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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61H
管理番号 1364523
審判番号 不服2019-9509  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-17 
確定日 2020-08-18 
事件の表示 特願2017-152553「マッサージ機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日出願公開、特開2017-192861、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月31日に出願した特願2012-190770号の一部を、平成28年3月1日に新たな特許出願とした特願2016-039172号の一部を、平成29年8月7日に新たな特許出願としたものであって、平成29年8月7日付けで手続補正がされ、平成30年5月8日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年6月21日付けで手続補正がされ、平成30年10月16日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年12月4日付けで手続補正がされ、令和元年5月10日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和元年7月17日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1. 特開2009-285074号公報
2. 特開2001-029413号公報

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成30年12月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、以下に示すとおりのものである。

「【請求項1】
人体の大腿を支持する座部と、人体の左右の下腿をそれぞれ収容する下腿収容部を有したオットマンを備えたマッサージ機であって、
前記座部の左右両外側部に、膨張収縮して人体の大腿の外側部をマッサージする大腿外側エアバッグを有するとともに、
前記オットマンの下腿収容部に、膨張収縮して人体の下腿の内側部をマッサージする下腿内側エアバッグを少なくとも有し、
前記大腿外側エアバッグからのエア開放が開始してから所定時間が経過する時までは前記下腿内側エアバッグからエアを開放しないように制御する
マッサージ機。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る椅子型マッサージ機について、図面を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る椅子型マッサージ機の全体構成を示す斜視図である。この図1に示すように、椅子型マッサージ機1は、被施療者が着座する座部2と、被施療者の上半身を後方から支持する背凭れ部3と、被施療者の腕部を支持するアームレスト4と、被施療者の脚部を支持するフットレスト5とから主として構成されている。」

「【0029】
座部2の両側部の上方には、前後に並設されたエアセル7b,7bが設けられており、給排気装置51からの給気により何れも左右方向の中心側へ向かって膨張する。このようなエアセル7bは、膨縮することによって、座部2に着座した被施療者の臀部(又は腰部)の側部から大腿部の前側部に至る一連の部位を外側方から内側へ向かって押圧可能であり、左右のエアセル7bを同時に膨張することによって臀部(又は腰部)を左右から挟持するようにして保持可能になっている。」

「【0034】
図1に示すように、フットレスト5にも複数のエアセル7i-7oが設けられている。具体的には、上側フットレスト14において脹脛の背面に対向する位置にはエアセル7iが上下に2つ設けられ、脹脛の外側面に対向する位置にはエアセル7jが上下に2つ設けられ、脹脛の内側面に対向する位置には上下方向に長寸のエアセル7kが1つ設けられている。これらのエアセル7i-7kにより、被施療者の脹脛の後方及び両側方から押圧可能になっている。」

したがって、上記引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「被施療者が着座する座部2と、被施療者の脚部を支持するフットレスト5とを備えた椅子型マッサージ機1であって、座部2の両側部の上方には、膨縮することによって、座部2に着座した被施療者の臀部の側部から大腿部の前側部に至る一連の部位を外側方から内側へ向かって押圧可能なエアセル7b,7bが設けられており、フットレスト5の上側フットレスト14の脹脛の内側面に対向する位置には上下方向に長寸のエアセル7kが設けられているマッサージ機1。」(以下、「引用発明」という。)

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明を実施の形態の一例に基づいて詳述すると、図示例のマッサージ機は、座部6とリクライニング自在とされている背もたれ8と、アームレストを兼ねたフレーム7とからなる椅子型のもので、その背もたれ8内には指圧マッサージを行うマッサージ手段(図示せず)を内蔵している。また、座部6の前方には脚載せ台4が配設されている。この脚載せ台4は、椅子のフレーム7にレイジィトング機構である伸縮機構5を介して取りつけられたもので、不使用時には伸縮機構5を縮めることで、座部6の下方に収納してしまうことができるようになっている。
【0011】そして、座部6の上面の前端寄りの左右には、それぞれ大腿部のマッサージ用の空気袋2,2を配置し、座部6の上面の後端寄りの左右には、それぞれ臀部のマッサージ用の空気袋3,3を配置し、脚載せ台4にはふくらはぎ部のマッサージ用の空気袋1,1をそれぞれ配置してある。
【0012】ここで、脚載せ台4に設けた空気袋1,1は、脚載せ台1のフレームから吊り下げられることで断面U字形をなすものとなっており、その凹溝部分にふくらはぎ部を納めて空気袋1を膨張させれば、ふくらはぎ部は左右から圧迫されるものとなっている。
【0013】そして、これら空気袋1,2,3は、給排気手段9にチューブ10で接続されて、給排気手段9によってその膨張収縮がなされるようにしているのであるが、この時、これら空気袋1,2,3に対する給排気は、図3に示すタイミングで行われるように(図中○は給気、△は保持、×は排気)してある。
【0014】すなわち、まず脚載せ台4の空気袋1を膨張させ、次いで大腿部用の空気袋2を膨張させ、その後、臀部用の空気袋3を膨張させ、最後に全空気袋1,2,3を収縮させるのである。膨張させた空気袋1,2は、最後の同時収縮の時点まで膨張状態を維持するようにしてある。これは、空気袋1,2,3の膨張が静脈内の血液を心臓に向かう方向へ送ることができるようにしているためである。」

「【0017】図4及び図5に他例を示す。ここでは座部6に配した2個の空気袋3,3を人体の大腿部から臀部にかけての部分に接して膨張時に下方から押圧するものとしてあり、またこれら空気袋3,3の両側には膨張時に人体の大腿部から臀部にかけての部分を側方から押圧することになる空気袋30,30を配してある。なお、空気袋30,30の外側面には硬質合成樹脂等からなるバックアッププレート31を配してあり、該空気袋30,30は、上記空気袋3,3と同時に、あるいは少しだけ早く膨張するように給排気タイミングを設定してある。図5中のMは背もたれ8内を背もたれに沿って上下移動自在となっているマッサージ機構、Cは操作器である。」

したがって、上記引用文献2には、
「ふくらはぎ部のマッサージ用の空気袋1,1と、大腿部のマッサージ用の空気袋2,2と、臀部のマッサージ用の空気袋3,3と、人体の大腿部から臀部にかけての部分を側方から押圧することになる空気袋30,30とを備えたマッサージ機において、脚載せ台4の空気袋1を膨張させ、次いで大腿部用の空気袋2を膨張させ、その後、臀部用の空気袋3を膨張させ、最後に全空気袋1,2,3を収縮させるように給排気タイミングが設定されており、空気袋30,30は、上記空気袋3,3と同時に、あるいは少しだけ早く膨張するように給排気タイミングを設定してあるマッサージ機。」という技術的事項(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「座部2」は、本願発明における「座部」に相当する。以下、同様に、引用発明における「フットレスト5」は、「オットマン」に、「椅子型マッサージ機1」は「マッサージ機」に相当する。
さらに、引用発明における「座部2」は、その機能から見て「人体の大腿を支持」しているものといえる。そして、引用発明における「フットレスト5」は、人体の左右の下腿をそれぞれ収容する下腿収容部を有しているといえる。
次に、「エアセル7b,7b」に関し、「座部2の両側部の上方」との記載より、「エアセル7b,7b」が設けられている位置は、「座部2の左右両外側部」であって、「膨縮することによって、座部2に着座した被施療者の臀部の側部から大腿部の前側部に至る一連の部位を外側方から内側へ向かって押圧可能」との記載より、「エアセル7b,7b」は、「膨張収縮して人体の大腿の外側部をマッサージする」ものであるといえる。したがって、引用発明における「座部2に着座した被施療者の臀部の側部から大腿部の前側部に至る一連の部位を外側方から内側へ向かって押圧可能なエアセル7b,7b」は、本願発明における「膨張収縮して人体の大腿の外側部をマッサージする大腿外側エアバッグ」に相当する。
そして、「エアセル7k」に関し、「フットレスト5の上側フットレスト14の脹脛の内側面に対向する位置」との記載から、「エアセル7k」が設けられている位置は、「フットレスト5の下腿収容部」であって、「エアセル7k」は、「膨張収縮して人体の下腿の内側部をマッサージする」ものであるといえる。したがって、引用発明における「上下方向に長寸のエアセル7k」は、本願発明1における「膨張収縮して人体の下腿の内側部をマッサージする下腿内側エアバッグ」に相当する。

してみると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「人体の大腿を支持する座部と、人体の左右の下腿をそれぞれ収容する下腿収容部を有したオットマンを備えたマッサージ機であって、
前記座部の左右両外側部に、膨張収縮して人体の大腿の外側部をマッサージする大腿外側エアバッグを有するとともに、
前記オットマンの下腿収容部に、膨張収縮して人体の下腿の内側部をマッサージする下腿内側エアバッグを少なくとも有したマッサージ機。」

(相違点)
本願発明1においては、大腿外側エアバッグからのエア開放が開始してから所定時間が経過する時までは下腿内側エアバッグからエアを開放しないように制御するのに対し、引用発明においては、そのような制御を行っていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。「第4 引用文献、引用発明等」の「2.引用文献2について」に記載のとおり、引用文献2には、「ふくらはぎ部のマッサージ用の空気袋1,1と、大腿部のマッサージ用の空気袋2,2と、臀部のマッサージ用の空気袋3,3と、人体の大腿部から臀部にかけての部分を側方から押圧することになる空気袋30,30とを備えたマッサージ機において、脚載せ台4の空気袋1を膨張させ、次いで大腿部用の空気袋2を膨張させ、その後、臀部用の空気袋3を膨張させ、最後に全空気袋1,2,3を収縮させるように給排気タイミングが設定されており、空気袋30,30は、上記空気袋3,3と同時に、あるいは少しだけ早く膨張するように給排気タイミングを設定してあるマッサージ機。」という技術的事項が記載されている。
しかしながら、引用文献2の段落【0013】、【0014】、【0017】、【図3】から把握されるように、空気袋1,2,3,30の給気のタイミングを異ならせることは記載されているものの、膨張後のエア開放のタイミングについては、【図3】の排気を示す「×」印から把握されるように、空気袋1,2,3の間で同じタイミングであると認められる。また、ふくらはぎ部のマッサージ用の空気袋1,1の排気タイミングと大腿部を側方から押圧する空気袋30,30の排気タイミングとの関係は、何等記載されていない。してみると、引用発明において、仮に、引用文献2に記載の技術的事項を適用したとしても、「大腿外側エアバッグからのエア開放が開始してから所定時間が経過する時までは下腿内側エアバッグからエアを開放しないように制御」するものとはならない。また、「大腿外側エアバッグからのエア開放が開始してから所定時間が経過する時までは下腿内側エアバッグからエアを開放しないように制御」する制御手法が、本願出願前に周知の制御手法であったと言える証拠も見当たらない。
そして、本願発明1は、「大腿外側エアバッグからのエア開放が開始してから所定時間が経過する時までは下腿内側エアバッグからエアを開放しないように制御」することにより、大腿外側エアバッグからのエア開放が開始してから所定時間が経過するまでの間、下腿の内側を強固に支え続けることができるという本願明細書記載の効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-07-22 
出願番号 特願2017-152553(P2017-152553)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 智弥  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 倉橋 紀夫
宮崎 基樹
発明の名称 マッサージ機  
代理人 特許業務法人 佐野特許事務所  

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