• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A45D
管理番号 1364475
審判番号 不服2019-6809  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-24 
確定日 2020-08-04 
事件の表示 特願2014-251291「カップ容器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月27日出願公開,特開2015-134158,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年12月11日(優先権主張 平成25年12月20日)の出願であって,平成30年11月20日付けで拒絶理由通知がされ,平成31年1月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成31年2月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和元年5月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成31年2月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-6に係る発明は,以下の引用文献1-4に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.独国特許発明第856948号明細書
2.英国特許出願公告第450890号明細書
3.特開2011-115254号公報
4.実願昭55-45331号(実開昭56-146599号)のマイクロフィルム

第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は,令和元年5月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
上面を開口し,チューブ容器に入ったヘアカラー剤を絞り出すための底部を有するカップ部を備え,
前記カップ部の上端部又は側部にチューブ容器のノズル部を挿通させるために前記カップ部を貫通した挿通部を少なくとも1つ有し,
前記挿通部の底部における内壁面は,前記カップ部の外側から内側に向けて下方に傾斜し,
前記カップ部の外側面において前記挿通部の下方で外側方向に拡がり,前記挿通部に前記ノズル部を挿通した前記チューブ容器を載せて支持するための支持面を有する,カップ容器であり,
前記挿通部は,前記カップ部の高さの2分の1以上の高さの位置に設けられているヘアカラー剤用のカップ容器。
【請求項2】
前記カップ部の上端部の少なくとも一部分に,上方に突出した突出部を有し,
前記突出部に前記挿通部を有する請求項1に記載のカップ容器。
【請求項3】
前記カップ部は,前記挿通部の周辺部において,前記カップ部の外側面が前記挿通部の縁部に向けて窪む凹部を有する請求項1又は2に記載のカップ容器。
【請求項4】
前記カップ部は,前記挿通部の内壁面において,突起部を有する請求項1?3のいずれか1項に記載のカップ容器。
【請求項5】
前記挿通部は,前記カップ部の上端部側から下方に向けて前記挿通部の幅を連続的または断続的に狭める請求項1?4のいずれか1項に記載カップ容器。」

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。引用文献1の和訳は,当審で作成し,理解の補助のため下線を付した。
(1)「

」(第1行-第8行)
(本発明は,シェービングソープディッシュに関し,シェービングソープチューブの通常のねじサイズに対応する異なる雌ねじを有する2つのねじ付きコネクタと,2つのねじ穴のそれぞれのための,使用されていないねじ付きコネクタを閉じるために使用される両面ねじプラグとを有する。)
(2)「

」(第15行-第26行)
(本発明にしたがって,シェービングソープチューブのねじサイズに応じて,より大きい又はより小さい雌ねじを備えた2つのねじ穴が,一般的な形態のシェービングソープディッシュに提供される。シェービングソープチューブは,使用時に対応するねじ付きコネクタにねじ込まれる。これにより,使用するたびに必要な量の石鹸をボウルに押し込んで泡を形成し,シェービングソープチューブをボウルの使用時に取っ手として使用することができる。)
(3)「

」(第35行-第41行)
(図面には,本発明の目的の実施形態が示されている。図1は,ねじ付きコネクタを備えたシェービングソープディッシュの縦断面図を示し,図2は,ねじ付きコネクタの方向から見たシェービングソープディッシュの図を示し,図3は,両面ねじプラグを示している。)
(4)図1において,シェービングソープディッシュは,上面が開口し,シェービングソープを押し込む底部を有するボウルを備え,ボウルの側部に,ボウルを貫通したねじ付きコネクタを有していることが看取できる。
したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「上面を開口し,シェービングソープチューブに入ったシェービングソープを押し込むための底部を有するボウルを備え,
前記ボウルの側部にシェービングソープチューブのねじをねじ込ませるために前記ボウルを貫通したねじ付きコネクタを2つ有する,シェービングソープディッシュ。」

2 引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。引用文献2の和訳は,当審で作成し,理解の補助のため下線を付した。
(1)「It has been proposed to provide substantially hemi-sphericalbowls containing conformably shaped tablets of shaving soap, the bowls being of such size and shape as to be conveniently held in one hand whilst the shaving brush is applied to the surface of the soap tablet with the other. The objectof the invention is to provide improved forms of such bowls wherein the semi-solid shaving cream commonly obtainable in collapsable tubes may be employed in lieu of a solid soap tablet.
A shaving bowl inaccordance with the invention is provided with means for the attachment thereto of a collapsable tube containing shaving cream, in such manner that by the compression of said tube the cream may be expelled into the bowl at a point of its inner periphery.
Further according to the invention a shaving bowl adapted for use with shaving cream in the manner referred to may be utilised as the lid of a shaving mug by inverting it and pivoting or otherwise mounting it upon the upper rim of the mug.」(第2ページ第37行-第63行)
(ボウルに適合するよう形成された平板状のシェービングソープを含む実質的に半球状のボウルを提供することが提案されてきており,ボウルは,シェービングブラシが平板状のシェービングソープに適用されている間,片手で便利に保持されるようなサイズと形状である。本発明の目的は,このようなボウルの改良された形態を提供することであり,そのボウルでは,折り畳み式チューブで一般に得られる半固体のシェービングクリームが,固体の平板状のシェービングソープの代わりに使用されうる。
本発明に従えば,シェービングボウルには,シェービングクリームを収容する折り畳み式チューブを取り付けるための手段が設けられており,前記チューブを圧縮することで,クリームは,ボウルの内表面の1点に放出される。
さらに本発明によれば,上記の方法でシェービングクリームと共に使用するように適合されたシェービングボウルは,それを反転させ,マグカップの上縁に,旋回させるまたは他の方法で取り付けることにより,シェービングマグカップの蓋として利用することができる。)
(2)「Fig. 5 is a partly sectional side elevation of animproved form of shaving mug, whereof the lid is constituted by an invertedshaving bowl as characterised by the present invention. Fig. 6 is a detail viewillustrating the method of attachment to the lid-forming bowl of a collapsabletube of shaving cream,」(第2ページ第80行-第87行)
(図5は,改良型のシェービングマグカップの部分側断面図であり,その蓋は,本発明によって特徴付けられる反転シェービングボウルによって構成されている。図6は,シェービングクリームの折り畳み式チューブを蓋が形成されたボウルへ取り付ける方法を示す詳細図である。)
(3)「With reference to Figs.5 to 7, 15 indicates the body of a shaving mug having a spout 16 and a handle17, the lid of the mug being constituted by an inverted shaving bowl 18 adaptedto seat upon the shoulder 19 formed within the interior wall of the mug. Thebowl 18 is provided with a central orifice 20, into which screws a tubularmember 21 interiorly threaded at 22 for the reception of the screwed bush 23,which latter is flanged at 24 and adapted to seat against a shoulder 25 formedwithin said tubular member 21. The bush 23 is provided with an interiorscrew-thread 26 into which may be screwed the nozzle 11 of a tube 12 of shavingcream.」(第3ページ第15行-第31行)
(図5?7を参照すると,15は注ぎ口16及び取っ手17を有するシェービングマグカップの本体を示し,マグカップの蓋は,マグカップの内壁内に形成された肩部19に着座するように適合された反転シェービングボウル18によって構成される。ボウル18には中央オリフィス20が設けられており,その中に,ねじ込みブッシュ23を受け入れるために22で内側にねじ山がつけられた管状部材21をねじ込み,ねじ込みブッシュ23は24でフランジが形成されており前記管状部材21の内部に形成された肩部25に着座するようになっている。ブッシュ23には,シェービングクリームのチューブ12のノズル11がねじ込まれる雌ねじ26が設けられている。)
(4)図5,6において,シェービングマグカップは,上面が開口し,折り畳み式チューブに入ったシェービングクリームを放出するための底部を有する本体15を備えており,マグカップの蓋に設けられた,チューブ12のノズル11がねじ込まれるブッシュ23は蓋を貫通した貫通部を有していることが看取できる。
したがって,上記引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「上面を開口し,折り畳み式チューブに入ったシェービングクリームを放出するための底部を有する本体及び蓋を備え,
前記蓋に折り畳み式チューブのノズルをねじ込むために蓋を貫通した貫通部を備えたブッシュを有する,シェービングマグカップ。」

3 引用文献3について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。なお,理解の補助のため下線を付した。
(1)「本発明は,歯磨きチューブ用ホルダーに関し,具体的には,歯磨きチューブの吐出口を下向きにして保持するための歯磨きチューブ用ホルダーに関する。」(段落【0001】)
(2)「本発明は,このような従来の問題点に鑑みてなされたもので,歯磨きチューブの吐出口を下方に向けた状態で歯磨きチューブを保持することができる簡単な構造の歯磨きチューブ用ホルダーを提供することを目的とする。」(段落【0007】)
(3)「図1は,本発明の実施例1に係る歯磨きチューブ用ホルダー1の外観を示し,図2はその正面図である。
歯磨きチューブ用ホルダー1は,歯磨きチューブの吐出口を下向きにした状態で保持するためのものであり,支持板3は,鉛直線に対して好ましくは10? 60℃の角度で傾斜して配置される。支持板3の傾きが鉛直線に対して10℃の角度より小さくなると,歯磨きチューブが倒れやすくなり,鉛直線に対して60℃の角度より大きくなると,歯磨きが歯磨きチューブの吐出口に自重で集まる力が弱くなる。載置板5は,支持板3に対して略垂直に配置されており,該載置板5には略円形の開口7が2つ設けられている。」(段落【0013】)
(4)「図3は,図2のA - A断面を示す。図3に示すように,本実施例では,支持板3の鉛直線に対する傾斜角度は略30℃であり,載置板5は支持板3の下端から略垂直に延設されている。」(段落【0014】)
(5)「図4は,歯磨きチューブ用ホルダー1の使用状態の縦断面図である。
使用にあたっては,歯磨きチューブAの吐出口Cに被せてあるキャップ(図示せず)を外し,吐出口Cを下方にして倒立状態とした後に,吐出口Cを載置板5に設けた開口7に挿入し,次いで,歯磨きチューブAの本体Bを支持板3に倒して支持させる。この状態では,歯磨きチューブAの本体Bは,支持板3にもたれて支持され,その吐出口Cの先端は開口7を貫通して載置板5の下面より突き出た状態となる。」(段落【0015】)
(6)「歯磨きチューブ用ホルダー1の使用に際しては,上記のように吐出口Cを下方にして倒立状態として保持するので,歯磨きチューブA内の練り歯磨きは自重で下方に集まるが,練り歯磨きは,十分な粘性を有するため,キャップを外した状態で保持しても吐出口Cから垂れ出る現象は生じない。」(段落【0016】)
(7)「使用者が歯磨きをするときには,載置板5が後傾しているため吐出口Cは使用者に見えやすい位置になっているので,容易に使用する歯磨きチューブAの吐出口Cの下に歯ブラシを持っていくことができる。次に,片方の手で歯磨きチューブAを押して,本体Bを支持板3に押圧すると練り歯磨きが吐出口Cから歯ブラシ上に絞り出される。適量のところで前記押圧する力を緩めると練り歯磨きの吐出は停止する。このように歯磨きチューブ用ホルダー1に歯磨きチューブAを保持した状態から極めて容易に歯ブラシ上に適量の練り歯磨きを絞り出すことができる。」(段落【0017】)
(8)「図5は,本発明の実施例2に係る歯磨きチューブ用ホルダー10の外観を示し,図6はその正面図である。
歯磨きチューブ用ホルダー10では,載置板15は,U字形状又は凹形状の開口17を4つを有し,それらの開口17は等間隔で配置され,正面方向に開放部を有する。支持板13には,3つの境界板18が設けられ,各境界板18は,支持板13の上下方向,かつ支持板面に垂直である。境界板18は,保持中の歯磨きチューブが横方向に傾くことを防止できる。」(段落【0018】)
(9)「図7は,歯磨きチューブ用ホルダー10の使用状態を示す。
使用にあたっては,実施例1の場合と同様に,歯磨きチューブAのキャップ(図示せず)を外し,吐出口Cを下方にして開口17に吐出口Cを入れ,次いで,歯磨きチューブAの本体を支持板13に倒して支持させることによって,保持する。」(段落【0020】)
(10)「歯磨きチューブAの本体を支持板13方向に押圧すると吐出口Cからの練り歯磨きが押し出され,適量出たところで押す力を緩めることにより練り歯磨きの吐出は停止するので,極めて容易に適量の練り歯磨きを絞り出すことができることについても,実施例1の場合と同じである。」(段落【0021】)
(11)図1?7において,歯磨きチューブ用ホルダーに設けられた載置板には,上端部又は側部に歯磨きチューブの吐出口の先端を挿通する貫通した開口が形成されていることが看取できる。
したがって,上記引用文献3には次の事項が記載されていると認められる。
「歯磨きチューブ用ホルダーにおいて,鉛直線に対して傾斜して配置された支持板,前記支持板に対して略垂直に配置され,上端部又は側部に歯磨きチューブの吐出口の先端を挿通する貫通した開口が形成された載置板を備え,前記開口に歯磨きチューブの吐出口を入れ,歯磨きチューブの本体を支持板に倒して支持させることで,歯磨きチューブを傾斜させて保持させる点。」

4 引用文献4について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。なお,理解の補助のため下線を付した。
(1)「1 発明の名称
水彩絵具のチューブ付パレット」(明細書第1ページ第2行-第3行)
(2)「チューブのキャップをはずし接続穴3にチューブの先端を差込み固定させる。開閉レバー4を手前に引き絵具の出口を開く。
彩色する場合チューブ1を指で押し必要量だけ絵具をパレットに送り出せる。」(明細書第1ページ第7行-第11行)
(3)第1,2,4図において,絵具チューブ1をパレット本体5上に載置するために,絵具チューブ1をパレット本体5で支持していることが看取できる。
したがって,上記引用文献4には次の事項が記載されていると認められる。
「水彩絵具のチューブ付パレットにおいて,絵具チューブの先端を接続穴に差込み固定し,絵具チューブをパレット本体で支持する点。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1に基づく検討
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「シェービングソープチューブ」,「ねじ」,「ボウル」は,その機能,構成及び技術的意義からみて,それぞれ,本願発明1の「チューブ容器」,「ノズル部」,「カップ部」に相当する。
そして,引用発明1の「シェービングソープ」と本願発明1の「ヘアカラー剤」とは,内容物である点において共通する。
同様に,引用発明1の「シェービングソープディッシュ」と本願発明1の「ヘアカラー剤用のカップ容器」とは,カップ容器である点において共通し,引用発明1の「ねじ込ませる」と本願発明1の「挿通させる」とは,ノズル部を挿入するという点において共通し,引用発明1の「ねじ付きコネクタ」と本願発明1の「挿通部」とは,ノズル部を挿入する挿入部という点において共通する。
また,チューブ容器から内容物を取り出すという行為を考えれば,引用発明1の「押し込む」は,本願発明1の「絞り出す」に相当する。
したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「上面を開口し,チューブ容器に入った内容物を絞り出すための底部を有するカップ部を備え,
前記カップ部の側部にチューブ容器のノズル部を挿入するために前記カップ部を貫通した挿入部を少なくとも1つ有する,カップ容器。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1はヘアカラー剤用のカップ容器であるのに対し,引用発明1はシェービングソープ用のカップ容器である点。
(相違点2)本願発明1は,チューブ容器のノズル部を挿通させるための挿通部を有し,前記挿通部の底部における内壁面は,カップ部の外側から内側に向けて下方に傾斜し,前記カップ部の外側面において前記挿通部の下方で外側方向に拡がり,前記挿通部にノズル部を挿通したチューブ容器を載せて支持するための支持面を有し,前記挿通部は,前記カップ部の高さの2分の1以上の高さの位置に設けられているのに対し,引用発明1は,チューブ容器のノズル部をねじ込ませるためのねじ付きコネクタを有し,前記ねじ付きコネクタは,前記本願発明1の挿通部が備えるような構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑み,相違点2から検討する。
(ア)本願明細書の段落【0004】-【0005】によると,本願発明1は,チューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを課題とするものである。
(イ)一方,上記第4の1の(2)によると,引用発明1は,使用するたびに必要な量の石鹸をボウルに押し込んで泡を形成するシェービングソープディッシュにおいて,カップ部の側部にシェービングソープチューブをねじ込むためのねじ付きコネクタを設けて,シェービングソープチューブをボウルの使用時に取っ手として使用することを可能としたものである。
そして,引用文献1には,チューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを示唆する記載はない。
そうすると,引用発明1は,本願発明1が課題としているチューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用するという課題に着目していないことは明らかである。
(ウ)上記第4の3の(2),(4)-(9)によると,引用文献3に記載された事項は,使用者が容易に,使用する歯磨きチューブの吐出口の下に歯ブラシを持っていくことができるようにする歯磨きチューブ用ホルダーにおいて,簡単な構造で,歯磨きチューブの吐出口を下方に向けた状態で歯磨きチューブを保持することを課題としており,支持板及び開口が形成された載置板によって歯磨きチューブを傾斜した状態で保持するものである。
そして,引用文献3には,チューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを示唆する記載はない。
そうすると,引用文献3に記載された事項も,本願発明1が課題としているチューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用するという課題に着目していないことは明らかである。
また,引用発明1と引用文献3に記載された事項においても,両者のチューブ容器を保持する課題は異なるものである。
さらに,引用発明1においては,チューブ容器を保持する構成が備えられるのはシェービングソープディッシュのカップ部の側部であるのに対し,引用文献3に記載された事項においては,チューブ容器を保持する構成が備えられるのは歯磨きチューブ用ホルダーであり,引用発明1と引用文献3に記載された事項とでは,チューブ容器を保持する構成が備えられる構造が全く異なるものである。
そのうえ,引用発明1はシェービングソープチューブに関する発明であるのに対し,引用文献3に記載された事項は歯磨きチューブに関する発明であり,引用発明1と引用文献3に記載された事項とでは技術分野も異なる。
以上のことから,引用発明1において,引用文献3に記載された事項を適用し,相違点2に係る構成を備えるようにすることはできない。
(エ)また,上記第4の4の(2),(3)によると,引用文献4には,絵具チューブの先端を接続穴に差し込み固定し,絵具チューブをパレット本体上に載置するために,パレット本体で絵具チューブを支持する構成が記載されている。
そして,引用文献4には,チューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを示唆する記載はない。
そうすると,引用文献4に記載された事項も,本願発明1が課題としているチューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用するという課題に着目していないことは明らかである。
また,引用発明1と引用文献4に記載された事項においても,両者のチューブ容器を保持する課題は異なるものである。
さらに,引用文献4に記載された事項では,絵具チューブを支持する構成が備えられるのはパレット本体であり,引用発明1と引用文献4に記載された事項とでは,チューブ容器を保持する構成が備えられる構造が全く異なるものである。
そのうえ,引用発明1はシェービングソープチューブに関する発明であるのに対し,引用文献4に記載された事項は絵具チューブに関する発明であり,引用発明1と引用文献4に記載された事項とでは技術分野も異なる。
以上のことから,引用発明1において,引用文献4に記載された事項を適用し,相違点2に係る構成を備えるようにすることはできない。
(オ)加えて,引用文献2にも上記相違点2に係る構成が何ら記載されていない。
(カ)また,本願発明1は,相違点2に係る構成を備えることにより,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを可能にするという顕著な効果を奏するものである。
(キ)したがって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明1,引用文献3に記載された事項,引用文献4に記載された事項及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)引用発明2に基づく検討
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると,引用発明2の「折り畳み式チューブ」,「ノズル」,「本体」は,その機能,構成及び技術的意義からみて,それぞれ,本願発明1の「チューブ容器」,「ノズル部」,「カップ部」に相当する。
そして,引用発明2の「シェービングクリーム」と本願発明1の「ヘアカラー剤」とは,内容物である点において共通する。
同様に,引用発明2の「シェービングマグカップ」と本願発明1の「ヘアカラー剤用のカップ容器」とは,カップ容器である点において共通する。
また,チューブ容器から内容物を取り出すという行為を考えれば,引用発明2の「放出する」は,本願発明1の「絞り出す」に相当する。
したがって,本願発明1と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「上面を開口し,チューブ容器に入った内容物を絞り出すための底部を有するカップ部を備えたカップ容器。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1はヘアカラー剤用のカップ容器であるのに対し,引用発明2はシェービング用のカップ容器である点。
(相違点2)本願発明1は,カップ部の上端部又は側部にチューブ容器のノズル部を挿通させるために前記カップ部を貫通した挿通部を少なくとも1つ有し,前記挿通部の底部における内壁面は,カップ部の外側から内側に向けて下方に傾斜し,前記カップ部の外側面において前記挿通部の下方で外側方向に拡がり,前記挿通部にノズル部を挿通したチューブ容器を載せて支持するための支持面を有し,前記挿通部は,前記カップ部の高さの2分の1以上の高さの位置に設けられているのに対し,引用発明2は,蓋にチューブ容器のノズル部をねじ込むために蓋を貫通した貫通部を備えたブッシュを有し,前記貫通部は,前記本願発明1の挿通部が備えるような構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑み相違点2から検討する。
(ア)本願明細書の段落【0004】-【0005】によると,本願発明1は,チューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを課題とするものである。
(イ)一方,上記第4の2の(1),(3),(4)によると,引用発明2は,折り畳み式チューブで一般に得られる半固体状のシェービングクリームを,固体の平板状のシェービングソープの代わりに使用することを課題としており,シェービングマグカップの蓋に設けられた貫通部を有するブッシュにシェービングチューブのノズルをねじ込んだものである。
そして,引用文献2には,チューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを示唆する記載はない。
そうすると,引用発明2は,本願発明1が課題としているチューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用するという課題に着目していないことは明らかである。
(ウ)上記第5の1の(1)のイで検討したとおり,引用文献3に記載された事項は,使用者が容易に,使用する歯磨きチューブの吐出口の下に歯ブラシを持っていくことができるようにする歯磨きチューブ用ホルダーにおいて,簡単な構造で,歯磨きチューブの吐出口を下方に向けた状態で歯磨きチューブを保持することを課題としており,支持板及び開口が形成された載置板によって歯磨きチューブを傾斜した状態で保持するものである。
そして,引用文献3には,チューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを示唆する記載はない。
そうすると,引用文献3に記載された事項も,本願発明1が課題としているチューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用するという課題に着目していないことは明らかである。
また,引用発明2と引用文献3に記載された事項においても,両者のチューブ容器を保持する課題は異なるものである。
さらに,引用発明2においては,チューブ容器を保持する構成が備えられるのはシェービングマグカップの蓋であるのに対し,引用文献3に記載された事項においては,チューブ容器を保持する構成が備えられるのは歯磨きチューブ用ホルダーであり,引用発明2と引用文献3に記載された事項とでは,チューブ容器を保持する構成が備えられる構造が全く異なるものである。
そのうえ,引用発明2はシェービングチューブに関する発明であるのに対し,引用文献3に記載された事項は歯磨きチューブに関する発明であり,引用発明2と引用文献3に記載された事項とでは技術分野も異なる。
以上のことから,引用発明2において,引用文献3に記載された事項を適用し,相違点2に係る構成を備えるようにすることはできない。
(エ)また,上記第5の1の(1)のイで検討したとおり,引用文献4には,絵具チューブの先端を接続穴に差し込み固定し,絵具チューブをパレット本体上に載置するために,パレット本体で絵具チューブを支持する構成が記載されている。
そして,引用文献4には,チューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを示唆する記載はない。
そうすると,引用文献4に記載された事項も,本願発明1が課題としているチューブ容器からカップ容器に内容物を絞り出して使用するに際し,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用するという課題に着目していないことは明らかである。
また,引用発明2と引用文献4に記載された事項においても,両者のチューブ容器を保持する課題は異なるものである。
さらに,引用文献4に記載された事項では,絵具チューブを支持する構成が備えられるのはパレット本体であり,引用発明2と引用文献4に記載された事項とでは,チューブ容器を保持する構成が備えられる構造が全く異なるものである。
そのうえ,引用発明2はシェービングチューブに関する発明であるのに対し,引用文献4に記載された事項は絵具チューブに関する発明であり,引用発明2と引用文献4に記載された事項とでは技術分野も異なる。
以上のことから,引用発明2において,引用文献4に記載された事項を適用し,相違点2に係る構成を備えるようにすることはできない。
(オ)加えて,引用文献1にも上記相違点2に係る構成が何ら記載されていない。
(カ)また,本願発明1は,相違点2に係る構成を備えることにより,チューブ容器の内容物を,無駄を少なく使用することを可能にするという顕著な効果を奏するものである。
(キ)したがって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明2,引用文献3に記載された事項,引用文献4に記載された事項及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2-5について
本願発明2-5は,本願発明1を引用する発明であるので,本願発明1が備える発明特定事項を全て備えている。したがって,本願発明2-5は,本願発明1と同じ理由により,引用発明1,引用発明2,引用文献3に記載された事項及び引用文献4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
上記で述べたように,本願発明1は,拒絶査定で引用された引用文献1-4に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-07-15 
出願番号 特願2014-251291(P2014-251291)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A45D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 窪田 治彦
特許庁審判官 山本 健晴
柿崎 拓
発明の名称 カップ容器  
代理人 小池 成  
代理人 永岡 儀雄  
代理人 渡邉 一平  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ