ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B |
---|---|
管理番号 | 1364633 |
審判番号 | 不服2018-7569 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-04 |
確定日 | 2020-07-28 |
事件の表示 | 特願2014- 9「骨折に際して骨片を固定する装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日出願公開、特開2015-128460〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 本願は、平成26年1月4日の出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。 平成26年 1月24日:翻訳文 平成29年10月13日:拒絶理由通知 平成30年 1月18日:意見書、手続補正書の提出 平成30年 1月29日:拒絶査定 平成30年 6月 4日:審判請求、同時に手続補正書の提出 令和 1年 9月 4日:拒絶理由通知 令和 1年12月 9日:意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「装置が少なくとも2個の固定手段と留め付けプレート(17)を備え、 前記留め付けプレート(17)は各固定手段に対してネジ穴(19)を有するように構成され、 各固定手段はスリーブ(5)とそのスリーブ内に配置されるとともに同スリーブ内で可動式に構成されるピン(7)を含んでいて前記ピンの少なくとも前方部分(9)を前記スリーブ内の少なくとも1個の側部開口(13)を介して外方に駆動し得るようにした骨釘(1)であり、 前記ピン(7)の前方部分は内骨片内で骨釘(1)を固定するためにその内骨片(3)内に嵌合するように構成される少なくとも1本のフック(9)の形式の第1の固定部を形成し、 前記スリーブ(5)の後端部分(18)は、ネジ切りされていて、前記留め付けプレートに対する外骨片の動作が可能とされ、前記留め付けプレートに対する前記骨釘の角度位置の変化ならびに各骨釘の相互間の角度位置の変化が防止されるように、その外骨片と固定的に結合されることなく、その外骨片(2)の外側に配置されて前記外骨片(2)に当接可能であるように構成されている前記留め付けプレートに骨釘(1)を係止するための第2の固定部を定義し、 前記スリーブ(5)の中央部分(32)はそのスリーブ内の側部開口(13)と第2の固定部(18)との間に位置するとともに外骨片(2)を通るように延在するように構成され、前記中央部分はそれに沿って二次的な圧迫の間に外骨片が留め付けプレート(17)から離れて内側方向かつ中に骨釘(1)が固定されている内骨片(3)の方向に向かって摺動し得るように構成され、 前記スリーブのネジ切りされた後端部分が前記ネジ穴内に更にねじ込まれることを妨げるように接合することができるネジ穴内の面に前記ネジ切りされた後端部分が到達するまで前記スリーブ(5)のネジ切りされた後端部分(18)を前記ネジ穴内にねじ込んだ後に前記ネジ切りされた後端部分がネジ穴内の面に接合するとスリーブ内の側部開口(13)がすべて当該側部開口(13)間の中心部に面するように構成されるように前記留め付けプレート(17)内の各ネジ穴(19)のネジ山が構成される、 骨折に際して骨片を固定する装置。」 第3 拒絶の理由 令和1年9月4日の当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.特開2012-125547号公報 引用文献2.特表2010-534106号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付与した。 A「【0001】 本発明は、骨折した骨片を固定する固定手段のピンを駆動する装置に関し、前記固定手段は、スリーブと前記スリーブに設けられた少なくとも一つのピンとを備え、前記スリーブは、当該スリーブの長手方向に少なくとも一つの開口部を備えた開口後端部と前端部を有し、前記駆動装置は、前記スリーブの前記開口部から一つの骨片の骨材料へ、ピンの前部を駆動するように構成され、前記ピンの前部は、稼働位置において、前記スリーブの中から開口部に通じて延びて前記一つの骨片の骨材料に噛み合う。 【背景技術】 【0002】 上述したタイプの駆動装置は、例えば、米国特許第2,631,584号明細書により、既に知られている。手術が成功する条件としては、側面開口部が周辺骨材に対して正確で正しい位置決めされるように、素早く簡単な方法でスリーブを向けることといえる。しかし、従来の駆動装置は、スリーブを正確で正しい位置に素早く簡単に向けることはできず、駆動装置をはずすことなくスリーブの側面開口部がどこに置かれているか直接判断することはできなかった。」 B「【0009】 骨片を骨材料に固定する固定手段でピンを駆動する装置が、添付された図面に示されている。固定される骨片は、大腿骨片、鎖骨片、又は、身体の他の骨片である。固定手段の構造は、固定手段のさらなる詳細な説明で参照される米国特許第4,498,468号明細書やスウェーデン国特許第431053号明細書で示された固定手段と同じである。 【0010】 その結果、固定手段1は、スリーブの後端部4が開口しているがスリーブの前端部5が閉じられた円筒状のスリーブ2を備えている(好ましくは図6を参照)。スリーブ2の後端部4は、図5、特に図6から明らかなように、雄ねじ6が設けられ、たとえば、骨折の骨片を固定する数個の固定手段の位置のインプラント用の保持板7に固定手段1を結びつけ又はねじで締めることが可能なっている。これにより、保持板は、固定手段のねじ穴(不図示)が設けられている。スリーブ2の後端部は、通路3の最後尾部において、骨材料に固定手段1を提供するとともに固定手段を保持板7にねじ留めすることにより取り付けるためのツール24(図17参照)のアタッチメント23を内部に備えている。固定手段1を保持板7に取り付ける方法は他にもある。固定手段1は、例えば、任意のタイプの締め付け手段又は保持板のねじ穴にかみ合うロック手段により、保持板7に対して締め付けられてもよい。固定手段1を保持板7以外、例えば、直接骨材料に取り付け又は締め付けることも可能である。スリーブ2の通路3は、傾けられ、かつ、スリーブの長手側面の少なくとも1つの開口部9で開閉する少なくとも一つの前部限界面8を有している。固定手段1は、スリーブ2の通路3に配置されるとともに実施例においてはその後部においてスリーブから突き出るピン10を備えている。ピン10は、図5及び図6において、作動していない状態である。ピン10の前部11は、駆動装置12によって、スリーブ2の前方向へ移動可能であり、スリーブの傾斜限界面8及び開口部9から出て一つの骨片の骨材料へ入る。これにより、固定手段1は、駆動装置12によって骨片を互いに固定する。ピン10は、図7、図8、及び図10において、動作した状態にある。 【0011】 本発明によると、駆動装置は、順に、円筒状第一部材13と、全体的又は部分的にねじ14及び係合面15を備えた外側面と、第一部材の一端で第一部材と一体的となる第二部材16と、を備えた駆動手段12から成る。駆動手段12は、第一部材13をスリーブの開口後端部分に挿入することにより、スリーブの雌ねじ17、すなわち、スリーブの通路3の内部側面の少なくとも一部に設けられたねじと協働して、かつ、第一部材の係合面15を、ピン10の少なくとも部分的なねじ穴部18の外部の背面と、すなわち、実施例では図6に示されるピンが後部においてスリーブから突き出た部分と、係合させることにより、スリーブ2に接続可能となる。係合面がピン10の後部18と係合すると同時に駆動手段12の第一部材13をスリーブ2にねじで締めることにより、駆動手段は、スリーブに対して駆動方向の前方にピンを駆動する。これにより、ピン10の前部11は、図7、図8、及び図10で示すように、スリーブ2の開口部9から一つの骨片の骨材料に駆動される。」 C「図6 」 D「図7 」 E「図9 」 F「図10 」 G 摘記事項B、DないしFにおいて、ピン10を動作させた状態でスリーブの雄ねじ6を保持板のねじ穴にねじ留めすると、開口部9から出て一つの骨片の骨材料へ入るピン10の前部11が抵抗となり、ねじ留めが行えないことは自明である。よって、摘記事項DないしFは、スリーブの雄ねじ6をねじ穴にねじ留めした後の図面と認められ、摘記事項B、DないしFから、スリーブの雄ねじ6をねじ穴にねじ留めした後にスリーブ2の開口部9が互いに略対向するように構成されていることが看て取れる。 (2)上記記載、及び、認定事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された技術は、骨折した骨片を固定される骨片の骨材料に固定する装置に関するものである(摘記事項B)。 b 装置は、3個の固定手段1と保持板7を備え、前記保持板7は固定手段1のねじ穴が設けられている(摘記事項B、D)。 c 各固定手段1は、スリーブ2とスリーブ2の通路3に配置されるとともに同スリーブ2の通路3で移動可能なピン10を備えていて、前記ピン10の前部11をスリーブ2の開口部9から一つの固定される骨片の骨材料に駆動する固定手段1である(摘記事項BないしF)。 d ピン10の前部11は、固定される骨片の骨材料に噛み合う前部11である(摘記事項A)。 e スリーブの後端部4は、雄ねじ6が設けられ、保持板7に固定手段1をねじ留めすることが可能となっている(摘記事項B、C)。 f スリーブ2は、スリーブ2の開口部9と雄ねじ6との間の部分を有する(摘記事項B、C)。 g スリーブの雄ねじ6をねじ穴にねじ留めした後にスリーブ2の開口部9が互いに略対向するように構成されている(認定事項G)。 (3)上記(1)、(2)から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「装置が、3個の固定手段1と保持板7を備え、 前記保持板7は固定手段1のねじ穴が設けられており、 各固定手段は、スリーブ2とスリーブ2の通路3に配置されるとともに同スリーブ2の通路3で移動可能なピン10を備えていて、前記ピン10の前部11をスリーブ2の開口部9から一つの固定される骨片の骨材料に駆動する固定手段1であり、 前記ピン10の前部11は、固定される骨片の骨材料に噛み合う前部11であり、 前記スリーブの後端部4は、雄ねじ6が設けられ、保持板7に固定手段1をねじ留めすることが可能となっており、 前記スリーブ2は、スリーブ2の開口部9と雄ねじ6との間の部分を有し、 スリーブの雄ねじ6をねじ穴にねじ留めした後にスリーブ2の開口部9が互いに略対向するように構成される、 骨折した骨片を固定される骨片の骨材料に固定する装置。」 2 引用文献2 (1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付与した。 A「【0010】 図1は、大腿骨頸部骨折4の時に骨片2及び3を固定するための二つの実質的に平行な固定手段1を示す。そこで骨片が固定されなければならない骨折のタイプと同様、固定手段の数は変え得る。各固定手段1は、外側骨片2を通して挿入され、そして、内側骨片3に固定されるように構成される。 【0011】 固定手段1は、意図された目的及び機能に対して如何なる適切なタイプであってもよい。それは、例えば、骨ネジの形を取ってもよく、又は、描かれた変形におけるように、好ましくは、外側の直径が少なくとも部分的にスリーブの内側の直径に適合している、好ましくは少なくとも後部で円筒状であるピン7の挿入のために後部に開いている縦スペース6を持つ円筒状スリーブ5を有する骨釘1の形を取ってもよい。このピン7はスリーブ5の縦方向に動くことができ、そして後部部分8及び、後部部分から前部に伸びる少なくとも一つの前部部分9を有する。前部部分9は曲がった先端11をその前端部に有する。 【0012】 スリーブ5の前部部分は、スリーブの側部上に少なくとも一つの開口部13を有する。ピン7の前部部分9は、側部開口部13を通して、スリーブと相対的に前部に駆動されるピンによってスリーブ5から外側に駆動できる。ピン7の、スリーブ5と相対的な前部へのこの駆動は、適切なタイプの駆動ツール(図示されていない)を使用することによってもたらされ得る。」 B「【0015】 描かれた変形においては、大腿骨頸部の骨折4の時に外側骨片2を通して、そして内側骨片3内に、各固定手段1に対して穴が開けられ、そして孔の内に固定手段が導入されると、ピン7がスリーブ5から外側に駆動される。スリーブ5に対して前部へのピン7の駆動中に、誘導表面15が、ピンの前部部分9を側部開口部13を通って外側に誘導し、そして該前部部分が、内側骨片3に係合するフックを形成するであろう(図2を見よ)。このフック9は固定手段1の第一固定部分と称され得る。 【0016】 内側骨片3中における密度がその中心で最大となるため、もし、駆動中にピン7の前部部分9が骨片の中央部分中にかみ合わせられるように、各固定手段1が適用され及び/又は構成されるならば、それは有利である。各固定手段1においてピン7の前部部分9が内側骨片3の中心に向いているという事実は、固定手段が、この内側骨片においてよりよいグリップを有することのみならず、固定手段の回転及びその他の動きが相殺されること意味する。 【0017】 ピン7の前部部分9を内側骨片3内に駆動させた後、外側骨片2から突き出ている固定手段1の後部部分に緊締板17が配列される。これらの突き出た後部部分は固定手段1の第二固定部と称され得る。緊締板17は、各固定手段1を外側骨片2の外側上に緊締するために構成される。緊締板17は、それが、それに対する外側骨片2の動きを可能ならしめるように構成される、つまり、それは外側骨片には結合されず、また、それによって、骨片2、3が圧縮されると後者と共に動くであろう何か別の方法で配列もされない。」 C「【0023】 平滑な中間部分32によって、第一骨片2が、その中に固定手段が固定される第二の骨片3に向かって緊締板17から内側にスライドするように、骨片2、3が圧縮されるべく固定手段1が構成される。そのような場合、緊締板17は、固定手段1にロックされた状態で、第一骨片2(図示されていない)との隣接を終えるが、結合力に影響を及ぼすこともなく何ら機能を損なうこともない。」 D「図1 」 E 摘記事項B、Dから、緊締板17は、外側骨片2の外側に配置されて外側骨片2に当接可能であるように構成されていることが看て取れる。 F 摘記事項A、C、Dから、スリーブ5の平滑な中間部分32は、外側骨片2を通るように延在するように構成されていることが看て取れる。 G 摘記事項A、B、Dから、スリーブ5の側部開口部13は、全て側部開口部の中心に面するように構成されていると認められる。 (2)上記記載、及び、認定事項から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。 「大腿骨頸部骨折4の時に外側骨片2及び内側骨片3を固定するための装置であって、 装置が少なくとも2個の固定手段1と緊締板17を備え、 各固定手段1はスリーブ5とそのスリーブ内に配置されるとともに同スリーブ内で縦方向に動くことができるピン7を含んでいて前記ピンの少なくとも前部部分9を前記スリーブの側部開口部13を介して外方に駆動し得るようにした固定手段1であり、 前記ピン7の前部部分9は内側骨片3内に係合されるように構成されるフックの形式の第一固定部分と称し、 前記スリーブ5の後部部分に緊締板17が配列され、前記緊締板17に対する外側骨片2の動きを可能とし、その外側骨片2と結合されず、その外側骨片2の外側に配置されて前記外骨側片2に当接可能であるように構成されている前記緊締板17に固定手段1を係止するための第二固定部と称し、 前記スリーブ5の平滑な中間部分32は外側骨片2を通るように延在するように構成され、前記中間部分32によって、第一骨片2が、その中に固定手段が固定される第二の骨片3に向かって緊締板17から内側にスライドするように、骨片2、3が圧縮されるべく固定手段1が構成され、 前記スリーブ5の側部開口部13は、全て側部開口部の中心に面するように構成されている、 装置。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「固定手段1」は、その文言の意味、機能又は構成等からみて、本願発明の「固定手段」及び「骨釘」に相当する。以下同様に、「3個」は「少なくとも2個」に、「保持板7」は「留め付けプレート」に、「ねじ穴」は「ネジ穴」に、「保持板7は固定手段1のねじ穴が設けられており」という態様は「留め付けプレート(17)は各固定手段に対してネジ穴(19)を有するように構成され」という態様に、「スリーブ2」は「スリーブ」に、「スリーブ2の通路3」は「スリーブ内」に、「移動可能な」という態様は「可動式に構成される」という態様に、「ピン10」は「ピン」に、「備えていて」という態様は「含んでいて」という態様に、「前部11」は「前方部分」及び「1本のフック」に、「開口部9」は「側部開口」に、「各固定手段は、スリーブ2とスリーブ2の通路3に配置されるとともに同スリーブ2の通路3で移動可能なピン10を備えていて、前記ピン10の前部11をスリーブ2の開口部9から一つの固定される骨片の骨材料に駆動する固定手段1であり」という態様は「各固定手段はスリーブ(5)とそのスリーブ内に配置されるとともに同スリーブ内で可動式に構成されるピン(7)を含んでいて前記ピンの少なくとも前方部分(9)を前記スリーブ内の少なくとも1個の側部開口(13)を介して外方に駆動し得るようにした骨釘(1)であり」という態様に、それぞれ相当する。 引用発明の「固定される骨片」と本願発明の「内骨片」とは、「骨の片」という点で共通し、引用発明の「噛み合う」という態様は前者の「嵌合する」という態様に相当する。引用発明の前部11も、当然固定される骨片内で固定手段1を固定するために固定される骨片の骨材料に噛み合っているので、引用発明の「ピン10の前部11は、固定される骨片の骨材料に噛み合う前部11であり」という態様と本願発明の「ピン(7)の前方部分は内骨片内で骨釘(1)を固定するためにその内骨片(3)内に嵌合するように構成される少なくとも1本のフック(9)の形式の第1の固定部を形成し」という態様とは、「ピンの前方部分は骨の片内で骨釘を固定するためにその骨の片内に嵌合するように構成される少なくとも1本のフックの形式の第1の固定部を形成し」という点で共通する。 引用発明の「後端部4」は本願発明の「後端部分」に相当し、以下同様に、「雄ねじ6が設けられ」という態様は「ネジ切りされていて」という態様に、「保持板7に固定手段1をねじ留めする」という態様は「留め付けプレートに対する前記骨釘の角度位置の変化ならびに各骨釘の相互間の角度位置の変化が防止されるように・・・前記留め付けプレートに骨釘(1)を係止する」という態様に、それぞれ相当する。よって、引用発明の「スリーブの後端部4は、雄ねじ6が設けられ、保持板7に固定手段1をねじ留めすることが可能となっており」という態様と本願発明の「スリーブ(5)の後端部分(18)は、ネジ切りされていて、前記留め付けプレートに対する外骨片の動作が可能とされ、前記留め付けプレートに対する前記骨釘の角度位置の変化ならびに各骨釘の相互間の角度位置の変化が防止されるように、その外骨片と固定的に結合されることなく、その外骨片(2)の外側に配置されて前記外骨片(2)に当接可能であるように構成されている前記留め付けプレートに骨釘(1)を係止するための第2の固定部を定義し」という態様とは、「スリーブ(5)の後端部分(18)は、ネジ切りされていて、前記留め付けプレートに対する前記骨釘の角度位置の変化ならびに各骨釘の相互間の角度位置の変化が防止されるように、前記留め付けプレートに骨釘(1)を係止するための第2の固定部を定義し」という点で共通する。 さらに、引用発明の「スリーブの雄ねじ6をねじ穴にねじ留めした後に」という態様は、スリーブの雄ねじ6の後端部分が、ねじ穴内に更にねじ込まれることを妨げるように接合することができるねじ穴内の面に接合した状態であることが技術常識であるので、本願発明の「スリーブのネジ切りされた後端部分が前記ネジ穴内に更にねじ込まれることを妨げるように接合することができるネジ穴内の面に前記ネジ切りされた後端部分が到達するまで前記スリーブ(5)のネジ切りされた後端部分(18)を前記ネジ穴内にねじ込んだ後に前記ネジ切りされた後端部分がネジ穴内の面に接合すると」という態様に相当し、引用発明の「スリーブ2は、スリーブ2の開口部9と雄ねじ6との間の部分を有し」という態様は本願発明の「スリーブ(5)の中央部分(32)はそのスリーブ内の側部開口(13)と第2の固定部(18)との間に位置する」という態様に相当し、引用発明の「スリーブ2の開口部9が互いに略対向する」という態様と本願発明の「スリーブ内の側部開口(13)がすべて当該側部開口(13)間の中心部に面する」という態様とは、「スリーブ内の側部開口がすべて所定の方向に面する」という点で共通する。よって、後者の「スリーブの雄ねじ6をねじ穴にねじ留めした後にスリーブ2の開口部9が互いに略対向するように構成される」いう態様と前者の「スリーブのネジ切りされた後端部分が前記ネジ穴内に更にねじ込まれることを妨げるように接合することができるネジ穴内の面に前記ネジ切りされた後端部分が到達するまで前記スリーブ(5)のネジ切りされた後端部分(18)を前記ネジ穴内にねじ込んだ後に前記ネジ切りされた後端部分がネジ穴内の面に接合するとスリーブ内の側部開口(13)がすべて当該側部開口(13)間の中心部に面するように構成されるように前記留め付けプレート(17)内の各ネジ穴(19)のネジ山が構成される」という態様とは、「スリーブのネジ切りされた後端部分が前記ネジ穴内に更にねじ込まれることを妨げるように接合することができるネジ穴内の面に前記ネジ切りされた後端部分が到達するまで前記スリーブのネジ切りされた後端部分を前記ネジ穴内にねじ込んだ後に前記ネジ切りされた後端部分がネジ穴内の面に接合するとスリーブ内の側部開口がすべて所定の方向に面するように構成されるように前記留め付けプレート内の各ネジ穴のネジ山が構成される」という点で共通する。 そして、引用発明の「骨折した骨片を固定される骨片の骨材料に固定する装置」は本願発明の「骨折に際して骨片を固定する装置」に相当する。 してみると、本願発明と引用発明とは、以下の点において一致する。 「装置が少なくとも2個の固定手段と留め付けプレートを備え、 前記留め付けプレートは各固定手段に対してネジ穴を有するように構成され、 各固定手段はスリーブとそのスリーブ内に配置されるとともに同スリーブ内で可動式に構成されるピンを含んでいて前記ピンの少なくとも前方部分を前記スリーブ内の少なくとも1個の側部開口を介して外方に駆動し得るようにした骨釘であり、 前記ピンの前方部分は骨の片内で骨釘を固定するためにその骨の片内に嵌合するように構成される少なくとも1本のフックの形式の第1の固定部を形成し、 前記スリーブの後端部分は、ネジ切りされていて、前記留め付けプレートに対する前記骨釘の角度位置の変化ならびに各骨釘の相互間の角度位置の変化が防止されるように、前記留め付けプレートに骨釘を係止するための第2の固定部を定義し、 前記スリーブの中央部分はそのスリーブ内の側部開口と第2の固定部との間に位置し、 前記スリーブのネジ切りされた後端部分が前記ネジ穴内に更にねじ込まれることを妨げるように接合することができるネジ穴内の面に前記ネジ切りされた後端部分が到達するまで前記スリーブのネジ切りされた後端部分を前記ネジ穴内にねじ込んだ後に前記ネジ切りされた後端部分がネジ穴内の面に接合するとスリーブ内の側部開口がすべて所定の方向に面するように構成されるように前記留め付けプレート内の各ネジ穴のネジ山が構成される、 骨折に際して骨片を固定する装置。」 そして、本願発明と引用発明とは、以下の点において相違する。 [相違点1] 第1の固定部に関し、本願発明は、ピンの前方部分の嵌合箇所が「内骨片」であるのに対し、引用発明は、「固定される骨片」である点。 [相違点2] 第2の固定部に関し、本願発明は、留め付けプレートが留め付けプレートに対する外骨片の動作が可能とされ、その外骨片と固定的に結合されることなく、その外骨片の外側に配置されて前記外骨片に当接可能であるように構成されているのに対し、引用発明は、保持板7(留め付けプレート)がそのように特定されていない点。 [相違点3] スリーブの中央部分に関し、本願発明は、外骨片を通るように延在するように構成され、前記中央部分はそれに沿って二次的な圧迫の間に外骨片が留め付けプレートから離れて内側方向かつ中に骨釘が固定されている内骨片の方向に向かって摺動し得るように構成されているのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。 [相違点4] スリーブ内の側部開口が面する方向に関し、本願発明は、すべて側部開口間の中心部に面するように構成されているのに対し、引用発明は、スリーブ2の開口部9が互いに略対向するように構成されている点。 第6 判断 上記相違点について、判断する。 1 相違点1について 引用発明は、例えば第4 1(1)の摘記事項Bに大腿骨片に適用できることが示唆されているものの、その具体的な態様は示されていない。一方で、引用文献2には、引用発明と同様に、板、複数のスリーブ、スリーブ内を移動し開口部からピンの前方部分を骨片内に嵌合させる装置において、当該装置を大腿骨に適用する具体的な態様として、ピンの前方部分の嵌合箇所を内骨片とした技術が記載されている。 引用発明と引用文献2記載の技術とは、ともに大腿骨の骨片を固定する装置であり、技術分野が関連するとともに、その作用、機能も共通する。よって、引用発明を大腿骨片に適用する際の具体的態様として引用文献2記載の技術を採用して、上記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 2 相違点2について 上記のとおり、引用発明は、大腿骨片に適用できることが示唆されているものの、その具体的な態様は示されていない。一方で、引用文献2には、上記装置を大腿骨に適用する具体的な態様として、板が板に対する外骨片の動作が可能とされ、その外骨片と固定的に結合されることなく、その外骨片の外側に配置されて前記外骨片に当接可能であるように構成されている技術が記載されている。 引用発明と引用文献2記載の技術とは、ともに大腿骨の骨片を固定する装置であり、技術分野が関連するとともに、その作用、機能も共通する。よって、引用発明を大腿骨片に適用する際の具体的態様として引用文献2記載の技術を採用して、上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 3 相違点3について 引用発明のスリーブ2の開口部9と雄ねじ6との間の部分には、直接接する骨片に直接的に固定される手段を備えていないから、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成に関し、引用発明に引用文献2記載の技術を採用した結果、必然的に引用発明のスリーブ2の開口部9と雄ねじ6との間の部分は、外骨片を通るように延在するように構成され、前記部分はそれに沿って二次的な圧迫の間に外骨片が保持板7から離れて内側方向かつ中に固定手段1が固定されている内骨片の方向に向かって摺動し得るように構成される。 仮にそうでないとしても、引用文献2には、上記装置を大腿骨に適用する具体的な態様として、スリーブの中央部分が外骨片を通るように延在するように構成され、前記中央部分はそれに沿って二次的な圧迫の間に外骨片が板から離れて内側方向かつ中に骨釘が固定されている内骨片の方向に向かって摺動し得るように構成されて技術が記載されている。 引用発明と引用文献2記載の技術とは、ともに大腿骨の骨片を固定する装置であり、技術分野が関連するとともに、その作用、機能も共通する。よって、引用発明を大腿骨片に適用する際の具体的態様として引用文献2記載の技術を採用して、上記相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 4 相違点4について 引用発明は、スリーブの雄ねじ6をねじ穴にねじ留めした後にスリーブ2の開口部9が互いに略対向するように構成されるものである。そうすると、上記開口部9は、互いの開口部9を結んだ図形の中心部の方を大まかに向いているといえるので、上記開口部9がすべて当該開口部9間の中心部に面するように構成されている。 よって、相違点4は、実質的な相違点ではない。 仮にそうでないとしても、引用文献2には、装置の固定性、安定性を向上させるために、スリーブの開口部が全て当該開口部間の中心部に面するように構成されている技術が記載されている。 そして、装置の固定性、安定性の向上という課題は、極めて周知の課題であり、引用発明も当然内在する課題である。よって、引用発明に引用文献2記載の技術を適用し、上記相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 5 まとめ これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献2記載の技術の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2020-02-26 |
結審通知日 | 2020-03-02 |
審決日 | 2020-03-13 |
出願番号 | 特願2014-9(P2014-9) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮下 浩次 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
倉橋 紀夫 寺川 ゆりか |
発明の名称 | 骨折に際して骨片を固定する装置 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 実広 信哉 |