成させて前記庫外熱交換器を通過した冷媒が前記バイパス管路を通過するように」することに相当する。
引用発明の「すべての商品収納室を冷却するCCCモード」での運転は、本願発明の「いずれかの室の内部空気のみを冷却する冷却単独運転」に相当する。そして、引用発明の「バイパス電磁弁86を閉止し」「前記圧縮機61で圧縮された高温冷媒が、前記室外熱交換器62で凝縮し、前記膨張器63a、63b、63cで膨張し、蒸発器65a、室内熱交換器65b、65cに流入するように」することは、本願発明の「前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記庫外熱交換器を通過するようにするとともに、前記バイパスバルブを閉成させて前記庫外熱交換器を通過した冷媒が前記膨張機構で断熱膨張して庫内熱交換器に送出されるようにする」ことに相当する。

よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
室の内部に配設された庫内熱交換器と、前記庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記室の外部に配設された庫外熱交換器と、前記庫外熱交換器を通過した冷媒を断熱膨張させる膨張機構とを冷媒管路にて順次接続して構成された主経路と、
前記圧縮機の吐出側の冷媒管路より分岐し、かつ該圧縮機で圧縮された冷媒を前記庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設された第1加熱庫内熱交換器に供給する第1高圧冷媒管路と、前記圧縮機の吐出側の冷媒管路より分岐し、かつ前記第1加熱庫内熱交換器が配設された室とは異なる加熱対象となる室に配設された第2加熱庫内熱交換器に対して前記圧縮機で圧縮された冷媒を供給する第2高圧冷媒管路とを有する高圧冷媒導入経路と、
前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方を通過した冷媒を室外の熱交換器の上流側に供給する放熱経路と
を備えた冷媒回路を有する冷媒回路装置において、
前記庫外熱交換器を通過した冷媒を導入して前記圧縮機に戻すためのバイパス管路と、
前記バイパス管路に開閉可能に配設され、かつ開成する場合は該バイパス管路に冷媒が通過することを許容する一方、閉成する場合は該バイパス管路に冷媒が通過することを規制するバイパスバルブと、
前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方が配設された室の内部空気を加熱するとともに他の庫内熱交換器が配設された室の内部空気を冷却する冷却加熱運転を行う場合には、前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記第1高圧冷媒管路及び第2高圧冷媒管路の少なくとも一方に導入されるようにして前記室外の熱交換器を通過した冷媒が前記膨張機構で断熱膨張して庫内熱交換器に送出されるようにする制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1加熱庫内熱交換器及び前記第2加熱庫内熱交換器の少なくとも一方が配設された室の内部空気のみを加熱する加熱単独運転を行う場合には、前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記第1高圧冷媒管路及び第2高圧冷媒管路の少なくとも一方に導入されるようにするとともに、前記バイパスバルブを開成させて前記庫外熱交換器を通過した冷媒が前記バイパス管路を通過するようにし、
いずれかの室の内部空気のみを冷却する冷却単独運転を行う場合には、前記圧縮機で圧縮された冷媒が前記庫外熱交換器を通過するようにするとともに、前記バイパスバルブを閉成させて前記庫外熱交換器を通過した冷媒が前記膨張機構で断熱膨張して庫内熱交換器に送出されるようにする冷媒回路装置。

[相違点1]
本願発明においては、「入口が前記圧縮機の出口側の冷媒管路に接続され、第1出口が前記庫外熱交換器の入口側の冷媒管路に接続され、第2出口が前記第1高圧冷媒管路に接続され、並びに第3出口が前記第2高圧冷媒管路に接続されてなり、前記入口と前記第1出口とを連通する第1送出状態、前記入口と前記第2出口とを連通する第2送出状態、前記入口と前記第3出口とを連通する第3送出状態、並びに前記入口と前記第2出口及び前記第3出口とを連通する第4送出状態のいずれかに切替可能な四方弁」を備え、「冷却加熱運転を行う場合には、前記四方弁を前記第2送出状態、前記第3送出状態及び前記第4送出状態のいずれかに調整し」、「加熱単独運転を行う場合には、前記四方弁を前記第2送出状態、前記第3送出状態及び前記第4送出状態のいずれかに調整し」、「冷却単独運転を行う場合には、前記四方弁を前記第1送出状態に調整し」ているのに対し、引用発明においては、「3方電磁弁である凝縮器電磁弁68」と2つの「加熱器電磁弁68b、68c」を備え、「CHHモード」では「前記凝縮器電磁弁68を冷媒が加熱用電磁弁68b、68c側に流通する態様とし」、「-HHモード」では「前記凝縮器電磁弁68を、冷媒が前記加熱器電磁弁68b、68c側に流通する態様とし」、「CCCモード」では「前記凝縮器電磁弁68を、冷媒が室外熱交換器62側に流通する態様にし」ている点。

[相違点2]
本願発明においては、放熱経路における室外の熱交換器が「前記主経路における前記庫外熱交換器」であって、冷却加熱運転を行う場合には、「前記庫外熱交換器」を通過した冷媒が膨張機構で断熱膨張して庫内熱交換器に送出されるのに対し、引用発明においては、放熱経路における室外の熱交換器が「室外補助熱交換器76」であって、冷却加熱運転を行う場合には、「前記室外補助熱交換器76」を通過した冷媒が膨張器63aで膨張して蒸発器65aに送出される点。

第6 判断
1.相違点1について
本願発明における「第1出口」は「庫外熱交換器の入口」と、「第2出口」は第1高圧冷媒管路を介して「第1加熱庫内熱交換器」と、「第3出口」は第2高圧冷媒管路を介して「第2加熱庫内熱交換器」とそれぞれ接続するものであることを踏まえると、引用発明において、「3方電磁弁である凝縮器電磁弁68」と2つの「加熱器電磁弁68b、68c」により実現されている「圧縮機61から吐出した冷媒を前記室外熱交換器62に流入させる状態」、「圧縮機61から吐出した冷媒を第1室内熱交換器65bに流入させる状態」、「圧縮機61から吐出した冷媒を第2室内熱交換器65cに流入させる状態」、「圧縮機61から吐出した冷媒を第1及び第2室内熱交換器65b、65cに流入させる状態」は、本願発明において四方弁により実現されている「入口と第1出口とを連通する第1送出状態」、「入口と第2出口とを連通する第2送出状態」、「入口と第3出口とを連通する第3送出状態」、「入口と第2出口及び第3出口とを連通する第4送出状態」にそれぞれ相当するといえる。
そして、引用発明の「CHHモード」及び「-HHモード」における「凝縮器電磁弁68を冷媒が加熱用電磁弁68b、68c側に流通する態様」は、本願発明の「冷却加熱運転」及び「加熱単独運転」を行う場合の「前記第2送出状態、前記第3送出状態及び前記第4送出状態のいずれか」に相当し、引用発明の「CCCモード」における「前記凝縮器電磁弁68を、冷媒が室外熱交換器62側に流通する態様」は、本願発明の「冷却単独運転を行う場合」の「前記第1送出状態」に相当する。
すなわち、引用発明の「3方電磁弁である凝縮器電磁弁68」と2つの「加熱器電磁弁68b、68c」は、本願発明の「四方弁」と同様の冷媒の送出状態を実現しているものである。
一方、引用文献2には、冷媒流入口として入口A、冷媒流出口として弁ポートB?Dの3つの出口を備え、前記弁ポートB?Dの開閉を制御可能な電動式切替弁が記載されている(上記第4 2.2a)、2b)、2d)ないし2f)における段落【0016】、【0025】及び図3?5参照)。この電動式切替弁は、3つの弁ポートの開閉状態を自由に組合せ可能であるため、本願発明の、入口と第1出口とを連通する第1送出状態、入口と第2出口とを連通する第2送出状態、入口と第3出口とを連通する第3送出状態、並びに入口と第2出口及び第3出口とを連通する第4送出状態のいずれかに切替可能な「四方弁」に相当するものといえる。また、引用文献2の上記第4 2.2c)段落【0031】には、「複数の電磁弁を必要とする従来例のものに比べて、省スペース性に富み、かつ、配線、配管などの設置コストも抑制できて、コスト面でも有利である。」との記載もあることから、引用発明の「凝縮器電磁弁68」と2つの「加熱器電磁弁68b、68c」に代えて、上記「電動式切替弁」を採用する動機付けが認められる。
なお、引用文献2の電動式切替弁は冷媒回路の凝縮器出口側に適用したものであるが、冷媒回路の凝縮器入口側の管路に対し、3つ以上の出口を有する切替弁を適用する例は、例えば国際公開第2011/048724号([0051]-[0057]、図14-17参照)にも記載されており、引用文献2の電動式切替弁も同様に凝縮器入口側管路に適用可能であると認められる。
よって、引用発明において、凝縮器電磁弁68と2つの加熱器電磁弁68b、68cという複数の電磁弁を用いて複数の流路の切り替えを行う構成に代えて、引用文献2の電動式切替弁を適用することは当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、相違点1にかかる本願発明の構成は、引用発明及び引用文献2の技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

2.相違点2について
引用文献3には、冷媒回路装置において、複数の庫内熱交換器に対して、1台の庫外熱交換器により冷媒回路を構成し、CCC運転、HCC運転、及び加熱単独運転を実現することが記載されており、庫外熱交換器122と、放熱経路140の加熱側庫外熱交換器45の2つの庫外熱交換器を備えるとコストが嵩むという問題を解決すべく、庫外熱交換器を主経路と放熱経路とで共有させ、2つの庫外熱交換器を大型化させた1つの庫外熱交換器とすることでコストの低減化を図るという技術事項が開示されている。上記引用文献3の技術事項において、冷却加熱運転(HCC運転)を行う場合は、共通の庫外熱交換器(22)を通過した冷媒が膨張機構(24a、24c)で断熱膨張して庫内熱交換器(27a、27b)に送出される(上記第4 3.3e)段落【0053】及び3g)図5参照。)。
そうすると、引用発明の冷却/加熱ユニットにおいても、コスト低減のために、引用文献3の技術事項を適用し、主経路の「室外熱交換器62」を放熱経路の熱交換器として共有することは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、相違点2にかかる本願発明の構成は、引用発明及び引用文献3の技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

3.効果
本願発明の効果も、引用発明、引用文献2の技術事項、及び引用文献3の技術事項から予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

審判請求人は、「本願発明は、複数の電磁弁の開閉で圧縮機からの高圧冷媒の通過を制御する場合に、これら複数の電磁弁が故障等で開閉できなくなると圧縮機の吐出側の圧力が課題になってしますという課題に対し、・・・(中略)・・・それぞれの室に配設された庫内熱交換器に圧縮機で圧縮された高圧冷媒を供給するための各高圧冷媒導入経路に設けてある電磁弁と、圧縮機で圧縮された高圧冷媒の庫外への送出を許容若しくは規制する電磁弁を不要とし、電磁弁の故障等で開閉できなくなって圧縮機の吐出側の圧力が過大になってしまうことを防止するためのリリーフ配管やリリーフバルブも設ける必要がなくなり、部品点数、製造コストの低減化を図ることができるという本願独自の作用効果を奏するものです。」(令和元年5月24日付け審判請求書)と主張する。
しかしながら、複数の電磁弁を1つの四方弁に置き換えることにより、リリーフ配管等が不要になることは、引用文献2の技術事項に基いて当業者が予測できる効果に過ぎず、また、部品点数、製造コストの低減化については、前述の「3.判断(1)相違点1について」で言及したとおり、引用文献2の【0031】にも記載があることから、本願発明の作用効果が格別であるとは認められない。よって、上記審判請求人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と、引用文献2及び3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-05-08 
結審通知日 2020-05-12 
審決日 2020-06-01 
出願番号 特願2015-67077(P2015-67077)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 裕介  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 川上 佳
松下 聡
発明の名称 冷媒回路装置  
代理人 阪本 朗  

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