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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23J
審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23J
管理番号 1364739
審判番号 不服2018-9286  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-05 
確定日 2020-07-29 
事件の表示 特願2015-524579「ヘンプからの可溶性タンパク質製品(「H701」)の製造」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日国際公開、WO2014/019074、平成27年 8月13日国内公表、特表2015-523090〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)8月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年8月2日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 4月21日付け:拒絶理由の通知
同年10月25日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 2月23日付け:拒絶査定
同年 7月 5日 :審判請求書の提出
同年 8月13日 :審判請求書の手続補正書(方式)の提出
令和 元年 5月10日付け:当審による拒絶理由の通知
同年11月14日 :意見書、手続補正書の提出

2.本願発明について
本願の請求項1?42に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明42」という。まとめて、「本願発明」ということもある。)は、令和元年11月14日受付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?42に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は、以下のとおりのものである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表示した。
「[請求項1]
乾燥重量基準で少なくとも60重量%(N×6.25)のタンパク質含有量を有するヘンプタンパク質製品を製造する方法であって、
(a)ヘンプタンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、タンパク質源からヘンプタンパク質を可溶化させ、ヘンプタンパク質水溶液を形成する工程と、
(b)ヘンプタンパク質水溶液を残留ヘンプタンパク質源から少なくとも部分的に分離する工程と、
(c)任意選択で、ヘンプタンパク質水溶液を希釈する工程と、
(d)ヘンプタンパク質水溶液のpHを1.5から4.4のpHに調整して、酸性化ヘンプタンパク質水溶液を生成する工程と、
(e)酸性化ヘンプタンパク質溶液がまだ清澄でない場合、任意選択で、酸性化ヘンプタンパク質溶液を清澄化する工程と、
(f)工程(b)から(e)の代わりに、合わさったヘンプタンパク質水溶液と残留ヘンプタンパク質源とを任意選択で希釈し、次いでそのpHを1.5から4.4のpHに調整し、次いで酸性化ヘンプタンパク質水溶液を残留ヘンプタンパク質源から分離する工程と、
(g)任意選択で、選択膜技術によりイオン強度を実質的に一定に維持しつつヘンプタンパク質水溶液を濃縮する工程と、
(h)任意選択で、任意選択で濃縮したヘンプタンパク質溶液をダイアフィルトレーションする工程と、
(i)任意選択で、任意選択で濃縮し任意選択でダイアフィルトレーションしたヘンプタンパク質溶液を乾燥させる工程と
を含む、方法。」

3.当審拒絶理由について
当審が令和元年5月10日付けで通知した拒絶理由のうち、理由3(進歩性)は、概略、以下のとおりである。
理由3(進歩性)
本願の請求項1?53に係る発明は、本願の出願日前に頒布された下記刊行物1?2に記載された発明に基いて、本願出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:Chuan-He TANG et al., "Physicochemical andFunctional Properties of Hemp (Cannabis sativa L.) Protein Isolate",Journal of Agricultural and Food Chemistry, Vol.54, No.23,p.8945-8950
刊行物2:特表2012-506241号公報

なお、上記拒絶理由の通知の1頁目に「刊行物1?7に記載された発明に基いて」と記載していたが、同2?4頁に具体的に記載した理由から明らかなとおり、「刊行物1?2に記載された発明に基いて」の誤記であった。
請求人は、令和元年11月14日に提出した意見書の「〔1〕拒絶理由通知書(発送日令和1年5月14日)について」に、「理由3(進歩性)・・・刊行物1?7(以下、「刊行物1及び2」とみなして意見を述べます)」と記載しているので、請求人も上記の誤記を正しく読み替えて意見書及び手続補正書を提出したものと認められる。

4.当審の判断
(1)刊行物に記載された事項
ア 刊行物1に記載された事項
刊行物1には以下の事項が記載されている(訳文で示す。)。
(1a)「ヘンプ(Cannabis sativa L.)タンパク質単離物(HPI)のアミノ酸組成ならびに物理化学的および機能的特性を評価し、大豆タンパク質単離物(SPI)のそれらと比較した。一種の六量体レグミンであるエデスチンが主要なタンパク質成分であった。HPIは、SPIのそれらのアミノ酸と比較して、類似のまたはより高いレベルの必須アミノ酸(リジンを除く)を有した。HPIの必須アミノ酸(リジンと含硫アミノ酸を除く)は、2-5歳の子供に必要とされるFAO/WHOの要件を十分満たすものである。HPIのタンパク質溶解度(PS)は、8.0未満のpHではSPIのそれよりも低かったが、pH8.0を超えると同様であった。HPIは、SPIよりはるかに高い遊離スルフヒドリル(SH)含有量を含んでいた。示差走査熱量分析は、エデスチン成分に起因して、HPIが変性温度(T_(d))が約95.0℃の吸熱ピークを1つだけ有することを示した。吸熱のT_(d)は、20?40mMドデシル硫酸ナトリウムによってほとんど影響されなかったが、20mMジチオトレイトールによって有意に減少した(P<0.05)。HPIの乳化活性指数、乳化安定性指数、および保水容量はSPIのそれらよりはるかに低く、そして脂肪吸着容量は類似していた。このデータは、HPIは乳児や子供のための貴重な栄養源として使用できるが、SPIと比較した場合に機能的特性が低いことを示唆している。HPIの劣った機能的性質は、硫黄含有アミノ酸からのその高い遊離スルフヒドリル含有量のために、個々のタンパク質間の共有ジスルフィド結合の形成およびそれに続く中性または酸性pHでの凝集に大きく起因している。」(p.8945 Abstract、下線は当審にて追加した。以下同様。)

(1b)「結論として、HPIはより優れた必須アミノ酸組成を有し、ほとんどの必須アミノ酸はFAO/WHOが示唆する乳児又は子供のための要件を十分満たすものである。しかしながら、それはタンパク質可溶性、乳化活性及び保水容量がSPIとの比較においてかなり低い。したがって、このタンパク質は、乳幼児向けの優れた栄養源として食品業界に応用できるようになる前に、いくつかの目標とする機能的特性を達成するように修飾する必要がある。」(p.8949右欄下から4行?p.8950左欄5行)

(1c)「タンパク質単離物の調製. ヘンプタンパク質単離物(HPI)は、わずかな修正を含む、大豆タンパク質単離物(SPI)のために使用されるよく知られた工程に従って脱脂されたヘンプミールから調製された。脱脂されたヘンプミールは20倍(w/v)の脱イオン水と35℃で混合され、混合物は2NのNaOHによりpH10.0に調整された。1時間を超える撹拌による抽出の後、試料は20℃で30分間8000gで遠心された。ペレットは捨てられ、上澄みは2Nの塩酸でpH5.0に調整され、沈殿又はカードが遠心(8000g、10分)により収集された。等電沈殿物は脱イオン水に再懸濁され、均質化後、懸濁物は1NのNaOHで約pH6.8に調整された。そして、懸濁物はHPI生成物を得るために凍結乾燥された。
SPIは、Tangらによって記述された方法に従って脱脂された大豆ミール(XIANGCHI Cereal and Oil Co.Ltd.、山東省、中国)から調製された。HPI及びSPIのタンパク質含有量はKjeldahl法(N×6.25)により決定された。ヘンプミール及びタンパク質単離物の化学組成はAOAC法に従って決定された。」(p.8946左欄15?32行)

(1d)「成分及びSDS-PAGE分析. この研究で使用された脱脂されたヘンプシードミールの組成は以下のとおりであった(% w/w):タンパク質、50.2;水分、6.7;灰分、3.2;及びその他(主に炭化水素)、39.9(表1)。このミールのタンパク質含有量は有意に(P<0.05)脱脂された大豆ミールのそれ(43.3%)よりも高かった。材料及び方法の項目中に記述した工程に従って、ヘンプタンパク質単離物(HPI)の回収率及びそのタンパク質含有量は、それぞれ約73%(ミール中の全タンパク質含有量に対して)及び86.9%(w/v)であった。HPIの化学組成は、前者の水分含有量が有意に(P<0.05)後者のそれより低かったことを除いて、大豆タンパク質単離物(SPI)のそれと類似していた(表1)。その水分含有量における違いは、タンパク質の保水能力に起因するのではないか。」(p.8947左欄下から23行?下から10行)

(1e)「表1.脱脂されたヘンプ及び大豆ミール、HPI及びSPIの成分分析^(a)

^(a)すべてのデータは湿った状態に基づく。各値は二回の測定の平均及び標準偏差とした。文字(a-d)は同じ列の中での有意な(P<0.05)差を表す。」(p.8947左欄表1)

(1f)「タンパク質溶解度. HPIのPS(タンパク質溶解度)は、4.0?6.0の範囲のpHで最小であり、pH4.0未満及びpH6.0超で徐々に上昇した(図2)。pH7.0では、0.01Mのリン酸緩衝液中に約38%のタンパク質しか溶解しなかった。これは、7.0未満のpHでエデスチンの凝集が生じているからではないか。しかしながら、pH8.0超では、PSは90%超まで上昇する。そのデータは、HPIが典型的なアルカリ可溶性タンパク質の一種であることを示唆する。アルカリpH(特に、pH>10)における可溶化の背景にあるメカニズムは、エデスチン分子の解離と関係があるのではないか。
対して、SPIは類似したPSプロファイルを有するが、8.0未満のpHにおけるSPIのPSはHPIのPSよりも高かった(図2)。SPIはおおよそpH4.5に明確な等電点も有していた。8.0超のpHでは、HPIのPSはSPIのSPと同様であった。pH<7.0のPSにおける違いは、タンパク質の成分及びヘキサマー(グリシニン又はエデスチン)の凝集の程度の違いに起因するのではないか。HPIにおけるメチオニン及びシステイン残基の高い含有量(図2)は、個々の分子の間の共有ジスルフィド結合形成の増加をもたらし、それ故、凝集の程度が増加するのではないか。
遊離スルフヒドリル(SH)含有量. 図3は、pH8.0におけるHPI及びSPIの遊離スルフヒドリル含有量を示す。HPIの遊離SH含有量(約3.9×10^(6) mol/gのタンパク質)は、SPIのそれよりかなり高い(P<0.01)。そのデータは、HPI及びSPIのメチオニン及びシスチンの相対的な量と一致する。(図2)。典型的には、高いSH含有量のタンパク質は、共有ジスルフィド結合の形成により、相互に関係し又は凝集する高い能力を有する。それ故、HPIとSPIとの間の遊離SH含有量の違いは、中性及び酸性pH値におけるPSの違いの主な説明となる。」(p.8948左欄下から8行?右欄図下22行)

(1g)「

図2.異なるpH値におけるHPI(○)及びSPI(●)のタンパク質溶解度の輪郭。各値は3回計測の平均及び標準偏差である。図中HPI曲線上の*はSPIとの比較において有意な(P<0.05)差を表す。)

図3.pH8.0におけるHPI及びSPIの遊離SH含有量。結果は、3回計測の平均及び標準偏差である。カラムの上の*は有意な(P<0.01)差を表す。)」(p.8948右欄図2及び図3)

イ 刊行物2に記載された事項
刊行物2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「[請求項29]
(a)大豆タンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、
(c)大豆タンパク質水溶液のpHを約1.5?約4.4のpHに調整して、透明な酸性化大豆タンパク質溶液を生成するステップと
を含む、大豆タンパク質溶液の調製方法。」

(2b)「[背景技術]
[0003]
本発明の背景
低pHで非常に可溶性であり透明な溶液を生成するタンパク質単離物は、様々な製品、特にソフトドリンクおよびスポーツドリンクなどの飲料において使用するために、食品産業において大いに価値があるであろう。上記の特性を熱安定性と組み合わせると、該単離物の価値はさらに増大するであろう。食品用途のタンパク質は、植物または動物源に由来し得るが、植物タンパク質の方が安価な場合が多い。大豆は、食品用途の植物タンパク質の非常に一般的な源である。大豆タンパク質は、その優れた栄養特性および健康上の利益が認識されている。
[0004]
大豆タンパク質単離物は、従来、等電沈殿手順により形成され、該手順では、大豆からの大豆油の分離に由来するミールをアルカリ性条件下での最初の抽出により処理し、その後、アルカリ性抽出物を大豆タンパク質の等電点に酸性化して、タンパク質沈殿を生じる。沈殿した大豆タンパク質は、洗浄および/または中和することができ、次いで、乾燥して、大豆タンパク質単離物を得る。大豆タンパク質単離物は、乾燥重量基準(d.b.)で少なくとも約90wt%(N×6.25)のタンパク質含量を有する。
[0005]
様々な機能特性を有する様々な大豆タンパク質製品が入手可能であるが、本発明者らの知る限り、低pH条件下で透明で熱安定性の溶液を生成する可溶性の大豆タンパク質単離物製品は存在しない。
[発明の概要]
[0006]
低pH値で透明な熱安定性溶液を生成し、したがって、タンパク質を沈殿させることなく、特に、ソフトドリンクおよびスポーツドリンク、ならびに他の水系のタンパク質強化(protein fortification)に使用することができる、少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品を提供することが今や可能であることが分かった。」

(2c)「[0010]
本発明は、約4.4未満の酸性pH値で水溶性であり、熱安定性で透明な溶液を形成し、タンパク質沈殿をもたらすことなくソフトドリンクおよびスポーツドリンクを含めた水系をタンパク質強化(protein fortification)をするのに有用である新規の大豆タンパク質単離物をさらに提供する。大豆タンパク質単離物もフィチン酸含量が低く、一般に約1.5重量%未満である。該製品中の大豆タンパク質は、加水分解されていない。」

(2d)「[0022]
発明の概略説明
大豆タンパク質単離物を提供するプロセスの最初のステップは、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を伴う。大豆タンパク質源は、大豆、あるいは大豆ミール(soy meal)、大豆フレーク、大豆粗粒および大豆粉を含むがこれらに限定されない
任意の大豆製品または大豆の加工に由来する副産物とすることができる。大豆タンパク質源は、脂肪を除いていない形態(full fat form)、部分的に脱脂した形態または完全に脱脂した形態で使用し得る。大豆タンパク質源が相当量の脂肪を含有する場合、一般に、このプロセスの間に油除去ステップが必要となる。大豆タンパク質源から回収された大豆タンパク質は、大豆中に自然に存在するタンパク質であるか、またはタンパク質性物質(proteinaceous material)は、遺伝子操作により改変されたタンパク質であってもよいが、自然タンパク質の特徴的な疎水性および極性特性を有する。
[0023]
大豆タンパク質源物質からのタンパク質の可溶化は、他のカルシウム塩の溶液も使用することができるが、塩化カルシウム溶液を使用して実施することが最も好都合である。さらに、マグネシウム塩などの他のアルカリ土類金属化合物を使用することができる。さらに、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出は、カルシウム塩溶液を塩化ナトリウムなどの別の塩溶液と組み合わせて使用して実施し得る。さらに、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出は、水または塩化ナトリウムなどの他の塩溶液を使用して実施し、その後、抽出ステップにおいて生成した大豆タンパク質水溶液にカルシウム塩を添加することができる。カルシウム塩の添加時に形成する沈殿物は、その後の処理の前に除去する。
[0024]
大豆タンパク質源からのタンパク質の可溶化の程度は、カルシウム塩溶液の濃度が増大するにつれて、最初は最大値に達するまで増大する。その後、塩濃度をどれほど増大させても、可溶化するタンパク質の合計は増大しない。最大のタンパク質可溶化を引き起こすカルシウム塩溶液の濃度は、当該塩に応じて変動する。通常、約1.0M未満の濃度値、より好ましくは約0.10?約0.15Mの値を利用することが好ましい。
[0025]
バッチプロセスにおいて、タンパク質の塩可溶化は、約1℃?約100℃、好ましくは約15℃?約35℃の温度で、好ましくは通常約1?約60分間の可溶化時間を減少させるための撹拌を伴って実施される。実質的に実現可能な量のタンパク質を大豆タンパク質源から抽出するように可溶化を実施して、全体的に高い製品収率を実現することが好ましい。
[0026]
連続プロセスにおいて、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出は、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の連続抽出の実施と調和する任意の様式で実施する。一実施形態において、大豆タンパク質源をカルシウム塩溶液と連続的に混合し、本明細書に記載のパラメーターに従って所望の抽出を実施するのに十分な滞留時間、ある長さを有するパイプまたは導管を通して、ある流量で混合物を移動させる。そのような連続的な手順において、塩可溶化ステップは、好ましくは実質的に実現可能な量のタンパク質を大豆タンパク質源から抽出するように可溶化を実施するために、最大で約10分間で急速に実施する。連続的な手順での可溶化は、約1℃と約100℃の間、好ましくは約15℃と約35℃の間の温度で実施する。
[0027]
抽出は、一般に、約5?約11、好ましくは約5?約7のpHで実施する。抽出系(大豆タンパク質源およびカルシウム塩溶液)のpHは、抽出ステップで使用するために、必要に応じて、任意の好都合な食品グレードの酸、通常は塩酸もしくはリン酸、または食品グレードのアルカリ、通常は水酸化ナトリウムの使用により、約5?約11の範囲内の任意の所望の値に調整し得る。」

(2e)「[0035]
得られた大豆タンパク質水溶液は、一般に約1?約10倍容(volumes)、好ましくは約1?約2倍容の水で希釈して、大豆タンパク質水溶液の伝導率を一般に約70mS未満、好ましくは約4?約18mSの値まで低下することができる。
[0036]
大豆タンパク質溶液と混合する水は、約2°?約70℃、好ましくは約10°?約50℃、より好ましくは約20°?約30℃の温度を有し得る。
[0037]
次いで、希釈した大豆タンパク質溶液を、塩酸またはリン酸などの任意の好適な食品グレードの酸の添加により約1.5?約4.4、好ましくは約3の値にpH調整して、透明な大豆タンパク質水溶液を得る。
[0038]
希釈および酸性化した大豆タンパク質溶液は、一般に約75mS未満、好ましくは約4?約23mSの伝導率を有する。」

(2)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、ヘンプタンパク質単離物(HPI)の成分分析(摘記1d、1e)及びその調製方法(摘記1c)が記載されており、表1(摘記1e)には、ヘンプタンパク質単離物(HPI)がタンパク質86.9%、水分3.9%、灰分2.6%、その他6.6%を含有していたことが記載されている。
なお、摘記(1d)にはヘンプタンパク質源であるヘンプシードミールの組成が「(% w/w)」単位で記載されていること、及び摘記(1e)の表1の注釈には、「すべてのデータは湿った状態に基づく」と記載され、HPIの水分の含有量は3.9%であることから成分分析された「HPI」は溶液状態ではないと判断できることを合わせて参酌すると、上記表1における百分率は重量%であると解することができる。
また、HPIの調製方法については(摘記1c)、わずかな修正を含む、大豆タンパク質単離物(SPI)のために使用されるよく知られた工程に従って脱脂されたヘンプミールから調製されたことが記載されている。
そうすると、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「脱脂されたヘンプミールから、わずかな修正を含む、大豆タンパク質単離物(SPI)のために使用されるよく知られた工程に従って、タンパク質86.9重量%、水分3.9重量%、灰分2.6重量%、その他6.6重量%を含有するヘンプタンパク質単離物(HPI)を調製する方法。」(以下、「引用発明」という。)

(3)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「脱脂されたヘンプミール」、「ヘンプタンパク質単離物(HPI)」及び「調製する方法」は、それぞれ本願発明1の「ヘンプタンパク質源」、「ヘンプタンパク質製品」及び「製造する方法」に相当する。
引用発明における「タンパク質86.9重量%」は、「Kjeldahl法(N×6.25)により決定された」ものであり(摘記1c)、水分3.9重量%を含有する湿った状態に基づく含有量であるところ(摘記1e)、乾燥重量基準に換算すると86.9/96.1×100=90.4重量%であるから、本願発明1における「乾燥重量基準で少なくとも60重量%(N×6.25)のタンパク質含有量」に相当する。
そうすると、両者は、
「乾燥重量基準で少なくとも60重量%(N×6.25)のタンパク質含有量を有するヘンプタンパク質製品を製造する方法」の点で一致し、
相違点:本願発明1は、
「(a)ヘンプタンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、タンパク質源からヘンプタンパク質を可溶化させ、ヘンプタンパク質水溶液を形成する工程と、
(b)ヘンプタンパク質水溶液を残留ヘンプタンパク質源から少なくとも部分的に分離する工程と、
(c)任意選択で、ヘンプタンパク質水溶液を希釈する工程と、
(d)ヘンプタンパク質水溶液のpHを1.5から4.4のpHに調整して、酸性化ヘンプタンパク質水溶液を生成する工程と、
(e)酸性化ヘンプタンパク質溶液がまだ清澄でない場合、任意選択で、酸性化ヘンプタンパク質溶液を清澄化する工程と、
(f)工程(b)から(e)の代わりに、合わさったヘンプタンパク質水溶液と残留ヘンプタンパク質源とを任意選択で希釈し、次いでそのpHを1.5から4.4のpHに調整し、次いで酸性化ヘンプタンパク質水溶液を残留ヘンプタンパク質源から分離する工程と、
(g)任意選択で、選択膜技術によりイオン強度を実質的に一定に維持しつつヘンプタンパク質水溶液を濃縮する工程と、
(h)任意選択で、任意選択で濃縮したヘンプタンパク質溶液をダイアフィルトレーションする工程と、
(i)任意選択で、任意選択で濃縮し任意選択でダイアフィルトレーションしたヘンプタンパク質溶液を乾燥させる工程と
を含む」方法であるのに対し、引用発明は「わずかな修正を含む、大豆タンパク質単離物(SPI)のために使用されるよく知られた工程」に従う方法である点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。

イ 相違点について
(ア)刊行物1に記載された課題
刊行物1の摘記(1a)には、「HPIは乳児や子供のための貴重な栄養源として使用できるが、SPIと比較した場合に機能的特性が低いこと」及び「HPIの劣った機能的性質は・・・酸性pHでの凝集に大きく起因している」ことが記載され、摘記(1b)には、「タンパク質可溶性」等の性質が低いことが指摘されている。 これらの記載から、刊行物1には、HPIが乳児や子供のための貴重な栄養源として使用できるが、酸性pHでの凝集に起因して機能的性質が劣るという問題があることが記載されていると認められる。

(イ)刊行物2に記載された技術的事項
これに対して刊行物2には、「低pH条件下で透明で熱安定性の溶液を生成する可溶性の大豆タンパク質単離物製品は存在しない」(摘記2b)という課題を解決し、「約4.4未満の酸性pH値で水溶性」であり、透明な溶液を形成し、ソフトドリンク等に用いることができる(摘記2c)大豆タンパク質単離物の調製方法として、「(a)大豆タンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、 (b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、 (c)大豆タンパク質水溶液のpHを約1.5?約4.4のpHに調整して、透明な酸性化大豆タンパク質溶液を生成するステップとを含む、大豆タンパク質溶液の調製方法」(摘記2a)が記載されているといえる。

(ウ)引用発明に対する刊行物2に記載された技術的事項の適用について
引用発明のHPIは、アルカリ領域での可溶化を含めた「わずかな修正を含む、大豆タンパク質単離物(SPI)のために使用されるよく知られた工程に従う方法」という、大豆タンパク質単離物(SPI)を調製する方法に類似する方法で調製されており(摘記1c)、刊行物1の摘記(1d)には、「HPIの化学組成は・・・大豆タンパク質単離物(SPI)のそれと類似」していることも記載されていることから、当業者は、大豆タンパク質単離物(SPI)を調製する方法を、ヘンプタンパク質単離物(HPI)を得る方法にも適用でき、その場合に類似した性質を有するタンパク質が得られることを理解できる。
そうすると、酸性pHでの凝集に起因する問題が発生せず、透明な水溶液とすることができ、飲料への利用が可能なヘンプタンパク質単離物(HPI)を調製するために、引用発明で採用されている「わずかな修正を含む、大豆タンパク質単離物(SPI)のために使用されるよく知られた工程に従う方法」に代えて、刊行物2に記載された方法を採用すること、及び十分に透明でない場合に清澄化することは、当業者が容易になし得ることであり、そのような方法について、
「(a)ヘンプタンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、タンパク質源からヘンプタンパク質を可溶化させ、ヘンプタンパク質水溶液を形成する工程と、
(b)ヘンプタンパク質水溶液を残留ヘンプタンパク質源から少なくとも部分的に分離する工程と、
(c)任意選択で、ヘンプタンパク質水溶液を希釈する工程と、
(d)ヘンプタンパク質水溶液のpHを1.5から4.4のpHに調整して、酸性化ヘンプタンパク質水溶液を生成する工程と、
(e)酸性化ヘンプタンパク質溶液がまだ清澄でない場合、任意選択で、酸性化ヘンプタンパク質溶液を清澄化する工程と、
を含む方法。」などと特定することも、当業者が適宜なし得ることである。
なお、本願発明1に特定される(b)から(e)の工程を代替する(f)の工程、及び任意選択の(g)?(i)の工程の特定は、実質的な相違点とはならない。

(エ)本願発明1の効果
刊行物1の摘記(1d)には、HPIの化学組成が大豆タンパク質単離物(SPI)のそれと類似していることが記載され、摘記(1f)及び図2(摘記1g)を参照すると、それらの溶解度も比較した場合に、ある領域でわずかに差がある程度で類似の傾向を有していることが読み取れるから、刊行物2に記載された方法により単離されたHPIは、同じ方法で単離されたSPIと同様に、酸性pHで透明な水溶液とすることができると予測することができる。
そうすると、本願明細書の[0096]に記載された「本発明は新規のヘンプタンパク質製品を提供し、ヘンプタンパク質製品は単離物の形態であることができ、酸性pHで完全に可溶性であり、タンパク質が沈殿することなく、ソフトドリンクおよびスポーツドリンクを含む水性系のタンパク質強化に有用であり、特に、これらのドリンクの粉末状形態のタンパク質強化に有用である」との効果は、刊行物1及び2から当業者が予測し得る程度のものであり、格別顕著なものとは認められない。

ウ 請求人の主張について
(ア)引用発明に対する刊行物2に記載された技術的事項の適用について
請求人は、令和元年11月14日に提出した意見書において、「刊行物1、2のいずれにも、ヘンプと大豆との両者に同一の方法を適用できるといった教示はありません。実際、刊行物1において、ヘンプタンパク質単離物(HPI)の調製方法は、大豆タンパク質単離物(SPI)の調製方法とは、異なっています。刊行物2にはヘンプは記載されません。」と主張している。
しかし、上記4.(3)イ「相違点について」に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された課題の共通性、タンパク質のアミノ酸組成及び溶解度の類似性を勘案すると、刊行物1に記載されたヘンプタンパク質源に刊行物2の方法を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、刊行物2の摘記(2a)に記載された(a)?(c)の工程を含む方法は、大豆に限らず植物種子由来の別のタンパク質源に適用されたときにも、pH約1.5?約4.4で透明なタンパク質溶液が得られることが技術常識として知られていたから(例えば、国際公開第2011/137524号(豆類タンパク質源)、国際公開第2010/130026号(キャノーラタンパク質ミセル塊)及び特表2009-508882号公報(油糧種子粗粉)等を参照。)、当該技術常識に鑑みても、刊行物1に記載されたヘンプタンパク質源に刊行物2の方法を適用することは当業者が容易に想到し得ることといえる。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

(イ)刊行物1のタンパク質修飾に関する主張について
請求人は上記意見書において、「摘記(1b)に『このタンパク質(HPI)は、・・・いくつかの目標とする機能的特性を達成するように修飾すべきである』という刊行物1の記載が示されています。・・・当業者は、HPIを調製するための代替的な精製技術(等電点分離以外)を探すのではなく、むしろ、製造したタンパク質(HPI)を化学的もしくは物理的に、又は酵素手段によって修飾する工程を追加することに想到するでしょう(例として添付資料1及び2を参照ください)。」と主張している。
しかし、刊行物1の記載からは、HPIについての課題が「目標とする機能的特性を達成する」こと、すなわち、「中性または酸性pHでの凝集」を改善し、タンパク質可溶性を向上させることにあることが前提であることが読み取れるのであるから、上記「修飾」は、課題解決手段の一つとして例示されたものと理解することができる。また、刊行物1に記載されたヘンプタンパク質源に刊行物2の方法を適用することが容易想到であることは、上記4.(3)イ「相違点について」に記載したとおりである。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

エ 本願発明1についてのまとめ
以上のことから、本願発明1は、引用発明、刊行物1、2に記載された事項及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)理由3(進歩性)のまとめ
よって、本願発明2?42について検討するまでもなく、本願は理由3(進歩性)により拒絶すべきものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-03-02 
結審通知日 2020-03-03 
審決日 2020-03-16 
出願番号 特願2015-524579(P2015-524579)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23J)
P 1 8・ 4- WZ (A23J)
P 1 8・ 113- WZ (A23J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西 賢二  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 天野 宏樹
瀬良 聡機
発明の名称 ヘンプからの可溶性タンパク質製品(「H701」)の製造  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 宮崎 昭夫  
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