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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H02M 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H02M |
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管理番号 | 1364431 |
審判番号 | 不服2019-5833 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-05-07 |
確定日 | 2020-08-11 |
事件の表示 | 特願2014- 46356「電動圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月28日出願公開、特開2015-171282、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成26年3月10日の出願であって,平成30年5月28日付けで拒絶理由通知がなされ,同年8月6日に手続補正がなされたが,平成31年1月21日付けで拒絶査定(原査定)がなされ,これに対し,令和1年5月7日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ,前置審査において同年7月25日付けで拒絶理由通知(以下,「前置拒絶理由通知」という。)がなされ,同年9月30日に意見書のみが提出され,令和2年5月15日に前置報告がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成31年1月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-4に係る発明は,以下の引用文献1,2,6,a-fに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2004-248362号公報 2.特開2008-263755号公報 3.特開2012-210095号公報 4.特開2008-61414号公報 5.特開2007-74818号公報 6.特開2013-176193号公報 a.特開平9-266694号公報 b.特開昭59-198897号公報 c.特開2005-312158号公報 d.特開2010-51111号公報 e.特開2008-161054号公報 f.特開2002-8884号公報 第3 前置拒絶理由通知の概要 前置拒絶理由通知の概要は次のとおりである。 理由1(進歩性) 本願請求項1-4に係る発明は,以下の引用文献1-6,a-f,αに基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2004-248362号公報(拒絶査定時の引用文献1) 2.特開2008-263755号公報(拒絶査定時の引用文献2) 3.特開2012-210095号公報 (拒絶査定時の引用文献3) 4.特開2008-61414号公報(拒絶査定時の引用文献4) 5.特開2007-74818号公報(拒絶査定時の引用文献5) 6.特開2013-176193号公報(拒絶査定時の引用文献6) a.特開平9-266694号公報(拒絶査定時の引用文献a) b.特開昭59-198897号公報(拒絶査定時の引用文献b) c.特開2005-312158号公報(拒絶査定時の引用文献c) d.特開2010-51111号公報(拒絶査定時の引用文献d) e.特開2008-161054号公報(拒絶査定時の引用文献e) f.特開2002-8884号公報(拒絶査定時の引用文献f) α.特開2010-200427号公報(前置拒絶理由通知において新たに引用した文献) 理由2(明確性) ・請求項1-4 請求項1の「変動」の記載は明確でなく,本願は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由3(サポート要件) ・請求項1-4 理由2において指摘したように,各請求項の記載は明確でなく,本願は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由4(実施可能要件) ・請求項1-4 理由2,3において指摘したように,各請求項の記載は明確でなく,本願は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 本願発明 本願請求項1-4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は,令和1年5月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 <本願発明1> 「【請求項1】 直流電源から出力される電圧を昇圧する昇圧コンバータと、 前記昇圧コンバータによって昇圧された電力を交流電力に変換するインバータと、 前記インバータから出力される交流電力によって圧縮機を回転させるモータと、 前記直流電源から供給される電力によって、前記昇圧コンバータを前記昇圧コンバータの負荷演算結果に基づいてPWM制御するとともに、前記インバータをPWM制御する制御装置と、 を備え、 前記昇圧コンバータ及び前記インバータは同一の基板に設けられ、かつ同一の筐体に収容されて前記圧縮機に流入する冷媒によって冷却され、 前記制御装置は、モータ回転数の変動が小さい場合には、前記昇圧コンバータのPWM周波数を低くし、前記モータ回転数の変動が大きい場合には、前記昇圧コンバータのPWM周波数を高くする電動圧縮機。」 本願発明2-4は,本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について 上記引用文献1には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 ア 「【0016】 【発明の実施の形態】 以下、本発明を適用してなる冷凍装置及びインバータ装置の一実施形態について、図1?図10を用いて説明する。(中略)図8は、各相の電圧指令eoU、eoV、eoW、及びスイッチング素子38UP、38UN、38VP、38VN、38WP、38WNへの制御信号を示し、二相PWM制御を説明するグラフである。」 イ 「【0017】 本実施形態の空気調和機は、図1に示すように、冷媒を圧縮する圧縮機1と、冷媒が通流する室内熱交換器3及び室外熱交換器7と、冷媒を減圧する膨張弁5とを備えて構成されている。(中略)圧縮機1は、冷凍サイクルに必要とされる能力に関連して運転周波数を可変制御される誘電型の電動機11により駆動され、電動機11の運転周波数、すなわち圧縮機1の回転数はインバータ装置13により制御されるようになっている。」 ウ 「【0020】 (中略)インバータ装置13は、図2に示すように、主として交流電源25からの電力を電動機11に供給する回路が実装された第1の基板27と、第1の基板27を制御する回路が実装された第2の基板28と、第2の基板28と制御装置23との間で運転情報を伝送する回路が実装された第3の基板29とを備えて構成されている。 【0021】 第1の基板27は、単相交流電源25が接続され、単相交流電源25からの交流電力を直流にするコンバータ回路31と、直流/交流変換器であるインバータ回路33と、電源力率を改善するアクティブ回路35が実装され、インバータ回路33の実装面の反対側に図示していない放熱フィンが密着させて設けられている。(中略)コンバータ回路31は、ダイオードなどの整流素子32が複数(本実施形態では4個)ブリッジ結線されて形成され、冷凍装置を運転又は停止するマグネットスイッチ30、力率用リアクトル34を介してアクティブ回路35に接続されている。(中略)インバータ回路33は、トランジスタなどのパワー半導体である複数のスイッチング素子38がブリッジ結線されたものであり、本実施形態では、スイッチング素子38UP、38UN、38VP、38VN、38WP及び38WNが三相ブリッジ結線され、U相、V相、W相を有する三相交流型の電動機11に接続されている。(中略) 【0022】 第2の基板28は、制御回路であるマイクロコンピュータ(図中にマイコンと表示)37と、マイクロコンピュータ37からの信号に基づいてインバータ回路33のスイッチングを制御するドライバ回路41と、電動機11の電流を検出する電流検出機構42と、コンバータ回路31電源から供給される高電圧を例えば5V程度に調整してマイクロコンピュータ37、ドライバ回路41、電流検出機構42に供給する電源回路43と、アクティブ回路35を駆動する力率改善制御機構45と、電動機11の端子台47とが設けられている。」 エ 「【0024】 これらの基板27、28、29は、図3及び図4に示すように、上側が開口した箱型のケース57内に、ケース57の底から第1、第2、第3の順で積層されている。 【0025】 (中略)また、ケース57の底面に位置する第1の基板27の実装の裏面には、コンバータ回路31、インバータ回路33、及びアクティブ回路31の熱を放熱する放熱フィン65が熱的に接続されている。」 オ 「【0027】 (中略)マイクロコンピュータ37は、圧縮機1の周波数が設定周波数になるようにスイッチングを行い電動機11に供給する交流の周波数を適宜調整する。」 カ 「【0045】 (中略)また、本実施形態では、電動機として三相の誘導電動機を用いた」 前記ア?カによれば,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 「冷媒を圧縮する圧縮機1と(【0017】),圧縮機を駆動する電動機11と(【0017】),電動機の運転周波数,すなわち圧縮機の回転数を制御するインバータ装置13と(【0017】),からなる機器であって, 電動機11は,三相の誘導電動機であり(【0045】), インバータ装置13は, 交流電源25からの電力を電動機11に供給する回路が実装された第1の基板27と,第1の基板27を制御する回路が実装された第2の基板28とを備え(【0020】), 第1の基板27は,単相交流電源25からの交流電力を直流にするコンバータ回路31と,直流/交流変換器であるインバータ回路33とが実装され(【0021】), コンバータ回路31は,ダイオードの整流素子32がブリッジ結線されて形成され(【0021】), インバータ回路33は,トランジスタのスイッチング素子38が三相ブリッジ結線され,電動機11に接続され(【0021】), 第2の基板28は,制御回路であるマイクロコンピュータ37と,コンバータ回路31電源から供給される高電圧を調整してマイクロコンピュータ37に供給する電源回路43とが設けられ(【0022】), マイクロコンピュータ37は,圧縮機1の周波数が設定周波数になるようにスイッチングを行い電動機11に供給する交流の周波数を調整し(【0027】),前記スイッチング素子38を二相PWM制御し(【0016】), 第1の基板27及び第2の基板28は,箱型のケース57内に,ケースの底から第1,第2の順で積層され(【0028】),ケース57の底面に位置する第1の基板27の実装の裏面には,コンバータ回路31,インバータ回路33の熱を放熱する放熱フィン65が熱的に接続された(【0025】), 圧縮機1と電動機11とインバータ装置13とからなる機器。」 2 引用文献2について 上記引用文献2には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 ア 「【0001】 この発明は、レーザ加工装置の電源装置等に用いられるスイッチング電源装置に関するものである。」 イ 「【0014】 また、別の発明によるスイッチング電源装置は、直流電圧を所望の直流出力電圧に調整するチョッパ回路と、前記チョッパ回路の直流出力電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路により構成されるスイッチング電源装置において、前記昇圧チョッパ回路と前記インバータ回路を同一プリント基板上に配置し、各々の回路素子を冷却フィンで一括冷却することを特徴としたものである。」 前記ア,イによれば,引用文献2には,スイッチング電源装置について次の事項が記載されている。 <引用文献2の記載事項> 「直流電圧を所望の直流出力電圧に調整する昇圧チョッパ回路と,前記昇圧チョッパ回路の直流出力電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路により構成され,,前記昇圧チョッパ回路と前記インバータ回路を同一プリント基板上に配置し,各々の回路素子を冷却フィンで一括冷却する, レーザ加工装置の電源装置に用いられるスイッチング電源装置。」 3 引用文献3について 上記引用文献3には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 「【0016】 本発明の電力変換装置は、三相交流電力をU,V,W端子から入力し直流電力に変換するコンバータと、コンバータからの直流出力を平滑化する平滑コンデンサと、この平滑化された直流電力を再度三相交流電力に変換し、R,T,S端子より負荷へ出力するインバータと、U,V,W端子からの三相交流電力の入力が停止した場合にインバータに直流電力を供給する蓄電池と、蓄電池とインバータとの間に介在するチョッパとを備えている。 (中略) 【0017】 図1に示すように、本発明の電力変換装置5は、ヒートシンク4が冷却フィン(図示せず)を備えており、矢印Aで示される、ヒートシンク面と平行な方向に送風される冷却空気により、冷却フィンが冷却される。 また、図1の例では、ヒートシンク4の冷却フィンが設置された面の反対側の面に、コンバータ1とインバータ2とチョッパ3とが搭載されている。そして、矢印Aで示される冷却空気の流動方向における上流側にインバータ2が配置され、冷却空気の流動方向におけるインバータ2の下流側にコンバータ1が配置され、さらに、冷却空気の流動方向におけるコンバータ1の下流側にチョッパ3が配置されている。」 4 引用文献4について 上記引用文献4には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 「【0002】 従来より、電動機等に三相交流を印加する電力変換装置として、例えば、特許文献1に開示されているものがある。この特許文献1の電力変換装置は、2つのスイッチング素子を有するコンバータと、コンデンサと、6つのスイッチング素子を有するインバータ回路とを備えている。(中略) 【0003】 ところで、装置全体の高効率化を図るためには、コンバータおよびインバータ回路の一方の低損失化を図るだけでは十分ではなく、双方の低損失化を図ることが有効である。そこで、トランジスタの半導体素子として、スイッチング損失が低いSiC素子やGaN素子等のワイドバンドギャップ半導体を用いることが考えられる。」 5 引用文献5について 上記引用文献5には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 「【0065】 また、昇圧コンバータのPWMキャリア信号の周波数を、インバータのPWMキャリア信号の周波数の2倍としたので、DCリンクコンデンサへ流入するパルス電流和の実効値を抑制するための制御が容易になし得る。」 6 引用文献6について 上記引用文献6には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 ア 「【0001】 この発明は、電動機とその電動機を駆動させるインバータ装置が一体的に取り付けられた機電一体型駆動装置の、特に冷却部に関するものである。」 イ 「【0031】 図6は、図5(A)、図5(B)及び図5(D)のような冷媒aを絞る流出口142を有するジャケット14を備えた機電一体型駆動装置を、コンプレッサ及び内燃機関の吸気を利用して冷却する冷却構成に適用した例である。 図6において、13は内燃機関であって、内燃機関13の前段には吸気流量を制御するスロットルバルブ11を備え、さらにそのスロットルバルブ11の前段の吸気通路17には機電一体型駆動装置1及びコンプレッサインペラ4が介装されており、連通路18でジャケットの流出口142をコンプレッサインペラ4の吸入口41に接続することによって冷媒流路を構成している。 ここで、多相電動機2とコンプレッサインペラ4は、同軸上で構成されており、多相電動機2が回転駆動することにより、コンプレッサインペラ4が一体回転するようになっている。」 ウ 「【0032】 又、機電一体型駆動装置1の上流側には、内燃機関13へ吸気される空気中の塵埃を除去するためのエアクリーナ12が備えられている。これにより、機電一体型駆動装置1及びコンプレッサインペラ4の作動による吸気時においては、取り込まれた外気がエアクリーナ12を介し、多相電動機2及びインバータ装置19を冷却してからコンプレッサインペラ4に達し、コンプレッサインペラ4で圧縮されたのち内燃機関13に過給されるようになっている。上記のような自己吸気による冷却により、別途冷却用ファン等の特別な冷却構成を必要としない。」 前記ア?ウによれば,引用文献6には,機電一体型駆動装置について次の事項が記載されている。 <引用文献6の記載事項> 「電動機とその電動機を駆動させるインバータ装置が一体的に取り付けられた機電一体型駆動装置であって(【0001】), 電動機とコンプレッサインペラは,同軸上で構成されており,電動機が回転駆動することにより,コンプレッサインペラが一体回転し(【0031】), 機電一体型駆動装置及びコンプレッサインペラの作動による吸気時においては,取り込まれた外気が,電動機及びインバータ装置を冷却してからコンプレッサインペラに達し,コンプレッサインペラで圧縮されたのち内燃機関に過給される(【0032】), 機電一体型駆動装置。」 7 引用文献aについて 上記引用文献aには,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 ア 「【0004】図6において、(中略) 【0005】(中略)コンバータ部3はダイオードブリッジ3aおよび平滑コンデンサ3bからなり、交流電圧を直流電圧に変換してインバータ回路(インバータ手段)4に出力する。インバータ回路4は複数のトラジスタとダイオードをそれぞれ並列に接続し、かつ三相ブリッジに接続し、入力直流電圧を三相交流に変換して圧縮機を駆動する三相のモータ5に印加する。 【0006】このとき、マイクロコンピュータ6は室温センサによる検出温度とリモコンによる設定温度との差等に応じて決定されるインバータ回路4の出力周波数(圧縮機の運転周波数)foにしたがって同インバータ回路4を制御するための駆動信号(PWM信号)を出力する。駆動回路7はその駆動信号に応じてインバータ回路4のトランジスタを駆動する。」 イ 「【0017】図1において、この空気調和機の制御装置は、図6に示すコンバータ部3に代わるコンバータ部(コンバータ手段)10と、このコンバータ部10を制御するコンバータ制御回路11と、図6に示すマイクロコンピュータ6の機能の他に、インバータ回路4の出力周波数foあるいは圧縮機のモータ5の回転数に応じて制御信号ScをH,Lとしてコンバータ制御回路11に出力するマイクロコンピュータ12と、図6と同じインバータ回路4および駆動回路7とを備えている。 【0018】コンバータ部10は、ダイオードブリッジからなる整流回路10aと、この清流回路10aの正側端子に直列に接続したチョークコイル10bおよびダイオード(FRD)10cと、このチョークコイル10bとダイオード(FRD)10cとの間で整流回路10aと並列に接続したスイッチング素子(IGBT;絶縁ゲート形トランジスタ)10dと、出力直流電圧を平滑化する平滑用コンデンサ10eと、整流回路10aの出力電圧波形を検出するための抵抗回路10fと、出力直流電圧を検出するための抵抗回路10gおよび電流検出抵抗10hとを備えている。」 ウ 「【0019】コンバータ制御回路11は、例えば発振回路、増幅回路、乗算器、比較器および駆動回路等からなり、制御用ICやその周辺回路で構成されている。このコンバータ制御回路11は、抵抗回路10fで分圧された整流電圧波形、抵抗回路10dで分圧された直流電圧、および電流検出抵抗10hで検出された電流波形を入力し、コンバータ部10のスイッチング素子10dの駆動信号(図4(b)参照)を出力して入力交流電流波形を制御し、入力交流電流波形をほぼ正弦波になるようにする(図6参照)。」 エ 「【0025】具体的には、インバータ制御の出力周波数foが第1の設定値fONに達すると、スイッチング素子10dの制御を開始し、しるか後その出力周波数foが第1の設定値fONより小さい第2の設定値fOFFに達すると、スイッチング素子10dの制御を停止する。」 前記ア?エによれば,引用文献aには,空気調和機の制御装置について,次の事項が記載されている。 <引用文献aの記載事項> 「ダイオードブリッジからなる整流回路10aと,この整流回路10aの正側端子に直列に接続したチョークコイル10bおよびダイオード(FRD)10cと,このチョークコイル10bとダイオード(FRD)10cとの間で整流回路10aと並列に接続したスイッチング素子10dとを備えたコンバータ部10と(【0018】), コンバータ部10からの入力直流電圧を三相交流に変換して,圧縮機を駆動する三相のモータ5に印加するインバータ回路4と(【0005】), コンバータ部10のスイッチング素子10dの駆動信号を出力して入力交流電流波形を制御し,入力交流電流波形をほぼ正弦波になるようにするコンバータ制御回路11と(【0019】), インバータ回路4の出力周波数(圧縮機の運転周波数)foにしたがって同インバータ回路4を制御するための駆動信号(PWM信号)を出力するとともに(【0006】),インバータ回路4の出力周波数foあるいは圧縮機のモータ5の回転数に応じて制御信号ScをH,Lとしてコンバータ制御回路11に出力するマイクロコンピュータ12と(【0017】), を備え, インバータ制御の出力周波数foが第1の設定値fONに達すると,スイッチング素子10dの制御を開始し,しかる後その出力周波数foが第1の設定値fONより小さい第2の設定値fOFFに達すると,スイッチング素子10dの制御を停止する(【0025】), 空気調和機の制御装置(【0017】)。」 8 引用文献bについて 上記引用文献bには,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 ア 「この発明は、直流電力を交流電力に変換して交流電動機を駆動する電力変換器に関する。」(1頁左下欄15?16行) イ 「速度指令Nrefの大きさを判別する比較器33の基準レベルをNcompとすると、Nref≦Ncompの低速度領域では、チョッパ制御回路36とPAM回路35は動作せず、PWM回路34のみが動作して、ベース駆動回路38を介してインバータ5は出力電圧Voと周波数foの比Vo/foが一定になるようにPWM制御を行う。このときチョッパートランジスタ31はオフになっている。」(2頁左下欄10?18行) ウ 「次にNref>Ncompの高速度領域では、逆にPWM回路34は動作せず、チョッパ制御回路36とPAM回路35が動作する。チョッパ制御回路36の信号によりベース駆動回路37を介して、チョッパートランジスタ31はオン・オフ動作を行う。」(2頁右下欄2?7行) エ 「チョッパー30の出力電圧Vd’はデューティー比kに比例して変化する。したがって、速度指令Nrefの増加にしたがい、デューティー比kを増加させることにより、インバータ5の入力電圧Vd’は増加する。 一方、インバータ5はPAM回路35により周波数制御のみ行われる。」(3頁右上欄1?7行) オ 「以上説明したように、本発明は、直流電源とインバータの間に昇圧チョッパーを接続し、交流電動機の速度判別手段からの低速度信号によりインバータを高周波変調制御し、高速度信号により昇圧チョッパーを制御すると共にインバータを周波数制御するものであるから、低速時には高周波変調信号によりインバータの出力電圧が制御され、一方高速時には昇圧チョッパーによりインバータの出力電圧が制御される。」(3頁右下欄12?20行) カ 第3図から、“直流電源1に接続された昇圧チョッパー30と,昇圧チョッパー30の出力に接続され,交流電動機を駆動するインバータ5”とが読み取れる。 前記ア?カによれば,引用文献bには,電力変換器について次の事項が記載されている。 <引用文献bの記載事項> 「直流電力を交流電力に変換して交流電動機を駆動する電力変換器であって, 直流電源1に接続された昇圧チョッパー30と,昇圧チョッパー30の出力に接続され,交流電動機を駆動するインバータ5とを備え, 速度指令Nrefが基準レベルNcomp以下の低速度領域では,チョッパ制御回路36とPAM回路35は動作せず,PWM回路34のみが動作して,出力電圧Voと周波数foの比Vo/foが一定になるようにインバータ5をPWM制御し,このときチョッパートランジスタ31はオフになり, 速度指令Nrefが基準レベルNcompより大きい高速度領域では,PWM回路34は動作せず,チョッパ制御回路36とPAM回路35が動作して,チョッパ制御回路36の信号によりチョッパートランジスタ31をオン・オフ動作し,速度指令Nrefの増加に従いデューティー比kを増加させることによりインバータ5の入力電圧Vd’を増加させ,インバータ5はPAM回路35により周波数制御のみ行う, 電力変換器。」 9 引用文献cについて 上記引用文献cには,次の事項が記載されている。 「【0032】 ●制御回路用電源 制御回路用電源45は、太陽電池セル1から出力される1V程度の電圧を、制御回路46に供給する制御電源用に変換する。」 10 引用文献dについて 上記引用文献dには,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 ア 「【0007】 請求項1記載の発明では、バッテリからの直流電力を交流電力に変換してモータに出力するインバータ回路と、インバータ回路を駆動する駆動信号を送信する駆動回路と、駆動回路を制御する制御信号を送信する制御回路と、を備えるモータ駆動装置において、スイッチング素子を駆動してバッテリからの電圧を所定電圧に昇降圧して駆動回路とインバータ回路とに昇降圧した電圧を出力する昇降圧回路を備えることを特徴とする。」 イ 「【0011】 請求項2記載の発明では、制御回路は、昇降圧回路を介することなく電力が供給されることを特徴とする。」 ウ 「【0013】 請求項3記載の発明では、制御回路に電力を供給する制御回路用電源ラインに制御回路への電力供給を断続するスイッチを設けたことを特徴とする。 11 引用文献eについて 上記引用文献eには,次の事項が記載されている。 ア 「【0021】 そして、この制御基板7には、制御回路用の電源を作り出す電源回路8と、PWM制御部や電流検出制御部などの制御回路9が搭載される。ここで、電源回路8は、いわゆるDC-DCコンバータで構成されるのが一般的であるが、この図では、変圧器を表わすシンボルで描いてある。」 イ 図1?4から,“交流電力を直流電力に変換する主回路順変換部3と,この主回路順変換部3から出力された直流電力を平滑化する平滑用コンデンサ4と,この平滑用コンデンサ4により平滑化された直流電力を交流電力に変換する主回路逆変換部5とを備えたインバータ装置2において,電源回路8が平滑用コンデンサ4に接続されている構成”が読み取れる。 12 引用文献fについて 上記引用文献fには,次の事項が記載されている。 「【0024】第2の直流電源回路2は、後述するドライブ回路4を駆動するもので、この場合、スイッチング素子Q5、インダクタL2、ダイオードD3、平滑用コンデンサC2、及びこの第2の直流電源回路2の制御をおこなう制御回路2aから構成された降圧チョッパ回路にて形成されている。」 13 引用文献αについて 上記引用文献αには,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 ア 「【0018】 電源装置100は、直流電源としてのAC/DC回路5、DC/DCコンバーター1、検出回路2、デジタルIC101、ゲートドライバー106などから構成されている。 直流電源としてのAC/DC回路5は、ブリッジ回路などの整流回路であり、交流電圧を直流電圧に変換してDC/DCコンバーター1に出力する。なお、整流回路に限定するものではなく、直流電圧を出力可能な電源であれば良い。例えば、電池であっても良い。 DC/DCコンバーター1は、チョッパ回路であり、FET6,7をPWM駆動することでAC/DC回路5からの入力電圧を目標電圧に変換し、負荷10に直流電圧を与えている。DC/DCコンバーター1は、スイッチング素子としてのNチャンネル型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)FETであるFET6,7、インダクター8、キャパシター9などから構成されている。」 イ 「【0022】 (中略)PWM駆動とは、ある駆動周波数でデューティー制御を行う制御のことである。」 ウ 「【0034】 ステップS1では、電源装置100に起動指示がなされたため、目標電圧値の電圧αを出力するために、駆動周波数f2で駆動を開始する。ここでは、メモリー104のデータテーブルに記憶されている係数の組のうち、駆動周波数f2に対応した係数の組が選択され、その選択された係数の組が数式(3)に代入されて得られた制御式C2が用いられる。なお、制御式C2により位相補償された駆動周波数f2の駆動パルスが、第2の駆動信号に相当する。 ステップS2では、検出回路2の検出電圧Voから出力電圧値を測定する。詳しくは、メモリー104に記憶されている検出電圧Voのデジタルデータと出力電圧値との相関関係を示したデータテーブルから該当する値を参照する。 ステップS3では、電圧αとステップS2で測定した出力電圧値との誤差(%)を算出し、当該誤差が10%以下であるか判断する。なお、誤差(%)は、電圧αから出力電圧値を減算した値(偏差)を、電圧αを100とした百分率で表したものであり、デジタルIC101が演算部として機能して算出している。誤差が10%以下であった場合(S3:Yes)には、ステップS4へ進む。誤差が10%を超えていた場合(S3:No)には、ステップS1に戻る。 ステップS4では、駆動周波数を駆動周波数f2よりも低い駆動周波数f1に切り換えて駆動する。ここでは、メモリー104のデータテーブルに記憶されている係数の組のうち、駆動周波数f1に対応した係数の組が選択され、その選択された係数の組が数式(3)に代入されて得られた制御式C1が用いられる。なお、制御式C1により位相補償された駆動周波数f1の駆動パルスが、第1の駆動信号に相当する。」 エ 「【0036】 例えば、電源装置100をレーザーやLED(Light Emitting Diode)などの固体光源の電源として用いる場合、AC/DCコンバーター5(図1)からの入力電圧を約12V、DC/DCコンバーター1の出力電圧を約4Vに設定し、駆動周波数f1を約250KHz、駆動周波数f2を約1MHzに設定する。」 オ 「【0038】 (中略)また、上記実施形態に限定するものではなく、第1の駆動信号で駆動中に大きな負荷変動があった場合には、一定時間、再度第2の駆動信号に切り替えて駆動させても良い。つまり、負荷変動が大きいときには高い駆動周波数で駆動し、負荷変動が小さいときには低い駆動周波数で駆動することを駆動途中で切り換える駆動方法であれば良く、これらの方法であっても、追従性と回路効率とを両立させることができる。」 前記ア?オによれば,引用文献αには,電源装置について次の事項が記載されている。 <引用文献αの記載事項> 「レーザーやLEDなどの固体光源の電源として用いる電源装置100であって(【0036】), 交流電圧を直流電圧に変換してDC/DCコンバーター1に出力するAC/DC回路5と(【0018】), スイッチング素子のFET6,7をPWM駆動することでAC/DC回路5からの入力電圧を目標電圧に変換し,負荷10に直流電圧を与えるDC/DCコンバーター1と(【0018】), を備え, PWM駆動は,ある駆動周波数でデューティー制御を行う制御であり(【0022】), 起動指示がなされると,駆動周波数f2で駆動を開始し(【0034】), 目標電圧値の電圧αと出力電圧値との誤差を算出し,当該誤差が10%以下であると,駆動周波数を駆動周波数f2よりも低い駆動周波数f1に切り換えて駆動し(【0034】), 駆動周波数f1で駆動中に大きな負荷変動があった場合には,一定時間,再度駆動周波数f2に切り替えて駆動させる(【0038】), 電源装置100。」 第6 対比・判断 1 前置拒絶理由通知の理由1(進歩性)について (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「圧縮機1と,電動機11と,インバータ装置13とからなる機器」は,本願発明1の「電動圧縮機」に相当する。 (イ)引用発明の「単相交流電源25からの交流電力を直流にするコンバータ回路31」と,本願発明1の「直流電源から出力される電圧を昇圧する昇圧コンバータ」とは,後記する点で相違するものの,ともに“コンバータ”である点で共通する。 (ウ)引用発明の「直流/交流変換器であるインバータ回路33」と,本願発明1の「昇圧コンバータによって昇圧された電力を交流電力に変換するインバータ」とは,後記する点で相違するものの,“コンバータの電力を交流電力に変換するインバータ”である点で共通する。 (エ)引用発明の「圧縮機を駆動する電動機11」は,インバータ回路から出力される交流電力によって圧縮機を回転させるものであるといえる。したがって,引用発明と,本願発明1とは,後記する点で相違するものの,“インバータから出力される交流電力によって圧縮機を回転させるモータ”である点で共通する。 (オ)引用発明の「制御回路であるマイクロコンピュータ37」は,インバータ回路のスイッチング素子を二相PWM制御するので,インバータをPWM制御する制御装置といえる。しかし,引用発明には本願発明1の「直流電源」に当たるものがなく,マイクロコンピュータの電力は,直流電源からではなくコンバータ回路から供給される。また,引用発明のコンバータ回路はダイオードをブリッジ結線したものであり,マイクロコンピュータはこのコンバータ回路を制御しない。 したがって,引用発明の「制御回路であるマイクロコンピュータ37」と,本願発明1の「前記直流電源から供給される電力によって、前記昇圧コンバータを前記昇圧コンバータの負荷演算結果に基づいてPWM制御するとともに、前記インバータをPWM制御する制御装置」とは,後記する点で相違するものの,“前記インバータをPWM制御する制御装置”である点で共通する。 (カ)引用発明のコンバータ回路31とインバータ回路33は,ともに第1の基板27に実装されているので,同一の基板に設けられているものであるといえる。また,第1の基板27は箱型のケース57内に設けられ,その基板の実装の裏面には,コンバータ回路31,インバータ回路33の熱を放熱する放熱フィン65が接続されているので,コンバータ回路31とインバータ回路33は,圧縮機に流入する冷媒によって冷却するものではないものの,同一の筐体に収容されて冷却されるものである。 したがって,引用発明と,本願発明1とは,後記する点で相違するものの,“コンバータ及びインバータは同一の基板に設けられ,かつ同一の筐体に収容されて冷却される”ものである点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次の通りである。 <一致点> 「コンバータと, 前記コンバータの電力を交流電力に変換するインバータと, 前記インバータから出力される交流電力によって圧縮機を回転させるモータと, 前記インバータをPWM制御する制御装置と, を備え, 前記コンバータ及び前記インバータは同一の基板に設けられ,かつ同一の筐体に収容されて冷却される, 電動圧縮機。」 <相違点1> コンバータに関し,本願発明1が,「直流電源から出力される電圧を昇圧する昇圧コンバータ」であるのに対し,引用発明は「単相交流電源25からの交流電力を直流にするコンバータ回路」である点。 <相違点2> コンバータの電力に関し,本願発明1が,「昇圧コンバータによって昇圧された電力」であるのに対し,引用発明は,コンバータ回路31によって交流電力を直流にした電力である点。 <相違点3> 制御装置に供給される電力に関し,本願発明1が,「直流電源から供給される電力」すなわち,昇圧コンバータの入力側の直流電源から供給される電力であるのに対し,引用発明は,コンバータ回路から供給される電力,すなわち,コンバータ回路の出力側から供給される電力である点。 <相違点4> 本願発明1の「制御装置」が,「昇圧コンバータを前記昇圧コンバータの負荷演算結果に基づいてPWM制御する」ものであるのに対し,引用発明の「マイクロコンピュータ37」は,そのようなものではない点。 <相違点5> コンバータ及びインバータの冷却に関し,本願発明1が,「前記圧縮機に流入する冷媒による」冷却するものであるのに対し,引用発明は,放熱フィンによる冷却である点。 <相違点6> 本願発明1の「制御装置」が,「モータ回転数の変動が小さい場合には、前記昇圧コンバータのPWM周波数を低くし、前記モータ回転数の変動が大きい場合には、前記昇圧コンバータのPWM周波数を高くする」ものであるのに対し,引用発明の「マイクロコンピュータ37」は,そのようなものではない点。 (イ)判断 事案に鑑みて,先に上記相違点6について検討する。 本願発明1が備える「昇圧コンバータ」に関し, 引用文献aに記載された「コンバータ部のスイッチング素子10d」は,入力交流電流波形を正弦波にする力率改善用の素子であり,昇圧コンバータのスイッチング素子ではなく, また,引用文献bに記載された「電力変換器」は,交流電動機の低速度領域では昇圧チョッパーのトランジスタ31をオフとし,高速度領域では,昇圧チョッパーのトランジスタ31をオン・オフ動作し,速度指令の増加に従いそのデューティー比を増加させることによりインバータの入力電圧を増加させるものであり,この構成はモータ回転数に応じて昇圧コンバータを制御しているといえるが,その制御の内容は上記相違点6に係る構成と異なるものであり, さらに,引用文献αに記載された「電源装置」は固体光源の電源として用いるものであり,モータを駆動する電源ではない。 したがって,上記相違点6に係る構成は引用文献a,b,αに記載も示唆もされておらず,上記その余の引用文献2-6及びc-fにも記載されていない。また,当該事項は,本願出願前において周知技術であるとも認められない。 そうすると,本願発明1は,他の相違点を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明,引用文献2-6,a-f,αに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 なお,前置報告において新たに引用した引用文献β(特開2013-207925号公報)には,モータの回転数に応じて昇圧コンバータの昇圧動作の制御を行うことが記載され,また,引用文献γ(特開2003-289675号公報),引用文献δ(特開2008-61322号公報),引用文献ε(特開2009-44810号公報)には,コンバータとインバータを同一の基板に設けることは記載されているが,上記相違点6に係る構成は記載されていない。 (2)本願発明2-4について 本願発明2-4も,本願発明1の上記相違点6に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-6,a-f,αに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 前置拒絶理由通知の理由2(明確性),理由3(サポート要件),理由4(実施可能要件)について 理由2-4は,いずれも,請求項1記載の「変動」に係る理由であるので,まとめて検討する。 請求項1に記載された「モータ回転数の変動」とは,回転数の経時的な変化のことであり,この記載に不明な点はない。 また,この構成は,発明の詳細な説明の記載の段落【0057】においてサポートされており,また,モータの回転数からその変動の大きさを特定することは,当業者が実施可能なものである。 したがって,請求項1-4の記載に,理由2(明確性),理由3(サポート要件)に係る不備はなく,発明の詳細な説明の記載も理由4(実施可能要件)に係る不備はない。 第7 原査定について 審判請求時の補正により,本願発明1-4は,上記相違点6に係る「前記制御装置は,モータ回転数の変動が小さい場合には,前記昇圧コンバータのPWM周波数を低くし,前記モータ回転数の変動が大きい場合には,前記昇圧コンバータのPWM周波数を高くする」という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1,2,6,a-f(前置拒絶理由通知の引用文献1,2,6,a-f)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-07-22 |
出願番号 | 特願2014-46356(P2014-46356) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WY
(H02M)
P 1 8・ 537- WY (H02M) P 1 8・ 121- WY (H02M) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 坂東 博司 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
山崎 慎一 山澤 宏 |
発明の名称 | 電動圧縮機 |
代理人 | 藤田 考晴 |
代理人 | 長田 大輔 |
代理人 | 三苫 貴織 |
代理人 | 川上 美紀 |