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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08B
管理番号 1364447
審判番号 不服2018-9231  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-04 
確定日 2020-07-15 
事件の表示 特願2015- 94651「カッサバのプロトプラストを生産し形質転換させる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日出願公開、特開2015-178622〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成14年4月11日(パリ条約による優先権主張 平成13年4月11日 米国)を出願日とする特願2002-109126号の一部を、特許法第44条第1項の規定に基づいて平成23年3月2日に分割出願した特願2011-45386号の一部を、同規定に基づいて平成24年11月8日に分割出願した特願2012-246357号の一部を、同規定に基づいて平成27年5月7日に分割出願したものであり、平成30年2月23日付けで拒絶査定がなされ、同年7月4日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに手続補正書が提出され、令和1年5月31日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年12月3日に意見書及び手続補正書が提出されものである。
そして、本願の請求項1?5に係る発明は、令和1年12月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
カッサバ塊茎由来の、化学的修飾、物理的修飾及び酵素的修飾の何れもされていないアミロペクチン澱粉であって、(1)当該アミロペクチン澱粉におけるアミロペクチン含有量が少なくとも95質量%であり、そして(2)当該アミロペクチン澱粉は、少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度を有し且つ糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)である、アミロペクチン澱粉。」


第2 当審拒絶理由
令和1年5月31日付けで当審が通知した拒絶理由は、この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1?7のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、という理由を含むものである。

(引用例)
1.国際公開第00/42076号
2.国際公開第00/54606号
3.国際公開第00/05973号
4.国際公開第00/05319号
5.国際公開第00/05420号
6.国際公開第00/01251号
7.国際公開第99/64677号

第3 当審の判断
1.引用例1の記載事項
引用例1には以下の記載がある。なお、引用例1は英文であるから、引用例1のパテントファミリーである特表2002-534566号公報の記載を翻訳文として記載する。ただし、前記公報において単語「tuber(s)」が「塊茎」と「根茎」の2通りに翻訳されているから、正しい翻訳と認められる「塊茎」に統一して記載する。また、下線は当審が付したものである。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンの乾燥物質ベースで少くとも95wt%のアミロペクチンを含有した根または塊茎デンプンまたはその誘導体の、炭素原子4?24のアルキル鎖を有している疎水性試薬でのエーテル化、エステル化またはアミド化からなる、疎水性デンプンの製造方法。
【請求項2】
デンプンが、デンプンの乾燥物質ベースで少くとも98wt%のアミロペクチンを含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デンプンがアミロペクチンポテトデンプンまたはアミロペクチンタピオカデンプンである、請求項1または2に記載の方法。」

(2)「【0010】
上記のように、本発明によるプロセスでは、デンプンが用いられるが、そのデンプンは非常に高いアミロペクチン分を有している。ほとんどのデンプンタイプは、2つのタイプのグルコースポリマーが存在した顆粒からなる。これらはアミロース(乾燥物質で15?35wt%)およびアミロペクチン(乾燥物質で65?85wt%)である。アミロースは、デンプンタイプに応じて、1000?5000の平均重合度を有する未分岐またはやや分岐した分子からなる。アミロペクチンは、1,000,000以上の平均重合度を有する、非常に大きく高度に分岐した分子からなる。市販されているほとんどの重要なデンプンタイプ(メイズデンプン、ポテトデンプン、小麦デンプンおよびタピオカデンプン)は15?30wt%アミロースを含有している。
【0011】
大麦、メイズ、アワ、小麦、ミロ、コメおよびソルガム(sorghum)のような一部の穀物タイプの中には、デンプン顆粒がほぼ完全にアミロペクチンからなる変種がある。乾燥物質で重量%として計算すると、これらのデンプン顆粒は95%以上、通常98%以上のアミロペクチンを含有している。これら穀物デンプン顆粒のアミロース分は5%未満、通常2%未満である。上記の穀物変種はワキシー穀粒とも称されており、アミロペクチンデンプン顆粒はそこからワキシー穀粒として単離される。
【0012】
異なる穀物の状況とは対照的に、デンプン顆粒がほぼ排他的にアミロペクチンからなる根および塊茎変種は天然では知られていない。例えば、ポテト塊茎から単離されたポテトデンプン顆粒は通常(乾燥物質wt%で)約20%アミロースおよび80%アミロペクチンを含有している。しかしながら、過去10年間にわたり、ポテト塊茎で、(乾燥物質で)95wt%以上のアミロペクチンからなるデンプン顆粒を形成するポテト植物を、遺伝子修飾により栽培する努力が、成功裡に行われてきた。実質的にアミロペクチンのみを含んだポテト塊茎を生産することは、実施可能とわかったのである。
【0013】
デンプン顆粒の形成に際しては、異なる酵素が触媒的に活性である。これら酵素の中では、顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS)がアミロースの形成に関与している。GBSS酵素の存在は、そのGBSS酵素についてコードする遺伝子の活性に依存している。これら特定遺伝子の発現の阻止または阻害で、GBSS酵素の生産が抑制または制限される。これら遺伝子の欠失は、ポテト植物物質の遺伝子修飾または劣性変異により行える。その例はポテトの無アミロース変異体(amf)であって、そのデンプンはGBSS遺伝子で劣性変異により実質的にアミロペクチンのみを含有している。この変異技術は、特にJ.H.M.Hovenkamp-Hermelink et al.,”Isolation of amylose-free starch mutant of the potato(Solanumtuberosum L.)”(ポテト(Solanum tuberosum L.)の無アミロースデンプン変異体の単離),Theor.Appl.Gent.,(1987),75:217-221およびE.Jacobsen et al.,”Introduction of anamylose-free (amf) mutant into breeding of cultivated potato,Solanum tuberosumL.”(栽培ポテトの品種(Solanum tuberosum L.)中への無アミロース変異体(amf)の導入),Buphytica,(1991),53:247-253で記載されている。
【0014】
ポテトでGBSS遺伝子の発現の阻止または阻害は、いわゆるアンチセンス阻害を用いることでも可能である。ポテトのこの遺伝子修飾はR.G.F.Visser et al.,”Inhibition of theexpression of the gene for granule-bound starch synthase in potato by antisenseconstructs”(アンチセンス構築物によるポテトでの顆粒結合デンプンシンターゼ遺伝子の発現の阻害),Mol.Gen.Genet.,(1991),225:289-296で記載されている。
【0015】
遺伝子修飾を用いることにより、デンプン顆粒がアミロースをほとんどまたは全く含有していない根および塊茎、例えばポテト、ヤムまたはカッサバを栽培および耕作することが可能であるとわかった(南アフリカ特許97/4383)。ここで言及しているアミロペクチンポテトデンプンは、ポテト塊茎から単離されて、乾燥物質ベースで少くとも95wt%のアミロペクチン分を有したポテトデンプン顆粒である。」(国際公開第00/42076号の3頁35行?5頁32行)


2.引用発明
引用例1の特許請求の範囲に記載された製造方法では、非常に高いアミロペクチン分を有するデンプンが原料として用いられるところ、上記1.の記載より、当該デンプンについて次の事項が理解される。
すなわち、デンプンにはアミロースおよびアミロペクチンという2つのタイプのグルコースポリマーがあり、一部の穀物の中には、デンプン顆粒が98%以上のアミロペクチンを含有している変種もあるが、穀物とは対照的に、塊茎のデンプン顆粒で実質的にアミロペクチンのみを含んだ天然のものは知られていない。しかし、顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS酵素)がアミロースの形成に関与しており、GBSS酵素をコードする遺伝子の発現の阻止または阻害のような遺伝子修飾を行うことにより、GBSS酵素の生産が抑制または制限され、デンプン顆粒がアミロースをほとんどまたは全く含有していない塊茎(例えばポテト、ヤムまたはカッサバ)を栽培できること、が理解される。
したがって、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。
「GBSS酵素をコードする遺伝子の発現の阻止または阻害するように遺伝子修飾されたカッサバ植物の塊茎から産生された、アミロースをほとんどまたは全く含有していないデンプン顆粒。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「デンプン顆粒」は、上記2.で説明したとおり、遺伝子修飾されたカッサバ植物の塊茎に含有されるデンプンそのものであって、塊茎から産生された後に、何らかの修飾や変性がされたものではないと認められるから、引用発明の「カッサバ植物の塊茎から産生された、アミロースをほとんどまたは全く含有していないデンプン顆粒」は、本願発明の「カッサバ塊茎由来の、化学的修飾、物理的修飾及び酵素的修飾の何れもされていないアミロペクチン澱粉であって、(1)当該アミロペクチン澱粉におけるアミロペクチン含有量が少なくとも95質量%」であるもの、に相当すると認められる。
したがって、両者は、
「カッサバ塊茎由来の、化学的修飾、物理的修飾及び酵素的修飾の何れもされていないアミロペクチン澱粉であって、(1)当該アミロペクチン澱粉におけるアミロペクチン含有量が少なくとも95質量%である、アミロペクチン澱粉。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

(相違点1)
本願発明では「(2)当該アミロペクチン澱粉は、少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度を有し且つ糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)である」ことが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。

4.当審の判断
アミロペクチン澱粉の「RVA(Rapid Visco Analyzer)粘度」及び「糊化エンタルピー(ΔH)」は、澱粉分子の分子量や分岐の程度等に依存する性質であると認められるところ、これらに関して、本願明細書の段落【0126】?【0132】には、ACS 1、ACS 2、ASC 3の3種のアミロペクチンカッサバ澱粉について、表10に粘度(RVA単位)の値、表11に糊化エンタルピー(ΔH)の分析値が示されており、ACS 1、ACS 2、ASC 3は、いずれも「少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度」の性質及び「糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)」の性質を備えていると認められる。
そして、本願明細書の段落【0113】には「ACS 1-3=GBSS遺伝子をアンチセンス方式で導入しFEC(ここからカッサバ植物体を再生させる)を使用することにより、遺伝学的に生成させたアミロペクチンカッサバ澱粉。」と説明されていることから、ACS 1、ACS 2、ASC 3は、いずれもアンチセンス技術を用いてカッサバのGBSS遺伝子を阻害することによりGBSS酵素の発現が阻害された澱粉生合成経路を有するカッサバ植物を作成し、該カッサバ植物の塊茎から分離されたアミロペクチンカッサバ澱粉、すなわち、『GBSS酵素の発現が阻害された改変カッサバ植物体の塊茎』から得られた高アミロペクチンカッサバ澱粉であると認められる。
そうすると、本願明細書に具体的に記載された『GBSS酵素の発現が阻害された改変カッサバ植物体の塊茎』から得られた高アミロペクチンカッサバ澱粉である、上記3種のアミロペクチンカッサバ澱粉がいずれも「少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度」及び「糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)」という性質を備えていることから、これら3種が由来するカッサバ塊茎と同様に『GBSS酵素の発現が阻害された改変カッサバ植物体の塊茎』であれば、同様の澱粉生合成経路を有し、当該澱粉合成経路から産生される澱粉分子の分子量や分岐の程度も同様であり、したがって「少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度」及び「糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)」という性質を同様に備えた澱粉を産生すると認められる。
このように認定できることについては、令和1年12月3日の意見書において審判請求人が、
「4.理由3(実施可能要件;特許法第36条第4項)について
アミロースの形成に関与している顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS)遺伝子が既にクローニングされている場合、それを用いて改変植物を作ることは容易ですので、本願明細書の発明の詳細な説明に、「(2)当該アミロペクチン澱粉は、少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度を有し且つ糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)である」は、実際にアミロペクチン澱粉」を製造したことが確認されていれば、実施可能要件は充足されると考えます。」と、植物体の顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS)遺伝子を改変することで、「(2)当該アミロペクチン澱粉は、少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度を有し且つ糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)である」アミロペクチン澱粉を製造できる旨主張していることとも整合する。
したがって、引用発明の「GBSS酵素をコードする遺伝子の発現の阻止または阻害するように遺伝子修飾されたカッサバから産生された」ものである「アミロースをほとんどまたは全く含有していないカッサバの塊茎デンプンであるデンプン顆粒」は、『GBSS酵素の発現が阻害された改変カッサバ植物体の塊茎』から得られた高アミロペクチンカッサバ澱粉に該当するから、「(2)当該アミロペクチン澱粉は、少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度を有し且つ糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)である」という性質を有しているといえる。
よって、相違点1は実質的な相違点とはいえず、本願発明1は引用例1に記載された発明と同一である。

5.審判請求人の主張について
審判請求人は、令和1年12月3日の意見書において、次の点を主張している。
「引用文献1(国際公開第00/42076号)を含めて、引用文献1?7のいずれにおいても、アミロースの形成に関与している顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS)遺伝子についてその発現をアンチセンス阻害などによって形質転換して遺伝子改変植物を作出し、該改変植物に由来するアミロペクチン含有量が少なくとも95質量%である高アミロペクチン澱粉を実際に得たことは確認されていません。
引用文献1?11の記載から予測できるアミロペクチン澱粉の性質は、精々、「(1)当該アミロペクチン澱粉におけるアミロペクチン含有量が少なくとも95質量%であり」までであり、「(2)当該アミロペクチン澱粉は、少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度を有し且つ糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)である」は、実際にアミロペクチン澱粉」を製造し、当該アミロペクチン澱粉の性質を調べなければ分かりません。」

そこで、以下検討する。
引用例1には「遺伝子修飾を用いることにより、デンプン顆粒がアミロースをほとんどまたは全く含有していない根および塊茎、例えばポテト、ヤムまたはカッサバを栽培および耕作することが可能であるとわかった」(【0015】)と記載されているから、GBSS遺伝子を修飾したカッサバを栽培して、その塊茎からアミロースをほとんどまたは全く含有していないデンプン顆粒を得ることについて実質的に記載されていると認められる。
引用例1には「(2)当該アミロペクチン澱粉は、少なくとも1200RVA単位のRVA(Rapid Visco Analyzer)粘度を有し且つ糊化エンタルピー(ΔH)が17?18(J/g)である」という性質については記載されていないが、上記4.のとおり、『GBSS酵素の発現が阻害された改変カッサバ植物体の塊茎』から得られた高アミロペクチンカッサバ澱粉であれば、これらの性質を有していると認められる。
したがって、引用発明の「GBSS酵素をコードする遺伝子の発現の阻止または阻害するように遺伝子修飾されたカッサバから産生された」ものである「アミロースをほとんどまたは全く含有していないカッサバの塊茎デンプンであるデンプン顆粒」も、この性質を有しているといえる。
仮に、『GBSS酵素の発現が阻害された改変カッサバ植物体の塊茎』から得られた高アミロペクチンカッサバ澱粉であっても、必ずしもこれらの性質を有していないというのであれば、令和1年5月31日付け拒絶理由通知書で(D)、(E)として指摘したとおり、本願発明は実施可能要件及びサポート要件を満足していないといえる。


第4 むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は特許法第29条第1項第3に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-02-12 
結審通知日 2020-02-18 
審決日 2020-03-04 
出願番号 特願2015-94651(P2015-94651)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯室 里美安居 拓哉鶴 剛史  
特許庁審判長 長井 啓子
特許庁審判官 天野 貴子
中島 庸子
発明の名称 カッサバのプロトプラストを生産し形質転換させる方法  
代理人 青木 篤  
代理人 武居 良太郎  
代理人 三橋 真二  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 中島 勝  
代理人 福本 積  
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