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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01J
管理番号 1364451
審判番号 不服2018-13229  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-03 
確定日 2020-07-15 
事件の表示 特願2016-512064「イオン注入均一性を制御するための装置及び技術」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月 6日国際公開、WO2014/179674、平成28年 9月 1日国内公表、特表2016-526254〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成26年 5月 2日:国際特許出願(パリ条約による優先権主張外国 庁受理 2013年5月3日、同年9月25日 、何れも米国)
平成28年11月22日:手続補正書
平成29年10月30日付け:拒絶理由通知(同年11月7日発送)
平成30年 1月23日:意見書、手続補正書
平成30年 6月27日付け:拒絶査定(同年7月3日送達)
平成30年10月 3日:拒絶査定不服審判の請求、手続補正書
平成31年 3月 5日:上申書
令和 1年 7月 9日付け:拒絶理由通知(同年7月16日発送)
令和 1年 8月26日:意見書、手続補正書

2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1-12に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は以下のとおりである。

「イオンビームの伝搬方向に垂直な第1の方向に沿って、前記イオンビームの複数のビーム電流測定を実行する検出器と、
前記複数のビーム電流測定に基づいて、前記第1の方向に沿ったビーム電流の変化を含むビーム電流分布を決定し、前記ビーム電流分布に基づいて、前記ビーム電流分布の勾配及び第1の方向に沿ったビーム高さを計算する分析部と、
前記ビーム高さが閾値を下回らないことを示す場合、現在のパラメータを用いてイオン注入を実行し、前記ビーム高さが前記閾値を下回ることを示し、且つ、調整試行回数が限度を超えない場合、イオン注入装置の1つ以上の選択パラメータを動的に調整する調整部と、を備える、
イオン注入機のイオンビームを制御するシステム。」(以下「本願発明」という。)

3 引用発明等
当審が通知した令和1年7月9日付け拒絶理由通知書は、平成30年10月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲について、記載要件違反の拒絶理由のみを通知し、新規性進歩性などの特許要件についての審理を行っていない旨を付記している。そこで、以下においては、拒絶査定の理由となった進歩性欠如の拒絶理由について検討する。

(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-86643号公報(以下「引用文献」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項11】
被処理体に不純物をイオン注入するイオン注入装置であって、
イオンビームを収束させるための収束レンズと、前記収束レンズによって収束された前記イオンビームを発散させることにより拡げるための発散レンズとを有するデフォーカス部を備えていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項12】
請求項11に記載のイオン注入装置において、
前記デフォーカス部は、前記発散レンズによって拡がった前記イオンビーム中のイオンの前記被処理体に対する照射角度を制御する制御レンズをさらに有していることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項13】
請求項12に記載のイオン注入装置において、
前記制御レンズは他の収束レンズであることを特徴とするイオン注入装置。

【請求項16】
請求項11?13のいずれか1項に記載のイオン注入装置において、
前記イオンビームを前記被処理体に対して2次元的にスキャンさせる機構をさらに備えていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項17】
請求項16に記載のイオン注入装置において、
前記機構は、前記イオンビームを、第1のスキャン速度でファーストスキャン方向にスキャンさせると共に、前記第1のスキャン速度よりも小さい第2のスキャン速度でスロースキャン方向にスキャンさせ、
前記デフォーカス部の後段に、前記ファーストスキャン方向及び前記スロースキャン方向のそれぞれにおける前記イオンビームの形状をスカート部分まで測定できるビームプロファイラーをさらに備えていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項18】
請求項17に記載のイオン注入装置において、
前記ビームプロファイラーにより得られた情報が前記デフォーカス部にフィードバックされることを特徴とするイオン注入装置。」(注:下線は当審が付加した。以下同様。)

イ 「【0026】
以上に述べた諸課題に鑑み、本発明は、イオンビーム形状とスキャンピッチとのミスマッチに起因する高エネルギーイオン注入のドーズ量及び注入深さ等のバラツキを抑制することができる不純物注入方法及びイオン注入装置を提供し、それによって、固体撮像素子や高耐圧バワーデバイスなどの製造において高品質の深い不純物層を生産性を低下させることなく実現できるようにすることを目的とする。」

ウ 「【0055】
本実施形態に係るイオン注入装置の特徴は、イオンビーム200のビーム形状(ビーム強度変化)をビームスカート部分まで制御できることである。…

【0057】
以上のように、本実施形態に係るイオン注入装置では、デフォーカスユニット205内に設置した収束-発散-収束の3つのレンズ206?208により、イオンの入射角を変化させることなく、イオンビーム200のみをぼかすこと(ビームデフォーカス)ができるようになっている。
【0058】
また、本実施形態に係るイオン注入装置のさらなる特徴として、デフォーカスユニット205の後段に設置したビームプロファイラー209によって、ファーストスキャン方向(X方向)及びスロースキャン方向(Y方向)のそれぞれにおけるイオンビーム200の形状をビームスカート部分までモニターすることができる。また、ビームプロファイラー209により得られた情報はデフォーカスユニット205にフィードバックされる。これにより、本実施形態においては、デフォーカスユニット205でのビームデフォーカスと、ビームプロファイラー209でのビーム形状モニターとを繰り返すことにより、イオンビーム200の形状、特にビームスカート部分の形状を所望の形状に制御することができる。」

エ 「【0061】
本実施形態の特徴は、イオンビーム200の最大強度をImax、イオンビーム200の強度プロファイルにおける最大強度Imaxの50%の位置での強度変化率をS50、スロースキャン方向(Y方向)におけるスキャンピッチをPsとしたときに、下記(式1)
Ps<Imax/S50 ・・・ (式1)
の関係が成り立つように強度変化率S50を制御することである。言い換えると、(式1)の変形により得られる下記(式2)
S50<Imax/Ps ・・・ (式2)
の関係が成り立つように強度変化率S50を制御することである。(式1)の右辺Imax/S50は、強度変化率S50での強度プロファイル幅であるから、(式1)は、この強度変化率S50での強度プロファイル幅よりもスキャンピッチPsが小さければ、注入ドーズ量や注入深さ等の均一性が向上することを意味している。逆に、(式2)は、強度変化率S50を小さくすれば(ビームスカート部分の形状をブロードにすれば)、スキャンピッチPsを小さくすることなく、均一性向上効果が得られることを意味している。ここで、イオンビーム200中のイオンのウェハ211に対する注入角度は、最終段の収束レンズ208によって制御イオンビーム200の全域に亘って一定の角度(例えば0±0
.5°以内)に制御される。これにより、高エネルギーイオン注入におけるイオンの入射方向のバラツキに起因する不純物注入領域の広がりを抑制することができる。
【0062】
図3は、本実施形態のビームプロファイラー209によってモニターされた、スロースキャン方向(Y方向)のビーム強度変化(ビーム強度プロファイル)を模式的に示す図である。図3において「31」はビーム最大強度Imaxであり、「32」はビーム幅(ビームサイズ)であって、最大強度Imaxの80%以上を持つビーム部分のサイズによって規定されている。また、「33」は、ビーム強度プロファイルにおける最大強度Imaxの50%の位置での強度変化率S50である。ここで、スキャンピッチPsが前述のように例えば0.74mmであり、最大強度Imaxが例えば19μAであるとすると、前記(式2)から、25.7μA/mmよりも小さければよいことが分かる。そこで、本実施形態では、デフォーカスユニット205とビームプロファイラー209とを用いて強度変化率S50を10μA/mmに制御する。このとき、ビームサイズは例えば20mmのままである。
【0063】
尚、前述のように、イオンビーム200の形状、特に、ビームスカート部分の形状の制御は、デフォーカスユニット205の後段に設けられたビームプロファイラー(X-Yビームプロファイラー)209により得られたビーム形状をデフォーカスユニット205にフィードバックすることにより行われる。また、ドーズ量等のばらつきを防止するためには、イオンビーム200の形状について、前述の(式1)の関係Ps<Imax/S50が満たされていることが必要である。もちろん、スキャンピッチPsを狭くすることによって均一性を確保することも可能であるが、その場合には、スループットの低下が避けられず、実用的ではない。
【0064】
図4(a)は、以上に説明した本実施形態の高エネルギーイオン注入によって形成した固体撮像素子の飽和特性のチップ面内分布を示す図であり、図4(b)は、比較例として強度変化率S50を50μA/mmに設定した(つまりビームスカート部のプロファイルを急峻にした)高エネルギーイオン注入によって形成した固体撮像素子の飽和特性のチップ面内分布を示す図である。尚、図4(a)及び(b)において、横軸はチップのY方向(スロースキャン方向)の位置を示し、縦軸はチップのX方向(ファーストスキャン方向)の中央位置における飽和電子数(任意単位(a.u.))を示している。
【0065】
図4(a)に示すように、本実施形態のように、デフォーカスさせたイオンビームを用いたイオン注入によって形成した固体撮像素子では、飽和電子数のバラツキは小さく抑制されている。しかし、図4(b)に示すように、比較例のように、ビームスカート部のプロファイルを急峻にした(他のスキャン条件は本実施形態と同じ)イオンビームを用いたイオン注入によって形成した固体撮像素子では、イオンビーム形状とスキャンピッチ(0.74mm)とのミスマッチに起因する飽和電子数のバラツキ(飽和ムラ)が観察されている。この飽和ムラはウェハ全域に亘って観察され、飽和ムラのピッチはスキャンピッチとほぼ一致する。また、図4(b)では、X方向のチップセンターでの情報のみをプロットしているが、撮像素子により得られた画像を見ると、この飽和ムラはY方向において縞模様として観察される。
【0066】
図5は、本実施形態に係る不純物注入方法におけるイオンビームの形状を決定するアルゴリズムを示すフローチャートである。
【0067】
図5に示すように、まず、ステップS1において、所定のドーズ量及び所定の均一性の要求に対して、ビーム電流及びビームサイズの目標を決定する。
【0068】
次に、ステップS2において、前述のビームプロファイラー209によって、ビーム形状の計測を行い、続いて、ステップS3において、目標とするビーム電流及びビームサイズが得られているかどうかが判断される。目標とするビーム電流及びビームサイズが得られていない場合には、ステップS8において、ビーム整形を行い、その後、ステップS2以降の処理を繰り返す。
【0069】
ステップS3において、目標とするビーム電流及びビームサイズが得られていると判断された場合には、ビームプロファイラー209により得られたビームプロファイルに基づいて、ステップS4において、ファーストスキャン速度及びスロースキャン速度を決定する。…

【0073】
…、本実施形態では、ステップS5において、ステップS4で目標とするビーム電流に対して求められたスロースキャン速度からスキャンピッチPsを計算し、当該スキャンピッチPsについて、ビームプロファイラー209により得られた実際のビームスカート部分の強度変化率S50を用いて、(式1)の関係Ps<Imax/S50が満たされているかどうか判断する。(式1)の関係が満たされていなければ、ステップS7において、前述のデフォーカスユニット205(特に発散レンズ207と最終段の収束レンズ208)を用いて、ビームスカート部分の強度変化率S50を小さくすることによって(式1)の関係が満たされるようにする。尚、その際にビームサイズが変化した場合には、スロースキャン速度やビーム電流値等の再計算が必要となるため、再度、ステップS8において、ビーム整形を行い、その後、ステップS2(ビームプロファイラー209によるビーム形状の計測)以降の処理を繰り返す。そして、ステップS5において、(式1)の関係が満たされていると判断された場合には、決定されたスキャン条件でイオン注入を開始する。例えば、前述のスキャン条件を用いた本実施形態のイオン注入では、ビーム電流値が19μAであり、スキャンピッチは0.74mmであるため、(式2)の関係を用いて、S50<Imax/Ps=19/0.74=25.7(μA/mm)と計算される。一方、本実施形態ではビームスカート部分の強度変化率S50を10μA/mmに設定しているので、イオンビーム形状とスキャンピッチとのミスマッチに起因する不均一性は観察されなかった。
【0074】
図6(a)?(c)はそれぞれ、スキャンピッチPS及びイオンビーム形状(つまりビームスカート部分の強度変化率S50)と、ビームオーバラップ(ビーム重ね合わせ)によるトータルドーズ量(図中破線)との関系を模式的に示す図である。
【0075】
図6(a)は、明らかに(式1)の関係が満たされていない場合(つまりスキャンピッチPsがImax/S50よりも大きい場合)を示しており、この場合、ビームオーバラップ、特にビームスカート部におけるオーバーラップが足らないため、トータルドーズ量はスキャンピッチPsを周期として波打つことになる。
【0076】
図6(b)は、図6(a)と同じイオンビーム形状(つまりデフォーカスしていないイオンビーム形状)のままスキャンピッチPsを狭くした場合を示している。前述のように、スロースキャン速度を低下させるか又はスロースキャン回数を増やすことにより、スキャンピッチPsを狭くすることができる。これにより、(式1)の関係は満たされるため、図6(b)に示すように、ビームオーバラップが十分になるので、均一性は向上するものの、生産性の低下は避けられない。
【0077】
図6(c)は、図6(a)と同じスキャンピッチPsのまま本実施形態のようにビームスカート部分の形状をブロードに整形して(式1)の関係が満たされるようにした場合を示している。図6(c)に示すように、ビームスカート部分のビーム強度の傾き(強度変化率)が緩やかになっているため、スキャンピッチPsが広いまま(つまり生産性の低下なく)、ビームスカート部分をオーバーラップさせて均一性を向上させることができる。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態によると、例えば収束レンズ206によって一旦収束させた後に例えば発散レンズ207によって発散させたイオンビームを用いてイオン注入を行うため、イオンビームのスキャンピッチに対応してビーム形状、特に均一性に大きな影響を及ぼすビームスカート形状を制御することができる。具体的には、例えば(式1)の関係が満たされるようにイオンビームを発散させてブロードにすることにより、イオンビームのスキャンピッチを小さくすることなく(或いはスキャン回数を増やすことなく)、注入ドーズ量や注入深さ等の均一性を向上させることができるので、高エネルギーで低ドーズ量のイオン注入であっても生産性を犠牲にすることなく均一性を向上させることができる。すなわち、スキャンピッチやスキャン回数に依存しない均一なイオン注入を実現することが可能である。」

オ 図2、図3、図5、図6は、以下のとおりである。






(2)引用発明
ア 上記(1)アによれば、引用文献には、
「 イオンビームを収束させるための収束レンズと、前記収束レンズによって収束された前記イオンビームを発散させることにより拡げるための発散レンズと、前記発散レンズによって拡がった前記イオンビーム中のイオンの前記被処理体に対する照射角度を制御する収束レンズを有するデフォーカス部と、
前記イオンビームを前記被処理体に対して2次元的にスキャンさせる機構と、
前記デフォーカス部の後段に、前記ファーストスキャン方向及び前記スロースキャン方向のそれぞれにおける前記イオンビームの形状をスカート部分まで測定できるビームプロファイラーを備え、
前記ビームプロファイラーにより得られた情報が前記デフォーカス部にフィードバックされる、
被処理体に不純物をイオン注入するイオン注入装置。」
が開示されている。

イ 上記(1)ウによれば、
「デフォーカスユニット205でのビームデフォーカスと、ビームプロファイラー209でのビーム形状モニターとを繰り返すことにより、イオンビーム200の形状、特にビームスカート部分の形状を所望の形状に制御すること」
が開示されている。

ウ 上記(1)エを踏まえて図5を見れば、
「所定のドーズ量及び所定の均一性の要求に対して、ビーム電流及びビームサイズの目標を決定し、(ステップS1)、
次に、ビームプロファイラーによって、ビーム形状の計測を行ない(ステップS2)、
続いて、目標とするビーム電流及びビームサイズが得られているか否か判断し(ステップS3)、
ステップS3において目標とするビーム電流及びビームサイズが得られていると判断した場合、ファーストスキャン速度及びスロースキャン速度を決定し(ステップS4)、
ステップS3において目標とするビーム電流及びビームサイズが得られていないと判断した場合、ビーム成形を行い(ステップS8)、その後、ステップS2以降の処理を繰り返し、
スロースキャン速度からスキャンピッチPsを計算し、当該スキャンピッチPsについて、ビームプロファイラーにより得られた実際のビームスカート部分の強度変化率S50を用いて、
Ps<Imax/S50・・・(式1)
(但し、Imaxはイオンビームの最大強度、S50はImaxの50%の位置での強度変化率である。)
の関係が満たされているかどうか判断し(ステップS5)、
ステップS5において、(式1)の関係が満たされていないと判断した場合、デフォーカス部(特に発散レンズと最終段の収束レンズ)を用いて、ビームスカート部分の強度変化率S50を小さくすることによって(式1)の関係が満たされるようにデフォーカスし(ステップS7)、再度、ステップS8において、ビーム整形を行い、その後、ステップS2以降の処理を繰り返し、
ステップS5において、(式1)の関係が満たされていると判断した場合、決定されたスキャン条件でイオン注入を開始する」
イオン注入装置のイオンビームを制御する方法が開示されている。そして、イオン注入装置のイオンビームを前記のように制御する装置(上記方法を実行する装置)も実質的に開示されている。

エ 以上によれば、引用文献には、以下の発明が開示されている。
「イオンビームを収束させるための収束レンズと、前記収束レンズによって収束された前記イオンビームを発散させることにより拡げるための発散レンズと、前記発散レンズによって拡がった前記イオンビーム中のイオンの前記被処理体に対する照射角度を制御する収束レンズを有するデフォーカス部と、
前記イオンビームを前記被処理体に対して2次元的にスキャンさせる機構と、
前記デフォーカス部の後段に、ファーストスキャン方向及びスロースキャン方向のそれぞれにおける前記イオンビームの形状をスカート部分まで測定できるビームプロファイラーを備え、
前記ビームプロファイラーにより得られた情報が前記デフォーカス部にフィードバックされ、デフォーカス部でのビームデフォーカスと、ビームプロファイラーでのビーム形状モニターとを繰り返すことにより、イオンビームの形状、特にビームスカート部分の形状を所望の形状に制御する、被処理体に不純物をイオン注入するイオン注入装置のイオンビームを制御する装置であって、
所定のドーズ量及び所定の均一性の要求に対して、ビーム電流及びビームサイズの目標を決定し(ステップS1)、
次に、前記ビームプロファイラーによって、ビーム形状の計測を行ない(ステップS2)、
続いて、目標とするビーム電流及びビームサイズが得られているか否か判断し(ステップS3)、
ステップS3において目標とするビーム電流及びビームサイズが得られていると判断した場合、ファーストスキャン速度及びスロースキャン速度を決定し(ステップS4)、
ステップS3において目標とするビーム電流及びビームサイズが得られていないと判断した場合、ビーム成形を行い(ステップS8)、その後、ステップS2以降の処理を繰り返し、
スロースキャン速度からスキャンピッチPsを計算し、当該スキャンピッチPsについて、ビームプロファイラーにより得られた実際のビームスカート部分の強度変化率S50を用いて、
Ps<Imax/S50・・・(式1)
(但し、Imaxはイオンビームの最大強度、S50はImaxの50%の位置での強度変化率である。)
の関係が満たされているかどうか判断し(ステップS5)、
ステップS5において(式1)の関係が満たされていないと判断した場合、デフォーカス部(特に発散レンズと最終段の収束レンズ208)を用いて、ビームスカート部分の強度変化率S50を小さくすることによって(式1)の関係が満たされるようにデフォーカスし(ステップS7)、再度、ステップS8において、ビーム整形を行い、その後、ステップS2以降の処理を繰り返し、
ステップS5において(式1)の関係が満たされていると判断した場合、決定されたスキャン条件でイオン注入を開始する、
イオン注入装置のイオンビームを制御する装置。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「イオン注入装置」は本願発明の「イオン注入機」に相当し、以下同様に、「イオン注入装置のイオンビームを制御する装置」は「イオン注入機のイオンビームを制御するシステム」に、「スロースキャン方向」は「イオンビームの伝搬方向に垂直な第1の方向」に、それぞれ相当する。

(2)引用発明の「イオンビームの形状をスカート部分まで測定できるビームプロファイラー」は、イオンビームの横断面内の複数の位置で電流を測定し、スカート部分までイオンビームの形状を測定するものと解される。してみると、引用発明が「スロースキャン方向…における前記イオンビームの形状をスカート部分まで測定できるビームプロファイラー」を備えることは、本願発明が「イオンビームの伝搬方向に垂直な第1の方向に沿って、前記イオンビームの複数のビーム電流測定を実行する検出器」を備えることに相当する。

(3)引用発明の「前記ビームプロファイラーによって」、「スロースキャン方向の」イオン「ビーム形状の計測を行な」うことは、本願発明の「前記複数のビーム電流測定に基づいて、前記第1の方向に沿ったビーム電流の変化を含むビーム電流分布を決定」することに相当する。
次に、引用発明は、「ビームプロファイラー209により得られた実際のビームスカート部分の強度変化率S50を用いて、
Ps<Imax/S50・・・(式1)
(但し、Imaxはイオンビームの最大強度、S50はImaxの50%の位置での強度変化率である。)
の関係が満たされているかどうか判断」しているところ、「S50」を求めることはImaxの50%の位置での強度変化率を計算することであり、「Imax/S50」を求めることは、「強度変化率S50での強度プロファイル幅」(【0061】)を計算することである。ここで、「強度変化率S50での強度プロファイル幅」である「Imax/S50」は、ビームスカート部分を含むビーム形状において、電流レベルが0を超えるビームの幅の半分を、イオンビームの最大強度Imaxと強度変化率S50を用いて計算により求めるものであるから、「Imax/S50」は実質的に本願発明の「ビーム高さ」の半分に相当する。そして、引用文献には明示されていないものの、上記計算は、制御部や処理部等が行うことは明らかである。
してみると、引用発明において、「前記ビームプロファイラーによって」、「スロースキャン方向の」イオン「ビーム形状の計測を行な」い、「ビームプロファイラーにより得られた実際のビームスカート部分の強度変化率S50」を求め、「Imax/S50」を求めることは、本願発明の「前記複数のビーム電流測定に基づいて、前記第1の方向に沿ったビーム電流の変化を含むビーム電流分布を決定し、前記ビーム電流分布に基づいて、前記ビーム電流分布の勾配及び第1の方向に沿ったビーム高さを計算する」ことに相当し、引用発明において明示されていないものの、「強度変化率S50」と「Imax/S50」を求める制御部や処理部等は、本願発明の「分析部」に相当する。

(4)上記(3)で検討したとおり、「Imax/S50」が実質的に本願発明の「ビーム高さ」の半分に相当する。また、引用発明の「Ps」は、本願発明の「閾値」の半分に相当する。そうすると、引用発明において、(式1)の関係が満たされているかどうか判断することは、本願発明における「前記ビーム高さが閾値を下回」るか否かを判断することに相当し、引用発明において「決定されたスキャン条件でイオン注入を開始する」ことは、本願発明の「現在のパラメータを用いてイオン注入を実行」することに相当し、引用発明において「デフォーカス部(特に発散レンズと最終段の収束レンズ)を用いて、ビームスカート部分の強度変化率S50を小さくすることによって(式1)の関係が満たされるようにデフォーカス」することは、本願発明の「イオン注入装置の1つ以上の選択パラメータを動的に調整する」ことに相当する。そして、引用発明において「イオン注入を開始」したり、「デフォーカス」する制御を行う装置は、引用文献には明示されていないものの、制御部や処理部等が行うことは明らかであり、この明示されていない制御部や処理部等は本願発明の「調整部」に相当する。

(5)以上によれば、本願発明と引用発明は、
「イオンビームの伝搬方向に垂直な第1の方向に沿って、前記イオンビームの複数のビーム電流測定を実行する検出器と、
前記複数のビーム電流測定に基づいて、前記第1の方向に沿ったビーム電流の変化を含むビーム電流分布を決定し、前記ビーム電流分布に基づいて、前記ビーム電流分布の勾配及び第1の方向に沿ったビーム高さを計算する分析部と、
前記ビーム高さが閾値を下回らないことを示す場合、現在のパラメータを用いてイオン注入を実行し、前記ビーム高さが前記閾値を下回ることを示す場合、イオン注入装置の1つ以上の選択パラメータを動的に調整する調整部と、を備える、
イオン注入機のイオンビームを制御するシステム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:ビーム高さが閾値を下回り、イオン注入装置の1つ以上の選択パラメータを動的に調整する場合は、本願発明では、「調整試行回数が限度を超えない」場合であるのに対し、引用発明は、そのようなものなのか否か不明である点。

5 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)一般に、パラメータ等が所望の範囲内となるように調整を繰り返す際、調整を繰り返す回数に上限を設け、調整回数が上限を超えない場合に調整を行うように制御することにより、調整が無制限に行われないようにすることは、例えば特開2008-269899号公報(【0066】-【0068】参照。)、特開平1-216681号公報(4頁右下欄2-8行参照)に記載されるよう、周知の技術手段である。
してみると、引用発明において、調整が無制限に繰り返されないように上記周知技術手段を採用し、「デフォーカス部でのビームデフォーカスと、ビームプロファイラーでのビーム形状モニターとを繰り返す」回数が限度を超えないように構成し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明と上記周知の技術手段に基いて当業者が容易に予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。

(3)よって、本願発明は、引用発明と上記周知の技術手段に基いて当業者が容易に想到し得たものと認められる。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と上記周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-02-04 
結審通知日 2020-02-18 
審決日 2020-03-04 
出願番号 特願2016-512064(P2016-512064)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉田 翠道祖土 新吾  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 近藤 幸浩
小松 徹三
発明の名称 イオン注入均一性を制御するための装置及び技術  
代理人 杉村 憲司  
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