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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1364316
審判番号 不服2019-11200  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-26 
確定日 2020-08-11 
事件の表示 特願2015- 26501「基板収納容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月18日出願公開、特開2016-149492、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2015年(平成27年) 2月13日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年10月 4日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月10日 :意見書,補正書の提出
平成31年 4月26日付け:拒絶査定
令和 1年 8月26日 :審判請求書,補正書の提出
令和 1年 9月26日 :前置報告

第2 原査定の概要
原査定(平成31年 4月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 本願請求項1,3-4に係る発明は,以下の引用文献Aに記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
2 本願請求項1,3-4に係る発明は,以下の引用文献Aに記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A 特開2005-311128号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は,補正前の請求項1の「前記基板位置決め当接部は,前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記蓋体側基板支持部の間の中央部位置に存在し,前記蓋体側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続されている」との記載を,補正後の請求項1の「前記基板位置決め当接部は,前記蓋体側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続され,前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記蓋体側基板支持部を接続する前記弾性変形部の間の前記弾性変形部の中央部位置に接続されて存在している」との記載に変更するものであり,当該補正事項は,補正前の請求項1の発明特定事項である「基板位置決め当接部」と「蓋体側基板支持部」との接続関係を限定するものであるから,特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。
また,当該補正事項は,当初明細書等に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえ,本件補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1,3-4に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は,令和 1年 8月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-4は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
一端部に容器本体開口部が形成され他端部が閉塞された筒状の壁部を備え,前記壁部の内面によって,複数の基板を収納可能であり前記容器本体開口部に連通する基板収納空間が形成された容器本体と,
前記容器本体開口部に対して着脱可能であり,前記容器本体開口部を閉塞可能であり,前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記基板収納空間に対向する蓋体と,
前記壁部又は前記蓋体と,前記基板収納空間に収納された前記基板の縁部と,の間で弾性変形可能であり,前記基板に形成され前記基板の周方向における前記基板の方向を示す方向認識部に係合可能な基板係合部と,を備え,
前記基板係合部は,
弾性変形可能であり,前記蓋体の部分であって前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記基板収納空間に対向する部分に配置される蓋体側基板支持部であって,前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに,前記複数の基板の縁部を支持可能な蓋体側基板支持部と,
前記蓋体側基板支持部に存在し,前記方向認識部に係合する基板位置決め当接部と,を有し,
前記蓋体側基板支持部は,前記基板の周方向における少なくとも前記基板の周縁部の2箇所において,前記基板の周縁部を支持し,
前記基板位置決め当接部は,前記蓋体側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続され,前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記蓋体側基板支持部を接続する前記弾性変形部の間の前記弾性変形部の中央部位置に接続されて存在している基板収納容器。
【請求項2】
一端部に容器本体開口部が形成され他端部が閉塞された筒状の壁部を備え,前記壁部の内面によって,複数の基板を収納可能であり前記容器本体開口部に連通する基板収納空間が形成された容器本体と,
前記容器本体開口部に対して着脱可能であり,前記容器本体開口部を閉塞可能であり,前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記基板収納空間に対向する蓋体と,
前記壁部又は前記蓋体と,前記基板収納空間に収納された前記基板の縁部と,の間で弾性変形可能であり,前記基板に形成され前記基板の周方向における前記基板の方向を示す方向認識部に係合可能な基板係合部と,を備え,
前記蓋体の部分であって前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記基板収納空間に対向する部分に配置され,前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに,前記複数の基板の縁部を支持可能な蓋体側基板支持部を備え,
前記基板係合部は,
弾性変形可能であり前記基板収納空間内において前記蓋体側基板支持部と対をなすように配置され,前記複数の基板の縁部を支持可能であり,前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記蓋体側基板支持部と協働して,前記複数の基板を並列させた状態で,前記複数の基板を支持する奥側基板支持部と,
前記奥側基板支持部に存在し,前記方向認識部に係合する基板位置決め当接部と,を有し,
前記奥側基板支持部は,前記基板の周方向における少なくとも前記基板の周縁部の2箇所において,前記基板の周縁部を支持し,
前記基板位置決め当接部は,前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記奥側基板支持部の間の中央部位置に存在し,前記奥側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続されている基板収納容器。
【請求項3】
前記方向認識部は,前記基板の周縁の一部に形成されたノッチ部により構成され,
前記基板位置決め当接部は,前記ノッチ部に係合する凸部により構成されている請求項1又は請求項2に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記方向認識部は,前記基板の周縁の一部が直線状に形成されて構成される直線状縁部により構成され,
前記基板位置決め当接部は,前記直線状縁部に係合する直線状縁部当接部により構成されている請求項1又は請求項2に記載の基板収納容器。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献Aについて
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Aには,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

「【0014】
図3乃至図5には,本発明に係るウエハ搬送容器が全体に符号17で示されている。ウエハ搬送容器17は,図3に示すように,一端開放の箱形の容器本体18と,該容器本体の開口部18a(図5参照)を閉鎖する蓋体19と,ウエハ押さえ10とを備え,蓋体19は,容器本体18との間に形成された従来よく知られたフック機構20により,容器本体18に取り外し可能に係止される。
【0015】
ウエハ押さえ10は,図1に示すように,全体に矩形枠体で構成される支持枠11を備える。支持枠11は,例えば,ポリエステル系,オレフィン系,スチレン系等の各種熱可塑性エラストマーあるいはPBT(ポリブチレンテレフタレート),PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)のようなエラストマー以外の熱可塑性樹脂材料で形成される。支持枠11は,一対の長辺11a,11aと,一対の短辺11b,11bとを有し,一対の長辺11a,11a間には,互いに相対する二辺である一対の短辺11b,11b間で互いに平行な一対の内側辺11c,11cが形成されている。
【0016】
この一対の内側辺11c,11cおよびその外側に位置する一対の短辺11b,11bすなわち外側辺11b,11bのそれぞれには,支持枠11の一側に向けて伸長する各弾性部材12a,12bが支持枠11に一体的に形成されている。各外側辺11bには,多数の弾性部材12aが各外側辺11bの長手方向へ整列して形成されており,また各内側辺11cには,外側辺11bの弾性部材12aに対応して多数の弾性部材12bが内側辺11cの長手方向へ整列して形成されている。
【0017】
一対の外側辺11bに設けられた弾性部材12a,12aは,図2に示すように,長11aに直角な垂線L1に関して内側へ角度θ1をなす傾斜角で支持枠11の外側辺1bから一体的に支持枠11の一側に伸長する傾斜部13aと,該傾斜部に連なって互い相近づく方向へ曲がる円形曲線に沿った円形曲部13bと,該円形曲部の先端から互い相近づく方向へ直線に沿って伸びる水平直線部13cと,該水平直線部の先端から互い相近づくように,水平直線部13cに関して角度θ2で斜め上方に立ち上がる立上がり13dとを備え,全体としてJ字状を呈する。」

「【0020】
また,各弾性部材12aの先端部である立上がり部13dと,円弧状の曲部13bとの間に形成された水平直線部13cは,5乃至20mmの長さ寸法を有する。円弧状の曲部13bと先端部となる立上がり部13dとの間には,この水平直線部13cが形成されていることから,円弧状の曲部13bから半導体ウエハ14への接触部となる先端部すなわち立上がり部13dに至る長さ寸法は,従来に比較して大きく設定されている。従って,円弧状の曲部13bおよび水平直線部13cにより外側弾性部材12aを充分に弾性変形させることができ,応力の集中による外側弾性部材12aでのクリープ現象の発生が防止される。
【0021】
各内側辺11cに形成された内側弾性部材12bは,内側辺11cから,弾性部材12aにおけると同様に,角度θ1で支持枠11の前記一側に伸長する傾斜部16aと,該傾斜部16aに連なって互いに相近づく方向へ曲がる円弧状の曲部16bと,該円弧状の曲部16bの先端から互いに相近づく方向へ直線に沿って伸びる水平直線部16cとを有し,全体として略J字状を有する。水平直線部16cの先端下面には,半導体ウエハ14に係合する接触部16dが設けられている。従って,内側弾性部材12bは,傾斜部16aと接触部16dとの間に円弧状の曲部16bおよび水平直線部16cが形成されていることから,この円弧状の曲部16bおよび水平直線部16cにより,各内側弾性部材12bを充分に弾性変形させることができ,応力の集中による内側弾性部材12bでのクリープ現象の発生が防止される。
【0022】
ウエハ押さえ10は,図4に示すように,支持枠11が容器本体18の開口部18aを横切るように,蓋体19の下面に配置される。ウエハ押さえ10は,図5に示すように,容器本体18の壁面に形成された縦溝(図示せず)に縁部が受け入れられた多数の半導体ウエハ14を支持枠11に形成された外側弾性部材12aおよび内側弾性部材12bで容器本体18の底部に向けて押圧するように,該容器本体の開口縁部と蓋体19との間で挟持される。蓋体19と容器本体18との間に必要に応じて従来よく知られたガスケットを配置することができる。
【0023】
ウエハ搬送容器17に収容される半導体ウエハ14には,該ウエハ14の結晶方向を示すためのオリエンテーションフラットあるいはノッチが設けられ,ノッチあるいはオリエンテーションフラットが内側弾性部材12bに設けられた接触部16dに係合可能であり,この接触部16dの係合により半導体ウエハ14の周方向の回転が防止される。
【0024】
本発明に係るウエハ搬送容器17では,容器本体18の開口部18aに配置される支持枠11の各外側弾性部材12aおよび各内側弾性部材12bが半導体ウエハ14の上縁部に係合し,該半導体ウエハに容器本体18の底部へ向けての弾性押圧力を作用させることにより,各半導体ウエハ14を容器本体18の内壁に形成された前記溝内に確実に保持する。」

したがって,上記引用文献Aには次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ウエハ搬送容器17は,一端開放の箱形の容器本体18と,該容器本体の開口部18aを閉鎖する蓋体19と,ウエハ押さえ10とを備え,
蓋体19は,容器本体18に取り外し可能に係止され,
ウエハ押さえ10は,支持枠11を備え,
支持枠11には,各弾性部材12a,12bが支持枠11に一体的に形成され,
ウエハ押さえ10は,蓋体19の下面に配置され,容器本体18に縁部が受け入れられた多数の半導体ウエハ14を支持枠11に形成された外側弾性部材12aおよび内側弾性部材12bで容器本体18の底部に向けて押圧するように,該容器本体の開口縁部と蓋体19との間で挟持され,
各弾性部材12aは,半導体ウエハ14への接触部となる先端部すなわち立上がり部13dを備え,
内側弾性部材12bには半導体ウエハ14に係合する接触部16dが設けられ,
ウエハ搬送容器17に収容される半導体ウエハ14には,該ウエハ14の結晶方向を示すためのオリエンテーションフラットあるいはノッチが設けられ,ノッチあるいはオリエンテーションフラットが内側弾性部材12bに設けられた接触部16dに係合可能であり,この接触部16dの係合により半導体ウエハ14の周方向の回転が防止され,
容器本体18の開口部18aに配置される支持枠11の各外側弾性部材12aおよび各内側弾性部材12bが半導体ウエハ14の上縁部に係合し,該半導体ウエハに容器本体18の底部へ向けての弾性押圧力を作用させる
ウエハ搬送容器17。」

2 その他の文献について
前置報告書において周知技術を示す文献として引用された周知文献B(特開2006-128461号公報)の段落0031及び図5には,「各フロントリテーナ25は,図5に示すように,弾性材料を使用して横長の溝形に屈曲形成され,半導体ウェーハWの前部周縁を弾発的に保持する複数の保持ブロック27が間隔をおいて一体形成される。」と記載されている。
前置報告書において周知技術を示す文献として引用された周知文献C(国際公開第2009/060782号)の段落0044-0045及び図7,9には,「中央部からやや左右外方向にずれた位置に第一,第二の保持部33・34が形成され,半導体ウェーハWを第一,第二の保持部33・34を介して保持する第二弾性片31」と,段落0059及び図12には「第二弾性片31における第一,第二の保持部形成領域35・36を厚肉に形成するとともに,この第一,第二の保持部形成領域35・36の境界領域41を薄肉部とし,この境界領域41の薄肉部を変曲点として第二の保持部34や第二の保持部形成領域36を半導体ウェーハWの前部周縁方向に屈曲させるようにしている。」と記載されている。
以上から,周知文献B,Cには,「半導体ウエハの周縁部を支持する基板支持部を弾性変形部により連結させる。」という技術的事項が記載されている。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明における「容器本体18」,「蓋体19」が,本願発明1における「容器本体」,「蓋体」に相当することは明らかである。

イ 引用発明における「ウエハ押さえ10」は,「容器本体18に受け入れられた多数の半導体ウエハ14を支持枠11に形成された外側弾性部材12aおよび内側弾性部材12bで容器本体18の底部に向けて押圧するように,該容器本体の開口縁部と蓋体19との間で挟持され」るとともに,「容器本体18の開口部18aに配置される支持枠11の各外側弾性部材12aおよび各内側弾性部材12bが半導体ウエハ14の上縁部に係合し,該半導体ウエハに容器本体18の底部へ向けての弾性押圧力を作用させる」ものである。
また,「ウエハ搬送容器17に収容される半導体ウエハ14には,該ウエハ14の結晶方向を示すためのオリエンテーションフラットあるいはノッチが設けられ」ており,「ウエハ押さえ10」における「内側弾性部材12b」は,蓋体19が容器本体18に係止された場合に,「ノッチあるいはオリエンテーションフラットが内側弾性部材12bに設けられた接触部16dに係合可能」である。
してみると,引用発明における「ウエハ押さえ10」は,以下の相違点を除き本願発明1の「基板係合部」と,「前記壁部又は前記蓋体と,前記基板収納空間に収納された前記基板の縁部と,の間で弾性変形可能であり,前記基板に形成され前記基板の周方向における前記基板の方向を示す方向認識部に係合可能」である点で一致する。

ウ 引用発明の「ウエハ押さえ10」は「蓋体19の下面に配置され」,また,「容器本体18に受け入れられた多数の半導体ウエハ14を支持枠11に形成された外側弾性部材12aおよび内側弾性部材12bで容器本体18の底部に向けて押圧するように,該容器本体の開口縁部と蓋体19との間で挟持され」るから,蓋体19側にあることは明らかである。
また,引用発明の「ウエハ押さえ10」における「弾性部材12a」は弾性変形可能であることは明らかであり,また,蓋体19が容器本体18に係止された場合に,「弾性部材12a」の先端部に設けられた「立ち上がり部13d」は,半導体ウエハと2カ所で係合するものと認められる。
してみると,引用発明の「ウエハ押さえ10」における「支持枠11」及び「弾性部材12a」,「立ち上がり部13d」が,本願発明1の「蓋体側基板支持部」に相当する。

エ 引用発明の「接触部16d」は,「支持枠11」と一体的に形成されている「内側弾性部材12b」の先端部に設けられているから,「支持枠11」に接続されていると認められる。すると,引用発明の「接触部16d」は「支持枠11」に存在するものと認められ,ここで,「内側弾性部材12b」が弾性変形可能であることは明らかである。
加えて,引用発明の「接触部16d」は,蓋体が容器本体の開口部を閉鎖するように係止された場合に,半導体ウエハ14の結晶方向を示すためのオリエンテーションフラットあるいはノッチと係合可能なものである。
してみると,引用発明の「接触部16d」は,本願発明1における「基板位置決め当接部」と,「前記蓋体側基板支持部に存在し,前記方向認識部に係合する」点,及び,「前記蓋体側基板支持部と」「弾性変形部を介して接続され」る点で一致する。

オ 引用発明の「ウエハ搬送容器17」は,以下の相違点を除き本願発明1における「基板収納容器」に対応する。

カ したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 一端部に容器本体開口部が形成され他端部が閉塞された筒状の壁部を備え,前記壁部の内面によって,複数の基板を収納可能であり前記容器本体開口部に連通する基板収納空間が形成された容器本体と,
前記容器本体開口部に対して着脱可能であり,前記容器本体開口部を閉塞可能であり,前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記基板収納空間に対向する蓋体と,
前記壁部又は前記蓋体と,前記基板収納空間に収納された前記基板の縁部と,の間で弾性変形可能であり,前記基板に形成され前記基板の周方向における前記基板の方向を示す方向認識部に係合可能な基板係合部と,を備え,
前記基板係合部は,
弾性変形可能であり,前記蓋体の部分であって前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記基板収納空間に対向する部分に配置される蓋体側基板支持部であって,前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに,前記複数の基板の縁部を支持可能な蓋体側基板支持部と,
前記蓋体側基板支持部に存在し,前記方向認識部に係合する基板位置決め当接部と,を有し,
前記蓋体側基板支持部は,前記基板の周方向における少なくとも前記基板の周縁部の2箇所において,前記基板の周縁部を支持し,
前記基板位置決め当接部は,前記蓋体側基板支持部と弾性変形部を介して接続される基板収納容器。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「前記基板位置決め当接部は,前記蓋体側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続され,前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記蓋体側基板支持部を接続する前記弾性変形部の間の前記弾性変形部の中央部位置に接続されて存在している」と特定されているのに対し,引用発明の「接触部16d」が,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1について検討する。
上記「第5」3の引用文献B,Cに記載されているとおり,「半導体ウエハの周縁部を支持する基板支持部を弾性変形部により連結させる。」という技術的事項が,本願出願前において周知技術であるとしても,該周知技術は,基板位置決め当接部について何ら特定するものではない。
すると,引用発明において周知技術を採用したとしても,「前記基板位置決め当接部は,前記蓋体側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続され,前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記蓋体側基板支持部を接続する前記弾性変形部の間の前記弾性変形部の中央部位置に接続されて存在している」ものとすることは,当業者が容易になし得たものとはいえない。
加えて,「前記基板位置決め当接部は,前記蓋体側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続され,前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記蓋体側基板支持部を接続する前記弾性変形部の間の前記弾性変形部の中央部位置に接続されて存在している」点が,本願出願前において周知技術であったとまではいえず,当業者が適宜なし得た設計的事項であるとすることもできない。

イ したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明における「容器本体18」,「蓋体19」は,本願発明2における「容器本体」,「蓋体」に相当することは明らかである。

イ 引用発明における「ウエハ押さえ10」は,「容器本体18に受け入れられた多数の半導体ウエハ14を支持枠11に形成された外側弾性部材12aおよび内側弾性部材12bで容器本体18の底部に向けて押圧するように,該容器本体の開口縁部と蓋体19との間で挟持され」るとともに,「容器本体18の開口部18aに配置される支持枠11の各外側弾性部材12aおよび各内側弾性部材12bが半導体ウエハ14の上縁部に係合し,該半導体ウエハに容器本体18の底部へ向けての弾性押圧力を作用させる」ものである。
また,「ウエハ搬送容器17に収容される半導体ウエハ14には,該ウエハ14の結晶方向を示すためのオリエンテーションフラットあるいはノッチが設けられ」でおり,「ウエハ押さえ10」における「内側弾性部材12b」は,蓋体19が容器本体18に係止された場合に,「ノッチあるいはオリエンテーションフラットが内側弾性部材12bに設けられた接触部16dに係合可能」である。
してみると,引用発明における「ウエハ押さえ10」は,以下の相違点を除き本願発明2の「基板係合部」と,「前記壁部又は前記蓋体と,前記基板収納空間に収納された前記基板の縁部と,の間で弾性変形可能であり,前記基板に形成され前記基板の周方向における前記基板の方向を示す方向認識部に係合可能」である点で一致する。

ウ 引用発明の「ウエハ押さえ10」における「弾性部材12a」は,弾性変形可能であることは明らかであり,また,蓋体19が容器本体18に係止された場合に,「弾性部材12a」の先端部に設けられた「立ち上がり部13d」が半導体ウエハと2カ所で係合するものと認められる。
してみると,引用発明の「ウエハ押さえ10」における「支持枠11」及び「弾性部材12b」,「立ち上がり部13d」が,本願発明2の「奥側基板支持部」と,「弾性変形可能であり」「前記複数の基板の縁部を支持可能であり,前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに」「前記複数の基板を並列させた状態で,前記複数の基板を支持する」「基板支持部」であり,「前記基板支持部は,前記基板の周方向における少なくとも前記基板の周縁部の2箇所において,前記基板の周縁部を支持」する点で一致する。

エ 引用発明の「接触部16d」は,「支持枠11」と一体的に形成されている「内側弾性部材12b」の先端部に設けられているから,「支持枠11」に接続されていると認められる。すると,引用発明の「接触部16d」は「支持枠11」に存在するものと認められ,ここで,「内側弾性部材12b」が弾性変形可能であることは明らかである。
加えて,引用発明の「接触部16d」は,蓋体が容器本体の開口部を閉鎖するように係止された場合に,半導体ウエハ14の結晶方向を示すためのオリエンテーションフラットあるいはノッチと係合可能なものである。
してみると,引用発明の「接触部16d」は,本願発明2における「基板位置決め当接部」と,「前記基板支持部に存在し,前記方向認識部に係合する」点,及び,「前記基板支持部と」「弾性変形部を介して接続され」る点で一致する。

オ 引用発明の「ウエハ搬送容器17」は,以下の相違点を除き本願発明2における「基板収納容器」に対応する。

カ したがって,本願発明2と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 一端部に容器本体開口部が形成され他端部が閉塞された筒状の壁部を備え,前記壁部の内面によって,複数の基板を収納可能であり前記容器本体開口部に連通する基板収納空間が形成された容器本体と,
前記容器本体開口部に対して着脱可能であり,前記容器本体開口部を閉塞可能であり,前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記基板収納空間に対向する蓋体と,
前記壁部又は前記蓋体と,前記基板収納空間に収納された前記基板の縁部と,の間で弾性変形可能であり,前記基板に形成され前記基板の周方向における前記基板の方向を示す方向認識部に係合可能な基板係合部と,を備え,
前記基板係合部は,
弾性変形可能であり,前記複数の基板の縁部を支持可能であり,前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに,前記複数の基板を並列させた状態で,前記複数の基板を支持する基板支持部と,
前記基板支持部に存在し,前記方向認識部に係合する基板位置決め当接部と,を有し,
前記基板支持部は,前記基板の周方向における少なくとも前記基板の周縁部の2箇所において,前記基板の周縁部を支持し,
前記基板位置決め当接部は,前記基板支持部と弾性変形部を介して接続されている基板収納容器。」

(相違点)
(相違点2)本願発明2は「前記蓋体の部分であって前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記基板収納空間に対向する部分に配置され,前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに,前記複数の基板の縁部を支持可能な蓋体側基板支持部」を備えているのに対し,引用発明ではそのような構成は特定されていない点。

(相違点3)本願発明2は,基板係合部の基板支持部が,「前記基板収納空間内において前記蓋体側基板支持部と対をなすように配置され」ており,「前記蓋体側基板支持部と協働して,前記複数の基板を並列させた状態で,前記複数の基板を支持する奥側基板支持部」と特定されているのに対し,引用発明は,引用発明の「ウエハ押さえ10」における「支持枠11」及び「弾性部材12b」,「立ち上がり部13d」が,そのように特定されていない点。

(相違点4)本願発明2は,基板位置決め当接部が,「前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記奥側基板支持部の間の中央部位置に存在し,前記奥側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続されている」と特定されているのに対し,引用発明は,「接触部16d」が,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑みて,上記相違点4を先に検討する。
上記「第5」3の引用文献B,Cに記載されているとおり,「半導体ウエハの周縁部を支持する基板支持部を弾性変形部により連結させる。」という技術的事項が,本願出願前において周知技術であるとしても,それは,該周知技術は,基板位置決め当接部について何ら特定するものではない。
すると,引用発明において周知技術を採用したとしても,「前記基板位置決め当接部は,前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記奥側基板支持部の間の中央部位置に存在し,前記奥側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続されている」ものとすることは,当業者が容易になし得たものとはいえない。
加えて,「前記基板位置決め当接部は,前記基板の周方向における,前記基板の周縁部の2箇所を支持する前記奥側基板支持部の間の中央部位置に存在し,前記奥側基板支持部とそれぞれ弾性変形部を介して接続されている」点が,本願出願前において周知技術であったとまではいえず,当業者が適宜なし得た設計的事項であるとすることもできない。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明2は,当業者であっても引用発明に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明3,4について
本願発明3,4も,本願発明1,2と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1,2と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第1項第3号),理由2(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により,本願発明1,3-4は,相違点1に係る構成を有するものとなっており,拒絶査定において引用された引用文献Aに記載された発明とはいえない。
また,当業者であっても,引用文献Aに基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由1,理由2を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-07-22 
出願番号 特願2015-26501(P2015-26501)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
小田 浩
発明の名称 基板収納容器  
代理人 岩池 満  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  
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