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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63H |
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管理番号 | 1364664 |
審判番号 | 不服2019-10095 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-08-01 |
確定日 | 2020-07-28 |
事件の表示 | 特願2015-528712「磁気的な相互接続によるモジュラー電子ビルディングシステム、およびその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月27日国際公開、WO2014/032043、平成27年 9月10日国内公表、特表2015-526208〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年8月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年8月24日、米国、2012年11月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月10日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、平成30年4月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月15日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、平成31年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和1年8月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和1年8月1日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の本願の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものとなった。 「第1外縁側面と、前記第1外縁側面に対向する第2外縁側面と、第1外縁端面と、前記第1外縁端面に対向する第2外縁端面と、を有する第1回路基板であって、前記第1外縁側面および前記第2外縁側面は、前記第1外縁端面および前記第2外縁端面の両方とそれぞれ異なり、前記第1回路基板は、前記第1外縁側面および前記第2外縁側面の間に幅を規定し、前記第1外縁端面および前記第2外縁端面の間に長さを規定する、第1回路基板と、 第1コネクタであって、前記第1コネクタの外縁側面が、前記第1回路基板の前記第1外縁側面および前記第2外縁側面の一方に位置合わせされるように前記第1回路基板に恒久的に実装される、第1コネクタと、 第2コネクタであって、前記第2コネクタの外縁端面が、前記第1回路基板の前記第1外縁端面および前記第2外縁端面の一方に位置合わせされるように前記第1回路基板に恒久的に実装される、第2コネクタと、を含む装置であって、 前記第1コネクタは、その外縁端面に、第2回路基板に結合された第3コネクタ上の第2導体に係合するように構成された少なくとも1つの第1導体を含み、前記第2コネクタは、その外縁端面に、第3回路基板に結合された第4コネクタ上の第4導体に係合するように構成された少なくとも1つの第3導体を含む、装置。」 第3 原査定における拒絶の理由 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1-2、5-12、14 ・引用文献等 1又は2 ・請求項 4、13 ・引用文献等 1又は2 ・請求項 15-18 ・引用文献等 1又2 <引用文献等一覧> 1.実願昭60-151191号(実開昭62-60065号)のマイクロフィルム 2.LittleBits' electric LEGOs get supercharged with new cash,The Verge,2012年8月20日,平成29年6月8日検索,URL,https://web.archive.org/web/20120820112825/https://www.theverge.com/2012/7/18/3167296/littlebits-electrical-legos-funding 第4 引用例 1 記載事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された「LittleBits' electric LEGOs get supercharged with new cash, The Verge, 2012年8月20日, 平成29年6月8日検索, URL,https://web.archive.org/web/20120820112825/https://www.theverge.com/2012/7/18/3167296/littlebits-electrical-legos-funding」(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。(なお、括弧内の翻訳は当審で作成した。また、下線は当審で付した。) (1)「LittleBits makes tiny, LEGO-like circuit boards that snap together to form rudimentary machines, from a coffee maker to a motion-sensored night light.」 (リトルビッツは、コーヒーメーカーからモーションセンサー付きの夜間照明まで、初歩的な機械を形成するために、互いに結合する小さなレゴのような回路基板を製造している。) (2)「A MODULE CONSISTS OF A CIRCUIT BOARDBUILT TO DO ONE THING. THE MAGIC IS IN COMBINING THEM.」 (1つのモジュールは、1つのことを行うために作られた回路基板で構成される。複数のモジュールを組み合わせることがマジックである。) (3)「Just the magnetic connectors that allowthe modules to easily snap together took two and a half years to build, Bdeir said.」 (モジュールを簡単に互いに結合する磁気コネクタを構築するのに2年半かかった、とビーディールは言った。) (4)「 」 引用例に掲載された上記画像から、以下の点が看取できる。 「平面視で外縁が長方形状の白色板と、 前記白色板の各4辺に設けられた直方体状のコネクタと、からなるモジュールであって、 各コネクタの白色板の基板面に垂直な4面はそれぞれ白色板のいずれかの辺と平行に配置され、 各コネクタの白色板の外方に露出する面には、2本の銀色端子の端部及び3本の金色端子の端部が設けられ、 白色板には、各コネクタの金色端子の延長線上に素子が設けられている、モジュール。」 (5)上記(1)乃至(4)より、複数のモジュールは、2本の銀色端子の磁力によって、互いに結合し、3本の金色端子の端部が互いに接続されることで、全体として電子機器を構成するものと認められる。 そうすると、上記(4)の白色板、コネクタ、各コネクタに設けられた2本の銀色端子、白色板に設けられた素子、及び各コネクタに設けられた3本の金色端子は、それぞれ、回路基板、磁気コネクタ、モジュール同士を結合させるための磁気を発生する2本の磁性端子、回路素子、及びモジュール同士が結合された際に電気的接続端子となる3本の導体と推認できる。 してみると、引用例に掲載された上記画像から、 「平面視で外縁が長方形状の回路基板と、 前記回路基板の各4辺に設けられた直方体状の磁気コネクタと、からなるモジュールであって、 各磁気コネクタの回路素子の基板面に垂直な4面はそれぞれ回路基板のいずれかの辺と平行に配置され、 各磁気コネクタの回路基板の外方に露出する面には、モジュール同士を結合させるための磁気を発生する2本の磁性端子の端部及びモジュール同士が結合された際に電気的接続端子となる3本の導体の端部が設けられ、 回路基板には、各磁気コネクタの導体の延長線上に素子が設けられている、モジュール。」 が認められる。 上記記載事項(1)乃至(5)から、引用例には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明」という。) 「平面視で外縁が長方形状の回路基板と、 前記回路基板の各4辺に設けられた直方体状の磁気コネクタと、からなるモジュールであって、 各磁気コネクタの回路素子の基板面に垂直な4面はそれぞれ回路基板のいずれかの辺と平行に配置され、 各磁気コネクタの回路基板の外方に露出する面には、モジュール同士を結合させるための磁気を発生する2本の磁性端子の端部及びモジュール同士が結合された際に電気的接続端子となる3本の導体の端部が設けられ、 回路基板には、各磁気コネクタの導体の延長線上に素子が設けられ、 磁気コネクタの磁性端子により、互いに結合される、モジュール。」 2 公知日 上記1で摘記した記載事項は、Wayback Machineに,2012年8月20日に保存されたところ,引用発明は,遅くとも,本願の優先日前である2012年8月20日には,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であると認められる。 第5 対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 後者の「回路基板」、「磁気コネクタ」、「導体」及び「モジュール」は、それぞれ、前者の「回路基板」、「コネクタ」、「導体」及び「装置」に相当する。 後者の「回路基板」は、平面視で外縁が長方形状であって、回路基板が所定の厚みを有していることは技術常識といえるから、前者の「第1回路基板」と後者の「回路基板」とは、「第1外縁側面と、前記第1外縁側面に対向する第2外縁側面と、第1外縁端面と、前記第1外縁端面に対向する第2外縁端面と、を有する第1回路基板であって、前記第1外縁側面および前記第2外縁側面は、前記第1外縁端面および前記第2外縁端面の両方とそれぞれ異なり、前記第1回路基板は、前記第1外縁側面および前記第2外縁側面の間に幅を規定し、前記第1外縁端面および前記第2外縁端面の間に長さを規定する、第1回路基板」である点で一致する。 後者の「コネクタの回路基板の外方に露出する面」には、磁性端子の端部及び導体の端部が設けられているから、後者の「コネクタの回路基板の外方に露出する面」は、前者の「外縁端面」に相当する。 ここで、本願明細書の「コネクタ452Bが回路基板456Bに結合されると、回路基板456Bの側部の縁457Bは、コネクタ452Bの側部の縁または側面451Bと実質的に同一平面に配置される。」(【0068】参照。)との記載及び審判請求書の「引用文献2のコネクタの側面は回路基板の外縁側面や外縁端面よりも内側に後退しています。」との主張を参酌すると、本願発明の「第1コネクタの外縁側面が第1回路基板の第1外縁側面および第2外縁側面の一方に位置合わせされる」とは、第1コネクタの外縁側面が第1回路基板の第1外縁側面および第2外縁側面の一方と面一に位置合わせされることを意味し、また、本願発明の「前記第2コネクタの外縁端面が、前記第1回路基板の前記第1外縁端面および前記第2外縁端面の一方に位置合わせされる」とは、第2コネクタの外縁端面が第1回路基板の第1外縁端面および第2外縁端面の一方と面一に位置合わせされることを意味するものと解される。 これに対し、後者の「磁気コネクタ」は、回路基板の4辺に設けられ、回路基板に垂直な4面はそれぞれ回路基板のいずれかの辺と平行に配置されるものであることから、前者の「第1コネクタ」及び「第2コネクタ」と後者の「磁気コネクタ」とは、「第1回路基板に実装される、コネクタ」である点で一致する。 後者の「コネクタの3本の導体」は、モジュール同士が結合された際に電気的接続端子となるのであるから、後者の「『各コネクタ』の『3本の導体』」は、前者の「『少なくとも1つの第1導体』及び『少なくとも1つの第3導体』」に相当し、結合するモジュールのコネクタに設けられた導体と「係合する」といえる。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「第1外縁側面と、前記第1外縁側面に対向する第2外縁側面と、第1外縁端面と、前記第1外縁端面に対向する第2外縁端面と、を有する第1回路基板であって、前記第1外縁側面および前記第2外縁側面は、前記第1外縁端面および前記第2外縁端面の両方とそれぞれ異なり、前記第1回路基板は、前記第1外縁側面および前記第2外縁側面の間に幅を規定し、前記第1外縁端面および前記第2外縁端面の間に長さを規定する、第1回路基板と、 第1コネクタであって、前記第1回路基板に実装される、第1コネクタと、 第2コネクタであって、前記第1回路基板に実装される、第2コネクタと、を含む装置であって、 前記第1コネクタは、その外縁端面に、第2回路基板に結合された第3コネクタ上の第2導体に係合するように構成された少なくとも1つの第1導体を含み、前記第2コネクタは、その外縁端面に、第3回路基板に結合された第4コネクタ上の第4導体に係合するように構成された少なくとも1つの第3導体を含む、装置。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 第1コネクタが、本願発明では、その外縁側面が、第1回路基板の第1外縁側面および第2外縁側面の一方に位置合わせされるように第1回路基板に恒久的に実装されているのに対し、引用発明は、回路基板に垂直な4面はそれぞれ回路基板のいずれかの辺と平行に配置され、回路基板への実装の態様については不明である点。 [相違点2] 第2コネクタが、本願発明では、その外縁端面が、第1回路基板の第1外縁端面および第2外縁端面の一方に位置合わせされるように第1回路基板に恒久的に実装されているのに対し、引用発明は、回路基板に垂直な4面はそれぞれ回路基板のいずれかの辺と平行に配置され、回路基板への実装の態様については不明である点。 第6 判断 上記相違点1及び相違点2について、上記相違点2から、以下、検討する。 1 [相違点2]について 本願発明において、「恒久的に実装」するとは、どのような態様を特定しているのかは、当初明細書等を参酌しても、定かでないところ、電子組立ブロックの分野における技術常識からすると、通常の使用に際して、容易に分解されない程度に実装されているものと解し得る。 そうすると、引用発明の「モジュール」において、「磁気コネクタ」の磁力によって、モジュール同士を結合させて、全体として電子機器を構成するという用途からすると、「磁気コネクタ」を、回路基板に対して着脱させる形態を採用しているものとは推認できないし、仮に、そうでないとしても、回路基板に対して、「磁気コネクタ」を「恒久的に実装」することは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項といえる。 また、引用発明において、磁気コネクタの4面は、回路基板のいずれかの辺と平行に配置されているところ、磁気コネクタに設けられた2本の磁性端子によって、モジュール同士は結合され、磁気コネクタに設けられた3本の導体が電気的接続端子となるのであるから、回路基板の外方に露出する磁気コネクタの面、磁性端子の端部及び導体の端部は、回路基板の辺と、少なくとも面一とし、結合する各モジュールの磁性端子の端部及び導体の端部同士が接触(本願発明の「係合」に相当)すればよいことは明らかである。 そうすると、引用発明において、回路基板の外方に露出する磁気コネクタの面を、回路基板の辺と面一となるように配置することは、当業者が適宜なし得る程度のことである。 してみると、上記相違点2に係る本願発明は、引用発明において、回路基板の辺と平行な磁気コネクタの面を、回路基板の辺と面一となるように配置することにより、第2コネクタの外縁端面が、第1回路基板の第1階縁端面および第2外縁端面の一方に位置合わせされる、すなわち、面一とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。 2 [相違点1]について 引用発明において、磁気コネクタの4面は、回路基板のいずれかの辺と平行に配置されているところ、回路基板の長辺と平行な磁気コネクタの面の位置については、モジュール同士の結合に際して障害とならない位置でありさえすればよいことは明らかである。 そうすると、引用発明において、回路基板の長辺と平行な磁気コネクタの面を、回路基板の長辺と面一となるように配置することは、当業者が適宜なし得る程度のことである。 してみると、上記相違点1に係る本願発明は、引用発明において、回路基板の長辺と平行な磁気コネクタの面を、回路基板の長辺と面一となるように配置することにより、第2コネクタの外縁側面が、第1回路基板の第1階縁側面および第2外縁側面の一方に位置合わせされる、すなわち、面一とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。 そして、本願発明によって奏される効果も、引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものといえる。 したがって、本願発明は、引用発明より、当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-03-05 |
結審通知日 | 2020-03-06 |
審決日 | 2020-03-18 |
出願番号 | 特願2015-528712(P2015-528712) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 比嘉 翔一 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 清水 康司 |
発明の名称 | 磁気的な相互接続によるモジュラー電子ビルディングシステム、およびその使用方法 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 江口 昭彦 |