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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1364573 |
審判番号 | 不服2018-14687 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-05 |
確定日 | 2020-07-30 |
事件の表示 | 特願2014-549104「一様白色光拡散性ファイバ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月27日国際公開、WO2013/095982、平成27年 4月 9日国内公表、特表2015-510603〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年12月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年12月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 平成26年 8月19日 :国際出願翻訳文提出書 平成27年11月19日 :出願審査請求書の提出 平成28年10月17日付け:拒絶理由通知(同年10月25日発送) 平成29年 1月24日 :期間延長請求書の提出(2ヶ月) 同年 3月24日 :誤訳訂正書・意見書の提出 同年 7月24日付け:拒絶理由通知(同年8月1日発送) 同年11月 1日 :期間延長請求書の提出(2ヶ月) 平成30年 1月 4日 :意見書の提出 同年 6月28日付け:拒絶査定(同年7月3日送達) 同年11月 5日 :審判請求書の提出 令和元年10月16日付け:拒絶理由通知(同年10月23日発送。 以下「当審拒絶理由」という。) 令和2年 1月22日 :期間延長請求書の提出(1ヶ月) 同年 2月25日 :手続補正書・意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和2年2月25日付けの手続補正により補正された請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 白色光を放射するための光拡散性ファイバにおいて、 a.シリカ系ガラスで作製されたコア、 b.前記コアと直に接しているクラッド層、 c.前記クラッド層に直に接している散乱層、及び d.前記散乱層を囲んで前記散乱層に直に接している発光体層、を有し、 前記放射光の色が、CIE1931x,y色度空間で測定して、約0.20から約0.30のx及び約0.175から約0.205のyを有し、当該x,yは前記光拡散性ファイバの方向に対して10°から170°の角度で当該光拡散性ファイバから放射される光に対して±30%を超えて変化しない、ことを特徴とする光拡散性ファイバ。」(なお、下線は、当審で付したものである。以下同じ。) 第3 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献 (1)当審拒絶理由において引用した、特開2010-56003号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 第1レーザ光源と、 前記第1レーザ光源から放射された第1光の光軸に沿って設けられ、前記第1光から、前記第1光の光軸方向とは異なる方向に出射する第2光を発生させ、前記第1光の強度が低い部分では前記強度が高い部分に比べて、前記第1光から前記第2光を発生させる比率を高める第1拡散部と、 前記第1拡散部に沿って設けられ、前記第2光を吸収し、前記第2光とは異なる波長の第3光を放出する第1波長変換部と、 を備えたことを特徴とする発光装置。」 イ 「【0007】 本発明は、高光度で色のむらを抑制し、白色光を発光できる発光装置及び照明装置を提供する。」 ウ 「【0012】 (第1の実施の形態) 図1は、本発明の第1の実施形態に係る発光装置の構成を例示する模式図である。 すなわち、同図(a)は模式的斜視図であり、同図(b)は同図(a)のA-A’線断面図であり、同図(c)はB-B’線断面図である。 図1(a)に表したように、本発明の第1の実施形態に係る発光装置110は、第1レーザ光源11と、前記第1レーザ光源11から放射された第1光11aの光軸に沿って設けられ、前記第1光11aから、前記第1光11aの光軸方向とは異なる方向に出射する第2光11bを発生させる第1拡散部12と、前記第1拡散部12に沿って設けられ、前記第2光11bを吸収し、前記第2光11bとは異なる波長の第3光を放出する第1波長変換部13と、を備える。 【0013】 そして、第1拡散部12においては、前記第1光11aの強度が低い部分では前記強度が高い部分に比べて、前記第1光11aから前記第2光11bを発生させる比率を高める。例えば、第1拡散部12においては、前記第1光11aから前記第2光11bを発生させる比率を、前記レーザ光源11から近い位置よりも遠い位置で高める。 【0014】 ここで、図1に表したように、第1レーザ光源11から出射された第1光11aの光軸方向をX軸方向とする。そして、X軸方向に対して垂直な方向をY軸とし、X軸とY軸とに対して垂直な方向をz軸とする。そして、X軸、Y軸及びZ軸の交点である原点は、第1光11aの輝度の中心点とする。 【0015】 図2は、本発明の第1の実施形態に係る発光装置に用いられる拡散部の構成を例示する模式図である。 すなわち、同図(a)は模式的斜視図であり、同図(b)は同図(a)のA-A’線断面図である。 図2(a)、(b)に表したように、第1拡散部12には、例えば、円柱状の形状のガラスや樹脂の棒状構造体12aを用いることができる。ただし、後述するように、本発明はこれには限らず、第1拡散部12には、各種の構造及び材料によることができる。以下では、説明のため、まず、第1拡散部12が、棒状構造体12aを有する場合として説明する。 第1拡散部12においては、棒状構造体12aの壁に、例えば、拡散体12bとして、散乱性の微粒子が、例えば塗布法によって、設けられている。 【0016】 …… 【0022】 この時、第1波長変換部13においては、第2光11bを吸収して、可視光の各波長を有する第3光11cを放出するようにできる。例えば、第1波長変換部13は、第2光11bを吸収し、異なる波長を放出する異なる種類の蛍光体を含むことができ、これにより、所望の色あいの光を放出することができる。すなわち、第3光11cとして、白色光を放出することができる。」 エ 「【0031】 本実施形態に係る発光装置110において、第1レーザ光源11には、例えば、半導体レーザ発光素子を用いることができる。この時、第1波長変換部13の蛍光体を励起して、第3光11cとして白色光を得るためには、紫外領域から青色領域の波長の半導体レーザ発光素子が好ましい。そして、高出力、高いエネルギー変換効率を考慮するとGaNなどの窒化物系半導体を用いた半導体レーザ発光素子が特に好ましい。 【0032】 そして、人体への影響を考慮すると紫外線を発しない、青紫色領域から青色領域に発光を有する半導体レーザ発光素子を用いることがさらに望ましい。 【0033】 すなわち、第1レーザ光源11の発光波長は、380nmから480nmに発光ピーク波長をもつことができる。 そして、前記第1レーザ光源11においては、350nm以下の光の強度が実質的に0とすることができる。 【0034】 …… 【0040】 第1波長変換部13には、各種の蛍光体を用いることができる。例えば、発光装置110の出射光(第3光11c)を所望の色、例えば白色とし、また、各種の色あいの調整のために、複数の蛍光体を用いることができる。第1波長変換部13において用いられる蛍光体の少なくとも一部は、第1光11aから進路が変換された第2光11bの波長領域の光を波長変換できる蛍光体を用いることができる。」 オ 第1の実施形態に関する図1及び図2は、以下のものである。 図1 ![]() 図2 ![]() (2)引用文献に記載された発明 ア 上記(1)ア及びイの記載からして、引用文献には、 「高光度で色のむらを抑制し、白色光を発光できる発光装置であって、 第1レーザ光源と、 前記第1レーザ光源から放射された第1光の光軸に沿って設けられ、前記第1光から、前記第1光の光軸方向とは異なる方向に出射する第2光を発生させ、前記第1光の強度が低い部分では前記強度が高い部分に比べて、前記第1光から前記第2光を発生させる比率を高める第1拡散部と、 前記第1拡散部に沿って設けられ、前記第2光を吸収し、前記第2光とは異なる波長の第3光を放出する第1波長変換部と、を備えた、発光装置。」が記載されているものと認められる。 イ 上記(1)ウの記載を踏まえて、図1及び図2を見ると、以下のことが理解できる。 (ア)上記アの「第1拡散部」は、「円柱状ガラス」又は「樹脂の棒状構造体」の表面に、散乱性の微粒子を塗布したものであってもよいこと。 以下、「散乱性微粒子層」という。 (イ)上記アの「第1波長変換部」は、散乱性微粒子層の上に形成された蛍光体の層であってもよいこと。 以下、「蛍光体層」という。 ウ 上記(1)エの記載からして、以下のことが理解できる。 (ア)上記アの「第1レーザ光源」は、380nmから480nmに発光ピーク波長をもつもの、例えば、「青色レーザ光源」であってもよいこと。 (イ)発光装置の第3光(出射光)は、白色に限らず、所望の色にできること。 エ 上記アないしウからして、上記アの「発光装置」は、具体的には、以下の構成を有することが理解できる。 「高光度で色のむらを抑制し、白色光を発光できる発光装置であって、 青色レーザ光源と、 円柱状ガラスと、 前記円柱状ガラスの表面に塗布された散乱性微粒子層と、 前記散乱性微粒子層の上に形成された蛍光体層と、 を備えた発光装置。」 オ 上記エからして、引用文献には、 「青色レーザ光源」と「表面に『散乱微粒子層』及び『蛍光体層」を有する円柱状ガラス」とを組合わせた発光装置が記載されているものと認められる。 そうすると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「青色レーザ光源と組合わせることにより、高光度で色のむらを抑制し、白色光を発光できる発光体であって、 円柱状ガラスと、 前記円柱状ガラスの表面に塗布された散乱性微粒子層と、 前記散乱性微粒子層の上に形成された蛍光体層と、を備えた発光体。」 第4 対比・判断 1 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「散乱性微粒子層」は、本願発明の「散乱層」に相当する。 以下、同様に、 「散乱性微粒子層の上に形成された蛍光体層」は、「散乱層を囲んで散乱層に直に接している発光体層」に相当する。 (2)引用発明の「青色レーザ光源と組合わせることにより、高光度で色のむらを抑制し、白色光を発光できる発光体」と本願発明の「白色光を放射するための光拡散性ファイバ」とは、「白色光を放射するための発光体」である点で一致する。 (3)引用発明の「円柱状ガラス」と本願発明の「シリカ系ガラスで作製されたコア」とは、「ガラスで作製された円筒部」である点で一致する。 (4)引用発明の「白色光」が、CIE1931x,y色度空間で測定して、所定のx及び所定のyを有することは明らかである。 (5)以上のことから、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「白色光を放射するための発光体において、 ガラスで作製された円筒部と、 前記円筒部の表面に直に接している散乱層、及び 前記散乱層を囲んで前記散乱層に直に接している発光体層、 を有し、 前記放射光の色が、CIE1931x,y色度空間で測定して、所定のx及び所定のyを有する、発光体。」 (7)一方、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1> 円筒部及び発光体に関して、 本願発明は、 ア 「(円筒部は)シリカ系ガラスで作製されたコアと、前記コアと直に接しているクラッド層を有し」、 イ 「(発光体は)光拡散性ファイバ」であるのに対して、 引用発明は、そのようなものではない点。 <相違点2> 放射光の色に関して、 本願発明は、「CIE1931x,y色度空間で測定して、約0.20から約0.30のx及び約0.175から約0.205のyを有し」ているのに対して、 引用発明は、不明である点。 <相違点3> 本願発明は、「(CIE1931x,y色度空間の)当該x,yは光拡散性ファイバの方向に対して10°から170°の角度で当該光拡散性ファイバから放射される光に対して±30%を超えて変化しない」のに対して、 引用発明は、不明である点。 2 判断 (1)上記<相違点1>について検討する。 ア 引用発明の「円柱状ガラス」に関連して、引用文献の【0015】に「…本発明はこれには限らず、第1拡散部12には、各種の構造及び材料によることができる。」と記載されているところ、 白色光を放射する側面発光性光ファイバーは、下記の文献に記載されているように、当業者によく知られていることである(以下「周知技術」という。)。 国際公開第2011/063214号(図2) 特表2011-528904号公報(図2) 特開2002-202415号公報(【要約】) 特開2002-148442号公報(【要約】) 特開昭58-208708号公報(特許請求の範囲) 実願昭55-105338号(実開昭57-28409号)のマイクロフィルム(実用新案登録請求の範囲) ちなみに、国際公開第2011/063214号の図2は、以下のものである。 ![]() 12…光拡散光ファイバ 20…コア領域(シリカを主成分とする) 31…ガラス 32…空孔 40…クラッド領域 44…光学被膜(燐光体、色素、蛍光材料又は散乱材料) 48…側面 イ してみると、引用発明の「円柱状ガラス」に代えて、例えば、国際公開第2011/063214号の図2に示されたような「コア領域とクラッド領域を有する光ファイバ」を利用することは、当業者が容易になし得ることである。 その際、コア材料として「シリカ系ガラス」を採用することは設計事項である。 ウ 以上のことから、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を備えることは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。 (2)次に、上記<相違点2>について検討する。 ア まず、「放射光の色が、CIE1931x,y色度空間で測定して、約0.20から約0.30のx及び約0.175から約0.205のyを有する」の技術的意義について、本願明細書の記載を参酌して検討する。 (ア)本願明細書には、以下の記載がある。 「【技術分野】 【0002】 本明細書は全般には照明用途に用いるための光拡散性光ファイバに関し、さらに詳しくは、角度に依存しない一様なカラーグラデーションを有する光拡散性光ファイバに関する。本明細書にはそのようなファイバを作製する方法も開示される。 【背景技術】 【0003】 ファイバの長さに沿い、光を径方向に外向きに伝搬させ、よってファイバを照明することを可能にする光ファイバは、特殊照明及び光化学のような多くの用途に対し、また電子デバイス及びディスプレイデバイスにおける使用に対して、特に有用であることがわかっている。」 「【0032】 いくつかの実施形態において、光拡散性ファイバの出力は散乱された入射UV光と、白く見える光特性を有する複合光を生じるように発光材料から散乱された蛍光または燐光の組合せを含む。いくつかの実施形態において、複合光はCIE1931x,y色度空間(…省略…)のx軸及びy軸に関して測定したときに、約0.15?約0.25のx座標及び約0.20?約0.30のy座標を有する。いくつかの実施形態において、複合光はCIE1931x,y色度空間において約0.18?約0.23,あるいは約0.15,0.16,0.17,0.18,0.19,0.20,0.21,0.22,0.23,0.24または0.25のx座標を有する。いくつかの実施形態において、複合光はCIE1931x,y色度空間において約0.23?約0.27,あるいは約0.20,0.21,0.22,0.23,0.24,0.25,0.26,0.27,0.28,0.29または0.30のy座標を有する。」 (イ)上記記載からして、 本願発明は、一般的な照明だけではなく、特殊照明や光化学反応等の用途に用いられることは理解できるものの、上記領域に設定する具体的な理由は特段記載されていない。 なお、用途に応じて波長(色)を変更する必要のあることは、当然のことである(必要ならば、上記「周知技術」で例示した特表2011-528904号公報を参照。当該公報の請求項1には「生物学的材料にとって感受性の波長を有する光を発生する光源」と記載されている。)。 イ 一方、引用文献の【0040】には「第1波長変換部13には、各種の蛍光体を用いることができる。例えば、発光装置110の出射光(第3光11c)を所望の色、例えば白色とし、また、各種の色あいの調整のために、複数の蛍光体を用いることができる。」と記載されていることから、 引用発明において、「蛍光体層」の蛍光体の種類を適宜変更し、「青色レーザ光源」と組合わせることにより、各種の色合いの光を発光させることは、色度図等を参考にして、当業者が容易になし得ることである。 例えば、下記の色度図を参照(特開2008-311532号公報の図19)。 ![]() その際、「約0.20から約0.30のx及び約0.175から約0.205のy」の青紫成分の強い色合いとすることは、用途に応じて適宜なし得ることである。 ウ 以上のことから、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を備えることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)最後に、上記<相違点3>について検討する。 ア まず、「当該x,yは光拡散性ファイバの方向に対して10°から170°の角度で当該光拡散性ファイバから放射される光に対して±30%を超えて変化しない」の技術的意義について、本願明細書の記載を参酌して検討する。 (ア)本願明細書には、以下の記載がある。 a 「【背景技術】 【0003】 ファイバの長さに沿い、光を径方向に外向きに伝搬させ、よってファイバを照明することを可能にする光ファイバは、特殊照明及び光化学のような多くの用途に対し、また電子デバイス及びディスプレイデバイスにおける使用に対して、特に有用であることがわかっている。しかし、光拡散性ファイバ(LDF)の現行構造には多くの問題がある。現行構造にともなう問題の1つは、白色LEDのような、光源からの青色光がダウンコンバート発光体と混合される高lm/Wの場合には特に、ファイバからの異なる光色の角度分布が視角に依存して変わり得ることである。光拡散性ファイバにともなう別の問題は、ファイバのコアは透明であるが、(ガラス系ファイバには必須要件である)被覆が強い吸収を有する、紫外波長領域におけるファイバの使用にともなう困難さである。被覆におけるUV光トラッピングは光拡散性ファイバからの光取出し効率が低いことを意味し、さらに、高強度UV露光により被覆が劣化し得るであろう。」 b 「【0016】 白色光ファイバ 光拡散性ファイバにおいて、散乱の主要成分は、5°?10°に近い、小角度にある(図1Bの角度170または図2Bの角度270を参照のこと)。したがって、(一般には被覆内の)発光体からの黄色光が入射青色光と混合される場合、得られる色は視角に依存する。これは、発光体の発光による黄色光は(角度170に依存せず)角度空間においてほとんど一様であるが、青色光は(散乱後でさえ)強い小角度成分を有するためである。これらの2つの事実の結果、小視角では青色が支配的であって、90°より大きい角度ではほとんどが黄色である、色の非対称性が生じる。実施形態は、光拡散性ファイバにおける散乱光を一様化して視角の関数としての色が一様な光を提供することにより、これらの問題を解決する。」 c 「【0027】 いくつかの実施形態において、散乱材料は、光拡散性光ファイバ100のコア領域110から散乱された光の角度無依存分布を与える、白色インクのような、TiO_(2)系粒子を含有することができる。いくつかの実施形態において、散乱粒子は散乱層内のサブレイヤーを含む。例えば、いくつかの実施形態において、粒子サブレイヤーは約1μm?約5μmの厚さを有することができる。別の実施形態において、粒子層の厚さ及び/または散乱層内の粒子の濃度は、大角度(すなわち、約15°より大きな角度)において、光拡散性光ファイバ100から散乱される光の強度の一層一様な変化を与えるように、ファイバの軸長に沿って変えることができる。」 d 「【0031】 図1Bを参照すれば、図示される実施形態において、非散乱光は矢印150で示される方向に光源から光拡散性ファイバ100内を伝搬する。ファイバの方向と散乱光が光拡散性ファイバ100を出るときの散乱光の方向の間の角度差を表す、角度170にある矢印160にしたがって光拡散性ファイバを出る散乱光が示されている。いくつかの実施形態において、光拡散性ファイバ100のUV-可視スペクトルは角度170に依存しない。いくつかの実施形態において、角度170が15°及び150°であるときのスペクトル強度は、ピーク波長で測定して、±30%内にある。いくつかの実施形態において、角度170が15°及び150°であるときのスペクトル強度は、ピーク波長で測定して、±20%、±15%、±10%または±5%内にある。」 e 「【0033】 いくつかの実施形態において、CIE1931x,y色度空間のx座標及びy座標は、角度170が約10°?170°である場合に、角度170に関して±30%より大きくは変化しない。いくつかの実施形態において、15°及び150°の角度170におけるCIE1931x,y色度空間のx座標及びy座標の値はそれぞれ、±30%、±25%、±20%、±15%、±10%または±5%内にある。」 f 図1A及び図1Bは、以下のものである。 図1A ![]() 図2B ![]() 100…光拡散性光ファイバ 110…コア領域 120…クラッド層 130…散乱層 140…発光体層 (イ)上記記載からして、以下のことが理解できる。 a 従来の(現行構造の)光拡散性ファイバ(LDF)の場合、散乱の主要成分は、5°?10°に近い、小角度にあることから、得られる色は視角に依存し、小視角では青色が支配的となり、90°より大きい角度ではほとんどが黄色となり、色の非対称性が生じること。 b 白色インクのような、TiO_(2)系粒子の散乱材料は、拡散性光ファイバのコア領域から散乱された光の角度無依存分布を与え、 図2Bにおいて「170」で示される角度について、10°?170°の範囲内で、「CIE1931x,y色度空間のx座標及びy座標」のそれぞれの座標値の変化の割合を±30%以内にできること(つまり、色の非対称性が生じないこと。)。 (ウ)そうすると、 上記、「当該x,yは……±30%を超えて変化しない」との構成は、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本願発明の構成を備えることで、自ずと備えるものと解されるところ、 上記(1)及び(2)のとおり、引用発明において、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本願発明の構成を備えることは、当業者が容易になし得たことであり、これに伴い、上記<相違点3>に係る構成も備わるものといえる。 イ 仮に、自ずと備えるものでないとしても、 引用発明は、そもそも、「高光度で色のむらを抑制し、白色光を発光できる発光体」であるから、例えば、国際公開第2011/063214号の図2に示されたような「コア領域とクラッド領域を有する光ファイバ」を採用した際においても、その表面に塗布する「散乱性微粒子層」及び「蛍光体層 」の粒径や濃度などを調整することで、色のむらを抑制し、「CIE1931x,y色度空間のx座標及びy座標」のそれぞれの座標値の変化を極力小さく、つまり、色の非対称性が生じないようにすることは、当業者が当然に行うことであり、上記<相違点3>に係る構成とすることに、何ら困難性は認められない。 ウ 以上のことから、引用発明において、上記<相違点3>に係る本願発明の構成を備えることは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。 (4)効果 本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び上記周知技術の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。 3 令和2年2月25日提出の意見書における主張 請求人は、意見書において、以下のように主張していることから、この点について検討する。 「本願請求項1で請求されている光拡散性ファイバは、その請求されている構造により、上記問題に対処するものであり、請求されているCIE1931 x、y色度空間によって定義される実質的に均一な白色光を生成するものであります。 引用文献および周知技術を開示するものとして引用された文献のいずれにおいても、光拡散性ファイバの色に関する角度均一性について開示していません。」(第3頁上段ないし中段)。 (1)しかしながら、本願発明は、「光拡散性ファイバ」という物に関する発明であるから、請求項1には、物の構造を特定するために必要な事項が記載されているものと解されるところ、後段に記載された「当該x,yは前記光拡散性ファイバ…±30%を超えて変化しない」は、放射される光の特性に関するものであって、構造に関するものではない。 そうすると、請求項1の後段に記載された「当該x,yは前記光拡散性ファイバ……±30%を超えて変化しない」は、その前段に記載された発明特定事項を備えることで奏される効果であると解される。 (2)このことは、審判請求書において、 ア 「散乱層と発光体層の組合せは、視野角に依存しないファイバからの光放射を与えます。」(第2頁中段) イ 「本願明細書は、視野角に依存しない均一の白色光を得るために、散乱層と蛍光体層との組み合わせ(特に、『クラッド層に直に接している散乱層』と『前記散乱層を囲んで前記散乱層に直に接している発光体層』という組合せ)が要求されることを開示し、さらに最善の結果が得られた場合の変数の設定についても明確に開示しています。」(第2頁下段) ウ 「請求項1に記載されたxおよびyの色度値を生成することについては、特別な困難は要せず、ごくあたりまえの実験以上の労力は要しないものであります。」(第3頁上段) などと説明していることからも裏付けられる。 仮に、「当該x,yは前記光拡散性ファイバ…±30%を超えて変化しない」が、「光拡散性ファイバ」という物の機能・作用を特定するものである言い得るとしても、上記「2(3)」で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。 (3)よって、請求人の主張は、採用できない。 4 まとめ 本願発明は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-03-03 |
結審通知日 | 2020-03-04 |
審決日 | 2020-03-18 |
出願番号 | 特願2014-549104(P2014-549104) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 里村 利光 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 星野 浩一 |
発明の名称 | 一様白色光拡散性ファイバ |
代理人 | 柳田 征史 |