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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02G |
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管理番号 | 1364696 |
審判番号 | 不服2019-10599 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-08-08 |
確定日 | 2020-08-18 |
事件の表示 | 特願2015-148862「配線器具用部材」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017- 34735、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年7月28日の出願であって,平成30年11月13日付けで拒絶理由通知がされ,平成31年1月21日に意見書が提出され,平成31年4月22日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和1年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成31年4月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1-9,11に係る発明は,以下の引用文献1及び2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 引用文献1:実願昭47-98969号(実開昭49-56492号)のマイクロフィルム 引用文献2:特開2002-259595号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1乃至11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明11」という。)は,令和1年8月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 造営材の表面側に配設して用いる配線器具用部材であって、配線器具を露出させる開口部を有し、かつ電気絶縁性を有する部材本体と、前記部材本体の管理情報を記憶した記憶部と、前記管理情報を、締め付け力を含む施工情報と対応付けるために、前記管理情報を含む無線信号を外部機器へ送信する送信部と、前記送信部を制御する制御部と、前記記憶部と前記送信部と前記制御部とに電源を供給する電源部と、を備える、 ことを特徴とする配線器具用部材。 【請求項2】 前記外部機器からの前記部材本体に関連する情報を含む無線信号を受信するための受信部を備え、前記制御部は、前記受信部で受信した無線信号に含まれている情報を前記記憶部に記憶させるように構成されている、 ことを特徴とする請求項1記載の配線器具用部材。 【請求項3】 外部の給電装置から受電するように構成される受電部を備え、前記受電部は、前記電源部に電力を供給する、 ことを特徴とする請求項1又は2記載の配線器具用部材。 【請求項4】 前記受電部は、前記給電装置から磁気結合若しくは電界結合若しくは電磁界結合により受電するように構成されている、 ことを特徴とする請求項3記載の配線器具用部材。 【請求項5】 前記部材本体は、配線器具を取り付けることができるように構成された取付枠である、 ことを特徴とする請求項4記載の配線器具用部材。 【請求項6】 前記部材本体は、取付枠に取り付けることができるように構成されたプレート枠である、 ことを特徴とする請求項4記載の配線器具用部材。 【請求項7】 前記部材本体は、プレート枠に取り付けることができるように構成された化粧プレートである、 ことを特徴とする請求項4記載の配線器具用部材。 【請求項8】 前記受電部は、前記部材本体に設けられ前記開口部を囲んでいる、 ことを特徴とする請求項3乃至7のいずれか一項に記載の配線器具用部材。 【請求項9】 前記受電部は、金属箔により形成されている、 ことを特徴とする請求項3乃至8のいずれか一項に記載の配線器具用部材。 【請求項10】 前記受電部は、金属箔であり、前記部材本体の前記開口部を塞ぐように配置されたフィルム状シートの周部に内蔵されている、 ことを特徴とする請求項5又は6記載の配線器具用部材。 【請求項11】 前記受電部は、金属線からなるコイルである、 ことを特徴とする請求項3乃至8のいずれか一項に記載の配線器具用部材。」 第4 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について ア 本願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,実願昭47-98969号(実開昭49-56492号)のマイクロフィルム(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。) a 「本考案は、このような点を改良しようとするもので、本体部に一体化したプレート部の前面に装飾カバーを着脱自在に装着し、この装着カバーにより覆われるプレート部に頭部を臨ませた取付けねじを配するとともに、プレート部の装着カバーによって覆われる部分に表示を形成し、これによって、プレート部に取付け方法および取扱い方法などを表示することにより、着脱時に取付けねじをあらわすために装着カバーを取りはずせば、作業者の目に必らずつき、操作を確実に行うことができ、説明書やラベルのように失われるおそれがなく、しかも、通常時は装着カバーにより取付けねじとともに表示は覆われており、外観を良好に保持できるようにしたものである。」(明細書第2頁第8行?第3頁第7行) b 「本考案の一実施例を図面について説明する。 (1)はスイッチ、コンセント、テレビアンテナ線接続器などの器具本体でこの本体(1)は、上下方向に長い長方形状の基部(2)の外面中央部に上下方向に長い長方形状の嵌合部(3)が突設されている。 (4)は合成樹脂で一体に成形された上下方向に長い長方形状のプレートで、このプレート(4)の中央部に前記本体(1)の嵌合部(3)の嵌合する嵌合孔(5)が穿設されているとともに、プレート(4)の表面両側部に線片(6)が膨出形成され、この両側の線片(6)の内側上下部位置に係合孔(7)が穿設されている。そして、前記本体(1)の嵌合部(3)に嵌合孔(5)を介して上記プレート(4)が嵌合されているとともに、プレート(4)の上下部から本体(1)の基部(2)の上下部に螺合したねじ(8)で一体的に固定されている。 さらに、上記プレート(4)の表面には、後述する固着装置の操作方法を記した文字(9)および矢印などの図形(10)などの表示(11)が一体に膨出成形または印刷されている。」(明細書第3頁第8行?第4頁第13行) c 「図1 」 d 「図3 」 イ 図3(上記c)によれば,「プレート(4)」が「壁体(22)」の表面側に配設して用いられていることが看取できる。 ウ 上記bには,「(1)はスイッチ、コンセント、テレビアンテナ線接続器などの器具本体」であることが記載され,また,上記bには,「(4)は合成樹脂で一体に成形された上下方向に長い長方形状のプレートで、このプレート(4)の中央部に前記本体(1)の嵌合部(3)の嵌合する嵌合孔(5)が穿設されている」こと、さらに、「上記プレート(4)の表面には、後述する固着装置の操作方法を記した文字(9)および矢印などの図形(10)などの表示(11)が一体に膨出成形または印刷されている」ことが記載されている。 してみると,引用文献1には“プレート(4)は,合成樹脂で一体に成形された上下方向に長い長方形状のプレートであって,中央部にスイッチ,コンセント,テレビアンテナ線接続器などの器具本体(1)の嵌合部(3)の嵌合する嵌合孔(5)が穿設され,さらに,表面には固着装置の操作方法を記した文字(9)および矢印などの図形(10)などの表示(11)が一体に膨出成形または印刷されている”ことが記載されているといえる。 エ したがって,上記引用文献1の上記記載及び図面を総合すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 「壁体(22)の表面側に配設して用いられるプレート(4)において, 該プレート(4)は,合成樹脂で一体に成形された上下方向に長い長方形状のプレートであって,中央部にスイッチ,コンセント,テレビアンテナ線接続器などの器具本体(1)の嵌合部(3)の嵌合する嵌合孔(5)が穿設され,さらに,表面には固着装置の操作方法を記した文字(9)および矢印などの図形(10)などの表示(11)が一体に膨出成形または印刷されている, プレート(4)。」 2 引用文献2について 本願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-259595号公報(以下,これを「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 a 「【0006】 【発明の実施の形態】図1は、本発明が適用される機銘板(RF(radio frequency)-ID(identifier)タグ)の一実施の形態の外観図である。いま、このRF-IDタグ1は、ラベルプリンタに貼付されているものとする。同図に示すように、RF-IDタグ1は、例えば、CPU(central processing unit)、RAM(random access memory)、及びROM(read only memory)等からなるIC(integrated circuit)チップ2と、プリントされたアンテナ3等により構成され、後述するデータ記録装置40より送信される、例えば2乃至3ギガヘルツ(GHz)の電波をアンテナ3が受信し、受信した電波を電力に変換し、ICチップ2を動作させ、後述する記憶部22に記録されている製品番号や調整データ等の保守点検データに対応する信号をアンテナ3を介して電波により送信したり、アンテナ3を介して受信した信号に対応する調整データ等の保守点検データを記憶部22に記憶させるようになっている。 【0007】図2は、RF-IDタグ1の電気的な構成例を示すブロック図である。ICチップ2は、図示せぬCPU、RAM、ROM等により構成される制御部21と、アンテナ3と、アンテナ3を介して電波によりデータの送受信を行う通信制御部23と、製造番号、製造年月日、調整データ、検査データ等の各種データを記憶する記憶部22とから構成されている。」 b 「図1 」 c 「図2 」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「壁体(22)」,「スイッチ,コンセント,テレビアンテナ線接続器などの器具本体(1)」は,各々,本願発明1の「造営材」,「配線器具」に相当する。 さらに,引用発明の「プレート(4)」は,「中央部にスイッチ,コンセント,テレビアンテナ線接続器などの器具本体(1)」が嵌合し取り付けられものであるから,本願発明1の「配線器具用部材」に相当する。 そして,引用発明の「壁体(22)の表面側に配設して用いられるプレート(4)」は,本願発明1の「造営材の表面側に配設して用いる配線器具用部材」に相当する。 イ 引用発明の「プレート(4)」の「嵌合孔(5)」は,「スイッチ,コンセント,テレビアンテナ線接続器などの器具本体(1)の嵌合部(3)の嵌合する」開口であって,嵌合した状態では器具本体(1)は露出しているものと認められることから,本願発明1の「配線器具を露出させる開口部」に相当する。 そして,引用発明の「プレート(4)」は,中央部に「嵌合孔(5)」を有し,「合成樹脂で一体に成形された」ものであって,通常,合成樹脂は絶縁性であるから,引用発明は,本願発明1の「配線器具を露出させる開口部を有し,かつ電気絶縁性を有する部材本体」に相当する構成を有するものと認められる。 ウ 引用発明の「固着装置の操作方法を記した文字(9)および矢印などの図形(10)」は,プレート(4)を取り付けるための情報であるから,本願発明1の「前記部材本体の管理情報」に相当する。 そして,引用発明の「表示(11)」は,「固着装置の操作方法を記した文字(9)および矢印などの図形(10)などの一体に膨出成形または印刷」したものであるから,引用発明の「表示(11)」と,本願発明1の「前記部材本体の管理情報を記憶した記憶部」とは,後記する点で相違するものの,“前記部材本体の管理情報を保持する手段”である点で共通する。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。 〈一致点〉 「造営材の表面側に配設して用いる配線器具用部材であって,配線器具を露出させる開口部を有し,かつ電気絶縁性を有する部材本体と,前記部材本体の管理情報を保持する手段部と,を備える, 配線器具用部材。」 〈相違点〉 「前記部材本体の管理情報を保持するする手段」が,本願発明1では「前記部材本体の管理情報を記憶した記憶部」であって,さらに,「前記管理情報を、締め付け力を含む施工情報と対応付けるために、前記管理情報を含む無線信号を外部機器へ送信する送信部と、前記送信部を制御する制御部と、前記記憶部と前記送信部と前記制御部とに電源を供給する電源部と、を備える」ものであるのに対して,引用発明では「表示(11)」であって,そのような送信部,制御部,電源部を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 機器の情報を管理する手段として,機器の情報を記憶する記憶部と,情報を含む無線信号を外部機器へ送信する送信部と,前記送信部を制御する制御部と,前記記憶部と前記送信部と前記制御部とに電源を供給する電源部と,を備えるいわゆるRF-IDタグを機器本体に貼付することは,引用文献2(上記第4 2)に記載されるように周知の技術である。 しかしながら,引用発明における機器管理情報である「表示(11)」は,引用文献1に「プレート部の装着カバーによって覆われる部分に表示を形成し、これによって、プレート部に取付け方法および取扱い方法などを表示することにより、着脱時に取付けねじをあらわすために装着カバーを取りはずせば、作業者の目に必らずつき、操作を確実に行うことができ」(上記第4 1 a)るものであると記載されるように,装着カバーを取りはずせば,作業者の目に必らずつくことで操作を確実に行うようにしたものである。してみると,引用発明の「表示(11)」に代えて周知のRF-IDタグを用いた際には,装着カバーを取りはずしても取付け方法および取扱い方法などを見ることができなくなってしまうことから,引用発明の「表示(11)」に代えて周知のRF-IDタグを用いることには阻害要因が存在する。さらに,引用発明において「表示(11)」に加え周知のRF-IDタグを貼付することについて検討すると,引用発明において,「表示(11)」は装着カバーを取りはずせば必ず作業者の目につくものであって,更に,この表示の情報を他の機器等で表示させる必要がないことから,「表示(11)」に加え周知のRF-IDタグを貼付する動機付けが存在しない。 したがって,本願発明1が引用発明及び引用文献2に記載の周知の技術に基づき当業者が容易に構成し得たものであるとはいえない。 以上のとおりであるから,本願発明1が引用発明及び引用文献2に記載の周知の技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2乃至11について 本願発明2乃至11は,本願発明1を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載の周知の技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定について <特許法29条2項について> 審判請求時の補正により,本願発明1乃至11は上記第3に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1及び2(上記第4の引用文献1及び2)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-07-29 |
出願番号 | 特願2015-148862(P2015-148862) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H02G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 久保 正典 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
小林 秀和 山澤 宏 |
発明の名称 | 配線器具用部材 |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |