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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F |
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管理番号 | 1364579 |
審判番号 | 不服2019-7729 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-11 |
確定日 | 2020-07-30 |
事件の表示 | 特願2014-247358「流量計測装置および流量計測方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-109560〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年12月5日にされた特許出願であって、平成30年8月16日付けの拒絶理由通知に対し、平成30年10月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年3月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ(送達日:平成31年4月2日)、これに対して、令和元年6月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含むものである。本件補正前及び本件補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。(下線は補正箇所を示す。) (1)補正前 「【請求項1】 配管の内部を流れる気体の流量を計測する流量計測装置であって、 前記気体の流量と、前記流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量と、の関係を切片を持つ線で規定したデータを保持するデータ保持部と、 前記配管の表面に接触した状態で、前記空間移動量を計測する超音波トランスデューサと、 前記超音波トランスデューサが実測した実測空間移動量と前記データとに基づいて、前記気体の流量を算出する流量算出部と、を備える ことを特徴とする流量計測装置。 【請求項2】 前記超音波トランスデューサは、前記配管の内部に向けて前記超音波を発振する超音波発振部と、前記超音波を受信する超音波受信部とを含み、少なくとも前記超音波発振部が前記超音波を前記配管の中心に収束させる収束手段を有する ことを特徴とする請求項1に記載の流量計測装置。 【請求項3】 前記超音波発振部および前記超音波受信部の少なくとも一方を冷却する冷却装置をさらに備える ことを特徴とする請求項2に記載の流量計測装置。 【請求項4】 前記収束手段は、前記超音波の発振面が前記配管の外面に対応した曲率を有する ことを特徴とする請求項2又は3に記載の流量計測装置。 【請求項5】 前記超音波受信部が第2の収束手段を有し、 前 記第2の収束手段は、前記超音波の受信面が前記配管の外面に対応した曲率を有する ことを特徴とする請求項4に記載の流量計測装置。 【請求項6】 前記超音波トランスデューサは、前記配管に抑振材を配置した状態で前記空間移動量を実測する ことを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の流量計測装置。 【請求項7】 前記超音波トランスデューサは、前記超音波の中心周波数が100KHz?1MHzに設定されている ことを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の流量計測装置。 【請求項8】 配管の内部を流れる気体の流量を計測する流量計測方法であって、 前記配管の表面に接触させた超音波トランスデューサを用いて、超音波の音響強度分布の空間移動量を実測する実測ステップと、 前記気体の流量と前記流量に対応した前記空間移動量との関係を切片を持つ線で規定したデータと、前記超音波トランスデューサが実測した実測空間移動量とに基づいて、前記気体の流量を算出する流量算出ステップと、を備える ことを特徴とする流量計測方法。 【請求項9】 前記実測ステップにおいて、前記超音波トランスデューサとして、前記配管の内部に向けて超音波を発振する超音波発振部と、前記超音波発振部が発振した前記超音波を受信する超音波受信部とを含み、少なくとも前記超音波発振部が前記超音波を前記配管の中心に収束させる収束手段を有したものを用いる ことを特徴とする請求項8に記載の流量計測方法。 【請求項10】 前記実測ステップにおいて、前記超音波発振部および前記超音波受信部の少なくとも一方を冷却する ことを特徴とする請求項9に記載の流量計測方法。 【請求項11】 前記実測ステップにおいて、前記超音波トランスデューサとして、前記収束手段が前記超音波の発振面が前記配管の外面に対応した曲率を有するものを用いる ことを特徴とする請求項9又は10に記載の流量計測方法。 【請求項12】 前記実測ステップにおいて、前記超音波トランスデューサとして、前記超音波受信部が第2の集光手段を有したものを用い、 前記第2の収束手段は、前記超音波の受信面が前記配管の外面に対応した曲率を有する ことを特徴とする請求項11に記載の流量計測方法。 【請求項13】 前記実測ステップにおいて、前記配管に抑振材を配置した状態とする ことを特徴とする請求項8?12のいずれか一項に記載の流量計測方法。 【請求項14】 前記超音波トランスデューサとして、前記超音波の中心周波数が100KHz?1MHzに設定されたものを用いる ことを特徴とする請求項8?13のいずれか一項に記載の流量計測方法。」 (2)補正後 「【請求項1】 配管の内部を流れる気体の流量を計測する流量計測装置であって、 前記気体の流量と、前記流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量と、の関係を、前記気体の流量を0とした場合に前記空間移動量に切片を持つ直線で規定したデータを保持するデータ保持部と、 前記配管の表面に接触した状態で、前記空間移動量を計測する超音波トランスデューサと、 前記超音波トランスデューサが実測した実測空間移動量と前記データとに基づいて、前記気体の流量を算出する流量算出部と、を備える ことを特徴とする流量計測装置。 【請求項2】 前記超音波トランスデューサは、前記配管の内部に向けて前記超音波を発振する超音波発振部と、前記超音波を受信する超音波受信部とを含み、少なくとも前記超音波発振部が前記超音波を前記配管の中心に収束させる収束手段を有する ことを特徴とする請求項1に記載の流量計測装置。 【請求項3】 前記超音波発振部および前記超音波受信部の少なくとも一方を冷却する冷却装置をさらに備える ことを特徴とする請求項2に記載の流量計測装置 【請求項4】 前記収束手段は、前記超音波の発振面が前記配管の外面に対応した曲率を有する ことを特徴とする請求項2又は3に記載の流量計測装置。 【請求項5】 前記超音波受信部が第2の収束手段を有し、 前記第2の収束手段は、前記超音波の受信面が前記配管の外面に対応した曲率を有する ことを特徴とする請求項4に記載の流量計測装置。 【請求項6】 前記超音波トランスデューサは、前記配管に抑振材を配置した状態で前記空間移動量を実測する ことを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の流量計測装置。 【請求項7】 前記超音波トランスデューサは、前記超音波の中心周波数が100KHz?1MHzに設定されている ことを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の流量計測装置。 【請求項8】 配管の内部を流れる気体の流量を計測する流量計測方法であって、 前記配管の表面に接触させた超音波トランスデューサを用いて、超音波の音響強度分布の空間移動量を実測する実測ステップと、 前記気体の流量と前記流量に対応した前記空間移動量との関係を、前記気体の流量を0とした場合に前記空間移動量に切片を持つ直線で規定したデータと、前記超音波トランスデューサが実測した実測空間移動量とに基づいて、前記気体の流量を算出する流量算出ステップと、を備える ことを特徴とする流量計測方法。 【請求項9】 前記実測ステップにおいて、前記超音波トランスデューサとして、前記配管の内部に向けて超音波を発振する超音波発振部と、前記超音波発振部が発振した前記超音波を受信する超音波受信部とを含み、少なくとも前記超音波発振部が前記超音波を前記配管の中心に収束させる収束手段を有したものを用いる ことを特徴とする請求項8に記載の流量計測方法。 【請求項10】 前記実測ステップにおいて、前記超音波発振部および前記超音波受信部の少なくとも一方を冷却する ことを特徴とする請求項9に記載の流量計測方法。 【請求項11】 前記実測ステップにおいて、前記超音波トランスデューサとして、前記収束手段が前記超音波の発振面が前記配管の外面に対応した曲率を有するものを用いる ことを特徴とする請求項9又は10に記載の流量計測方法。 【請求項12】 前記実測ステップにおいて、前記超音波トランスデューサとして、前記超音波受信部が第2の集光手段を有したものを用い、 前記第2の収束手段は、前記超音波の受信面が前記配管の外面に対応した曲率を有する ことを特徴とする請求項11に記載の流量計測方法。 【請求項13】 前記実測ステップにおいて、前記配管に抑振材を配置した状態とする ことを特徴とする請求項8?12のいずれか一項に記載の流量計測方法。 【請求項14】 前記超音波トランスデューサとして、前記超音波の中心周波数が100KHz?1MHzに設定されたものを用いる ことを特徴とする請求項8?13のいずれか一項に記載の流量計測方法。」 2 本件補正の目的 本件補正は、補正前の請求項1において、データ保持部が保持する、気体の流量と流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量との関係のデータが、「切片を持つ線で規定したデータ」であるとされていた構成を、「前記気体の流量を0とした場合に前記空間移動量に切片を持つ直線で規定したデータ」であるとして限定するものであり、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するものを含む補正である。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。 3 独立特許要件についての判断 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)刊行物に記載された事項、引用発明 原査定の拒絶の理由において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009?270882号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。) ア「【0002】 クランプオン式の超音波流量計(以下、単に「クランプオン流量計」と称する。)は、管部の外面に設置された超音波機器を用いて、管部内を流れる流体の流動速度および流量を測定する。」 イ「【0007】 また、第1および第2の送受信器は、流体の流れ方向に対して斜め方向に超音波を送受信する。このため、温度変化によって、超音波の屈折角が変化すると、超音波感度が下がり、計測器としての性能を十分得ることができないという問題があった。特に、流体が、密度の小さい気体である場合、この問題は顕著であった。」 ウ「【0020】 図1において、超音波流量計は、複数の受信センサ11?1n(nは2以上の整数)と、送信センサ2と、演算制御部3と、を含む。演算制御部3は、送受信制御装置(以下、単に「制御装置」と称する。)31と、超音波送信装置(以下、単に「送信装置」と称する。)32と、超音波受信装置(以下、単に「受信装置」と称する。)33と、信号処理装置34と、を含む。 【0021】 受信センサ11?1nは、複数の超音波検出手段の一例である。受信センサ11?1nとしては、例えば、超音波振動子が用いられる。」 エ「【0025】 送信センサ2は、送信手段の一例である。送信センサ2としては、例えば、超音波振動子が用いられる。」 オ「【0029】 具体的には、演算制御部3は、流体10aの流れ(図1に示した矢印B)によって送信方向(図1に示した矢印A方向)から偏移した進行方向(図1に示した矢印C方向)に進んだ超音波(超音波ビーム)の受信センサ11?1n上での受信位置Xを、各受信センサ11?1nからの検出信号に基づいて特定する。」 カ「【0032】 演算制御部3は、受信位置Xと中心受信センサ1cとの間の距離(図1に示したδs)を求め、距離δsに基づいて、送信方向と進行方向とのなす角度である偏移角(図1に示した角度θ)を求める。」 キ「【0035】 演算制御部3は、音速と偏移角とに基づいて、流体10aの流量を求める。」 ク ケ 上記ウ、エより、「受信センサ11?1n」及び「送信センサ2」は、超音波振動子であるから、管部の外面に設置される際には、その表面に接触した状態とされるものといえる。これは上記図1の記載からも明らかである。 コ そうすると、上記ア-ケより、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「管部の外面に設置された超音波機器を用いて、管部内を流れる気体の流量を測定する超音波流量計であって、(【0002】、【0007】) 管部の表面に接触した状態で設置される、超音波振動子である複数の受信センサ11?1n及び送信センサ2と、(【0020】、【0021】、【0025】、図1) 流体10aの流れによって送信方向から偏移した進行方向に進んだ超音波の複数の受信センサ11?1n上での受信位置Xを、各受信センサ11?1nからの検出信号に基づいて特定し、送信方向と進行方向とのなす角度である偏移角を求め、音速と偏移角とに基づいて、流体10aの流量を求める演算制御部3と(【0029】、【0032】、【0035】)、を備える 超音波流量計。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 まず、引用発明の「管部内を流れる気体の流量を測定する超音波流量計」は、本件補正発明の「配管の内部を流れる気体の流量を計測する流量計測装置」に相当する。 次に、引用発明の「流体10aの流れによって送信方向から偏移した進行方向に進んだ超音波の受信センサ11?1n上での受信位置X」は、本件補正発明の「流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量」に相当し、また上記「受信位置X」は、「各受信センサ11?1nからの検出信号に基づいて特定する」とされているから、引用発明の「管部の表面に接触した状態で設置される、超音波振動子である受信センサ11?1n及び送信センサ2」は、本件補正発明の「前記配管の表面に接触した状態で、前記空間移動量を計測する超音波トランスデューサ」に相当するといえる。 さらに、引用発明において、気体の流量の演算は「各受信センサ11?1nからの検出信号に基づいて特定し」た、「流体10aの流れによって送信方向から偏移した進行方向に進んだ超音波の受信センサ11?1n上での受信位置X」を用いて行われている。この「受信位置X」が、本件補正発明の「流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量」に相当するものであることをふまえると、引用発明の「流体10aの流れによって送信方向から偏移した進行方向に進んだ超音波の受信センサ11?1n上での受信位置Xを、各受信センサ11?1nからの検出信号に基づいて特定し、送信方向と進行方向とのなす角度である偏移角を求め、音速と偏移角とに基づいて、流体10aの流量を求める演算制御部3」と、本件補正発明の「前記超音波トランスデューサが実測した実測空間移動量と前記データとに基づいて、前記気体の流量を算出する流量算出部」とは、「前記超音波トランスデューサが実測した実測空間移動量に基づいて、前記気体の流量を算出する流量算出部」である点で共通するといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、 「配管の内部を流れる気体の流量を計測する流量計測装置であって、 前記配管の表面に接触した状態で、前記空間移動量を計測する超音波トランスデューサと、 前記超音波トランスデューサが実測した実測空間移動量に基づいて、前記気体の流量を算出する流量算出部と、を備える ことを特徴とする流量計測装置。」 である点で一致し(以下、「一致点」という。)、以下の相違点で相違する。 [相違点] 本件補正発明が、「前記気体の流量と、前記流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量と、の関係を、前記気体の流量を0とした場合に前記空間移動量に切片を持つ直線で規定したデータを保持するデータ保持部」を備えるのに対して、引用発明では、そのような「データ保持部」は備えられておらず、また「実測空間移動量」に基づく「気体の流量の算出」が、本件補正発明では「実測空間移動量」と「データ保持部」に保持された「前記気体の流量と、前記流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量と、の関係を、前記気体の流量を0とした場合に前記空間移動量に切片を持つ直線で規定したデータ」である「前記データ」とに基づくのに対し、引用発明では「受信位置X」(本件補正発明の「実測空間移動量」に相当する。)から「送信方向と進行方向とのなす角度である偏移角を求め、音速と偏移角とに基づいて、流体10aの流量を求める」ことによる点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 上記相違点は、流量演算部(演算制御部3)が「流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量」から気体の流量を導出するに際して、本件補正発明ではデータ保持部の保持する、「流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量」と気体の流量の関係のデータから流量を求めており、また上記データが「データ保持部」に保持された「前記気体の流量を0とした場合に前記空間移動量に切片を持つ直線で規定したデータ」と特定されているのに対し、引用発明では「受信位置X」(本件補正発明の「空間移動量」に相当する。)から演算により求めている点であるといえる。 しかしながら、測定値から所望の物理量を導出する際に、その度毎の演算処理を行うことに代えて、測定値と所望の物理量との対応関係を保持したデータベース(いわゆるルックアップテーブル)を用いることは、周知の技術(以下、「周知技術」という。)である。 例えば、本願出願前に発行された特表2004?505236号公報には 「【0010】 差圧、上流圧及び温度の測定値(DP1、DP2、34、35)は、気体及び液体の流れと、恐らくは流量と処理条件に関する表示も含めて計算するためのアルゴリズムを有する処理要素(33)にフィードバックされる。これらのアルゴリズムについては後に説明する。代わりに、処理要素(33)は、ルックアップテーブルを利用して測定値から気体と液体の流量を求めることもできる。」 との記載があり、測定された差圧から流量を計算する代わりに、ルックアップテーブルを利用して測定された差圧から流量を求めてもよいことが記載されている。 また、同様に本願出願前に発行された国際公開第2014/109952号には 「[0045] Turning to FIG.5, an exemplary method500 of determiningtemperature is shown.・・・Continuing with the exemplarymethod of FIG.5,at block 540 a temperatureis determined at least partiallyon the basis of the measured time of flight.The temperature may be determinedby various methodsas discussed above,for example by a lookuptable or by a calculation.・・・」(当審訳:図5を参照すると、温度を判定する例示的な方法500が示されている。・・・図5の例示的な方法の説明を続けると、ブロック540で、温度が、少なくとも部分的には、測定された飛行時間に基づいて判定される。上述したように、温度を種々の方法、例えばルックアップテーブル又は計算で判定することができる。・・・) といった記載があり、測定された超音波の飛行時間からルックアップテーブル又は計算で温度を求めることが記載されている。 そして、上記周知技術を引用発明における、測定された受信位置Xからの演算による気体の流量の導出に用いることに特段の困難性は無い。またその際に、ルックアップテーブルを保持するためのデータ保持部を設けることや、そのデータ保持部に保持されるデータを、測定された受信位置Xと気体の流量との実際の相関関係に近似したものとすることは当然であって、該データを「前記気体の流量を0とした場合に前記空間移動量に切片を持つ直線で規定したデータ」とするかどうかは、配管部や計測装置の構成及び気体の特性などにより定まる、両者の実際の相関関係に応じて適宜選択すべき設計事項に過ぎない。 したがって、上記周知技術を引用発明に適用して、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明と上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 よって、本件補正発明は、引用発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび 以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由2の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1-8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2009-270882号公報 2.特開平5-264310号公報 3.実願平1-18958号(実開平2-110825号)のマイクロフィルム 4.実願昭58-56252号(実開昭59-161035号)のマイクロフィルム 5.実願昭62-86923号(実開昭63-195226号)のマイクロフィルム 6.特開昭61-28821号公報 7.特開2014-157129号公報 8.特開昭48-074867号公報 3 引用文献に記載された事項 上記引用文献1は、前記第2の3(2)において引用した引用文献1であり、上記引用文献1には、前記第2の3(2)において認定したとおりの「引用発明」が記載されていると認められる。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明の「データ保持部」が保持するデータに関し、「前記気体の流量を0とした場合に前記空間移動量に切片を持つ直線で規定した」との特定の一部を省き、「切片を持つ線で規定した」としたものである。 そうすると、前記第2の3(4)において示したとおり、本件補正発明が、引用発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明の構成の特定の一部を省いた本願発明も、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-05-28 |
結審通知日 | 2020-06-02 |
審決日 | 2020-06-15 |
出願番号 | 特願2014-247358(P2014-247358) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01F)
P 1 8・ 121- Z (G01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 羽飼 知佳 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 中澤 真吾 |
発明の名称 | 流量計測装置および流量計測方法 |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 松本 将尚 |
代理人 | 松本 裕幸 |
代理人 | 小林 淳一 |
代理人 | 大浪 一徳 |
代理人 | 松本 裕幸 |
代理人 | 小林 淳一 |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 松本 将尚 |
代理人 | 大浪 一徳 |