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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1364491
審判番号 不服2019-6621  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-21 
確定日 2020-07-21 
事件の表示 特願2017-534956号「調節可能な視野表示を有する車両用視界システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月7日国際公開、WO2016/109398号、平成30年2月8日国内公表、特表2018-503553号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年12月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年12月29日 米国(US)、2015年12月22日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成30年5月16日付けで拒絶理由が通知され、同年8月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月16日付けで拒絶査定がされ、令和1年5月21日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?18に係る発明は、令和1年5月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、請求項1の記載は、上記令和1年5月21日に提出された手続補正書により補正されていない。

「車両に関連付けられたカメラにより捕捉された画像を表示するための車両用表示システムであって、前記カメラは視野を有しており、前記表示システムが、
後方視野アセンブリであって、
前記車両に取付けるように構成された取付構造、
前記取付構造に枢動自在に装着された可動ヘッド、
前記カメラの前記視野の一部を表示するための、前記可動ヘッドの内部に位置付けられた表示装置、
前記可動ヘッドの動きを検知するための動きセンサ、及び
前記可動ヘッドに配置された少なくとも1つの静電容量タッチセンサ、を備える後方視野アセンブリと、
前記動きセンサにより検知された前記可動ヘッドの動きに応答して、及び、前記少なくとも1つの静電容量タッチセンサの作動に応答して、前記表示装置上に表示すべき前記視野を調整するように、前記少なくとも1つの静電容量タッチセンサ、前記動きセンサ及び前記表示装置と通信する処理回路と、
を備える、車両用表示システム。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成30年5月16日付けの拒絶理由通知における理由2であり、概略、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものであって、以下の引用文献1、2、4、5が示されている。

引用文献1:特開2014-201146号公報
引用文献2:特表2002-538470号公報
引用文献4:特開2004-334642号公報
引用文献5:特開2012-35669号公報

第4 引用文献の記載等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項 (下線は当審で付した。以下同様。)
「【請求項1】
車両後方を視認可能なハーフミラーを有するハウジングと、車両に固定された車載用カメラと、前記ハウジングに内蔵されかつ前記車載用カメラにより撮像された被写体画像を前記ハーフミラーを通じて視認可能なディスプレイとを備え、
前記車載用カメラは、被写体を撮影する撮影光学系と、該撮影光学系により前記被写体画像が形成される撮像素子とを少なくとも備え、該撮像素子と前記ディスプレイとの間に前記被写体画像を処理する処理回路が設けられ、該処理回路には、前記被写体画像よりも狭い矩形状領域の画像を切り出す画像切り出し回路と、前記ハーフミラーの向きに応じてその向きのときに該ハーフミラーによりドライバーに対して直接映って見える像に対応する矩形状領域内の画像が前記ディスプレイに表示されるように、前記被写体画像に対する前記矩形状領域の切り出し箇所を変更する画像切り出し箇所変更部と、が設けられていることを特徴とする車両用画像表示装置。」

「【請求項4】
前記画像切り出し箇所変更部は、前記ハウジングの姿勢を検出する姿勢検出センサに接続され、該姿勢検出センサは車両用インナーミラーに設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用画像表示装置。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用画像表示装置の改良に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車載用インナーミラーでは、ハーフミラーの向きを変えると、ドライバーに対してハーフミラーにより直接映って見える車両後方の像が変わる。しかしながら、車載用カメラは車体に固定されているため、ハーフミラーの向きを変えても、液晶表示装置の表示画面に映っている画像は変わらない。
【0005】
このため、ドライバーの好みによって、ドライバーがハーフミラーに直接映って見える像の範囲を変えたとしても、車載用カメラにより撮影された画像をそのディスプレイに表示させたときには、そのハーフミラーによりドライバーに対して直接映って見える像とは異なる画像が表示され、ドライバーに違和感を与える。
【0006】
本発明に係る車両用画像表示装置は、上記の事情に鑑みて為されたもので、その目的は、ハーフミラーの向きに対応させてディスプレイに表示される画像を変更可能とした車両用画像表示装置を提供することを目的とする。」

「【0011】
車両1にはその後部に車載用カメラ2が設けられている。この車載用カメラ2は信号線を介して車載用インナーミラー3に接続されている。なお、符号4はドライバー、符号5は車内天井を示している。
【0012】
その車載用インナーミラー3はその車内天井5に図2に示すように支持部材6を介して支持されている。その支持部材6には球状ピボット部7が設けられている。
【0013】
その車載用インナーミラー3は、その車内用インナーミラー本体としてのハウジング8がその球状ピボット部7を支点にして上下左右に傾動可能とされている。これによりハウジング8の姿勢が変更される。
【0014】
そのハウジング8には、その前面にハーフミラー9が図2に示すように設けられている。そのハーフミラー9の背面には、図2に示すように液晶表示画面10aが設けられている。
【0015】 その液晶表示画面10aの背面にはバックライト照明部10bが設けられ、バックライト照明部10bの背面には電気回路基板部10cが設けられている。
【0016】 この液晶表示画面10aとバックライト照明部10bと電気回路基板部10cとにより公知のディスプレイ10が構成されている。 そのディスプレイ10は、車載用カメラ2により撮影された被写体画像がハーフミラー9を通じて視認可能とされている。」

「【0028】
処理回路18には、ハウジング8の向きに応じてドライバー4に対してハーフミラー9により直接映って見える像と同等の画像が液晶表示画面10aに表示されるように、被写体画像G1に対する矩形状領域RECの切り出し箇所を変更する画像切り出し箇所変更部12cが、図5に示すように設けられている。
【0029】
ここでは、ディスプレイ10がオフのときには、図4に示すように、ドライバー4には、後続車両1’がハーフミラー9の中央に映って見え、ハーフミラー9の右端側に遠方車両1”の一部が欠けて映って見えている。
【0030】
ドライバー4が、図10に示すように、後続車両1’と遠方車両1”との双方が欠けることなく視認できるように、ハウジング8の向きを変更したとする。
【0031】
すると、ポテンショメータ12、13はそのハウジング8の傾きを電気信号に変換して処理回路18に向かって出力する。処理回路18の画像切り出し箇所変更部18cには、例えば、テーブルメモリ(図示を略す)が設けられている。
【0032】
そのテーブルメモリには、ポテンショメータ12、13の出力に対応してマトリックス状に矩形状領域RECの切り出し箇所が記憶されている。
【0033】
ハウジング8の向きが変更されたときには、画像切り出し箇所変更部18cは、画像切り出し箇所変更信号を画像切り出し回路18aに向かって出力する。
【0034】
これにより、後続車両1’と遠方車両1”との双方が欠けることなくドライバー4に視認できるように、ハウジング8の向きが外向きに傾けられたときには、図7に実線で示す矩形状領域RECが図7に二点鎖線で示す矩形状領域REC’に変更される。」

また、引用文献1の【図2】には、以下の図が示されている。

(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の段落【0012】?段落【0016】の記載及び【図2】から、
車両用インナーミラー3は、ハウジング8、ハーフミラー9及びディスプレイ10が一体となったものであり、該車両用インナーミラー3は、前記ハウジング8が球状ピボット部7を支点にして姿勢が変更されるように、前記球状ピボット部7が設けられている支持部材6を介して車内天井5に支持されていることは明らかである。

したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両後方を視認可能なハーフミラー9を有するハウジング8と、車両に固定された車載用カメラ2と、前記ハウジング8に内蔵されかつ前記車載用カメラ2により撮像された被写体画像を前記ハーフミラー9を通じて視認可能なディスプレイ10とを備え、
前記車載用カメラ2は、被写体を撮影する撮影光学系16と、該撮影光学系16により前記被写体画像が形成される撮像素子17とを少なくとも備え、該撮像素子17と前記ディスプレイ10との間に前記被写体画像を処理する処理回路18が設けられ、該処理回路18には、前記被写体画像よりも狭い矩形状領域REC、REC’の画像を切り出す画像切り出し回路18aと、前記ハーフミラー9の向きに応じてその向きのときに該ハーフミラー9によりドライバー4に対して直接映って見える像に対応する矩形状領域内の画像が前記ディスプレイ10に表示されるように、前記被写体画像に対する前記矩形状領域の切り出し箇所を変更する画像切り出し箇所変更部18cと、が設けられ、
前記画像切り出し箇所変更部18cは、前記ハウジング8の姿勢を検出する姿勢検出センサに接続され、該姿勢検出センサは車両用インナーミラー3に設けられており、
前記車両用インナーミラー3は、前記ハウジング8、前記ハーフミラー9及び前記ディスプレイ10が一体となったものであり、該車両用インナーミラー3は、前記ハウジング8が球状ピボット部7を支点にして姿勢が変更されるように、前記球状ピボット部7が設けられている支持部材6を介して車内天井5に支持される車両用画像表示装置。」

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
「【請求項1】 自動車両用のバックミラー組立体であって、ハウジングと、該ハウジングに取付けたミラーと、車内の運転者または乗客から見えるように配置された視覚的ディスプレイと、電子式コンパス・センサと、該電子式コンパス・センサから信号を受取り車両の方向を表わす表示信号を視覚的ディスプレイへ送るための処理回路と、ミラーと車両間のピボット接続部とを備えたバックミラー組立体において、
電子式コンパス・センサが前記ハウジング内部に取付けられ前記ミラーと共にピボット可能であり、前記ミラーの車両に関してピボット可能な運動を補償する補償手段を更に備えるバックミラー組立体。」

「【0071】
図28(審決注:図27Aの誤記)は、本発明の傾斜検出器の第12の実施形態を示している。図28(審決注:図27Aの誤記)に示されるように、近接センサ700がミラー・ハウジング120の周囲部に設けられる。このような近接センサは、例えば、米国特許第5,594,222号に開示されたような容量性タッチ・スイッチを用いて提供することができる。このような近接センサはミラーの実際の運動を検出しない点において上記実施形態とは異なるが、センサ700は、ミラーが接触されたときを検出することができ、従ってコンパス・センサが車両の方向における突然の変位を検知するときミラーが傾けられそうであると仮定することができる。このような手法の1つの利点は、これが単一ボールあるいは2重ボールのマウントにおいて働くことである。このような実施形態が用いられると、センサ700が、車両の点火が遮断されたときミラーが動かされたかを検出する電力が与えられることが望ましい。これは、低電力の構成要素を使用し、常にあるいは少なくとも車両の点火がオフであるときに車両のバッテリ電源への接続を維持し、あるいは車両の点火がオーディオ・ファイルであるとき電力供給のための他の周知の方法を用いることによって達成することができる。」

また、引用文献1の【図9】、【図27A】には、以下の図が示されている。
【図9】



(2)引用文献2に記載された技術的事項
【請求項1】の記載から、自動車両用のバックミラー組立体は、ハウジングと、該ハウジングに取付けたミラーと、車内の運転者または乗客から見えるように配置された視覚的ディスプレイと、ミラーと車両間のピボット接続部とを備えているといえる。
また、段落【0071】の記載から、ハウジングに、容量性タッチ・スイッチである近接センサを備えているといえる。

したがって、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「ハウジングと、該ハウジングに取付けたミラーと、車内の運転者または乗客から見えるように配置された視覚的ディスプレイと、ミラーと車両間のピボット接続部とを備えている自動車両用のバックミラー組立体において、
前記ハウジングに容量性タッチ・スイッチである近接センサを備えてること。」

3 引用文献4
(1)引用文献4の記載事項
「【請求項1】
加速度センサと、少なくとも1以上の操作入力手段とを有し、前記加速度センサ及び操作入力手段がオン状態であることを感知して、操作入力する操作入力装置。」

「【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明の操作入力装置は、加速度センサと、少なくとも1以上の操作入力手段とを有し、加速度センサ及び操作入力手段がオン状態であることを感知して、操作入力するものである。」

「【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、加速度センサと、少なくとも1以上の操作入力手段とを有し、前記加速度センサ及び操作入力手段がオン状態であることを感知して、操作入力する操作入力装置である。これにより、加速度センサと操作入力手段の2つがそろってオンになって初めて操作入力を有効とするため、確実な操作入力を行うことができるという作用を有する。」

「【0016】
図1において、1は操作入力装置であって、制御部としてのマイコン2、加速度センサ3及び操作入力手段としてのタッチセンサ4を備える。ここで、加速度センサ3は、操作入力装置1に加えられる動きを検知するものであり、少なくとも振動を検知可能なものとする。また、タッチセンサ4は、少なくとも1つ備えているものとする。なお、本実施の形態では、操作入力手段をタッチセンサとしたが、これに限るものではなく、ボタン、スイッチ、レバーなどのユーザが直接に操作可能なものであれば良い。」

また、引用文献4の【図1】には、以下の図が示されている。

4 引用文献5
引用文献5の記載事項
「【請求項1】
スイッチ動作によって左シグナルライト及び右シグナルライトを点灯する方向指示スイッチと、
前記方向指示スイッチの前記スイッチ動作をレバー回転操作によって左折指示回転位置と右折指示回転位置とで行うためのモーメンタリ型スイッチ用の操作レバーと、
前記操作レバーのレバー操作部位に配置され、操作入力を検出するセンサ部と、
前記センサ部及び前記方向指示スイッチに接続され、前記スイッチ動作が行われる場合に前記センサ部によるセンサ信号の検出有無を判定し、この判定結果に基づいて前記左シグナルライト又は前記右シグナルライトを点灯するための制御信号を出力する制御部と
を備えたレバースイッチ装置。」

「【0009】
従って、本発明の目的は、誤動作によるシグナルライトの点灯を防止することができ、もって他の車両への正常な方向指示を行うことができるレバースイッチ装置を提供することにある。」

「【0023】
(センサ部4の構成)
センサ部4は、第1のタッチセンサ4a及び第2のタッチセンサ4bからなり、操作レバー3におけるレバー操作部3aの自由端部に配置されている。第1のタッチセンサ4a及び第2のタッチセンサ4bは、レバー操作部3aの外周面にその円周方向に等間隔をもって配置されている。
【0024】
第1のタッチセンサ4aは、例えばフィルムシートにITO(インジウム錫酸化物)等の電極を形成してなる静電容量式センサであって、レバー操作部3aの外周面にその周方向に沿って取り付けられ、かつECU5のタッチセンサ処理回路11に接続されている。そして、第1のタッチセンサ4aは、操作レバー3の左折指示回転位置Lに対するレバー回転操作方向のタッチ力等の操作入力を受け、センサ信号S1を出力するように構成されている。第1のタッチセンサ4aは、静電容量式センサであるため、操作者の手指が接近してもセンサ信号S1を出力する。」

また、引用文献4の【図1】には、以下の図が示されている。

第5 当審の判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「車載用カメラ2」は、前者の「車両に関連付けられたカメラ」に相当する。また、後者の「車載用カメラ2」が視野を有することは技術常識である。後者の「車両用インナーミラー3」は前者の「後方視野アセンブリ」に相当する。

(2)後者は「前記車両用インナーミラー3は、・・・前記球状ピボット部7が設けられている支持部材6を介して車内天井5に支持され」るものであるから、後者の「支持部材6」は、前者の「前記車両に取付けるように構成された取付構造」に相当する。

(3)後者は「前記ハウジング8が球状ピボット部7を支点にして姿勢が変更されるものである」から、上記(2)を踏まえると、後者の「ハウジング8」は、前者の「前記取付構造に枢動自在に装着された可動ヘッド」に相当する。

(4)後者の「前記被写体画像よりも狭い矩形状領域REC、REC’の画像」は、前者の「前記カメラの前記視野の一部」に相当し、後者の「ディスプレイ10」は、「前記被写体画像よりも狭い矩形状領域REC、REC’の画像」を視認可能にするものであるから、後者の「前記ハウジング8に内蔵されかつ前記車載用カメラ2により撮像された被写体画像を前記ハーフミラー9を通じて視認可能なディスプレイ10」は、前者の「前記カメラの前記視野の一部を表示するための、前記可動ヘッドの内部に位置付けられた表示装置」に相当する。

(5)後者の「前記ハウジング8の姿勢を検出する姿勢検出センサ」は、前者の「前記可動ヘッドの動きを検知するための動きセンサ」に相当する。

(6)後者の「ハーフミラー9」は「ハウジング8」と一体であるところ、上記(5)を踏まえると、後者の「前記ハーフミラー9の向きに応じて」との構成は、前者の「前記動きセンサにより検知された前記可動ヘッドの動きに応答して」との構成に相当する。また、後者の「処理回路18」が「姿勢検出センサ」及び「ディスプレイ10」と通信することは自明なことである。
そうすると、後者の「前記被写体画像よりも狭い矩形状領域REC、REC’の画像を切り出す画像切り出し回路18aと、前記ハーフミラー9の向きに応じてその向きのときに該ハーフミラー9によりドライバー4に対して直接映って見える像に対応する矩形状領域内の画像が前記ディスプレイ10に表示されるように、前記被写体画像に対する前記矩形状領域の切り出し箇所を変更する画像切り出し箇所変更部18cと、が設けられ」る「撮像素子17と前記ディスプレイ10との間に」「設けられ」る「前記被写体画像を処理する処理回路18」と、前者の「前記動きセンサにより検知された前記可動ヘッドの動きに応答して、及び、前記少なくとも1つの静電容量タッチセンサの作動に応答して、前記表示装置上に表示すべき前記視野を調整するように、前記少なくとも1つの静電容量タッチセンサ、前記動きセンサ及び前記表示装置と通信する処理回路」とは、「前記動きセンサにより検知された前記可動ヘッドの動きに応答して、前記表示装置上に表示すべき前記視野を調整するように、前記動きセンサ及び前記表示装置と通信する処理回路」である点で共通する。

(7)上記(1)?(6)を踏まえると、後者の「車両用画像表示装置」は、前者の「車両に関連付けられたカメラにより捕捉された画像を表示するための車両用表示システム」及び「車両用表示システム」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「車両に関連付けられたカメラにより捕捉された画像を表示するための車両用表示システムであって、前記カメラは視野を有しており、前記表示システムが、
後方視野アセンブリであって、
前記車両に取付けるように構成された取付構造、
前記取付構造に枢動自在に装着された可動ヘッド、
前記カメラの前記視野の一部を表示するための、前記可動ヘッドの内部に位置付けられた表示装置、
前記可動ヘッドの動きを検知するための動きセンサを備える後方視野アセンブリと、
前記動きセンサにより検知された前記可動ヘッドの動きに応答して、前記表示装置上に表示すべき前記視野を調整するように、前記動きセンサ及び前記表示装置と通信する処理回路と、
を備える、車両用表示システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
本願発明は、後方視野アセンブリが、「前記可動ヘッドに配置された少なくとも1つの静電容量タッチセンサ」を備え、処理回路が、前記動きセンサにより検知された前記可動ヘッドの動きに応答して、「及び、前記少なくとも1つの静電容量タッチセンサの作動に応答して、」前記表示装置上に表示すべき前記視野を調整するように、「前記少なくとも1つの静電容量タッチセンサ、」前記動きセンサ及び前記表示装置と通信するのに対し、
引用発明は、車両用インナーミラー3が、かかる静電容量タッチセンサを備えておらず、処理回路18は、静電容量タッチセンサの作動に応答するものではなく、静電容量タッチセンサと通信するものでもない点。

2 判断
上記相違点について検討する。
(1)引用発明の課題は、引用文献1の段落【0006】に記載されている「ハーフミラーの向きに対応させてディスプレイに表示される画像を変更可能とした車両用画像表示装置を提供する」ことである。ここで上記「ハーフミラーの向き」とは、同段落【0005】の「ドライバーの好みによって、ドライバーがハーフミラーに直接映って見える像の範囲を変えたとしても、車載用カメラにより撮影された画像をそのディスプレイに表示させたときには、そのハーフミラーによりドライバーに対して直接映って見える像とは異なる画像が表示され、ドライバーに違和感を与える。」との記載によれば、ドライバーの好みによって、ドライバーがハーフミラーに直接映って見える像の範囲を変えた時の「ハーフミラーの向き」である。
そうすると、上記課題に照らせば、引用発明は、ドライバーの意志によってハーフミラーの向きが変更された時に、「前記ハーフミラー9の向きに応じてその向きのときに該ハーフミラー9によりドライバー4に対して直接映って見える像に対応する矩形状領域内の画像が前記ディスプレイ10に表示」するものと理解できるから、「ハーフミラーの向き」がドライバーの意志によるものであるか否かを判別すること、つまり、操作者の意志に反した誤動作を防止することは、上記課題を解決する上で、内在しているものといえる。

(2)引用文献2には、上記「第4 2」で述べたように、以下の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されている。
「ハウジングと、該ハウジングに取付けたミラーと、車内の運転者または乗客から見えるように配置された視覚的ディスプレイと、ミラーと車両間のピボット接続部とを備えている自動車両用のバックミラー組立体において、
前記ハウジングに容量性タッチ・スイッチである近接センサを備えてること。」
ここで、引用文献2に記載された技術的事項の「ハウジング」、「ミラー」、「視覚的ディスプレイ」、「ピボット接続部」及び「自動車両用のバックミラー組立体」は、引用発明の「ハウジング8」、「ハーフミラー9」、「ディスプレイ10」、「球状ピポット部7」及び「インナーミラー3」に対応する。

(3)引用文献4には、上記「第4 3」の記載事項によれば、「確実な操作入力を行うために、加速度センサと、操作入力手段としてのタッチセンサとを有し、前記加速度センサ及びタッチセンサがオン状態であることを感知して、操作入力する操作入力装置。」が記載され、引用文献5には、上記「第4 4」の記載事項によれば、「誤動作によるシグナルライトの点灯を防止するために、操作レバーのレバー操作部位に配置され、操作入力を検出する静電容量式センサであるタッチセンサと、前記タッチセンサ及び方向指示スイッチに接続され、前記スイッチ動作が行われる場合に前記タッチセンサによるセンサ信号の検出有無を判定し、この判定結果に基づいて左シグナルライト又は右シグナルライトを点灯するための制御信号を出力する制御部とを備えたレバースイッチ装置。」が記載されている。
上記引用文献4及び5の技術的事項から、操作者の意志に反した誤動作を防止するために、操作部に配置された静電容量式等のタッチセンサの検出信号を受けて、該操作部の操作信号を有効とすることは、周知・慣用技術といえる。
ここで、上記周知・慣用技術の「操作部」は、引用発明の「ハウジング8」と一体である「ハーフミラー9」に対応し、上記周知・慣用技術の「該操作部の操作信号を有効とすること」は、引用発明の「ハーフミラー9の向きに応じてその向きのときに該ハーフミラー9によりドライバー4に対して直接映って見える像に対応する矩形状領域内の画像が前記ディスプレイ10に表示」することに対応する。

(4)上記(1)で述べたように、引用発明は、操作者の意志に反した誤動作を防止するという課題が内在しているから、引用発明に(3)で述べた周知・慣用技術を参考にして、操作者の意志に反した誤動作を防止する構成を付加する動機付けは十分に存在する。また、(2)で述べたように、引用文献2には、引用発明と同様に「ハウジング」、「ハーフミラー」、「ディスプレイ」、及び「球状ピポット部」を備える「インナーミラー」において、ハウジングに容量性タッチ・スイッチである近接センサを備えることが開示されているから、引用発明に誤動作を防止する構成を付加する際に、静電容量式等のタッチセンサとして、引用文献2に記載された技術的事項の「容量性タッチ・スイッチである近接センサ」を採用し、引用発明の「インナーミラー3」において、ハウジング8に配置された少なくとも1つの容量性タッチ・スイッチである近接センサを備える構成とし、「処理回路18」を、ハウジング8に配置された容量性タッチ・スイッチである近接センサの検出信号を受けて、ハウジング8と一体であるハーフミラー9の向き(姿勢検出センサにより検知)に応じてその向きのときに該ハーフミラー9によりドライバー4に対して直接映って見える像に対応する矩形状領域内の画像が前記ディスプレイ10に表示されるように構成すること、そして、上記相違点に係る本願発明の構成に倣うと、「処理回路18」を、姿勢検出センサにより検知された前記ハウジング8の動きに応答して、及び、前記少なくとも1つの容量性タッチ・スイッチである近接センサの作動に応答して、ハーフミラー9の向きに応じてその向きのときに該ハーフミラー9によりドライバー4に対して直接映って見える像に対応する矩形状領域内の画像が前記ディスプレイ10に表示されるように、前記少なくとも1つの容量性タッチ・スイッチである近接センサ、前記姿勢検出センサ及び前記ディスプレイ10と通信するように構成することは、当業者であれば適宜になし得ることである。
したがって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知・慣用技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものといえる。

(5)本願発明の効果について
本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知・慣用技術から当業者が予測し得る範囲のものといえ、格別顕著なものということはできない。

(6)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知・慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲
 
審理終結日 2020-02-18 
結審通知日 2020-02-25 
審決日 2020-03-09 
出願番号 特願2017-534956(P2017-534956)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 武大三宅 龍平菅 和幸  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 藤井 昇
島田 信一
発明の名称 調節可能な視野表示を有する車両用視界システム  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 須田 洋之  
代理人 山本 泰史  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 松下 満  

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