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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1364349
審判番号 不服2019-4743  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-09 
確定日 2020-08-04 
事件の表示 特願2017-560488「メロキシカムを含む医薬組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月18日国際公開、WO2016/131067、平成30年 3月29日国内公表、特表2018-508570、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月11日(パリ条約による優先権主張 2015年11月25日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、出願後の主な経緯は以下のとおりである。

平成29年10月10日 :手続補正書の提出
平成30年 5月23日付け:拒絶理由通知
平成30年 8月 1日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年11月29日付け:拒絶査定
平成31年 4月 9日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 2年 4月 7日付け:拒絶理由通知
令和 2年 5月19日 :意見書及び手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明1-6、9は、以下の引用文献1、3-5に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明7-11は、以下の引用文献1、3-8に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものである。

<引用文献等一覧>
1.特表2001-513563号公報
3.特表2013-543843号公報(周知技術を示す文献)
4.特表2010-530897号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2015-91857号公報(周知技術を示す文献)
6.特表2007-522217号公報(周知技術を示す文献)
7.特表2004-536809号公報(周知技術を示す文献)
8.特表2010-516691号公報(周知技術を示す文献)


第3 当審拒絶理由について
当審では、令和2年4月7日付け拒絶理由通知書により、平成31年4月9日に提出された手続補正書で補正された請求項1-11に係る発明につき、請求項1の「複合体」が「包接複合体」以外に如何なる複合体を含むものであるのかが明確に把握できず、また、請求項3の「モル比」が、メロキシカムとSBEβCDのいずれを分母として導出される値であるのかが明確でないため、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知した。
そして、令和2年5月19日提出の手続補正書による補正にて、これらの不備は解消した。


第4 当審の判断
1 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和2年5月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定され、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
1)スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン(SBEβCD)およびメロキシカムの包接複合体と、2)NaHCO_(3)またはKHCO_(3)とを含み、
ヒトに経口投与することで、メロキシカム単独の経口投与よりもヒトにおけるメロキシカムのT_(max)をより減少させ、
前記ヒトにおけるメロキシカムのT_(max)は、約80分以内である、
ことを特徴とする固体経口医薬組成物。
【請求項2】
前記SBEβCDが、β-シクロデキストリンの各分子について約6?約7個のスルホブチルエーテル基を有する、請求項1に記載の固体経口医薬組成物。
【請求項3】
前記メロキシカムの前記SBEβCD1モルに対するモル比が約0.8?約1.2である、請求項1または2に記載の固体経口医薬組成物。
【請求項4】
前記メロキシカムの前記SBEβCD1モルに対するモル比が約1である、請求項3に記載の固体経口医薬組成物。
【請求項5】
約50mg?約200mgのSBEβCDが固体経口医薬組成物中に存在する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固体経口医薬組成物。
【請求項6】
前記NaHCO_(3)またはKHCO_(3)が、約400mg?約600mgの量で存在する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の固体経口医薬組成物。
【請求項7】
さらにプロトンポンプ阻害剤を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の固体経口医薬組成物。
【請求項8】
前記プロトンポンプ阻害剤がエソメプラゾールである、請求項7に記載の固体経口医薬組成物。
【請求項9】
ヒトへの固体経口医薬組成物の経口投与が、投与後10分?80分の間のメロキシカムのT_(max)をもたらす、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の固体経口医薬組成物。
【請求項10】
約30mg?約50mgのエソメプラゾールが固体経口医薬組成物中に存在する、請求項9に記載の固体経口医薬組成物。
【請求項11】
疼痛の治療のための、請求項10に記載の固体経口医薬組成物。」


2 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている。

(摘記1a)「【請求項1】 活性成分としてのメロキシカム;オリゴサッカライドおよび/あるいはポリサッカライド;界面活性剤、ヒドロトロピー剤、アルカリ化剤、ハイドロコロイド、およびポリマーよりなる群から選択された薬学的に許容された添加剤の1種あるいはそれ以上;および任意の賦形剤、担体および/あるいは助剤よりなる医薬組成物。
【請求項2】 該オリゴサッカライドおよび/あるいはポリサッカライドが、シクロデキストリン、微結晶セルロース、ラクトース、および/あるいは澱粉であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。」

(摘記1b)「【0007】
(発明の概要)
本発明の主たる目的は、溶解性および生物学的利用能の改良されたメロキシカムの新規な組成を提供することである。
【0008】
メロキシカムの溶解性および生物学的利用能は、異なった生産方法(共粉砕化法、共粉体化法、共混練法等)を用いて、メロキシカムと特別な添加剤とを混合することにより改良されることが、驚くべきことに見いだされた。またメロキシカムを含む特別な投与形態を作り、その結果溶解性が改良されうることが、見いだされた。
……
【0010】
微細化の際にメロキシカムにヒドロトロピー剤を添加することによっても、溶解性および生物学的利用能を改良することが出来る。好ましいヒドロトロピー剤は、例えばグリシン酸ナトリウム、ニコチンアミド、メチルグルカミン、あるいはこれらの混合物である。
【0011】
シクロデキストリンをメロキシカムと組み合わせて使用すると、シクロデキストリンとメロキシカムの真の封入錯体を形成することなく、溶解性および生物学的利用能が改良できる。」

(摘記1c)「【0027】
実施例IV/1
セラミックボールミル中で、固体成分であるメロキシカムとβ-シクロデキストリン水和物(BCDx)を充分な時間の間、共粉体化することにより、X線散乱法および顕微鏡によっても実証されるように、ある温度におけるこれらの固体の新規な固体状態構造の結果が得られる。メロキシカムを単独で同1条件で粉体化した時に比べて、粉体法による組成物も、溶解性の向上した特性を示す。」

(摘記1d)「【0061】
実施例V/8
錠剤あたりメロキシカム7.5mgを含有する発泡性錠剤の製剤化
実施例IV/1によるメロキシカム組成物 58mg
メチルグルカミン 2mg
炭酸水素ナトリウム 260mg
酒石酸水素ナトリウム 320mg
アスパルターム 35mg
芳香付与物質 77mg」

(2)上記摘記1c、1dに照らせば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「58mgの、β-シクロデキストリン水和物およびメロキシカムを共粉体化した組成物と、2mgのメチルグルカミンと、260mgの炭酸水素ナトリウムと、320mgの酒石酸水素ナトリウムと、35mgのアスパルタームと、77mgの芳香付与物質とを含む、発泡性錠剤」

3 引用文献3-5について
原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用された引用文献3-5には、それぞれ、以下の事項が記載されている。

(摘記3a)「【0056】
本発明の非経口製剤は、ケトロラクまたはその薬学的に許容される塩の可溶性を向上させるシクロデキストリンを含むことができる。活性薬剤は、例えばα、βまたはγシクロデキストリン等のシクロデキストリンと反応して包接錯体を形成し得る。
……
【0058】
ある種の実施形態において、シクロデキストリンは、スルホブチル化シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンのようなスルホアルキル化βシクロデキストリンである。シクロデキストリンの平均置換度は、例えば約2?約10のスルホブチル基または約5?約8のスルホブチル基とすることができる。他の実施形態では、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリンである。」(引用文献3)

(摘記4a)「【0155】
非経口投与を対象とした医薬組成物は、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水溶性ビヒクル、抗菌剤または微生物の増殖に対する防腐剤、安定剤、溶解度増加剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁および分散剤、湿潤または乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖またはキレート剤、凍結防止剤、分散防止剤、増粘剤、pH調整剤、および不活性ガスが挙げられるが、これらに限定されない、1つ以上の医薬上許容し得る担体および賦形剤を含み得る。
……
【0157】
……適切な錯化剤としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、およびスルホブチルエーテル7-β-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、CyDex,Lenexa,KS)等のシクロデキストリンが挙げられるが、これらに限定されない。」(引用文献4)

(摘記5a)「【0015】
SAE-CDは、負に帯電したシクロデキストリンの類であり、これらは、アルキルスペーサーの性質、塩形態、置換度、および出発親シクロデキストリンの点で異なる。1シクロデキストリン分子当たり平均約7個の置換基を有する、β-シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体のナトリウム塩(SBE7-β-CD)は、CAPTISOL(登録商標)シクロデキストリンとしてCyDex Pharmaceuticals, Inc. (Kansas)によって市販されている。
【0016】
アニオン性スルホブチルエーテル置換基は、親シクロデキストリンの水溶性を劇的に改善する。薬物とCAPTISOL(登録商標)シクロデキストリンとの可逆的な非共有結合性の錯体形成は、一般的に、水溶液中におけるいくつかの薬物の溶解性および安定性を増加させる。しかし、特定の薬物への結合に関してHP-β-CDと比べてのSAE-CDの改善された性質は、いくぶん予測不可能である。多くの薬物がSAE-CDとよりよく結合することが公知である一方、他のものはHP-β-CDとよりよく結合することが公知である。さらに、CAPTISOL(登録商標)シクロデキストリンは、比較的新しく、クロピドグレルとのその併用は、先行技術において評価も示唆もされていない。」(引用文献5)

4 対比・判断
(1)本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「炭酸水素ナトリウム」、「発泡性錠剤」はそれぞれ、本願発明1の「2)NaHCO_(3)またはKHCO_(3)」、「固体経口医薬組成物」に相当する。そして、引用発明の「β-シクロデキストリン水和物」と本願発明1の「スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン」とは、シクロデキストリンである点において共通し、引用発明の「共粉体化した組成物」と本願発明1の「包接複合体」は、複数の成分を含む組成物である点において共通する。
また、本願発明1では、「1)スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン(SBEβCD)およびメロキシカムの包接複合体と、2)NaHCO_(3)またはKHCO_(3」)以外の成分の有無についての規定はないことから、引用発明がメチルグルカミン等の他成分を含むものである点をもって、本願発明との相違点を認めることはできない。
そうすると、両者は、以下の点において、一致及び相違するといえる。

<一致点>
「1)シクロデキストリンおよびメロキシカムを含む組成物と、2)NaHCO_(3)またはKHCO_(3)とを含む、固体経口医薬組成物。」

<相違点1>
本願発明では、シクロデキストリンが「スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン(SBEβCD)」と特定され、且つ、これが「メロキシカム」と「包接複合体」を形成すると特定されているのに対し、引用発明では、シクロデキストリンが「β-シクロデキストリン水和物」であり、これがメロキシカムと包接複合体を形成しているか否かが不明である点

<相違点2>
本願発明では、固体経口医薬組成物が、「ヒトに経口投与することで、メロキシカム単独の経口投与よりもヒトにおけるメロキシカムのT_(max)をより減少させ」るものであり、「前記ヒトにおけるメロキシカムのT_(max)は、約80分以内である」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点

(2)判断
まず、上記相違点1について検討する。
引用文献1には、上記摘記1aに見られるように、シクロデキストリンが、使用可能なオリゴサッカライドおよび/あるいはポリサッカライドの一つとして例示され、他のオリゴサッカライドおよび/あるいはポリサッカライドとして、微結晶セルロースやラクトース等、包接複合体を形成し得ないものが挙げられている。加えて、引用文献1には、上記摘記1bに示されるとおり、シクロデキストリンとメロキシカムとで真の封入錯体、すなわち、包接複合体を形成することなく、溶解性および生物学的利用能が改善できると記載されている。
これらの記載に接した当業者であれば、引用発明では、シクロデキストリンとメロキシカムとで包接複合体を形成する必要がないと理解する。
そうすると、上記摘記3a?5aに見て取れるように、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン(SBEβCD)が、包接複合体を形成するためのシクロデキストリンの一種として周知のものであり、上記摘記5aに記載されるように、これがシクロデキストリンよりも水溶性が改善されたものである点が、当該分野で知られているとしても、引用発明におけるβ-シクロデキストリン水和物を、包接複合体の形成のために、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン(SBEβCD)に置換する動機付けがあるとはいえない。
したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基いて容易に発明することができたものであるとはいえない。

(3)本願発明2-11も、本願発明1を更に特定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明1-11は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-07-14 
出願番号 特願2017-560488(P2017-560488)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61K)
P 1 8・ 121- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古閑 一実吉田 佳代子横山 敏志  
特許庁審判長 藤原 浩子
特許庁審判官 石井 裕美子
穴吹 智子
発明の名称 メロキシカムを含む医薬組成物  
代理人 木村 満  
代理人 桜田 圭  
代理人 美恵 英樹  
代理人 森川 泰司  
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