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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1364587
審判番号 不服2019-10207  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-02 
確定日 2020-07-30 
事件の表示 特願2014-147333「反射防止物品,及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月8日出願公開,特開2016-24287〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2014-147333号(以下「本件出願」という。)は,平成26年7月18日を出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成30年 2月13日付け:拒絶理由通知書
平成30年 4月23日付け:意見書
平成30年 4月23日付け:手続補正書
平成30年 9月26日付け:拒絶理由通知書
平成30年11月30日付け:意見書
平成30年11月30日付け:手続補正書
平成31年 4月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 元年 8月 2日付け:審判請求書
令和 元年 8月 2日付け:手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年8月2日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前(平成30年11月30日にされた手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。
「 表面に微小突起が密接して配置され,隣接する前記微小突起の間隔が,反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下である反射防止物品において,
前記微小突起は,複数の頂点を有する多峰性微小突起と,1つの頂点を有する単峰性微小突起とから構成され,
光拡散粒子を備えた光拡散層を備え,
透明フィルム材による基材の表面に,前記光拡散層,前記微小突起が順次作製され,
前記光拡散層への前記光拡散粒子の添加量は,前記光拡散層に対して重量比が2割以上,5割以下であり,
前記光拡散層の厚みが,5μm以上,50μm以下である
反射防止物品。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。なお,下線は補正箇所を示す。
「 画像表示パネルのパネル面に配置される反射防止物品であって,
表面に微小突起が密接して配置され,隣接する前記微小突起の間隔が,反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下である反射防止物品において,
前記微小突起は,複数の頂点を有する多峰性微小突起と,1つの頂点を有する単峰性微小突起とから構成され,
光拡散粒子を備えた光拡散層を備え,
透明フィルム材による基材の表面に,前記光拡散層,前記微小突起が順次作製され,
前記光拡散層への前記光拡散粒子の添加量は,前記光拡散層に対して重量比が2割以上,5割以下であり,
前記光拡散層の厚みが,5μm以上,50μm以下であり,
前記光拡散粒子の粒径は,前記画像表示パネルの色画素の短辺の長さの2.7%以上,14%以下である
反射防止物品。」

(3) 本件補正の内容
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の,発明を特定するために必要な事項である「光拡散粒子」の「粒径」を,「前記画像表示パネルの色画素の短辺の長さの2.7%以上,14%以下である」ものに限定し,また,本願発明の「反射防止物品」を「画像表示パネルのパネル面に配置される」ものとする補正である。ここで,これら補正は,本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0023】及び【0029】の記載に基づくものである。また,本願発明と,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正後発明」という。)の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は,同一である(【0001】及び【0007】)。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に適合するとともに,同条5項2号に掲げる事項を目的とするものを含むものである。

そこで,本件補正後発明が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

2 独立特許要件についての判断
(1) 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由において引用された,特開2011-133879号公報(以下「引用文献2」という。)は,本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶表示装置に関する。より詳細には,本発明は,正面コントラストに優れる,コリメートバックライトフロント拡散システムを採用した液晶表示装置に関する。
…省略…
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり,その目的とするところは,正面コントラストに優れる液晶表示装置を提供することにある。
…省略…
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,コリメートバックライトフロント拡散システムを採用し,かつ,偏光解消比率および偏光解消比率とバックライト半値角との比を特定の範囲に制御することにより,非常に高い正面コントラストを有する液晶表示装置を得ることができる。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0008】
以下,本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明するが,本発明はこれらの具体的な実施形態には限定されない。
【0009】
A.液晶表示装置の全体構成
図1は,本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。液晶表示装置100は,液晶セル110と液晶セル110の両側に配置された偏光板121および122とを有する液晶パネル130と,液晶パネル130の外側に設けられたバックライトユニット140と,液晶パネル130の外側(視認側)に設けられた光拡散素子150とを備える。バックライトユニット140は,液晶パネル130に向かってコリメート光を出射する平行光光源装置である。すなわち,液晶表示装置100は,コリメートバックライトフロント拡散システムを採用する。なお,コリメートバックライトフロント拡散システムとは,液晶表示装置において,コリメートバックライト光(一定方向に集光された,輝度半値幅の狭いバックライト光)を用い,上側偏光板の視認側にフロント光拡散素子を設けたシステムをいう。
…省略…
【0014】
液晶パネルの画素ピッチは,好ましくは250μm以上である。このような画素ピッチを有する液晶パネルは,代表的には100ppi以下の解像度を有する。このような解像度(画素ピッチ)であれば,カラーフィルターやTFTの配列に起因する散乱が抑制され,結果として,液晶セルの散乱性を小さくすることができる。したがって,偏光解消比率を大きくすることができる。
【0015】
B.偏光板
上記偏光板121および122としては,それぞれ,任意の適切な偏光板が採用され得る。偏光板は,代表的には,偏光子と,偏光子の片側または両側に配置された保護層とを有する。偏光子と保護層とは,任意の適切な粘着剤層または接着剤層を介して積層されている。
【0016】
B-1.偏光子
上記偏光子としては,目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。
…省略…
【0019】
B-2.保護層
上記保護層は,偏光板の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。
…省略…
【0020】
C.バックライトユニット
上記バックライトユニット140は,コリメート光を出射し得る任意の適切な構成を有し得る。例えば,バックライトユニットは,光源と,光源から出射された光をコリメートする集光素子とを有する(いずれも図示せず)。
…省略…
【0022】
D.光拡散素子
上記光拡散素子150は,液晶セルを通過した光(代表的には,上記のようなコリメート光)を透過および拡散させる。本発明においては,光拡散素子として,例えば,表面が平滑な光拡散素子,表面反射率が低い光拡散素子,後方散乱が小さい光拡散素子,拡散半値角が75°以下である光拡散素子,あるいはこれらの特性を組み合わせて有する光拡散素子を用いることにより,正面コントラストが高い液晶表示装置を実現することができる。
…省略…
【0024】
上記表面反射率が低い光拡散素子は,代表的には,反射防止層が設けられた光拡散素子である。反射防止層を設けることにより,光拡散素子と空気との界面における反射による拡散光回帰を防止することができる。反射防止層としては,例えば,フッ素樹脂層,ナノ粒子(代表的には中空ナノ粒子,例えば中空ナノシリカ粒子)を含む樹脂層,または,ナノ構造(例えばモスアイ構造)を有する反射防止層が挙げられる。反射防止層の厚みは,好ましくは0.05μm?1μmである。
…省略…
【0027】
光拡散素子150は,ヘイズが高ければ高いほど好ましく,具体的には,好ましくは90%?99%であり,より好ましくは92%?99%であり,さらに好ましくは95%?99%であり,特に好ましくは97%?99%である。ヘイズが90%以上であることにより,コリメートバックライトフロント拡散システムにおけるフロント光拡散素子として好適に用いることができる。
【0028】
光拡散素子150の厚みは,目的や所望の拡散特性に応じて適切に設定され得る。具体的には,上記光拡散素子の厚みは,好ましくは4μm?50μm,より好ましくは4μm?20μmである。
【0029】
光拡散素子150は,単独でフィルム状または板状部材として提供してもよく,任意の適切な基材や偏光板に貼り付けて複合部材として提供してもよい。また,光拡散素子の上に反射防止層が積層されてもよい。また,偏光板保護膜上に上記光拡散素子を塗工形成し,その保護膜を用いて偏光板を作製することにより,偏光板と一体化してもよい。」

ウ 「【実施例】
【0030】
…省略…
【0039】
<参考例1:光拡散素子の作製>
ハードコート用樹脂(JSR社製,商品名「オプスターKZ6661」(MEK/MIBK含有))100部に,ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製,商品名「ビスコート#300」,屈折率1.52)を11部,光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製,商品名「イルガキュア907」)を0.5部,レベリング剤(DIC社製,商品名「GRANDIC PC 4100」)を0.5部,および,ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品社製,商品名「XX131AA」,平均粒径2.5μm,屈折率1.49)を15部添加し,固形分が55%となるように希釈溶剤としてMIBKを加えた。この混合物を5分間超音波処理し,上記の各成分が均一に分散した塗工液を調製した。当該塗工液を,バーコーターを用いてTACフィルム(コニカ・ミノルタ社製,商品名「KC4UY」,厚み40μm)上に塗工し,100℃にて1分間乾燥後,積算光量300mJの紫外線を照射し,厚み10.5μmの光拡散素子を得た。この光拡散素子は,マトリクス中に光拡散性微粒子(PMMA微粒子)が分散したものであった。得られた光拡散素子の半値角は62°,ヘイズは98.0%であった。
【0040】
<反射防止層の作製>
シロキサンオリゴマー(コルコート株式会社製,商品名「コルコートN103」,固形分2%,実測したエチレングリコール換算による数平均分子量:950)を500部,フルオロアルキル構造およびポリシロキサン構造を有する硬化性フッ素樹脂(JSR社製,商品名「オプスターJTA105」,固形分5%,実測したポリスチレン換算による数平均分子量:8000)を100部,硬化剤(JSR社製,商品名「JTA105A」)を1部,およびメチルエチルケトン(MEK)を160.5部混合し,反射防止層形成材料を調製した。上記で得られた光拡散素子の表面に,この反射防止層形成材料を,光拡散素子と同じ幅となるようにバーコーターで塗布し,次いで120℃で3分間加熱することにより硬化および乾燥させて反射防止層(低屈折率層,屈折率1.42,厚み0.11μm)を形成した。このようにして,反射防止層付光拡散素子を得た。
【0041】
<参考例2:光拡散素子付偏光板の作製>
…省略…
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の液晶表示装置は,例えば,パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器,携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器,ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器,バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器,商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器,監視用モニターなどの警備機器,介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器等に好適に用いられ得る。」

エ 図1



(2) 引用発明
引用文献2の【0039】及び【0040】に記載された,参考例1の「反射防止層付光拡散素子」は,【0009】の記載からみて,「液晶パネルの視認側に設けられ」るものである。また,この「反射防止層付光拡散素子」は,【0024】に記載の「表面反射率が低い光拡散素子」の具体例であり, 【0029】に記載のとおり「偏光板に貼り付けて複合部材として提供してもよい」ものである。
そうしてみると,引用文献2には,次の「反射防止層付光拡散素子」の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 液晶パネルの視認側に設けられ,偏光板に貼り付けて複合部材として提供してもよい,表面反射率が低い光拡散素子であって,
ハードコート用樹脂100部に,ペンタエリスリトールトリアクリレートを11部,光重合開始剤を0.5部,レベリング剤を0.5部及びポリメタクリル酸メチル微粒子(平均粒径2.5μm)を15部添加し,固形分が55%となるように希釈溶剤を加えた塗工液を調製し,
塗工液を,バーコーターを用いてTACフィルム上に塗工し,乾燥後,紫外線を照射し,厚み10.5μmの光拡散素子を得,
この光拡散素子は,マトリクス中に光拡散性微粒子(ポリメタクリル酸メチル微粒子)が分散したものであり,
シロキサンオリゴマーを500部,フルオロアルキル構造及びポリシロキサン構造を有する硬化性フッ素樹脂を100部,硬化剤を1部並びにメチルエチルケトンを160.5部混合し,反射防止層形成材料を調製し,
光拡散素子の表面に,反射防止層形成材料を,光拡散素子と同じ幅となるようにバーコーターで塗布し,次いで硬化及び乾燥させて反射防止層を形成した,
反射防止層付光拡散素子。」

(3) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 反射防止物品
引用発明の「反射防止層付光拡散素子」は,「液晶パネルの視認側に設けられ,偏光板に貼り付けて複合部材として提供してもよい,表面反射率が低い光拡散素子」である。
上記の構成からみて,引用発明の「反射防止層付光拡散素子」は,液晶パネル,すなわち画像表示パネルのパネル面に配置されるに適したものである。また,引用発明の「反射防止層付光拡散素子」は,その文言が意味するとおり,あるいは,「表面反射率が低い」という性質からも明らかなとおり,反射防止物品といえる。
そうしてみると,引用発明の「反射防止層付光拡散素子」は,本件補正後発明の「反射防止物品」に相当する。また,引用発明の「反射防止層付光拡散素子」は,本件補正後発明の「反射防止物品」における,「画像表示パネルのパネル面に配置される」との要件を満たす。

イ 光拡散層
引用発明の「光拡散素子」は,「塗工液を,バーコーターを用いてTACフィルム上に塗工し,乾燥後,紫外線を照射し」て得た,「厚み10.5μmの」,「マトリクス中に光拡散性微粒子(ポリメタクリル酸メチル微粒子)が分散したものであ」る。
上記の構成からみて,引用発明の「光拡散素子」は「光拡散性微粒子(ポリメタクリル酸メチル微粒子)」を備えた,「厚み10.5μmの」層であり,また,「TACフィルム」,すなわち,透明フィルム材による基材の表面に作製されたものである。
そうしてみると,引用発明の「光拡散性微粒子(ポリメタクリル酸メチル微粒子)」及び「光拡散素子」は,それぞれ,本件補正後発明の「光拡散粒子」及び「光拡散層」に相当する。また,引用発明の「光拡散素子」は,本件補正後発明の「光拡散層」における,「光拡散粒子を備えた」及び「厚みが,5μm以上,50μm以下であり」という要件を満たす。加えて,引用発明の「反射防止層付光拡散素子」と本件補正後発明の「反射防止物品」は,「光拡散層を備え」,「透明フィルム材による基材の表面に,前記光拡散層」「が」「作製され」という点において共通する。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「 画像表示パネルのパネル面に配置される反射防止物品であって,
光拡散粒子を備えた光拡散層を備え,
透明フィルム材による基材の表面に,前記光拡散層が作製され,
前記光拡散層の厚みが,5μm以上,50μm以下である
反射防止物品。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。
(相違点1)
「反射防止物品」が,本件補正後発明は,「表面に微小突起が密接して配置され,隣接する前記微小突起の間隔が,反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下である」とともに,「前記微小突起は,複数の頂点を有する多峰性微小突起と,1つの頂点を有する単峰性微小突起とから構成され」,透明フィルム材による基材の表面に,前記光拡散層,「前記微小突起」が「順次」作製されたものであるのに対して,引用発明は,「光拡散素子の表面に,反射防止層形成材料を,光拡散素子と同じ幅となるようにバーコーターで塗布し,次いで硬化及び乾燥させて反射防止層を形成した」ものである点。

(相違点2)
「前記光拡散層への前記光拡散粒子の添加量」が,本件補正後発明は,「前記光拡散層に対して重量比が2割以上,5割以下」であるのに対して,引用発明は,この要件を満たさない点。
(当合議体注:固形分の分量に基づいて計算すると,15÷(100+11+0.5+0.5+15)=0.118,すなわち,1割と計算される。)

(相違点3)
「前記光拡散粒子の粒径」が,本件補正後発明は,「前記画像表示パネルの色画素の短辺の長さの2.7%以上,14%以下である」のに対して,引用発明は,このように特定されたものではない点。

(5) 相違点についての判断
相違点についての判断は,以下のとおりである。
ア 相違点1について
引用文献2の【0024】には,「反射防止層としては,例えば,フッ素樹脂層,ナノ粒子(代表的には中空ナノ粒子,例えば中空ナノシリカ粒子)を含む樹脂層,または,ナノ構造(例えばモスアイ構造)を有する反射防止層が挙げられる。」と記載されている。
そうしてみると,引用発明の「反射防止層」を,「ナノ構造(例えばモスアイ構造)を有する反射防止層」として周知である「微小突起が密接して配置され,隣接する前記微小突起の間隔が,反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下であり,前記微小突起の少なくとも一部が,頂点を複数有する多峰性微小突起である」もの(例えば,原査定の拒絶の理由において引用文献5として引用された,国際公開第2014/021376号の請求の範囲,[0009]及び図11を参照。)に替えてみることは,引用文献2の記載が示唆する範囲内の置き換えである。そして,引用発明の「反射防止層」に替えて周知技術を採用してなるものは,相違点1に係る本件補正後発明の構成を全て具備したものとなる。

イ 相違点2について
引用文献2の【0027】及び【0028】には,それぞれ「光拡散素子150は,ヘイズが高ければ高いほど好ましく」及び「光拡散素子の厚みは,好ましくは4μm?50μm,より好ましくは4μm?20μmである。」と記載されている。
そうしてみると,引用発明において,例えば,ヘイズを高く,かつ,光拡散素子の厚みを薄く設計しようとする当業者ならば,引用発明の「ハードコート用樹脂」及び「ペンタエリスリトールトリアクリレート」の分量を減らすことを検討すると考えられる。例えば,分量を1/2まで減らした場合における添加量も,15÷(50+5.5+0.5+0.5+15)=0.210,すなわち2割となる。
(当合議体注:この場合,光拡散層の厚みは薄くなるが,本件補正後発明の「前記光拡散層の厚みが,5μm以上,50μm以下であり」という要件は,引き続き満たす。)
そうしてみると,引用発明を,相違点2に係る本件補正後発明の構成を具備したものとすることは,引用文献2の記載の範囲内の設計変更にとどまる。

ウ 相違点3について
本件補正後発明の「反射防止物品」と「画像表示パネル」とは,物として別個に存在するものである。また,「画像表示パネルの色画素の短辺の長さ」は,「画像表示パネル」によって千差万別である。そして,引用発明の「ポリメタクリル酸メチル微粒子」は,「平均粒径2.5μm」であるから,平均粒径で考えたとしても,「画像表示パネルの色画素の短辺の長さ」が17.9?92.5μmの(画素が92ppi?473ppiの)通常の画像表示パネルとの関係においては,引用発明の「反射防止層付光拡散素子」も,相違点3に係る本件補正後発明の要件を満たすこととなる。
相違点3を,相違点と考えることはできない。
なお,引用文献2の【0014】には,「液晶パネルの画素ピッチは,好ましくは250μm以上である。このような画素ピッチを有する液晶パネルは,代表的には100ppi以下の解像度を有する。」と記載されている。

(6) 発明の効果について
本件補正後発明の効果に関して,本件出願の明細書の【0020】には,「モスアイ構造の反射防止物品に関して,従来に比して一段とぎらつきを低減することができる。」と記載されている。
しかしながら,引用発明の「反射防止層付光拡散素子」は,「表面反射率が低い光拡散素子」であるから,アンチグレア性が高いものである。また,この性質は,前記(5)イで述べたとおり反射防止層を設計変更しても,変わらない(光拡散素子を備えている限り,アンチグレア性は確保される。)。
本願発明の効果は,引用発明や,前記(5)で述べたとおり容易推考後の引用発明が奏する効果である。

(7) 小括
本件補正後発明は,引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

(8) その他の独立特許要件
本件補正後発明の「反射防止物品」は,「前記光拡散粒子の粒径は,前記画像表示パネルの色画素の短辺の長さの2.7%以上,14%以下である」という構成を具備する。
しかしながら,前記(5)ウで述べたとおりであるから,たとえ物として同じ「反射防止物品」であるとしても,当業者が想定する「画像表示パネル」の画素の大きさに応じて,本件補正後発明の技術的範囲に入ったり,入らなかったりする。
そうしてみると,本件補正後発明は,明確であるということができないから,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

(9) 請求人の主張について
請求人は,審判請求書(4)4-1.(c)において,「本願請求項1の発明は,上述の機能・作用を奏するために,上記構成を備えているのに対し,各引用文献の発明は,上記構成に対応する構成を備えてなく,本願請求項1の発明の機能・作用を想起させる記載が一切ありません。」,「ここで,光拡散素子の粒径と画像表示パネルの色画素との関係が不明である各引用文献の組み合わせたとしても,「前記光拡散粒子の粒径は,前記画像表示パネルの色画素の短辺の長さの2.7%以上,14%以下である」とうい構成を備える本願請求項1の発明は,当業者であっても容易に想到し得るものではありません。」と主張する。
しかしながら,前記(5)及び(8)で述べたとおりであるから,請求人の主張は採用できない。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり,本件補正は却下されたので,本件出願の請求項1に係る発明は,前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,本願発明は,本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2011-133879号公報(引用文献2)に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。

3 引用文献及び引用発明
引用文献2の記載及び引用発明は,前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,前記前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から,「画像表示パネルのパネル面に配置される反射防止物品」及び「前記光拡散粒子の粒径は,前記画像表示パネルの色画素の短辺の長さの2.7%以上,14%以下である」という限定を除いたものである。また,本願発明の構成を全て具備し,これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は,前記「第2」[理由]2で述べたとおり,引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると,本願発明も,引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-05-25 
結審通知日 2020-05-26 
審決日 2020-06-12 
出願番号 特願2014-147333(P2014-147333)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 井口 猶二
樋口 信宏
発明の名称 反射防止物品、及び画像表示装置  
代理人 芝 哲央  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  
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