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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1364751
審判番号 不服2019-2907  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-04 
確定日 2020-07-29 
事件の表示 特願2016-512988「III-窒化物トランジスタレイアウト」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月 6日国際公開、WO2014/179796、平成28年 6月23日国内公表、特表2016-518723〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年5月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年5月3日(以下「優先日」という。)、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年4月24日に手続補正書が提出され、同年12月7日付けで拒絶理由が通知され、平成30年6月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月30日付けで拒絶査定がなされた。それに対して、平成31年3月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。

第2 平成31年3月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年3月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし14を、補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし14と補正するものであり、そのうちの、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
半導体デバイスであって、
III-N半導体材料を含む基板と、
前記基板上に配置されるIII-N半導体材料の低欠陥層と、
前記低欠陥層上に配置されるIII-N半導体材料の障壁層であって、24-28%のAlNと76-72%のGaNとを含む、前記障壁層と、
第1のガリウム窒化物電界効果トランジスタ(GaN FET)であって、
前記障壁層の上に配置されるゲートと、
前記低欠陥層の上に配置されるドレインコンタクトと、
前記低欠陥層の上に配置されるソースコンタクトと、
を含む、前記第1のGaN FETと、
前記ゲートと同じ構造を有する、前記障壁層の上に配置される隔離ゲート構造であって、前記低欠陥層における2次元電子ガスの第1の領域を前記2次元電子ガスの第2の領域から電気的に隔離するように動作し得る、前記隔離ゲート構造と、
を含み、
前記隔離ゲート構造が前記ゲートと連続的であり、前記第1の領域が前記ドレインコンタクトと連続的であり、前記第2の領域が前記ソースコンタクトと連続的である、半導体デバイス。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
平成30年6月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14のうちの、特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりである。
「【請求項1】
半導体デバイスであって、
III-N半導体材料を含む基板と、
前記基板上に配置されるIII-N半導体材料の低欠陥層と、
前記低欠陥層上に配置されるIII-N半導体材料の障壁層と、
第1のガリウム窒化物電界効果トランジスタ(GaN FET)であって、
前記障壁層の上に配置されるゲートと、
前記低欠陥層の上に配置されるドレインコンタクトと、
前記低欠陥層の上に配置されるソースコンタクトと、
を含む、前記第1のGaN FETと、
前記ゲートと同じ構造を有する、前記障壁層の上に配置される隔離ゲート構造であって、前記低欠陥層における2次元電子ガスの第1の領域を前記2次元電子ガスの第2の領域から電気的に隔離するように動作し得る、前記隔離ゲート構造と、
を含み、
前記隔離ゲート構造が前記ゲートと連続的であり、前記第1の領域が前記ドレインコンタクトと連続的であり、前記第2の領域が前記ソースコンタクトと連続的である、半導体デバイス。」

2 補正の適否
本件補正は、請求項1についての補正(以下「補正事項1」という。)を含むものであるところ、当該補正事項1は、本件補正前の請求項1について、「III-V半導体材料の障壁層」について、「障壁層であって、24-28%のAlNと76-72%のGaNとを含む、前記障壁層」と限定する補正を含むものあって、本件補正前の発明と本件補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、当該補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下において検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-124385号公報(原査定で引用された引用文献1。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体装置及びその製造方法に関し、特に高移動度のキャリア走行層を持つ化合物半導体素子を有する窒化物系化合物半導体装置及びその製造方法に関する。【背景技術】
【0002】
ガリウムナイトライド(GaN)系化合物半導体を用いた窒化物系化合物半導体装置として、高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electronmobility transistor)が知られている。特に、nチャネル導電型HEMTは、高い電子(キャリア)の移動度を有し、高周波特性に優れている。
【0003】
HEMTは、キャリア走行層(キャリアチャネル層)として機能するガリウムナイトライド(GaN)層と、このGaN層上にヘテロ接合によって積層されたキャリア供給層(バリア層)として機能するアルミニウムガリウムナイトライド(AlGaN)層とを有する窒化物系半導体機能層に構成される。GaN層のヘテロ接合近傍には高移動度の電子(エレクトロン)が走行する二次元電子ガス(2DEG:two-dimensionalelectron gas)チャネルが生成される。二次元電子ガスチャネルにはソース電極及びドレイン電極が接続され、ソース電極とドレイン電極との間にはゲート電極が配設される。このような構造を有するHEMTにおいては、自発分極や格子不整合を用いたピエゾ電界により高いキャリア密度を実現することができる。」

(イ)「【0019】
(実施例1)
本発明の実施例1は、化合物半導体素子をHEMTとする窒化物系化合物半導体装置に本発明を適用した例を説明するものである。
【0020】
[窒化物系化合物半導体装置の構造]
図1乃至図3に示すように、実施例1に係る窒化物系化合物半導体装置1は、二次元キャリアガスチャネル310を有し、キャリア走行層として機能する第1の化合物半導体層31と、第1の化合物半導体層31上に配設され、キャリア供給層(バリア領域)として機能する第2の化合物半導体層32と、二次元キャリアガスチャネル310上に配設された第1の電極61と、二次元キャリアガスチャネル310上において第1の電極61から離間して配設された第2の電極42と、を備えた化合物半導体素子10と、化合物半導体素子10の周囲を取り囲む領域の少なくとも一部において二次元キャリアガスチャネル310上に配設され、この二次元キャリアガスチャネル310のキャリア濃度を減少させる反対導電型の電極層601を持つ外周電極62を有する外周領域11とを備える。
【0021】
第1の化合物半導体層31及び第2の化合物半導体層32は化合物半導体機能層3を構築し、この化合物半導体機能層3に化合物半導体素子10が構成される。化合物半導体素子10は、実施例1において電子をキャリアとするnチャネル導電型HEMTである。従って、二次元キャリアガスチャネル310は二次元電子ガスチャネルである。第2の化合物半導体層32の格子定数は第1の化合物半導体層31の格子定数よりも小さく、第2の化合物半導体層32のバンドギャップは第1の化合物半導体層31のバンドキャップよりも大きい。
【0022】
化合物半導体機能層3は、図1に示すように、基板2上に配設される。実施例1において、基板2には、大口径化を実現することができ、かつ安価に製作することができるシリコン基板(例えばシリコン単結晶基板)が使用される。化合物半導体機能層3は第1の化合物半導体層31の第2の化合物半導体層32とは対向する裏面にバッファ層33を備え-、化合物半導体機能層3はこのバッファ層33を介して結晶性の整合性を確保した状態において基板2上に配設されている。また、バッファ層33の機能は第1の化合物半導体層31に備えてもよい。
【0023】
化合物半導体機能層3はここではIII族窒化物系半導体材料により構成されている。代表的なIII族窒化物系半導体はAl_(x)In_(y)Ga_(1-x-y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)により表される。更に、実施例1において、化合物半導体機能層3の第1の化合物半導体層31のAl(アルミニウム)の組成比x1が0≦x1<1の範囲であり、第2の化合物半導体層32のAlの組成比x2が0<x2≦1の範囲であり、Alの組成比x2がAlの組成比x1に比べて大きい(x1<x2)関係にあるとき、第1の化合物半導体層31はAl_(x1)Ga_(1-x1)Nにより表される窒化物半導体材料により構成され、第2の化合物半導体層32はAl_(x2)Ga_(1-x2)Nにより表される窒化物半導体材料により構成される。すなわち、化合物半導体機能層3は、AlGaNからなる第1の化合物半導体層31とAlGaNからなる第2の化合物半導体層32との積層構造、又はGaNからなる第1の化合物半導体層31とAlGaNからなる第2の化合物半導体層32との積層構造、又はAlGaNからなる第1の化合物半導体層31とAlNからなる第2の化合物半導体層32との積層構造により構成される。
【0024】
実施例1において、第1の化合物半導体層31の膜厚は例えば0.5μm-10.0μmに設定される。第1の化合物半導体層31にGaN層を使用する場合、このGaN層は例えば3.0μmの膜厚に設定されたノンドープ層である。第2の化合物半導体層32の膜厚は例えば5nm-100nmに設定され、第2の化合物半導体層32がAlGaN層である場合、このAl組成は例えば0.1-0.4に設定される。具体的には、膜厚が25nm、Al組成が0.26に設定されたノンドープ層であるAlGaN層が使用される。バッファ層33には、例えばGaN層とアルミニウムナイトライド(AlN)層とを交互に複数積層した積層膜が使用される。
・・・(略)・・・
【0026】
化合物半導体素子10は、図1及び図2に示すように、二次元キャリアガスチャネル310を有する化合物半導体機能層3に構成され、第2の電極(第1の主電極)42と、この第2の電極42に離間されかつ平行に延在する第3の電極(第2の主電極)41と、第2の電極42と第3の電極41との間に配設された第1の電極61とを備えている。化合物半導体素子(HEMT)10は、第3の電極41に印加される電位よりも高い電位が第2の電極42に印加され、第1の電極61がオン状態になると、第2の電極42から第3の電極41に電流が流れる(キャリアである電子は逆に流れる。)。
【0027】
ここでは、第2の電極42はドレイン電極として機能し、第3の電極41はソース電極として機能する。第2の電極42及び第3の電極41は二次元キャリアガスチャネル310に対して低抵抗に接続するオーミック電極である。また、実施例1において、第2の電極42は化合物半導体機能層3の第2の化合物半導体層32の表面から第1の化合物半導体層31の二次元キャリアガスチャネル310に向かって形成された接続孔(スルーホール又はビアホール)322内に配設され、第2の電極42と二次元キャリアガスチャネル310との間の低抵抗化が図られている。接続孔322は、二次元キャリアガスチャネル310に達しない場合、二次元キャリアガスチャネル310に達する場合、二次元キャリアガスチャネル310を越える場合のいずれであってもよい。第3の電極41は、第2の電極42と同様に、化合物半導体機能層3の第2の化合物半導体層32の表面から第1の化合物半導体層31の二次元キャリアガスチャネル310に向かって形成された接続孔321内に配設され、第3の電極41と二次元キャリアガスチャネル310との間の低抵抗化が図られている。接続孔321は接続孔322と同一構造により構成され、製造プロセスとしては接続孔321及び322は同一製造工程により製造されている。実施例1において、第2の電極42、第3の電極41は、いずれも例えば10nm-50nmの膜厚を有するTi(チタン)層と、このTi層上に積層され例えば25nm-1000nmの膜厚を有するAl層との積層膜により構成されている。
【0028】
第1の電極61は、制御電極或いはゲート電極であり、第2の化合物半導体層32上に配設される。図1及び図3に示すように、実施例1において、第1の電極61は、第2の化合物半導体層32の表面からこの第2の化合物半導体層32内において二次元キャリアガスチャネル310に向かって掘り下げられた、更に詳細には第2の化合物半導体層32の表面上に配設された絶縁層5の表面から第2の化合物半導体層32内に掘り下げられた第1のリセス(凹部又は窪み)323に配設されている。第1のリセス323の第2の化合物半導体層32の表面からの深さは例えば1nm-24nmに設定され、第1のリセス323直下に第2の化合物半導体層32が存在するように設定されている。絶縁層5には例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、又はそれらを組み合わせた複合膜が使用される。
【0029】
実施例1において、構造の簡素化並びに製造コストの削減化を目的として、第1の電極61は、前述の外周領域11の外周電極62と同一構造により構成され、かつ製造プロセスにおいて同一製造工程により形成されている。例えば、第1の電極61は、二次元キャリアガスチャネル310の導電型とは反対導電型の第1の電極層601を有し、第2の化合物半導体層32の表面からその上方に向かって、この第1の電極層601と、第1の電極層601上の第2の電極層602と、第2の電極層602上の第3の電極層603と、第3の電極層603上の第4の電極層604とを積層した複合膜により構成されている。この第1の電極61の具体的な構造、材料等は外周領域11の説明において詳述する。」

(ウ)「【0030】
図2中、化合物半導体素子10の第2の電極42は、同一幅寸法においてY方向(縦方向)に延在し、X方向(横方向)に複数本配列されている。この配列本数に限定されるものではないが、第2の電極42は3本配列されている。複数本の第2の電極42は、Y方向下側の一端において第2の外部端子(ボンディングパッド)42Pに一体に連結される(電気的に接続される)。第2の電極42は、Z方向から見て櫛形形状を有している。ここで、X方向とはXY座標軸のX軸に一致する方向であり、Y方向とはY軸に一致する方向であり、更にZ方向はZ軸に一致する方向である。
【0031】
第3の電極41は、同一幅寸法において第2の電極42に離間しかつ同一のY方向に延在し、X方向に複数本配列されている。ここでは、第3の電極41は4本配列されている。複数本の第3の電極41は、Y方向上側の一端において第3の外部端子(ボンディングパッド)41Pに一体に連結される(電気的に接続される)。第3の電極41は、Z方向から見て、第2の電極42と噛み合う櫛形形状を有している。
【0032】
第1の電極61は、同一幅寸法において第2の電極42と第3の電極41との間をY方向に繰り返し延在しながらX方向に延在している。第1の電極61の一端及び他端はY方向下側において第1の外部端子(ボンディングパッド)61Pに一体に連結される(電気的に接続される)。第1の電極61は、Z方向から見て、第2の電極42と第3の電極41との間をくぐり抜ける蛇行形状を有している。」

(エ)「【0033】
図1乃至図3に示すように、外周領域11は、第1の電極61の断面構造と同様に、第2の化合物半導体層32の表面からこの第2の化合物半導体層32内において二次元キャリアガスチャネル310に向かって掘り下げられた、更に詳細には第2の化合物半導体層32の表面上に配設された絶縁層5の表面から第2の化合物半導体層32内に掘り下げられた第2のリセス(凹部)324と、この第2のリセス324内部に配設された外周電極62とを備えている。
【0034】
この外周領域11の外周電極62は、第1の電極61と同様に第1の電極層601乃至第4の電極層604を備えている。第1の電極層601には、実施例1において、二次元キャリアガスチャネル310の導電型とは反対導電型であるp型金属酸化物半導体が使用される。このp型金属酸化物半導体には、酸化ニッケル(NiO_(x)、x=1?2。)、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化銅のいずれかを実用的に使用することができる。ここでは、第1の電極層601には、例えば20nm-1000nmの膜厚を有するNiO_(x)が使用される。
【0035】
また、第1の電極層601にはp型窒化物半導体を使用することができる。p型窒化物半導体には、p型ドープAlGaN、p型ドープGaN、p型ドープInGaNのいずれかを実用的に使用することができる。例えば、第1の電極層601には、マグネシウム(Mg)をドープした80nm-120nmの膜厚を有するp型ドープGaNが使用される。」

(オ)「【0041】
[リーク電流防止領域の動作原理]
実施例1に係る窒化物系化合物半導体装置1の外周領域11の動作原理は以下の通りである。
【0042】
まず、化合物半導体素子10の第1の電極61の直下以外には、図4に示すように、化合物半導体機能層3の第1の化合物半導体層31と第2の化合物半導体層32とのヘテロ接合界面近傍において第1の化合物半導体層31に二次元キャリアガスチャネル310が生成される。第1の電極61の直下以外とは、第1の電極61と第2の電極42との間の第1の化合物半導体層31、第1の電極61と第3の電極41との間の第1の化合物半導体層31、第2の電極42直下の第1の化合物半導体層31及び第3の電極41(審決注:「第1の電極41」は誤記と認定した。)直下の第1の化合物半導体層31を意味する。
【0043】
図中、符号E_(f)はフェルミ準位、E_(c)は伝導帯準位、E_(v)は価電子帯準位である。第1の化合物半導体層31のバンドギャップは約3.5V、第2の化合物半導体層32のバンドギャップは約3.8V-4.6Vである。・・・(略)・・・この結果、伝導帯準位E_(c)のレベルがフェルミ準位E_(f)よりも低くなる三角形状のポテンシャル井戸が発生し、このポテンシャル井戸に第2の化合物半導体層32のドナーから発生した電子が集まり、二次元キャリアガスチャネル310が生成される。
【0044】
一方、外周領域11の外周電極62の直下には、図5に示すように、化合物半導体機能層3の第1の化合物半導体層31と第2の化合物半導体層32とのヘテロ接合界面近傍において第1の化合物半導体層31に二次元キャリアガスチャネル310が生成されない。外周領域11においては、第2のリセス324によって第2の化合物半導体層32の厚みが減少されている。これによって、第2の化合物半導体層32のドナーから発生される電子の二次元キャリアガスチャネル310への供給量そのものを減少することができ、二次元キャリアガスチャネル310のキャリア(電子)濃度を減少することができる。
【0045】
更に、外周領域11の外周電極62は第2のリセス342内に配設され、この外周電極62には二次元キャリアガスチャネル310の導電型(n型)とは反対導電型(p型)を有する第1の電極層601が生成されているので、三角形状のポテンシャル井戸が引き上げられ、伝導帯準位E_(c)のレベルはフェルミ準位E_(f)よりも高く押し上げられる。外周電極62は、その直下において二次元キャリアガスチャネル310をp型反転させ、ノーマリーオフ状態に保持する。
【0046】
なお、化合物半導体素子10においては、第1の電極61が外周電極62と同一構造を備えているので、同様の動作原理に基づき、第1の電極61の直下の二次元キャリアガスチャネル310はp型反転し、ノーマリーオフ状態が保持される。
【0047】
すなわち、外周領域11は、外周電極62直下において二次元キャリアガスチャネル310を発生させることがなく、化合物半導体素子10の動作に関係なく、ノーマリーオフ状態に保持する機能を有する。この結果、化合物半導体機能層3の側壁を通じて化合物半導体素子10に流れ込むリーク電流を完全に遮断することができる。
【0048】
なお、実施例1に係る窒化物系化合物半導体装置1においては、外周領域11は第2のリセス324とこの第2のリセス324内に配設された外周電極62とを備えているが、第2のリセス324は配設しないで外周領域11は外周電極62のみで構成してもよい。」

(カ)図1は、以下のとおりである。


図1から、第1の化合物半導体層31において、第1の電極61の下方には二次元キャリアガスチャネル310は形成されておらず、第3の電極41と連続的である領域の二次元キャリアガスチャネル310と、第2の電極42と連続的である領域の二次元キャリアガスチャネル310とは、第1の電極61の下方で離間していることが見てとれる。

(キ)図2は、以下のとおりである。


図2から、第2の電極42は、Z方向から見て櫛形形状を有しており、第3の電極41は、Z方向から見て第2の電極2と噛み合う櫛形形状を有しており、第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41との間をY方向に繰り返し延在しながらX方向に延在し、Z方向から見て、第2の電極42と第3の電極41との間をくぐり抜ける蛇行形状を有していることが見てとれる。
また、第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41とが並列している間に配置されている部分と、Y方向上側に当該部分以外の部分とを有していることが見てとれる。

イ 引用発明
上記アから、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「窒化物系化合物半導体装置1であって、
(ア)二次元キャリアガスチャネル310を有し、キャリア走行層として機能する第1の化合物半導体層31と、第1の化合物半導体層31上に配設され、キャリア供給層(バリア領域)として機能する第2の化合物半導体層32と、二次元キャリアガスチャネル310上に配設された第1の電極61と、二次元キャリアガスチャネル310上において第1の電極61から離間して配設された第2の電極42と、第2の電極42に離間されかつ平行に延在する第3の電極41とを備えた化合物半導体素子10と、化合物半導体素子10の周囲を取り囲む領域の少なくとも一部において二次元キャリアガスチャネル310上に配設され、この二次元キャリアガスチャネル310のキャリア濃度を減少させる反対導電型の電極層601を持つ外周電極62を有する外周領域11とを備え、
(イ)第1の化合物半導体層31及び第2の化合物半導体層32は化合物半導体機能層3を構築し、この化合物半導体機能層3に化合物半導体素子10が構成され、化合物半導体素子10はnチャネル導電型HEMTであり、二次元キャリアガスチャネル310は二次元電子ガスチャネルであり、
(ウ)化合物半導体機能層3は基板2上に配設され、基板2にはシリコン基板が使用され、化合物半導体機能層3は第1の化合物半導体層31の第2の化合物半導体層32とは対向する裏面にバッファ層33を備え、化合物半導体機能層3はこのバッファ層33を介して結晶性の整合性を確保した状態において基板2上に配設されており、
(エ)化合物半導体機能層3は、GaNからなる第1の化合物半導体層31とAlGaNからなる第2の化合物半導体層32との積層構造により構成され、
(オ)第1の化合物半導体層31は、ノンドープ層であり、第2の化合物半導体層32は、Al組成が0.26に設定されたノンドープ層であるAlGaN層が使用され、
(カ)バッファ層33には、例えばGaN層とアルミニウムナイトライド(AlN)層とを交互に複数積層した積層膜が使用され、
(キ)第2の電極42はドレイン電極として機能し、第3の電極41はソース電極として機能し、第2の電極42及び第3の電極41は二次元キャリアガスチャネル310に対して低抵抗に接続するオーミック電極であり、
(ク)第1の電極61は、ゲート電極であり、第2の化合物半導体層32上に配設され、
(ケ)第2の電極42は、Z方向から見て櫛形形状を有しており、第3の電極41は、Z方向から見て、第2の電極2と噛み合う櫛形形状を有しており、第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41との間をY方向に繰り返し延在しながらX方向に延在し、Z方向から見て、第2の電極42と第3の電極41との間をくぐり抜ける蛇行形状を有しており、また、第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41とが並列している間に配置されている部分Aと、図2におけるY方向上側に当該部分A以外の部分Bとを有している、窒化物系化合物半導体装置1。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明を以下のように分説する。
「【請求項1】
(A)半導体デバイスであって、
(B)III-N半導体材料を含む基板と、
(C)前記基板上に配置されるIII-N半導体材料の低欠陥層と、
(D)前記低欠陥層上に配置されるIII-N半導体材料の障壁層であって、24-28%のAlNと76-72%のGaNとを含む、前記障壁層と、
(E)第1のガリウム窒化物電界効果トランジスタ(GaN FET)であって、
前記障壁層の上に配置されるゲートと、
前記低欠陥層の上に配置されるドレインコンタクトと、
前記低欠陥層の上に配置されるソースコンタクトと、
を含む、前記第1のGaN FETと、
(F)前記ゲートと同じ構造を有する、前記障壁層の上に配置される隔離ゲート構造であって、前記低欠陥層における2次元電子ガスの第1の領域を前記2次元電子ガスの第2の領域から電気的に隔離するように動作し得る、前記隔離ゲート構造と、
を含み、
(G)前記隔離ゲート構造が前記ゲートと連続的であり、(H)前記第1の領域が前記ドレインコンタクトと連続的であり、前記第2の領域が前記ソースコンタクトと連続的である、(A)半導体デバイス。」

イ 本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「窒化物系化合物半導体装置1」は、本件補正発明の(A)の「半導体デバイス」に相当する。
また、引用発明の「窒化物系化合物半導体装置1」が備える「nチャネル導電型HEMT」である「化合物半導体素子10」は、「GaNからなる第1の化合物半導体層31」を備えるから、本件補正発明の(E)の「第1のガリウム窒化物電界効果トランジスタ(GaN FET)」に相当する。

(イ)本件補正発明の「III-N半導体材料を含む基板」について、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】には、「基板102はまた、例えば、シリコンベースのウエハ及びアルミニウム窒化物の隔離層、及びシリコンベースのウエハと電気的隔離層との間のグレーデッド(graded)Al_(x)Ga_(1-x)Nのバッファ層を含み得る。」と記載されている。
したがって、本件補正発明の「III-N半導体材料を含む基板」は、「シリコンベースのウエハ及びIII-N半導体材料の層を含む基板」も含むことと解される。
よって、引用発明の「『シリコン基板が使用され』る『基板2』」及び基板2上の「『例えばGaN層とアルミニウムナイトライド(AlN)層とを交互に複数積層した積層膜が使用され』る『バッファ層33』」とを併せたものが、本件補正発明の(B)の「III-N半導体材料を含む基板」に相当する。

(ウ)本件補正発明の(C)の「低欠陥層」は、「前記基板上に配置されるIII-N半導体材料の低欠陥層」であるところ、引用発明の「第1の化合物半導体層31」は、引用発明の(ウ)から、「化合物半導体機能層3は基板2上に配設され」、引用発明の(エ)から、「化合物半導体機能層3は、GaNからなる第1の化合物半導体層31とAlGaNからなる第2の化合物半導体層32との積層構造により構成され」るものであるから、本件補正発明の「前記基板上に配置されるIII-N半導体材料の低欠陥層」と引用発明の「『基板上2上に配設され』る『GaNからなる第1の化合物半導体層31』」とは、「前記基板上に配置されるIII-N半導体材料の層」である点で共通する。

(エ)本件補正発明の(D)の「前記低欠陥層上に配置されるIII-N半導体材料の障壁層であって、24-28%のAlNと76-72%のGaNとを含む、前記障壁層」と、引用発明の(ア)の「第1の化合物半導体層31上に配設され、キャリア供給層(バリア領域)として機能する第2の化合物半導体層32」とを対比する。
引用発明において、「第2の化合物半導体層32」は、引用発明の(ア)から、バリア層すなわち本件補正発明の「障壁層」に相当し、また、引用発明の(エ)から、「AlGaNからなる第2の化合物半導体層32」であるところ、「III-N半導体材料」であるAlGaNは、AlNとGaNとを含む半導体材料であるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記層上に配置されるIII-N半導体材料の障壁層であって、AlNとGaNとを含む、前記障壁層」を含む点で一致する。

(オ)引用発明の(ア)における「化合物半導体素子10」が備える「第2の電極42」は、引用発明の(キ)から、「ドレイン電極として機能」するから、本件補正発明の(E)の「ドレインコンタクト」に相当する。
引用発明の(ア)における「化合物半導体素子10」が備える「第3の電極41」は、引用発明の(キ)から、「ソース電極として機能」するから、本件補正発明の(E)の「ソースコンタクト」に相当する。
また、引用発明において、引用発明の(ア)及び図1から、第2の電極42と第3の電極は41は、いずれも第1の化合物半導体層31の上に配置される電極であるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「第1のガリウム窒化物電界効果トランジスタ(GaN FET)であって、前記層の上に配置されるドレインコンタクトと、前記層の上に配置されるソースコンタクトと、を含む、前記第1のGaN FET」を含む点で一致する。

(カ)本件補正発明の(E)における、「第1のガリウム窒化物電界効果トランジスタ(GaN FET)」が含む「前記障壁層の上に配置されるゲート」、(F)の「前記ゲートと同じ構造を有する、前記障壁層の上に配置される隔離ゲート構造であって、前記低欠陥層における2次元電子ガスの第1の領域を前記2次元電子ガスの第2の領域から電気的に隔離するように動作し得る、前記隔離ゲート構造」、及び(G)の「前記隔離ゲート構造が前記ゲートと連続的であり」と、引用発明の(ア)における「第1の電極61」とを対比する。

引用発明の「第1の電極61」は、引用発明の(ア)から、「化合物半導体素子10」が備え、引用発明の(ク)から、「ゲート電極であり、第2の化合物半導体層32上に配設され」、引用発明の(ケ)から、「第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41との間をY方向に繰り返し延在しながらX方向に延在し、Z方向から見て、第2の電極42と第3の電極41との間をくぐり抜ける蛇行形状を有しており、また、第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41とが並列している間に配置されている部分と、図2におけるY方向上側に当該部分以外の部分とを有している」ところ、引用文献1の図1、2も参酌すると、「第1の電極61」は、「化合物半導体素子10」が備え、第2の化合物半導体層32上に配設され、「第2の電極42と第3の電極41とが並列している間に配置されている部分A」と、第2の化合物半導体層32上に配設される、図2におけるY方向上側の「当該部分A以外の部分B」とを含み、部分Aと部分Bは同じ構造を有し、部分Bは部分Aと連続的であるといえる。
したがって、引用発明において、第1の電極61のうち、「第2の電極42と第3の電極41とが並列している間に配置されている部分A」は、本件補正発明の「ゲート」に相当する。また、引用発明において、第1の電極61のうち、図2におけるY方向上側の「当該部分A以外の部分B」は、本件補正発明の「前記ゲートと同じ構造」を有し、「前記ゲートと連続的」である構造である点で共通する。

そうすると、上記(エ)、(オ)における対比も併せると、本件補正発明と引用発明とは、
「第1のガリウム窒化物電界効果トランジスタ(GaN FET)であって、
前記障壁層の上に配置されるゲートと、
前記層の上に配置されるドレインコンタクトと、
前記層の上に配置されるソースコンタクトと、
を含む、前記第1のGaN FETと、
前記ゲートと同じ構造を有する、前記障壁層の上に配置される構造と、
を含み、
前記構造が前記ゲートと連続的であ」る点で一致する。

ウ 以上をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点と相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「半導体デバイスであって、
III-N半導体材料を含む基板と、
前記基板上に配置されるIII-N半導体材料の層と、
前記層上に配置されるIII-N半導体材料の障壁層であって、AlNとGaNとを含む、前記障壁層と、
第1のガリウム窒化物電界効果トランジスタ(GaN FET)であって、
前記障壁層の上に配置されるゲートと、
前記層の上に配置されるドレインコンタクトと、
前記層の上に配置されるソースコンタクトと、
を含む、前記第1のGaN FETと、
前記ゲートと同じ構造を有する、前記障壁層の上に配置される構造と、
を含み、
前記構造が前記ゲートと連続的である、半導体デバイス。」

<相違点>
<相違点1>
基板上に配置されるIII-N半導体材料の層について、本件補正発明では、「低欠陥層」であるのに対し、引用発明では、「第1の化合物半導体層31」が低欠陥層であるか否か不明である点。

<相違点2>
III-N半導体材料の障壁層について、本件補正発明では、「24-28%のAlNと76-72%のGaNとを含む」のに対し、引用発明では、第2の化合物半導体層32(本件補正発明の「障壁層」に相当。)は、「AlGaNからなる」ものの、AlNとGaNの比率は特定されていない点。

<相違点3>
本件補正発明では、ゲートと同じ構造を有し、ゲートと連続的である構造は、「隔離ゲート構造であって、前記低欠陥層における2次元電子ガスの第1の領域を前記2次元電子ガスの第2の領域から電気的に隔離するように動作し得る、前記隔離ゲート構造」であり、「前記第1の領域が前記ドレインコンタクトと連続的であり、前記第2の領域が前記ソースコンタクトと連続的である」のに対し、引用発明では、「第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41との間をY方向に繰り返し延在しながらX方向に延在し、Z方向から見て、第2の電極42と第3の電極41との間をくぐり抜ける蛇行形状を有しており、また、第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41とが並列している間に配置されている部分Aと、図2におけるY方向上側に当該部分A以外の部分Bとを有している」ものの、本件補正発明の上記のような特定はなされていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
本件補正発明の(C)の「低欠陥層」について、本件の明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】には、「基板102の電気的隔離層上に低欠陥層104が形成される。低欠陥層104は、例えば、25?1000ナノメートルのガリウム窒化物であり得る。低欠陥層104は、電子移動度に対する悪影響を有し得る結晶欠陥を最小化するように形成され得、その結果、低欠陥層104が、炭素、鉄、又はその他のドーパント種で、例えば、1017cm-3より小さいドーピング密度で、ドープされる。」と、段落【0011】には、「低欠陥層104に二次元電子ガスが生成される。」と記載されている。
本件の明細書及び図面のその他の箇所を精査しても、本件の明細書には、低欠陥層104における欠陥それ自体についての具体的な記載は見出せない。

一方、引用発明において、「第1の化合物半導体層31」は、引用発明の(ア)から、「二次元キャリアガスチャネル310を有し、キャリア走行層として機能する第1の化合物半導体層31」であって、引用発明の(エ)から、「GaNからなる第1の化合物半導体層31」であり、引用発明の(オ)から、「ノンドープ層」であり、引用発明の(イ)から、「化合物半導体素子10はnチャネル導電型HEMTであり、二次元キャリアガスチャネル310は二次元電子ガスチャネル」であるところ、引用発明の「第1の化合物半導体層31」は、nチャネル導電型HEMTのノンドープGaNの電子走行層であるといえる。
また、上記(2)アに摘記の引用文献1の段落【0002】に記載のように、GaN系化合物半導体を用いたnチャネル導電型HEMTは、「高い電子(キャリア)の移動度」を有することは技術常識であることも勘案すると、引用発明において、nチャネル導電型HEMTのノンドープGaNの電子走行層の「第1の化合物半導体層31」を、「低欠陥層」とすることは当業者であれば、当然なし得たことである。
よって、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。

イ 相違点2について
引用発明において、引用発明の(オ)から、「第2の化合物半導体層32は、Al組成が0.26に設定されたノンドープ層であるAlGaN層が使用され」るところ、障壁層は、26%のAlNと74%のGaNを含むといえるから、引用発明の障壁層のAlNとGaNの比率は、本件補正発明の障壁層のAlNとGaNの比率である「24-28%のAlNと76-72%のGaN」との数値範囲に含まれる。
よって、相違点2は、実質的なものではない。

ウ 相違点3について
(ア)a 上記(2)アに摘記のとおり、引用文献1の段落【0029】には、「第1の電極61の具体的な構造、材料等は外周領域11の説明において詳述する。」と記載され、段落【0033】?【0040】で外周領域について説明されており、そのうち、段落【0033】?【0036】には、外周領域11の外周電極62は、第1の電極61と同様に、p型金属酸化物半導体若しくはp型窒化物半導体を使用する第1の電極層601を備えている旨が開示されている。

また、上記(2)アに摘記のとおり、引用文献1の段落【0045】?【0047】には、以下のように記載されている。
「【0045】
更に、外周領域11の外周電極62は第2のリセス342内に配設され、この外周電極62には二次元キャリアガスチャネル310の導電型(n型)とは反対導電型(p型)を有する第1の電極層601が生成されているので、三角形状のポテンシャル井戸が引き上げられ、伝導帯準位E_(c)のレベルはフェルミ準位E_(f)よりも高く押し上げられる。外周電極62は、その直下において二次元キャリアガスチャネル310をp型反転させ、ノーマリーオフ状態に保持する。
【0046】
なお、化合物半導体素子10においては、第1の電極61が外周電極62と同一構造を備えているので、同様の動作原理に基づき、第1の電極61の直下の二次元キャリアガスチャネル310はp型反転し、ノーマリーオフ状態が保持される。
【0047】
すなわち、外周領域11は、外周電極62直下において二次元キャリアガスチャネル310を発生させることがなく、化合物半導体素子10の動作に関係なく、ノーマリーオフ状態に保持する機能を有する。この結果、化合物半導体機能層3の側壁を通じて化合物半導体素子10に流れ込むリーク電流を完全に遮断することができる。」
したがって、化合物半導体素子10は、第1の電極61の直下に二次元キャリアガスチャネル310が生成されず、ノーマリーオフ状態が保持されるように動作すると理解できる。

b しかも、上記(2)アに摘記のとおり、引用文献1の段落【0026】には、「化合物半導体素子(HEMT)10は、第3の電極41に印加される電位よりも高い電位が第2の電極42に印加され、第1の電極61がオン状態になると、第2の電極42から第3の電極41に電流が流れる(キャリアである電子は逆に流れる。)。」と記載されている。
したがって、このことからも、化合物半導体素子10は、ノーマリーオフ型のnチャネルHEMTであることが明らかである。

(イ)a 上記(2)ア(カ)のとおり、引用文献1の図1から、第1の化合物半導体層31において、第1の電極61の下方には二次元キャリアガスチャネル310が生成されておらず、第3の電極41と連続的である領域の二次元キャリアガスチャネル310と、第2の電極42と連続的である領域の二次元キャリアガスチャネル310とは、第1の電極61の下方で離間していることが見てとれる。

b また、上記(2)アに摘記のとおり、引用文献1の段落【0042】には、「化合物半導体素子10の第1の電極61の直下以外には、図4に示すように、化合物半導体機能層3の第1の化合物半導体層31と第2の化合物半導体層32とのヘテロ接合界面近傍において第1の化合物半導体層31に二次元キャリアガスチャネル310が生成される。第1の電極61の直下以外とは、第1の電極61と第2の電極42との間の第1の化合物半導体層31、第1の電極61と第3の電極41との間の第1の化合物半導体層31、第2の電極42直下の第1の化合物半導体層31及び第3の電極41直下の第1の化合物半導体層31を意味する。」と記載されている。
すなわち、引用文献1の図1に示されるのと同様に、段落【0042】及び図4のエネルギバンド図にも、第1の電極61の直下以外である、第2の電極42直下の第1の化合物半導体層31及び第3の電極41直下の第1の化合物半導体層31(に二次元キャリアガスチャネル310が生成される旨が開示されている。

(ウ)引用発明において、引用発明の(ケ)から、「第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41との間をY方向に繰り返し延在しながらX方向に延在し、Z方向から見て、第2の電極42と第3の電極41との間をくぐり抜ける蛇行形状を有しており、また、第1の電極61は、第2の電極42と第3の電極41とが並列している間に配置されている部分Aと、図2におけるY方向上側に当該部分A以外の部分Bとを有している」ところ、第1の電極61のうち、上記「部分B」は、引用文献1の図2を参照すると、X方向に延在しながら、第3の電極41の周囲を囲むことで、第2の電極42と連続的である二次元キャリアガスチャネル310の領域と、第3の電極41と連続的である二次元キャリアガスチャネル310の領域との間に配置されている構成であると解される。
したがって、引用発明において、第1の電極61の上記部分Aの下方のみならず、上記部分Bの下方においても、上記(イ)で検討したのと同様に、第1の化合物半導体層31において、第1の電極61の下方には二次元キャリアガスチャネル310は生成されず、第3の電極41と連続的である領域の二次元キャリアガスチャネル310と、第2の電極42と連続的である領域の二次元キャリアガスチャネル310とは、第1の電極61の下方で離間していることは明らかであり、また、上記(ア)で検討したように、化合物半導体素子10は、ノーマリーオフ型のnチャネルHEMT素子であるといえるから、上記当該構成においては、第1の電極61のオン・オフ動作によって、第2の電極42と連続的である二次元キャリアガスチャネル310の領域と、第3の電極41と連続的である二次元キャリアガスチャネル310の領域が電気的に隔離するように動作し得ることは、当業者にとって明らかである。

(エ)ここにおいて、第2の電極42(ドレインコンタクト)と連続的である領域の二次元キャリアガスチャネル310(2次元電子ガス)の領域と、第3の電極41(ソースコンタクト)と連続的である領域の二次元キャリアガスチャネル310(2次元電子ガス)の領域は、それぞれ本件補正発明の「第1の領域」と、「第2の領域」に対応するといえる。
以上のとおりであるから、引用文献1には、本件補正発明における(低欠陥)層における「2次元電子ガスの第1の領域」と「前記2次元ガスの第2の領域」が、電気的に隔離するように動作し得ることが示されているといえる。
よって、相違点3は、実質的なものではない。

エ 効果について
発明の効果に関して、本件補正発明によって当業者が予期し得ない格別の効果が奏されるとは認められず、本件補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものというほかない。

オ 判断についてのまとめ
以上検討したとおりであるから、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことであり、相違点2及び相違点3は実質的なものではなく、また、上記相違点1を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)独立特許要件についてのまとめ
よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年6月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記「第2 1(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
1.(新規性)この出願の請求項1ないし14に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1または2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、請求項6及び13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2ないし4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、請求項7及び14にかかる発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用文献1:特開2011-124385号公報
引用文献2:国際公開第2012/111393号
引用文献3:特開2010-062552号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:国際公開第2007/040160号(周知技術を示す文献)

3 引用文献の記載と引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-124385号公報(引用文献1、再掲)には、上記「第2 2(2)ア 引用文献1の記載」に記載した事項が記載されており、引用文献1には上記「第2 2(2)イ 引用発明」に記載したとおりの引用発明が記載されている。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2 2 補正の適否」で検討した本件補正発明において、「III-V半導体材料の障壁層」についての限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の特定事項を実質的に全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 2 補正の適否」において判断したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-03-02 
結審通知日 2020-03-05 
審決日 2020-03-17 
出願番号 特願2016-512988(P2016-512988)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 恩田 和彦  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 恩田 春香
小田 浩
発明の名称 III-窒化物トランジスタレイアウト  
代理人 片寄 恭三  
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