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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61J
管理番号 1364813
審判番号 不服2018-10669  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-03 
確定日 2020-08-05 
事件の表示 特願2015-554137「医薬品容器用の上蓋」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月31日国際公開、WO2014/114685、平成28年 2月12日国内公表、特表2016-504126〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、2014年(平成26年)1月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)1月28日 欧州)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
平成29年12月12日:拒絶理由通知
平成30年 3月19日:意見書、手続補正書の提出
平成30年 4月 2日:拒絶査定
平成30年 8月 3日:審判請求、同時に手続補正書の提出
令和 1年 9月27日:拒絶理由通知
令和 1年12月27日:意見書、誤訳訂正書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「予め製造された少なくとも一つの封止栓(3)を順応させて収容できる栓受け(2)と、軟質樹脂材料からなる前記栓(3)とを有しており、必要に応じ保護カバーを剥ぎ取った後で採取カニューレ、スパイク(4)及び/又は移送セットを挿入するためのものであり、医薬品の容器用の上蓋(1)であって、
前記栓(3)が前記栓受け(2)に圧入され及び/又は溶着で接続されていることにより前記栓(3)の上面全体が露出しており、前記容器の内容物と前記栓(3)との接触を妨げている少なくとも一つの膜(7)を有していて、
前記膜(7)が、前記栓受け(2)に一体化した部材であることを特徴とする上蓋(1)。」

第3 拒絶の理由
令和1年9月27日の当審が通知した拒絶理由のうちの理由1及び2は、次のとおりのものである。

理由1
本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2
本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献:実願昭59-107969号(実開昭61-24050号)のマイクロフィルム

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献
(1)引用文献には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付与した。

A「〔産業上の利用分野〕
本考案は、注射液または輸液を収納した薬用容器の栓に関し、殊に、注射針の挿入を自在とした薬栓に関する。
〔従来の技術およびその問題点〕
従来、この種の薬栓には、薬用容器の開口部に、内部に包まれる合成ゴム等の粘弾性体の内容液接触側表面を四弗化エチレン樹脂等の弗素系樹脂のフィルムで被覆し、一体的に加硫焼着成形した薬栓が知られており(実公昭45-17831号公報など)、かかる薬栓は、合成ゴムに対しフィルムで被覆することにより注射液または輪液の耐薬品性、酸化、老化現象の防止を図るとともに、薬栓に外部より注射針の刺挿後、注射針孔の弾性復元により再度密封をするようにしている。
しかしながら、かかる薬栓の場合、粘弾性体である合成ゴムとそれを被覆するフィルムとは加硫焼着成形しており、それだけ手間がかかりコストアップは免れない。一方、一般の安価な薬栓は第2図のごとき構造をしている。すなわち、1は粘弾性体、2は本体、3は蓋体、4は注射液を収納した薬用プラボトル本体を示す。かかる場合、合成ゴムからなる粘弾性体1とそれを被覆するポリエチレン等の本体2とは、融着できないことから別体としているため、脱落防止用の蓋体3を必要としている。そのため、液漏れを防ぐために本体2などはアンダーカット部を有するような複雑な形状(特に図示せず)にも形成しなければならず、その結果、成形性が悪くなり、依然として、生産コストが嵩む。」(明細書1頁11行-2頁20行)

B「〔問題点を解決するための手段〕
そこで本考案は、以上の従来技術の不都合を一挙に解消しようとして案出されたもので、従来技術における合成ゴムの代りに、特に、熱可塑性エラストマーARの材料を選定し、該エラストマーARをポリエチレン等フィルムで少なくとも内容液に接する側を被覆すべく一体化した薬栓を提供し、これを解消したものである。」(明細書3頁6行-13行)

C「第1図は本考案の実施例の断面図を示したもので、かかるエラストマーARの粘弾性体を用いた薬栓の断面図を示し、1はS-EB-SからなるエラストマーAR材からなる粘弾性体、2はポリエチレン、EVA、またはポリプロピレンからなる本体で、皿状の形状をしている。そして、粘弾性体1は本体2と一体に融着している。その融着方法は両者を二重成形、インサート成形などで1度に成形・融着してもよいし、更に、粘弾性体1を本体2に熱融着させる際の余熱でプラボトル本体4(第2図参照)の開口部とも一体融着してもよい。」(明細書5頁14行-6頁5行)

D「第1図



E「第2図



F 摘記事項C及びDから、粘弾性体1の上面全体が露出していることが看て取れる。

G 摘記事項C及びEから、栓は、粘弾性体1の内容液に接する側を被覆する本体2の底面を有しており、本体2の底面が本体2の一部であることが看て取れる。

(2)上記記載、及び、認定事項から、引用文献には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は、注射液または輸液を収容した薬用容器の栓に関するものである(摘記事項A)。
b 栓は、粘弾性体1を被覆する皿状の形状をした本体2と、熱可塑性エラストマーARからなる前記粘弾性体1とを有している(摘記事項B、C)。
c 栓は、注射針を挿入するためのものである(摘記事項A)。
d 粘弾性体1が本体2に融着されている(摘記事項C)。
e 粘弾性体1の上面全体が露出している(認定事項F)。
f 栓は、粘弾性体1の内容液に接する側を被覆する本体2の底面を有しており、本体2の底面が本体2の一部である(認定事項G)。

(3)上記(1)、(2)から、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「粘弾性体1を被覆する皿状の形状をした本体2と、熱可塑性エラストマーARからなる前記粘弾性体1とを有しており、注射針を挿入するためのものであり、注射液または輸液を収容した薬用容器の栓であって、
前記粘弾性体1が前記本体2に融着されていることにより前記粘弾性体1の上面全体が露出しており、前記粘弾性体1の内容液に接する側を被覆する本体2の底面を有していて、
前記本体2の底面が、本体2の一部である栓。」

第5 対比、判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「粘弾性体1」は、その文言の意味、機能又は構成等からみて、本願発明の「予め製造された少なくとも一つの封止栓」及び「封止栓」に相当する。以下同様に、「被覆する」という態様は「順応させて収容できる」という態様に、「皿状の形状をした本体2」及び「本体2」は「栓受け」に、「熱可塑性エラストマーAR」は「軟質樹脂材料」に、「注射針」は「採取カニューレ、スパイク及び/又は移送セット」に、「注射液または輸液を収容した薬用容器」は「医薬品の容器」及び「容器」に、「栓」は「上蓋」に、「注射液または輸液を収容した薬用容器の栓」は「医薬品の容器用の上蓋」に、「融着する」という態様は「圧入され及び/又は溶着で接続されている」という態様に、「粘弾性体1の内容液に接する側を被覆する」という態様は「容器の内容物と栓との接触を妨げている」という態様に、「本体2の底面」は「少なくとも一つの膜」に、「本体2の底面が、本体2の一部である」という態様は「膜(7)が、前記栓受け(2)に一体化した部材である」という態様に、それぞれ相当する。
そして、本願発明の「必要に応じ保護カバーを剥ぎ取った後で」とは、あくまでも保護カバーを有する場合に「必要に応じて」剥ぎ取る行為であって、必須の技術的事項ではないので、当該技術的事項は、対比することを要しない。
してみると、本願発明と引用発明とは、全ての点において一致し、本願発明と引用発明との間に相違点はない。
したがって、 本願発明は、引用発明である。

ここで、仮に、引用発明の「本体2の底面」は、本願発明の「膜」に相当するものでないとしても、引用発明において注射針が当該「本体2の底面」を介して挿入するものであり、注射針を挿入しやすくするために当該「本体2の底面」を膜状のものとすることは、当業者が適宜容易になし得る設計変更にすぎない。
また、仮に、保護カバーを剥ぎ取ることが必須の技術的事項であるとしても、衛生状態を保持するため保護カバーを設け、当該保護カバーを剥ぎ取った後に穿刺部材を挿入する蓋は周知技術(必要に応じて、令和1年9月27日付け当審拒絶理由通知に提示した欧州特許第1457429号明細書の要約、[0022]-[0024]、図11参照。)であり、引用発明においても衛生状態を保持するために当該周知技術を適用することは、当業者が適宜容易になし得ることである。
そして、本願発明を全体として検討しても、引用文献に記載された発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 請求人の主張について
請求人は、令和1年12月27日に提出した意見書において、上記引用文献には「栓受けが記載されていないのですから、請求項1に係る発明と相違しています。」と主張する。
しかしながら、引用発明の本体2は、皿状の形状をしており、その内部に予め製造された粘弾性体1を収容し、前記粘弾性体1と溶着で接続されることにより、前記粘弾性体1の上面全体が露出しており、さらに、容器の内容物と前記粘弾性体1との接触を妨げている底面を有しているので、本願発明の「栓受け」に相当する。
したがって、請求人の上記主張は当を得たものではなく、認められない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、または、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-03-09 
結審通知日 2020-03-10 
審決日 2020-03-24 
出願番号 特願2015-554137(P2015-554137)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A61J)
P 1 8・ 121- WZ (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立花 啓  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 倉橋 紀夫
沖田 孝裕
発明の名称 医薬品容器用の上蓋  
代理人 大西 浩之  
代理人 小宮 良雄  
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