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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1364761 |
審判番号 | 不服2019-8825 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-02 |
確定日 | 2020-07-29 |
事件の表示 | 特願2017-527327号「ペルブスカイト材料の二層及び三層の界面層」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月26日国際公開、WO2016/081682号、平成30年 2月 8日国内公表、特表2018-503971号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)11月19日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年(平成26年)11月21日 米国、2015年(平成27年)5月13日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 6月14日 :翻訳文、手続補正書の提出 平成29年10月24日付け:拒絶理由通知書 平成30年 5月 2日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 5月22日付け:拒絶理由通知書 平成30年 8月31日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年10月31日付け:拒絶理由通知書 平成31年 1月28日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 2月28日付け:拒絶査定 令和元年 7月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和元年7月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年7月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「光起電力デバイスであって、 第1の電極と、 第2の電極と、 前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも部分的に配置された活性層であって、前記活性層は、 ペロブスカイト材料を含む光活性層と、 4以上の隣接する界面層であって、第2の界面層に隣接し、且つ、接触して配置された第1の界面層と、前記第2の界面層に隣接し、且つ、接触して配置された第3の界面層と、前記第3の界面層に隣接して配置された第4の界面層とを含む界面層と、 を含み、前記第1の界面層及び前記第3の界面層は、前記第2の界面層とは異なる材料を含む、前記活性層と、 を含み、但し、当該光起電力デバイスはTiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、又はSrTiO_(3)を含む層を除く、光起電力デバイス。」(以下「本願補正発明」という。) (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成31年1月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「光起電力デバイスであって、 第1の電極と、 第2の電極と、 前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも部分的に配置された活性層であって、前記活性層は、 ペロブスカイト材料を含む光活性層と、 4以上の隣接する界面層であって、第2の界面層に隣接し、且つ、接触して配置された第1の界面層と、前記第2の界面層に隣接し、且つ、接触して配置された第3の界面層と、前記第3の界面層に隣接して配置された第4の界面層とを含む界面層と、 を含み、前記第1の界面層及び前記第3の界面層は、前記第2の界面層とは異なる材料を含む、前記活性層と、 を含み、当該光起電力デバイスはTiO_(2)を包含しない、光起電力デバイス。」 2 補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1において「当該光起電力デバイスはTiO_(2)を包含しない」とあったものを、「但し、当該光起電力デバイスはTiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、又はSrTiO_(3)を含む層を除く」と補正して、除外する組成をさらに追加する限定を付加するものであり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。 (1)本願補正発明の認定 本願補正発明は、上記「1」「(1)」に記載したとおりである。 (2)引用文献及び引用発明 ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の最先の優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-175473号公報(平成26年9月22日出願公開。以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、無機ホール輸送材を使用したペロブスカイト系光電変換装置に関する。」 (イ)「【0011】 1.光電変換装置 本発明の光電変換装置は、(RNH_(3))_(n)PbI_((2+n))からなる光吸収層、及び無機ホール輸送層を備える。これにより、簡便に高い光電変換効率を有する光電変換装置を実現することができる。 【0012】 <光吸収層> 光吸収層は、一般式(1):(RNH_(3))_(n)PbI_((2+n))で表されるヨウ化鉛系層状ペロブスカイト化合物からなる層であれば特に限定されないが、単層でも複層でもよい。複層の場合は、各層全てがヨウ化鉛系層状ペロブスカイト化合物を含む層であってもよいし、少なくとも1層がヨウ化鉛系層状ペロブスカイト化合物を含む層であってもよい。・・・ 【0028】 <無機ホール輸送層> 無機ホール輸送層は、無機ホール輸送材からなる層であれば特に限定されないが、単層でも複層でもよい。複層の場合は、各層全てが無機ホール輸送材を含む層であってもよいし、少なくとも1層が無機ホール輸送材を含む層であってもよい。 【0029】 無機ホール輸送材としては、例えば、CuSCN、ヨウ化銅(CuI)等の沃化物、MoO_(3)、NiO、セレン、層状コバルト酸化物等のコバルト錯体、等が挙げられる。・・・ 【0035】 <中間層> 中間層は、誘電体材料、可視域や近赤外域に吸収特性を有する材料、及び/又は後述の電子輸送層への電子の逆流を抑制する材料からなる層であれば特に限定されない。中間層としては、例えば、セレン、テルル、硫化アンチモン、硫化鉛、Pb-S_(n)-Se_((1-n))、CdS、Pb-Cd_(n)-Se_((1-n))、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び酸化バリウムチタンよりなる群から選択される少なくとも1種(以下、『中間層無機材料』と示すこともある)の金属又はその化合物若しくは合金からなる層が挙げられる。中間層は、単層でも複層でもよい。複層の場合は、各層全てが中間層無機材料を含む層であってもよいし、少なくとも1層が中間層無機材料を含む層であってもよい。中間層として、好ましくは、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化バリウムチタン、セレン、及びテルルよりなる群から選択される少なくとも1種の金属又はその化合物からなる層が挙げられ、より好ましくはセレンを含むメッキ層が挙げられる。 【0036】 セレンを含むメッキ層は、セレンを含む層であれば特に制限されないが、単層でも複層でもよい。複層の場合は、各層全てがセレンを含む層であってもよいし、少なくとも1層がセレンを含む層であってもよい。 【0037】 セレンを含むメッキ層としては、セレンからなるメッキ層であってもよいが、テルル層とセレン層との複層、又はテルルとセレンとの混合層からなることが好ましい。テルルは、セレンと同じ16族の元素であり、セレンとなじみやすく、セレンとテルルとを組合せることで、飛躍的に変換効率を向上させることができる。・・・ 【0072】 <光吸収層と中間層との配置関係> 光吸収層と中間層との配置関係は、中間層が電子輸送層側、透光性導電層側、又は透光性基盤側に位置し、光吸収層が無機ホール輸送層側、又は第二電極側に位置する関係である。具体的には、例えば、中間層が電子輸送層、透光性導電層、又は透光性基盤上、好ましくは電子輸送層上に形成され、光吸収層が中間層上に形成される。 【0073】 <電子輸送層> 本発明では、上記光吸収層は、電子輸送層の上に形成されることが好ましい。また、中間層を形成する場合には、中間層は、電子輸送層の上に形成されることが好ましい。 【0074】 電子輸送層は、平滑構造であってもよいし、多孔質構造であってもよい。多孔質構造とは、特に制限されるわけではないが、粒状体、線状体(線状体:針状、チューブ状、柱状等)等が集合して、全体として多孔質な性質を有していることが好ましい。また、細孔サイズはナノスケールであることが好ましい。電子輸送層を多孔質構造とすれば、ナノスケールであるため、光吸収層の活性表面積を著しく増加させ、光電変換効率を向上させるとともに、電子収集に優れる電子輸送層とすることができる。なお、多孔質構造を採用する場合には、電子輸送層の全厚みにわたって多孔質構造とする必要はなく、例えば、後述の透光性導電層に近い側を平滑構造、光吸収層又は中間層に近い側を多孔質構造とすることも可能である。 【0075】 電子輸送層は、例えば、多孔質電子輸送材料からなる層とすることが好ましい。多孔質電子輸送材料としては、例えば、TiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、SrTiO_(3)等の一種又は二種以上を採用できる。なお、半導体を使用する場合には、ドナーがドープされていてもよい。これにより、電子輸送層が、光吸収層に導入するための窓層となり、且つ、光吸収層から得られた電力を効率よく取り出すことができる。多孔質電子輸送材料としてTiO_(2)を採用する場合には、結晶形態はアナターゼ型が好ましい。・・・ 【0079】 <透光性導電層> 本発明では、上記光吸収層は、透光性導電層の上に形成されることが好ましい。また、中間層又は電子輸送層を形成する場合には、中間層又は電子輸送層は、透光性導電層の上に形成されることが好ましい。 【0080】 透光性導電層は、例えば、透明導電性酸化物からなる層とすることが好ましい。透明導電性酸化物としては、例えば、フッ素ドープ錫酸化物、インジウム錫酸化物、ガリウムドープ亜鉛酸化物、アルミドープ亜鉛酸化物、ニオブドープチタン酸化物等の一種又は二種以上を採用できる。これにより、透光性導電層が、光吸収層に導入するための窓層となり、且つ、光吸収層から得られた電力を効率よく取り出すことができる。 【0081】 透光性導電層の厚みは、0.01?10.0μm程度が好ましく、0.3?1.0μm程度がより好ましい。透光性導電層の厚みを上記範囲内とすることにより、シート抵抗を低減し、結果として光電変換装置のシリーズ抵抗を低減できるため、フィルファクター特性を維持できる。 【0082】 <透光性基板> 本発明では、前記透光性導電層は、透光性基板の上に形成されることが好ましい。 【0083】 透光性基板としては、特に制限されないが、例えば、ガラス、プラスチック等から構成することが好ましい。これにより、光を光吸収層に導入するための窓層になり得る。・・・ 【0086】 <第二電極層> 本発明では、無機ホール輸送層の上に、第二電極層を備えることが好ましい。 【0087】 第二電極層を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば、カーボン、金、タングステン、モリブデン、チタン等が好ましい。」 (ウ)「【0098】 実施例3 セル構造として、< glass / F-doped SnO_(2) / TiO_(2) /porous TiO_(2) / Se / (CH_(3)NH_(3))PbI_(3)/ CuSCN / Au >構造の太陽電池を作製した。具体的には実施例1と同様の手法により、< glass /F-doped SnO_(2) / TiO_(2) / porous TiO_(2)>構造を作製し、その上に、以下に示すようにSe電着を行った。 【0099】 1)亜セレン酸128mg(20mM)と塩化ナトリウム1314mg(0.45M)とを蒸留水50mLに溶解させ、更に20 wt% HCL水溶液を100μL(11.5mM)加えたセレン溶液を用意した。 【0100】 2)電極をセレン溶液に浸漬した。 【0101】 3)パルス電流 (-0.7V_0V (vs. Ag/AgCl), 1s_1s, 20分間)を印加してSe電着を行った。 【0102】 こうして作成した、< glass / F-doped SnO_(2) / TiO_(2) / porous TiO_(2)/ Se >構造に対して、実施例1と同様に、(CH_(3)NH_(3))PbI_(3)/ CuSCN / Au を順次作成し、< glass /F-doped SnO_(2) / TiO_(2) / porous TiO_(2) / Se / (CH_(3)NH_(3))PbI_(3)/ CuSCN / Au >構造を得た。」 イ 上記アによれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(なお、引用文献中の半角記載は全角記載とした。)。 「セル構造として、 透光性基板 (glass) 透光性導電層 (F-dopedSnO_(2)) 電子輸送層 (TiO_(2)) 電子輸送層 (porousTiO_(2)) 中間層 光吸収層 ((CH_(3)NH_(3))PbI_(3)) 無機ホール輸送層(CuSCN) 第二電極層 (Au) 構造の太陽電池であって、 電子輸送層は、例えば、多孔質電子輸送材料からなる層とすることが好ましく、多孔質電子輸送材料としては、例えば、TiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、SrTiO_(3)等の一種又は二種以上を採用でき、 中間層は、テルル(Te)層とセレン(Se)層との複層からなるものである、 ペロブスカイト系光電変換装置。」 (3)対比・判断 ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「透光性導電層」は、本願補正発明の「第1の電極」に相当する。 (イ)引用発明の「第二電極層」は、本願補正発明の「第2の電極」に相当する。 (ウ)引用発明の「電子輸送層」、「多孔質電子輸送層」、「中間層」、「光吸収層」及び「無機ホール輸送層」は、本願補正発明の「活性層」に相当する。 (エ)引用発明の「光吸収層((CH_(3)NH_(3))PbI_(3))」は、本願補正発明の「ペロブスカイト材料を含む光活性層」に相当する。 (オ)引用発明の「電子輸送層」は、本願補正発明の「第2の界面層に隣接し、且つ、接触して配置された第1の界面層」に相当する。 (カ)引用発明の「多孔質電子輸送層」は、本願補正発明の「第2の界面層」に相当する。 (キ)引用発明の「中間層」のうちの「テルル(Te)層」は、本願補正発明の「前記第2の界面層に隣接し、且つ、接触して配置された第3の界面層」に相当する。 (ク)引用発明の「中間層」のうちの「セレン(Se)層」は、本願補正発明の「前記第3の界面層に隣接して配置された第4の界面層」に相当する。 (ケ)引用発明の「電子輸送層」、「多孔質電子輸送層」、「中間層」のうちの「テルル(Te)層」及び「中間層」のうちの「セレン(Se)層)は、本願補正発明の「(4以上の隣接する、前記第3の界面層は、前記第2の界面層とは異なる材料を含む)界面層」に相当する。 (コ)引用発明の「ペロブスカイト系光電変換装置」は、本願補正発明の「光起電力デバイス」に相当する。 (サ)上記(ア)ないし(コ)によれば、本願補正発明と引用発明は、 「光起電力デバイスであって、 第1の電極と、 第2の電極と、 前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された活性層であって、前記活性層は、 ペロブスカイト材料を含む光活性層と、 4以上の隣接する界面層であって、第2の界面層に隣接し、且つ、接触して配置された第1の界面層と、前記第2の界面層に隣接し、且つ、接触して配置された第3の界面層と、前記第3の界面層に隣接して配置された第4の界面層とを含む界面層と、 を含み、前記第3の界面層は、前記第2の界面層とは異なる材料を含む、前記活性層と、 を含む、 光起電力デバイス。」 の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 <相違点1> 本願補正発明では、第1の界面層は、第2の界面層とは異なる材料を含むと特定され、また、光起電力デバイスはTiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、又はSrTiO_(3)を含む層を除くと特定されるのに対して、引用発明は、電子輸送層(TiO_(2))と多孔質電子輸送層(porousTiO_(2))は同じ材料TiO_(2)を含む層である点。 イ 判断 (ア)相違点1について 引用発明の電子輸送層及び多孔質電子輸送層は、「例えば、TiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、SrTiO_(3)等の一種又は二種以上を採用でき」るものであって、採用できる材料をいくつか例示しているにすぎず、TiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、SrTiO_(3)以外のペロブスカイト系光電変換装置に用いられる周知の電子輸送層材料を採用することを妨げるものではない。 そして、光電変換装置に用いられる電子輸送層材料としては、後記周知文献に記載のとおり、TiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、SrTiO_(3)に限らず様々な材料が周知の事項である。 また、特定事項アの「界面層」を含む光起電力デバイスにおいて、「但し、当該光起電力デバイスはTiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、又はSrTiO_(3)を含む層を除く」と特定する本願補正発明は、本願明細書等に当該組成を除くことの技術的意義・効果について記載されておらず、「但し、当該光起電力デバイスはTiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、又はSrTiO_(3)を含む層を除く」ことに基づく技術的意義は認められない。 さらに、電子輸送層と多孔質電子輸送層とを同じ電子輸送層材料とすべき格別の事由はないから、TiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、SrTiO_(3)以外の適宜の周知の二種以上の電子輸送層材料を採用して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。 (イ)よって、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 ウ 周知文献 (ア)特開2014-146534号公報 「【技術分野】 【0001】 本発明は色素増感型太陽電池に関する。」 「【0037】 <電子輸送層> 本発明の色素増感型太陽電池は、前記第一電極上に、電子輸送層3として、半導体からなる電子輸送層3を有する。 電子輸送層3は、第一電極上に緻密な電子輸送層4を有し、さらにその上に多孔質状の電子輸送層5を有する積層構造であることが好ましい。・・・ 【0042】 前記電子輸送層を構成する半導体としては特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、あるいは金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、またはペロブスカイト構造を有する化合物等を挙げることができる。 【0043】 前記金属のカルコゲニドとしてはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、あるいはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。 他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が好ましい。」 (イ)国際公開第2013/099614号 「[0001] 本発明は、光を電気に、あるいは電気を光に変換する光電気素子及びその製造方法に関するものである。」 「[0063] 電子輸送層1としては、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Crなどの金属元素の酸化物、SrTiO_(3) 、CaTiO_(3)などのペロブスカイト、CdS、ZnS、In_(2)S_(3)、PbS、Mo_(2)S、WS_(2)、Sb_(2)S_(3)、Bi_(2)S_(3)、ZnCdS_(2)、Cu_(2)Sなどの硫化物、CdSe、In_(2)Se_(3)、WSe_(2)、HgS、PbSe、CdTeなどの金属カルコゲナイド、その他GaAs、Si、Se、Cd_(2)P_(3)、Zn_(2)P_(3)、InP、AgBr、PbI_(2)、HgI_(2)、BiI_(3)などを用いることができる。また、これらの半導体材料から選ばれる少なくとも一種以上を含む複合体、例えば、CdS/TiO_(2)、CdS/AgI、Ag_(2)S/AgI、CdS/ZnO、CdS/HgS、CdS/PbS、ZnO/ZnS、ZnO/ZnSe、CdS/HgS、CdS_(x)/CdSe_(1-x)、CdS_(x)/Te_(1-x)、CdSe_(x)/Te_(1-x)、ZnS/CdSe、ZnSe/CdSe、CdS/ZnS、TiO_(2)/Cd_(3)P_(2)、CdS/CdSeCd_(y)Zn_(1-y)S、CdS/HgS/CdSなどを用いることができる。また、ポリフェニレンビニレンやポリチオフェンやポリアセチレン、テトラセン、ペンタセン、フタロシアニンなどの有機半導体を用いることもできる。」 (4)審判請求人の主張について ア 審判請求人は審判請求書の【請求の理由】「4.理由1(進歩性)について」「(3)本願発明と引例との対比」において概略下記のとおり主張する。 「今回した補正により、本願発明1、2の光起電力デバイスは「TiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、SrTiO_(3)を含む層を除く」旨修正されています。 したがって、本願発明1、2は、引用文献1?4とは異なる構成となっており、引用文献1?4から容易に想到し得るものではなく、十分に進歩性を有するものと確信します。」 イ しかしながら、上記(2)及び(3)で述べたとおりであって、請求人の上記主張は採用できない。 3 むすび(補正の却下の決定のむすび) 上記2のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和元年7月2日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし23に係る発明は、平成31年1月28日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に記載された発明は、上記「1」「(2)」のとおりのものであると認められる(以下「本願発明」という。)。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、2、4、7、9-11、13-14、21-23に係る発明は、本願の最先の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない等、というものである。 引用文献1.特開2014-175473号公報 3 引用文献 原査定の拒絶理由で引用された、引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記「第2」[理由]「2」「(2)」「ア」のとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記「第2」[理由]「2」で検討した本願補正発明から、「但し、当該光起電力デバイスはTiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、又はSrTiO_(3)を含む層を除く」との限定を省き、「当該光起電力デバイスはTiO_(2)を包含しない」との構成を付加する、つまり、「当該光起電力デバイスはWO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、又はSrTiO_(3)を含む層を除く」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明と引用発明は、本願発明では、第1の界面層は、第2の界面層とは異なる材料を含むと特定され、また、光起電力デバイスはTiO_(2)を包含しないと特定されるのに対して、引用発明は、電子輸送層(TiO_(2))と多孔質電子輸送層(porousTiO_(2))は同じ材料TiO_(2)を含む層である点で相違する(以下「相違点2」という。)。 しかしながら、引用文献1には、「電子輸送層は、例えば、多孔質電子輸送材料からなる層とすることが好ましい。多孔質電子輸送材料としては、例えば、TiO_(2)、WO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、SrTiO_(3)等の一種又は二種以上を採用できる。」(「第2」[理由]「2」「(2)」「ア」「(イ)」【0075】)と記載されており、電子輸送層(TiO_(2))と多孔質電子輸送層(porousTiO_(2))としてWO_(3)、ZnO、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)、SrTiO_(3)から二種を採用して、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-02-27 |
結審通知日 | 2020-03-03 |
審決日 | 2020-03-16 |
出願番号 | 特願2017-527327(P2017-527327) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 久則、竹村 真一郎 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 近藤 幸浩 |
発明の名称 | ペルブスカイト材料の二層及び三層の界面層 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |