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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1364650
審判番号 不服2019-4358  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-03 
確定日 2020-07-27 
事件の表示 特願2016-536788「マルチ接続性オペレーションのためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日国際公開、WO2015/087544、平成29年 1月26日国内公表、特表2017-503393〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014(平成26年)年12月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年12月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成30年 9月18日付け 拒絶理由通知書
平成30年11月20日 意見書及び手続補正書の提出
平成30年12月20日付け 拒絶査定
平成31年 4月 3日 拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提


第2 平成31年4月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりである。(下線部は,補正箇所を示す。)

「【請求項1】
端末装置によって無線リソース制御メッセージを受信する方法であって、
セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータを含む無線リソース制御接続再構成メッセージを受信し、
前記端末装置には、マスターセルグループの媒体アクセス制御エンティティと、前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティとが設定され、
前記セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータを含む前記無線リソース制御接続再構成メッセージを受信するのに基づいて、
前記端末装置の無線リソース制御によりランダムアクセス手順の開始を、前記端末装置の前記マスターセルグループの媒体アクセス制御エンティティと前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティのうち、前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティに対して指令し、
前記セカンダリセルグループ構成パラメータには、セカンダリセルグループのセル無線ネットワーク一時識別子が含まれ、
前記ランダムアクセス手順は、競合解消を含み、
前記ランダムアクセス手順が前記無線リソース制御による指令によって開始されたものであり、かつ物理下りリンク制御チャネル送信が前記端末装置の前記セカンダリセルグループのセル無線ネットワーク一時識別子にアドレス指定されている場合、
前記競合解消を成功とみなし、
前記ランダムアクセス手順が完了したとみなす、
方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の平成30年11月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3は次のとおりである。

「【請求項1】
端末装置によって無線リソース制御メッセージを受信する方法であって、
セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータを含む無線リソース制御接続再構成メッセージを受信し、
前記端末装置には、マスターセルグループの媒体アクセス制御エンティティと、前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティとが設定され、
前記セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータを含む前記無線リソース制御接続再構成メッセージを受信するのに基づいて、
前記端末装置の無線リソース制御によりランダムアクセス手順の開始を、前記端末装置の前記マスターセルグループの媒体アクセス制御エンティティと前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティのうち、前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティに対して指令する、
方法。
【請求項2】
前記ランダムアクセス手順は、競合解消を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ランダムアクセス手順が前記無線リソース制御による指令によって開始されたものであり、かつ物理下りリンク制御チャネル送信が前記端末装置の前記セカンダリセルグループのセル無線ネットワーク一時識別子にアドレス指定されている場合、
前記競合解消を成功とみなし、
前記ランダムアクセス手順が完了したとみなす、
請求項2に記載の方法。」

2 補正の適否
上記補正は,本願当初明細書の段落【0088】の記載を根拠に、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「セカンダリセルグループ構成パラメータ」について、「前記セカンダリセルグループ構成パラメータには、セカンダリセルグループのセル無線ネットワーク一時識別子が含まれ」との限定を付すとともに、本件補正前の請求項2及び請求項3に記載された事項を限定して特許請求の範囲を限縮するものであるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、同法第17条の2第3項、同条第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)のとおりのものと認める。

(2)引用発明,及び,公知技術

ア 引用例1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,Ericsson,Signalling procedures for dual connectivity(当審仮訳:デュアルコネクティビティのためのシグナリング手順),3GPP TSG-RAN WG2#84 3GPP TSG-RAN WG2#84 R2-134219,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_84/Docs/R2-134219.zip>,2013年11月 1日掲載(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「1 Introduction
This paper provides an overview of signalling procedures for dual connectivity. The suggested message flows are based on the agreements so far and proposals presented in [3], and try to incorporate already existing protocol functions and established principles. Details like exact content and naming of different messages are FFS.
The signalling sequences assume the common architecture as presented in [2], where the following three bearer types are proposed:
1. bearers served by MeNB, referred to as MCG DRBs
2. bearers served by SeNB, referred to as SCG DRBs
3. bearers served by MeNB and SeNB, referred to as split DRBs
The following scenarios are depicted:
- Offload of traffic from resources provided by the MeNB towards resources provided by the SeNB;
- Modification of RRC configuration related to the SeNB connection;
- Removal of resources provided by the SeNB for the UE;
- Change of MeNB while keeping one SeNB under service.
(1/9ページ5行?同19行)

(当審仮訳:
1.はじめに
この論文は、デュアルコネクティビティのためのシグナリング手順の概要を提供する。提案されたメッセージフローは、これまでの合意と[3]に提示された提案に基づくものであり、既存のプロトコル機能と確立された原理を組み込むことを試みる。異なるメッセージの正確な内容及び命名のような詳細は、FFSである。
シグナリングシーケンスは、[2]に示されるような共通のアーキテクチャを仮定し、そこでは、以下の3つのベアラタイプが提案される:
1.MeNBによって提供されるベアラは、MCG DRBと呼ばれる。
2.SeNBによって提供されるベアラは、SCG DRBと呼ばれる。
3.MeNB及びSeNBによって提供されるベアラは、スプリットDRBと呼ばれる。
以下のシナリオが示される:
- MeNBによって提供されるリソースからSeNBによって提供されるリソースへのトラフィックのオフロード;
- SeNB接続に関連するRRC構成の変更;
- UEのためにSeNBによって提供されたリソースの除去;
- 1つのSeNBのサービスを維持したままでのMeNBの変更。)

(イ)「2 Discussion
(中略)
2.2 SeNB activation and offloading traffic
Figure 2.2-1 depicts the overall signalling scheme for offloading UP traffic to a SeNB. The S1-MME signalling part which is relevant for bearers served by the SeNB (option 1A) is shown with dashed lines(“path switch”).
(中略)


As depicted in Figure 2.2-1, offloading a bearer to the SeNB or partof the traffic for split bearer could involve the following steps:
1. Radio resources for a certain E-RAB are provided by the MeNB only.
2. The MeNB decides to offload UP traffic to the SeNB.
Note: This may include bearers to be served by SeNB (SCG DRBs) and bearers to be served by MeNB and SeNB (split DRBs). For split DRBs, the MeNB would need to decide to which extent the offload shall happen, which may result in an indication of E-RAB parameters over Xn in step 3 that may differ from E-RAB parameters received over S1.
3. The MeNB requests the SeNB to offload UP resources, indicating E-RAB characteristics (QoS, UL TNL address information), UE Capabilities and the current overall radio resource configuration at the MeNB for that UE.
Note: Indication of current radio resource configuration is defined as an inter-node RRC message, provided transparently via Xn, e.g. utilising/adopting the existing structure of the RadioResourceConfigDedicated IE.
4. If the RRM entity in the SeNB is able to admit the resource request, it allocates respective radio resources.
The SeNB may also allocate dedicated RACH preamble for the UE so that synchronisation ofthe SeNB radio resource configuration can be performed.
5. The SeNB provides the new radio resource configuration to the MeNB (for SCG DRBs, together with S1 DL TNL address information for the offloaded E-RAB).
Note: Indication of current radio resource configuration is defined as an inter-node RRC message, provided transparently via Xn, e.g. utilising/adopting the existing structure of the RadioResourceConfigDedicated IE.
6. The MeNB may verify the proposed new radio resource configuration.
7. If the MeNB acknowledges the new configuration, it triggers the UE to apply it. The reconfiguration message may include the MobilityControlInfo IE received from the SeNB in step 4. The UE starts to apply the new configuration.
8./9. Dependent on the bearer type (SCG or split DRB) and QoS characteristics the MeNB may take actions to minimise service interruption due to offload (Data forwarding, Status Report). In case of split DRBs, data forwarding takes place permanently via Xn UP resources.
10. The UE performs synchronisation towards the cell of the SeNB. This indicates for the SeNB that the UE has taken the new configuration into use. Synchronisation can be made with contention based or contention free random access. The figure shows contention based access.
11. The UE completes the reconfiguration procedure.
12. The SeNB may report detection of synchronisation and that the new configuration is being in use already. The need for this signal is ffs. The reconfiguration complete message from the UE also indicates to the MeNB that the new configuration is in use.
13.-15. For SCG DRBs, the update of the UP path towards the EPC is performed.
16. Radio resources are provided by the SeNB.
(For SCG DRBs, only SeNB provides resources for the offloaded E-RAB,
For split DRBs, the MeNB may still provide resources).
(2/9ページ1行?4/9ページ23行)

(当審仮訳:
2.考察
(中略)
2.2 SeNB の活性化とトラフィックのオフロード
図2.2-1に、UPトラフィックをSeNB にオフロードするための全体的なシグナリングスキームを示す。SeNBによってサーブされるベアラに関連するS1-MMEシグナリング部分(オプション1a)は、破線(「パススイッチ」)にて示される。
(中略)
(図2.2-1 SeNB の活性化とトラフィックのオフロード は省略。)
図 2.2-1 に示すように、ベアラをSeNB又はスプリットベアラのトラフィックの一部にオフロードすることは、以下のステップを含むことができる。
1.あるE-RABの無線リソースは、MeNBのみによって提供される。
2.MeNBは、UPトラフィックをSeNBにオフロードすることを決定する。
注記:これは、SeNBによってサービスされるベアラ(SCG DRB)と、MeNB及びSeNBによってサービスされるベアラ(スプリットDRB)を含むことができる。スプリットDRBのために、MeNBはオフロードがどの程度起こるかを決定する必要があり、ステップ3におけるXnを介するE-RABパラメータの表示をもたらすこととなる。これは、S1を介して受信されたE-RABパラメータとは異なり得る。
3. MeNBは、SeNBにUPリソースをオフロードするように要求し、E-RAB特性(QoS、UL TNLアドレス情報)、UE能力及びMeNBにおけるそのUEのための現在の全体的な無線リソース構成を示す。
注記:現在の無線リソース構成の表示は、Xnを介して透過的に提供されるノード間RRCメッセージとして例えば,RadioResourceConfigDedicatedIEの既存の構造の利用/追加により,定義される。
4.SeNB中のRRMエンティティがリソース要求を許可することができる場合、それはそれぞれの無線リソースを割り当てる。
SeNBはまたSeNB無線リソース構成の同期化を実行することができるように、UEに専用RACHプリアンブルを割り当てることもできる。
5. SeNBは、新しい無線リソース構成を(SCG DRBに対して、オフロードされたE-RABのS1DL TNLアドレス情報と共に) MeNBに提供する。
注記:現在の無線リソース構成の表示は、Xnを介して透過的に提供されるノード間RRCメッセージとして,例えば、RadioResourceConfigDedicatedIEの既存の構造の利用/追加により定義される。
6. MeNBは、提案された新しい無線リソース構成を検証することができる。
7.MeNBが新しい構成を承認する場合、UEに適用をトリガーさせることとなる。再構成メッセージは、ステップ4においてSeNBから受信されたMobilityControlInfo IEを含むことができる。UEは、新しい構成の適用を開始する。
8/9. ベアラ・タイプ(SCG又はスプリットDRB)及びQoS特性に依存して、MeNBは、オフロード(データ転送、ステータス・レポート)によるサービス中断を最小限に抑えるアクションをとることができる。スプリットDRBの場合、データ転送はXn UPリソースを介して永続的に行われる。
10. UEは、SeNBのセルに同期化を行う。これは、UEが新たな構成を使用することをSeNBに示している。同期化は、競合ベース又は非競合のランダムアクセスで行うことができる。図は、競合ベースのアクセスを示す。
11. UE は再構成手順を完了する。
12. SeNBは、同期の検出及び、新しい構成が既に使用中であることを報告することができる。この信号の必要性はffsである。UEからの再構成完了メッセージはまた、新しい構成が使用中であることをMeNBに示す。
13-15. SCG DRBについては、EPCへのUPパスの更新が行われる。
16.無線リソースが SeNB によって提供される。
(SCG DRBでは、SeNBのみがオフロードされたE-RABのリソースを提供し、スプリットDRBでは、MeNBは依然としてリソースを提供する。)

(ウ)上記(イ)より,図2.2-1のステップ1ではE-RABの無線リソースはMeNBのみによって提供されていたところ,ステップ2にてMeNBはUPトラフィックをSeNBにオフロードすることを決定し,MeNB及びSeNBによってサービスされるベアラ(スプリットDRB)とするためにステップ3にてMeNBはSeNBにUPリソースをオフロードするように要求し,ステップ4にてSeNB中のRRMエンティティが無線リソースを割り当て,ステップ5にてSeNBは提案されたnew RadioResourceConfigDedicatedにより表示される新しい無線リソース構成をMeNBに提供し,ステップ6にてMeNBは提案された新しい無線リソース構成を検証し,ステップ7にてUEは,MeNBより,ステップ4においてSeNBから受信されたMobilityControlInfo IEを含むRRCConnectionReconfiguration(new RadioResourceConfigDedicated)を受信し,ステップ10aにてUEは競合ベースのアクセスとしてSeNBにランダムアクセスプリアンブルを送信し,ステップ10bにてUEはSeNBからランダムアクセス応答を受信し,ステップ10cにてUEはSeNBにC-RNTIを含むMsg3を送信し,ステップ11にてUEはMeNBにRRCConectionReconfigurationCompleteを送信することが見て取れる。
したがって,UEから見れば,ステップ7においてRRCConnectionReconfiguration(new RadioResourceConfigDedicated)を受信し,当該RRCConnectionReconfiguration に基づいてステップ10にてランダムアクセス手順を行うといえ,これはUEによってRRCメッセージを受信する方法ということができる。ここで,ステップ7においてUEが受信するnew RadioResourceConfigDedicatedは新しい無線リソース構成を表示しており,当該新しい無線リソース構成は,MeNB及びSeNBによってサービスされるベアラ(スプリットDRB)とするためSeNBにより割り当てられて無線リソースに関するものと解される。そして,上記(ア)の「MeNBによって提供されるベアラは,MCG DRBと呼ばれる。」,「SeNBによって提供されるベアラは,SCG DRBと呼ばれる。」との記載によれば,「MeNB及びSeNBによってサービスされるベアラ(スプリットDRB)とするため」は,SCG追加のためということができる。

したがって,引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「 UEによってRRCメッセージを受信する方法であって,
RRCConnectionReconfiguration(new RadioResourceConfigDedicated)を受信し,ここで前記newRadioResourceConfigDedicatedはSCG追加のための新しい無線リソース構成を表示しており,
前記RRCConnectionReconfiguration に基づいて競合ベースでランダムアクセス手順を行う
方法。」

イ 引用例2
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,Huawei, HiSilicon,Discussion of one vs. separate MACs towards MeNB and SeNB(当審仮訳: MeNB及びSeNBに対する1つ又は別個のMACの考察),3GPP TSG-RAN WG2#84 3GPP TSG-RAN WG2#84 R2-133977,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_84/Docs/R2-133977.zip>,2013年11月 1日(以下「引用例2」という。) には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「

」(1/5ページ5行?末行)

(当審仮訳:
はじめに
本稿では、スモールセル拡張のユーザプレーンアーキテクチャのためのMACモデリングを検討する。MeNB及びSeNB に対するUE上の1つの共通MACと別個のMACとの間での比較が行われる。
2.考察
2.1 UE MACのモデル
図1に、デュアルコネクティビティコンセプトに対する一般的な理解を示す。ネットワーク側では、ダウンリンク手順に関して、MeNBは、その物理レイヤのいずれかのセルに対する1つ又は異なる論理チャネルに関連するMAC TB(トランスポートブロック)を配信し、SeNBも同様に、MAC TBをその物理レイヤの任意のいずれかのセルに配信し、SeNBのベアラは、1AによればCNから、又は3CによればMeNB PDCPからのものである。アップリンク手順に関して、スプリットベアラが使用されるかどうかは議論がある。UE側では、UEは物理層からMAC TBを受信する、又はMAC TBを物理層に送信するが、ここで問題は、UE内でデュアルコネクティビティをサポートするためにUE内で、いくつのMACエンティティが妥当であるかであり、以下の2つの選択肢が考えられる。
・選択肢1、1つのUEに1つのMAC
・選択肢2、1つのUEに2つのMACエンティティ、一つはMeNB向け、もう一つはSeNB向けである。
(図1.UE MACの選択肢 は省略)

(イ)上記(ア)の記載によれば,「UEが,UE内でデュアルコネクティビティをサポートするために,1つのMACエンティティのみを有するか,あるいはMeNB向けのMACエンティティとSeNB向けのMACエンティティとを有する。」ことは公知技術であると認められる(以下,「公知技術1」という。)。


ウ 引用例3
本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった, Fujitsu,RNTI allocation for dual connectivity(当審仮訳:デュアルコネクティビティのためのRNTI割り当て),3GPP TSG-RAN WG2#84 3GPP TSG-RAN WG2#84 R2-134001,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_84/Docs/R2-134001.zip>,2013年11月 1日には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)3.3.Method for the C-RNTI collision avoidance
This section describes alternative methods of the C-RNTI coordination between the MeNB and the SeNB.
Alt.1: C-RNTI coordination when performing dual connectivity
In this alternative, the MeNB negotiates with the SeNB for C-RNTI allocation whenever adding a new cell in the SeNB for dual connectivity to the DC-UE. An example figure is depicted in Fig.2. Whenever the MeNB configures dual connectivity with the SeNB to the DC-UE, the MeNB sends the RNTI list including available (i.e. not used) C-RNTIs in the MeNB to the SeNB. The SeNB then finds the non-duplicated C-RNTI to be allocated to the DC-UE and sends it to the DC-UE through the MeNB.



」(2ページ下から8行?3ページ1行)

(当審仮訳:3.3.C-RNTI 衝突回避のための方法
このセクションは MeNB と SeNB の間のC-RNTI 調整方法の選択肢を記述する。
選択肢1 :デュアルコネクティビティ実行時のC-RNTIの調整。
この選択肢では、MeNBは、DC UEへのデュアルコネクティビティのためにSeNB内に新しいセルを追加するときにいつでも、C-RNTI割り当てについてSeNBと交渉する。例としての図2が示されている。MeNBが、DC UEに対してSeNBとデュアルコネクティビティを構成する場合はいつでも、MeNBは、MeNBにおいて利用可能な(例えば、使用されない)RNTIリストを送信する。次いで、SeNBは、DC UEに割り当てられるべき非重複C-RNTIを見つけ、MeNBを介してDC UEに送信する。)
(図2:SeNB追加の場合のC-RNTIの取り扱い は省略)

(イ)上記(ア)の記載によれば,MeNBがDC UEに対してSeNBとデュアルコネクティビティを構成するとき,MeNBはMeNBにおいて使用されないRNTIリストを送信し,SeNBはDC UEに割り当てられるべき非重複C-RNTIを見つけ,MeNBを介してDCUEに送信するといえる。そして,SeNBが見つけた非重複C-RNTIは,MeNBにおいて使用されないRNTIであるから,「MeNB及びSeNBで共通のC-RNTI」ではなく,SeNB内の新しいセルのC-RNTIであることは自明である。
したがって,「デュアルコネクティビティを構成するとき,SeNBは,SeNB内の新しいセルのC-RNTIをMeNBを介してUEに送信する。」ことは公知技術であると認められる(以下,「公知技術2」という。)。


エ 引用例4
本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった, 3GPP TS36.321 V10.3.0(2011-09),2011年10月 3日,p.12-17,URL,Internet:には、図面とともに以下の事項が記載されている。


」(16ページ1?18行)


(当審仮訳:
5.1.5 競合解決
競合解決は、PCell の PDCCH 上のC-RNTI、又はDL_SCH 上のUE 競合解決識別子に基づく。
Msg3が送信されると、UEは、以下を行う
- MAC競合解決タイマ-を始動し、各HARQ再送においてMAC競合解決タイマーを再始動する
- 測定ギャップの可能な発生にかかわらず、MAC競合解決タイマーが満了又は停止までPDCCHを監視する。
- PDCCH送信の受信の通知を下位レイヤから受信すると、UEは、
- C-RNTI MAC制御エレメントがMsg3に含まれている場合、
- ランダムアクセス手順がMACサブレイヤ自体により開始され、PDCCH送信がC-RNTIにアドレス指定され、新しい送信のためのUL許可を含む場合、又は、
- ランダムアクセス手順がPDCCH命令によって開始され、PDCCH送信がC-RNTIにアドレス指定される場合、
- この競合解決が成功したとみなす
- MAC競合解決タイマーを停止する
- テンポラリC-RNTIを破棄する
- ランダムアクセス手順が成功裏に完了したとみなす。)

(イ)上記(ア)によれば,C-RNTI MAC制御エレメントが含まれたMsg3が送信されると,UEは,PDCCHを監視し,PDCCH送信の受信の通知を下位レイヤから受信すると,PDCCH送信がC-RNTIにアドレス指定される場合,競合解決が成功したとみなし,ランダムアクセス手順が成功裏に完了したとみなすことが記載されていると認める。ここで,引用例3は本願の優先権前の3GPPの技術仕様であり,当該技術仕様に記載された事項は,当業者にとって技術常識であるから,「C-RNTI MAC制御エレメントが含まれたMsg3が送信されると,UEは,PDCCHを監視し,PDCCH送信の受信の通知を下位レイヤから受信すると,PDCCH送信がC-RNTIにアドレス指定される場合,競合解決が成功したとみなし,ランダムアクセス手順が成功裏に完了したとみなす。」ことは,当業者にとって技術常識といえる(以下,「技術常識1」という。)。

(3)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 本件補正発明の「端末装置」,「無線リソース制御」,「無線リソース制御接続再構成メッセージ」と,引用発明の「UE」,「RRCメッセージ」,「RRCConnectionReconfiguration」とは,表現上の差異があるにすぎない。
したがって,引用発明の「UEによってRRCメッセージを受信する方法」は,本件補正発明と同様に「端末装置によって無線リソース制御メッセージを受信する方法」ということができる。

イ 引用発明のRRCConnectionReconfiguration(new RadioResourceConfigDedicated)は,SCG追加のための新しい無線リソース構成を表示しているところ,SCG追加のための新しい無線リソース構成は本件補正発明の「セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータ」に含まれる。したがって,両者は「セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータを含む無線リソース制御接続再構成メッセージを受信し,」なる事項を有する点で一致している。

ウ 本件補正発明の「前記セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータを含む前記無線リソース制御接続再構成メッセージを受信するのに基づいて,前記端末装置の無線リソース制御によりランダムアクセス手順の開始を,前記端末装置の前記マスターセルグループの媒体アクセス制御エンティティと前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティのうち,前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティに対して指令し,」と,引用発明の「前記RRCConnectionReconfiguration に基づいて競合ベースでランダムアクセス手順を行う」は,「前記セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータを含む前記無線リソース制御接続再構成メッセージを受信するのに基づいて,ランダムアクセス手順を開始する」といえる点で共通している。

以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
[一致点]
「 端末装置によって無線リソース制御メッセージを受信する方法であって,セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータを含む無線リソース制御接続再構成メッセージを受信し,
前記セカンダリセルグループ追加に用いるセカンダリセルグループ構成パラメータを含む前記無線リソース制御接続再構成メッセージを受信するのに基づいて,ランダムアクセス手順を開始する,
方法。」

[相違点1]
本件補正発明は,「マスターセルグループの媒体アクセス制御エンティティと,前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティとが設定され」,これに伴い,「前記端末装置の無線リソース制御によりランダムアクセス手順の開始を,前記端末装置の前記マスターセルグループの媒体アクセス制御エンティティと前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティのうち,前記セカンダリセルグループの媒体アクセス制御エンティティに対して指令し」及び「前記ランダムアクセス手順が前記無線リソース制御による指令によって開始されたものであり」との発明特定事項を有しているのに対して,引用発明には,これらの事項を有していない点

[相違点2]
セカンダリグループ構成パラメータに関し,本件補正発明は,「セカンダリセルグループのセル無線ネットワーク一時識別子が含まれ」るのに対し,引用発明には当該事項が明示されていない点。

[相違点3]
本件補正発明は,更に「前記ランダムアクセス手順は,競合解消を含み, 前記ランダムアクセス手順が前記無線リソース制御による指令によって開始されたものであり,かつ物理下りリンク制御チャネル送信が前記端末装置の前記セカンダリセルグループのセル無線ネットワーク一時識別子にアドレス指定されている場合,前記競合解消を成功とみなし,前記ランダムアクセス手順が完了したとみなす」との発明特定事項を有しているのに対し,引用発明は,競合ベースでランダムアクセス手順を行うものの,当該事項が明示されていない点。

以下,各相違点について検討する。
[相違点1について]
公知技術1のとおり,「UEが,UE内でデュアルコネクティビティをサポートするために,1つのMACエンティティのみを有するか,あるいはMeNB向けのMACエンティティとSeNB向けのMACエンティティとを有する。」ことは公知技術であるから,引用発明において相違点1の構成を備えるようにすること格別困難なことではなく,当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2について]
公知技術2のとおり,「デュアルコネクティビティを構成するとき,SeNBは,SeNB内の新しいセルのC-RNTIをMeNBを介してUEに送信する。」ことは公知技術であるから,引用発明において相違点2の構成を備えるようにすること格別困難なことではなく,当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点3について]
技術常識1のとおり,「C-RNTI MAC制御エレメントが含まれたMsg3が送信されると,UEは,PDCCHを監視し,PDCCH送信の受信の通知を下位レイヤから受信すると,PDCCH送信がC-RNTIにアドレス指定される場合,競合解決が成功したとみなし,ランダムアクセス手順が成功裏に完了したとみなす。」ことは,当業者における技術常識である。してみると,引用発明は,競合ベースでランダムアクセス手順を行うのであるから,相違点3の構成は明示されていないが当然に有している構成といえ,これは引用例1の図2.2-1のステップ10cにてUEがSeNBに送信するMsg3にC-RNTIが含まれていることとも整合する。したがって,相違点3は実質的な相違点ではない。

そして,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び公知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び公知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。



第3 本願発明について

1 本願発明
平成31年4月3日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 平成31年4月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「1 本件補正の概要」の項中の「(2)本件補正前の特許請求の範囲」の「【請求項1】」のとおりのものと認める。


2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,請求項1に対して,引用例1及び引用例2が引用されている。


3 引用発明,及び,公知技術
引用発明及び公知技術は,上記「第2 平成31年4月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)引用発明,及び,公知技術」の項で認定したとおりである。


4 対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は本件補正発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明と引用発明との相違点は上記「[相違点1]」のみであり,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した本件補正発明が,上記「第2 平成31年4月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(3)対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明及び公知技術に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。
そうすると,本願発明は引用発明及び公知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び公知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。


5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-05-13 
結審通知日 2020-05-19 
審決日 2020-06-03 
出願番号 特願2016-536788(P2016-536788)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古市 徹  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 本郷 彰
井上 弘亘
発明の名称 マルチ接続性オペレーションのためのシステムおよび方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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