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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1364294
審判番号 不服2019-7237  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-03 
確定日 2020-07-16 
事件の表示 特願2015-106703「光変調器モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月22日出願公開、特開2016-218406〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成27年 5月26日 特許出願
平成30年10月19日付け 拒絶理由通知(同年10月23日発送)
平成30年12月21日 意見書・手続補正書
平成31年 1月 7日付け 拒絶理由通知(最後、同年1月15日発送)
平成31年 3月14日 意見書・手続補正書
平成31年 3月29日 補正の却下の決定(平成31年3月14日付け手続補正)、
拒絶査定(同年4月2日送達)
令和 元年 6月 3日 本件審判請求・手続補正書
令和 元年10月 3日 上申書

第2 令和元年6月3日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年6月3日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?9の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「【請求項1】
複数の出力導波路を有する半導体変調器と、
前記複数の出力導波路から出力される光が入射する入射面と、前記光が出射する出射面とを備えたレンズアレイと、
前記レンズアレイの前記入射面に設けられ、前記複数の出力導波路が並ぶ方向に長手方向を有し、前記複数の出力導波路から出力される光が透過する第1シリンドリカルレンズと、
前記レンズアレイの前記出射面に設けられ、前記第1シリンドリカルレンズの長手方向と交差する長手方向を有し、前記複数の出力導波路から出力される光がそれぞれ透過する複数の第2シリンドリカルレンズと、を備え、
前記レンズアレイは、前記第1シリンドリカルレンズと前記第2シリンドリカルレンズとに分離されており、
前記第2シリンドリカルレンズの凸側が、前記第1シリンドリカルレンズに向いたことを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項2】
前記第1シリンドリカルレンズの凸側が前記出力導波路に向いたことを特徴とする請求
項1に記載の光変調器モジュール。
【請求項3】
前記複数の出力導波路は、厚み方向のモードフィールド径が幅方向のモードフィールド径以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光変調器モジュール。
【請求項4】
前記複数の出力導波路は、サブμm?数μmオーダのモードフィールド径を有することを特徴とする請求項1または3記載の光変調器モジュール。
【請求項5】
前記第1シリンドリカルレンズおよび前記複数の第2シリンドリカルレンズは、ガラスの屈折率よりも高い屈折率を有することを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。
【請求項6】
前記第1シリンドリカルレンズおよび前記複数の第2シリンドリカルレンズは、3以上の屈折率を有することを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。
【請求項7】
前記第1シリンドリカルレンズおよび前記複数の第2シリンドリカルレンズは、シリコンであることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。
【請求項8】
前記複数の出力導波路は、厚さおよび幅の少なくともいずれか一方が出射端に向かって大きくなるテーパ形状を有することを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。
【請求項9】
前記半導体変調器は、前記出力導波路を4本備えることを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
平成30年12月21日付け手続補正(注;平成31年3月14日付け手続補正は却下されている)により補正された特許請求の範囲の請求項1?8の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
複数の出力導波路を有する半導体変調器と、
前記複数の出力導波路から出力される光が入射する入射面と、前記光が出射する出射面とを備えたレンズアレイと、
前記レンズアレイの前記入射面に設けられ、前記複数の出力導波路が並ぶ方向に長手方向を有し、前記複数の出力導波路から出力される光が透過する第1シリンドリカルレンズと、
前記レンズアレイの前記出射面に設けられ、前記第1シリンドリカルレンズの長手方向と交差する長手方向を有し、前記複数の出力導波路から出力される光がそれぞれ透過する複数の第2シリンドリカルレンズと、を備えることを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項2】
前記複数の出力導波路は、厚み方向のモードフィールド径が幅方向のモードフィールド径以下であることを特徴とする請求項1記載の光変調器モジュール。
【請求項3】
前記複数の出力導波路は、サブμm?数μmオーダのモードフィールド径を有することを特徴とする請求項1または2記載の光変調器モジュール。
【請求項4】
前記第1シリンドリカルレンズおよび前記複数の第2シリンドリカルレンズは、ガラスの屈折率よりも高い屈折率を有することを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。
【請求項5】
前記第1シリンドリカルレンズおよび前記複数の第2シリンドリカルレンズは、3以上の屈折率を有することを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。
【請求項6】
前記第1シリンドリカルレンズおよび前記複数の第2シリンドリカルレンズは、シリコンであることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。
【請求項7】
前記複数の出力導波路は、厚さおよび幅の少なくともいずれか一方が出射端に向かって大きくなるテーパ形状を有することを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。
【請求項8】
前記半導体変調器は、前記出力導波路を4本備えることを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、 レンズアレイの入射面に設けられた「第1シリンドリカルレンズ」とレンズアレイの出射面に設けられた「第2シリンドリカルレンズ」について、「分離されており、前記第2シリンドリカルレンズの凸側が、前記第1シリンドリカルレンズに向い」ているものに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定する要件を満たすか)について検討する。

(1)本件補正発明1について
本件補正発明1は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献について
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用文献1である、特開2014-167545号公報(平成26年9月11日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器モジュールに関する。」

b 「【0015】
図2は、比較例1に係る光変調器モジュールを示す上面図である。図2のように、比較例1の光変調器モジュールは、パッケージ20の第1側壁22に光入力窓30と光出力窓32とが並行して設けられている。光入力窓30及び光出力窓32には、光ファイバ34、36が貫通するフェルール38が固定されたホルダ40が、コリメートレンズ( 不図示) が収納されたホルダ42を介して接続される。ここで、パッケージ20において、第1側壁22の光入力窓30側の端に接続する側壁を第2側壁24、第1側壁22の光出力窓32側の端に接続する側壁を第3側壁26、第1側壁22に対向する側壁を第4側壁28とする。
【0016】
パッケージ20に設けられたTEC(サーモエレクトリッククーラ)46上にに、例えば半導体マッハツェンダ光変調器チップである変調器チップ50が搭載されている。ここで、変調器チップ50において、パッケージ20の第1側壁22に沿った端面を第1端面52、第2側壁24に沿った端面を第2端面54、第3側壁26に沿った端面を第3端面56、第4側壁28に沿った端面を第4端面58とする。変調器チップ50は、光入力窓30に接続された光ファイバ34から出射される光が、第2端面54に設けられた光入力端(入力ポート)60に入射される。
【0017】
ここで、光ファイバ34から出射された光が光入力端60に入射されるまでの経路を説明する。光ファイバ34から出射された光(入力光44)は、ホルダ42内のコリメートレンズでコリメート光にされた後、パッケージ20に設けられたミラー92で反射される。ミラー92で光軸が屈折させられた入力光44は、コリメートレンズ94を介して、光入力端60に入射される。
【0018】
このように、入力光44が変調器チップ50の第2端面54に入射する構成とすることで、低損失且つ簡易な光学系構成とすることができる。例えば、入力光44が変調器チップ50の第1端面52に入射する構成の場合、第1端面52から第4端面58に向かって延びる導波路を形成し、入力光44がこの導波路を経由することになる。このため、光の損失が増加してしまう。また、例えば、入力光44が変調器チップ50の第4端面58に入射する構成の場合、光ファイバ34が第1側壁22に接続されていることから、ミラーによる反射を2回行う必要があり、部品点数の増加や高い実装精度が求められる。
【0019 】
変調器チップ50は、光入力端60に入射された入力光44を変調して変調信号光を生成する。変調信号光は、変調器チップ50の第1端面52に設けられた第1光出力端(第1出力ポート)62及び第2光出力端(第2出力ポート)64から出射される。また、変調信号光の一部は、変調器チップ50の第2端面54に設けられた第1モニタ光出力端(第1モニタ出力ポート)66及び第3端面56に設けられた第2モニタ光出力端( 第2モニタ出力ポート)68からも出射される。このように、変調器チップ50は、光入力端60と第1及び第2光出力端62、64とが交差した関係で設けられ、第1及び第2光出力端62、64と交差する両端部(第2端面54及び第3端面56)に第1及び第2モニタ光出力端66、68が設けられている。
【0020】
第1光出力端62から出射された変調信号光は、コリメートレンズ96を介して、光の偏波を90°回転させる半波長板98に入射される。変調信号光は、半波長板98を通過した後、ミラー100で反射されて、偏波フィルタ102に入射される。一方、第2光出力端64から出射された変調信号光は、コリメートレンズ104を通過した後、半波長板を経由せずに、偏波フィルタ102に入射される。第1光出力端62と第2光出力端64とから出射された変調信号光は、偏波フィルタ102で合波され、ホルダ42内のコリメートレンズを介して光ファイバ36に入射される。」

c 図2は以下のとおりである。


(イ)上記記載及び図面から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

引用発明
「光変調器モジュールに関し、
光変調器モジュールは、パッケージ20の第1側壁22に光入力窓30と光出力窓32とが並行して設けられており、
光入力窓30及び光出力窓32には、光ファイバ34、36が貫通するフェルール38が固定されたホルダ40が、コリメートレンズが収納されたホルダ42を介して接続され、
パッケージ20に設けられたTEC(サーモエレクトリッククーラ)46上に、半導体マッハツェンダ光変調器チップである変調器チップ50が搭載され、
変調器チップ50は、光入力窓30に接続された光ファイバ34から出射される光が、第2端面54に設けられた光入力端(入力ポート)60に入射され、
変調器チップ50は、光入力端60に入射された入力光44を変調して変調信号光を生成し、変調信号光は、変調器チップ50の第1端面52に設けられた第1光出力端(第1出力ポート)62及び第2光出力端(第2出力ポート)64から出射され、
第1光出力端62から出射された変調信号光は、コリメートレンズ96を介して、光の偏波を90°回転させる半波長板98に入射され、半波長板98を通過した後、ミラー100で反射されて、偏波フィルタ102に入射され、
一方、第2光出力端64から出射された変調信号光は、コリメートレンズ104を通過した後、半波長板を経由せずに、偏波フィルタ102に入射され、第1光出力端62と第2光出力端64とから出射された変調信号光は、偏波フィルタ102で合波され、ホルダ42内のコリメートレンズを介して光ファイバ36に入射される、
光変調器モジュール。」

イ 引用例2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用文献2である、特開平7-43643号公報(平成7年2月14日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体レーザ応用機器としてのレーザ加工機や、光ファイバへの導光、あるいは固体レーザの励起光源に利用するための半導体レーザ集光器に関し、特に高効率に集光し得る半導体レーザ集光器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体レーザ素子は、活性層ストライプからレーザ光を出射する。図10に示すように、1W程度の高出力半導体レーザ素子12の活性層11の構造は、幅寸法(活性層に対して平行方向)が広く(100?200μm)、厚さ寸法(活性層に対して垂直方向)が薄く(0.1?1μm)、その全長は1mmに満たない程度のものである。このため、光の出射端は、線状光源となる。
【0003】これのビーム放射角は、活性層11に対して垂直成分θVが大きく(50?60度)、平行成分θHが小さい(?10度)。そのため、この半導体レーザ光を単レンズを用いて集光しようとすると、半導体レーザ素子自体に比べて比較的大きな光学系を要することとなる。垂直成分θVと平行成分θHとのビーム放射角の違いに対応して2種類のシリンドリカルレンズを用い、焦点距離の短いシリンドリカルレンズにて放射角が大きい垂直成分θVをコリメートし、焦点距離の長いシリンドリカルレンズにて放射角が小さい平行成分θHをコリメートして集光する試みもなされてきたが、やはり光学系が大きくなるという欠点があった。」

b 「【0024】以上は単一ストライプ半導体レーザ素子の集光方法について述べたが、マルチストライプアレイ半導体レーザ素子22の集光も同様に行うことができる。この場合、例えば図9に示すように、アレイの全幅(10mm程度)をカバーできる程度の長さ(例えば直径1mm、長さ15mm)を持つ片平面型放射状分布屈折率レンズ14を用い、活性層21が発するレーザ光を平面側14aから入射し、円筒面から出射して垂直成分をコリメートすればよく、平行成分については、更に各ストライプ光をマイクロシリンドリカルレンズアレイ6を用いてそれぞれコリメートすればよい。このようにして、複数の活性層が発するレーザ光の各々が、単一ストライプの場合と同様にコリメートされたビーム束が得られる。」

c 図9は以下のとおりである。


d 図9から、片平面型放射状分布屈折率レンズ14は、シリンドリカルレンズであること、及び片平面型放射状分布屈折率レンズ14の長手方向とマイクロシリンドリカルレンズアレイ6の長手方向が交差する方向に、離れて配置されていることが看て取れる。

(イ)上記記載及び図面から、引用例2には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「ビームの垂直成分、水平成分それぞれをコリメートするために、2種類のシリンドリカルレンズをそれぞれの長手方向を交差して離して配置すること。」

ウ 引用例3
本願の出願前に頒布された、特開平8-5874号公報(平成8年1月12日公開)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】光通信システムの伝送速度の高速化に伴い、光変調回路のさらなる広帯域化への要求が高まっている。すでに半導体レーザを直接変調することによって10Gb/sの高速動作が実現されているが、近年、半導体電界吸収型光変調器によって40GHz以上の帯域も報告されており、次世代超高速光通信システムへの適用が期待されている。これらの超高速動作可能な光素子の導波路の入出力端面に、光ファイバを光学的に結合・固定してなる光素子モジュールを実現する場合、いくつかの克服すべき問題点が残されている。
【0003】電界吸収型光変調器では一般に変調効率を高めるために電界に垂直な方向の光の閉じ込めを強くしている。導波路の断面形状は長方形となり、導波路の出射ビーム形状の断面は楕円形状となる。かかる傾向は、電界吸収型光変調器で顕著になる。一方、光ファイバのスポット形状は円形であることから、導波路と光ファイバを光学的に結合する際にはスポット形状の違いによる大きな結合損失を生じることになる。
・・・
【0005】(3)式から明らかなように光ファイバのスポットサイズを光学系により変換して最適化しても、光素子の導波路のビームの歪みに起因して結合効率が低下することは免れない。導波路の厚みは結晶成長技術により数原子層程度の厚さで制御可能である一方、導波路幅の加工に関してはエッチング加工技術に依存し、埋め込み型の導波路でドライエッチング技術を用いてもサブミクロンオーダーの導波路幅を実現することは困難である。したがって、電界吸収型光変調器のように変調効率を高めるために電界に垂直な方向の光の閉じ込めを強くすると、結合損失が増大することになり、変調効率と光学的結合効率の間には一般にトレードオフの関係が存在するといえる。このような光素子の導波路と、光ファイバの結合において結合効率を改善するには、導波路出射ビームのアスペクト比を変換し、ビーム形状を円形に近付けるための光学系を挿入する必要がある。」

エ 引用例4
本願の出願前に頒布された、特開平7-174931号公報(平成7年7月14日公開)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】半導体レーザ、半導体光変調器、半導体光アンプ、半導体受光器等の半導体光デバイスは光通信システムのキーデバイスとして各研究機関で盛んに研究が進められている。この様な半導体光デバイスを光通信網に適応する場合、光ファイバーに接合することが一般的である。しかしながら、通常の半導体光デバイスのビーム形状はファイバーのビーム形状と大きく異なるため、光ファイバーと半導体光デバイス間の結合損失が大きいという問題があった。特に半導体光デバイスがリッジ構造の場合、積層方向の光の閉じ込めに比べ積層方向に垂直な方向の光の閉じ込めが強く、これがビーム形状の非対称性の原因となり結合損失が大きくなるという問題があった。」

オ 引用例5
本願の出願前に頒布された、特開2007-156114号公報(平成19年6月21日公開)には、図面とともに、次の記載がある。

a 「【0054 】
図19は実施例7の構成において、第1の基板38およびその上に形成されたレンズアレイ34あるいは37と、第2の基板39およびその上に形成されたレンズアレイ35あるいは36を、向かいあわせる向きを逆にしたレンズアレイ81あるいは84、ならびにレンズアレイ82あるいは83とし、それぞれのレンズアレイが平凸型で、レンズアレイ81あるいは84と、レンズアレイ82あるいは83の平面同士が向き合うようにした上で、第1の基板38および第2の基板39との空隙に、透明な材料85を充填したものである。
【0055】
一例として、面発光素子アレイ2にGaAs基板上に形成され、波長850 nmで発振する面発光レーザを用い、透明な材料85に波長850nmで吸収係数が10cm^(-1)以下の樹脂を用いることができる。
【0056】
本発明によれば、相対するレンズアレイのレンズ効果を消失させずに、温度・湿度および経時変化に対する信頼性に優れた光信号入出力装置を実現できる効果がある。なお、図19では一次元アレイの例を示したが、実施例7同様、二次元アレイに対しても実施しても同様な効果があるのは勿論である。
〔第13の実施の形態〕
実施例12の図19中、R1=50μm、R2=100μm、R3=100 μm、R4=125μmとした結果、半導体装置5と光導波路基板11を位置合わせずれが±50μm以下のものがほぼ100%となる。この実施例では、各レンズR1? R4が先の関係式(2)および(3)を満足することがポイントである。
・・・
【0058】
図20は実施例12の図19中に支持柱86を導入し、面発光素子アレイ2 および面受光素子アレイ3と、第1の基板38とを一体の構造物、出力側光導波路8および入力側光導波路9と、第2の基板39とを一体の構造物であるようにしたものである。
【0059】
また、図21は図20の支持柱86を蓋状にして、面発光素子アレイ2および面受光素子アレイ3と、第1の基板38とを一体の構造物、出力側光導波路8および入力側光導波路9と、第2の基板39とを一体の構造物であるようにしたものである。特に、図21の構造では、平凸レンズの凸面に透明な充填材料が接触しないことから、相対する平凸レンズの向きを規定する必要がなくなり、図21に図示した通り、凸面同士が相対しても構わない。」

b 図21は以下のとおりである。


(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「光変調器モジュール」は、本件補正発明の「光変調器モジュール」に相当する。

イ 引用発明において「変調器チップ50」は、「半導体マッハツェンダ光変調器チップであ」り、「変調信号光は、変調器チップ50の第1端面52に設けられた第1光出力端(第1出力ポート)62及び第2光出力端(第2出力ポート)64から出射され」るから、引用発明の「変調器チップ50」は、複数の出力導波路を有しているといえ、本件補正発明の「複数の出力導波路を有する半導体変調器」に相当する。

ウ 引用発明において「第1光出力端62から出射された変調信号光は、コリメートレンズ96を介して、・・・偏波フィルタ102に入射され、一方、第2光出力端64から出射された変調信号光は、コリメートレンズ104を通過した後、・・・偏波フィルタ102に入射され」ることから、引用発明の当該構成は、本件補正発明の「前記複数の出力導波路から出力される光が入射する入射面と、前記光が出射する出射面とを備えたレンズアレイ」と、「出力導波路から出力される光が入射する入射面と、前記光が出射する出射面とを備えたレンズ」の点で共通する。

エ 上記ア?ウから、本件補正発明と引用発明は、 以下の一致点で共通 し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「複数の出力導波路を有する半導体変調器と、
出力導波路から出力される光が入射する入射面と、前記光が出射する出射面とを備えたレンズと、を備える
光変調器モジュール。」

<相違点>
レンズについて、本件補正発明が、「複数の」出力導波路から出力される光が入射する入射面と、前記光が出射する出射面とを備えたレンズ「アレイ」であり、「前記レンズアレイの前記入射面に設けられ、前記複数の出力導波路が並ぶ方向に長手方向を有し、前記複数の出力導波路から出力される光が透過する第1シリンドリカルレンズと、前記レンズアレイの前記出射面に設けられ、前記第1シリンドリカルレンズの長手方向と交差する長手方向を有し、前記複数の出力導波路から出力される光がそれぞれ透過する複数の第2シリンドリカルレンズと、を備え、前記レンズアレイは、前記第1シリンドリカルレンズと前記第2シリンドリカルレンズとに分離されており、前記第2シリンドリカルレンズの凸側が、前記第1シリンドリカルレンズに向い」ているのに対し、引用発明はそのような構成を有していない点。

(4)判断
ア 相違点について
上記相違点について検討するに、半導体変調器、半導体レーザを含む半導体光デバイスにおいて、半導体光デバイスからの出射光のビーム形状は楕円形であり、光ファイバのビーム形状は円形であることから、両者を結合するに際して結合損失が生じることは、引用例2?4に記載されているように技術常識である。
また、引用例2には、上記結合損失を低減するために、2種類のシリンドリカルレンズをそれぞれの長手方向を交差して離して配置することが記載されている。
そして、本件補正発明においても、上記技術常識に対応するべく、変調器チップと光ファイバとの結合損失を低減するために、引用例2に記載された事項を適用し、相違点に係る本件補正発明のようにすることは当業者が容易に想到しうる事項にすぎない。
また、2種類のシリンドリカルレンズの凸側を向かい合わせる点については、引用例5に記載されているように2つのレンズを配置するに際して利用状態等を勘案して、凸側をどのように配するかは当業者が適宜選択しうる設計事項にすぎない。なお、本件補正発明において、「前記第2シリンドリカルレンズの凸側が、前記第1シリンドリカルレンズに向いた」構成について、本件明細書の記載等を参酌しても、格別の作用効果は示されておらず、そのような点からも当該構成は格別なものといえない。
なお、請求人は令和元年10月3日付け上申書において、本件補正発明に「第1シリンドリカルレンズの曲面の曲率半径が一定ではない」との事項を追加する補正案を提示しているが、シリンドリカルレンズの曲率半径をどの程度に設定するかは当業者が適宜設定しうる事項にすぎず、当該構成を仮に考慮したとしても上記進歩性の判断に寄与するものではない。

イ 作用効果について
相違点1に係る本件補正発明の効果について、引用発明、引用例2に記載された事項及び技術常識から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年6月3日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件補正発明に対応する本件補正前の発明は、平成30年12月21日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明であるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された引用例1、2に記載された発明及び技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」
というものである。

3 進歩性について
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1、2及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第1シリンドリカルレンズ」と「第2シリンドリカルレンズ」について、「分離されており、前記第2シリンドリカルレンズの凸側が、前記第1シリンドリカルレンズに向い」ているものとの限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに 相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載された事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用例2に記載された事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-05-08 
結審通知日 2020-05-12 
審決日 2020-05-27 
出願番号 特願2015-106703(P2015-106703)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣崎 拓登  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 井上 博之
松川 直樹
発明の名称 光変調器モジュール  
代理人 片山 修平  
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