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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01L
管理番号 1364583
審判番号 不服2019-9469  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-16 
確定日 2020-07-30 
事件の表示 特願2016-185678「圧力センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月29日出願公開、特開2018- 48964〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年9月23日にされた特許出願である。そして、平成30年12月28日付けで明細書及び特許請求の範囲についての補正がなされ、平成31年4月4日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同年4月16日に査定の謄本が送達された。これに対して、令和元年7月16日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含むものである。本件補正前(平成30年12月28日付けの補正の後をいう。以下同じ。)及び本件補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)

(1)本件補正前
「 【請求項1】
圧力伝達媒体が充填された液封室に配置され、前記圧力伝達媒体を介して、流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する、接着剤を塗布して形成される接着剤層と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤層は、初期硬化層と、チップマウント硬化層との2層から構成されることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記初期硬化層は、前記支持部材の表面の全体に平坦に形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記初期硬化層は、前記支持部材の表面の中央に突起部分を有する形状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記支持部材の線膨張係数は、2?22[10-6/℃]であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記支持部材の線膨張係数は、2.6?8.5[10-6/℃]であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記初期硬化層、及び、前記チップマウント硬化層を含む前記接着剤層の厚さは、5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。」

(2)本件補正後
「 【請求項1】
シリコーンオイル、または、フッ素系不活性液体である圧力伝達媒体が充填された液封室に配置され、前記圧力伝達媒体を介して、流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定し、シリコーン系接着剤、または、フッ素系接着剤が含まれる、接着剤を塗布して形成される接着剤層と
を備える液封型の圧力センサにおいて、
前記接着剤層は、初期硬化層と、チップマウント硬化層との2層から構成され、
前記初期硬化層、及び、前記チップマウント硬化層を含む前記接着剤層の厚さは、5μm以上であり、
前記接着剤層はゲル状の接着剤を塗布して形成されることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記初期硬化層は、前記支持部材の表面の全体に平坦に形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記初期硬化層は、前記支持部材の表面の中央に突起部分を有する形状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記支持部材の線膨張係数は、2?22[10^(-6)/℃]であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記支持部材の線膨張係数は、2.6?8.5[10^(-6)/℃]であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。」

2 本件補正の目的
本件補正のうち、特許請求の範囲についての補正は、補正前の請求項1に記載した事項のうち、「圧力伝達媒体」について、「シリコーンオイル、または、フッ素系不活性液体である」旨の記載を追加して、その材料を限定し、「接着剤層」について、「シリコーン系接着剤、または、フッ素系接着剤が含まれる」旨、「初期硬化層、及び、前記チップマウント硬化層を含む前記接着剤層の厚さは、5μm以上であ」る旨、及び「ゲル状の接着剤を塗布して形成される」旨の記載を追加して、その材料、厚さ及び形成方法を限定し、「圧力センサ」について、「液封型」である旨の記載を追加して、その種類を限定するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。したがって、本件補正のうち、特許請求の範囲についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。

3 独立特許要件についての判断
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
以下に掲げる引用文献1、2、4、5は、原査定の理由に引用された文献であり、以下に掲げる引用文献3は、当合議体が新たに引用する文献である。
引用文献1ないし5の公開日又は国際公開日は、いずれも本願の出願日より前である。

引用文献1:特開2012-127781号公報
引用文献2:特開2000-100836号公報
引用文献3:国際公開第2015/194105号
引用文献4:特開2000-337988号公報
引用文献5:特開平11-023397号公報

(3)引用文献に記載された発明等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0028】
本実施形態の圧力センサ1は、接着剤(第1の高分子接着剤)2を介して、センサチップ3がセラミックステム4と接着されており、このセラミックスステム4が図示しない樹脂ケースに接着されたものである。本実施形態では、セラミックステム4がセンサチップ3と接着される被着体である。
【0029】
本実施形態の圧力センサ1は、車両に搭載されるため、外気温変化や、エンジンの作動と停止による温度変化に曝される。そこで、接着剤2として、センサチップ3とセラミックステム4との線膨張係数の違いから生じる熱応力を弾性変形によって緩和させるために、低弾性の高分子接着剤が用いられている。この低弾性とは、ヤング率が0.3?10MPaの範囲を意味する。
【0030】
接着剤2としては、一般的なシリコーン系接着剤、フロロシリコーン系接着剤等を用いることができる。フロロシリコーン系接着剤を用いる場合では、例えば、信越化学工業株式会社製の製品名「X-32-1619」を用いることができ、この場合の硬化後のヤング率は1MPa前後である。」
【0031】
センサチップ3は、Si半導体基板5とガラス台座6とが積層された構成である。Si半導体基板5は、その裏面側に設けられた凹部5bによって、表面側にダイアフラム5aが形成されている。ダイアフラム5aとガラス台座6との間の空間5cは密閉されており、基準圧力室としての真空室となっている。
【0032】
また、図示しないが、ダイアフラム5aには、ダイアフラム5aの歪みに基づく電気信号を発生するゲージ拡散抵抗(歪みゲージ)が、ブリッジ回路を構成するように形成されている。この圧力センサ1においては、ダイアフラム5aの表面側から圧力が印加されると、ダイアフラム5aが歪み、このダイアフラム5aの歪みに基づいてゲージ拡散抵抗の抵抗値が変化し、ブリッジ回路における電圧値が変化する。この変化した電圧値が電気信号として回路部にて検出されることにより、印加圧力が検出されるようになっている。本実施形態の圧力センサにおいては、ダイアフラム5aの表面にかかる圧力と真空室5c内との圧力差、すなわち絶対圧が検出される。」

「【0035】
具体的には、ピエゾインジェクタ10によって、低弾性の接着剤(第1の高分子接着剤)2と同じ材料(第2の高分子接着剤)を塗布し、熱風で硬化させる。この塗布と硬化とを複数回繰り返し行うことで、低弾性の接着剤2と同じ材料(第2の高分子接着剤)からなる層11を積層印刷して、所望厚さT1のスペーサ12を形成する。」

「【0040】
続いて、図2(b)に示すように、セラミックステム4の表面のうちセンサチップ3との接着予定領域の全体に、接着剤2を塗布する工程を行う。このとき用いる接着剤塗布用ノズルは、一般的なものを用いれば良く、スペーサ12の形成のときとは異なるものを用いる。接着剤2は、接着剤2を所望厚さとするために必要な量が塗布される。また、塗布後の接着剤12は、スペーサ12を包含している。
【0041】
その後、図2(c)に示すように、セラミックステム4の表面のうち接着剤2が塗布された接着予定領域にセンサチップ3を載せ、センサチップ3とセラミックステム4との間の接着剤2を硬化させる工程を行う。この工程は、従来と同様の条件にて行えば良い。例えば、熱風を吹付けることで、接着剤を硬化させる。
【0042】
この工程では、スペーサ12によってセンサチップ3を保持しながら、接着剤2を硬化させるので、接着剤2が硬化するまでの間に、センサチップ3が自重で沈んだり、傾いたりすることを防止できる。この結果、硬化後の接着剤2の厚みを、均一にでき、熱応力を緩和するのに十分な厚みとすることができる。」

(イ)引用文献1の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ダイアフラム5aの表面側から圧力が印加されることにより生じるダイアフラム5aの歪みを、回路部にて検出することにより、印加圧力を検出するセンサチップ3と(【0031】、【0032】)、
センサチップ3が接着されたセラミックステム4と(段落【0028】)、
センサチップ3とセラミックステム4とを接着し、シリコーン系接着剤からなる接着剤2と(【0028】、【0030】)
を備える圧力センサ1において(【0028】)、
スペーサ12は、接着剤2と同じシリコーン系接着剤からなり、ピエゾインジェクタ10による塗布と熱風による硬化とを複数回繰り返し行うことにより、所望厚さT1に形成された層であり(【0035】、【0042】)、
接着剤2は、スペーサ12の形成後に、セラミックステム4の表面のうちセンサチップ3との接着予定領域の全体に塗布され、当該接着予定領域にセンサチップ3を載せた後に硬化されたものであり(【0040】、【0041】)、
スペーサ12によってセンサチップ3を保持しながら、接着剤2を硬化させることにより、硬化後の接着剤2の厚みを、センサチップ3とセラミックステム4との線膨張係数の違いから生じる熱応力を緩和するのに十分な厚みとした(【0029】、【0042】)
圧力センサ1。」

イ 引用文献2
(ア)引用文献2には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した構成の半導体装置1では、ダイパッド2上に半導体チップ3を実装した後にワイヤボンディングを行い、樹脂パッケージ6を形成することから、ワイヤボンディング工程や樹脂パッケージング工程において半導体チップ3とダイパッド2とを接続している接着剤7が加熱されることになる。また、上記構成の半導体装置1は、チップ抵抗器などの他の電子部品とともにプリント配線基板などにハンダなどを用いて実装されるため、このときにも上記接着剤7が加熱される。このように、上記接着剤7は、半導体チップ3が実装された後においても、加熱・冷却が繰り返され、このときに接着剤7と半導体チップ3およびダイパッド2との間に応力が集中することになる。したがって、加熱・冷却の繰り返しによる応力集中を緩和すべく、上記接着剤7の厚みを比較的に大きく(たとえば50μm以上)維持しつつ半導体チップ3をダイパッド2上に実装する必要がある。」

「【0027】ダイパッド上に第1接着層70を形成する工程は、図4に示したようにダイパッド2上に粘液状とされた接着剤70を塗布することにより行われる。具体的には、まずヒータなどが組み込まれた支持台9を予め加熱しておき、この支持台9上にリードフレーム2Aを載置する。そして、シリンジ8などから粘液状とされた接着剤70を吐出させ、これをダイパッド2上に塗布する。
(中略)
【0029】第2接着層71を形成する工程は、図5に示したように引き続き支持台9を加熱しておき、第1接着層71と同様にシリンジ8などから粘液状とされた接着剤70を吐出させ、これを第2接着層71上に塗布することにより行われる。第2接着層71の形成工程は、第1接着層70が完全に硬化した状態において行ってもよいし、ほとんど硬化せずあるいはある程度硬化した状態において行ってもよい。後述するように、第1接着層70と第2接着層71との間の接合強度を十分に確保しつつ、第1および第2接着層70,71からなる接着層7を厚みを十分に確保するためには、第1接着層70がある程度硬化した状態において第2接着層71を形成するのが好ましい。」

(イ)引用文献2の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「半導体チップ3と半導体チップ3を実装するダイパッド2との間に生じる、加熱・冷却による応力を緩和するため、接着剤7の厚みを50μm以上とする。」
「半導体チップ3とダイパッド2との間に接着層を形成する際に、粘液状の接着剤を塗布する。」

ウ 引用文献3
(ア)引用文献3には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「[0015]
図1において、圧力検出装置は、圧力が検出されるべき流体が導かれる配管に接続される継手部材30と、継手部材30のベースプレート28に連結され後述するセンサユニットを収容しセンサチップからの検出出力信号を所定の圧力測定装置に供給するセンサユニット収容部と、を含んで構成されている。」

「[0018]
圧力室28A内には、継手部材30のポート30aを通じて流体としての空気または液体が供給される。センサユニットのハウジング12の下端面12ES2は、ベースプレート28に載置されている。
[0019]
圧力室28A内の圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサユニットは、円筒状のハウジング12と、圧力室28Aとハウジング12の内周部とを隔絶する金属製のダイヤフラム32と、複数の圧力検出素子を有するセンサチップ16と、ガラス層を介してセンサチップ16を一端部で支持する金属製のチップマウント部材18と、センサチップ16に電気的に接続される入出力端子群40aiと、入出力端子群40aiおよびオイル充填用パイプ44をチップマウント部材18の外周面とハウジング12の内周面との間に固定するハーメチックガラス14と、を主な要素として含んで構成されている。」

「[0021]
金属製のダイヤフラム32と向かい合うセンサチップ16およびハーメチックガラス14の端面との間に形成される液封室には、例えば、圧力伝達媒体として所定量のシリコーンオイルPM、または、フッ素系不活性液体がオイル充填用パイプ44を介して充填されている。なお、オイル充填用パイプ44の一方の端部は、オイル充填後、二点鎖線で示されるように、押し潰され閉塞される。シリコーンオイルは、例えば、シロキサン結合と有機質のメチル基とからなるジメチルポリシロキサン構造を持つシリコーンオイルとされる。」

「[図1]



(イ)引用文献3の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献3には、以下の事項が記載されている。

「センサチップ16をシリコーンオイルが充填された液封室に配置し、圧力室28A内の空気または液体の圧力を検出する、液封型の圧力検出装置。」

エ 引用文献4
(ア)引用文献4には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力検出装置(圧力センサ)100の全体概略を示す断面図である。圧力検出装置100は例えば車両に搭載されブレーキ油圧や高圧力の燃料圧を検出するものとして適用可能である。」

「【0031】コネクタケース3とハウジング7とは、かしめにて接続固定されており、コネクタケース3の凹部とハウジング7のシールダイヤフラム8との間で、圧力検出室10が構成されている。この圧力検出室10には圧力伝達媒体であり封入液であるオイル11が封入され、シールダイヤフラム8及び上記界面シール剤5により液封構造を構成している。」

「【0042】すると、この油圧がシールダイヤフラム8から圧力検出室10内のオイル11を介して、センサ素子1に伝達される。該油圧に応じた圧力(検出圧力)を受圧したセンサ素子1は、圧力信号を電気信号に変換する。この電気信号は、センサ素子1からボンディングワイヤ6、コネクタピン4を介して、上記外部回路(車両のECU等)へ伝達され、ブレーキ油圧が検出される。」

「【図1】



(イ)引用文献4の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献4には、以下の事項が記載されている。

「センサ素子1をオイル11が封入された圧力検出室10に配置し、オイル11を介して油圧を検出する圧力センサ100。」

オ 引用文献5
(ア)引用文献5には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0002】
【従来の技術】従来より、半導体圧力センサ素子自身や、素子のワイヤボンディングの接合部等の劣化を防止するものとして、シールダイヤフラム式の半導体圧力検出装置が知られている。このシールダイヤフラム式の半導体圧力検出装置は、シールダイヤフラムを隔壁として、半導体圧力センサ素子やその周辺が測定媒体に触れるのを防ぐものである。」

「【0012】図1および図2に示すように、半導体圧力検出装置10は、金属製のハウジング12を備え、そのハウジング12の先端側の端面12aに凹部14を備える。凹部14の底面14aには、半導体圧力センサ素子16を接合したガラス製の取付台18がエポキシ系の接着剤20により固定されている。半導体圧力センサ素子16は、N型シリコン基板の中央部に、周辺部よりも厚みの薄い円形部分(ダイヤフラム)を形成し、そのダイヤフラムにP型シリコン層のゲージ抵抗を形成した、周知のものである。」

「【0016】
可塑変形部32をOリング36に沿わして端面12a側へかしめることにより、図3および図4に示すように、金属ダイヤフラム34は、圧縮変形したOリング36とハウジング12の端面12aとの間で固定される。このとき、金属ダイヤフラム34と凹部14とにより密閉空間Sが形成される。この密閉空間S内には、半導体圧力センサ素子16の劣化防止用としてのシリコーンオイルが封止されている。」

「【図3】



(イ)引用文献5の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献5には、以下の事項が記載されている。

「半導体圧力センサ素子16を、シリコーンオイルで封止された密閉空間S内に配置し、圧力を検出する半導体圧力検出装置10。」

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「センサチップ3」は、「ダイアフラム5aの表面側から圧力が印加されることにより生じるダイアフラム5aの歪みを、回路部にて検出することにより、印加圧力を検出する」ものであり、圧力を印加する物質としては、気体や液体等の流体が含まれることは明らかであるから、本件補正発明の「流体の圧力を検出する圧力検出素子」に相当する。

イ 引用発明の「セラミックステム4」は、「センサチップ3」が「接着」されることにより「センサチップ3」を支持しているから、本件補正発明の「圧力検出素子を支持する支持部材」に相当する。

ウ 引用発明の「スペーサ12」は、「接着剤2」が塗布されるのに先立って、「塗布と硬化とを複数回繰り返し行うこと」により「所望の厚さに形成」された「層」であるから、本件補正発明の「初期硬化層」に相当する。

エ 引用発明の「接着剤2」は、スペーサ12の形成後に、「セラミックステム4の表面のうちセンサチップ3との接着予定領域の全体に塗布され、当該接着予定領域にセンサチップ3を載せた後に硬化」されるものであって、硬化された接着剤2は層を形成していると認められるから、本件補正発明の「チップマウント硬化層」に相当する。

オ 引用発明の「スペーサ12」は、「シリコーン系接着剤」を複数回「塗布」して形成される「層」である。また、引用発明における「接着剤2」も、上記エに述べたように、「シリコーン系接着剤」を「塗布」して硬化される「層」であり、本件補正発明における「センサチップ3」と「セラミックステム4」とを接着するものである。よって、引用発明の「スペーサ12」及び「接着剤2」の2層は、本件補正発明の「前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定し、シリコーン系接着剤が含まれる、接着剤を塗布して形成される」「2層から構成される接着剤層」に相当する。

カ 引用発明の「圧力センサ1」は、「センサチップ3」と、「セラミックステム4」と、「接着剤2」及び「スペーサ12」の2層からなる接着剤層とを備えており、本件補正発明の「圧力センサ」に相当する。

(5)一致点及び相違点
前記(4)の対比の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定し、シリコーン系接着剤が含まれる、接着剤を塗布して形成される接着剤層と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤層は、初期硬化層と、チップマウント硬化層との2層から構成される
圧力センサ。」

イ 相違点
(相違点1)
本件補正発明は、「シリコーンオイル、または、フッ素系不活性液体である圧力伝達媒体が充填された液封室に配置され、前記圧力伝達媒体を介して、流体の圧力を検出する圧力検出素子」を備える「液封型の圧力センサ」であるのに対して、引用発明は、センサチップ3の表面側に印加された圧力を検出する「圧力センサ」であるが、圧力伝達媒体が充填された液封室を備えておらず、液封型の圧力センサではない点。
(相違点2)
本件補正発明は、「初期硬化層、及び、前記チップマウント硬化層を含む前記接着剤層の厚さは、5μm以上」であるのに対して、引用発明は、「硬化後の接着剤2の厚みを、熱応力を緩和するのに十分な厚みとした」とされているのみで、具体的な厚さが特定されていない点。
(相違点3)
接着剤層を形成するために塗布する接着剤は、本件補正発明が、「ゲル状」であるのに対して、引用発明は、ゲル状であるかは不明である点。

(6)相違点1についての判断
引用文献3ないし引用文献5に記載された事項から、圧力検出素子を圧力伝達媒体が充填された液封室に配置し、圧力伝達媒体を介して流体の圧力を検出する液封型の圧力センサは周知の技術であり、引用文献3、5に示されるように、当該液封型の圧力センサにおいて、圧力伝達媒体としてシリコーンオイルを用いることも周知の技術であると認められる。また、引用文献5の【0002】、【0016】には、液封型の圧力センサを採用する理由として、圧力センサが測定媒体と触れることによる、圧力センサの劣化防止が記載されている。
引用発明及び引用文献3ないし引用文献5に示される周知の技術は、同じ圧力センサの技術分野に属しており、圧力センサの劣化防止という課題が、引用発明においても存在することは自明である。よって、引用発明において上記周知の技術を適用し、圧力伝達媒体としてシリコーンオイルを用いた液封型の圧力センサを採用することにより、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(7)相違点2についての判断
引用発明は、「センサチップ3とセラミックステム4の線膨張係数との違いから生じる熱応力を緩和」させるため、両者を接着する接着剤を、「熱応力を緩和するのに十分な厚み」としている。
一方、引用文献2に示されるように、半導体チップと支持部材との間の加熱・冷却による応力を緩和するために、両者を接着する接着剤層の厚みを「50μm以上」とすることは、周知の技術である。
引用発明と上記引用文献2に示される周知の技術は、チップと支持部材の間の熱応力の緩和という共通の課題を有しているから、引用発明における「熱応力を緩和するのに十分な厚み」として「50μm以上」の厚みを採用することにより、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(8)相違点3についての判断
引用文献2に示されるように、半導体チップと支持部材との間に接着層を形成する際に、「粘液状の接着剤を塗布する」ことは周知の技術である。引用発明のスペーサ12及び接着剤2を、上記周知の技術である粘液状接着剤を塗布して形成することは当業者が容易になし得たことであり、粘液状の接着剤の中でも特に粘性が高く流動性を失ったゲル状の接着剤は、接着剤の濡れ広がりの防止や塗布し易さの観点から、当業者が適宜選択し得たものである。
よって、上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(9)作用効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明と上記周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(10)独立特許要件についての判断のまとめ
よって、本件補正発明は、引用発明と上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願に係る発明
本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項6に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、上記第2の1(1)の請求項1ないし請求項6に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由2の概要
本願発明1ないし6は、以下の引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-127781号公報(前掲)
引用文献2:特開2000-100836号公報(前掲)
引用文献3:特開昭59-005931号公報
引用文献4:特開2000-337988号公報(前掲)
引用文献5:特開平11-023397号公報(前掲)

3 引用文献に記載された発明等
上記引用文献1には、前記第2の3(3)において記載したとおりの引用発明が記載されている。また、上記引用文献4、5には、前記第2の3(3)において記載したとおりの事項が記載されている。

4 対比・判断
本願発明1は、本件補正発明の「圧力伝達媒体」及び「接着剤」の材料に関する特定を省き、「接着剤層」の厚さ(5μm以上)や性質(ゲル状)・形成方法に関する特定を省いたものである。
そうすると、本願発明1と引用発明との相違点は、上記第2の3(5)において示した相違点1のうち、「圧力伝達媒体が充填された液封室に配置され、前記圧力伝達媒体を介して、流体の圧力を検出する圧力検出素子」を備える「液封型の圧力センサ」であるか否かのみとなり、その余の点で両者は一致するから、上記2の3(6)において示したように、本願発明1は、引用発明と引用文献4、引用文献5に示される周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-05-28 
結審通知日 2020-06-02 
審決日 2020-06-15 
出願番号 特願2016-185678(P2016-185678)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01L)
P 1 8・ 575- Z (G01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大森 努  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中澤 真吾
濱野 隆
発明の名称 圧力センサ  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
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