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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1364303
審判番号 不服2019-13185  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-02 
確定日 2020-07-16 
事件の表示 特願2017-534444「装着体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月16日国際公開、WO2017/026446〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

(1)経緯
本願は、2016年(平成28年)8月8日(優先権主張 平成27年8月10日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年10月10日 :手続補正書の提出
平成30年12月25日付け:拒絶理由通知
平成31年 3月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 6月25日付け:拒絶査定
令和 1年 7月 2日 :拒絶査定の謄本の送達
令和 1年10月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出

(2)原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2003-093368号公報
引用文献2:国際公開第2008/044697号
引用文献3:特開2006-011614号公報
引用文献4:特開2005-242907号公報

(3)令和1年10月2日付け手続補正
令和1年10月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成31年3月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14(以下、「補正前の請求項1?14」という。)を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?12(以下、「補正後の請求項1?12」という。)とする補正である。
本件補正により、補正前の請求項11は補正後の請求項1に補正され、また、補正前の請求項1及び2は削除された。
補正前の請求項1及び11、補正後の請求項1の記載は次のとおりである。
符号A?Eは説明のため当審で付与したものであり、以下、発明特定事項A?発明特定事項Eと称する。各請求項において同じ記載内容の発明特定事項には同じ符号を付し、本件補正により補正された発明特定事項の符号には「’」を付した。
なお、下線は補正箇所である。

(補正前の請求項1及び11)
【請求項1】
「A ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体と、
B 前記筐体に設けられ、前記領域を撮像して画像を得る撮像素子と、
C1 前記領域に前記生体が存在しない状態から前記領域に前記生体が存在する状態に変化した場合に、
C2 予め取得された生体情報画像と、前記画像とに基づいて前記ユーザを認証する認証回路と
E を備える装着体。」

【請求項11】
「D1 前記認証回路の認証結果に応じて発光形態が変化する
D2 光源報知部をさらに備え、
D3 前記光源報知部は、前記発光形態の変化により
D4 ユーザに認証結果を報知する
E 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装着体。」

(補正後の請求項1)
【請求項1】
「A ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体と、
B 前記筐体に設けられ、前記領域を撮像して画像を得る撮像素子と、
C1 前記領域に前記生体が存在しない状態から前記領域に前記生体が存在する状態に変化した場合に、
C2’予め取得された生体情報画像と前記画像とを照合し、前記生体情報画像と前記画像との照合結果に基づいて前記ユーザを認証する認証回路と、
D1’前記認証回路が認証に成功した場合と前記認証回路が認証に失敗した場合とで発光形態を変えることにより
D4 ユーザに認証結果を報知する
D2 光源報知部と、
E を備える装着体。」

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
令和1年10月2日付けの手続補正(本件補正)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正における請求項1に係る補正事項(以下、「本件補正事項」という。)は、以下のとおりである。

(本件補正事項)
(1)発明特定事項C2の「予め取得された生体情報画像と、前記画像とに基づいて」を、
発明特定事項C2’の「予め取得された生体情報画像と前記画像とを照合し、前記生体情報画像と前記画像との照合結果に基づいて」とする補正

(2)発明特定事項D1及びD3の「前記認証回路の認証結果に応じて発光形態が変化する」、「前記光源報知部は、前記発光形態の変化により」を、
発明特定事項D1’の「前記認証回路が認証に成功した場合と前記認証回路が認証に失敗した場合とで発光形態を変えることにより」とする補正

2 新規事項の有無、単一性、補正の目的について
本件補正事項は、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面等に記載した事項の範囲内においてするものであって、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明とは発明の単一性の要件を満たすものである。
また、本件補正事項は、補正前の発明の発明特定事項を限定する補正である。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項の規定に適合するものであり、同条第5項第2号の特許請求の範囲を減縮することを目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、上記補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。

(1)補正発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、上記第1(3)の「補正後の請求項1」に記載された次のとおりのものと認める。
なお、発明特定事項A?Eは、説明のために、以下、「構成A」?「構成E」と称する。

(補正発明)
「A ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体と、
B 前記筐体に設けられ、前記領域を撮像して画像を得る撮像素子と、
C
C1 前記領域に前記生体が存在しない状態から前記領域に前記生体が存在する状態に変化した場合に、
C2’予め取得された生体情報画像と前記画像とを照合し、前記生体情報画像と前記画像との照合結果に基づいて前記ユーザを認証する認証回路と、
D’前記認証回路が認証に成功した場合と前記認証回路が認証に失敗した場合とで発光形態を変えることによりユーザに認証結果を報知する光源報知部と、
E を備える装着体。」

(2)引用発明及び周知技術について
(2-1)引用文献1の記載事項
原査定に、引用文献1として引用された、特開2003-93368号公報には、「リング型認証デバイス、認証システム」(発明の名称)として図面とともに以下の事項が記載されている。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、個人認証を行なうリング型認証デバイス、認証システムに関する。

【0012】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。はじめに、図1および図2を用いて、被認証者の静脈パターンによる認証が可能である理由を説明する。図1は、人体の一部、例えば腕の内側(手の平側)における静脈パターンの例を示すものである。この図1の(a)?(c)に示すように、静脈パターンは個人毎に千差万別である。しかも、静脈パターンは人体の一部にしか存在しないのに対し、静脈パターンは人体の至るところに存在している。また、静脈パターンは経年変化がほとんど見受けられないため、従来技術で挙げた手の甲の静脈パターンと同様、個人認証に用いることが可能である。なお、人体の腕の内側(手の平側)における静脈パターンが個人毎に千差万別であるのと同様に、人体の指等、他の箇所における静脈パターンも個人毎に千差万別である。よって、人体の腕の内側(手の平側)における静脈パターンのみならず、人体の指等、他の箇所における静脈パターンについても個人認証に用いることが可能である。

【0014】[第一の実施の形態]次に、第一の実施の形態として、認証デバイスとアクセス対象とを接続ケーブルで接続する認証システムの例を示す。図3は、認証デバイス(リング型認証デバイス、デバイス本体、認証用デバイス)10における静脈パターン検出に関わる構成を示すもので、認証デバイス10は、リング状をなした指輪型であり、無端状のリング、あるいはその円周方向の一部が切り欠かれた略C字状のものであっても良い。この認証デバイス10は、例えばPDA( Personal Digital Assistants:アクセス対象物)20を利用する際の認証機能を有するもので、PDA20とこの認証デバイス10との間で通信を行なうための接続ケーブル21が接続できるよう、インターフェイス11を有している。
【0015】図4に示すように、認証デバイス10は、被認証者の静脈パターン(血管配置パターン情報)を検出する静脈パターン検出部(パターン情報取得部、パターン情報取得手段)12の他、A/D変換器13、制御部(照合処理部、処理実行手段)14、登録データ格納部(データ保持手段)15、認証結果出力部(情報出力部、認証情報送信手段)16を有している。図5に示すように、静脈パターン検出部12は、指輪型の認証デバイス10の内周面に設けられた発光部17および受光部18とから構成されている。発光部17は、例えば赤外線を発光するもので、指輪型の認証デバイス10が連続する方向に複数の発光ランプ17aを並べることによってライン状に形成されている。なお、発光部17の発光ランプ17aは、制御部14において、その発光制御が行なわれる。より具体的には、インターフェイス11に対する接続ケーブル21が着脱を検出し、これによって発光ランプ17aの発光・発光停止を行なうのである。さらには、インターフェイス11に接続される接続ケーブル21を介し、この認証デバイス10がPDA20から電源の供給を受ける構成とすることも可能である。一方、受光部18は、発光部17で発光された赤外線が対象物、すなわち認証デバイス10を装着した被認証者Bの指の皮膚表面で反射したときの反射光を検出するもので、1次元のCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)等を用いたラインセンサによって構成されている。
【0016】登録データ格納部15には、予め登録された静脈パターン(基準データ)のデータが格納されている。制御部14では、得られた静脈パターンのイメージから、所定のロジックに基づき、静脈パターンの特徴を抽出する。つまり、被認証者Bの赤外線が照射された部分の皮下組織の違いによる反射光の違い(赤外線の吸収率の違い)を光学的に解析する処理を行なうのである。続いて、特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンを照合し、双方が一致すれば、認証がなされたと判定し、一致しなければ認証不可として判定し、認証判定処理を終える。
【0017】認証結果出力部16は、制御部14での認証判定結果(認証情報、認証を行なうための情報、照合結果)を外部に送出するものである。図3に示したように、この認証結果出力部16は、認証デバイス10のインターフェイス11に接続ケーブル21を接続することによって、認証判定結果のデータを外部に送出できるようになっている。ここでは、接続ケーブル21をPDA20に接続することにより、認証判定結果のデータがこのPDA20に転送される。PDA20では、認証情報受信機能にて認証判定結果のデータを受信し、これに基づいてアクセス許可機能にてユーザ(被認証者B)のアクセス(利用)を制限することができるのである。

【0020】[第二の実施の形態]次に、第二の実施の形態として、認証デバイスとアクセス対象との間で、無線による交信を行なって認証を受ける認証システムの例について説明する。なお、以下の説明において、上記第一の実施の形態と共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。図6に示すように、認証デバイス(リング型認証デバイス、デバイス本体、認証用デバイス)30は、上記第一の実施の形態と同様、指輪型であり、例えばドア(アクセス対象物)40のロック機構41との間で無線による交信を行なうための通信機能を備えている。より詳しくは、図7に示すように、無端状のリングからなる認証デバイス30は、その内部に、周方向に連続する線状の導電体31を内蔵し、これがアンテナ32として機能するようになっている。この導電体31は、全体として認証デバイス30の形状に沿ったリング状をなしていれば良く、コイル状に複数重に巻回してもよいし、単にリング状に1重に巻回する構成とすることも可能である。
【0021】図8は、認証デバイス30の構成を示すもので、上記第一の実施の形態の認証デバイス10(図4参照)と同様、認証デバイス30は、発光部17および受光部18からなる静脈パターン検出部12、A/D変換器13、制御部14、登録データ格納部15、認証結果出力部16を備えている。さらにこの認証デバイス30は、上記アンテナ32と、送受信制御部33とを備える。本実施の形態では、登録データ格納部15に、予め登録された静脈パターンだけでなく、登録された静脈パターンを有する被認証者Bを特定するためのID情報が関連付けて格納されているものとする。
【0022】ここで、アンテナ32は、前記したようにリング状をなしているため、このアンテナ32で電波を受信することによって誘導起電力が生じる。送受信制御部33では、誘導起電力を取り出し、認証デバイス30の電源電力とすることができるのである。また、送受信制御部33は、アンテナ32で受信する電波に含まれる変調成分を検波あるいは復調することによって取り出すとともに、アンテナ32から発信する電波に所定のデータを含ませるための変調を行なうものである。後述するように、ロック機構41側から発せられる電波には、所定のデータ信号が変調によって含まれている。つまり、送受信制御部33は、受信した電波から、電力とデータ信号(変調成分)を分離して取り出すのである。そして、取り出した電力は、認証デバイス30の電源回路(図示無し)に供給し、データ信号は制御部14に転送する。また、送受信制御部33は、認証結果出力部16から出力される所定のデータ、すなわち認証判定結果のデータを変調によって電波に含ませ、これをアンテナ32から発信させるのである。

【0024】図9は、上記したような構成の認証デバイス30において認証を行なう際の処理の流れを示すものである。まず、認証デバイス30を手の指に装着した被認証者Bが、ドア40を開けるためにドアノブ42に手を伸ばすと、ドア40側のアンテナ43から発信されている電波を受信できる所定の範囲内に入った時点で、認証デバイス30のアンテナ32がアンテナ43から発信させられている電波を受信する。ここで、ドア40側のアンテナ43では、送受信制御部44によって、認証デバイス30を初期状態に設定するためのトリガー信号を含んだ電波を発信しているものとする。認証デバイス30では、アンテナ32がアンテナ43からの電波を受信すると、誘導起電力が生じ、これが送受信制御部33から認証デバイス30の電源回路(図示無し)に送給されることによって、認証デバイス30の電源がONとなる(ステップS101)。認証デバイス30の電源がONとなると同時に、発光部17では、赤外線を所定の強度(全発光状態ではない)で発光する。このときには、赤外線を所定時間毎に点滅させる構成とすることもできる。また、アンテナ32で受信した電波には、前記したようなトリガー信号が含まれており、送受信制御部33で電波から取り出されたこのトリガー信号は、制御部14に転送される。これを受けた制御部14は、認証デバイス30を初期状態に設定するため、制御部14(で用いる揮発性メモリ:図示無し)にてその時点で何らかの認証判定情報を有しているのであれば、それをクリアする(ステップS102)。
【0025】次いで、制御部14では、装着検出手段として、認証デバイス30が被認証者Bに装着されているか否かの装着検出を行なう(ステップS103)。このためには、発光部17から電源ON時から発光されている赤外線の反射光が、受光部18で検出できるか否かを判定すれば良い。言うまでも無く、認証デバイス30が被認証者Bの指に装着されていれば、反射光が検出されるのである。さて、検出の結果、認証デバイス30が被認証者Bに装着されていないと判定された場合、ステップS103を繰り返す。そして、これを所定回数繰り返した場合には、認証処理を終了するようにしても良い。一方、ステップS103での検出の結果、認証デバイス30が被認証者Bに装着されていると判定された場合、制御部14は、発光部17の光源を開放したり(最大とする)、連続で照射させる等して、発光部17における赤外線の発光を全発光状態とする(ステップS104)。
【0026】次いで、受光部18にて、発光部17から発光された赤外線の反射光を受光し、これをA/D変換器13におけるA/D変換を介して制御部14に転送し、制御部14にて、認証デバイス30を装着した被認証者Bの指(認証デバイス30の内周面と対向する位置)の静脈パターンのイメージを取り込む(ステップS105)。そして、制御部14では、予め登録されている所定のロジックに基づき、取り込んだイメージから被認証者Bの静脈パターンの特徴を抽出し、さらに、その静脈パターンの特徴を登録データ格納部15に予め登録されている静脈パターンと比較する(ステップS106)。
【0027】そして、特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンの双方が一致するか否かを判定する(ステップS107)。その結果、特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンの双方が一致しない場合には、認証処理を中止するため、制御部14(で用いている揮発性メモリ)で保持している一切の認証情報をクリアした後(ステップS108)、発光部17での発光を行なうための光源を抑制し(ステップS109)、しかる後に認証デバイス30の電源をOFFとする(ステップS110)。なお、制御部14では、認証デバイス30の電源をOFFとするに先立って、認証結果出力部16および送受信制御部33を介し、照合が成功しない旨の信号を含む電波をアンテナ32から発信させることもできる。この場合、この電波をアンテナ43で受信したドア40のロック機構41では、ドア40のロックを解錠しない。もちろん、ドア40のロック機構41は、後述するように照合が成功した旨の信号を受けることによってドア40のロックを解錠するのであるから、上記のように照合が成功しない旨の信号を認証デバイス30から発信しない構成とすることも可能である。

【0030】さて、図10は、上記図9で示したステップS111における認証判定情報の送信処理の一例を示すものである。認証デバイス30では、ステップS107にて、特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンの双方が一致すると制御部14で判定された場合、認証結果出力部16が、認証が成功した旨のフラグを送受信制御部33にセットする(ステップS201)。さらに、認証結果出力部16は、認証が成功した静脈パターンを特定、つまり予め登録された静脈パターンを有する被認証者Bを特定するためのID情報を登録データ格納部15から読み出し、送受信制御部33にセットする(ステップS202)。
【0031】送受信制御部33は、セットされた認証が成功した旨のフラグとID情報からなる認証データを、アンテナ32から発信する電波に変調をかけることによって含ませ、この電波をアンテナ32から発信させる(ステップS203)。この電波をアンテナ43で受信したドア40側では、送受信制御部44が検波あるいは復調を行なうことによって電波から認証データ(フラグとID情報)を取り出し、これをロック制御部45に転送する。そして、これを受けたロック制御部45では、ドア40を解錠する。そして、ドア40側では、解錠を行なった時点で、ロック制御部45からの命令に基づきアンテナ43から解錠処理が完了した旨の信号を認証デバイス30に対してリターンする。認証デバイス30側では、電波をアンテナ32から発信させた後、ドア40側からリターンされる電波が検出できるか否かにより、解錠のための通信処理が完了したか否かを判定する(ステップS204)。その結果、解錠のための通信処理が完了したと判定されれば認証判定情報送信処理を終わり、図9の処理に復帰し、また、完了していないと判定されれば、ステップS203に戻り、同様の処理を繰り返す。

(2-2)引用発明
ア 引用文献1の段落0020に「上記第一の実施の形態と共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。」と記載されていることから、引用文献1に記載の第二の実施の形態の「静脈パターン検出部12」、「受光部18」、「制御部14」及び「認証結果出力部16」は、引用文献1の段落0015?0017に記載の第一の実施の形態の事項を用いて認定した。

イ 上記(2-1)に摘記した記載事項及び上記アから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、符号a?eについては、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成a」?「構成e」という。)

(引用発明)
a 個人認証を行なうリング型認証デバイスに関して、
b 人体の指における静脈パターンについて個人認証に用いることが可能であり、
c
c1 認証デバイス(リング型認証デバイス)30は、指輪型であり、
c2 認証デバイス30は、発光部17および受光部18からなる静脈パターン検出部12、A/D変換器13、制御部14、登録データ格納部15、認証結果出力部16、アンテナ32、送受信制御部33を備え、
c3 登録データ格納部15に、予め登録された静脈パターンだけでなく、登録された静脈パターンを有する被認証者Bを特定するためのID情報が関連付けて格納されており、
c4 静脈パターン検出部12は、指輪型の認証デバイス10の内周面に設けられた発光部17および受光部18とから構成されており、
c5 受光部18は、発光部17で発光された赤外線が対象物、すなわち認証デバイス30を装着した被認証者Bの指の皮膚表面で反射したときの反射光を検出するもので、1次元のCCDを用いたラインセンサによって構成され、
c6 制御部14では、得られた静脈パターンのイメージから、所定のロジックに基づき、静脈パターンの特徴を抽出し、特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンを照合し、双方が一致すれば、認証がなされたと判定し、一致しなければ認証不可として判定し、認証判定処理を終え、
c7 認証結果出力部16は、制御部14での認証判定結果(認証情報、認証を行なうための情報、照合結果)を外部に送出し、
c8 送受信制御部33は、認証結果出力部16から出力される所定のデータ、すなわち認証判定結果のデータを変調によって電波に含ませ、これをアンテナ32から発信させ、

d 認証デバイス30において認証を行なう際の処理の流れは以下であり、
d1 認証デバイス30の電源がONとなると同時に、発光部17では、赤外線を所定の強度(全発光状態ではない)で発光、もしくは、赤外線を所定時間毎に点滅させる構成とする、
d2 次いで、制御部14では、認証デバイス30が被認証者Bに装着されているか否かの装着検出を行なうため(ステップS103)。このためには、発光部17から電源ON時から発光されている赤外線の反射光が、受光部18で検出できるか否かを判定すれば良い、
d3 ステップS103での検出の結果、認証デバイス30が被認証者Bに装着されていると判定された場合、制御部14は、発光部17の光源を開放したり(最大とする)、連続で照射させる等して、発光部17における赤外線の発光を全発光状態とする(ステップS104)、
d4 次いで、受光部18にて、発光部17から発光された赤外線の反射光を受光し、これをA/D変換器13におけるA/D変換を介して制御部14に転送し、制御部14にて、認証デバイス30を装着した被認証者Bの指の静脈パターンのイメージを取り込む(ステップS105)、
d5 そして、制御部14では、予め登録されている所定のロジックに基づき、取り込んだイメージから被認証者Bの静脈パターンの特徴を抽出し、さらに、その静脈パターンの特徴を登録データ格納部15に予め登録されている静脈パターンと比較する(ステップS106)、
d6 そして、特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンの双方が一致するか否かを判定する(ステップS107)、
d7 その結果、特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンの双方が一致しない場合には、認証処理を中止し、認証デバイス30の電源をOFFとする(ステップS110)、
d8 制御部14では、認証デバイス30の電源をOFFとするに先立って、認証結果出力部16および送受信制御部33を介し、照合が成功しない旨の信号を含む電波をアンテナ32から発信させる、

e ステップS111における認証判定情報の送信処理は以下である、
e1 認証デバイス30では、ステップS107にて、特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンの双方が一致すると制御部14で判定された場合、認証結果出力部16が、認証が成功した旨のフラグを送受信制御部33にセットする(ステップS201)、
e2 認証結果出力部16は、認証が成功した静脈パターンを特定、つまり予め登録された静脈パターンを有する被認証者Bを特定するためのID情報を登録データ格納部15から読み出し、送受信制御部33にセットする(ステップS202)、
e3 送受信制御部33は、セットされた認証が成功した旨のフラグとID情報からなる認証データを、アンテナ32から発信する電波に変調をかけることによって含ませ、この電波をアンテナ32から発信させる(ステップS203)、
a 個人認証を行なうリング型認証デバイス。

(2-3)引用文献3の記載事項
原査定で引用された引用文献3(特開2006-11614号公報)には、「指紋認識機能付き指輪、指紋認識装置、およびこれらを用いた情報処理システム」(発明の名称)として図面とともに以下の事項が記載されている。

【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインセンサを用いる指紋認識装置および情報処理システム、特には指紋認識機能付き指輪に関する。

【0037】
[指紋認証機能付き指輪]
図1は、本発明の指紋認証機能付き指輪の外観を模式的に表した図である。この指輪は、被認証者の指に装着可能なリング10と、このリング10の内周面に設けられたラインセンサ11と、外部の情報処理装置に認証結果を送信するための行うための無線発信部12とが設けられている。

【0041】
(第1の態様)
図3(a)は、本発明における指紋認証機能付き指輪のブロック構成図の一例である。この態様において、指紋認証機能付き指輪20は、指紋情報を検知するラインセンサ21と、指紋情報読み取り部22と、少なくとも1の照合用指紋情報を格納する照合用指紋情報格納部23と、前記指紋情報読み取り手段で読み取られた指紋情報と、前記指紋情報格納部に格納されている照合用指紋情報とを比較して、その一致・不一致を判定する指紋照合処理部25と、前記指紋照合処理手段で、両指紋が一致すると判断された場合に、両指紋が一致することを示す照合信号を送信する照合信号発信部24と、出力部26とを有する。

【0045】
出力部26は、照合信号を外部に送信するものである。指紋認証機能付き指輪20が接続ケーブルで情報処理装置に接続されている場合には、この出力部26は、インターフェースである。また、指紋認証機能付き指輪から情報処理装置にRFIDタグ( Radio FrequencyIdentification System用タグ)、Bluetooth 、赤外線発光素子など電波や赤外線を利用して信号を送信する場合は、アンテナなどの送信部品である。

【0074】
(照合結果の通知)
本発明の指紋認証機能付き指輪において、照合結果を被認証者に知らせることができれば好ましい。照合結果の通知方法としては、例えば指紋認証機能付き指輪にLED、音源などの照合成功確認手段を設ける方法がある。具体的には、照合成功時には緑色を発光させ、照合失敗時には赤色を発光させる、あるいは照合の成功/失敗で異なる音を発生させて、被認証者に照合の成功/失敗を知らせる。

(2-4)文献3周知技術
上記(2-3)に摘記した記載事項から、引用文献3には、次の周知技術(文献3周知技術)が記載されている。

(文献3周知技術)
指紋認証機能付き指輪であって、
ラインセンサ21で読み取られた指紋情報と、格納されている照合用指紋情報とを比較して、その一致・不一致を判定する指紋照合処理部で、両指紋が一致すると判断された場合に、両指紋が一致することを示す照合信号を送信する照合信号発信部24と、出力部26とを有する指紋認証機能付き指輪において、
照合結果を被認証者に知らせることができれば好ましく、照合結果の通知方法として、指紋認証機能付き指輪にLEDを設けて、
照合成功時には緑色を発光させ、照合失敗時には赤色を発光させて、被認証者に照合の成功/失敗を知らせる方法。

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。

ア 構成Aについて
構成a?構成c1より、引用発明の「リング型認証デバイス」は、指の静脈パターンについて個人認証を行なう指輪型であり、指が挿入される領域を囲う指輪といえるので、構成Aの「ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体」に相当する。

イ 構成Bについて
構成c2より、引用発明の「受光部18」は、認証デバイス30に備えられている。
また、構成c5より、引用発明の「受光部18」は、認証デバイス10を装着した被認証者Bの指の皮膚表面を検出するラインセンサであり、構成b、構成c2より、指の皮膚表面を検出することは静脈パターンを検出することであるので、指が挿入される領域を撮像して静脈パターンのイメージを得るセンサといえる。
したがって、引用発明の「受光部18」は、構成Bの「前記筐体に設けられ、前記領域を撮像して画像を得る撮像素子」に相当する。

ウ 構成Cについて
(ア)構成c6の「登録データ格納部15に格納された静脈パターン」は、構成C2’の「予め取得された生体情報画像」に相当する。
また、構成c6の「得られた静脈パターンのイメージ」は、構成c5の「受光部18」で得られたイメージであるから、構成C2’の「前記画像」に相当する。

構成c6の「認証判定処理」は、構成c6の「登録データ格納部15に格納された静脈パターン」及び「得られた静脈パターンのイメージから、所定のロジックに基づき、静脈パターンの特徴を抽出し、特徴を抽出した静脈パターン」が構成C2’の「予め取得された生体情報画像」及び「前記画像」に相当するから、構成C2’の「照合」に相当する。

また、構成c7の「認証判定結果」は、構成c6の「認証判定処理」の「双方が一致すれば、認証がなされたと判定し、一致しなければ認証不可として判定」した結果であるから、構成C2’の「照合結果」に相当する。

ここで、構成c6の「特徴を抽出した静脈パターン」は、構成c5より、ラインセンサで検出された被認証者Bの静脈パターンのイメージを指すものである。

そうすると、構成c6の「特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンを照合」すること、及び、構成d5の「取り込んだイメージから被認証者Bの静脈パターンの特徴を抽出し、さらに、その静脈パターンの特徴を登録データ格納部15に予め登録されている静脈パターンと比較する」ことは、イメージの特徴比較により双方が一致するか否かを判定するものであり、登録データ格納部15に格納された静脈パターンとラインセンサで検出された静脈パターンのイメージとを照合しているものといえ、また、照合結果に基づいて被認証者Bを認証するものといえる。
すなわち、構成c6及び構成d5より、引用発明は、『登録データ格納部15に格納された静脈パターンとラインセンサで検出された静脈パターンのイメージとを照合し、照合結果に基づいて被認証者Bを認証する制御部14』を備えているといえる。

(イ)したがって、引用発明の「制御部14」は、構成C2’の「予め取得された生体情報画像と前記画像とを照合し、前記生体情報画像と前記画像との照合結果に基づいて前記ユーザを認証する認証回路」に相当する。

(ウ)構成d1?構成d4より、引用発明は、認証デバイス30の電源がONとなると、被認証者Bに装着されているか否かの装着検出を行ない、被認証者Bに装着されていると判定された場合、認証デバイス30を装着した被認証者Bの指の静脈パターンのイメージを取り込むものである。
そうすると、構成d1?構成d4は、「認証デバイス30が被認証者Bに装着されていると判定された場合」でない状態では、装着検出を行なうだけであり、静脈パターンのイメージを取り込むことは行っておらず、「認証デバイス30が被認証者Bに装着されていると判定された場合」には、装着した被認証者Bの指の静脈パターンのイメージを取り込むことから、
構成d1?構成d5は、「認証デバイス30が被認証者Bに装着されていると判定された場合でない状態」から、「認証デバイス30が被認証者Bに装着されていると判定された場合の状態」に変化した場合に、制御部14にて「認証判定処理」を行うといえる。
当該「認証デバイス30が被認証者Bに装着されていると判定された場合でない状態」は、「認証デバイス30が被認証者Bの指に装着されていない状態」も含むことは明らかである。

(エ)したがって、引用発明の「制御部14」は、構成C1のように、「前記領域に前記生体が存在しない状態から前記領域に前記生体が存在する状態に変化した場合に、」照合や認証を行うものである。

(オ)以上より、引用発明の「制御部14」は、構成Cの「前記領域に前記生体が存在しない状態から前記領域に前記生体が存在する状態に変化した場合に、予め取得された生体情報画像と前記画像に関連する画像とを照合し、前記生体情報画像と前記画像に関連する画像との照合結果に基づいて前記ユーザを認証する認証回路」に相当する。

エ 構成Dについて
構成c8、構成d8及び構成eより、引用発明の送受信制御部33及びアンテナ32は、「特徴を抽出した静脈パターンと、登録データ格納部15に格納された静脈パターンの双方が一致しない場合」には、「照合が成功しない旨の信号」を発信させ、「一致すると判定された場合」は、「認証が成功した旨のフラグとID情報からなる認証データ」を発信させるものである。
引用発明の「一致しない場合」及び「一致すると判定された場合」は、構成D’の「前記認証回路が認証に成功した場合」及び「前記認証回路が認証に失敗した場合」に相当する。また、引用発明は、「照合が成功しない旨の信号」と「認証が成功した旨のフラグとID情報からなる認証データ」とで発信形態を変えることにより、認証結果を報知するといえる。

そうすると、引用発明と構成D’は、「前記認証回路が認証に成功した場合と前記認証回路が認証に失敗した場合とで形態を変えることにより認証結果を報知する報知部」を有する点で共通する。
しかし、報知部に関して、補正発明は、「発光形態を変えることによりユーザに認証結果を報知する光源報知部」であるのに対し、引用発明の認証結果出力部16および送受信制御部33は、そのような構成ではない点で相違する。

オ 構成Eについて
引用発明の認証デバイス30は、被認証者Bに装着されるものであるから、構成Eの「装着体」に相当する。

(4)一致点・相違点
以上より、補正発明と引用発明の一致点・相違点は以下の通りである。

(一致点)
「A ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体と、
B 前記筐体に設けられ、前記領域を撮像して画像を得る撮像素子と、
C 前記領域に前記生体が存在しない状態から前記領域に前記生体が存在する状態に変化した場合に、予め取得された生体情報画像と前記画像とを照合し、前記生体情報画像と前記画像に関連する画像との照合結果に基づいて前記ユーザを認証する認証回路と、
D’前記認証回路が認証に成功した場合と前記認証回路が認証に失敗した場合とで形態を変えることにより認証結果を報知する報知部と、
E を備える装着体。」

(相違点)
報知部に関して、補正発明は、「発光形態を変えることによりユーザに認証結果を報知する光源報知部」であるのに対し、引用発明は、そのような構成ではない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。

引用発明は、照合が成功した場合、成功しない場合のいずれの場合でもその旨の信号をアンテナから発信させる構成であるが、上記(2-1)で摘記したように、引用文献1の段落0017には、第一の実施の形態として、接続ケーブル21を接続して、認証結果を外部のPDAに転送する例も開示されている。
すなわち、引用文献1には、認証結果を報知する構成として複数の構成があることが示唆されている。

また、上記(3-4)にあるとおり、文献3周知技術は当業者において周知技術である。
文献3周知技術は、両指紋が一致すると判断された場合に、両指紋が一致することを示す照合信号を送信する構成において、照合結果を被認証者に知らせることができれば好ましく、照合結果の通知方法として、指紋認証機能付き指輪にLEDを設ける方法である。
そして、文献3周知技術の「照合成功時には緑色を発光させ、照合失敗時には赤色を発光させて、被認証者に照合の成功/失敗を知らせる」は、「発光形態を変えることによりユーザに認証結果を報知する」といえる。
そうすると、引用文献1には、認証結果を報知する構成として複数の構成があることが示唆され、照合結果を被認証者に知らせることができれば好ましく、照合結果の通知方法として、指紋認証機能付き指輪にLEDを設ける構成が周知技術であることから、引用発明の報知部に文献3周知技術を採用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項である。

よって、引用発明の報知部に、文献3周知技術を採用して、「発光形態を変えることによりユーザに認証結果を報知する光源報知部」とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

したがって、相違点に係る構成は、格別のものではなく、当該相違点を勘案しても、補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(6)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、引用文献1の段落0004,0027,0028及び0032の記載を摘記し、以下のとおりの主張を行っている。

「 上記の通り、引用文献1に記載の発明によれば、静脈パターンが不一致である場合や認証デバイスが装着検出されなくなった場合には、直ちに認証デバイス30の電源をOFFにすることから、引用文献1に係る主引用発明がシステムの簡素化・消費電力の低減を図るものであると理解できます。
この主引用発明から出発して、相違点である光源報知部を設計変更として採用することは、装置を複雑化させ、また消費電力を増大させる方向に働くことから、引用文献1の課題に逆行するものであり、このような構成を採用することは、当業者の通常の創作能力の発揮の程度を超えるといえます。
引用文献1の課題であるシステムの簡素化を考慮すると、引用文献1に開示された技術に対し、本願発明の「前記認証回路が認証に成功した場合と前記認証回路が認証に失敗した場合とで発光形態を変え、前記発光形態の変化によりユーザに認証結果を報知する光源報知部」という構成の付加を検討したところで、当該課題を解決することができず、むしろ構造が複雑になることは自明です。
したがって、引用文献1に本願発明の上記構成を付加することは技術思想の転換を要するものであると言えます。」

上記請求人の主張について検討する。

ア 引用文献1の段落0004に記載の事項は
「装置が身体に装着されると自動的に指紋の検出や音声の認識を開始する場合には、装置の身体への装着を検出する機構が、指紋検出や音声認識のための機構とは別に必要となり、装置が複雑化したり、消費電力が増加するという問題」という記載から明らかなように、
「装置が身体に装着されると自動的に指紋の検出を開始する場合に、検出する機構が別に必要となることによる問題」である。

イ また、引用文献1の段落0027,0028及び0032に記載の事項は、
「電波によって給電を受ける構成としたので、特に電源等が不要であり、認証デバイス30の小型化および軽量化に大いに貢献すること」、
「これによって認証デバイス30に非接触で電源が供給されて自動的に作動し、認証処理を行なうことができる。さらにはドアノブ42から手を離せば、誘導起電力が現象(消滅)して認証処理を停止するとともに、電源供給も自動的に停止される構成となっている。」、
「このような構成により、認証デバイス30の装着を検出するための機構を別に設ける必要が無く、またバッテリレスの構成であるので、認証デバイス30を構成する部品点数を削減することができる。」(段落0032)という記載から明らかなように、
認証デバイス30にバッテリレスの構成を設けること、認証デバイス30の作動が電源が供給されて自動的に作動することによる小型化及び軽量化、部品点数を削減することである。

上記ア及びイのとおり、引用文献1の段落0004,0027,0028及び0032の記載事項は、「装置が身体に装着されると自動的に指紋の検出を開始する機構の問題」及び「バッテリレスの構成を設けること、電源が供給されて自動的に作動する構成による小型化及び軽量化、部品点数を削減すること」であって、認証結果を報知する報知部に関する問題或いは報知部を削減する構成による小型化及び軽量化、部品点数を削減することではないといえる。
よって、引用文献1の段落0004,0027,0028及び0032の記載事項は、引用発明の報知部に関する問題や報知部の「技術小型化及び軽量化、部品点数を削減」を解決することを課題としたものとはいえず、また、思想の転換を要するものとはいえない。

したがって、引用文献1の段落0004,0027,0028及び0032の記載事項によって、引用発明に文献3周知技術を採用することは当業者が容易に想到し得るものでないとはいえないから、上記請求人の主張は採用できない。

(7)小括
したがって、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年3月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1を引用する請求項11に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1及び11に記載された次のとおりのものと認める。

【請求項1】
「ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体と、
前記筐体に設けられ、前記領域を撮像して画像を得る撮像素子と、
前記領域に前記生体が存在しない状態から前記領域に前記生体が存在する状態に変化した場合に、予め取得された生体情報画像と、前記画像とに基づいて前記ユーザを認証する認証回路と
を備える装着体。」

【請求項11】
「前記認証回路の認証結果に応じて発光形態が変化する光源報知部をさらに備え、
前記光源報知部は、前記発光形態の変化によりユーザに認証結果を報知する
請求項1に記載の装着体。」

2 引用文献について
引用文献1の記載事項及び引用発明、引用文献3の記載事項及び文献3周知技術は、前記第2の3(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、前記第2の3に記載したとおり、引用発明及び文献3周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び文献3周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-05-14 
結審通知日 2020-05-19 
審決日 2020-06-01 
出願番号 特願2017-534444(P2017-534444)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 572- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐田 宏史  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 渡辺 努
須田 勝巳
発明の名称 装着体  
代理人 森 隆一郎  
代理人 松沼 泰史  
代理人 伊藤 英輔  
代理人 棚井 澄雄  

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