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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1364758
審判番号 不服2019-6852  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-27 
確定日 2020-07-29 
事件の表示 特願2016-537819「多ユーザアップリンクのための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 5日国際公開、WO2015/031502、平成28年 9月29日国内公表、特表2016-530823〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)8月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年8月28日 米国、2014年8月26日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年7月28日 :手続補正書の提出
平成30年6月19日付け:拒絶理由通知書
平成30年9月20日 :意見書,手続補正書の提出
平成30年10月3日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成31年1月 7日 :意見書,手続補正書の提出
平成31年2月 1日付け:平成31年1月7日にされた手続補正につい ての補正の却下の決定,拒絶査定
令和元年5月27日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出

第2 令和元年5月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年5月27日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概要
本件補正は,平成30年9月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「 ワイヤレス通信のための方法であって、
第1のユーザ端末を含む複数のユーザ端末の各々に対するアップリンク送信機会と目標送信持続時間とを示す第1のワイヤレスメッセージを、アクセスポイントから受信することと、
前記目標送信持続時間に合うように、前記第1のユーザ端末からの第2のワイヤレスメッセージの計画された送信持続時間を変更することと、
前記目標送信持続時間にわたって、前記第1のユーザ端末から前記第2のワイヤレスメッセージを送信することと、
を備え、
前記計画された送信持続時間を変更するために、前記第2のワイヤレスメッセージの送信データレートまたは集約のレベルのうちの少なくとも1つが調整される、方法。」
との発明(以下,「本願発明」という。)を,
「 ワイヤレス通信のための方法であって、
第1のユーザ端末を含む複数のユーザ端末の各々に対するアップリンク送信機会と目標送信持続時間とを示す第1のワイヤレスメッセージを、アクセスポイントから受信することと、
前記目標送信持続時間に合うように、前記第1のユーザ端末からの第2のワイヤレスメッセージの計画された送信持続時間を変更することと、
前記目標送信持続時間にわたって、前記第1のユーザ端末から前記第2のワイヤレスメッセージを送信することと、
を備え、
前記計画された送信持続時間を変更するために、前記第2のワイヤレスメッセージのための変調およびコーディング方式(MCS)およびデータ集約のレベルが調整される、方法。」(下線は,補正箇所を示す。)
との発明(以下,「本願補正発明」という。)に補正することを含むものである。

2 補正の適否
請求項1についての上記補正は、本件補正前の「前記第2のワイヤレスメッセージの送信データレートまたは集約のレベルのうちの少なくとも1つが調整される」について、「送信データレート」の調整を「変調およびコーディング方式(MCS)」の調整に限定し、更に、「変調およびコーディング方式(MCS)」及び「データ集約のレベル」の両者を調整するように限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、請求項1についての上記補正は、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

請求項1についての上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて、以下検討する。

(1) 本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 補正の概要」の項の「本願補正発明」のとおりのものと認める。

(2) 引用発明及び周知技術
ア 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2010-263493号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
本発明は、空間軸上の無線リソースを複数のユーザーで共有する空間分割多元接続(Space Division Multuple Access:SDMA)を適用して複数ユーザー全体でのスループットを向上させる通信装置及び通信方法、コンピューター・プログラム、並びに通信システムに係り、特に、RD(Reverse Direction)プロトコルを導入して、排他的なチャネル利用期間(TXOP)内での空間多重フレームをさらに効率的にする通信装置及び通信方法、コンピューター・プログラム、並びに通信システムに関する。
(中略)
【0035】
図1には、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成を模式的に示している。図示の通信システムは、アクセスポイント(AP)として動作する通信局STA0と、端末局(MT)として動作する複数の通信局STA1、STA2、STA3で構成される。
(中略)
【0037】
ここで、アクセスポイントとしてのSTA0は、複数のアンテナを備えアダプティブ・アレイ・アンテナによる空間分割多元接続を行なう通信装置からなり、空間軸上の無線リソースを複数ユーザーに割り当てて、フレーム通信を多重化する。すなわち、STA0は、IEEE802.11acなどの新規規格に準拠する通信装置であり、宛て先通信局が異なる2以上のフレームを同一の時間軸上で多重化したり、2以上の通信局が同一の時間軸上で多重化送信した自局宛てのフレームを送信元毎に分離したりして、1対多のフレーム通信を行なう。
(中略)
【0039】
図2には、空間分割多元接続を適用し、複数ユーザーの多重化を行なうことができる通信装置の構成例を示している。図1に示した通信システムにおいて、アクセスポイントとして動作する通信局STA0や、端末局として動作する通信局STA1?STA3のうち一部の空間分割多元接続に対応したものは、図2に示した構成を備え、新規規格に則って通信動作を行なうものとする。
(中略)
【0047】
データ処理部25は、例えば図1に示す通信システムで実装されるメディア・アクセス制御(Media Access Control:MAC)方式における通信プロトコルの各層の処理を実行する。また、各送受信ブランチ20-1、20-2、…、20-Nは、例えばPHY層に相当する処理を実行する。後述するように、上位層から送られてくるフレームを最終的にPHY層から送信される際に所定の長さとなるように調整するようになっている。但し、かかるフレーム長の制御は、データ処理部25又は各送受信ブランチ20-1、20-2、…、20-Nのいずれで行なうかは特に限定されない。
(中略)
【0075】
既に述べたように、IEEE802.11nでは、TXOP内でのデータ伝送をさらに効率化するために、RDプロトコルを導入している。図5には、図4に示した通信シーケンス例に、RDプロトコルを適用した変形例を示している。この場合、各端末局STA1?STA3からアクセスポイントへデータ・フレームを同時送信することで、1つのTXOP内で、アップリンクとダウンリンクのデータ伝送が行なわれる。但し、図5では、アクセスポイントとしてのSTA0がRDイニシエーターとなり、各端末局STA1?STA3がRDレスポンダーとして動作するものとする。
(中略)
【0083】
図5に示した通信シーケンス例では、RDプロトコルに従って各通信局STA1、STA2、STA3から同時送信される逆方向データ・フレーム(DATA1-0、DATA2-0、DATA3-0)を同一のフレーム長として描いている。しかしながら、多くの無線LANシステムでは、可変長フレーム・フォーマットが採用されており、上位層から渡される時点でユーザー毎のフレーム長が区々であることが想定される。そして、各通信局STA1、STA2、STA3のPHY層から最終的に出力される各データ・フレームのフレーム長も区々のままでは、これらを受信するSTA0では、データ・フレームの受信中にフレーム多重化数が増減することに伴って、AGCの点で不安定な動作を発生してしまう。
【0084】
そこで、本実施形態では、RDプロトコルに従ってSTA0に対しアップリンクでデータ・フレームを同時送信する各通信局STA1、STA2、STA3は、各々の逆方向データ・フレーム(DATA1-0、DATA2-0、DATA3-0)を、最終的にPHY層から出力する際のフレーム長を揃えて出力するようにしている。
【0085】
なお、ここで言うフレームの「長さ」とは、時間的な長さ、シンボル数、ビット数、データ・サイズの意味を含むものとする。また、フレームへのパッディングは、ビットあるいはシンボルを最小単位として行なうことができる。
【0086】
図6には、アクセスポイントとして動作する通信局STA0がデータ送信元となり、端末局として動作する各通信局STA1?STA3がデータ送信先となる場合において、RDプロトコルを適用して各通信局STA1?STA3が逆方向に送信するフレームのフレーム長を同一にする通信シーケンス例を示している。
(中略)
【0090】
そして、STA0は、各通信局STA1、STA2、STA3からのトレーニング・フレームを受信完了してから所定のフレーム間隔SIFSが経過した後に、ダウンリンク、すなわち各通信局STA1、STA2、STA3の各々に宛てたデータ・フレーム(DATA0-1、DATA0-2、DATA0-3)をそれぞれ送信する。STA0は、上記の学習したアダプティブ・アレイ・アンテナの重みを利用することで、複数のデータ・フレームを空間分割多重して同時送信することができる。
【0091】
また、STA0は、各データ・フレーム(DATA0-1、DATA0-2、DATA0-3)のMACフレーム内で、各通信局STA1、STA2、STA3に対して、RDG(RD Grant:逆方向許可)を示す。
【0092】
各通信局STA1、STA2、STA3は、RDプロトコルにより逆方向すなわちアップリンクのデータ伝送が許可若しくは委譲されていることを認識すると、データ・フレームを受信完了して所定のフレーム間隔SIFSが経過した後に、ACKフレーム(ACK1-0、ACK2-0、ACK3-0)を同時に返信し、さらに引き続いてSTA0宛ての逆方向データ・フレーム(DATA1-0、DATA2-0、DATA3-0)をそれぞれ送信する。
【0093】
このとき、各通信局STA1、STA2、STA3は、自局のPHY層が最終的に出力するデータ・フレームのフレーム長が一定になるよう、フレーム長の調整処理を行なう。
【0094】
ここで、各フレームの長さを同じするための処理方法の一例は、所定長に満たないフレームのデータ部にパッディングを行なうことである。図示の例では、DATA1-0よりも短いDATA2-0並びにDATA3-0にパッディングがそれぞれ施されている。パッディングに利用されるビット又はシンボルは、パッディングされたフレームを交換する通信装置間で既知であることが好ましい。
【0095】
また、各通信局STA1、STA2、STA3がアップリンクで送信するデータ・フレームの最終的なフレーム長を同じにするためには、揃えるべきフレーム長をあらかじめ各通信局STA1、STA2、STA3に認識させる必要がある。例えば、アクセスポイントSTA0がRDGを示す際に併せて共通のフレーム長を通知する方法や、アップリンクのフレーム長を通信プロトコルで規定しておく方法を挙げることができる。
(中略)
【0100】
なお、各通信局STA1、STA2、STA3は、アップリンクでフレームを送信する時刻を互いに認識する必要がある。例えば、アクセスポイントSTA0がRDGを示す際に、各通信局STA1、STA2、STA3のフレーム送信時刻の情報を合わせて通知する方法などが挙げられる。
(中略)
【0109】
図8には、図2に示した通信装置が、図5乃至図7に示した通信シーケンスにおいて、アクセスポイント(STA0)として動作して、複数の通信局宛てのフレームを同一時間上で多重送信するための処理手順をフローチャートの形式で示している。上述したように、通信シーケンスではRDプロトコルが適用され、アクセスポイントはRDイニシエーターとしての役割を果たす。
(中略)
【0117】
一方、アップリンクのデータ受信要求があり、且つ、当該TXOPに余裕があるときには、アクセスポイントは、送信権移譲開始時刻及び送信権移譲終了時刻とフレーム長を指定したRDGフィールドを、各端末局宛てのデータ・フレーム内に記載し(ステップS5)、同一時間上で送信する(ステップS6)。
(中略)
【0120】
図9には、図2に示した通信装置が、図5乃至図7に示した通信シーケンスにおいて、いずれかの端末局(STA1?STA3)として動作して、複数の通信局宛てのフレームを同一時間上で多重送信するための処理手順をフローチャートの形式で示している。上述したように、通信シーケンスではRDプロトコルが適用され、端末局はRDレスポンダーとしての役割を果たす。
(中略)
【0123】
端末局は、アクセスポイントからダウンリンクのデータ・フレームを受信すると、送信権の移譲を示すRDGフィールドが付加されているか否かをチェックする(ステップS15)。
(中略)
【0127】
一方、アクセスポイント宛てのアップリンクの送信データが存在する場合には(ステップS16のYes)、端末局は、データ・フレームを受信完了してから所定のフレーム間隔SIFSが経過した後に、アクセスポイントに対してACKフレームとアップリンクのデータ・フレームを続けて送信する。その際、端末局は、RDGフィールド内で指定される送信開始時刻及びフレーム長を遵守して、データ・フレームを送信し(ステップS17)、本処理ルーチン全体を終了する。」

(イ)「【図6】



(ウ)「【図8】



(エ)「【図9】



上記(ア)の記載,及び(イ)?(エ)の図面,並びに当業者の技術常識を考慮すると、

a 上記(ア)の段落【0001】の記載によれば、引用例1には、「空間軸上の無線リソースを複数のユーザーで共有する空間分割多元接続を適用する通信方法」が記載されていると認められる。

b 上記(ア)の段落【0086】、【0090】?【0092】及び上記(イ)の図6によれば、アクセスポイントとして動作する通信局STA0は、端末局として動作する各通信局STA1?STA3の各々に宛てたデータ・フレームをそれぞれ送信し、各データ・フレームのMACフレーム内で各端末局に対してRDGが示され、各端末局は、それぞれに宛てられたデータ・フレームを受信する。
ここで、同段落【0095】には、各端末局がアップリンクで送信するデータ・フレームの最終的なフレーム長を同じ長さにするために、アクセスポイントがRDGを示す際に併せて共通のフレーム長を通知すること、同段落【0100】には、各端末局が、アップリンクでフレームを送信する時刻を互いに認識するために、アクセスポイントがRDGを示す際に、各端末局のフレーム送信時刻の情報を合わせて通知すること、がそれぞれ記載されている。
そして、同段落【0117】、【0123】、【0127】には、アクセスポイントが、送信権移譲開始時刻とフレーム長を指定したRDGフィールドを、各端末局宛てのデータ・フレーム内に記載して同一時間上で送信し、各端末局が、該データ・フレームをアクセスポイントから受信すると、各端末局がアップリンクのデータ・フレームを送信する際、RDGフィールド内で指定される送信開始時刻及びフレーム長を遵守することが記載されている。
してみると、上記段落【0095】に記載された、各端末局がアップリンクで送信するデータ・フレームの最終的なフレーム長を同じにするための共通のフレーム長、及び、上記段落【0100】に記載された、各端末局がアップリンクでフレームを送信する時刻を互いに認識するためのフレーム送信時刻の情報、のそれぞれが、アクセスポイントから各端末局の各々に宛てたデータ・フレームのMACフレーム内で、各端末局に対して、RDGと併せて示されることは、引用例1において当然想定されていることといえる。
また、上記(ア)の段落【0085】には、フレームの長さが、時間的な長さの意味を含むことも記載されている。
よって、引用例1には、「アクセスポイントとして動作する通信局STA0は、端末局として動作する各通信局STA1?STA3の各々に宛てたデータ・フレームをそれぞれ送信し、各データ・フレームのMACフレーム内で各端末局に対して、RDG、各端末局がアップリンクで送信するデータ・フレームの最終的なフレーム長を同じ長さにするための共通のフレーム長、及び、各端末局がアップリンクでフレームを送信する時刻を互いに認識するためのフレーム送信時刻の情報、がそれぞれ示され、各端末局は、それぞれに宛てられたデータ・フレームを受信すること」、及び、「前記フレーム長が時間的な長さの意味を含むこと」が記載されていると認められる。

c 上記(ア)の段落【0037】、【0039】によれば、アクセスポイント及び各端末局は、IEEE802.11acなどの新規規格に則って通信動作を行なうといえる。
また、上記(ア)の段落【0047】、【0084】、【0086】、【0092】?【0094】、及び、上記(ウ)の図6によれば、各端末局は、RDプロトコルによりアップリンクのデータ伝送が許可若しくは委譲されていることを認識すると、アクセスポイント宛てのアップリンクのデータ・フレームをそれぞれ送信し、その際、自局のPHY層から送信されるデータ・フレームの最終的なフレーム長が同じになるよう、フレーム長を調整する処理として、所定長に満たないフレームのデータ部にパッディングを行なう。
ここで、同段落【0095】に、各端末局がアップリンクで送信するデータ・フレームの最終的なフレーム長を同じにするために、アクセスポイントがRDGを示す際に併せて共通のフレーム長を通知し、揃えるべきフレーム長をあらかじめ各端末局に認識させることが記載されていることから、各端末局は、アクセスポイントから示された共通のフレーム長に揃えるように、各端末局から送信されるデータ・フレームのフレーム長を調整することが想定されていることは明らかである。
よって、引用例1には、「端末局は、IEEE802.11acなどの新規規格に則って通信動作を行ない、アクセスポイントから示された共通のフレーム長に揃えるように、送信されるデータ・フレームのフレーム長を調整すること」、「端末局は、調整されたデータ・フレームを送信すること」、及び、「端末局から送信されるデータ・フレームのフレーム長を調整する処理として、所定長に満たないデータ・フレームのデータ部にパッディングを行なうこと」が、それぞれ記載されていると認められる。

したがって、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「 空間軸上の無線リソースを複数のユーザーで共有する空間分割多元接続を適用する通信方法であって、
アクセスポイントとして動作する通信局STA0は、端末局として動作する各通信局STA1?STA3の各々に宛てたデータ・フレームをそれぞれ送信し、各データ・フレームのMACフレーム内で各端末局に対して、RDG、各端末局がアップリンクで送信するデータ・フレームの最終的なフレーム長を同じ長さにするための共通のフレーム長、及び、各端末局がアップリンクでフレームを送信する時刻を互いに認識するためのフレーム送信時刻の情報、がそれぞれ示され、各端末局は、それぞれに宛てられたデータ・フレームを受信すること、及び、前記フレーム長が時間的な長さの意味を含むことと、
端末局は、IEEE802.11acなどの新規規格に則って通信動作を行ない、アクセスポイントから示された共通のフレーム長に揃えるように、送信されるデータ・フレームのフレーム長を調整することと、
端末局は、調整されたデータ・フレームを送信することと、
端末局から送信されるデータ・フレームのフレーム長を調整する処理として、所定長に満たないデータ・フレームのデータ部にパッディングを行なうことと、
を備える方法。」

イ 周知技術
拒絶査定と同日付けの補正の却下の決定で示された特開2013-70157号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(オ)「【0001】
本発明は、空間多重を用いて複数の送信データを同時に通信する無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2.4GHz帯または5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11g規格、IEEE802.11a規格などの普及が目覚しい。これらのシステムでは、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用い、最大で54Mbpsの物理層伝送速度を実現している。
(省略)
【0004】
そのための技術として、IEEE802.11nにおいて、空間多重送信技術としてMIMO(Multiple input multiple output)技術が導入された。さらに、IEEE802.11acでは、マルチユーザMIMO(MU-MIMO)通信方法が検討されている(非特許文献1)。下り回線におけるMU-MIMO通信では、複数の端末に対し、同一タイムスロット、同一周波数チャネルで送信が行われる。
(中略)
【0040】
図3は、信号長評価送信制御回路18の処理の具体例を示す図である。以下、図3に示される具体例について説明する。
基地局1が通信相手として端末装置2-1?2-3(以下、それぞれ「STA1」?「STA3」とも表す)へ空間多重により送信データを送信することを決定すると、変調モード決定回路17は、それぞれの通信相手との間の伝搬路に関するチャネル情報に基づいて、通信相手毎に空間多重数とMCSインデックス(変調方式及び符号化率)と送信ウエイトとを決定する。図3の場合、変調モード決定回路17は、端末装置2-1、端末装置2-2、端末装置2-3の空間多重数は、それぞれ2、1、1と決定する。また、変調モード決定回路17は、変調方式及び符号化率を表すMCSインデックスを、それぞれ7、6、5と決定する。
【0041】
信号長評価送信制御回路18は、変調モード決定回路17によって決定されたMCSインデックス及び空間多重数と、各送信データのデータ量とに基づいて、各送信データの実データ部分信号の信号長を算出する。図3Aは、変調モード決定回路17によって決定されたMCSインデックス及び空間多重数に基づいて算出される信号長の具体例を示す図である。図3Aの例では、端末装置2-2と端末装置2-3への実データ部分信号の信号長が、最長信号長Dよりも短い。そのため、もしこのままの信号長で各送信信号が送信される場合には、図3Aに示されるように、端末装置2-2と端末装置2-3への実データ部分信号の後半部分にPaddingが挿入される。
【0042】
図3Bは、信号長評価送信制御回路18によるMCSインデックスの選択結果の具体例を示す図である。信号長評価送信制御回路18は、最長信号長Dよりも短い信号長の実データ部分信号(Data for STA 2及びData for STA 3)それぞれについて、最長信号長Dよりも短い信号長の中で最も長い信号長となるMCSインデックスを選択する。
(中略)
【0045】
上述した信号長評価送信制御回路18の処理によって選択されたMCSインデックスに基づいて送信信号生成回路12が送信信号を生成すると、図3Bに示されるような送信信号が生成される。図3Bに示されるように、最長信号長Dよりも短い信号長の実データ部分信号(Data for STA 2及びData for STA 3)の信号長と最長信号長Dとの差が小さくなっている。そのため、より長い時間に亘ってMU-MIMOによる通信が可能となる。また、端末装置2-2及び端末装置2-3において、変調モードがよりビットレートの低いものに変更されるため、それぞれのSNRマージンが増大され、誤りの少ない通信が期待できる。」

(カ)「図3



また、拒絶査定時に引用された特開2007-329694(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(キ)「【背景技術】
【0002】
無線通信においてマルチユーザーアクセスを実現するための様々な多元接続方式が知られている。SDMA(Space Division Multiple Access:空間分割多元接続)は周波数利用効率向上を目的とした多元接続方式で,複数のアンテナを用いて空間的に分離された伝搬路を形成する事により,同時に同一の周波数を用いて多元接続を行う。近年ではMIMO(Multiple-Input Multiple-Output:多入力多出力)無線通信技術の発展により,MIMOによる空間多重無線通信技術を複数ユーザ接続を含む形へと拡張した技術も公開されている。図1はSDMAを用いた無線通信システムの概略図を示している。図1はアクセスポイント(AP)101とu個のユーザ端末(UT)102-1?102-uがSDMAを用いて通信を行うシステムを示している。このようなSDMAを実用化した例として特許文献1を示す。
(中略)
【0035】
以下,本発明の第3の実施例について説明する。第1、第2の実施例では、パケットの分割またはアグリゲーションにより1フレームで送信するデータ量を変えて送信フレーム長をそろえるようにしたが、第3の実施例では、データの伝送レートを変更することにより送信に必要な時間長を調整して送信フレーム長をそろえる。伝送レートの変更により並列送信されるフレームの送信時間長を調節した場合,フレーム長調節の分解能は通信方式の可変伝送レートの調節量に依存し,また,適切な伝送レートは伝送路品質により決まるため,送信時間長の調節の自由度は実施例1,実施例2の手法に比べて低くなる事が考えられるが,パケットの分離,合成といったデータ通信以外に必要な手続きが不要なため,有効な手段と成り得る。
(中略)
【0036】
図10は,図2と同じ複数パケットの送信に本発明の第3の実施例を用いた場合のフレーム送受信タイムチャートを示している。図10では説明のためUTが2つの場合の例を示しているが,本発明はUTが3つ以上の場合にも適用可能である。図10では事前に決定された伝送レートを用いてUT1宛てのフレームData1とUT2宛てのフレームを送信した場合の送信時間長の差を確認し,それぞれのフレームの伝送レートを変更する事によりSDMA伝送で生じる空間パスの空き時間を抑制している。ここでの事前に決定された伝送レートとは,例えばアプリケーションから指示されている伝送レートや以前の送信履歴から継続して使用している伝送レート,もしくは推定された伝送路情報に基づいてトータルスループットを最適化する形で求められた伝送レートである。図10におけるR1はUT1宛てのフレームの伝送レートを,R2はUT2宛てのフレームの伝送レートを示している。図10における前記事前に決定された伝送レートはR2がR1の3倍の値になっている。図10では,本手法を用いて伝送レートを変更した結果,R2とR1の伝送レートが等しくなり,UT2宛てのフレームData2では伝送レートが低下しているため,UT2向けのデータストリーム上の通信容量は低下しているが,空間パスの空き送信時間が抑制されるため,UT1,UT2全体で考えた際のトータルスループットを改善し得る。
(中略)
【0038】
伝送レートの変更は誤り訂正のための符号化率を変更して元データの冗長度を変更したり,割り当て電力を変更して変調多値数を変更したりする事により行う事ができる。」

(ク)
「【図10】



また、本件の優先日前に公開された,国際公開第2012/015611号(以下,「周知例3」という。)には以下の事項が記載されている。

(ケ)「Multiple-user multiple-input multiple-output (MU-MIMO) systems can transmit and receive signals to/from multiple users at a single antenna array at the same time. In a MU-MIMO system,multiple signals are sent in parallel and are kept separate from one another not by modulation or coding techniques, but by transmitting (or receiving) each signal in a different (e.g., orthogonal)direction.」(1ページ3?7行)
(当審仮訳:マルチユーザ多入力多出力(MU-MIMO)システムは、同時に1つのアンテナアレイで複数のユーザへ/から信号を送受信することができる。MU-MIMOシステムでは、複数の信号が並列に送信され、変調又は符号化技術ではなく、異なる(例えば、直交する)方向に各信号を送信(又は受信)することにより互いに分離される。)

(コ)「In conventional systems, the lengths of a given mobile station's data stream can vary due to dynamic traffic conditions and the amount of data in the buffer. The transmission length of a given frame varies accordingly and is determined by the longest data stream. To align the terminations of the different data streams, padding bits are added to shorter data streams until all data streams have the same length.」(2ページ3?7行)
(当審仮訳:従来のシステムでは、所与の移動局のデータストリームの長さは、動的なトラフィック条件とバッファ内のデータの量に起因して変化する。与えられたフレームの送信長さはそれに応じて変化し、最も長いデータストリームによって決定される。異なるデータストリームの終端を揃えるために、すべてのデータ・ストリームが同じ長さを有するまで、パディングビットが短いデータストリームに追加される。)

(サ)「For example, modulation and coding scheme (MCS) adjustments can be made to some or all of the data streams to get the data streams to the same length.」(2ページ13?15行)
(当審仮訳:例えば、同じ長さのデータストリームを得るために、データストリームの一部又はすべてに変調及び符号化スキーム(MCS)調整をすることができる。)

(シ)「In an example, each mobile station 102 can include one or more antennas 114 for transmitting and receiving wireless signals to/from an access point 118 in the access network 104.」(2ページ25?27行)
(当審仮訳:一例では、各移動局102は、アクセスネットワーク104内のアクセスポイント118との間で無線信号を送受信するための1つ又は複数のアンテナ114を含むことができる。)

(ス)「Additionally, the frame 500 of FIG. 5 illustrates time in the horizontal access and precoding in the vertical access such that different A- MPDUs 516a-c are transmitted on the same set of frequency subcarriers, but use different precoding to be transmitted on different beams to different mobile stations. For comparison purposes, in the example frame 500, the A-MPDUs 516a-c are formed from the same payload data as the A-MPDUs 416a-c in frame 400. The A- MPDUs 516a-c, however, have terminations that are aligned with much less MAC layer padding bits 520 than the MAC layer padding bits 420 in frame 400. This is because the A-MPDUs 516a-c are power loaded and have their MCSs adjusted in order to align the terminations. Additionally, the overall length of frame 500 is less than frame 400 due to the power loading and MCS adjustment used. In an example, physical layer padding bits 522 can be used in frame 500 for padding less than one byte in length.」(5ページ29行?6ページ8行)
(当審仮訳:さらに、図5のフレーム500は、異なるA-MPDUs516a-cが同じ周波数サブキャリアのセットで送信されるが、異なる移動局に対して異なるビーム上で伝送されるために異なるプリコーディングを使用するように、水平アクセスの時間及び垂直アクセスのプリコーディングを示す。比較のために、例示のフレーム500では、A-MPDUs516a-cは、フレーム400のA-MPDUs416a-cと同じペイロードデータから形成される。しかし、A-MPDUs516a-cはフレーム400のMACレイヤパディングビットよりもはるかに少ないMACレイヤパディングビット520で調整される。これは、A-MPDUs516a-cは電力がロードされ、終端を揃えるためにそれらのMCSが調整されるためである。さらに、フレーム500の全長は、使用されるパワーローディングとMCS調整のためにフレーム400よりも短くなる。一例では、長さが1バイト未満のパディングのために、フレーム500において物理レイヤパディングビット522を使用することができる。)

(セ)「FIG.5




上記(オ)、(キ)、(ケ)?(ス)の記載、上記(カ)、(ク)、(セ)に示された各図、並びに当業者の技術常識を考慮すると,「アクセスポイントと複数の端末間において複数のデータを空間多重して送信する際、該データのための変調及びコーディング方式(MCS)を調整して、送信するデータの送信時間を変更する。」ことは周知技術であるといえる。(以下、「周知技術1」という。)

また、上記周知例2には,図面とともに以下の事項も記載されている。

(ソ)「【0029】
以下,本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、SDMAを用いて同時送信するパケットのうち送信時間長のもっとも短いフレームDataに合わせて他のフレームDataの送信時間長を短縮するための送信フレーム制御を行ったが、第2の実施例では、送信時間長の長いフレームDataにあわせて他のフレームDataの送信時間長を長くする送信フレーム制御を行った。アグリゲーションを行い並列送信されるフレームの送信時間長を調節した場合,1フレームで送信されるデータ量が増加する事になり,送信に掛かるオーバーヘッドがデータ量に対して相対的に減少する事になる。よって,通信容量の面で,パケットを分割する手法に比べて効果が大きく成り得る。但し,本手法ではアグリゲーションするパケットが送信Txバッファに蓄積されている事が前提になる点や,送信パケットサイズの規格上の上限,パケットロス時の通信容量の劣化の程度に注意する必要がある。
【0030】
図8は図2と同じ複数のパケットの送信に,本発明の第2の実施例を用いた場合のフレーム送受信タイムチャートを示している。図8中のフレームData4はフレームData2のデータパケットと,同じ端末UT2宛てのフレームData3のデータパケットを一つのパケットにアグリゲーションしてフレーム化したものである。フレームData4は本来2つのパケットを一つのフレームへまとめたものであるが,ヘッダにパケットアグリゲーション情報を付加し2つのパケットの境目となる場所を通知するか,もしくは境目に所定の付加ビット列を加える事で分離が可能である。図12に本実施例で用いられるフレーム構成の一例を示す。この受信後のパケット再構築のための付加情報は事前のAPとUT間で行われる手続きにより簡略化されても良い。図8におけるフレームData3のようなUT2宛てのアグリゲーション用パケットは,例えば,図3のAP内のTxバッファ204内にあるパケットの中から選択する事ができる。またアグリゲーションに用いるパケットは他のUT2宛てのパケットを任意の大きさに分割したものから選んでも良い。」

(タ)「【図8】



また、本件の優先日前に公開された,特表2012-511860号公報(以下,「周知例4」という。)には以下の事項が記載されている。

(チ)「【0025】
図2は、空間分割多重接続(Spatial Division Multiple Access;SDMA)基盤VHT無線LANシステムの構成の一例を示すブロック図であり、インフラストラクチャVHT BSSの場合である。SDMA基盤VHT無線LANシステムとは、多重接続技法として空間分割多重接続技法を使用するVHT無線LANシステムを示す。図2を参照すると、SDMAをサポートするVHT APは、複数、例えば、3個の物理層インターフェース(PHY interfaces)を具備し、この3個の物理層インターフェースは3個の同時空間ストリーム(concurrent spatial streams)を提供することができる。反面、Non-AP VHT STA(以下、‘VHT STA’という)は、各々、一つの物理層インターフェースを有する。また、各々の物理層インターフェースは4×4までMIMO技術をサポートすることができる。
(中略)
【0048】
図9は、本発明の一実施例に係るSDMA手順のうちダウンリンク局面における手順の一例を示すダイアグラムである。図9を参照すると、ダウンリンク局面は、チャネル推定期間(Channel Estimation Period)とデータ送信期間(Data Transmission Period)を含む。ここで、チャネル推定期間は任意な期間である。
(中略)
【0051】
ダウンリンク地図フレームの送信によりチャネル推定期間が終了されると、データ送信期間が始まる。データ送信期間にVHT APは、SDMA/FDM技法を用いて複数のVHT STAに同時にデータ(SDMA/FDM Data)を送信し始める。SDMA/FDM技法によると、VHT APは、まず、全体周波数帯域(例えば、80MHzチャネル)を二つまたはその以上のサブチャネルに分割する(FDM)。また、VHT APは、各サブチャネルから独立的にSDMA技法を用いて複数のVHT STAに同時にデータを送信する。
(中略)
【0053】
VHT APは同時にデータを受信するVHT STAに対してデータの送信にかかる時間を同一にすることができる。SDMA技法によって送信される全てのデータフレームの送信時間を同一にするために、VHT APは、IEEE802.11無線LAN規格によるMSDU(MAC Service Data Unit)断片化技法(Fragmentation technique)やアグリゲイション技法(Aggregation technique)を用いることができる。または、VHT APは、データの送信時間が最も長いVHT STAに送信するデータを基準にして、他のVHT STAに送信するデータフレームは‘0’を挿入して送信時間が同じようにすることもできる(‘0’パディング技法(Zero Padding Technique))。また、データ送信が完了した後には、前記データを受信したVHT STAは同一チャネルを介してACKフレームをVHT APに送信する(ACKs)。
(中略)
【0057】
図11は、本発明の一実施例に係るSDMA手順のうちアップリンク局面における手順の一例を示すダイアグラムである。図11を参照すると、アップリンク局面は競争期間(Contention Period)とデータ送信期間(Data Transmission Period)を含む。
(中略)
【0063】
アップリンク地図フレームの送信により競争期間が終了されると、アップリンクデータ送信期間が始まる。アップリンク地図フレームを受信すると同時にアップリンク送信が許容されたVHT STAは、MSDUアグリゲイション技法や断片化技法または‘0’パディング技法などを用いてデータが割り当てられた周波数のチャネルを介して同時にVHT APに送信する。即ち、VHT STAは、SDMA/FDM技法を用いてデータフレームを同時にVHT APに送信する。ここで、VHT STAがMSDUアグリゲイション技法などを用いる理由は、被送信フレームがサービス品質制限要件(QoS Requirements)を満たすようにしたり、或いはアップリンク地図フレームに表示されているアップリンク送信の持続時間内に全部送信されることができるようにするためである。」

(ツ)「【図9】



(テ)「【図11】



上記(ソ)、(チ)の記載、上記(タ)、(ツ)、(テ)に示された各図、並びに当業者の技術常識を考慮すると,「アクセスポイントと複数の端末間において複数のデータを空間多重して送信する際、該データのためのアグリゲーションを調整して、該データの送信時間を変更する。」ことは周知技術であるといえる。(以下、「周知技術2」という。)

(3) 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、

ア 引用発明の「空間軸上の無線リソースを複数のユーザーで共有する空間分割多元接続」は、ワイヤレス通信のための技術であることから、引用発明の「空間軸上の無線リソースを複数のユーザーで共有する空間分割多元接続を適用する通信方法」は、本願補正発明と同様に「ワイヤレス通信のための方法」といえる。

イ 引用発明の「端末局として動作する各通信局STA1?STA3」は、本願補正発明の「第1のユーザ端末を含む複数のユーザ端末」に相当する。
また、引用発明における「共通のフレーム長」は、各端末局がアップリンクで送信するデータ・フレームの最終的なフレーム長を同じにするための、「目標」とするフレーム長であることは明らかであり、さらに、引用発明において、「フレーム長」は「時間的な長さの意味を含む」ことからすれば、引用発明の「共通のフレーム長」は、本願補正発明の「目標送信持続時間」に相当する。
そして、引用発明における「フレーム送信時刻の情報」は、「各端末局」が「アップリンクでフレームを送信する時刻を互いに認識する」ように、「アクセスポイント」から示されるものであることからすれば、引用発明の「フレーム送信時刻の情報」は、本願補正発明の「アップリンク送信機会」に含まれるといえる。
さらに、引用発明において、「各端末局」が受信する「データ・フレーム」を、「第1のワイヤレスメッセージ」と称することは任意である。
したがって、引用発明の「アクセスポイントとして動作する通信局STA0は、端末局として動作する各通信局STA1?STA3の各々に宛てたデータ・フレームをそれぞれ送信し、各データ・フレームのMACフレーム内で各端末局に対して、RDG、各端末局がアップリンクで送信するデータ・フレームの最終的なフレーム長を同じ長さにするための共通のフレーム長、及び、各端末局がアップリンクでフレームを送信する時刻を互いに認識するためのフレーム送信時刻の情報、がそれぞれ示され、各端末局は、それぞれに宛てられたデータ・フレームを受信すること、及び、前記フレーム長が時間的な長さの意味を含むこと」は、本願補正発明の「第1のユーザ端末を含む複数のユーザ端末の各々に対するアップリンク送信機会と目標送信持続時間とを示す第1のワイヤレスメッセージを、アクセスポイントから受信すること」に相当する。

ウ 引用発明において、「端末局」を「第1のユーザ端末」と、「端末局」から送信される「データ・フレーム」を「第2のワイヤレスメッセージ」と、それぞれ称することは任意である。
ここで、引用発明において、端末局は、IEEE802.11acなどの新規規格に則って通信動作を行なうものであることから、フレーム長を調整する対象の「送信されるデータ・フレーム」が、新規規格に則して計画的に生成されたデータ・フレームであることは自明であって、引用発明の「フレーム長」が「時間的な長さの意味を含む」ことからすれば、引用発明の「送信されるデータ・フレームのフレーム長」は、本願補正発明の「計画された送信持続時間」に含まれるといえる。
よって、引用発明の「端末局は、IEEE802.11acなどの新規規格に則って通信動作を行ない、アクセスポイントから示された共通のフレーム長に揃えるように、送信されるデータ・フレームのフレーム長を調整すること」は、本願補正発明の「前記目標送信持続時間に合うように、前記第1のユーザ端末からの第2のワイヤレスメッセージの計画された送信持続時間を変更すること」に相当する。

エ 引用発明では、共通のフレーム長に揃えるように、送信されるデータ・フレームのフレーム長を調整するのであるから、調整されたデータ・フレームは、共通のフレーム長に相当する時間にわたって送信されることは当然のことである。
よって、引用発明の「端末局は、調整されたデータ・フレームを送信すること」は、本願補正発明の「前記目標送信持続時間にわたって、前記第1のユーザ端末から前記第2のワイヤレスメッセージを送信すること」に相当する。

オ 引用発明の「所定長に満たないデータ・フレームのデータ部にパッディングを行なうこと」とは、端末局から送信されるデータ・フレームを調整することに他ならない。
よって、本願補正発明の「前記計画された送信持続時間を変更するために、前記第2のワイヤレスメッセージのための変調およびコーディング方式(MCS)およびデータ集約のレベルが調整される」と、引用発明の「端末局から送信されるデータ・フレームのフレーム長を調整する処理として、所定長に満たないデータ・フレームのデータ部にパッディングを行なうことと」とは、「前記計画された送信持続時間を変更するために、前記第2のワイヤレスメッセージが調整される」点で共通する。

以上を総合すると,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「 ワイヤレス通信のための方法であって、
第1のユーザ端末を含む複数のユーザ端末の各々に対するアップリンク送信機会と目標送信持続時間とを示す第1のワイヤレスメッセージを、アクセスポイントから受信することと、
前記目標送信持続時間に合うように、前記第1のユーザ端末からの第2のワイヤレスメッセージの計画された送信持続時間を変更することと、
前記目標送信持続時間にわたって、前記第1のユーザ端末から前記第2のワイヤレスメッセージを送信することと、
を備え、
前記計画された送信持続時間を変更するために、前記第2のワイヤレスメッセージが調整される、方法。」
(相違点)
「前記第2のワイヤレスメッセージが調整される」ことに関し、本願補正発明は、「第2のワイヤレスメッセージのための変調およびコーディング方式(MCS)およびデータ集約のレベルが調整される」のに対し、引用発明は、「所定長に満たないデータ・フレームのデータ部にパッディングを行なう」点。

以下,相違点について検討する。
上記(2)イにおいて述べたように、フレーム長の調整手段として、パッディングの他に、「アクセスポイントと複数の端末間において複数のデータを空間多重して送信する際、該データのための変調およびコーディング方式(MCS)を調整して、送信するデータの送信時間を変更する。」こと、及び、「アクセスポイントと複数の端末間において複数のデータを空間多重して送信する際、該データのためのアグリゲーションを調整して、該データの送信時間を変更する。」ことは周知技術であるところ、周知の手段から、いずれ又はいずれの組合せを採用するかは当業者が適宜選択し得ることにすぎない。
したがって、「送信されるデータ・フレームのフレーム長を調整する」にあたり、「データのための変調およびコーディング方式(MCS)」、及び、「データのためのアグリゲーション」の両者を調整することは、格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得ることである。
さらに、本願補正発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

3 まとめ
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから,特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年5月27日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2」の項の「1 補正の概要」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶理由の概要は,「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,請求項1に対して引用例1(特開2010-263493号公報)及び引用例2(特開2007-329694号公報)が引用されている。

3 引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は,上記「第2 令和元年5月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は本願補正発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した本願補正発明が,「第2 令和元年5月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(3)対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

 
別掲
 
審理終結日 2020-02-18 
結審通知日 2020-02-25 
審決日 2020-03-12 
出願番号 特願2016-537819(P2016-537819)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 井上 弘亘
畑中 博幸
発明の名称 多ユーザアップリンクのための方法および装置  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井関 守三  
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