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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1364488
審判番号 不服2019-3706  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-19 
確定日 2020-07-20 
事件の表示 特願2014-247078「ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器、内側ラベル部材およびプラスチック製部材」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-107506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年12月5日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成30年 7月13日付け:拒絶理由通知
平成30年 9月12日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年12月20日付け:拒絶査定
平成31年 3月19日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 1年 6月26日付け:前置報告
令和 2年 4月21日 :上申書の提出


第2 平成31年 3月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年 3月19日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項10の記載
本件補正における特許請求の範囲の補正は、請求項10についての次の補正事項を含む。(下線部は、補正箇所である。)
「複合容器において、
口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有する、プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外側に、接着されることなく密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対して収縮する作用をもつ収縮チューブであり、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体の胴部と、底部の一部とを少なくとも覆うように設けられており、
前記容器本体が、多層構造を有し、ガスバリア性樹脂を含む中間層を備えることを特徴とする複合容器。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項10の記載
本件補正前の、平成30年 9月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲のうち、請求項10の記載は次のとおりである。
「複合容器において、
口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有する、プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外側に、接着されることなく密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対して収縮する作用をもつ収縮チューブであり、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体の胴部と、底部の一部とを少なくとも覆うように設けられていることを特徴とする複合容器。」

2 補正の適否
本件補正の内、請求項10についての補正は、本件補正前の請求項10に記載された発明を特定するために必要な事項である「容器本体」について、「多層構造を有し、ガスバリア性樹脂を含む中間層を備える」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項10に記載された発明と本件補正後の請求項10に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項10に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2) 引用文献の記載事項等
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開昭59-91038号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「2.特許請求の範囲
(1) ポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンの少なくとも胴壁部外面に、ガスバリヤー性プラスチックフィルムを装着した後、加熱、2軸延伸-吹込成形を行うことを特徴とする、少なくとも肩部及び胴部外面に該ガスバリヤー性プラスチックフィルムが被着したポリエチレンテレフタレートボトルの製造方法。」(第1頁右下欄第4ないし11行)

「本発明はボトルの製造方法に関し、さらに詳しくは外面にガスバリヤー性プラスチックフィルムが被着した延伸-吹込成形ポリエチレンテレフタレートボトルの製造方法に関する。
有底パリソンより2軸延伸-吹込成形により形成されたポリエチレンテレフタレートボトル(本明細書においては、エチレンテレフタレートを主成分とするエチレンテレフタレート共重合体、およびポリエチレンテレフタレートを主成分とするブレンドを含めてポリエチレンテレフタレートと呼ぶ)は、ガスバリヤー性、透明性、耐衝撃性等の容器特性に優れており、最近各種の内容物の収納用に実用化されつつある。しかしビールや炭酸飲料等の加圧炭酸ガスを含有する内容物を充填、密封した場合、経時につれて炭酸ガスが、若干であるが薄肉の肩部や胴部の壁部を透過して失われ、一方酸素が、僅かであるが上記壁部を透過して侵入して、内容物のフレーバが損ぜられ易い。」(第1頁左下欄第13行ないし同頁右下欄第10行)

「第1図において1はポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンであって、通常射出成形によって形成される。2はガスバリヤー性プラスチックフィルム(例えば厚さ10?50μmのポリ塩化ビニリデン系フィルム;単位厚さの炭酸ガス、酸素ガス等に対するバリヤー性がポリエチレンテレフタレートの夫より大きいプラスチックのフィルム)よりなるチューブであって、例えばインフレーション法によって形成された継ぎ目無しの長尺チューブを、パリソン1の胴壁部1aの高さにほぼ等しい長さに切断したものである。その内径は胴壁部1aの外径より若干大きい。
第1図はチューブ2を倒立したパリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿し、ネックリング1b上に載置した状態を示す。次にこのパリソン1を延伸-吹込成形のため約80?100℃の範囲内の所定温度に、赤外線照射あるいはオーブン通過等によって加熱する。このさいチューブ2は熱収縮して、第2図に示すように、パリソン1の胴壁部1aの外面に密着する。次いで常法により、このチューブ2が密着したパリソン1を2軸延伸-吹込成形を行なって、第3図に示すようなボトル3を形成する。」(第2頁左上欄第14行ないし同頁右上欄第16行)













イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の請求項1には、ポリエチレンテレフタレートボトルの製造方法に関して、「ポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンの少なくとも胴壁部外面に、ガスバリヤー性プラスチックフィルムを装着した後、加熱、2軸延伸-吹込成形を行うこと」が記載されており、その具体的な手順として、ガスバリヤー性プラスチックフィルムであるチューブ2を「倒立したパリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿し、ネックリング1b上に載置し」、「次にこのパリソン1を延伸-吹込成形のため約80?100℃の範囲内の所定温度に、赤外線照射あるいはオーブン通過等によって加熱」することで、「チューブ2は熱収縮して、第2図に示すように、パリソン1の胴壁部1aの外面に密着する」ものであることが記載されている。
してみると、ガスバリヤー性プラスチックフィルムは、有底パリソンと接着されることなく密着されたものであって、2軸延伸-吹込成形後においても、ガスバリヤー性プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートボトルと接着されることなく密着して設けられていることは明らかである。
また、第3図から、ポリエチレンテレフタレートボトルが、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有することが看取できる。

してみると、引用文献1には、
「口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有する、ポリエチレンテレフタレートボトルと、
前記ポリエチレンテレフタレートボトルの外面に、接着されることなく密着して設けられたガスバリヤー性プラスチックフィルムとを備え、
前記ガスバリヤー性プラスチックフィルムが、前記ポリエチレンテレフタレートボトルに対して熱収縮するチューブであり、
前記ガスバリヤー性プラスチックフィルムが、前記ポリエチレンテレフタレートボトルの少なくとも肩部及び胴部外面に設けられているボトル。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(3) 対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「ポリエチレンテレフタレートボトル」、「ガスバリヤー性プラスチックフィルム」はそれぞれ、本件補正発明の「プラスチック材料製の容器本体」及び「容器本体」、「プラスチック製部材」に相当する。また、引用発明の「チューブ」は熱収縮するものであるから、本件補正発明における「収縮する作用をもつ収縮チューブ」に相当する。さらに、引用発明のボトルは「ポリエチレンテレフタレートボトル」と「ガスバリヤー性プラスチックフィルム」からなるものであるから、本件補正発明の「複合容器」に相当することは明らかである。

してみると、本件補正発明と引用発明は、
「複合容器において、
口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有する、プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外側に、接着されることなく密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対して収縮する作用をもつ収縮チューブである複合容器。」
で一致し、次の2点で相違する。

<相違点1>
プラスチック製部材(ガスバリヤー性プラスチックフィルム)に関し、本件補正発明は、「容器本体の胴部と、底部の一部とを少なくとも覆うように設けられている」と特定するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

<相違点2>
容器本体に関し、本件補正発明は、「多層構造を有し、ガスバリア性樹脂を含む中間層を備える」と特定するのに対し、引用発明では、「ポリエチレンテレフタレート」よりなるものである点。

イ 相違点についての判断
上記相違点について順次検討する。

・相違点1について
引用発明において、ガスバリヤー性プラスチックフィルム(プラスチック製部材)を同壁部(胴部)と底部の一部を含むボトルの所望の位置に配して、相違点1に係る本件補正発明の特定事項とすることは、当業者にとって設計的事項にすぎない。

・相違点2について
容器本体が多層構造を有し、ガスバリア性樹脂を含む中間層を備えるものとすることは、例えば、特表2007-522049号公報(段落【0065】?【0067】に、多層の予備成形物及び容器の構造について記載されている。)や特開平1-255520号公報(第4頁左上欄第17行ないし同頁右上欄第12行に、パリソンをブロー成形して容器を作る技術に関し、ガスバリヤー性熱可塑性樹脂を中間層として設けた多層容器が記載されている。)に示されるように、本願出願前において周知技術にすぎない。
してみれば、引用発明において、ガスバリヤー性(ガスバリア性)をより高めるために、上記周知技術を採用し、相違点2にかかる本件補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 審判請求書における審判請求人の主張について
なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「引用文献1には、補正後の本発明の構成に変更しようとする動機となり得る記載がないばかりか、変更する動機を阻害する要因となり得る記載さえあるのであります。」と主張する。
しかしながら、引用発明は、PETボトルは、ガスバリヤー性、透明性、耐衝撃性に優れているが、薄肉の肩部や胴部の壁部から透過進入の問題がありそれを解決するために、少なくとも肩部および胴部の外周にガスバリヤー性プラスチックフィルムを設けるようにしたものであって、あくまでも容器自体のガスバリヤー性の向上を目的としたものであるから、よりガスバリヤー性を向上させるべく、周知の3層構造の容器本体を採用することを想起する動機付けはある。
また、容器本体を3層構造としてガスバリヤー性を向上させたとしても、胴部や肩部は底部と比べて薄く相対的にガスバリヤー性が劣ることには変わりがないから、当該3層構造の容器本体に対しても引用発明のガスバリヤー性フィルムを肩部および胴部に適用することに阻害要因はない。
したがって、審判請求人の当該主張は採用できない。

エ 小括
上記アないしウのとおり、本件補正発明は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成31年 3月19日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし29に係る発明は、平成30年 9月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項10に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項10に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。

引用文献1:特開昭59-91038号公報

3 引用文献1の記載等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項等は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記容器本体が、多層構造を有し、ガスバリア性樹脂を含む中間層を備えること」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、周知技術は上記他の事項に対して引用されたものであるから、上記他の事項が付加されていない本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-05-15 
結審通知日 2020-05-19 
審決日 2020-06-01 
出願番号 特願2014-247078(P2014-247078)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雄一  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
発明の名称 ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器、内側ラベル部材およびプラスチック製部材  
代理人 中村 行孝  
代理人 末盛 崇明  
代理人 朝倉 悟  
代理人 永井 浩之  
代理人 浅野 真理  

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