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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1364480
審判番号 不服2018-2648  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-26 
確定日 2020-07-21 
事件の表示 特願2015-514106「投与量測定システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日国際公開、WO2013/177135、平成27年 7月 6日国内公表、特表2015-518747〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25(2013)年5月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成24(2012)年5月21日 (US) アメリカ合衆国、平成25(2013)年1月18日 (US) アメリカ合衆国、平成25(2013)年3月12日 (US) アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年10月30日付けで拒絶すべき旨の査定がされた。これに対し、平成30年2月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲について補正された。その後、平成31年3月27日付けで当審より拒絶の理由が通知され、令和1年9月30日に意見書とともに手続補正書が提出され、特許請求の範囲についてさらに補正されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?41に係る発明は、上記令和1年9月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?41に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項26に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

【請求項26】
「薬物容器内の液体の体積を推定する方法であって、
複数の光源に、前記薬物容器に向けて電磁放射を放出させることと、
前記複数の光源により放出された前記電磁放射の一部を表しかつ複数のセンサで検出されたデータを、前記複数のセンサから受信することであって、前記電磁放射の前記検出された部分は、前記複数の光源により放出された前記電磁放射の透過、屈折、及び反射部分を含むことと、
前記受信したデータを組み合わせることにより、前記電磁放射の前記検出された部分を表す信号識別符号を生成することと、
前記信号識別符号に基づいて、前記薬物容器内の前記液体の前記体積を決定することと、
を含む、方法。」

第3 当審が通知した拒絶の理由
平成31年3月27日付けで当審が通知した拒絶の理由のうち理由3は、特許請求の範囲の請求項26に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内または外国において頒布された引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献 米国特許第6113578号明細書

第4 引用文献の記載及び引用発明
引用文献には、「Optical Dose Measurements in Syringes」(シリンジ内における光学的用量測定)について、FIG.1?4とともに、以下の事項が記載されている。なお、括弧内は、当審で付した仮訳である。

1 「This invention relates to injection syringes and patient monitoring devices, and in particular to an apparatus for optically determining and electronically recording doses of an agent delivered with an injection syringe.」第1欄第23?26行
(本発明は、シリンジと患者監視装置に係り、特に、シリンジで送達される薬剤の投与量を光学的に特定し電気的に記録する装置に関する。)

2 「FIG. 1-A is a high-level schematic diagram illustrating a preferred apparatus 20 of the present invention. Optical connections are illustrated by dashed lines, electrical connections by solid lines. Apparatus 20 records data indicative of doses delivered to a patient using a syringe 22. Apparatus 20 is capable of downloading the recorded data to a patient computer 24, which in turn is capable of communicating with a clinician's computer 26 over a telephone line or the Internet. Apparatus 20 comprises a light source 30 and an optical detector 32 in optical communication with syringe 22. Light source 30 generates light incident on syringe 22. Optical detector 32 detects an optical response of syringe 22 to the light generated by light source 30. The optical response of syringe 22 is indicative of the quantity of liquid in syringe 22, and consequently of the dose administered to the patient using syringe 22. A control means 34 in electrical communication with light source 30 and optical detector 32 temporally controls the operation of light source 30 and optical detector 32. Control means 34 turns on light source 30 and optical detector 32 when syringe 22 is appropriately positioned for dose measurements, before and after the administration of the dose to the patient. A computing means 36 is in electrical communication with optical detector 32 and with a calibration memory 38. Computing means 38 is further in electrical communication with a recording means 40. Computing means 36 generates dose data to be stored in recording means 40. The dose data preferably comprises a dose (e.g. insulin dose) administered to the patient, but may be in general any data which can be used to reconstruct (for example within apparatus 20, at patient computer 24, or at clinician computer 26) the dose administered to the patient. In particular, computing means 36 calculates quantities of liquid within syringe 22 before and after injection of a dose. Computing means 36 then calculates the difference between the two measured liquid quantities, and sends the result (the dose) to recording means 40 for storage. Computing means 36 determines liquid quantities by comparing optical response data received from optical detector 32 with predetermined calibration data stored in calibration memory 38. The calibration data is indicative of the correspondence between optical responses and liquid quantities for the entire range of potential liquid quantities in syringe 22. That is, calibration memory 38 stores the liquid quantity corresponding to a given optical response of detector 32, for all liquid quantities potentially present in syringe 22.」第5欄第41行?第6欄第20行
(図1-Aは、本発明の好適な装置20を示す上位の概略図である。光学的な接続は破線で、電気的な接続は実線で示されている。装置20は、シリンジ22を使用して患者に送達される投与量を表すデータを記録する。装置20で記録されたデータは、電話回線またはインターネットを通じて臨床医のコンピュータ26と通信することができる患者コンピュータ24にダウンロードすることができる。装置20は、シリンジ22と光学的に通信する光源30及び光検出器32を含む。光源30はシリンジ22に入射する光を生成する。光検出器32は、光源30によって発生された光に対するシリンジ22の光学的な応答を検出する。シリンジ22の光学的な応答は、シリンジ22内の液体の量と、その結果としてシリンジ22を用いて患者に投与された投与量を示す。光源30と光検出器32と電気的に通信する制御手段34は、光源30及び光検出器32の動作を時間的に制御する。制御手段34は、患者への投与量の投与の前および後に、シリンジ22が投与量測定のために適切に配置されると、光源30および光検出器32をオンにする。演算手段36は、光検出器32及び較正メモリ38と電気的に通信する。さらに演算手段38(当審注:36の誤記と思われる。)は記録手段40と電気的に通信する。演算手段36は、記録手段40に格納される投与量データを生成する。その投与量データは、好ましくは、患者に投与される投与量(例えば、インスリン投与量)を含むが、一般的には、患者に投与される投与量の再構成(例えば、装置20内の患者コンピュータ24または臨床医コンピュータ26における)に使用することができる任意のデータであってもよい。特に、演算手段36は、投与量の注射前及び注射後のシリンジ22内の液体の量を計算する。演算手段36はその後、計測された2つの液体量の差分を算出し、その結果(投与量)を蓄積するために記録手段40に出力する。演算手段36は、光検出器32から受け取った光学的な応答データと較正メモリ38に記憶された所定の較正データとを比較することにより、液体の量を決定する。較正データは、シリンジ22内の全範囲における潜在的な液体量に対する、光学的な応答と液体量との対応を示す。すなわち、較正メモリ38は、シリンジ22中に潜在的に存在する全ての液体量のために、検出器32の光学的な応答に対応する液体量を蓄積している。)

3 「FIG. 1-B illustrates generally the principal detection step performed by an apparatus of the present invention. Light (electromagnetic radiation) is incident on syringe 22 and interacts with syringe 22. Light resulting from the interaction is then incident on a detector. The light incident on the detector may generally be light transmitted, reflected, and/or emitted by syringe 22. In general, two elements of syringe 22 may vary with the quantity of liquid within syringe 22 in a typical dose administration sequence: the position of the syringe plunger (relative to the syringe barrel), and the quantity/position of the liquid within syringe 22. Light incident on syringe 22 may interact with the plunger and/or liquid. The measured light interaction with the plunger is preferably substantially different from the interaction with the liquid, such that the interaction with syringe 22 as a whole depends on at least one of the position of the plunger and the quantity of liquid.」第6欄第34?50行
(図1-Bは、本発明の装置によって実行される主な検出ステップを一般的に示す図である。光(電磁放射線)がシリンジ22に入射し、シリンジ22と相互作用する。相互作用から生じる光は、検出器に入射する。検出器に入射する光は、一般に、透過、反射、及び/または、シリンジ22から放出された光であってもよい。一般に、シリンジ22の2つの要素、すなわち、(シリンジ筒部に対する)シリンジのプランジャの位置とシリンジ22内の液体の量/位置が、典型的な投与手順において、シリンジ22内の液体の量を変化させる。シリンジ22に入射した光は、プランジャ及び/または液体と相互作用する。測定された光とプランジャとの相互作用は、液体との相互作用と好ましくは実質的に異なるため、シリンジ22との相互作用は、全体として、プランジャの位置及び液体量のうちの少なくとも1つに依存する。)

4 「Light source 100 comprises a plurality of light emitters 100a-f, while detector 102 comprises a plurality of detecting elements 102a-f. Light emitters 100a-f and detecting elements 102a-f are longitudinally spaced apart at regular intervals. Each light emitter 100a-f is longitudinally aligned to a corresponding detecting element 102a-f. Light emitters 100a-f are preferably narrow-angle light emitting diodes (LEDs), while detecting elements 102a-f are preferably photodiodes capable of detecting light of a wavelength emitted by light emitters 100a-f. For detecting the quantity of liquid 92 within syringe 80, light emitters 100a-f emit light beams 108a-f incident on plunger 90 and liquid 92. Detector elements 102a-f detect the resulting optical response pattern of syringe 80. Emitter 100d, situated under the current position of plunger 90, emits a light beam 108d which passes through liquid 92 and is incident on detector 102d. Emitter 100e, situated above the current position of plunger 90, emits a light beam 108e which is incident on plunger 90. Plunger 90 has a substantially different optical transmission property from liquid 92 at the wavelength(s) measured by detecting element 102e. Preferably, plunger 90 is opaque at those wavelengths. Plunger 90 then substantially blocks beam 108e, such that beam 108e is not incident on detecting element 102e. An electrical signal indicative of the optical pattern detected by detector 102 is sent to computing means 36. FIG. 2-D illustrates an alternative geometry for a detector of the present invention. A detector 202 comprises detecting elements 202a-c, each of which receives light emitted by plural emitters of light source 100. 」第7欄第44行?第8欄第6行
(光源100は複数の発光素子100a-fを有し、検出器102は、複数の検出素子102a-fを含む。光エミッタ100a-f及び検出素子102a-fは、規則的な間隔で長手方向に隔てられている。各発光素子100aは、対応する検出素子102a-fに対して長手方向に整列されている。発光素子100a-fは、好ましくは、狭角の発光ダイオード(LED)であり、一方、検出素子102a-fは、発光素子100a-fによって発光された波長の光を検出可能なフォトダイオードであることが好ましい。シリンジ80内の液体92の量を検出するために、発光素子100a-fは、プランジャ90及び液体92に入射する光線108a-fを発光する。検出素子102a-fは、シリンジ80における光学的な応答パターンを検出する。プランジャ90の現在位置の下方に位置する発光素子100dは、液体92を通過して検出素子102dに入射する光線108dを放射する。また、プランジャ90の現在位置の上方に位置する発光素子100eは、プランジャ90に入射する光ビーム108eを放出する。プランジャ90は、検出素子102eによって測定された波長において、液体92とは実質的に異なる光透過特性を有する。プランジャ90は、好ましくはそれらの波長において不透明である。プランジャ90は、ビーム108eを実質的に阻止するため、ビーム108eは検出素子102eに入射しない。検出器102によって検出された光学パターンを示す電気信号が演算手段36に送られる。図2-Dは、本発明の検出器についての代替的な構成を示す図である。検出器202を構成する検出素子202a-cのそれぞれは、光源100の複数の発光素子によって放射される光を受信する。)

A 摘記事項1の「本発明は、注射器と患者監視装置に係り、特に、注射器で送達される薬剤の投与量を光学的に特定し電気的に記録する装置に関する。」との記載、摘記事項2の「光源30はシリンジ22に入射する光を生成する。光検出器32は、光源30によって発生された光に対するシリンジ22の光学的な応答を検出する。シリンジ22の光学的な応答は、シリンジ22内の液体の量と、その結果としてシリンジ22を用いて患者に投与された投与量を示す。」との記載及び摘記事項4の「シリンジ80内の液体92の量を検出するために、発光素子100a-fは、プランジャ90及び液体92に入射する光線108a-fを発光する。」との記載からみて、引用文献に記載された発明はシリンジ内の薬液の量を測定する方法といえる。

B 摘記事項4の「図2-Dは、本発明の検出器についての代替的な構成を示す図である。検出器202を構成する検出素子202a-cのそれぞれは、光源100の複数の発光素子によって放射される光を受信する。」との記載について、同じく摘記事項4の「シリンジ80内の液体92の量を検出するために、発光素子100a-fは、プランジャ90及び液体92に入射する光線108a-fを発光する。検出素子102a-fは、シリンジ80における光学的な応答パターンを検出する。・・・検出器102によって検出された光学パターンを示す電気信号が演算手段36に送られる。」との別実施例に対する記載を踏まえてみると、引用文献に記載された発明(特に図2-Dに図示された実施例)においても、光源100の複数の発光素子によって放射される光は、シリンジ、プランジャ及び液体に入射することは明らかであるから、引用文献に記載された発明は、複数の発光素子に、シリンジに向けて光を放射させることを含む方法ということができる。さらに、3つの検出素子202a-cのそれぞれが受信する光は、当然に複数の発光素子によって放射される光の一部であるから、引用文献に記載された発明において、3つの検出素子202a-cのそれぞれが検出し、演算手段に送る電気信号は、複数の発光素子により放射される光の一部を表しかつ3つの検出素子202a-cのそれぞれで検出された光学パターンを示す3つの電気信号ということができる。

C 屈折率の異なる2つの物質の境界面を進行する光は当該2つの物質を透過するとともに当該境界面において屈折及び反射するという技術常識及びシリンジを構成する物質とシリンジ内に封入されている薬液の屈折率は異なるという技術常識を踏まえて、摘記事項2の「光源30はシリンジ22に入射する光を生成する。光検出器32は、光源30によって発生された光に対するシリンジ22の光学的な応答を検出する。」との記載、摘記事項3の「図1-Bは、本発明の装置によって実行される主な検出ステップを一般的に示す図である。光(電磁放射線)がシリンジ22に入射し、シリンジ22と相互作用する。相互作用から生じる光は、検出器に入射する。検出器に入射する光は、一般に、透過、反射、及び/または、シリンジ22から放出された光であってもよい。・・・シリンジ22に入射した光は、プランジャ及び/または液体と相互作用する。」との記載を読めば、引用文献に記載された発明において、複数の発光素子から放射されシリンジに入射した光の部分は、シリンジの壁と薬液との境界面を進行し、透過、屈折、及び反射しつつ、検出器に入射する部分であることは明らかであるから、引用文献に記載された発明において、光の検出された部分は、複数の発光素子により放射された光の透過、屈折、及び反射部分を含むということができる。

D 摘記事項2の「・・・光検出器32は、光源30によって発生された光に対するシリンジ22の光学的な応答を検出する。シリンジ22の光学的な応答は、シリンジ22内の液体の量と、その結果としてシリンジ22を用いて患者に投与された投与量を示す。・・・特に、演算手段36は、投与量の注射前及び注射後のシリンジ22内の液体の量を計算する。・・・演算手段36は、光検出器32から受け取った光学的な応答データと較正メモリ38に記憶された所定の較正データとを比較することにより、液体の量を決定する。」との記載から、引用文献に記載された発明は、光検出器から受け取った光学的な応答データに基づき、シリンジ内の薬液の量を決定することを含む方法であるといえる。

E 引用文献に記載された発明における光検出器や3つの検出素子202a-cは、検出した光の情報を電気信号として出力するものであることを踏まえると、光検出器が3つの検出素子202a-cからなる場合においては、認定事項Dの「光検出器から受け取った光学的な応答データ」は、認定事項Bの「3つの検出素子202a-cのそれぞれで検出された光学パターンを示す3つの電気信号」といえる。そして、該「3つの検出素子202a-cのそれぞれで検出された光学パターンを示す3つの電気信号」に「基づいて」、認定事項Dの「シリンジ内の薬液の量を決定する」のであるから、引用文献に記載された発明は、3つの検出素子202a-cのそれぞれで検出された光学パターンを示す3つの電気信号を組み合わせることによりシリンジ内の薬液の量を決定することを含む方法であるといえる。

そこで、引用文献の上記摘記事項1?4及び上記認定事項A?Eを図面を参照しつつ、本願発明に対応させて整理すると、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。) が記載されていると認められる。

「シリンジ内の薬液体積を測定する方法であって、
複数の発光素子に、前記シリンジに向けて光を放出させることと、
前記複数の発光素子により放出された前記光の一部を表しかつ3つの検出素子202a-cのそれぞれで検出された光学パターンを示す3つの電気信号を、前記3つの検出素子202a-cから受信することであって、前記光の前記検出された部分は、前記複数の発光素子により放出された前記光の透過、屈折、及び反射部分を含むことと、
前記3つの検出素子202a-cのそれぞれで検出された光学パターンを示す3つの電気信号を組み合わせることにより、シリンジ内の薬液の量を決定することと、を含む、方法。」

第4 対比
本願発明と引用発明(以下、それぞれを「前者」、「後者」といい、それらを併せて「両者」ということがある。)とを、その用語の意味、機能に基づいて対比すると、後者の「シリンジ」は前者の「薬物容器」に、同様に「薬液体積」は「液体の体積」に、「発光素子」は「光源」に、「光」は「電磁放射」に、「3つの検出素子202a-c」は「複数のセンサ」に、「光の一部を表しかつ3つの検出素子202a-cで検出された光学パターンを示す3つの電気信号」は「電磁放射の一部を表しかつ複数のセンサで検出されたデータ」に、それぞれ相当する。そして、後者の「検出された光学パターンを示す3つの電気信号を組み合わせることによりシリンジ内の薬液の量を決定すること」と前者の「前記受信したデータを組み合わせることにより、前記電磁放射の前記検出された部分を表す信号識別符号を生成することと、前記信号識別符号に基づいて、前記薬物容器内の前記液体の前記体積を決定すること」とは、「前記受信したデータから、薬物容器内の液体の体積を決定すること」という限度で一致する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「薬物容器内の液体の体積を推定する方法であって、
複数の光源に、前記薬物容器に向けて電磁放射を放出させることと、
前記複数の光源により放出された前記電磁放射の一部を表しかつ複数のセンサで検出されたデータを、前記複数のセンサから受信することであって、前記電磁放射の前記検出された部分は、前記複数の光源により放出された前記電磁放射の透過、屈折、及び反射部分を含むことと、
前記受信したデータから、前記薬物容器内の前記液体の前記体積を決定することと、を含む、方法。」 の点で一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点)
受信したデータから、薬物容器内の液体の体積を決定することに関し、本願発明は、受信したデータを組み合わせることにより、電磁放射の検出された部分を表す信号識別符号を生成するとともに、当該信号識別符号に基づいて、薬物容器内の液体の体積を決定するものであるのに対し、引用発明は、検出された光学パターンを示す3つの電気信号を組み合わせることにより、シリンジ内の薬液の量を決定するものであるが、本願発明のように信号識別符号を生成し、当該信号識別符号に基づいて、シリンジ内の薬液の量を決定するものといえるか否か明らかでない点。

第5 相違点の検討
上記相違点について検討する。
(1)本願発明の「信号識別符号」について
相違点の検討に先立ち、まず、本願発明における「信号識別符号」の意味・内容について検討する。本件明細書には、本願発明における「信号識別符号」に関して、以下のような記載がある。

A 「【0049】・・・図11A?図11Cを参照すると、投与量測定システムの複数のセンサの各センサは、複数の光源の少なくとも一部によって放出される電磁放射を検出することができ、検出された電磁放射は、透過、反射、および屈折された電磁放射の組み合わせであり得る。図示されるように、明確性を考慮して、投与量測定システム700は、2つの光源744aおよび744bと、2つのセンサ754aおよび754bと、を備える。」

B 「【0051】 ・・・図11Bに示すように、アクチュエータ714は、プランジャ部が光源744bとセンサ754bとの間の視線を部分的に遮断するような第2位置(位置2)に変位されている。・・・したがって、位置2では、センサ754aは15.5(位置1より大きい)の電磁放射値を検出し、センサ754bは8.8(位置1より小さい)の電磁放射値を検出する。位置2において測定された固有の値は、位置2に対する信号識別符号値としての役割を果たす。」

C 「【0052】 ・・・ 図11Cに示すように、アクチュエータ714のプランジャ部は、アクチュエータ714のプランジャ部が光源744aによって放出された電磁放射からセンサ754aの視線を完全に遮断し、光源744aからの透過放射または反射放射が実質的にセンサ754aに到達できないような第3位置(位置3)にある。・・・したがって、位置3では、センサ754aは2.2(位置1および2より小さい)の電磁放射値を検出し、センサ754bは、12.0(位置1より小さいが、位置2よりは大きい)の電磁放射値を検出する。位置3において測定された固有の値は、位置3に対する信号識別符号値としての役割を果たす。」

D 「【0056】 [0075] 薬物送達デバイスにより分配される投与量の体積に関して多様な構成で得られた固有の信号識別符号は、投与量測定システムの参照識別符号(較正曲線)を得るために使用することができる。図14は、合計で7つのセンサを備える投与量測定システムを使用して、薬物送達デバイスについて得られた参照識別符号識別符号の一例を示している。投与量測定システムは、本明細書に記載された任意の投与量測定システムであってよい。分配される投与量の体積の範囲に対して複数のセンサのそれぞれによって検出された電磁放射識別符号は、記憶され、参照識別符号を生成するために使用される。参照識別符号からわかるように、薬物送達デバイスがほぼ満杯である時、センサ1は、低振幅の電磁放射を記録する一方、センサ7は、非常に高振幅を記録し、その他の全てのセンサは、それらの中間の信号識別符号を検出する。逆に、薬物送達デバイスが完全に空である時、センサ1は、非常に高振幅の電磁放射を記録する一方、センサ7は、低振幅を記録し、その他の全てのセンサはそれらの中間の信号識別符号を検出する。」

E 「【0058】 [0077] したがって、このような態様で、残存する薬物体積の範囲に対して、全てのセンサから記録された信号値により、薬物送達デバイス内の薬物の全体積に対する信号識別符号が得られる。信号識別符号を得るために使用される薬物の体積範囲は、例えば、薬物送達デバイスが完全に満杯の状態、薬物送達デバイスが完全に空の状態、および十分な数の中間識別符号(例えば、分配される全流体の各単位について得られる識別符号)を含み得る(それらの間の全てのパーセンテージを含む)。」

上記A?Eの記載について検討すると、まずA?Cは、2つの光源及び2つのセンサを有する場合について記述し、当該2つのセンサは、それぞれ検出した電磁放射値を出力し、その2つの電磁放射値をもって、プランジャ部の位置に固有の「信号識別符号」としていることが理解できる。さらに、D、Eは、図14の図示内容も参照すると、7つのセンサを備えた投与量測定システムにおいて、センサ1?7によって、各々検出されたセンサ出力値が、投与量に応じたすなわち各投与量に固有の「信号識別符号」として検出されることが理解できる。
してみると、本願発明における「信号識別符号」とは、複数の光源から放射された電磁放射のうち、複数のセンサで検出された電磁放射の一部を表すものであって、複数のセンサで検出されたデータを組み合わせることにより生成され、薬物容器内の液体体積を決定することができるものであって、さらに、上記の本件明細書A?Eの記載を踏まえると、より具体的には、複数のセンサにより検出された複数個の電磁放射値の固有の値の組み合わせということができる。

(2)上記相違点の検討
上記(1)の検討を踏まえ、上記相違点を検討すると、引用発明における3つの検出素子202a-cのそれぞれで検出された光学パターンを示す電気信号は、複数の発光素子により放出された光が、3つの検出素子202a-cで検出されたものであるから、3つの検出素子202a-cのそれぞれが検出した部分を表す電気信号であって、該検出された光学パターンを示す電気信号は、複数の発光素子により放出された光の検出された部分を表す、複数のセンサのそれぞれが検出した、個別具体的なデータということができる。また、引用発明は、その3つの電気信号を組み合わせることにより、シリンジ内の薬液の量を決定するのであるから、結局、引用発明は、3つのセンサにより検出された3つの個別具体的なデータ、すなわち電磁放射値の固有の値を組み合わせることにより当該電磁放射値の固有の値の組み合わせを生成し、それに基づいてシリンジ内の薬液の量を決定するもの、すなわち本願発明でいうところの、信号識別符号を生成し、当該信号識別符号に基づいて、シリンジ内の薬液の量を決定するものということができる。

したがって、上記相違点は実質的なものとはいえないから、本願発明は引用発明である。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明すなわち本願の優先権主張の日前日本国内または外国において頒布された引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-02-26 
結審通知日 2020-02-27 
審決日 2020-03-10 
出願番号 特願2015-514106(P2015-514106)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 昌司  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 内藤 真徳
井上 哲男
発明の名称 投与量測定システムおよび方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 江口 昭彦  
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