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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1364713 |
審判番号 | 不服2018-13903 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-19 |
確定日 | 2020-07-31 |
事件の表示 | 特願2015-548146「裸眼立体提示を回転可能に表示する表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月 3日国際公開、WO2014/100960、平成28年 3月24日国内公表、特表2016-509388〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2012年(平成24年)12月24日を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 平成28年 7月 7日付け:拒絶理由通知書 平成29年 1月12日 :意見書,手続補正書の提出 平成29年 7月26日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 平成30年 1月31日 :意見書,手続補正書の提出 平成30年 6月18日付け:平成30年1月31日の手続補正につい ての補正の却下の決定,拒絶査定 平成30年10月19日 :審判請求書,手続補正書の提出 令和 1年 9月 3日付け:拒絶理由通知書(当審) 令和 1年12月26日 :意見書,手続補正書の提出 第2 本願発明 令和1年12月26日の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。 なお,本願発明における各構成の符号は,説明のために当審において付与したものであり,以下,構成Aないし構成Fと称する。 「 【請求項1】 (A)表示装置であって, (B)画像データに基づいて複数の画素によって形成されたコンテンツを表示する表示スクリーン装置と, (C)スリット部分及びマスク部分を形成する画素構成に複数の画素を含み,前記表示スクリーン装置と連係して裸眼立体提示を表示するように構成されたパララックス・バリアと, (D)前記表示装置の,前記表示スクリーン装置の表面に垂直な軸を回転の中心とする基準回転位置からの回転を検知するセンサと, (E)(E1)前記表示スクリーン装置の前記複数の画素の構成と前記パララックス・バリアの前記画素構成とが,前記基準回転位置からの第1方向と反対の第2方向の前記表示装置の前記回転の,前記センサによる検出に応じて前記第1方向に回転するように構成され,(E2)前記表示スクリーン装置の画素によって形成された前記コンテンツ,並びに前記パララックス・バリアの画素によって形成された前記スリット部分及び前記マスク部分が,前記表示装置の前記回転を補償するよう再マッピングされるように,前記表示スクリーン装置の前記画素構成と前記パララックス・バリアとの前記回転が,大きさが等しく前記表示装置の前記回転と反対方向であり,(E3)前記マスク部分の画素と前記パララックス・バリアとが,第1モードにおいて少なくとも部分的に不透明であり,第2モードにおいて透明である,(E4)プロセッサと, を備え, (F)前記パララックス・バリアの前記画素構成の解像度が,前記表示スクリーン装置の前記画素構成の解像度よりも高い, (A)前記表示装置。」 第3 拒絶の理由 令和1年9月3日付けで当審が通知した拒絶理由の理由1は,次のとおりのものである。 この出願の請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:国際公開第2012/046686号 引用文献2:特開2012-185231号公報 引用文献3:国際公開第2012/030092号(特表2013-541036号公報参照) 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2012/046686号(2012年4月12日国際公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付したものである。以下,同様。) (1)「[0012] 好ましくは,画像表示機器は,当該画像表示機器の縦横の姿勢を検出するように構成された姿勢検出部をさらに備える。コントローラは,画像表示機器の姿勢が縦と横との間で切り替わるときに,斜め方向の視差バリアを形成部に形成させるように構成されている。 [0013] 好ましくは,画像表示機器は,当該画像表示機器の縦横の姿勢を検出するように構成されたセンサをさらに備える。コントローラは,画像表示機器の姿勢が縦と横との間で切り替わるときに,画像表示機器の回転に応じて画像を表示するためにデータが出力される画素を選択するように構成されている。」 (2)「[0029] 図1および図2を参照して,本実施の形態に係る携帯電話機100の構成について説明する。図1は,携帯電話機100が開かれた状態を表わす図である。図2は,携帯電話機100が折り畳まれた状態を表わす図である。 [0030] (省略) [0031] 携帯電話機100は,さらに,スピーカ140と,タッチパネル式のディスプレイ150と,複数のボタン160と,マイク170とを備える。スピーカ140は,筐体110に取り付けられている。タッチパネル式のディスプレイ150は,筐体110に取り付けられている。ディスプレイ150は,液晶タイプ,有機EL(Electroluminescence)タイプその他の表示装置である。携帯電話機100が開かれた状態(「第1の状態」ともいう)であるとき,ディスプレイ150は,二軸ヒンジ130によって,複数のボタン160が配置されている面と同じ方向および背面の方向のいずれをも向くように構成されている。」 (3)「[0035] 図3を参照して,本実施の形態に係る携帯電話機100のハードウェア構成について説明する。図3は,携帯電話機100のハードウェア構成の表わすブロック図である。携帯電話機100は,図1に示される構成に加えて,通信装置302と,チューナ304と,アンテナ306,308と,CPU(Central Processing Unit)310と,測位処理部312と,測位信号受信フロントエンド部314と,GPS(Global Positioning System)アンテナ316と,カメラ320と,フラッシュメモリ344と,RAM(Random Access Memory)346と,ROM(Read Only Memory)348と,音声信号処理回路370と,LED(Light Emitting Diode)376と,メモリカード駆動装置380と,データ通信I/F(Interface)378と,バイブレータ384とを備える。メモリカード駆動装置380には,メモリカード382が装着され得る。」 (4)「[0040] RAM346は,ボタン160に対して行なわれた操作に基づいてCPU310によって生成されるデータを一時的に保持する。ROM348は,携帯電話機100に予め定められた動作を実行させるためのプログラムあるいはデータを格納している。CPU310は,ROM348から当該プログラムまたはデータを読み出し,携帯電話機100の動作を制御する。」 (5)「[0049] 図4を参照して,本実施の形態に係る携帯電話機100による輝度変化について説明する。図4は,2次元表示と3次元表示との間の切り替え時における輝度変化を説明するための図である。 [0050] グラフAに示されるように,ディスプレイ150を2次元表示(2D)と3次元表示(3D)との間で切り替える制御(LCD制御)が行われる場合,通常は,バックライト電流(BL電流)は,一定レベルである。この場合,輝度(すなわち見た目)は,2次元表示の場合の輝度を100%とすると,3次元表示の場合の輝度は,約50%となる。これは,状態BおよびCに示されるように,ディスプレイ150に含まれる液晶表示パネル400の上部(表示出力方向)に配置されたスイッチング液晶410において,視差バリア420,421,422,423が,3次元表示の時に形成されて,液晶表示パネル400から発せられる光量が減少するためである。」 (6)「[0051] 図5を参照して,輝度変化についてさらに説明する。図5は,ディスプレイ150が縦長方向および横長方向のいずれでも,その姿勢に応じて画像を表示可能な場合におけるディスプレイ150の構成を表わす図である。 [0052] 図5において,状態Aに示されるように,ディスプレイ150が縦長方向にある場合,スリット510,511,512を構成するために,視差バリア520,521,522,523が形成される。図5の状態Bに示されるように,ディスプレイ150が横長方向にある場合,スリット540,541,542を構成するために視差バリア530,531,532,533が形成される。スリット510,511,512の各幅は,スリット540,541,542の各幅よりも大きい。したがって,図5に示される例では,携帯電話機100が縦方向にある場合の輝度は,横方向にある場合の輝度よりも大きくなる。したがって,縦長の姿勢で3次元の画像を表示している携帯電話機100を90度程度回転させることにより横方向に姿勢を変えると,輝度が低下することになる。」 (7)「[0067] 次に,図12を参照して,さらに他の局面における携帯電話機100の動作について説明する。図12は,3次元表示を行なっている携帯電話機100を時計回りに約90度回転させた時に形成される視差バリアを表わす図である。 [0068] 携帯電話機100が縦方向に把持されている場合に3次元表示を行なっているとき,状態Aに示されるように,視差バリア1210,1220,1230,1240は,縦方向に形成される。この状態で,この局面に従う携帯電話機100を時計回りに回転すると,状態Bに示されるように,たとえば,約45度回転させた時点で,視差バリア1210,1220,1230,1240は,回転角度に応じた傾き(すなわち約45度)で形成される。その後,さらに,携帯電話機100が回転されて横方向になると,状態Cに示されるように,視差バリア1210,1220,1230,1240は,横方向に形成される。このようにすると,3次元の画像を表示しているディスプレイ150が回転されても,回転途中の位置においても3次元画像が表示される(状態B)。したがって,携帯電話機100の姿勢が切り替わっても,3次元の画像が適切に表示される。」 (8)「[図12] 」 (9)「[0070] 次に,図13を参照して,さらに他の局面における携帯電話機100の動作について説明する。図13は,3次元表示を行なっている携帯電話機100を時計回りに約90度回転させた時の画素の配置を表わす図である。 [0071] 状態Aに示されるように,携帯電話機100が縦方向に把持されている場合に3次元表示を行なっているとき,携帯電話機100は,左目用の画像(L)を領域1310に表示し,右目用の画像(R)を領域1320に表示している。このとき,左目用の画像および右目用の画像においては,いずれも,左方向から右方向にRGBの配列1350が形成されているとする。 [0072] 状態Bに示されるように,この局面に従う携帯電話機100が時計方向に約45度回転されると,左目用の画像(L)は,回転位置に応じて,領域1330に表示される。その後,携帯電話機100がさらに回転され(状態C),90度回転されて横方向になる(状態D)。ディスプレイ150は,横長方向の状態で,3次元の画像を表示する。すなわち,左目用の画像は,領域1330に表示され,右目用の画像は,領域1310に表示される。 [0073] この場合,左目用の領域1310が表示される領域は,状態A,B,Cにおいて異なる。このような領域の変更は,ある局面において,携帯電話機100が,その回転位置を検知し,その回転角に応じて行なわれる。たとえば,携帯電話機100の姿勢が,状態Aに示される位置から,状態Bに示される位置に変わった場合,携帯電話機100は,左右に配置される複数の領域(たとえば,領域1330,1320)を検知する。 [0074] 携帯電話機100がさらに回転して,図13(C)に示される位置にある場合も,同じ領域が検出される。その後,携帯電話機100が約90度回転すると,左右方向に配置される領域として,領域1330,1310が検出される。この場合,領域1340,1320の組も左右に配置される関係にあるので,領域1340,1320が検出されてもよい。この局面においては,領域1330,1310の組が,領域1340,1320の組よりも上に来るので,CPU310は,領域1330,1310に3次元表示のための画像を表示する。」 (10)「[図13] 」 (11)「[0098] 他の局面において,携帯電話機100は,その姿勢を検出するための姿勢検出回路,たとえばジャイロセンサをさらに備えていてもよい。このとき,画像処理部1740は,携帯電話機100の姿勢が縦と横との間で切り替わるときに,斜め方向の視差バリアをスイッチング液晶410に形成させるように構成されている。他の局面において,画像処理部1740は,画像表示機器の姿勢が縦と横との間で切り替わるときに,画像表示機器の回転に応じて画像を表示するためにデータが出力される画素を選択するように構成されている。」 2 引用発明 (1)上記1(2)及び(3)の記載から,引用文献1には,「タッチパネル式のディスプレイ150とCPU(Central Processing Unit)310とROM(Read Only Memory)348を備える携帯電話機100」が記載されている。 (2)上記1(5)の段落0050の記載から,引用文献1には,「ディスプレイ150を2次元表示(2D)と3次元表示(3D)との間で切り替える制御(LCD制御)が行われる場合,3次元表示の時にディスプレイ150に含まれる液晶表示パネル400の上部(表示出力方向)に配置されたスイッチング液晶410において視差バリアが形成されて液晶表示パネル400から発せられる光量が減少する」ことが記載されている。 (3)上記1(7)の段落0068?0069及び図12の記載から,引用文献1には,「携帯電話機100が縦方向に把持されている場合に3次元表示を行なっているとき,視差バリアは,縦方向に形成され,携帯電話機100を時計回りに回転すると,約45度回転させた時点で,視差バリアは,回転角度に応じた傾き(すなわち約45度)で形成され,さらに,携帯電話機100が回転されて横方向になると,視差バリアは,横方向に形成され,3次元の画像を表示しているディスプレイ150が回転されても,回転途中の位置においても3次元画像が表示され,携帯電話機100の姿勢が切り替わっても,3次元の画像が適切に表示され」ることが記載されていると認められる。 (4)上記1(9)の段落0071?0072の記載及び図13の記載から,引用文献1には,「ディスプレイ150は,携帯電話機100が縦方向に把持されて3次元表示を行なっているとき左目用の画像(L)を領域1310に表示し,右目用の画像(R)を領域1320に表示し,左目用の画像および右目用の画像にはRGBの配列が形成され,携帯電話機100が時計方向に約45度回転されて3次元表示を行なっているとき左目用の画像(L)を領域1330に表示し,右目用の画像(R)を領域1320に表示し,携帯電話機100がさらに回転されて横方向で3次元表示を行なっているとき左目用の画像(L)を領域1330に表示し,右目用の画像(R)を領域1310に表示」することが記載されていると認められる。 (5)上記1(9)の段落0073の記載及び上記1(11)の段落0098の記載から,引用文献1における携帯電話機100の「姿勢」は,具体的には携帯電話機100の「回転位置」であり,携帯電話機100の「姿勢」を検出するための姿勢検出回路は,携帯電話機100の「回転位置」を検出しているものと認められる。 また,上記1(1)の段落0012及び0013の記載と,上記1(11)の段落0098の記載からみて,段落0098の「画像表示機器」は,「携帯電話機100」のことを指しているものと認められる。 そうすると,上記1(9)の段落0073の記載及び上記1(11)の段落0098の記載から,引用文献1には,「携帯電話機100は,その回転位置を検出するための姿勢検出回路,たとえばジャイロセンサを備え,画像処理部1740は,携帯電話機100の回転位置が縦と横との間で切り替わるときに,斜め方向の視差バリアをスイッチング液晶410に形成させ,また,携帯電話機100の回転位置が縦と横との間で切り替わるときに,携帯電話機100の回転に応じて画像を表示するためにデータが出力される画素を選択するように構成されている」ことが記載されていると認められる。 (6)まとめ 上記(1)?(5),及び,上記1(1)?(11)に摘記した引用文献1の記載事項から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお,引用発明の各構成を,それぞれに付した符号(a)?(g)により,以下,構成a?構成gと称する。 (引用発明) (a)タッチパネル式のディスプレイ150とCPU(Central Processing Unit)310とROM(Read Only Memory)348を備える携帯電話機100であって, (b)ROM348は,携帯電話機100に予め定められた動作を実行させるためのプログラムあるいはデータを格納し,CPU310は,ROM348から当該プログラムまたはデータを読み出し,携帯電話機100の動作を制御し, (c)ディスプレイ150を2次元表示(2D)と3次元表示(3D)との間で切り替える制御(LCD制御)が行われる場合,3次元表示の時にディスプレイ150に含まれる液晶表示パネル400の上部(表示出力方向)に配置されたスイッチング液晶410において視差バリアが形成されて液晶表示パネル400から発せられる光量が減少し, (d)ディスプレイ150が縦長方向にある場合,スリット510,511,512を構成するために視差バリア520,521,522,523が形成され,ディスプレイ150が横長方向にある場合,スリット540,541,542を構成するために視差バリア530,531,532,533が形成され, (e)携帯電話機100が縦方向に把持されている場合に3次元表示を行なっているとき,視差バリアは,縦方向に形成され,携帯電話機100を時計回りに回転すると,約45度回転させた時点で,視差バリアは,回転角度に応じた傾き(すなわち約45度)で形成され,さらに,携帯電話機100が回転されて横方向になると,視差バリアは,横方向に形成され,3次元の画像を表示しているディスプレイ150が回転されても,回転途中の位置においても3次元画像が表示され,携帯電話機100の姿勢が切り替わっても,3次元の画像が適切に表示され, (f)ディスプレイ150は,携帯電話機100が縦方向に把持されて3次元表示を行なっているとき左目用の画像(L)を領域1310に表示し,右目用の画像(R)を領域1320に表示し,左目用の画像および右目用の画像にはRGBの配列が形成され,携帯電話機100が時計方向に約45度回転されて3次元表示を行なっているとき左目用の画像(L)を領域1330に表示し,右目用の画像(R)を領域1320に表示し,携帯電話機100がさらに回転されて横方向で3次元表示を行なっているとき左目用の画像(L)を領域1330に表示し,右目用の画像(R)を領域1310に表示し, (g)携帯電話機100は,その回転位置を検出するための姿勢検出回路,たとえばジャイロセンサを備え,画像処理部1740は,携帯電話機100の回転位置が縦と横との間で切り替わるときに,斜め方向の視差バリアをスイッチング液晶410に形成させ,また,携帯電話機100の回転位置が縦と横との間で切り替わるときに,携帯電話機100の回転に応じて画像を表示するためにデータが出力される画素を選択するように構成されている (a)携帯電話機100。 3 引用文献2,3の記載及び技術 (1)引用文献2の記載 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-185231号公報(2012年9月27日公開。以下「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 ア 「【発明の効果】 【0007】 本発明によれば,表示画面に対する観察者までの距離と位置を限定することなく,常に正確な立体画像を観察することが可能となる。」 イ 「【0012】 液晶モニタ15は,後述する視差バリア方式の立体画像を表示可能な,2層構造の液晶表示パネルとバックライトを有する。」 ウ 「【0024】 表示駆動部35は,上記液晶モニタ15の一部を構成するカラー液晶パネル36により左目用の画像と右目用の画像とを左右方向に相互する縦縞の格子状に表示させることで,立体のスルー画像を表示する。 【0025】 カラー液晶パネル36上には,カラーフィルタを持たず,上記カラー液晶パネル36より高精細の透過型の液晶表示パネルが,適宜間隙を空けて視差バリア部37として一体に構成される。この視差バリア部37は,視差バリア駆動部38により駆動され,後述するようにこのデジタルカメラ10のユーザの両目の位置に対応した幅を持つ縦縞の格子の視差バリアを表示する。」 エ 「【0046】 これに対して,視差バリア部37は,カラー液晶パネル36に比して充分に高精細な画素構成を有する透過型のモノクロ液晶表示パネルで構成され,図示する如くユーザの両目の視差に応じた,縦縞格子状のバリア(非透過部分)を表示する。これら各バリアの位置は三角法により計算で求められる。」 オ 「【0049】 図6(C)は,上記図6(A)に示したバリアと中心位置は同じながら,幅を伸長したバリアを示す。このように視差バリア部37で表示する非透過部分であるバリアの位置及び幅は,視差バリア部37を構成する液晶表示パネルの1ドットの幅を単位として任意に設定できる。」 カ 「図6 」 (2)引用文献2記載の技術 上記(1)の記載から,引用文献2には,次の技術が記載されている。 (引用文献2記載の技術) 視差バリア方式の立体画像を表示可能な,2層構造の液晶表示パネルとバックライトを有する液晶モニタ15において,(段落0012) 表示駆動部35は,上記液晶モニタ15の一部を構成するカラー液晶パネル36により左目用の画像と右目用の画像とを左右方向に相互する縦縞の格子状に表示させることで,立体のスルー画像を表示し,(段落0024) カラー液晶パネル36上には,カラーフィルタを持たず,上記カラー液晶パネル36に比して充分に高精細な画素構成を有する透過型のモノクロ液晶表示パネルが,適宜間隙を空けて視差バリア部37として一体に構成され,この視差バリア部37は,視差バリア駆動部38により駆動され,このデジタルカメラ10のユーザの両目の位置に対応した幅を持つ縦縞の格子の視差バリアを表示し,(段落0025,0046) 視差バリア部37で表示する非透過部分であるバリアの位置及び幅は,視差バリア部37を構成する液晶表示パネルの1ドットの幅を単位として任意に設定することができ,(段落0049,図6) これにより,表示画面に対する観察者までの距離と位置を限定することなく,常に正確な立体画像を観察することを可能とする(段落0007)技術。 (3)引用文献3の記載 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2012/030092号(2012年3月8日国際公開。以下「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 なお,上記引用文献3として公開された国際出願の日本での国内段階への移行のために提出された翻訳を公表した特表2013-541036号公報の記載を当審訳の参考とした。 ア 「 」 (当審訳:[1] 以下の説明は,パララックスバリア方式の立体映像表示装置に係り,具体的に,眼鏡なし方式の立体映像ディスプレイを垂直/水平に可能にするだけでなく,視聴者が移動時にも精密な立体感を感じることができるようにするサブセル要素単位のパララックスバリア方式の立体映像表示装置に関するものである。) イ 「 」 (当審訳:[13] 上述した‘0127631号発明によれば,視聴者がユーザ機器(User Equipment)を握る方向によって水平方向/垂直方向のディスプレイが変わる場合にも,視聴者が立体映像を見ることができるという長所を有する。但し,パララックスバリア方式の立体映像ディスプレイでは,前記図1Aで見るように,視聴者の左眼と右眼の位置によってパララックスバリアの位置が変わるように設定することが好ましい。このとき,パララックスバリアの位置が既存セル単位でのみ移動し得るため,視聴者の移動によってパララックスバリアの精密な移動が困難である。) ウ 「 」 (当審訳:[19] 好ましくは,前記立体映像表示装置は,前記視聴者の移動を感知することができる移動感知モジュールをさらに含むことができ,この場合,前記パララックスバリアモジュールは,前記視聴者の移動によって前記サブセル要素単位で前記複数のバリアを水平方向または垂直方向に移動させて形成されるように制御することができる。) エ 「 」 (当審訳:[24] 上述したような本発明の実施形態によれば,水平方向/垂直方向に立体映像のディスプレイが自由になされるだけでなく,視聴者の移動によってパララックスバリアの精密な移動が可能であるので,高品質の立体映像をディスプレイすることができる。) オ 「 」(当審訳: [52] 図8は,本発明の一実施形態に係るサブセル要素単位のパララックスバリアの概念を説明するための図である。 [53] 図8の(a)は,前記‘0127631号発明でのようなセルマトリックスタイプのパララックスバリアを示している。図8の(a)において各四角形は,‘0127631号発明での一つのセルに対応することができる。すなわち,図8の(a)は,前記図4及び図5における第1?第4セルを示したものと見ることができ,この場合,第4セルが除去されていない形態を示したものと見ることができる。 [54] 一方,図8の(b)は,図8の(a)と比較して,一つのセルが複数のサブセル要素に区分された形態を示している。図8の(b)では,水平方向において一つのセルが3個のサブセル要素で構成される形態を例示的に示しているが,一つのセルを構成するサブセル要素の個数Nは,パララックスバリアの移動の柔軟性及び制御の複雑性を考慮して多様に選択することができる。また,図8の(b)では,図8の(a)に示された一つのセルが水平方向にのみ複数のサブセル要素に区分された形態を示しているが,垂直方向にも一つのセルを複数のサブセル要素に区分することができる。 [55] 図9は,本発明の他の一実施形態に係るサブセル要素単位のパララックスバリアの概念を説明するための図である。 [56] 図9は,図8と比較して,一つのセルが水平方向だけでなく垂直方向にも複数のサブセル要素に区分された形態を示している。図9の(b)で,一つのセルは水平方向において3個のサブセル要素に,垂直方向において2個のサブセル要素に区分された形態を例示的に示しており,この場合,一つのセルは,6個のサブセル要素を含むことができる。但し,上述したように,一つのセルがいくつのサブセル要素に区分されるかは,パララックスバリアの移動の柔軟性及び制御の複雑性を考慮して多様に選択することができる。また,水平方向のディスプレイにおいてパララックスバリアに要求される移動の柔軟性と,垂直方向のディスプレイにおいてパララックスバリアに要求される移動の柔軟性とは異なることがあるため,図9の(b)に示されたように,一つのセルが水平方向において区分されるサブセル要素の個数Nxと,垂直方向において区分されるサブセル要素の個数Nyとは互いに異なることがある。) カ 「図8 」 キ 「図9 」 (4)引用文献3に記載の技術 上記(3)の記載から,引用文献3には,次の技術が記載されている。 (引用文献3記載の技術) 視聴者がユーザ機器(User Equipment)を握る方向によって水平方向/垂直方向のディスプレイが変わる場合にも,視聴者が立体映像を見ることができるセルマトリックスタイプのパララックスバリアにおいて,一つのセルを複数のサブセル要素に区分したサブセル要素単位のパララックスバリア方式の立体映像表示装置であって,(段落1,13,52?55,図8,図9) 一つのセルは水平方向だけでなく垂直方向にも複数のサブセル要素に区分され,(段落56,図9) 例えば,一つのセルが水平方向において3個のサブセル要素に,垂直方向において2個のサブセル要素に区分された場合,一つのセルは,6個のサブセル要素を含むことができ,(段落56,図9) 一つのセルがいくつのサブセル要素に区分されるかは,パララックスバリアの移動の柔軟性及び制御の複雑性を考慮して多様に選択することができ,また,水平方向のディスプレイにおいてパララックスバリアに要求される移動の柔軟性と,垂直方向のディスプレイにおいてパララックスバリアに要求される移動の柔軟性とは異なることがあるため,一つのセルが水平方向において区分されるサブセル要素の個数Nxと,垂直方向において区分されるサブセル要素の個数Nyとは互いに異なることがあり,(段落56,図9) 前記立体映像表示装置は,前記視聴者の移動を感知することができる移動感知モジュールをさらに含むことができ,前記パララックスバリアモジュールは,前記視聴者の移動によって前記サブセル要素単位で前記複数のバリアを水平方向または垂直方向に移動させて形成されるように制御することができ,(段落19) 水平方向/垂直方向に立体映像のディスプレイが自由になされるだけでなく,視聴者の移動によってパララックスバリアの精密な移動が可能であるので,高品質の立体映像をディスプレイすることができる,(段落24)立体映像表示装置。 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 1 構成Bについて 構成fの「ディスプレイ150」が,3次元表示を行なうときの左目用の画像(L)を表示する領域1310,及び右目用の画像(R)を表示する領域1320には,RGBの配列が形成されており,領域1310,1320は画像を表示するための画素といえるから,構成fの「ディスプレイ150」は,構成Bの「画像データに基づいて複数の画素によって形成されたコンテンツを表示する表示スクリーン装置」に相当する。 2 構成Cについて 構成dの視差バリア(520,521,522,523)は,スリット510,511,512の間に形成されることで,スリット510,511,512以外の部分をマスクするために形成されるものであるから,構成dの「視差バリア」は構成Cの「マスク部分」に相当する。 また,構成gのとおり,携帯電話機100の回転位置が縦と横との間で切り替わるときには「スイッチング液晶410」により斜め方向の視差バリアを形成することができるものであるから,「スリット」と「視差バリア」が,「スイッチング液晶410」の複数の画素を含む画素構成によって形成されていることは明らかである。 してみれば,引用発明の「スリット」と「視差バリア」が形成される「スイッチング液晶410」は,構成Cの「スリット部分及びマスク部分を形成する画素構成に複数の画素を含」む「パララックス・バリア」に相当する。 構成eの「視差バリア」は,携帯電話機100を時計回りに回転すると約45度回転させた時点で回転角度に応じた傾き(すなわち約45度)で形成され,これにより,携帯電話機100の姿勢が切り替わっても,3次元の画像が適切に表示されるものである。 また,構成fの「ディスプレイ150」は,携帯電話機100が縦方向に把持されて3次元表示を行なっているとき左目用の画像(L)を領域1310に表示し,右目用の画像(R)を領域1320に表示し,携帯電話機100が時計方向に約45度回転されて3次元表示を行なっているとき左目用の画像(L)を領域1330に表示し,右目用の画像(R)を領域1320に表示している。 そうすると,引用発明の「スイッチング液晶410」は,携帯電話機100を回転した際に,「ディスプレイ150」と連係して「視差バリア」を形成することで,3次元の画像(構成Cの「裸眼立体提示」に相当する。)を表示しているといえる。 してみれば,引用発明の「スイッチング液晶410」は「前記表示スクリーン装置と連係して裸眼立体提示を表示するように構成され」ている点で構成Cの「パララックス・バリア」と一致する。 したがって,引用発明の「スイッチング液晶410」は,構成Cの「スリット部分及びマスク部分を形成する画素構成に複数の画素を含み,前記表示スクリーン装置と連係して裸眼立体提示を表示するように構成されたパララックス・バリア」に相当する。 3 構成Dについて 構成gの「姿勢検出回路(ジャイロセンサ)」は,携帯電話機100の回転位置を検出するためのものであり,画像処理部1740が携帯電話機100の回転位置が縦と横との間で切り替わるときに斜め方向の視差バリアをスイッチング液晶410に形成させ,また,携帯電話機100の回転位置が縦と横との間で切り替わるときに携帯電話機100の回転に応じて画像を表示するためにデータが出力される画素を選択するように構成されているものであるから,ジャイロセンサで検出される携帯電話機100の回転位置は,ディスプレイ150の表示面に垂直な軸を回転の中心とする回転であることは明らかである。 また,構成eのとおり,携帯電話機100が縦方向に把持されてディスプレイ150が3次元表示を行なっている状態から携帯電話機100を時計回りに約45度回転させると,ジャイロセンサが縦方向(基準回転位置)から時計回りに約45度という回転を検知することによって,画像と視差バリアを表示するものである。 したがって,構成gの「ジャイロセンサ」は,構成Dの「前記表示装置の,前記表示スクリーン装置の表面に垂直な軸を回転の中心とする基準回転位置からの回転を検知するセンサ」に相当する。 4 構成Eについて (1)構成E1について 構成e及びfの記載からすると,「携帯電話機100(ディスプレイ150)を時計回りに約45度回転させたとき,画像と視差バリアは反時計回りに約45度回転するように構成されている」ものと認められる。 そして,上記1及び2より,画像と視差バリアは,画素で構成されているから,引用発明の「画像」は,構成E1の「前記表示スクリーン装置の前記複数の画素の構成」に相当し,また,引用発明の「スリット」と「視差バリア」は,構成E1の「前記パララックス・バリアの前記画素構成」に相当する。 ここで,構成eの「時計回りの方向」を構成E1の「前記基準回転位置からの第1方向と反対の第2方向」に対応させると,携帯電話機100(ディスプレイ150)が時計回りの方向に回転したときジャイロセンサは「時計回りの方向」(第2の方向)の回転を検出するといえる。また,視差バリアが回転する「反時計回りの方向」は,第2の方向と反対の「第1の方向」に対応する。 そうすると,上記で検討した「携帯電話機100(ディスプレイ150)を時計回りに約45度回転させると,画像と視差バリアは反時計回りに約45度回転するように構成されている」ことは,構成E1の「前記表示スクリーン装置の前記複数の画素の構成と前記パララックス・バリアの前記画素構成とが,前記基準回転位置からの第1方向と反対の第2方向の前記表示装置の前記回転の,前記センサによる検出に応じて前記第1方向に回転するように構成され」ていることに相当する。 (2)構成E2について 上記2及び上記(1)より,引用発明の「画像」,「スリットと視差バリア」はそれぞれ,構成E2の「前記表示スクリーン装置の画素によって形成された前記コンテンツ」,「前記パララックス・バリアの画素によって形成された前記スリット部分及び前記マスク部分」に相当する。 ここで,本願明細書の段落0033の 「したがって,本実施形態において,CPU11は,LCD1の画素構成とパララックス・バリア2の画素構成とを回転させて,センサ14が検知した表示スクリーン111の回転を相殺する。更に詳しく述べると,表示スクリーン111が,例えば,XY平面上でZ軸を中心に反時計回りに45度回転させられると,図1及び図2に関して説明された関係を満たすために,LCD1の画素構成とパララックス・バリア2の画素構成とが,時計回りに45度回転させられて,LCD1の画素R及びLとパララックス・バリア2の画素とが再マッピングされる。換言すれば,LCD1の画素とパララックス・バリア2の画素との再マッピングによって,観察者の左目3Lは,パララックス・バリア2のスリット部分2aを介してLCD1の左画素Lのみを見て,パララックス・バリア2のマスク部分2bによって遮断されたLCD1の右画素Rは見ない一方,この再マッピングによって,観察者の右目3Rは,パララックス・バリア2のスリット部分2aを介してLCD1の右画素Rのみを見て,パララックス・バリア2のマスク部分2bによって遮断されたLCD1の左画素Lは見ない。」(下線は,当審で付した。) との記載を参照すると,本願発明の「前記表示装置の前記回転を補償するよう再マッピングされる」とは,LCD1の画素構成とパララックス・バリア2の画素構成とを表示スクリーン111の回転方向と逆方向に同一の回転量だけ回転させて,表示スクリーン111の回転を相殺することにより,裸眼立体視の状態を維持することである。 一方,引用発明は,構成e及びfの記載からみて,画像と視差バリアをディスプレイ150の回転方向と逆方向に同一の回転量だけ回転させることで,ディスプレイ150の回転を相殺することにより,3次元画像の表示を維持しているものであるから,引用発明の「画像」及び「スリットと視差バリア」は,「前記表示装置の前記回転を補償するよう再マッピングされるように」なっているといえる。 また,上記の検討から,「画像」及び「スリットと視差バリア」の「回転」は,携帯電話機100の「回転」と大きさが等しく,かつ,反対方向であることは明らかである。 したがって,引用発明と構成E2とは,「(E2)前記表示スクリーン装置の画素によって形成された前記コンテンツ,並びに前記パララックス・バリアの画素によって形成された前記スリット部分及び前記マスク部分が,前記表示装置の前記回転を補償するよう再マッピングされるように,前記表示スクリーン装置の前記画素構成と前記パララックス・バリアとの前記回転が,大きさが等しく前記表示装置の前記回転と反対方向であ」る点で一致する。 (3)構成E3について 引用発明は,構成cのとおり,ディスプレイ150を2次元表示(2D)と3次元表示(3D)との間で切り替える制御(LCD制御)を行っており,3次元表示の時には視差バリアが形成されるものである。これは,言い換えると,2次元表示の時には視差バリアが形成されていないということである。 ここで,上記2より,引用発明の「視差バリア」は,構成E3の「(パララックス・バリアの)マスク部分」に相当するから,構成cにおいて,「3次元表示の時には視差バリアが形成される」ことは,構成E3の「前記マスク部分の画素」が「第1モードにおいて少なくとも部分的に不透明であ」ることに相当する。 また,構成E3の「パララックス・バリア」は,構成Cより,「スリット部分」と「マスク部分」を含むものであるから,構成cにおいて,「3次元表示の時には視差バリアが形成される」ことは,構成E3の「前記パララックス・バリア」が「第1モードにおいて少なくとも部分的に不透明であ」ることに相当する。 また,構成cにおいて,「2次元表示の時には視差バリアが形成されていない」ことは,構成E3の「前記マスク部分の画素と前記パララックス・バリアとが」,「第2モードにおいて透明である」ることに相当する。 したがって,構成cと構成E3とは,「(E3)前記マスク部分の画素と前記パララックス・バリアとが,第1モードにおいて少なくとも部分的に不透明であり,第2モードにおいて透明である」点で一致する。 (4)構成a,bより,CPU(Central Processing Unit)は,ROM348からプログラムまたはデータを310が読み出して携帯電話機100の動作を制御するものであるから,構成c?gの動作は,CPUによって制御されているといえる。 したがって,上記(1)?(3)の検討も踏まえると,構成c?gの動作を制御する「CPU(Central Processing Unit)」は,構成E1?E3の動作を実行するように構成された「プロセッサ」に相当する。 5 構成Fについて 本願発明では,「前記パララックス・バリアの前記画素構成の解像度が,前記表示スクリーン装置の前記画素構成の解像度よりも高い」のに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点で相違している。 6 構成Aについて 上記1より,携帯電話機100は,構成Bの「表示スクリーン装置」に相当する構成を備えている。 また,上記2より,携帯電話機100は,構成Cの「パララックス・バリア」に相当する構成を備えている。 また,上記3より,携帯電話機100は,構成Dの「センサ」に相当する構成を備えている。 また,上記4より,携帯電話機100は,構成E(E1)?(E3)の「プロセッサ」に相当する構成を備えている。 したがって,構成aの「携帯電話機100」は,構成Fを除き構成B?Eに相当する構成を備えている点で構成Aの「表示装置」に相当する。 7 以上の検討から,引用発明と本願発明とは以下の点で一致し,また,相違する。 [一致点] (A)表示装置であって, (B)画像データに基づいて複数の画素によって形成されたコンテンツを表示する表示スクリーン装置と, (C)スリット部分及びマスク部分を形成する画素構成に複数の画素を含み,前記表示スクリーン装置と連係して裸眼立体提示を表示するように構成されたパララックス・バリアと, (D)前記表示装置の,前記表示スクリーン装置の表面に垂直な軸を回転の中心とする基準回転位置からの回転を検知するセンサと, (E)(E1)前記表示スクリーン装置の前記複数の画素の構成と前記パララックス・バリアの前記画素構成とが,前記基準回転位置からの第1方向と反対の第2方向の前記表示装置の前記回転の,前記センサによる検出に応じて前記第1方向に回転するように構成され,(E2)前記表示スクリーン装置の画素によって形成された前記コンテンツ,並びに前記パララックス・バリアの画素によって形成された前記スリット部分及び前記マスク部分が,前記表示装置の前記回転を補償するよう再マッピングされるように,前記表示スクリーン装置の前記画素構成と前記パララックス・バリアとの前記回転が,大きさが等しく前記表示装置の前記回転と反対方向であり,(E3)前記マスク部分の画素と前記パララックス・バリアとが,第1モードにおいて少なくとも部分的に不透明であり,第2モードにおいて透明である,プロセッサと, を備える, (A)前記表示装置。」 [相違点1] 本願発明では,「前記パララックス・バリアの前記画素構成の解像度が,前記表示スクリーン装置の前記画素構成の解像度よりも高い」のに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。 第6 判断 上記相違点について,判断する。 [相違点1]について 上記引用文献2記載の技術及び引用文献3記載の技術から,パララックス・バリアの画素構成の解像度を表示スクリーン装置の画素構成の解像度よりも高めることでパララックス・バリアの柔軟性を高め,これにより,表示画面に対する観察者までの距離と位置が変更されたり,視聴者が移動したりしても,高品質の立体映像をディスプレイすることができるようにすることは,本願の出願前に当該技術分野における周知技術であったと認められる。 引用発明と上記周知技術とは,立体映像を表示する表示装置の点で共通の技術分野に属するものであるから,引用発明に周知技術を適用することは当業者が容易に想到し得たことである。 また,引用発明において,スイッチング液晶410の画素構成の解像度を表示スクリーン装置の画素構成の解像度よりも高めれば,ディスプレイ150が回転途中の位置において3次元画像を表示する場合でも,高品質の立体映像をディスプレイすることができるという効果を奏することは明らかである。 したがって,引用発明において,前記パララックス・バリアの前記画素構成の解像度が,前記表示スクリーン装置の前記画素構成の解像度よりも高い構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2,3に記載の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3に記載の周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-03-06 |
結審通知日 | 2020-03-09 |
審決日 | 2020-03-23 |
出願番号 | 特願2015-548146(P2015-548146) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 秦野 孝一郎 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 藤原 敬利 |
発明の名称 | 裸眼立体提示を回転可能に表示する表示装置 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 阿部 豊隆 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 江口 昭彦 |