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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1364296
審判番号 不服2019-7672  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-10 
確定日 2020-07-16 
事件の表示 特願2015- 66468「積層鉄心の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-187253〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成27年3月27日の出願であって、平成30年11月19日付けの拒絶理由の通知に対し、平成31年1月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成31年3月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和元年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 令和元年6月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年6月10日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
鋼板から打抜き形成した鉄心片を積層して製造する積層鉄心の製造方法において、
前記鉄心片の製品形状を決定する一方の打抜き刃物Aと、該打抜き刃物Aと対となる他方の打抜き刃物Bとの間に形成されるクリアランスを、該打抜き刃物Bの表面の一部に凹部を設けることにより部分的に拡大させ、発生するダレの幅を大きくし、
前記凹部の部分における前記クリアランスを前記鋼板の板厚の0.1?0.7倍とし、
前記鉄心片の側部に打抜き方向に沿って層状に形成されるせん断面層と破断面層との形成比率を部分的に変えることにより、光の反射状況が異なる一定幅の光反射特定領域を形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記打抜き刃物Aを打抜きダイ、前記打抜き刃物Bを打抜きパンチとして、該打抜きパンチの外周部の一部に前記凹部を設けて前記鉄心片の外形抜きを行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記打抜き刃物Aを打抜きパンチ、前記打抜き刃物Bを打抜きダイとして、該打抜きダイの内周部の一部に前記凹部を設けて前記鉄心片の内形抜きを行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法において、1枚の前記鋼板から多列取りされる前記鉄心片のうち、特定の列から打抜かれる前記鉄心片に前記光反射特定領域を形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の積層鉄心の製造方法において、前記特定の列は複数であって、前記光反射特定領域の位置、幅、又は個数を前記列毎に変えることを特徴とする積層鉄心の製造方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成31年1月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
打抜き形成された鉄心片を積層して製造される積層鉄心において、
前記鉄心片の側部には、光の反射状況が異なる一定幅の光反射特定領域が周方向に沿って設けられ、前記側部の連続により形成される側面には、前記光反射特定領域により形成される縞模様が存在しており、
前記光反射特定領域に発生するダレの幅は、残部領域で発生するダレの幅よりも大きくなっていることを特徴とする積層鉄心。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心において、前記縞模様は、前記光反射特定領域が、周方向に沿って一定角度毎に配置されることにより形成されることを特徴とする積層鉄心。
【請求項3】
請求項1記載の積層鉄心において、前記縞模様は、前記光反射特定領域が、周方向に沿って一定角度毎に積層方向に沿って複数個ずつ連続することにより形成されることを特徴とする積層鉄心。
【請求項4】
請求項1記載の積層鉄心において、前記縞模様は、前記光反射特定領域が、周方向角度位置を徐々に変化させながら積層方向に沿って連続することにより形成されることを特徴とする積層鉄心。
【請求項5】
請求項1記載の積層鉄心において、前記縞模様は、前記光反射特定領域が、積層方向に沿って連続することにより形成されることを特徴とする積層鉄心。
【請求項6】
打抜き形成した鉄心片を積層して製造する積層鉄心の製造方法において、
前記鉄心片の製品形状を決定する一方の打抜き刃物Aと、該打抜き刃物Aと対となる他方の打抜き刃物Bとの間に形成されるクリアランスを、該打抜き刃物Bの表面の一部に凹部を設けることにより部分的に拡大させ、発生するダレの幅を大きくし、前記鉄心片の側部に打抜き方向に沿って層状に形成されるせん断面層と破断面層との形成比率を部分的に変えることにより、光の反射状況が異なる一定幅の光反射特定領域を形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の積層鉄心の製造方法において、前記打抜き刃物Aを打抜きダイ、前記打抜き刃物Bを打抜きパンチとして、該打抜きパンチの外周部の一部に前記凹部を設けて前記鉄心片の外形抜きを行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
請求項6記載の積層鉄心の製造方法において、前記打抜き刃物Aを打抜きパンチ、前記打抜き刃物Bを打抜きダイとして、該打抜きダイの内周部の一部に前記凹部を設けて前記鉄心片の内形抜きを行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項9】
請求項6?8のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法において、1枚の鋼板から多列取りされる前記鉄心片のうち、特定の列から打抜かれる前記鉄心片に前記光反射特定領域を形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の積層鉄心の製造方法において、前記特定の列は複数であって、前記光反射特定領域の位置、幅、又は個数を前記列毎に変えることを特徴とする積層鉄心の製造方法。」

2.補正の適否
本件補正後の請求項1には、「積層鉄心の製造方法」という「方法」のカテゴリーの発明が記載されており、この本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の各請求項に係る発明のうち、「方法」のカテゴリーの発明である独立形式で記載された請求項6に係る発明に対応する。
そして、本件補正は、本件補正前の請求項6に記載された発明を特定するために必要な事項である「打抜き形成した鉄心片」について、「鋼板から」打抜き形成されると限定するとともに、「凹部を設けることにより部分的に拡大させ」た「クリアランス」について、「前記凹部の部分における前記クリアランスを前記鋼板の板厚の0.1?0.7倍と」すると限定し、本件補正後の請求項1の記載とする補正を含むものであって、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1.(1)の請求項1に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載及び引用発明
ア.引用文献1の記載
(ア)原査定(平成31年3月26日付け拒絶査定)の拒絶の理由で引用された、この出願の出願前に頒布された刊行物である、特開平4-334951号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下、同様である。)。

a.「【0007】図1に示すように、積層鉄芯1は所定枚数の積層鉄芯片2を積層することによって構成されており、各積層鉄芯片2には、それぞれシャフト孔2a、所定個数のクローズドスロット2b、2b…、カシメ突起2c、2c…、および該カシメ突起2cに隣設した逃げ孔2d、2d…が打ち抜き形成されている。
【0008】一方、図2に示す如く、各積層鉄芯片2における外周面の一部領域2Aには、該外周面の他の領域2Bにおける剪断面とは長さの異なる剪断面を有して成る指標部3が設けられている。すなわち、図に明示するように、上記指標部3における剪断面3aの板厚方向に対する長さTは、外周面の他の領域2Bにおける剪断面2eの長さtに対して短く形成されており、これにより外周面の一部領域2Aにおける上記指標部3は、他の領域2Bに対して明瞭に判別し得る外観を呈している。
【0009】上記指標部3は、後述する金型装置10により積層鉄芯片2が打ち抜き形成される際、各積層鉄芯片2の外周面上における同一箇所に形成されるため、これら積層鉄芯片2を積層して成る積層鉄芯1の外周面には、図1に示す如く各積層鉄芯片2、2…における指標部3、3…がスキュー方向(図2中のO-O線)に沿って列を成すことによるスキューライン4が現出し、このスキューライン4を見ることにで積層鉄芯1の外観からスキューの状況を確認することができる。また、上記スキューライン4を構成する指標部3は、積層鉄芯片2の外周面に対して面一に形成されているため、積層鉄芯1を完成した製品とするまでに特別な除去工程を必要としない。」

b.「【0010】一方、上記積層鉄芯1は、図3および図4に示す金型装置(製造装置)10によって製造される。上記金型装置10は、帯状鉄板から積層鉄芯片を連続的に打抜き形成して積層鉄芯を製造する順送り金型装置の最終ステーションを構成するもので、該金型装置10は、積層鉄芯片2の外周を打抜くための一組のダイ11とパンチ12とを具備している。上記ダイ11は、上記パンチ12のプレスストローク毎にスキュー相当角だけ回転し、上記パンチ12により打抜かれた所定枚数の積層鉄芯片2は、ダイ11の内部において順次スキューしつつ積層される。なお、上述した金型装置10の基本的な構成および動作態様は、従来から周知の金型装置と変わるところはない。
【0011】ところで、一組のダイとパンチとによって板材を打ち抜き加工する際、ダイおよびパンチ間のクリアランスの大小により、板材の板厚方向における剪断面の長さが変化する。すなわち、図7(a)の如くダイEとパンチFとのクリアランスGaが小さい場合、板材Wにおける剪断面の長さHaは破断面の長さIaより遥かに長く、図7(b)、図7(c)に示すように、クリアランスがGb、Gcと大きくなるに従って、剪断面の長さHb、Hcは徐々に小さくなる。
【0012】本発明に関わる金型装置10は、上記事象に着目して構成されたもので、図3および図4に示すように、パンチ12における外周部の一部には、クリアランス変異部としての凹部2a(当審注:「凹部2a」は、「凹部12a」の誤記と認められる。以下、同様。)が形成されており、該凹部2aは、図4に明示する如く幅Wが約1mm、深さDが0.035mmの溝状を呈し、パンチ12のプレスストローク方向に沿って延設されている。ここで、図4からも明らかなように、上記凹部2aが形成されていることにより、ダイ11とパンチ12とのクリアランスの一部領域が、他の領域のクリアランスに対して大きなものとなっている。かくして、上記金型装置10により打抜かれた積層鉄芯片2の外周面には、その一部領域に上記凹部2aによって短い剪断面3aが形成され、該剪断面3aの形成された部位によって上述した指標部3が構成されることとなる。なお、上記指標部3の構成された所定枚数の積層鉄芯片2が、ダイ11の内部において順次スキューしつつ積層されることにより、上述した如く外周面にスキューライン4(図1参照)の現出した積層鉄芯1が製造されることは言うまでもない。」

c.記載事項a.及びb.によると、帯状鉄板から打抜き形成した積層鉄芯片2を所定枚数積層して積層鉄芯1を製造する方法が記載されているといえる。

d.記載事項b.によると、積層鉄芯片2の外周を打抜くための一組のダイ11とパンチ12とのクリアランスの一部領域が、パンチ12における外周部の一部に凹部12aが形成されていることにより、他の領域のクリアランスに対して大きなものとなっているといえる。

e.記載事項a.及びb.並びに図2及び図7(a)の図示内容によると、積層鉄芯片2における外周面には、打抜き方向に沿って剪断面と破断面とが層状に形成されているといえ、また、外周面の一部領域2Aには、外周面の他の領域2Bにおける剪断面2eとは長さの異なる剪断面3aを有して成る指標部3が設けられ、外周面の一部領域2Aにおける指標部3は、他の領域2Bに対して明瞭に判別し得る外観を呈しているといえる。

(イ)引用発明
前記引用文献1の記載事項a.?e.及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「帯状鉄板から打抜き形成した積層鉄芯片2を所定枚数積層して積層鉄芯1を製造する方法において、
前記積層鉄芯片2の外周を打抜くための一組のダイ11とパンチ12とのクリアランスの一部領域が、前記パンチ12における外周部の一部に凹部12aが形成されていることにより、他の領域のクリアランスに対して大きなものとなっており、
前記積層鉄芯片2における外周面には、打抜き方向に沿って剪断面と破断面とが層状に形成され、前記外周面の一部領域2Aには、前記外周面の他の領域2Bにおける剪断面2eとは長さの異なる剪断面3aを有して成る指標部3が設けられ、前記外周面の一部領域2Aにおける前記指標部3は、他の領域2Bに対して明瞭に判別し得る外観を呈している積層鉄芯1を製造する方法。」

イ.引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の出願前に頒布された刊行物である、特開2008-264795号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

a.「【0002】
自動車、家電製品、建築構造物等に用いられる金属板1(被加工材1)には、図1のような打ち抜きパンチ2(上側の打ち抜き金型)と打ち抜きダイ3(下側の打ち抜き金型)により打ち抜き加工が施される場合が多い。
図2に示すように打ち抜き破面は、被加工材1の表面(上面)がパンチ2により全体的に押し込まれて形成されるだれ4、パンチ2とダイ3のクリアランス内に被加工材1が引き込まれ局所的に引き伸ばされてだれ4の下方に形成されるせん断面5、パンチ2とダイ3のクリアランス内に引き込まれた被加工材1が破断してせん断面5の下方に形成される破断面15、および被加工材1の裏面(下面)に生じるばり6によって構成される。図3のごとく、せん断面は2層、3層となる場合もあり、このような破面は2次せん断面7、3次せん断面8と呼ばれる。
本発明において、図2に示すだれ4の板厚方向(図2においては上下方向)の長さをL1[mm]、せん断面5の板厚方向の長さをL2[mm]、破断面15の板厚方向の長さをL3[mm]、板厚をL[mm]としたとき、
だれ率=L1/L×100[%]、
せん断面率(2次、3次せん断面を含む)=L2/L×100[%]、
破断面率=L3/L×100[%]、
と定義する。」

b.「【0011】
本発明者らは、打ち抜き破面の成形性に打ち抜き破面の特徴が影響するという従来知見から、打ち抜き加工工程(打ち抜きによる部材トリミング工程)と打ち抜き破面を含む打ち抜き後の金属材料(いわゆるブランク)の成形工程の間で簡易的に打ち抜き破面のだれ率、せん断面率、破断面率を測定することができるならば、クリアランス量や刃の磨耗をオンライン上で測定することなく、より高精度にブランクの成形前に成形加工後の部材の不良判定(予測)を行うことや、打ち抜き金型の交換、クリアランス調整のタイミングを見積もれると考えた。このような観点から、当初、量産ライン上で、目視による打ち抜き破面の観測を試みたが、板厚1mm?3mmに対して1mm以下の精度でせん断面、破断面等の破面形状の違いを見極めなければならず、目視による打ち抜き破面の不良判定は不可能であるとの結論に至った。
【0012】
実験レベルでのだれ率、せん断面率、破断面率の測定は、主に打ち抜き破面周辺のみを切り出した試験片に対して顕微鏡による破面観察が行われるが、試験片を作成するコストと時間の観点から量産ライン上でこのような観察を行うことは不可能である。
そこで、本発明者等が試行錯誤した結果、レーザー変位計、CCDカメラによる画像計測、接触式変位計のいずれかを使用することにより、打ち抜き加工工程から成形工程(伸びフランジ成形工程)へ被加工材が搬送される途中でのだれ率、せん断面率、破断面率の測定が可能であることを見出した。
【0013】
本発明においては、打ち抜き破面の測定結果が、実験や文献から得られた成形不良が生じる危険性がある破面の特徴(だれ率、せん断面率、破断面率)に近い場合に、打ち抜き加工のクリアランス、打ち抜き速度、打ち抜き荷重の何れか1つ以上の制御を行う(前記(1)に係る発明)。例えば、測定したせん断面率が成形良好と予測されるせん断面率基準より低かった場合にはクリアランス量を小さくすればよいし、打ち抜き速度を大きくしたり、打ち抜き荷重を大きくすることにより、簡易にせん断面率を制御でき、成形不良の低減を期待できる。また、だれ率が成形良好と予測されるだれ率基準より高かった場合に、クリアランス量を小さくしたり、打ち抜き速度を大きくしたり、打ち抜き荷重を大きくしたりしてもよい。あるいは、破断面率が成形良好と予測される破断面率基準より低かった場合に、クリアランス量を小さくしたり、打ち抜き速度を大きくしたり、打ち抜き荷重を大きくしたりしてもよい。さらには、クリアランス量、打ち抜き速度、打ち抜き荷重のいずれか2つ、あるいは3つを同時に制御しても良い。」

c.「【0018】
CCDカメラ等による画像計測を行う場合は、輝度値とRGB値による判定を行えばよい(前記(5)に係る発明)。市販の画像処理ソフトを用いれば、輝度値とRGB値の違いから、せん断面と破断面を区分でき、予め板厚を縦軸とする評価領域内でのせん断面と判断されるピクセル数と、破断面と判断されるピクセル数、および残りのピクセル数からその比率をだれ率として同定することができる。この手法ではばり率(ばりの板厚方向の長さが板厚に占める割合)の同定は困難であり、ばり率により打ち抜き後の成形不良や金型交換時期の判定を行う必要があり、かつ、ばり率が10%を超える打ち抜き条件である場合には他の測定手法を用いる方が望ましい。通常行われる打ち抜きでは、ばり率はだれ率、せん断面率、破断面率に比べて一桁以上小さいため、ばりによる測定誤差は無視しても構わない。図8に、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-100に付属の画像処理ソフトにより測定した例を示す。」

ウ.引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の出願前に頒布された刊行物である、実願昭55-1622号(実開昭56-102943号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

a.「しかしながら、従来の積層鉄心においては、プレスで圧延鋼板から打抜かれた打抜板は、圧延方向をそろえて積み重ねられており、これを所定積厚になるように分割しており、この分割と同時に適宜量づつ積層位置をずらせて積みかえるようにしているが、鉄心外観だけではこのような修正をしてあるかどうかがわからず、後工程でチエックする場合に、そのつど寸法測定をしてみなければわからない面倒があった。」(明細書第2ページ第1行?第9行)

(3)対比
以下、本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「積層鉄芯片2」、「積層鉄芯1」及び「積層鉄芯1を製造する方法」は、それぞれ本件補正発明の「鉄心片」、「積層鉄心」及び「積層鉄心の製造方法」に相当する。そして、引用発明の「帯状鉄板」と本件補正発明の「鋼板」とは、「鉄板」である点において共通するから、引用発明の「帯状鉄板から打抜き形成した積層鉄芯片2を所定枚数積層して積層鉄芯1を製造する方法」と、本件補正発明の「鋼板から打抜き形成した鉄心片を積層して製造する積層鉄心の製造方法」とは、「鉄板から打抜き形成した鉄心片を積層して製造する積層鉄心の製造方法」である点において共通する。
引用発明の「積層鉄芯片2の外周」は、本件補正発明の「鉄心片の製品形状」に相当し、引用発明の「ダイ11」及び「パンチ12」は、それぞれが組となって、積層鉄芯片2の外周を打抜くことにより、積層鉄芯片2の形状を決定するものであるから、それぞれ本件補正発明の「前記鉄心片の製品形状を決定する一方の打抜き刃物A」及び「該打抜き刃物Aと対となる他方の打抜き刃物B」に相当する。また、引用発明の「クリアランス」は、一組のダイ11とパンチ12との間に形成されるものであるから、本件補正発明の打抜き刃物Aと打抜き刃物Bとの間に形成される「クリアランス」に相当する。さらに、引用発明の「パンチ12における外周部」及び「凹部12a」は、それぞれ本件補正発明の「打抜き刃物Bの表面」及び「凹部」に相当し、引用発明の「クリアランスの一部領域が」「他の領域のクリアランスに対して大きなものとなって」いるという事項は、本件補正発明の「クリアランスを」「部分的に拡大させ」るという事項に相当する。すると、引用発明の「前記積層鉄芯片2の外周を打抜くための一組のダイ11とパンチ12とのクリアランスの一部領域が、前記パンチ12における外周部の一部に凹部12aが形成されていることにより、他の領域のクリアランスに対して大きなものとなって」いるという事項は、本件補正発明の「前記鉄心片の製品形状を決定する一方の打抜き刃物Aと、該打抜き刃物Aと対となる他方の打抜き刃物Bとの間に形成されるクリアランスを、該打抜き刃物Bの表面の一部に凹部を設けることにより部分的に拡大させ」るという事項に相当する。
引用発明の「積層鉄芯片2における外周面」は、本件補正発明の「鉄心片の側部」に相当する。また、引用発明の「剪断面」及び「破断面」は、それぞれ層状に形成されるものであるから、本件補正発明の「せん断面層」及び「破断面層」に相当する。さらに、引用発明の「指標部3」は、積層鉄芯片2における外周面の一部領域2Aに設けられ、当該外周面の他の領域2Bにおける剪断面2eとは長さの異なる剪断面3aを有していることから、剪断面と破断面との形成比率が、他の領域2Bにおける当該形成比率と異なっているといえ、これにより「他の領域2Bに対して明瞭に判別し得る外観を呈」する一定幅の領域となっているといえる。すると、引用発明の「前記積層鉄芯片2における外周面には、打抜き方向に沿って剪断面と破断面とが層状に形成され、前記外周面の一部領域2Aには、前記外周面の他の領域2Bにおける剪断面2eとは長さの異なる剪断面3aを有して成る指標部3が設けられ、前記外周面の一部領域2Aにおける前記指標部3は、他の領域2Bに対して明瞭に判別し得る外観を呈している」という事項と、本件補正発明の「前記鉄心片の側部に打抜き方向に沿って層状に形成されるせん断面層と破断面層との形成比率を部分的に変えることにより、光の反射状況が異なる一定幅の光反射特定領域を形成する」という事項とは、「前記鉄心片の側部に打抜き方向に沿って層状に形成されるせん断面層と破断面層との形成比率を部分的に変えることにより、他の領域と判別し得る外観を呈する一定幅の領域を形成する」点において共通する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、
「鉄板から打抜き形成した鉄心片を積層して製造する積層鉄心の製造方法において、
前記鉄心片の製品形状を決定する一方の打抜き刃物Aと、該打抜き刃物Aと対となる他方の打抜き刃物Bとの間に形成されるクリアランスを、該打抜き刃物Bの表面の一部に凹部を設けることにより部分的に拡大させ、
前記鉄心片の側部に打抜き方向に沿って層状に形成されるせん断面層と破断面層との形成比率を部分的に変えることにより、他の領域と判別し得る外観を呈する一定幅の領域を形成する積層鉄心の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
打抜き刃物Aと打抜き刃物Bとの間に形成されるクリアランスを部分的に拡大させることにより、本件補正発明は、「発生するダレの幅を大きくし」ているのに対し、引用発明は、このようなダレが生じるか、引用文献1に明記されていない点。

[相違点2]
鉄板の素材、及び凹部を設けることにより部分的に拡大させたクリアランスについて、本件補正発明は、「鋼板」であり、「前記凹部の部分における前記クリアランスを前記鋼板の板厚の0.1?0.7倍とし」ているのに対し、引用発明は、「帯状鉄板」であり、また、パンチ12に凹部12aが形成されている一部領域における、ダイ11とパンチ12とのクリアランスがどのようなものか明確でない点。

[相違点3]
他の領域と判別し得る外観を呈する一定幅の領域について、本件補正発明は、「光の反射状況が異なる」、「光反射特定領域」であるのに対し、引用発明は、指標部3の光の反射状況がどのようなものであるか、引用文献1に明記されていない点。

(4)判断
ア.相違点について
以下、前記相違点について判断する。
[相違点1]について
まず、本件補正発明の「発生するダレの幅」とは、この出願の明細書の段落[0017]の記載を考慮すると、図4(A)、(B)に示されるような、打抜きパンチの下降方向に沿った幅を意味するものと解される。
一方、引用発明は「前記積層鉄芯片2の外周を打抜くための一組のダイ11とパンチ12とのクリアランスの一部領域が、前記パンチ12における外周部の一部に凹部12aが形成されていることにより、他の領域のクリアランスに対して大きなものとなって」いるものの、引用文献1には、このような一組のダイ11とパンチ12で、積層鉄芯片2の外周を打抜いた際、クリアランスが大きいこの一部領域で打抜かれる積層鉄芯片2の外周面の一部領域2Aに、ダレが生じるか否かや、ダレが生じるとしても、ダレの幅がどのようなものになるかについては、明記されていない。
しかしながら、ダイとパンチで板材を打抜いた際、板材の外周面や内周面に、ダレ、せん断面、破断面等が生じるとともに、ダイとパンチの間のクリアランスが大きくなると、発生するダレの幅が大きくなることは、例えば、特開2001-321867号公報の段落[0018]、特開2014-188553号公報の段落[0004]、特開2011-136348号公報の段落[0004]-[0011]に記載されているように、この出願の出願前から知られている技術常識である。
そして、前記技術常識を踏まえると、引用発明の積層鉄芯片2の外周面には、剪断面及び破断面だけでなく、ダレも発生し、また、積層鉄芯片2の外周面の一部領域2Aは、ダイ11とパンチ12とのクリアランスが大きい一部領域で打抜かれる領域であるから、一部領域2Aに発生するダレの幅は、他の領域2Bに発生するダレの幅と比べて大きなものとなることは明らかである。
そうすると、引用発明は、「前記積層鉄芯片2の外周を打抜くための一組のダイ11とパンチ12とのクリアランスの一部領域が、前記パンチ12における外周部の一部に凹部12aが形成されていることにより、他の領域のクリアランスに対して大きなものとなって」いるという事項を備えることにより、引用発明の積層鉄芯片2の外周面の一部領域2Aに、他の領域2Bよりも幅の大きいダレが発生することとなるから、本件補正発明の打抜き刃物Aと打抜き刃物Bとの間に形成されるクリアランスを部分的に拡大させ、「発生するダレの幅を大きく」することと実質的に相違しない。
すると、前記相違点1は、実質的な相違点とはいえない。

[相違点2]について
打抜き形成した鉄心片を積層する積層鉄心の製造方法において、鋼板を打抜くことは、例えば、引用文献3の記載事項a.に記載されているように、この出願の出願前からきわめて周知の事項である。
そして、引用発明の帯状鉄板における鉄板について、引用文献1には、鋼板を用いることが明記されていないが、前記周知の事項を考慮すると、積層鉄心の材料として、鋼は一般的に用いられる材料であるといえるから、引用発明の帯状鉄板は、鋼板が用いられていると解され、仮に、鋼板が用いられていないとしても、前記周知の事項にならい、鋼板を用いることに格別の困難性はない。
また、引用発明のダイ11とパンチ12とのクリアランスのうち、パンチ12に凹部12aが形成されている一部領域のクリアランスは、積層鉄芯片2の外周面に設けられる指標部3に、他の領域2Bと明瞭に判別し得る剪断面等が形成されることや、積層鉄芯片2に破損等が生じることなく打抜きが行われること等を考慮の上、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が最適化し得るものである。そして、ダイとパンチの間のクリアランスを鋼板の板厚の10%程度とすることが、例えば、特開2001-321867号公報の段落[0017]、[0018]、特開2005-118796号公報の段落[0016]、[0021]、特開2012-237041号公報の段落[0065]に記載されているように、この出願の出願前から知られている技術常識であることを踏まえると、前記したように引用発明の帯状鉄板として、前記周知の事項にならい、鋼板を用いるとともに、引用発明のダイ11とパンチ12とのクリアランスのうち、パンチ12に凹部12aが形成されていない他の領域のクリアランスを、鋼板の板厚の10%程度とすることに格別の困難性はない。そうすると、パンチ12に凹部12aが形成されている一部領域のクリアランスは、鋼板の板厚の10%程度より大きくなるといえ、また、鋼板の板厚の70%以下とすることにも臨界的な意義は認められない。
すると、引用発明に前記周知の事項を適用するとともに、ダイ11とパンチ12とのクリアランスのうち、パンチ12に凹部12aが形成されている一部領域のクリアランスを最適化し、本件補正発明の前記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3]について
引用発明の「指標部3」は、「前記外周面の他の領域2Bにおける剪断面2eとは長さの異なる剪断面3aを有して成る」ものであって、「他の領域2Bに対して明瞭に判別し得る外観を呈している」ものである。そして、「指標部3」が「他の領域2B」と明瞭に判別し得る外観を呈する以上、「剪断面3a」の長さが「剪断面2e」の長さと異なることを外観上、把握できる必要があり、そのためには「剪断面3a」及び「剪断面2e」と、それぞれが隣接する破断面との境界を外観上、把握できる必要がある。したがって、引用発明の「剪断面3a」及び「剪断面2e」と、それぞれが隣接する破断面とは、外観上、異なって見える面であるといえるから、それぞれの光の反射状況も異なっているといえる。
この点に関し、ダイとパンチで板材を打抜いた際、板材の外周面や内周面に生じる、せん断面及び破断面の光の反射状況がそれぞれ異なるものになることは、引用文献2の記載事項a.?c.に示唆されている他、例えば、特開2005-237532号公報の段落[0012]、特開2011-136348号公報の段落[0006]-[0008]、図13、図14に記載されているように、この出願の出願前から知られている技術常識でもある。
そして、引用発明の「指標部3」は、外周面の他の領域2Bにおける剪断面2eとは長さの異なる剪断面3aを有しており、かつ、光の反射状況がそれぞれ異なる剪断面と破断面との形成比率が、他の領域2Bにおける当該形成比率と異なるものとなっているから、「指標部3」全体の光の反射状況も他の領域2Bの光の反射状況と異なっていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「指標部3」は、本件補正発明の「光の反射状況が異なる」、「光反射特定領域」と実質的に相違しない。
すると、前記相違点3は、実質的な相違点とはいえない。

イ.請求人の主張について
(ア)審判請求人は、令和元年6月10日に提出された審判請求書の「[4]本願発明と引用発明との対比 (1)引用文献1(特開平4-334951)」において、「引用文献1には、凹部が深さ0.035mmの溝状となっていることは記載されていますが、本願発明のように、目視による判別を確実に行うために、凹部の部分におけるクリアランスの大きさを、鋼板の板厚に対して所定の割合にすることについて、引用文献1には記載も示唆もありません。」と主張している。
しかしながら、前記「ア.」の「[相違点2]について」で検討したように、引用発明のダイ11とパンチ12とのクリアランスのうち、パンチ12に凹部12aが形成されている一部領域のクリアランスは、積層鉄芯片2の外周面に設けられる指標部3に、他の領域2Bと明瞭に判別し得る剪断面等が形成されることや、積層鉄芯片2に破損等が生じることなく打抜きが行われること等を考慮の上、当業者が最適化し得るものであり、パンチ12に凹部12aが形成されている一部領域のクリアランスを、鋼板の板厚の10%より大きくすることや、70%以下とすることにも格別の困難性はないものである。

(イ)審判請求人は、同じく審判請求書の「[4]本願発明と引用発明との対比 (1)引用文献1(特開平4-334951)」において、「また、光反射特定領域に発生するダレの幅が、残部領域で発生するダレの幅より大きくなっている点について、審査官殿は、「第4図においてダイとパンチとの隙間が指標部3で大きくなっている」として、引用文献1にも記載されていると主張されていますが、引用文献1の第4図が、指標部3のダレの幅が大きくなっていることを示しているとは思えません。」と主張している。
しかしながら、前記「ア.」の「[相違点1]について」で検討したように、この出願の出願前から知られている技術常識を踏まえると、引用発明の指標部3が設けられる積層鉄芯片2の外周面の一部領域2Aは、ダイ11とパンチ12とのクリアランスが大きい一部領域で打抜かれる領域であるから、一部領域2Aに発生するダレの幅は、他の領域2Bに発生するダレの幅と比べて大きなものとなることは明らかである。

(ウ)審判請求人は、同じく審判請求書の「[4]本願発明と引用発明との対比 (2)引用文献2(特開2008-264795)」において、「このことは、引用文献2に、目視による打ち抜き破面の観測を試みたが、板厚1mm?3mmに対して1mm以下の精度でせん断面、破断面等の破面形状の違いを見極めなければならず、目視による打ち抜き破面の不良判定は不可能であるとの結論に至ったとの記載がある(段落[0011]の7?10行目)ことからも明らかです。即ち、引用文献2が対象とする打ち抜き破面の情報は、目視によって得られるものではありません。引用文献2には、本願請求項1のように、凹部の部分におけるクリアランスを鋼板の板厚の0.1?0.7倍とし、発生するダレの幅を大きくし、せん断面層と破断面層との形成比率を部分的に変えて光反射特定領域光を形成することにより、光反射特定領域光を目視により確実に判別することができるようにしたことについて、記載も示唆もありません。」と主張している。
しかしながら、引用文献2の段落[0011](記載事項b.)に「目視による打抜き破面の不良判定は不可能であるとの結論に至った。」と記載されているのは、目視では、打ち抜き金型の交換、クリアランス調整のタイミングを見積もることができる程度に、せん断面、破断面等の破面形状の違い(経時的な変化)を見極めることができないという程度の意味にすぎず、せん断面と破断面が目視で区別できないという意味ではない。
そして、前記「ア.」の「[相違点3]について」で検討したように、ダイとパンチで板材を打抜いた際、板材の外周面や内周面に生じる、せん断面及び破断面の光の反射状況がそれぞれ異なるものになることは、引用文献2に示唆され、他の文献にも記載されているように、この出願の出願前から知られている技術常識である。また、引用発明の「指標部3」自体、剪断面と破断面との形成比率が、他の領域2Bにおける当該形成比率と異なっており、「他の領域2Bに対して明瞭に判別し得る外観を呈している」ものであるから、光の反射状況が他の領域2Bの光の反射状況と異なっていることは明らかである。

すると、審判請求人のこれらの主張は採用することができない。

ウ.本件補正発明の作用効果について
本件補正発明の作用効果については、引用発明及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明並びに前記技術常識及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和元年6月10日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、この出願の各請求項に係る発明は、平成31年1月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみてその請求項6に記載された事項により特定される、前記「第2[理由]1.(2)」に記載のとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし10に係る発明は、この出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開平4-334951号公報(本審決における「引用文献1」。)
引用文献2.特開2008-264795号公報(本審決における「引用文献2」。)
引用文献3.実願昭55-1622号(実開昭56-102943号)のマイクロフィルム(本審決における「引用文献3」。)

3.引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献2及び引用文献3の記載事項は、前記「第2[理由]2.(2)」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2.」で検討した本件補正発明の発明特定事項から、「鋼板から」という限定、及び「前記凹部の部分における前記クリアランスを前記鋼板の板厚の0.1?0.7倍と」するという限定を削除するものであり、その余の発明特定事項は本件補正発明と同じである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]2.(5)」に記載したとおり、引用発明並びに前記技術常識及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明並びに前記引用文献2,3等に示される技術常識及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項6に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含するこの出願は、この出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-05-01 
結審通知日 2020-05-12 
審決日 2020-05-29 
出願番号 特願2015-66468(P2015-66468)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02K)
P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 長馬 望
柿崎 拓
発明の名称 積層鉄心の製造方法  
代理人 中前 富士男  

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